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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1347397
審判番号 不服2017-18563  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-14 
確定日 2018-12-27 
事件の表示 特願2015-125306「報知装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年1月12日出願公開、特開2017-7515〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年6月23日の出願であって、平成29年5月16日付けで拒絶理由が通知され、平成29年7月12日に意見書が提出されるとともに、明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、平成29年7月31日付けで再度拒絶理由が通知され、平成29年9月21日に意見書が提出されるとともに、明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたが、平成29年10月4日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成29年12月14日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成29年9月21日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
車両に設けられ、該車両を運転する運転者に報知する報知装置であって、
複数の車載機器のそれぞれと接続された通信ネットワークと、
予め想定される前記車両の周辺の状況ごとに、前記複数の車載機器のそれぞれの状態に基づく信号の変化パターンが関連付けて行動モデルデータベースとして記憶されている記憶部と、
前記複数の車載機器の信号変化と、前記記憶部に記憶されている前記信号の変化パターンと、に基づいて、前記車両の周辺の状況を推定する状況判定部と、
前記通信ネットワークを介して、前記複数の車載機器のうち、前記状況判定部で推定された前記車両の周辺の状況に関連する車載機器の状態の情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部で取得された前記関連する車載機器の状態の情報に基づいて、前記運転者に推奨される推奨動作の報知情報を生成する情報生成部と、
前記情報生成部で生成された前記推奨動作の報知情報を前記運転者に提示する情報提示部と、
を備え、
前記複数の車載機器は、
ステアリング系ECU及び該ステアリング系ECUにより制御される機器、ボディ系ECU及び該ボディ系ECUにより制御される機器、又は安全系ECU及び該安全系ECUにより制御される機器、が対応するものであり、
前記車両の周辺の状況は、
前記車両の外部環境に関するもの又は前記車両の動作に関するものが含まれるものであり、
前記状況判定部は、
前記複数の車載機器のうち少なくとも1つの車載機器の信号変化と、前記信号の変化パターンと、が一致した場合、前記車両の周辺の状況のうち、一致した信号の変化パターンに対応する車両の周辺の状況を、推定された前記車両の周辺の状況として選択する、
ことを特徴とする報知装置。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1ないし3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものを含むものである。

引用文献1.特開2008-168786号公報(本審決における引用文献1)
引用文献2.特開昭56-149232号公報(本審決における引用文献2)
引用文献3.特開2004-350137号公報(周知技術を示す文献。本審決における引用文献3)
引用文献4.特開2004-17939号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5.実願昭58-13152号(実開昭59-118616号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献。本審決における引用文献4)

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献1(特開2008-168786号公報)には、図面(特に図1、図2及び図4を参照)とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は、当審で付した。

ア 「【0001】
本発明は、車両に搭載された各種の車載機器を適切に操作することを、車両に乗車するユーザに対して案内することが可能な車載機器操作案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、車両の乗車時や降車時に必要となる操作等を運転者に提示して、運転者が必要な操作を忘れたまま乗車或いは降車してしまうことを防止する車両用情報提示装置が開示されている。
【0003】
この特許文献1に記載の装置では、例えば運転者が車両から降車するときに必要となる操作項目を、操作パターンとともに記憶させておく。そして、パーキングブレーキが引かれたことが検出され、運転者が車両から降車することが予測されるときに、記憶されている操作パターンに基づいて操作項目を表示部に提示する。
【特許文献1】特開2005-335555号公報」

イ 「【0004】
上述した装置では、必要な操作項目を運転者に対して表示部に提示することで知らせているが、車両の操作に不慣れなユーザは、表示部に操作項目を表示しただけでは、その操作項目を操作するためのスイッチ等の所在が即座にわからない場合もありえる。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、車両の状態に応じて、ユーザが操作すべき、あるいは操作することが好ましい車載機器の操作部材をユーザにわかりやすく案内することが可能な車載機器操作案内装置を提供することを目的とする。」

ウ 「【0006】
上記目的を解決するために、請求項1に記載の車載機器操作案内装置は、
車両の状態を検出する検出手段と、
検出手段によって検出された車両状態に基づいて、当該車両状態においてユーザが操作すべき或いは操作することが好ましい車載機器の操作部材を決定する決定手段と、
決定手段によって決定された操作部材を発光させて、車両に乗車したユーザに案内する発光手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このように請求項1に記載の車載機器操作案内装置によれば、車両状態に応じて、ユーザが操作すべき或いは操作することが好ましい車載機器の操作部材を発光させる。このため、ユーザに対して、操作すべき或いは操作することが好ましい操作部材が存在することを知らせることができるだけでなく、その操作部材の所在も併せて知らせることができる。従って、車両の操作に不慣れなユーザに対しても、実効性のある車載機器の操作部材の操作案内を行なうことができる。
【0008】
なお、発光手段として、操作部材に発光素子を埋設して、操作部材自体が発光するように構成しても良いし、操作部材の周辺から照明を当てることにより、当該操作部材を発光させるものであっても良い。
【0009】
請求項2に記載したように、検出手段は、車両の状態として、車両に乗車したユーザによる前記操作部材の操作状態を検出し、決定手段は、ユーザによる操作部材の操作状態に基づいて、当該ユーザの操作が誤っているか否かを判定し、誤っていると判定した場合には、正しい操作を行うための操作部材を決定して、発光手段によって発光させるように構成しても良い。例えば、最近、ブレーキペダルを踏みつつ、プッシュスイッチを操作することで、車両の動力源(エンジン等)を始動するシステムを採用した車両が増えつつある。このシステムでは、プッシュスイッチのみを操作してもエンジン等は始動しないので、プッシュスイッチのみが(繰り返し)操作された場合には、エンジン等の始動操作の誤りであると判定できる。この場合、ブレーキペダルを発光させることにより、エンジン等の正しい始動操作として、ブレーキペダルの操作も必要であることをユーザに対して知らせることができる。
【0010】
請求項3に記載したように、車両に乗車するユーザを識別する識別手段と、所定の車両状態において、ユーザが複数の操作部材を順番に操作したとき、ユーザによって実際に操作された複数の操作部材及びその操作の順番を示す操作パターンを、識別手段によって識別されたユーザ毎に記憶する記憶手段と、を備え、決定手段は、車両に乗車したユーザ毎に記憶手段に記憶された操作パターンに従って、発光手段によって発光させる操作部材を決定するようにしても良い。
【0011】
このようにすれば、車両が複数のユーザによって使用される場合であっても、各ユーザの習慣や癖に応じた順番で、操作部材の案内を行なうことができる。なお、このような複数の操作部材を順番に操作する必要が生じる車両状態としては、例えば停止している車両にユーザが乗車して、シートベルトの装着、エンジン等の始動を行なう場合が該当する。
【0012】
請求項4に記載したように、車両に乗車したユーザによって操作される複数の操作部材の操作の順番が、当該ユーザに対して記憶されている操作パターンと一致するか否かを判定する判定手段を備え、判定手段により不一致と判定されたとき、記憶手段は、記憶された操作パターンを更新することが好ましい。これにより、各ユーザの操作部材の操作の順番が変化した場合であっても、次回以降の案内において、その変化を反映した操作部材の案内を行なうことができる。
【0013】
請求項5に記載したように、記憶手段に記憶される操作パターンは、予めユーザによって登録可能であることが好ましい。これにより、事前に好ましい操作パターンを登録したり、新たな操作パターンの登録によって記憶されている操作パターンを修正したりすることが可能になる。
【0014】
請求項6に記載したように、車両に乗車したユーザによる操作部材の操作が、そのときの車両状態において不適切であるか否かを判定する操作判定手段を備え、操作判定手段によってユーザの操作部材の操作が、そのときの車両状態において不適切であると判定された場合、発光手段は、その操作部材を、操作すべき或いは操作することが好ましい操作部材として案内するときの発光態様とは異なる態様で発光させても良い。このようにすれば、操作することが不適切である操作部材が操作されたときに、その操作部材の操作は不適切であることを、ユーザに警告することができる。
【0015】
そして、操作部材の不適切な操作が行なわれた場合には、請求項7に記載したように、記憶手段は、操作パターンの記憶を中止することが好ましい。不適切な操作に該当する操作部材の案内を防止するためである。」

エ 「【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態による車載機器操作案内装置について図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態の車載機器操作案内装置の全体構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、車載機器操作案内装置は、制御装置10を備える。制御装置は、車両の状態を検出するために、各種のスイッチやセンサなどからの信号を、直接もしくは、図示しない他の制御装置との通信によって取得する。この制御装置10に信号を入力するスイッチやセンサとしては、基本的に車室内外において、ユーザが操作する操作部材の操作状態を検出する全てのスイッチやセンサが対象となりえる他、車両のエンジンが始動された状態であるか否かを検出するエンジン回転センサや、車両の走行速度を検出する走行速度センサ、さらに車載ナビゲーション装置から取得可能な車両の走行位置や走行道路データも対象となる。
【0018】
これらのスイッチやセンサの具体例をいくつか挙げると、例えば、車両のエンジンをオンオフするエンジンスイッチ、シートベルトの装着を検出するセンサ、サイドブレーキの操作状態を検出するスイッチ、トランスミッションのシフト位置を検出するセンサ、ドアの開閉を検出するセンサ、車両ドアのロック、アンロックを検出するセンサ、ヘッドライト等の点灯状態を検出するセンサ、車両にナビゲーション装置が装備されている場合には、そのナビゲーション装置の操作スイッチ、車両がいわゆるオートクルーズを装備している場合にはその操作スイッチなどがある。
【0019】
制御装置10は、これらのスイッチやセンサからの信号を取り込んで、それらの信号に基づいて車両状態を検出する。例えば、エンジンが停止している状態で、ドアがアンロックされたとき、ユーザが車両に乗車する乗車状態であることを検出したり、車両が所定速度以上で走行している場合や、高速道路を走行している場合には、車両は高速走行状態であることを検出したり、車両が停止して、サイドブレーキがかけられたり、エンジンが停止され、その後、ドアが開かれたときには、ユーザが車両から降車する降車状態であることを検出したりする。
【0020】
制御装置10には、発光素子30A?30Cを発光駆動するための駆動回路20A?20Cが接続されている。制御装置10は、発光させるべき発光素子30A?30Cに対応する駆動回路20A?20Cに駆動信号を出力することにより、所望の発光素子30A?30Cを発光させることができる。あるいは、制御装置10は、図示しない他の制御装置との通信によって、他の制御装置に所望の発光素子の発光を指示し、その指示を受けた制御装置が発光素子を発光させるものであっても良い。
【0021】
発光素子30A?30Cは、例えば、青色や赤色に発光するLEDからなり、ユーザが操作すべき或いは操作することが好ましい車載機器のスイッチ等の操作部材をユーザに案内するためのものである。この発光素子30A?30Cは、例えばインストルメントパネル等に設けられたスイッチに対しては、そのスイッチの背面に設けられ、そのスイッチをバックライトによって照明する。また、例えば、ブレーキペダルなど、発光素子30A?30Cを背面に設けることができない操作部材に対しては、その操作部材をスポット光によって照明可能な位置に設けられる。」

オ 「【0022】
以上のように構成される車載機器操作案内装置における制御処理に関して、図2のフローチャートに基づいて説明する。
【0023】
まず、ステップS100では、上述した各種のスイッチやセンサからの信号を取り込み、ステップS110にて、取り込んだ信号に基づいて、車両の状態を検出する。そして、ステップS120において、検出した車両状態において、ユーザが操作すべき或いは操作することが好ましい操作部材を、案内対象操作部材として決定する。なお、各車両状態において、ユーザが操作すべき或いは操作することが好ましい操作部材は予め定められ、制御装置10のメモリ等に記憶されている。ステップS120では、その記憶された関係を参照して、案内対象操作部材を決定する。ステップS130では、決定された案内対象操作部材を照明する発光素子30A?30Cを発光駆動するための駆動回路20A?20Cに駆動信号を出力する。
【0024】
例えば、車両がブレーキペダルを踏みながら、プッシュ式のエンジンスイッチを押すことによってエンジンを始動させるシステムを採用している場合には、ユーザが車両に乗車する乗車状態において、エンジンスイッチとブレーキペダルを照明する。これにより、ユーザに対して、エンジンを始動させるための操作部材を案内することができる。
【0025】
また、車両が所定速度以上の高速度で走行していたり、高速道路を走行している高速走行状態では、オートクルーズのスイッチを照明する。これにより、オートクルーズ機能の存在をユーザに知らせ、オートクルーズの利用を促すことができる。
【0026】
さらに、ユーザが車両から降車する降車状態において、ライトを消し忘れている場合には、従来のようにブザーを吹鳴するとともに、ライトスイッチを照明する。これにより、ユーザに対して、ブザーが吹鳴されている原因が、ライトの消し忘れであることを知らせることができ、ライトスイッチの操作を促すことができる。
【0027】
このように、第1実施形態の車載機器操作案内装置によれば、車両状態に応じて、ユーザが操作すべき或いは操作することが好ましい車載機器の操作部材を照明する。このため、ユーザに対して、操作すべき或いは操作することが好ましい操作部材が存在することを知らせることができるだけでなく、その操作部材の所在も併せて知らせることができる。従って、車両の操作に不慣れなユーザに対しても、実効性のある車載機器の操作部材の操作案内を行なうことができる。」

カ 「【0035】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態による車載機器操作案内装置について説明する。なお、本実施形態の車載機器操作案内装置の構成は、上述した第1実施形態による車載機器操作案内装置とほぼ同様である。但し、本実施形態の車載機器操作案内装置は、車両に乗車したユーザ(運転者)を識別するため、ユーザ識別装置を備えている点が異なる。
【0036】
このユーザ識別装置としては、例えば車室内にカメラを設け、カメラによって撮影した画像から各ユーザの顔の特徴を抽出することにより、ユーザを識別する装置を用いることができる。この場合、予め、車両を利用するユーザの顔を撮影し、利用ユーザとしてユーザ識別装置に登録しておくことが必要である。
【0037】
その他にも、例えば、指紋、声紋、静脈の形状、こう彩など、ユーザの生体的な特徴を使ってユーザを認識しても良い。さらに、シート位置を含むドライビングポジションが、ユーザ毎に異なる番号を付して記憶させることができ、その番号のスイッチを操作することにより、記憶したドライビングポジションへの調整が行なわれるシステムを搭載している場合には、その選択番号からユーザを識別しても良い。また、車両がいわゆるスマートエントリーシステムを備え、各ユーザが異なるIDコードを付与された携帯キーを保持している場合には、携帯キーから取得したIDコードからユーザを識別しても良い。
【0038】
本実施形態の車載機器操作案内装置では、上述したようなユーザ識別装置を備え、ユーザが複数の操作部材を順番に操作したとき、操作された複数の操作部材及びその操作の順番を示す操作パターンを、ユーザ及びそのときの車両状態に関連付けて記憶する。そして、ユーザ及び車両状態について同一の状況が生じた場合に、記憶された操作パターンに従って、案内対象操作部材を決定する。このようにすれば、車両が複数のユーザによって使用される場合であっても、各ユーザの習慣や癖に応じた順番で、操作部材の案内を行なうことができる。」

キ 「【0039】
本実施形態の車載機器操作案内装置による制御処理を図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0040】
まず、ステップS300では、ユーザ識別装置の識別結果に基づいて、車両を利用しているユーザの識別を行なう。続くステップS310では、各種のスイッチやセンサからの信号を取り込む。そして、ステップS320において、取り込んだ信号に基づいて、車両状態を検出する。
【0041】
ステップS330では、識別されたユーザ及び検出された車両状態に関連付けて、操作パターンが記憶されているか否かを判定する。このとき、操作パターンは記憶されていないと判定されると、ステップS380の処理に進み、ユーザによる各種の操作部材の操作がなされたときに、その操作部材と操作の順番とを操作パターンとして記憶する。
【0042】
ステップS330において、操作パターンが記憶されていると判定されると、ステップS340の処理に進む。ステップS340では、記憶された操作パターンに従って、案内対象操作部材を順次決定する。そして、ステップS350において、その順次決定された案内対象操作部材を照明するように、対応する発光素子30A?30Cを発光駆動する。
【0043】
例えば、同じ車両を利用するユーザであっても、あるユーザは、乗車時にまずシートベルトを装着してから、エンジンの始動操作を行なうのに対し、他のユーザは、エンジンを始動してからシートベルトを装着するなど、車載機器の操作の順番が異なる場合がある。このように、個々のユーザで、習慣、癖、好みなどによって車載機器の操作パターンが異なることがある。ただし、そのような個々のユーザの操作パターンは一定であることが多い。
【0044】
そのため、上述したように、各ユーザの操作パターンを学習して、ユーザ及び車両状態に関連付けて記憶することにより、各ユーザの癖や好みに対応した操作部材の案内を行なうことが可能になる。
【0045】
ステップS360では、ユーザによる操作部材の実際の操作が、記憶された操作パターンと一致するか否かを判定する。この判定処理おいて、ユーザの実際の操作は、記憶操作パターンと一致しないと判定されると、ステップS370に進んで、ユーザの実際の操作に一致するように、記憶操作パターンを更新する。これにより、例えばユーザの嗜好が変化して操作部材の操作パターンが変化した場合であっても、次回から、その変化した操作パターンに従って、操作部材の案内を行なうことができるようになる。
【0046】
なお、上述した実施形態では、ユーザの操作が記憶操作パターンに一致するか否かに係らず、記憶操作パターンに従って、操作部材の案内を行なう例について説明した。しかしながら、ユーザの実際の操作が、記憶操作パターンと不一致であることが判定された時点で、記憶操作パターンによる操作部材の案内は終了するようにしても良い。ユーザは記憶操作パターンとは異なる操作を行なっているので、記憶操作パターンに基づく案内を行なっても、そのような案内はユーザにとってあまり意味を持たないためである。
【0047】
また、記憶操作パターンは、ユーザによって登録、修正可能に構成しても良い。これにより、実際に車両の操作部材を操作しなくとも、予め自らの嗜好に合致した操作パターンを登録しておくことにより、所望の操作部材の案内を行なわせることができる。また、記憶操作パターンの修正を可能とすることにより、嗜好の変化等に応じて、既に記憶されている操作パターンを修正することもできるようになる。」

ク 上記ア、エ及びオの記載から、引用文献1には、車両に設けられ、該車両を運転するユーザに発光手段及びブザー(段落【0026】)によりユーザが操作すべき車載機器の操作部材を報知する車載機器操作案内装置が記載されていることが分かる。

ケ 上記エの段落【0017】の「制御装置は、車両の状態を検出するために、各種のスイッチやセンサなどからの信号を、直接もしくは、図示しない他の制御装置との通信によって取得する。」という記載から、車載機器操作案内装置の制御装置は、各種のスイッチやセンサなどからの信号を、他の制御装置との通信によって取得することが分かる。すなわち、車両は、制御装置と図示しない他の制御装置との間で通信を行う通信手段を備え、制御装置は、各種のスイッチやセンサなどからの信号を、他の制御装置から、該通信手段を介して取得していることが分かる。

コ 上記エの段落【0019】の記載(例えば「ドアがアンロックされたとき」、「車両が停止して、サイドブレーキがかけられたり、エンジンが停止され、その後、ドアが開かれたとき」)から、引用文献1に記載された各種のスイッチやセンサなどからの信号は、「信号の変化」を含むものであることが分かる。

サ 上記エの段落【0019】の「制御装置10は、これらのスイッチやセンサからの信号を取り込んで、それらの信号に基づいて車両状態を検出する。例えば、エンジンが停止している状態で、ドアがアンロックされたとき、ユーザが車両に乗車する乗車状態であることを検出したり、車両が所定速度以上で走行している場合や、高速道路を走行している場合には、車両は高速走行状態であることを検出したり、車両が停止して、サイドブレーキがかけられたり、エンジンが停止され、その後、ドアが開かれたときには、ユーザが車両から降車する降車状態であることを検出したりする。」という記載から、制御装置10のメモリ等には、「エンジンが停止している状態」かつ「ドアがアンロックされた」状態を、「ユーザが車両に乗車する乗車状態である」と記憶していることが分かる。また、「車両が所定速度以上で走行している場合」や、「高速道路を走行している場合」を、「車両は高速走行状態である」と記憶していることが分かる。また、「車両が停止」して、「サイドブレーキがかけられた」場合、又は「エンジンが停止」され、「その後、ドアが開かれた」ときを「ユーザが車両から降車する降車状態である」と記憶していることが分かる。これらから、制御装置10のメモリ等には、予め想定される車両状態ごとに、複数の車載機器のそれぞれの状態に基づく信号が関連付けられてデータベースとして記憶されていることが分かる。なお、メモリ等にはデジタル信号が記憶されていることは、技術常識である。
また、車両状態を判定するにあたり、各種のスイッチやセンサなどからの信号と、制御装置10のメモリ等に記憶された信号とを対照し、センサなどからの信号とメモリ等に記憶された信号の一致するところを抽出して、現在の車両状態が例えば「ユーザが車両に乗車する乗車状態である」、「車両は高速走行状態である」、「ユーザが車両から降車する降車状態である」と判断(引用文献1の用語では「検出」)することは当業者にとって自明である。

シ 上記オの段落【0023】の「各車両状態において、ユーザが操作すべき或いは操作することが好ましい操作部材は予め定められ、制御装置10のメモリ等に記憶されている。」という記載及びカの段落【0038】の「本実施形態の車載機器操作案内装置では、上述したようなユーザ識別装置を備え、ユーザが複数の操作部材を順番に操作したとき、操作された複数の操作部材及びその操作の順番を示す操作パターンを、ユーザ及びそのときの車両状態に関連付けて記憶する。そして、ユーザ及び車両状態について同一の状況が生じた場合に、記憶された操作パターンに従って、案内対象操作部材を決定する。」という記載から、車載機器操作案内装置において、制御装置10のメモリ等には、車載機器の操作された複数の操作部材及びその操作の順番を示す操作パターンが、ユーザ及びそのときの車両状態に関連付けて記憶されていることが分かる。そして、メモリ等には、車両を運転するユーザの行動が操作パターンとして記憶され、識別されたユーザ及び検出された車両状態に関連付けて操作パターンが記憶されることから、ユーザをモデル化したデータベースを構成しているといえる。

ス 上記エの段落【0021】の「発光素子30A?30Cは、例えば、青色や赤色に発光するLEDからなり、ユーザが操作すべき或いは操作することが好ましい車載機器のスイッチ等の操作部材をユーザに案内するためのものである。」という記載、カの段落【0038】の「ユーザ及び車両状態について同一の状況が生じた場合に、記憶された操作パターンに従って、案内対象操作部材を決定する。」という記載、並びに上記ケ、サ及びシから、各種のスイッチやセンサなどから通信手段を介して取得した信号から制御装置10において車両状態を検出し、その検出した車両状態の情報に基づいて、メモリ等に記憶されたデータベースを参照して、ユーザが操作すべき或いは操作することが好ましい車載機器のスイッチ等の操作部材を決定することが分かる。

セ 上記エの段落【0020】の「制御装置10には、発光素子30A?30Cを発光駆動するための駆動回路20A?20Cが接続されている。制御装置10は、発光させるべき発光素子30A?30Cに対応する駆動回路20A?20Cに駆動信号を出力することにより、所望の発光素子30A?30Cを発光させることができる。」及び段落【0021】の「発光素子30A?30Cは、例えば、青色や赤色に発光するLEDからなり、ユーザが操作すべき或いは操作することが好ましい車載機器のスイッチ等の操作部材をユーザに案内するためのものである。」という記載から、制御装置10で決定されたユーザが操作すべき或いは操作することが好ましい車載機器のスイッチ等の操作部材を、駆動回路20A?20C及び発光素子30A?30Cにより照明することが分かる。

ソ 上記エの段落【0017】の「制御装置は、車両の状態を検出するために、各種のスイッチやセンサなどからの信号を、直接もしくは、図示しない他の制御装置との通信によって取得する。この制御装置10に信号を入力するスイッチやセンサとしては、基本的に車室内外において、ユーザが操作する操作部材の操作状態を検出する全てのスイッチやセンサが対象となりえる他、車両のエンジンが始動された状態であるか否かを検出するエンジン回転センサや、車両の走行速度を検出する走行速度センサ、さらに車載ナビゲーション装置から取得可能な車両の走行位置や走行道路データも対象となる。」という記載及び段落【0018】の「これらのスイッチやセンサの具体例をいくつか挙げると、例えば、車両のエンジンをオンオフするエンジンスイッチ、シートベルトの装着を検出するセンサ、サイドブレーキの操作状態を検出するスイッチ、トランスミッションのシフト位置を検出するセンサ、ドアの開閉を検出するセンサ、車両ドアのロック、アンロックを検出するセンサ、ヘッドライト等の点灯状態を検出するセンサ、車両にナビゲーション装置が装備されている場合には、そのナビゲーション装置の操作スイッチ、車両がいわゆるオートクルーズを装備している場合にはその操作スイッチなどがある。」という記載から、「他の制御装置」により制御される車載機器として、例えばシートベルト、サイドブレーキ等の安全系の車載機器、ドアの開閉、車両ドアのロック等のボディ系の車載機器が対応することが分かる。

タ 上記エの段落【0019】の「制御装置10は、これらのスイッチやセンサからの信号を取り込んで、それらの信号に基づいて車両状態を検出する。例えば、エンジンが停止している状態で、ドアがアンロックされたとき、ユーザが車両に乗車する乗車状態であることを検出したり、車両が所定速度以上で走行している場合や、高速道路を走行している場合には、車両は高速走行状態であることを検出したり、車両が停止して、サイドブレーキがかけられたり、エンジンが停止され、その後、ドアが開かれたときには、ユーザが車両から降車する降車状態であることを検出したりする。」という記載から、「車両状態」には、「ユーザが車両に乗車する乗車状態であること」、「車両は高速走行状態であること」、「ユーザが車両から降車する降車状態であること」等が含まれることが分かる。

チ 上記サに記載したように、車両状態を判定するにあたり、各種のスイッチやセンサなどからの信号と、制御装置10のメモリ等に記憶されたデータベースとを対照し、センサなどからの信号とメモリ等に記憶された信号の一致するところを抽出して、現在の車両状態が例えば「ユーザが車両に乗車する乗車状態である」、「車両は高速走行状態である」、「ユーザが車両から降車する降車状態である」と判断(引用文献1の用語では「検出」)することは当業者にとって自明である。

(2)引用発明
上記(1)の記載及び図面の記載を総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

〔引用発明〕
「車両に設けられ、該車両を運転するユーザに報知する車載機器操作案内装置であって、
複数の車載機器のそれぞれと接続された通信手段と、
予め想定される車両状態ごとに、前記複数の車載機器のそれぞれの状態に基づく信号が関連付けられてデータベースとして記憶されているメモリ等と、
前記複数の車載機器の信号と、前記メモリ等に記憶されている前記信号と、に基づいて、前記車両状態を検出する制御装置10と、
前記通信手段を介して、前記複数の車載機器のうち、前記制御装置10で検出された前記車両状態に関連する車載機器の状態の情報を取得する制御装置10と、
前記制御装置10で取得された前記関連する車載機器の状態の情報に基づいて、前記ユーザが操作すべき或いは操作することが好ましい操作部材を決定する制御装置10と、
前記制御装置10で決定された案内対象操作部材を照明してユーザに案内する駆動回路20Aないし20C及び発光素子30A?30Cと、
を備え、
前記複数の車載機器は、
他の制御装置及び他の制御装置により制御される車載機器、が対応するものであり、
前記車両状態は、
ユーザが車両に乗車する乗車状態であること、車両は高速走行状態であること、ユーザが車両から降車する降車状態であること、が含まれるものであり、
前記制御装置10は、
前記複数の車載機器のうち少なくとも1つの車載機器の信号と、前記メモリに記憶された信号と、が一致した場合、前記車両状態のうち、一致した信号に対応する車両状態を、検出された前記車両状態として選択する車載機器操作案内装置。」

2 引用文献2
(1)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2(特開昭56-149232号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は、当審で付した。

ア 「本発明は自動車の電子警報装置に関するものである。
従来,自動車にはドアの半閉状態の確認,ライチングスイツチの消し忘れの防止,シートベルトの着装の確認,あるいはルームランプの消し忘れの防止等をインストルメントパネルやルーフパネルに設けたインジケータに赤ランプで表示するなどして人間に警報を発するようにしているが,この従来装置では,逐一人間がインジケータを視認する必要があるため,それだけチエツク動作が煩瑣になる不具合があった。
本発明は,上記従来装置の欠点に鑑みなされたものであって,車体の各部に設けられシフトレバ,ライチングスイツチ,あるいはドアなどの作動状態をチエツクするセンサ,同センサの出力端子側に接続され上記センサの出力信号を重要度に応じて優先順位を設定する回路と同回路の出力信号に応じて警報音を選択する回路とを内蔵したマイクロコンピユータ,同マイクロコンピユータの出力端子側に設けられ上記警報音選択回路より出力された信号に応じて警報音を発生する回路,および同警報音発生回路の出力信号によつて作動する発音体を具えてなることを特徴とする自動車の電子警報装置を要旨とするものである。
本発明では,重要度の高いセンサの出力信号を優先的にマイクロコンピユータから出力して,それを警報音発生回路へ入力させることによつて,一個の発音体から警報音を発するようにしたため,ドライバーは聴覚で知覚するだけで容易に車両の状態をチエツクできる作用効果を有する。」(第1ページ左下欄第17行ないし第2ページ左上欄第8行)

イ 「(VI) 第11図に示すライチングモニタ機能6は,ライチングスイツチがONの時にイグニシヨンキーを抜くと,その信号がマイクロコンピユータ12に入力され,メロデイ・アラーム音発生回路15が作動し,スピーカ25からコロコロ音を鳴らす。
(VII) 第12図に示すキー抜き忘れモニタ機能7は,イグニシヨンキーを抜かずに運転席のドアを開くと,その信号がマイクロコンピユータ12に入力され,メロデイ・アラーム音発生回路15が作動し,スピーカ25からピンポン音を鳴らすように構成されて作動する。
(VIII) パーキングポジシヨンアラーム機能8は第13図に示すように,シフトレバーをパーキングポジシヨンに入れずに,運転席のドアを開くと,その信号がマイクロコンピユータに入力され,メロデイ・アラーム音発生回路が作動し,スピーカ25からピンポン音を鳴らす。」(第4ページ左上欄第16行ないし右上欄第14行)

ウ 上記イ及び第11図の記載から、車両の周辺の状況(イグニシヨンキーが抜かれた停車状態)に関連する車載機器(ライチングスイツチ)の状態の情報を取得し、該状態(該スイツチがONである状態)の情報に基づいて、運転者に推奨される推奨動作(該スイツチをOFFする動作)の報知情報(コロコロ音ON)を生成することが分かる。
また、上記イ及び第13図の記載から、車両の周辺の状況(シフトレバーがP位置以外である停車状態)に関連する車載機器(運転席ドア)の状態の情報を取得し、該状態(該運転席ドアが開である状態)の情報に基づいて、運転者に推奨される推奨動作(該運転席ドアを閉める動作)の報知情報(ピンポン音ON)を生成することが分かる。
そうすると、引用文献2には、報知装置において、車両の周辺の状況に関連する車載機器の状態の情報を取得し、該状態の情報に基づいて、運転車に推奨される推奨動作の報知情報を生成する技術が記載されているといえる。

(2)引用文献2記載の技術
上記(1)の記載及び図面の記載を総合すると、引用文献2には次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されていると認める。

〔引用文献2記載の技術〕
「報知装置において、車両の周辺の状況に関連する車載機器の状態の情報を取得し、該状態の情報に基づいて、運転車に推奨される推奨動作の報知情報を生成する技術。」

3 引用文献3
(1)引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3(特開2004-350137号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は、当審で付した。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に配線された通信線を介して、車両に搭載された複数の電気的装置間でデータ通信を行う車両用通信システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の車両、特に自動車においては電子制御化が進んでおり、連携動作若しくはデータの共有が必要な車両用電子制御装置(ECU)については、各装置間でデータを送受信できるように、各装置内にデータ通信用の回路を組み込み、これらを通信線で接続して、所謂車載ネットワーク(車載LAN)を構築している。
【0003】
ところで、現在の車載ネットワークにおいては、ネットワークの異常等を想定して、電子制御系の他、バックアップ用の機械制御系を設けている。しかしながら、今後更に電子制御化が進むと、バックアップ用としての機械制御系を設けることができなくなる。したがって、今後の車載ネットワークにおいては、車両の安全を確保するために、通信の信頼性を向上させることが必要になる。
【0004】
しかしながら、車載ネットワークでは、通信線が断線・短絡した場合には勿論のこと、ネットワーク内にノイズが侵入した際にも、データ通信が正常に行えなくなるといった問題がある。
特許文献1記載の多重伝送装置では、このような問題を解決するために、通信線を2系統用意し、ネットワークを構成している装置の内、重要な装置には、全ての装置に接続された第一の通信線を介して通信を行う常用の通信回路と、重要な装置にのみ接続された第二の通信線を介して通信を行う予備の通信回路とを設け、第一の通信線若しくは常用の通信回路に異常があると、その状態を監視する監視装置により、通信回路を予備の通信回路に切り替えるようにしている。
【0005】
【特許文献1】
特開平5-3483号公報」

イ 「【0023】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例について図面とともに説明する。尚、図1は、本発明が適用された車両用通信システム1の構成を表す説明図である。
本実施例の車両用通信システム1は、エンジンECU11、VSC・ECU12、ACC・ECU13、ECT・ECU14、周辺監視ECU15、FWD・ECU16等をネットワーク専用の通信線LN1を介して接続してなる制御系ネットワーク10と、ナビゲーションECU21、オーディオECU22、電話ECU23等をネットワーク専用の通信線LN2を介して接続してなる情報系(AVC系)ネットワーク20と、盗難防止ECU31、エアコンECU32、ワイパECU33、ランプECU34、ドアECU35、メータECU36等をネットワーク専用の通信線LN3を介して接続してなるボデー系ネットワーク30と、を備える。
【0024】
制御系ネットワーク10を構成するエンジンECU11は、エンジンを制御するエンジン制御装置であり、ECT・ECU14は、自動変速機の変速制御を行う変速制御装置であり、これらは所謂パワートレイン系の制御装置である。また、VSC・ECU12は、車両の姿勢制御及び制動制御を行う制御装置であり、ACC・ECU13は、車両を先行車両に追従させる制御を行う走行制御装置である。その他、FWD・ECU16は、前後輪の駆動力配分をコントロールするための制御装置であり、周辺監視ECU15は、車両周囲の状態を検出する各種センサを備え、そのセンサによる検出結果を上記各ECUに送信するものである。
【0025】
また、AVC系ネットワーク20を構成するナビゲーションECU21は、ナビゲーション装置を制御するECUであり、オーディオECU22は、車両に搭載されたラジオやCDドライブ等のオーディオ機器を統括制御するECUであり、電話ECU23は、車両に搭載された電話を制御するECUである。
【0026】
その他、ボデー系ネットワーク30を構成するメータECU36は、車速、エンジン回転数、ドアの開閉状態、変速機のシフトレンジ等、車両の各種状態を運転席前方に設けられた表示装置37に表示するためのものであり、盗難防止ECU31は、車両状態を監視して、悪意の者が車両内に侵入したり、車両内の機器を盗もうとしている場合に、警報を鳴らしたり、外部センタに緊急通報するためのECUである。
【0027】
また、エアコンECU32は、車両に搭載された空調装置(エアコン)を制御して車室内の温度を最適に制御するためのものであり、ワイパECU33は、ワイパを制御するためのECUであり、ランプECU34は、ヘッドランプや方向指示器などの点灯制御を行うECUであり、ドアECU35は、ドアのロック・アンロックを行うECUである。
【0028】
その他、各ネットワーク10,20,30の通信線LN1,LN2,LN3には、ドライバエージェントECU40が接続されている。尚、車両に搭載された上述の各ECUは、マイクロコンピュータを中心として構成された電子制御装置であり、本発明の電気的装置に相当する。特に、制御系ネットワーク10内の各ECU11?16、及び、ボデー系ネットワーク30内の各ECU31?35は、第一の電気的装置に相当し、以下これらのECUを、まとめて車両制御系ECUと称する。また、メータECU36及びドライバエージェントECU40は、第二の電気的装置に相当し、以下これらのECUを、まとめて報知系ECUと称する。
【0029】
ドライバエージェントECU40は、上記各ネットワーク10,20,30間で共有すべきデータを中継する所謂ゲートウェイ装置としての機能を有し、車両の運転席近傍に設けられた表示操作部41や音声認識合成部42を介して運転者による操作指令或いは音声指令が入力されると、その指令内容を表すデータを、車両乗員の操作情報として、上記各ネットワーク10,20,30を介し所定のECUに送信する。
【0030】
また、ドライバエージェントECU40は、上記各ネットワーク10,20,30に接続されたECUから運転者に各種案内を行うための表示データ、音声データ、或いは警報データが送信されてくると、そのデータに従い、表示操作部41にメッセージを表示したり、音声認識合成部42から各種案内用の合成音声を発生させたり、或いは、警報部43から警報音を発生させる。
【0031】
ところで、上記各ECUは、車両に配線された電源線LEを介して、車載電源であるバッテリ50から電源供給を受けて動作するが、本実施例における各ECUは、この電源線LEを通信線として利用し、各ネットワーク10,20,30で伝送される各種データの内、重要データについては、通信線LN1,LN2,LN3及び電源線LEを使って同一データを多重に送受信する。」

(2)引用文献3記載の技術
上記(1)の記載及び図面の記載を総合すると、引用文献3には次の技術(以下、「引用文献3記載の技術」という。)が記載されていると認める。

〔引用文献3記載の技術〕
「車両において、複数の車載機器のそれぞれを通信ネットワークにより接続する技術。」

4 引用文献4
(1)引用文献4の記載
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献4(実願昭58-13152号(実開昭59-118616号)のマイクロフィルム)には、図面とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は、当審で付した。

ア 「第1図は、この考案の一実施例を示す図である。
まず構成を説明すると、フユーズF、ワイパスイツチSW_(1)およびワイパモータMの直列回路が電源P,N間に接続されている。
ワイパスイツチSW_(1)の負荷側と電源N間にタイマTが接続されている。
さらに、ワイパスイツチSW_(1)の負荷側と電源N間に、タイマTの接点Ta、テープスイツチSW_(2)および警報器Aの直列回路が接続されている。
テープスイツチSW_(2)は、第2図に示すようにクオータウインドウ1の窓枠1Aに装着されたウエザストリツプ1Bに装着されており、屈伸リンクからなるロツク装置1Cをロツク位置(図示せず)に操作した時、クオータウインドウ1との圧接、すなわちクオータウインドウ1の閉状態によつてオフとなり、クオータウインドウ1の開状態、すなわち閉め忘れの状態でオンとなるスイツチである。
なお、第2図において1Dはヒンジである。
タイマTは、クオータウインドウ1が開状態であり、雨が降つていなくても短時間ワイパを動作させる場合例えばフロントガラスの清掃の場合警報器Aを動作させないためのものである。
警報器Aとして、パイロツトランプ,ブザーを単独に使用してもよいし、または両者を併用してもよい。パイロツトランプはインストルメントパネルに配置される。
次に作用を説明する。
雨がフロントガラスに当つた場合、ワイパスイツチSW_(1)をオンにすると、ワイパモータMが回転し、ワイパは動作するとともにタイマTが始動する。一定時限例えば10秒後、タイマTの接点Taがメイクし、クオータウインドウ1が開状態であるとテープスイツチSW_(2)がオンしているので、警報器Aは動作する。これにより運転者はクオータウインドウ1が開いていることを知ることができる。運転者がクオータウインドウ1を閉めると、テープスイツチSW_(2)はオフとなるので警報器Aは停止する。
ワイパスイツチSW_(1)をオンにしても、クオータウインドウ1が閉じていると、テープスイツチSW_(2)はオフであるので警報器Aは動作しない。
以上説明してきたように、この考案は、ワイパスイツチのオンによってタイマを始動し、一定時限後、クオータウインドウの開閉状態を検出するテープスイツチのオンを条件に警報器を動作せしめることによって、降雨中クオータウインドウが開いたまゝで、車両が走行することを防止することができるという効果が得られる。」(第2ページ第18行ないし第5ページ第8行)

イ 上記アから、引用文献4には、ワイパーの動作情報に関連するクオータウインドウ1の開閉状態をテープスイツチSW_(2)により取得し、該情報に基づいて、クオータウインドウ1を閉める動作を推奨するために警報機Aを動作させる情報を生成することが記載されている。すなわち、車両の外部環境に関連する車載機器の状態の情報を取得し、該情報に基づいて、運転者に推奨される推奨動作の報知情報を生成する技術が記載されているといえる。

(2)引用文献4記載の技術
上記(1)の記載及び図面の記載を総合すると、引用文献4には次の技術(以下、「引用文献4記載の技術」という。)が記載されていると認める。

〔引用文献4記載の技術〕
「車両の外部環境に関連する車載機器の状態の情報を取得し、該情報に基づいて、運転者に推奨される推奨動作の報知情報を生成する技術。」

第5 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「ユーザ」は、その機能、構造、又は技術的意義からみて、本願発明における「運転者」に相当し、以下同様に、「メモリ等」は「記憶部」に、「検出する」は「推定する」に、「制御装置10」は「状況判定部」、「情報取得部」及び「情報生成部」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「信号」は、信号変化及び信号の変化パターンを含むものであるから、本願発明における「信号変化」及び「信号の変化パターン」に相当する。
また、引用発明における「メモリ等に記憶された信号」は、本願発明における「記憶部に記憶されている前記信号の変化パターン」及び「前記信号の変化パターン」に相当する。
また、引用発明における「車載機器操作案内装置」は、操作すべき車載機器を光と音により報知するものである(上記第4の1(1)クを参照)から、本願発明における「報知装置」に相当する。
また、引用発明における「他の制御装置及び他の制御装置により制御される機器」は、その技術的意義からみて、本願発明における「ステアリング系ECU及び該ステアリング系ECUにより制御される機器、ボディ系ECU及び該ボディ系ECUにより制御される機器、又は安全系ECU及び該安全系ECUにより制御される機器」に相当する。
また、引用発明における「制御装置10で決定された案内対象操作部材を照明してユーザに案内する」ことは、その技術的意義からみて、本願発明における「情報生成部で生成された前記推奨動作の報知情報を前記運転者に提示する」ことに相当し、引用発明における「駆動回路20Aないし20C及び発光素子30A?30C」は、本願発明における「情報提示部」に相当する。
また、引用発明における「ユーザが操作すべき或いは操作することが好ましい操作部材を決定する制御装置10」は、「ユーザが操作すべき或いは操作することが好ましい操作部材」に関する情報を生成していると認められるから、「運転者に推奨される推奨動作に関する情報を生成する情報生成部」という限りにおいて、本願発明における「運転者に推奨される推奨動作の報知情報を生成する情報生成部」に一致する。
また、引用発明における「ユーザが車両に乗車する乗車状態であること、車両は高速走行状態であること、ユーザが車両から降車する降車状態であること」は、その技術的意義からみて、本願発明における「車両の外部環境に関するもの又は前記車両の動作に関するもの」に相当する。
そして、本願発明における「車両の周辺の状況」は、「車両の外部環境に関するもの又は前記車両の動作に関するものが含まれるもの」であり、引用発明における「車両状態」は、「ユーザが車両に乗車する乗車状態であること、車両は高速走行状態であること、ユーザが車両から降車する降車状態であることが含まれるもの」であって、車両の外部環境に関するもの又は前記車両の動作に関するものが含まれるから、引用発明における「車両状態」は、その技術的意義からみて、本願発明における「車両の周辺の状況」に相当する。
また、引用発明における「通信手段」は、「通信手段」という限りにおいて本願発明における「通信ネットワーク」と一致する。
また、引用発明における「関連付けてデータベースとして記憶されている」ことは、「関連付けてデータベースとして記憶されている」という限りにおいて、本願発明における「関連付けて行動モデルデータベースとして記憶されている」と一致する。

以上のことから、本願発明と引用発明とは、
「車両に設けられ、該車両を運転する運転者に報知する報知装置であって、
複数の車載機器のそれぞれと接続された通信手段と、
予め想定される前記車両の周辺の状況ごとに、前記複数の車載機器のそれぞれの状態に基づく信号の変化パターンが関連付けてデータベースとして記憶されている記憶部と、
前記複数の車載機器の信号変化と、前記記憶部に記憶されている前記信号の変化パターンと、に基づいて、前記車両の周辺の状況を推定する状況判定部と、
前記通信手段を介して、前記複数の車載機器のうち、前記状況判定部で推定された前記車両の周辺の状況に関連する車載機器の状態の情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部で取得された前記関連する車載機器の状態の情報に基づいて、前記運転者に推奨される推奨動作に関する情報を生成する情報生成部と、
前記情報生成部で生成された前記推奨動作に関する情報を前記運転者に提示する情報提示部と、
を備え、
前記複数の車載機器は、
ステアリング系ECU及び該ステアリング系ECUにより制御される機器、ボディ系ECU及び該ボディ系ECUにより制御される機器、又は安全系ECU及び該安全系ECUにより制御される機器、が対応するものであり、
前記車両の周辺の状況は、
前記車両の外部環境に関するもの又は前記車両の動作に関するものが含まれるものであり、
前記状況判定部は、
前記複数の車載機器のうち少なくとも1つの車載機器の信号変化と、前記信号の変化パターンと、が一致した場合、前記車両の周辺の状況のうち、一致した信号の変化パターンに対応する車両の周辺の状況を、推定された前記車両の周辺の状況として選択する報知装置。」
という点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。

〔相違点1〕
本願発明は、複数の車載機器のそれぞれと接続された「通信ネットワーク」を備えるのに対し、引用発明は、複数の車載機器のそれぞれと接続された「通信手段」を備える点。

〔相違点2〕
本願発明においては、予め想定される前記車両の周辺の状況ごとに、前記複数の車載機器のそれぞれの状態に基づく信号の変化パターンが関連付けて「行動モデルデータベース」として記憶されているのに対し、引用発明においては、予め想定される車両状態ごとに、前記複数の車載機器のそれぞれの状態に基づく信号が関連付けてデータベースとして記憶されている点。

〔相違点3〕
本願発明においては、前記情報取得部で取得された前記関連する車載機器の状態の情報に基づいて、前記運転者に推奨される推奨動作の「報知情報」を生成するのに対し、引用発明においては、前記制御装置で取得された前記関連する車載機器の状態の情報に基づいて、前記ユーザが操作すべき或いは操作することが好ましい操作部材を決定する点。

上記相違点について判断する。
(1)相違点1について
車両制御の技術分野において、通信手段として、複数の車載機器のそれぞれと接続された「通信ネットワーク」を用いる技術は、本願出願前に周知の技術(以下、「周知技術」という。例えば、上記「引用文献3記載の技術」を参照。)である
してみれば、引用発明において、周知技術を適用することにより、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到できたことである。

(2)相違点2について
引用発明において、メモリ等には、予め想定される車両状態ごとに、前記複数の車載機器のそれぞれの状態に基づく信号が関連付けて記憶されていることから、データベースを構成しているといえる(上記第4の1(1)サを参照。)。また、その記憶内容は、車両を運転するユーザの行動を操作パターンとして記憶しているものであるから、ユーザの行動をモデル化したデータベースすなわち行動モデルデータベースであるといえる(上記第4の1(1)シを参照。)。
そうすると、上記相違点2は、実質的な相違点ではない。

なお、車両の制御装置において、行動モデルデータベースを用いることは、本願出願前に周知の技術(例えば、特開2009-245149号公報の段落【0022】ないし【0025】等の記載を参照。)でもある。

(3)相違点3について
引用発明は、ユーザが操作すべき或いは操作することが好ましい操作部材を決定するものであり(上記第4の1(1)スを参照。)、その決定に基づいて、ユーザに操作部材を光と音により報知するものである(上記第4の1(1)クを参照。)から、引用発明においても、該操作部材に関する「報知情報」を生成することが推認できる。
また、引用文献2には、「報知装置において、車両の周辺の状況に関連する車載機器の状態の情報を取得し、該状態の情報に基づいて、運転車に推奨される推奨動作の報知情報を生成する技術。」(上記「引用文献2記載の技術」)が記載されている。

してみれば、引用発明において、ユーザが操作すべき操作部材を決定し、その決定に基づいて、ユーザに操作部材を光と音により報知する際に、引用文献2記載の技術を適用することにより、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到できたことである。

なお、情報取得部で取得された関連する車載機器の状態の情報に基づいて、運転者に推奨される推奨動作の「報知情報」を生成することは、本願出願前に周知の技術(例えば、上記「引用文献4記載の技術」を参照。)でもある。

そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
 
審理終結日 2018-10-23 
結審通知日 2018-10-30 
審決日 2018-11-12 
出願番号 特願2015-125306(P2015-125306)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 櫻田 正紀  
特許庁審判長 水野 治彦
特許庁審判官 金澤 俊郎
粟倉 裕二
発明の名称 報知装置  
代理人 中村 信雄  

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