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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1347395
審判番号 不服2017-15587  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-20 
確定日 2018-12-27 
事件の表示 特願2013-233693「信号処理装置および信号処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月26日出願公開、特開2014-116931〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成25年11月12日(優先権主張 平成24年11月12日、平成24年11月13日、平成24年11月13日)の出願であって、平成28年12月12日付けで拒絶理由が通知され、平成29年2月20日に手続補正がされ、同年7月20日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年10月20日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成29年2月20日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「複数チャンネルの信号を入出力する第1入出力部と、
複数チャンネルの信号を入出力する第2入出力部と、
音声を収音するマイクロフォンと、
前記マイクロフォンが収音した音声を処理する音声信号処理部と、
前記第1入出力部の第1チャンネルと、前記音声信号処理部と、を物理的に接続するとともに、前記第1入出力部の第1チャンネル以外のサブチャンネルの1つと、前記第2入出力部のうち当該サブチャンネルに対応するチャンネルに隣接する他チャンネルと、を物理的に接続する物理回路と、
を備え、
前記音声信号処理部から出力された音声信号が前記第1入出力部の第1チャンネルから出力され、前記第2入出力部の前記他チャンネルから入力された音声信号が前記第1入出力部の前記サブチャンネルから出力されることを特徴とする信号処理装置。」

3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、この出願の請求項1に係る発明は、本願出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.特開2007-334809号公報
引用文献2.特開2006-140930号公報

4 引用文献の記載事項及び引用発明
(1)引用例1の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された特開2007-334809号公報(以下、「引用例1」という。)には、「モジュール型電子機器」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。

ア「【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のモジュールを接続して一つの電子機器を構成するモジュール型電子機器に関するものである。」(2頁)

イ「【0005】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、複雑なアドレス番号を設定することなく、また加算回路、比較回路も用いずに、確実に各機能モジュールを識別することができ、機能モジュールの増減にも柔軟に対応することができるモジュール型電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るモジュール型電子機器は、演算処理を行なうCPUを有する制御モジュールと、上記制御モジュールに接続され上記CPUと通信する入出力回路を有する複数の機能モジュールとによって一つの電子機器を構成するモジュール型電子機器において、上記制御モジュールには上記機能モジュールの入出力回路と通信するための複数の制御信号線を設け、上記各機能モジュールには上記入出力回路と上記制御信号線の一つとを接続するデータバスと、上記制御モジュールの他の制御信号線と他の機能モジュールの入出力回路とを接続する中間接続線とを設けたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るモジュール型電子機器は、演算処理を行なうCPUを備えた制御モジュールと、この制御モジュールに接続され上記CPUと通信を行なう入出力回路を有する複数の機能モジュールとで構成され、更に制御モジュールには複数の機能モジュールのそれぞれの入出力回路と通信する制御信号線を設け、各機能モジュールには上記入出力回路と上記制御信号線の一つとを接続するデータバスと、他の機能モジュールと上記CPUとが通信するための中間接続線とを設けているため、制御モジュールに連結接続される機能モジュールの接続の順番が変わっても制御モジュールのCPUは複数の機能モジュールのそれぞれを確実に識別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図にもとづいて説明する。図1は、実施の形態1によるモジュール型電子機器の構成を示すブロック図である。この図に示されるように、モジュール型電子機器100は、機器全体を制御するCPU10を装着した制御モジュール1と、この制御モジュール1のCPU10と通信する入出力回路20、30、40、50を備え略同一のハードウェア機能を有する複数の機能モジュール2、3、4、5とを図示しないコネクタ等により接続して構成されている。
【0009】
制御モジュール1には、CPU10によって制御したい機能モジュール2、3、4、5に備えられた入出力回路の数、またはそれ以上の数の制御信号線11a、11b、11c、11dが設けられ、各機能モジュールには、入出力回路20、30、40、50を制御信号線の一つに接続するデータバス22、32、42、52と、上記制御モジュールの他の制御信号線と他の機能モジュールの入出力回路とを接続する中間接続線23a、23b、23c、33a、33b、33c、43a、43b、43c、53a、53b、53cが設けられている。
【0010】
なお、制御モジュール1及び各機能モジュール2、3、4、5はそれぞれ別のプリント基板上に実装され、各プリント基板には入力端子24a、24b、24c、24d、34a?34d、44a?44d、54a?54d及び出力端子15a?15d、25a?25c、35a?35c、45a?45c、55a?55cがそれぞれ対応した位置に設けられている。
【0011】
次に、以上のように構成されたモジュール型電子機器の動作について説明する。制御モジュール1のCPU10が第1の機能モジュール2の入出力回路20を制御しようとする場合には、制御モジュール1の制御信号線11dに制御信号を出力する。この制御信号は出力端子15d及び第1の機能モジュール2の入力端子24dを介して第1の機能モジュール2のデータバス22に与えられ、入出力回路20を動作させる。
【0012】
入出力回路20の動作は、例えば、第1の機能モジュール2の図示しない端子からアナログデータ情報を入力し、デジタルデータに変換してCPU10に伝送したり、CPU10から送信されたデジタルデータ情報をアナログデータに変換して図示しない端子へ出力したりする。また、第1の機能モジュール2の図示しない端子からの無電圧a接点の入力情報をデジタルデータ情報に変換してCPU10に伝送したり、CPU10からのデジタルデータ情報を図示しない端子へリレー出力したりする。
【0013】
次に、制御モジュール1のCPU10から第2の機能モジュール3の入出力回路30を制御しようとする場合には、制御モジュール1の制御信号線11aに制御信号を出力する。制御信号線11aは出力端子15a及び第1の機能モジュール2の入力端子24aを介して第1の機能モジュール2の中間接続線23aに接続され、その出力端子25a及び第2の機能モジュール3の入力端子34dを介して第2の機能モジュール3のデータバス32に接続されることにより、入出力回路30は上述した入出力回路20と同様に動作する。
【0014】・・・(省略)・・・
【0015】・・・(省略)・・・
【0016】
上述のような制御経路となるため、制御モジュール1には、制御対象となる機能モジュールの入出力回路の数(N)、またはそれ以上の制御信号線が設けられ、各機能モジュール2、3、4、5にはN-1か、またはそれ以上の中間接続線が設けられる。」(3?5頁)

ウ.【図1】




a.摘記事項イ.の【0008】の「モジュール型電子機器100は、機器全体を制御するCPU10を装着した制御モジュール1と、この制御モジュール1のCPU10と通信する入出力回路20、30、40、50を備え略同一のハードウェア機能を有する複数の機能モジュール2、3、4、5とを図示しないコネクタ等により接続して構成されている。」と、同【0010】の「各機能モジュール2、3、4、5はそれぞれ別のプリント基板上に実装され、各プリント基板には入力端子24a、24b、24c、24d、34a?34d、44a?44d、54a?54d及び出力端子15a?15d、25a?25c、35a?35c、45a?45c、55a?55cがそれぞれ対応した位置に設けられている。」との記載とウ.【図1】より、「機能モジュール2」は、「制御モジュール1の出力端子15d及び15a?cにそれぞれ接続される入力端子24d及び24a?cと、他の機能モジュール3の入力端子34d及び34a?bにそれぞれ接続される出力端子25a?cと、」を備えているといえる。

b.摘記事項イ.の【0012】の「入出力回路20の動作は、例えば、第1の機能モジュール2の図示しない端子からアナログデータ情報を入力し、デジタルデータに変換してCPU10に伝送したり、CPU10から送信されたデジタルデータ情報をアナログデータに変換して図示しない端子へ出力したりする。」の記載とウ.【図1】より、「端子から入力されたアナログデータ情報をデジタルデータに変換する入出力回路20と、」を備えているといえる。

c.摘記事項イ.の【0009】の「入出力回路20、30、40、50を制御信号線の一つに接続するデータバス22、32、42、52」と、【0011】の「第1の機能モジュール2の入力端子24dを介して第1の機能モジュール2のデータバス22に与えられ、入出力回路20を動作させる。」の記載とウ.【図1】より、「入力端子24dと、入出力回路20とを接続するデータバス22と、」を備えているといえる。

d.摘記事項イ.の【0013】の「第1の機能モジュール2の入力端子24aを介して第1の機能モジュール2の中間接続線23aに接続され、その出力端子25a」の記載とウ.【図1】より、「入力端子24a?cと、出力端子25a?cとをそれぞれ接続する中間接続線23a?cとを備え、」ているといえる。

e.上記c.と、摘記事項イ.の【0012】の「入出力回路20の動作は、例えば、第1の機能モジュール2の図示しない端子からアナログデータ情報を入力し、デジタルデータに変換してCPU10に伝送したり、」の記載と、ウ.【図1】より、「前記入出力回路20から出力されたデジタルデータが前記入力端子24dから出力され」ているといえる。

f.上記d.と、摘記事項イ.【0011】の「制御モジュール1のCPU10が第1の機能モジュール2の入出力回路20を制御しようとする場合には、制御モジュール1の制御信号線11dに制御信号を出力する。この制御信号は出力端子15d及び第1の機能モジュール2の入力端子24dを介して第1の機能モジュール2のデータバス22に与えられ、入出力回路20を動作させる。」と、同【0012】の「CPU10から送信されたデジタルデータ情報をアナログデータに変換して図示しない端子へ出力したりする。」との各記載と、ウ.【図1】より、「制御モジュール1の出力端子15dから出力された制御情報が前記入力端子24dから入力され、」といえる。

g.摘記事項イ.の【0013】の「制御モジュール1の制御信号線11aに制御信号を出力する。制御信号線11aは出力端子15a及び第1の機能モジュール2の入力端子24aを介して第1の機能モジュール2の中間接続線23aに接続され、その出力端子25a及び第2の機能モジュール3の入力端子34dを介して第2の機能モジュール3のデータバス32に接続されることにより、入出力回路30は上述した入出力回路20と同様に動作する。」の記載と、ウ.【図1】より、「制御モジュール1の出力端子15a?cからそれぞれ出力された制御情報が前記入力端子24a?cからそれぞれ入力され、出力端子25a?cから機能モジュール3の入力端子34d及び34a?bにそれぞれ出力される、」といえる。

h.各機能モジュール2、3、4、5は略同一のハードウェア機能を有する(【0008】)から、機能モジュール3の入出力回路30は、図示しない端子からアナログデータ情報を入力し、デジタルデータに変換する。そして、当該デジタルデータは、データバス32を経由して、機能モジュール3の入力端子34dと接続された機能モジュール2の出力端子25aから入力され、データバス23aを経由して入力端子24aから出力され、CPUに伝送される。同様に、機能モジュール4及び5の各入出力回路から出力されたデジタルデータは、隣接する機能モジュールのデータバスを経由して、機能モジュール3の入力端子34a?bと接続された機能モジュール2の出力端子25b、25cから入力され、データバス23b?cを経由して、入力端子24b、24cから出力され、CPUに伝送される。
したがって、「前記入出力回路20から出力されたデジタルデータが前記入力端子24dから出力され、機能モジュール3の入力端子34d及び入力端子34a?bとそれぞれ接続された出力端子25a?cから入力されたデジタルデータが入力端子24a?cからそれぞれ出力され」るといえる。

したがって、引用文献1には、複数のモジュールを接続して1つの電子機器を構成するモジュール型電子機器(【0001】)に関し、機能モジュールの増減にも柔軟に対応することができるモジュール型電子機能を提供することを目的とする(【0005】)、以下の発明が記載されていると認める。(以下、「引用発明」という。)

(引用発明)
「制御モジュール1の出力端子15d及び15a?cにそれぞれ接続される入力端子24d及び24a?cと、
機能モジュール3の入力端子34d及び34a?bにそれぞれ接続される出力端子25a?cと、
端子から入力されたアナログデータ情報をデジタルデータに変換する入出力回路20と、
入力端子24dと、入出力回路20とを接続するデータバス22と、
入力端子24a?cと、出力端子25a?cとをそれぞれ接続する中間接続線23a?cとを備え、
前記入出力回路20から出力されたデジタルデータが前記入力端子24dから出力され、機能モジュール3の出力端子34d及び入力端子34a?bとそれぞれ接続された出力端子25a?cから入力されたデジタルデータが入力端子24a?cからそれぞれ出力され、
制御モジュール1の出力端子15dから出力された制御情報が前記入力端子24dから入力され、制御モジュール1の出力端子15a?cからそれぞれ出力された制御情報が前記入力端子24a?cからそれぞれ入力され、出力端子25a?cから機能モジュール3の入力端子34d及び34a?bにそれぞれ出力される、機能モジュール2。」

(2)引用文献2の記載事項及び周知技術
原査定の拒絶の理由で引用された特開2006-140930号公報(以下、「引用例2」という。)には、「マイクシステムおよびマイク装置」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。

エ.「【技術分野】
【0001】
本発明はマイクシステムおよびマイク装置に関し、特にシステム全体を制御する本体装置と、本体装置側を上流、反対側を下流として本体装置から縦列接続され、音声信号を順次伝達するマイク装置から構成されるマイクシステムおよびそのマイク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビ会議システムに代表されるように、遠隔地間など多地点に設置された複数の端末を介して音声や映像などを送受することによって、多地点間で会議を行うことを可能にする会議システムが構築されている。」(3頁)

オ.「【0034】
実施の形態のテレビ会議システムは、テレビ会議システム本体(以下、本体とする)200に対し、マイク1(100)、マイク2(101)、マイク3(102)およびマイク4(103)が通信路301、302、303、304と電源信号路311、312、313、314によってカスケード接続されている。各マイクは同じ構成であるので、以下、マイク1(100)の場合で説明する。
【0035】
マイク1(100)は、音声処理を行うDSP(Digital Signal Processor)110、電源処理を行う電源制御回路120とDC-DC変換器121、シリアル通信を制御するシリアルI/F FPGA(Field Programmable Gate Array)130、マイクのオン/オフスイッチ140、および音声を入力する集音部150とA/D変換器151を有する。・・・(省略)・・・」(9頁)

カ.「【0042】 集音部150は、周囲の音声を入力し、音声に応じたアナログ信号を生成してA/D変換器151へ出力する。A/D変換器151は、音声に応じて生成されたアナログ信号をデジタルに変換し、音声入力信号としてDSP110に出力する。・・・(省略)・・・」(10頁)

したがって、「集音部を備え、該集音部で集音した音声をデジタルデータに変換して出力するマイク装置を、複数接続してテレビ会議システムを構成する」ことは、周知技術(以下、「周知技術」という。)であると認める。

5 対比
本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。

(1)引用発明の「機能モジュール2」は、「入出力回路20」に入力されたアナログデータ情報をデジタルデータに変換する機能を有し、「入力端子24d及び24a?c」を介して「制御モジュール」に接続され、「出力端子25a?c」を介して「機能モジュール3」に接続されるモジュールであるから、「装置」といえるかは別として、本願発明の「信号処理装置」と引用発明の「機能モジュール2」とは、「信号処理ユニット」といえる点で共通する。

(2)引用発明の「入出力回路20」は、「端子から入力されたアナログデータ情報をデジタルデータに変換する」から、本願発明の「前記マイクロフォンが収音した音声を処理する音声信号処理部」と引用発明の「入出力回路20」とは、「アナログ信号を処理する信号処理部」といえる点で共通する。

(3)引用発明の「入力端子24d及び24a?c」及び「出力端子25a?c」は、「前記入出力回路20から出力されたデジタルデータが前記入力端子24dから出力され、機能モジュール3の入力端子34d及び入力端子34a?bとそれぞれ接続された出力端子25a?cから入力されたデジタルデータが入力端子24a?cからそれぞれ出力され」、「制御モジュールの出力端子15dから出力された制御情報が前記入力端子24dから入力され、制御モジュールの出力端子15a?cからそれぞれ出力された制御情報が前記入力端子24a?cからそれぞれ入力され、出力端子25a?cから機能モジュール3の入力端子34d及び34a?cにそれぞれ出力される」から、入力端子24d、24a?c、出力端子25a?cは入力及び出力を行うものといえ、「入力端子24d及び24a?c」をまとめて「第1入出力部」と称し、「出力端子25a?c」をまとめて「第2入出力部」と称することは任意である。また、端子から入出力される信号の伝送路を「チャンネル」と称し、「入力端子24d」から入出力される信号の伝送路を「第1チャンネル」、「入力端子24a?c」から入出力される信号の伝送路を「第1チャンネル以外のサブチャンネル」と称することも任意である。
そうすると、引用発明の「入力端子24d及び24a?c」及び「出力端子25a?c」は、本願発明の「複数チャンネルの信号を入出力する第1入出力部」及び「複数チャンネルの信号を入出力する第2入出力部」に相当する。
また、引用発明の「データバス22」は、「入力端子24dと、入出力回路20とを接続」し、引用発明の「中間接続線23a?c」は、「入力端子24a?cと、出力端子25a?cとをそれぞれ接続」するものであるから、これらを併せて「物理的に接続する物理回路」ということができる。

上記によれば、本願発明と引用発明とは、「前記第1入出力部の第1チャンネルと、前記信号処理部と、を物理的に接続するとともに、前記第1入出力部の第1チャンネル以外のサブチャンネルの1つと、前記第2入出力部のうち当該サブチャンネルに対応するチャンネルに隣接する他チャンネルと、を物理的に接続する物理回路」を備え、「前記信号処理部から出力された信号が前記第1入出力部の第1チャンネルから出力され、前記第2入出力部の前記他チャンネルから入力された信号が前記第1入出力部の前記サブチャンネルから出力される」点で共通するといえる。

以上より、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致及び相違する。

(一致点)
「複数チャンネルの信号を入出力する第1入出力部と、
複数チャンネルの信号を入出力する第2入出力部と、
アナログ信号を処理する信号処理部と、
前記第1入出力部の第1チャンネルと、前記信号処理部と、を物理的に接続するとともに、前記第1入出力部の第1チャンネル以外のサブチャンネルの1つと、前記第2入出力部のうち当該サブチャンネルに対応するチャンネルに隣接する他チャンネルと、を物理的に接続する物理回路と、
を備え、
前記信号処理部から出力された信号が前記第1入出力部の第1チャンネルから出力され、前記第2入出力部の前記他チャンネルから入力された信号が前記第1入出力部の前記サブチャンネルから出力されることを特徴とする信号処理ユニット。」

本件補正発明と引用発明は、以下の点で相違する。

(相違点1)
「信号処理ユニット」が、本願発明では、「信号処理装置」であるのに対し、引用発明では、「機能モジュール」である点。

(相違点2)
本願発明では、「音声を収音するマイクロフォン」を備え、一致点とした「信号処理部」が、「前記マイクロフォンが収音した音声」を処理して「音声信号」を出力する「音声信号処理部」であり、「前記第2入出力部の前記他チャンネルから入力された信号」も「音声信号」であるのに対し、引用発明では、「音声を収音するマイクロフォン」を備えておらず、「信号処理部」は、「端子から入力されたアナログデータ情報」を処理して「デジタルデータ」を出力し、「前記第2入出力部の前記他チャンネルから入力された信号」も「デジタルデータ」である点。

6 判断
(1)相違点の検討
ア 相違点1について
引用発明は、機能モジュールの増減にも柔軟に対応することができるモジュール型電子機器を提供することを目的とした機能モジュールの発明であるから、機能モジュールを単体の「装置」として構成し、相違点1に係る「信号処理装置」とすることは、当業者が容易に想到し得る。

イ 相違点2について
引用発明のモジュール増設型のシステムにおいてデジタルデータに変換する「信号処理部」に入力される入力アナログ信号を「音声」とすることが可能かどうかを判断すると、例えば、特開2004-96650号公報の段落【0002】、特開2003-274438号公報の段落【0052】に記載されているとおり、アナログ信号として音声は代表的な信号であり、かつ「(2)引用文献2の記載事項及び周知技術」で記載したとおり、一般に「集音部を備え、該集音部で集音した音声をデジタルデータに変換して出力するマイク装置を、複数接続してテレビ会議システムを構成する」ことは、周知技術(以下、「周知技術」という。)である。
したがって、引用発明において、デジタルデータに変換する「信号処理部」に入力するデータとして「端子から入力されたアナログ情報」に代えて「集音部」を備え、集音部で収音した音声とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(2)効果について
発明の効果に関して、引用例1の段落【0007】の「制御モジュールに連結接続される機能モジュールの接続の順番が変わっても制御モジュールのCPUは複数の機能モジュールのそれぞれを確実に識別することができる。」と記載されており、引用発明は、本願発明と同様の効果を有するものといえる。

(3)請求人の主張について
請求人は、審判請求書の「 (3)本願が特許されるべき理由
」の「(c)本願発明と引用発明との対比」において「引用文献2の発明は、他装置から入力した音声信号をDSP110に入力し、他装置の音声信号を自装置の音声信号に加算する処理行っている。引用文献2の発明は、この様にして他装置の音声信号を加算する処理をしてから上流側の装置に送信している。これに対して、本願発明1は、下流側の装置から入力された音声信号を、そのまま上流側に送信することが特徴であり、自装置の音声信号に他装置の音声信号を加算することはない。この様な趣旨を有する本願発明1に対して、自装置の信号に他装置の信号を加算する処理を行うことが特徴である引用文献2の発明は、やはり引用発明としての適格性がないと言える。」、「また、本願発明1,2は、データ多重化処理を行なうことなく各マイクの音声信号を個別にホスト装置に入力し、かつホスト装置から各マイクにそれぞれ個別のプログラムを送信することもできる。上述の様に、複数のマイクが設置される場合には、マイク毎に異なる信号処理が必要になる場合がある(例えばスピーカに近い場合にはエコーが生じやすくなるため、エコーキャンセル処理を行なう)。本願発明1,2によればこの様なマイクにおける特有の課題を解決することができる。引用文献1にはその様なマイクにおける課題は全く認識されていない(そもそもマイクに用いることは全く想定されていない)。したがって、引用文献1の発明と本願発明1,2とでは解決すべき課題も異なる。」と主張している。
しかしながら、特許法第29条第1項第3号の「刊行物に記載された発明」は、刊行物に全体に記載されている事項及び刊行物に記載されているに等しい事項から当業者が把握できる技術思想(技術内容)であれば、刊行物に直接に記載されている課題や目的に限定されない。
したがって、「4 引用文献の記載事項及び引用発明」の項中の「(2)引用文献2の記載事項及び周知技術」のとおり、引用文献2によれば「集音部を備え、該集音部で集音した音声をデジタルデータに変換して出力するマイク装置を、複数接続してテレビ会議システムを構成する」ことは周知技術といえるから、「6 判断」の項中の「(1)相違点の検討」で記載したとおり、引用発明において、デジタルデータに変換する「信号処理部」に入力するデータとして「端子から入力されたアナログ情報」に代えて「集音部」を備え、集音部で収音した音声とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
また、マイク毎に異なる信号処理を行うことは、特許請求の範囲には特定されておらず、特許請求の範囲の記載に基づくものではない。
よって請求人の上記主張は採用できない。

7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-10-25 
結審通知日 2018-10-30 
審決日 2018-11-12 
出願番号 特願2013-233693(P2013-233693)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永田 義仁  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 吉田 隆之
山中 実
発明の名称 信号処理装置および信号処理システム  
代理人 特許業務法人 楓国際特許事務所  

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