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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1347403
審判番号 不服2018-1815  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-08 
確定日 2018-12-27 
事件の表示 特願2013-202341号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月13日出願公開、特開2015- 66114号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年9月27日の出願であって、平成29年5月11日付けで拒絶の理由が通知され、平成29年7月7日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成29年11月29日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成30年2月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成30年2月8日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.本件補正について(補正の内容)
本件補正は特許請求の範囲の請求項1を補正する内容を含んでおり、平成29年7月7日付けの手続補正と本件補正の特許請求の範囲の請求項1の記載はそれぞれ、以下のとおりである(下線部は、補正箇所を示す。)。

(補正前:平成29年7月7日付け手続補正)

「【請求項1】
遊技球の流動を案内する流路が形成され、端面に前記流路の開口部が形成された球流路ユニットと、
遊技球流動方向の上流及び下流の関係となるように、前記端面及び前記開口部が対峙することで相互の流路を連通させる複数の球流路ユニットについて、前記相互に隣り合う2個の前記球流路ユニットの前記対峙する端面同士を係合する係合手段と、
前記係合手段で係合される、一方の球流路ユニットに対して、他方の球流路ユニットを、少なくともそれぞれの前記流路の開口部同士の対峙関係を維持し、かつ接近離間する第1の方向へ、所定の移動ストローク長の範囲で移動するように案内することで、前記係合手段による係合位置、係合解除位置とされ、前記係合解除位置では、前記第1の方向とは交差する第2の方向へ移動可能とされる案内手段とを有し、
前記他方の球流路ユニットが、前記案内手段により前記係合解除位置とされている場合に、前記開口部同士の隙間寸法が、少なくとも遊技球の直径以上となるように、前記移動ストローク長を設定したことを特徴とする遊技機。」

(補正後:本件補正である平成30年2月8日付け手続補正)

「【請求項1】
遊技球の流動を案内する流路が形成され、端面に前記流路の開口部が形成された複数の球流路ユニットと、
遊技球流動方向の上流及び下流の関係となるように、前記端面及び前記開口部対峙することで相互の流路を連通させる複数の球流路ユニットについて、相互に隣り合う2個の前記球流路ユニットの前記対峙する端面同士を係合する係合手段と、
前記係合手段で係合される、一方の球流路ユニットに対して、他方の球流路ユニットを、少なくともそれぞれの前記流路の開口部同士の対峙関係を維持し、かつ接近離間する第1の方向へ、所定の移動ストローク長の範囲で移動するように案内することで、前記係合手段による係合位置、係合解除位置とされ、前記係合解除位置では、前記第1の方向とは交差する第2の方向へ移動可能とされる案内手段とを有し、
前記他方の球流路ユニットが、前記案内手段により前記係合解除位置とされている場合に、前記開口部同士の隙間寸法が、少なくとも遊技球の直径以上となるように、前記移動ストローク長を設定すると共に、
相互に係合される2個の前記球流路ユニットにおいて、対峙するそれぞれの端面には、前記第2の方向への移動を妨げないように、相互に凹凸の関係となる段差部が形成され、
前記段差部の凹凸間の遊技球直径以下の移動ストローク長分の離間によって、前記第2の方向へ移動中に対向する前記開口部同士の隙間寸法が遊技球の直径以上とされることを特徴とする遊技機。」

2.補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項に関して、次の補正内容を含むものである。
(1)補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「球流路ユニット」について、補正前の「球流路ユニット」から、補正後の「複数の球流路ユニット」と、特定することにより、補正前の請求項1に記載された「球流路ユニット」を限定すること。
(2)補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「2個の」「球流路ユニット」について、補正前の請求項3に記載された発明特定事項を付加することにより、補正後の請求項1に記載された「相互に係合される2個の前記球流路ユニットにおいて、対峙するそれぞれの端面には、前記第2の方向への移動を妨げないように、相互に凹凸の関係となる段差部が形成され、前記段差部の凹凸間の遊技球直径以下の移動ストローク長分の離間によって、前記第2の方向へ移動中に対向する前記開口部同士の隙間寸法が遊技球の直径以上とされる」点を限定すること。
そして、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正は、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、について以下において検討する。

(1)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記1.の本件補正の概要において示した次に特定されるとおりのものである(A?Gについては、発明特定事項を分説するため当審で付した。)。

「A 遊技球の流動を案内する流路が形成され、端面に前記流路の開口部が形成された複数の球流路ユニットと、
B 遊技球流動方向の上流及び下流の関係となるように、前記端面及び前記開口部対峙することで相互の流路を連通させる複数の球流路ユニットについて、相互に隣り合う2個の前記球流路ユニットの前記対峙する端面同士を係合する係合手段と、
C 前記係合手段で係合される、一方の球流路ユニットに対して、他方の球流路ユニットを、少なくともそれぞれの前記流路の開口部同士の対峙関係を維持し、かつ接近離間する第1の方向へ、所定の移動ストローク長の範囲で移動するように案内することで、前記係合手段による係合位置、係合解除位置とされ、前記係合解除位置では、前記第1の方向とは交差する第2の方向へ移動可能とされる案内手段とを有し、
D 前記他方の球流路ユニットが、前記案内手段により前記係合解除位置とされている場合に、前記開口部同士の隙間寸法が、少なくとも遊技球の直径以上となるように、前記移動ストローク長を設定すると共に、
E 相互に係合される2個の前記球流路ユニットにおいて、対峙するそれぞれの端面には、前記第2の方向への移動を妨げないように、相互に凹凸の関係となる段差部が形成され、
F 前記段差部の凹凸間の遊技球直径以下の移動ストローク長分の離間によって、前記第2の方向へ移動中に対向する前記開口部同士の隙間寸法が遊技球の直径以上とされる
G ことを特徴とする遊技機。」

(2)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された引用文献である、特開2003?265794号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)「【0015】
【発明の実施の形態】以下、実施形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。図1は本発明に係るパチンコ機Pの背面図、図2はパチンコ機Pにおける球払出部Rの全体図、図3は球払出装置Aの全体斜視図、図4は同じく正面図、図5は球払出装置Aを分離させた状態の球払出部Rの正面図、図6は図4のX-X線断面図、図7は球払出装置Aの手前側のケース本体18aと中間板19とを外した状態の斜視図、図8は球払出装置Aにおける球Bの送出経路を示す斜視図である。最初に、球払出部Rの全体構成について説明する。図1ないし図3に示されるように、このパチンコ機P(CR機)を構成する遊技盤1の背面部には、球払出部Rが配設されている。この球払出部Rは、その上部(上流側)から下部(下流側)に向けて、球タンク2、タンクレール3、上側払出樋4、球払出装置A及び下側払出樋5が、この順序で連通して配設された構成である。そして、タンクレール3及び上側払出樋4の内部で球Bが流れる部分は、前後方向(球払出装置Aの取外し方向Q)に二分されていて、それぞれ2条(即ち、2列状態)の球通路3a,3b,4a,4bが形成されている。前記球タンク2に貯留された多数の球Bは、タンクレール3内に形成された2条の各球通路3a,3bにそれぞれ案内された後、上側払出樋4の各球通路4a,4bにそれぞれ流入して球払出装置Aに供給される。なお、背面視におけるパチンコ機Pの手前側に配置される部材には添字「a」を付すと共に、その奥側に配置される部材には添字「b」を付すことによって区別する。」

(イ)「【0017】次に、図4ないし図8を参照しながら、球払出装置Aについて説明する。この球払出装置Aを構成する装置ケースCは、手前側及び奥側に配置される一対のケース本体18a,18bと、両者の間に挟持される中間板19とから構成されている。そして、各ケース本体18a,18bの内部に形成された回転送出体収納室21には、回転送出体22が支持軸23により回転可能に支承されている。この回転送出体22は、球切り歯車24と、該球切り歯車24の両側面部に、周方向に位相をずらして重なった状態で取付けられた一対の球供給体25a,25bとから成る。各球供給体25a,25bはスプロケット状であり、複数個(本実施形態では6個)の球受け部(球Bを挟み込んで送出させる部分)が周方向に等間隔で設けられている。そして、本実施形態の場合、一対の球供給体25a,25bにおける位相のずれ角度は、30°(半ピッチ分)である。
【0018】また、前記回転送出体22の下方には、該回転送出体22から落下する球Bを、それぞれ計数するための各検出器26a,26bが配設されている。これらの検出器26a,26bは、それぞれ近接スイッチ等から成り、一対のケース本体18a,18bに設けられた各突条27a,27bに挟み込まれた状態で保持されている。」

(ウ)「【0020】一対のケース本体18a,18bにおいて、回転送出体22の側方部分には、上側払出樋4の各球通路4a,4bに対向する各第1球誘導路33a,33bが、高さ方向に沿って設けられている。各第1球誘導路33a,33bは、横断面視において方形状である。また、一対のケース本体18a,18bの外側面部の下部には、各第1球誘導路33a,33bに流入した球Bの送出方向をほぼ直角に曲げて、略水平に送出させるための各球誘導体34a,34bが取付けられている。これらの球誘導体34a,34bの内部には、前記各第1球誘導路33a,33bと連続する断面方形状の各第2球誘導路35a,35bが設けられている、そして、各第2球誘導路35a,35bを通って送出される球Bは、一対のケース本体18a,18bに設けられた各流出孔36a,36bを通って、回転送出体収容室21に入り込み、回転送出体22の両側面部の下部に近接して取付けられた各球受け台37a,37bに載置される。そして、メイン制御装置又は球貸装置(いずれも図示せず)から発せられる信号により、前記回転送出体22が回転し、各球供給体25a,25bの球受け部(球Bを挟み込んで送出させる部分)が、前記各球受け台37a,37bの部分に配置されると、球Bが転動して球受け部に入り込む。球受け部に保持された球Bは、回転送出体22の回転に従って各球受け台37a,37bから離れ、各検出器26a,26bを介して、賞球通路6a,6b又は貸球通路7a,7bに落下される。図6において、賞球通路6a,6bに落下される球Bを実線で示し、貸球通路7a,7bに落下される球Bを二点鎖線で示す。本実施形態の球払出装置Aでは、パチンコ機Pの背面視において、回転送出体22が時計回りに回転することにより、球Bが賞球通路6a,6bに落下されるようになっていて、同じく反時計回りに回転することにより、球Bが貸球通路7a,7bに落下されるようになっている。
【0021】次に、本発明の特徴部分について詳細に説明する。従来の球払出装置A’では、図17及び図18に示されるように、各球誘導路73a,73bの上端面は同一である。これに対して、本発明の球払出装置Aでは、図10に示されるように、一対のケース本体18a,18bの上端部に、手前側から奥側に向かって、同一高さgの各段差38a,38bが設けられている。即ち、中間板19の上端部は、手前側のケース本体18aを構成する前壁部39の上端部よりも、高さgだけ低い位置に設けられていて、奥側のケース本体18bを構成する後壁部41の上端部は、前記中間板19の上端部よりも、高さgだけ低い位置に設けられている。そして、前記前壁部39の内壁面は、上側払出樋4から流入する球Bを確実に案内するために奥側に向かって斜めに切除されていて、当該部分にテーパガイド部39aが形成されている。同様に、奥側の第1球誘導路33bを構成する後壁部41の上端部の内壁面は、手前側に向かって斜めに切除されていて、当該部分にテーパガイド部41aが形成されている。また、第1球誘導路33a,33b を二分している中間板19の上端部は、手前側と奥側に向かって斜めに切除されていて、当該部分に各テーパガイド部19a,19bが形成されている。そして、装置ケースCの上方に対向配置される上側払出樋4の手前側の下端部は、手前側のケース本体18aの段差38aに対応して切除されている。こうすることにより、一対のケース本体18a,18bと上側払出樋4との接続部分には、同一高さh1の隙間V1が形成される。このように、本実施形態の球払出装置Aは、上側払出樋4の下端部と、一対のケース本体18a,18bの上端部が、球払出装置Aの側面視において階段状となっているため、球払出装置A内に球Bが入り込んだ状態で該球払出装置Aを取り外さなければならないときでも、球Bが引っ掛かりにくいという利点がある(後述)。
【0022】更に、本実施形態の球払出装置Aは、図5に示されるように、球払出部Rに装着されたときに、遊技盤1に突出された2本のボス部42のうち、上側のボス部42に、一対のケース本体18a,18bの肩部43が支持されることによって、高さ方向の位置が定められる。そして、上側払出樋4及び下側払出樋5との接続部分に、それぞれ隙間V1,V2が形成される。この球払出装置Aは、手前側のケース本体18a,18bと前記2本のボス部42が、取付ねじ50によって一体に締め込まれることによって固定される。しかも、この状態で、上側払出樋4の各球通路4a,4bと、対応する一対のケース本体18a,18bの各第1球誘導路33a,33bとが連続状態で接続されるため、球Bをスムーズに流出させることができる。なお、球払出部Rにおいて、球払出装置Aが装着される部分には、第2球誘導体34bと奥側の突条27bを入り込ませるための凹部44が設けられている(図6参照)。そして、この凹部44の下側の部分44aに、奥側の突条27bを嵌め込んで、球払出装置Aの高さ方向の位置決めをするようになっている。」

(エ)「【0028】理解を容易にするため、最初に、手前側の第1球誘導路33aについて、複数個の球Bが収容された状態で球払出装置Aを取り外す様子を説明する。図10及び図11に示されるように、球払出装置Aの手前側の第1球誘導路33aに収容されている複数個の球Bのうち、最上端に位置している球(以降、この球を「特定球Ba」と記載する。)と、上側払出樋4の手前側の球通路3aの最下端の球Bとの当接点は、隙間V1の部分に存している。そして、前記特定球Baよりも下方の部分に収容されている複数個の球Bは、高さ方向に不動の状態で配置されている。この場合、前記特定球Baが、上側払出樋4の手前側の下端面45aと引っ掛かる(即ち、球噛みを発生させる)ことはない。このため、作業者は、球払出装置Aを、特定球Baよりも上方に配置されている一連の球Bの重量に抗して、そのまま取外し方向Qに沿って手前側に引き抜くだけで、容易に取り外すことができる(図12及び図13参照)。」

(オ)「【0030】即ち、この状態で、球払出装置Aを取り外すと、球払出装置A内で、特定球Bbよりも下方に配置されている球Bの高さ位置は不動であるため、図12に示されるように、前記特定球Bbはそのまま移動し、該特定球Bbの上縁部が、球通路3bの奥側の下端面45bの周縁部に当接する。しかし、突条27bが凹部44の下側の部分44aから外れるので、特定球Bbと奥側の球通路4bとの重なり部の高さe1より大きく設けられている下側の隙間V2の高さh2(図10参照)の分だけ、該球払出装置Aを僅かに下げてから引き抜くことにより、球払出装置Aをそのまま取り外すことができる。」

(カ)「【0033】なお、本実施形態の球払出装置Aにおいて、後壁部41の上端面41bと、上側払出樋4の奥側の下端面45bとの間の高さjは、球径Dとほぼ同一にすることが望ましい。このときの高さjは、球噛みを発生させることなく、球払出装置Aを取り外すことができる最小量である。こうすることにより、上側払出樋4の各球通路4a,4bからの球Bを、スムーズに流出させることができるという利点を損なうことなく、球噛みを確実に防止させた状態で、しかも、容易に、球払出装置Aを取り外すことができる。」

(キ)図6

図6には、前壁部39、中間板19が、ケース本体18aに形成された第1球誘導路33aを構成する壁面であることが示されている。

(ク)図10

図10には、一対のケース本体18a,18bの上端部に、手前側から奥側に向かって、同一高さgの各段差38a,38bが設けられている(上記(ウ)【0021】参照。図10には「18a」、「18b」、「g」は不図示。)ことが示されている。
また、図10には、球払出装置Aは、球払出部Rに装着されたときに、下側払出樋5との接続部分に、隙間V2が形成されること、隙間V2の高さはh2であることも示されている。

(ケ)図11

図11には、前壁部39、及び、中間板19の上端が面状であること、上側払出樋4の下端面45bに球通路4aの開口部が、中間板19の上端面に第1球誘導路33aの開口部が、それぞれ、形成されていること、上側払出樋4の下端面45bと中間板19の上端面が対峙していること、上側払出樋4の下端面45bの球通路4aの開口部と中間板19の上端面の第1球誘導路33aの開口部が対峙していることが示されている。
また、図11には、上側払出樋4の下端面45aと前壁部39の上端面との間隔と、上側払出樋4の下端面45bと中間板19の上端面との間隔はいずれもh1であること、前壁部39の上端面と中間板19の上端面との段差と、中間板19の上端面と後壁部41の上端面41bとの段差はいずれもgであること、上側払出樋4の下端面45bと中間板19の上端面との間隔h1と、中間板19の上端面と後壁部41の上端面41bとの段差gの和がjであることも示されている。

上記(ア)?(カ)の記載事項、上記(キ)?(ケ)の図示内容から、以下の事項が導かれる。

(a)上記(ア)【0015】には、「上側払出樋4の内部で球Bが流れる部分は、・・・球通路・・・4a・・・が形成されている」と、上記(イ)【0017】には、「球払出装置A・・・は、・・・一対のケース本体18a,18bと、両者の間に挟持される中間板19とから構成されている」と、上記(ウ)【0020】には、「ケース本体18a・・・において、・・・第1球誘導路33a・・・が、・・・設けられている。・・・第1球誘導路33a・・・に流入した球Bの送出・・・させる」と、それぞれ、記載されている。
また、上記(キ)図6には、中間板19が第1球誘導路33aを構成する壁面であることが、上記(ケ)図11には、前壁部39、及び、中間板19の上端が面状であること、上側払出樋4の下端面45bに球通路4aの開口部が、中間板19の上端面に第1球誘導路33aの開口部が、それぞれ、形成されていることが示されている。
よって、引用文献には、内部に球Bが流れる部分であり下端面45bに球通路4aの開口部が形成された上側払出樋4と、流入した球Bを送出し、中間板19の上端面に第1球誘導路33aの開口部が形成されたケース本体18aを備える球払出装置Aが記載されているといえる。

(b)上記(ア)【0015】には、「球払出部Rは、・・・上流側・・・から・・・下流側・・・に向けて、・・・上側払出樋4、球払出装置A・・・が、この順序で連通して配設された構成である」と記載され、上記(イ)【0018】には、「一対のケース本体18a,18bに設けられた・・・突条27a,27b」と記載され、上記(ウ)【0022】には、「球払出装置Aは、・・・球払出部Rに装着された・・・状態で、上側払出樋4の・・・球通路4a・・・と、対応する・・・ケース本体18a・・・の・・・第1球誘導路33a・・・とが連続状態で接続される・・・。なお、球払出部Rにおいて、球払出装置Aが装着される部分には、・・・凹部44が設けられている・・・。そして、この凹部44の下側の部分44aに、奥側の突条27bを嵌め込んで、球払出装置Aの高さ方向の位置決めをするようになっている」と記載されている。
また、上記(ケ)図11には、上側払出樋4の下端面45bと中間板19の上端面が対峙していること、上側払出樋4の下端面45bの球通路4aの開口部と中間板19の上端面の第1球誘導路33aの開口部が対峙していることが示されている。
よって、引用文献には、球払出部Rにおいて、上流側と下流側になるように、上側払出樋4の下端面45bと中間板19の上端面、及び、上側払出樋4の下端面45bの球通路4aの開口部と中間板19の上端面の第1球誘導路33aの開口部が対峙することで、球通路4aと、対応する第1球誘導路33aとを連続状態で接続されて配設された上側払出樋4と球払出装置Aについて、球払出部Rの球払出装置Aが装着される部分に設けられた凹部44の下側部分44aに、一対のケース本体18a,18bに設けられた奥側の突条27bを嵌め込んで、球払出装置Aの高さ方向を位置決めをすることが記載されているといえる。

(c)上記(エ)【0028】には、「球払出装置Aを、・・・取外し方向Qに沿って手前側に引き抜く」と記載され、上記(オ)【0030】には、「球払出装置Aを取り外すと、・・・突条27bが凹部44の下側の部分44aから外れるので、・・・下側の隙間V2の高さh2(図10参照)の分だけ、該球払出装置Aを僅かに下げてから引き抜くことにより、球払出装置Aをそのまま取り外すことができる」と記載されている。
上記(キ)図10より、高さh2である下側の隙間V2は、球払出装置Aの下方に位置しているといえる。
よって、引用文献には、球払出装置Aを、手前側に引き、突条27bを凹部44の下側部分44aから外し、下側の隙間V2の高さh2の分だけ、球払出装置Aを僅かに下げてから引き抜くことにより取り外すことができることが記載されているといえる。

(d)上記(c)より、引用文献には、球払出装置Aを、手前側に引き、突条27bを凹部44の下側部分44aから外し、下側の隙間V2の高さh2の分だけ、球払出装置Aを僅かに下げてから引き抜くことにより取り外すことができることが記載されているといえる。
上記(ケ)図11から、上側払出樋4の下端面45aと前壁部39の上端面との間隔と、上側払出樋4の下端面45bと中間板19の上端面との間隔はいずれもh1であり、前壁部39の上端面と中間板19の上端面との段差と、中間板19の上端面と後壁部41の上端面41bとの段差はいずれもgであり、上側払出樋4の下端面45bと中間板19の上端面との間隔h1と、中間板19の上端面と後壁部41の上端面41bとの段差gの和がjであるから、上側払出樋4の下端面45aと前壁部39の上端面との間隔h1と、前壁部39の上端面と中間板19の上端面との段差gの和もjであり、上側払出樋4の下端面45aと中間板19の上端面の間隔はjであるといえる。
よって、引用文献には、球払出装置Aを取り外すことができるとき、上側払出樋4の下端面45aと中間板19の上端面の間隔がjとされた状態から、球払出装置Aが下側の隙間V2の高さh2の分だけ下げられていることが記載されているといえる。

(e)上記(ウ)【0021】には、「図10に示されるように、一対のケース本体18a,18bの上端部に、手前側から奥側に向かって、同一高さgの各段差38a,38bが設けられている。・・・上方に対向配置される上側払出樋4の手前側の下端部は、手前側のケース本体18aの段差38aに対応して切除されている。・・・上側払出樋4の下端部と、一対のケース本体18a,18bの上端部が、球払出装置Aの側面視において階段状となっている」と記載されている。
よって、引用文献には、上側払出樋4の下端部と、一対のケース本体18a,18bの上端部が、球払出装置Aの側面視において階段状となり、上側払出樋4の手前側の下端部は、手前側のケース本体18aの段差に対応して切除されていることが記載されているといえる。

(f)上記(d)より、引用文献には、球払出装置Aを取り外すことができるとき、上側払出樋4の下端面45aと中間板19の上端面の間隔がjとされた状態から、球払出装置Aが下側の隙間V2の高さh2の分だけ下げられていることが記載されているといえる。
そして、上記(ク)図10より、「隙間V2の高さh2の分」の寸法は、遊技球の直径以下であること、及び、「球払出装置Aが下側の隙間V2の高さh2の分だけ下げられ」た時には、「上側払出樋4の下端面45aと、中間板19の上端面の間隔がjとされた状態から」「隙間V2の高さh2の分だけ」広がると共に、上記(e)の「上側払出樋4の下端部と、一対のケース本体18a,18bの上端部が、球払出装置Aの側面視において階段状となり、上側払出樋4の手前側の下端部は、手前側のケース本体18aの段差に対応して切除されている」「上側払出樋4の下端部と、一対のケース本体18a,18bの上端部」の間の寸法も「隙間V2の高さh2の分だけ」広がることは明らかである。
よって、引用文献には、上側払出樋4の下端部と、一対のケース本体18a,18bの上端部が、球払出装置Aの側面視において階段状となり、上側払出樋4の手前側の下端部は、手前側のケース本体18aの段差に対応して切除されている、上側払出樋4の下端部と、一対のケース本体18a,18bの上端部の間が、遊技球の直径以下である、下側の隙間V2の高さh2の分だけ広がることにより、球払出装置Aを取り外すときの上側払出樋4の下端面45aと中間板19の上端面の間隔が、jとされた状態から、隙間V2の高さh2の分だけ広がっていることが記載されているといえる。

(g)上記(ア)【0015】には、「パチンコ機P」と記載されている。

以上(ア)?(カ)の記載事項、(キ)?(ケ)の図示内容の及び上記(a)?(g)の認定事項を総合すれば、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(a?gは発明の構成を分説するため当審で付した。)。

「a 内部に球Bが流れる部分であり下端面45bに球通路4aの開口部が形成された上側払出樋4と、流入した球Bを送出し、中間板19の上端面に第1球誘導路33aの開口部が形成されたケース本体18aを備える球払出装置Aを有し、

b 球払出部Rにおいて、上流側と下流側になるように、上側払出樋4の下端面45bと中間板19の上端面、及び、上側払出樋4の下端面45bの球通路4aの開口部と中間板19の上端面の第1球誘導路33aの開口部が対峙することで、球通路4aと、対応する第1球誘導路33aとを連続状態で接続されて配設された上側払出樋4と球払出装置Aについて、球払出部Rの球払出装置Aが装着される部分に設けられた凹部44の下側部分44aに、一対のケース本体18a,18bに設けられた奥側の突条27bを嵌め込んで、球払出装置Aの高さ方向を位置決めし、

c 球払出装置Aを、手前側に引き、突条27bを凹部44の下側部分44aから外し、下側の隙間V2の高さh2の分だけ、球払出装置Aを僅かに下げてから引き抜くことにより取り外すことができ、

d 球払出装置Aを取り外すことができるとき、上側払出樋4の下端面45aと中間板19の上端面の間隔がjとされた状態から、球払出装置Aが下側の隙間V2の高さh2の分だけ下げられていており、

e 上側払出樋4の下端部と、一対のケース本体18a,18bの上端部が、球払出装置Aの側面視において階段状となり、上側払出樋4の手前側の下端部は、手前側のケース本体18aの段差に対応して切除され、

f 上側払出樋4の下端部と、一対のケース本体18a,18bの上端部が、球払出装置Aの側面視において階段状となり、上側払出樋4の手前側の下端部は、手前側のケース本体18aの段差に対応して切除されている、上側払出樋4の下端部と、一対のケース本体18a,18bの上端部の間が、遊技球の直径以下である、下側の隙間V2の高さh2の分だけ広がることにより、球払出装置Aを取り外すときの上側払出樋4の下端面45aと中間板19の上端面の間隔が、jとされた状態から、隙間V2の高さh2の分だけ広がっている、

g パチンコ機P。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。なお、見出しは(a)?(g)とし、本願補正発明、引用発明の分説に対応させている。

(a)引用発明の「球通路4a」及び「第1球誘導路33a」は、それぞれ、「内部に球Bが流れる部分」であり、「流入した球Bを送出」するものであるから、本願補正発明の「遊技球の流動を案内する流路」に相当する。
そして、引用発明の「球通路4b」及び「第1球誘導路33b」は、それぞれ、「上側払出樋4」の「下端面45b」及び「ケース本体18aを備える球払出装置A」の「中間板19の上端面」に開口部が形成されているから、引用発明の「上側払出樋4」及び「ケース本体18bを備える球払出装置A」は、いずれも本願補正発明の「端面に前記流路の開口部が形成された」「球流路ユニット」といえる。
よって、引用発明の「内部に球Bが流れる部分であり下端面45bに球通路4aの開口部が形成された上側払出樋4と、流入した球Bを送出し、中間板19の上端面に第1球誘導路33aの開口部が形成されたケース本体18aを備える球払出装置A」は、本願補正発明の「遊技球の流動を案内する流路が形成され、端面に前記流路の開口部が形成された複数の球流路ユニット」に相当する。

(b)引用発明の「上側払出樋4と球払出装置A」は、「上流側と下流側になるように、上側払出樋4の下端面45bと中間板19の上端面、及び、上側払出樋4の下端面45bの球通路4aの開口部と中間板19の上端面の第1球誘導路33aの開口部が対峙することで、球通路4aと、対応する第1球誘導路33aとを連続状態で接続されて配設され」ていることから、本願補正発明の「遊技球流動方向の上流及び下流の関係となるように、前記端面及び前記開口部対峙することで相互の流路を連通させる複数の球流路ユニット」に相当する。
そして、引用発明は、「球払出部Rにおいて、」「球払出部Rの球払出装置Aが装着される部分に設けられた凹部44の下側部分44aに、一対のケース本体18a,18bに設けられた奥側の突条27bを嵌め込んで、球払出装置Aの高さ方向を位置決め」をすることから、「相互に隣り合う2個の球流路ユニットの」「端面同士を」「対峙」させて「係合する」手段を有しているといえる。
よって、引用発明の構成bは、本願補正発明の構成Bと、遊技球流動方向の上流及び下流の関係となるように、前記端面及び前記開口部対峙することで相互の流路を連通させる複数の球流路ユニットについて、相互に隣り合う2個の前記球流路ユニットの端面同士を対峙させて係合する係合手段を有する点で共通する。

(c)上記(b)で検討したように、引用発明は、相互に隣り合う2個の球流路ユニットの端面同士を対峙させて係合する係合手段を有するものであり、係合された状態は「係合位置」であるといえる。
そして、上記(2)(ク)図10の記載を参酌すると、引用発明の「球払出装置Aを、手前に引き、突条27bを凹部44の下側部分44aから外」す際に、球流路4aと第1球誘導路33aの開口部同士の対峙関係が維持されることは明らかである。
そうすると、引用発明の「下側の隙間V2の高さh2の分だけ、球払出装置Aを僅かに下げ」ることは、本願補正発明の「一方の球流路ユニットに対して、他方の球流路ユニットを、」「接近離間する第1の方向へ、所定の移動ストローク長の範囲で移動するように案内する」ことに相当するといえる。
そして、引用発明は「下側の隙間V2の高さh2の分だけ、球払出装置Aを僅かに下げてから引き抜くことにより取り外すことができ」るものであるから、引用発明の「下側の隙間V2の高さh2の分だけ、球払出装置Aを僅かに下げ」た位置は、本願補正発明の「第1の方向とは交差する第2の方向へ移動可能とされる」「係合解除位置」に相当する。
よって、引用発明の構成cは、本願発明の構成Cと、前記係合手段で係合される、一方の球流路ユニットに対して、他方の球流路ユニットを、少なくともそれぞれの前記流路の開口部同士の対峙関係を維持し、かつ接近離間する第1の方向へ、所定の移動ストローク長の範囲で移動するように案内することで、前記係合手段による係合位置、係合解除位置とされ、前記係合解除位置では、前記第1の方向とは交差する第2の方向へ移動可能とされる案内手段を有する点で共通する。

(d)上記(c)での検討を踏まえると、引用発明の「球払出装置Aを取り外すことができるとき」は、本願発明の「前記他方の球流路ユニットが、前記案内手段により前記係合解除位置とされている場合」に相当する。
そして、引用発明は「球払出装置Aを取り外すことができるとき」「球払出装置Aが下側の隙間V2の高さh2の分だけ下げられている」のであるから、引用発明の「隙間V2の高さh2の分」は、本願発明の「移動ストローク長」に相当する。
よって、引用発明の構成dは、本願補正発明の構成Dと、前記他方の球流路ユニットが、前記案内手段により前記係合解除位置とされている場合に、移動ストローク長が設定されている点で共通する。

(e)引用発明の「上側払出樋4の下端部と、一対のケース本体18a,18bの上端部」は、本願発明の「相互に係合される2個の前記球流路ユニットにおいて、対峙するそれぞれの端面」に相当する。
そして、引用発明の「上側払出樋4の下端部と、一対のケース本体18a,18bの上端部が、球払出装置Aの側面視において階段状となり、上側払出樋4の手前側の下端部は、手前側のケース本体18aの段差に対応して切除されている」ことは、本願発明の「相互に凹凸の関係となる段差部が形成され」ることに相当し、上記(2)(ク)図10の記載を参酌すれば、引用発明の「上側払出樋4の下端部と、一対のケース本体18a,18bの上端部が、球払出装置Aの側面視において階段状となり、上側払出樋4の手前側の下端部は、手前側のケース本体18aの段差に対応して切除されている」ことにより、球払出装置Aを引き抜くことに取り外すことができることは明らかであるから、本願発明の「第2の方向への移動を妨げない」という機能を有するものといえる。
よって、引用発明の「上側払出樋4の下端部と、一対のケース本体18a,18bの上端部が、球払出装置Aの側面視において階段状となり、上側払出樋4の手前側の下端部は、手前側のケース本体18aの段差に対応して切除され」ていることは、本願補正発明の「相互に係合される2個の前記球流路ユニットにおいて、対峙するそれぞれの端面には、前記第2の方向への移動を妨げないように、相互に凹凸の関係となる段差部が形成され」ることに相当する。

(f)上記(e)での検討を踏まえると、引用発明の「上側払出樋4の下端部と、一対のケース本体18a,18bの上端部が、球払出装置Aの側面視において階段状となり、上側払出樋4の手前側の下端部は、手前側のケース本体18aの段差に対応して切除されている、上側払出樋4の下端部と、一対のケース本体18a,18bの上端部の間」は、本願補正発明の「段差部の凹凸間」に相当する。
そして、引用発明の「遊技球の直径以下である、下側の隙間V2の高さh2の分だけ広がること」は、本願補正発明の「遊技球直径以下の移動ストローク長分の離間」に相当し、引用発明の「球払出装置Aを取り外すとき」は、本願補正発明の「第2の方向への移動」に相当する。
よって、引用発明の構成fと本願補正発明の構成Fは、前記段差部の凹凸間の遊技球直径以下の移動ストローク長分の離間によって、前記第2の方向へ移動する点で共通する。

(g)引用発明の構成gは、本願補正発明の構成Gに相当する。

上記(a)?(g)の対比により、本願補正発明と引用発明とは、

「A 遊技球の流動を案内する流路が形成され、端面に前記流路の開口部が形成された複数の球流路ユニットと、
B’ 遊技球流動方向の上流及び下流の関係となるように、前記端面及び前記開口部対峙することで相互の流路を連通させる複数の球流路ユニットについて、相互に隣り合う2個の前記球流路ユニットの端面同士を対峙させて係合する係合手段と、
C’ 前記係合手段で係合される、一方の球流路ユニットに対して、他方の球流路ユニットを、少なくともそれぞれの前記流路の開口部同士の対峙関係を維持し、かつ接近離間する第1の方向へ、所定の移動ストローク長の範囲で移動するように案内することで、前記係合手段による係合位置、係合解除位置とされ、前記係合解除位置では、前記第1の方向とは交差する第2の方向へ移動可能とされる案内手段とを有し、
D’ 前記他方の球流路ユニットが、前記案内手段により前記係合解除位置とされている場合に、移動ストローク長を設定すると共に、
E 相互に係合される2個の前記球流路ユニットにおいて、対峙するそれぞれの端面には、前記第2の方向への移動を妨げないように、相互に凹凸の関係となる段差部が形成され、
F’ 前記段差部の凹凸間の遊技球直径以下の移動ストローク長分の離間によって、前記第2の方向へ移動する、
G 遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
係合手段について、本願補正発明は、端面同士を係合しているのに対し、引用発明では、このような特定がされていない点(構成B)。

[相違点2]
案内手段について、本願補正発明では、他方の球流路ユニットを、第1の方向へ案内して係合解除位置とし、係合解除位置では第2の方向へ移動可能とされるのに対し、引用発明では、球払出装置Aを、手前側に引き、僅かに下げてから引き抜くようにしている点(構成C)。

[相違点3]
他方の球流路ユニットが係合解除位置とされている場合に、本願補正発明では、開口部同士の隙間寸法が、少なくとも遊技球の直径以上となるように、移動ストローク長を設定するのに対し、引用発明では、このような特定がなされていない点(構成D)。

[相違点4]
段差部の凹凸間の遊技球直径以下の移動ストローク長分の離間によって、第2の方向へ移動する際、本願補正発明では、開口部同士の隙間寸法が遊技球の直径以上とされるのに対し、引用発明では、このような特定がされていない点(構成F)。

(4)判断
上記相違点について検討する。

(ア)相違点1について
連通する流路を形成する、複数の球流路ユニットについて、相互に隣り合う2個の球流路ユニットの対峙する端面同士を係合する点は、慣用手段でもあり、本願出願前周知技術である(以下「周知技術」という。)(必要があれば、特開2013-111155号公報(図17。上通路部材23と球払出装置150の端面同士が係合している。)、特開2001-17701号公報(図4、7、8。カーブレール25と球払出装置24の端面同士が係合している。)、特開2004-275744号公報(図7。屈曲樋9と球払出装置10の端面同士が係合している。)等参照のこと。)。
引用発明のパチンコ機Pも、上側払出樋4の球通路4bと、球払出装置Aの第1球誘導路33bとを連続状態で接続されて配設したものであるから、引用発明に、上記慣用手段又は周知技術を適用して、球通路4bと第1球誘導路33bの端面同士を係合させて、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(イ)相違点2について
他方の球流路ユニットを、第1の方向へ案内して係合解除位置とし、係合解除位置では第2の方向へ移動可能とする案内手段は、慣用手段でもあり、本願出願前周知技術である(以下「周知技術」という。)(必要があれば、特開2013-111155号公報(【0049】、【0050】、図17)、特開2001-17701号公報(【0024】、図4、7、8)等参照のこと。)。
引用発明のパチンコ機Pも、僅かに下げてから引き抜くようにする案内手段を有するものであるから、引用発明に、上記慣用手段又は周知技術を適用して、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(ウ)相違点3、4について
相違点3、4は、第2の方向へ移動可能である、係合解除位置における、開口部の隙間寸法に関する点で共通するのでまとめて検討する。
引用文献には上記(2)(カ)【0033】に「本実施形態の球払出装置Aにおいて、後壁部41の上端面41bと、上側払出樋4の奥側の下端面45bとの間の高さjは、球径Dとほぼ同一にすることが望ましい」と記載されている(以下「引用文献に記載の事項」という。)。
引用発明において、係合位置における「上側払出樋4の下端面45aと中間板19の上端面の間隔」は「j」とされており、「遊技球の直径以下である、下側の隙間V2の高さh2の分だけ」球払出装置Aを下げることにより係合解除位置とするものであるから、引用発明の「上側払出樋4の下端面45aと中間板19の上端面の間隔」である「高さj」を、引用文献に記載の事項を適用して、「球径Dとほぼ同一」にすることで、「遊技球の直径以下である、下側の隙間V2の高さh2の分だけ」球払出装置Aを下げたとき、すなわち、係合解除位置における「上側払出樋4の下端面45aと中間板19の上端面の間隔」を、球径D+高さh2、すなわち、「遊技球の直径以上」として、上記相違点3、4に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(5)審判請求人の主張について
審判請求書の「(3)II.(平成29年5月11日付拒絶理由通知の理由2について)理由2の(2)」において、請求人は下記の主張をしている。
「引用文献2の段落番号0030に、「・・・特定球Bbと奥側の球通路4bとの重なり部の高さe1より大きく設けられている下側の隙間V2の高さh2・・・」と記載されていますが、少なくともh2は固定値です。
一方、e2は、特定球Bbの中心Tが、高さjの中間にあることが前提となっています。特定球Bbを常に高さjの中間に位置させることは設計上は可能です。
しかしながら、そもそもの課題として、流路内で球詰まりが発生しているから、数珠つなぎとなって遊技球が残留した状態で取り外す必要があり、例えば、流路内の遊技球間に隙間が生じて球詰まりを起こしている可能性があります。
従って、引用文献2の段落番号0030に記載のように、「・・・設計上の球Bの位置は不動であるため、・・・」とは希望的観測にすぎず、結果として、e2>h2の関係となることは充分あり得ます。
これに対して、本願発明は、遊技球の直径(不動)と、係合寸法(不動)との関係において、段差部を定めたため、流路内の遊技球が如何なる状態で数珠つなぎとなっていても、確実に取り外しが可能です。
すなわち、流路の取り外し時の、数珠つなぎとなった遊技球による移動の妨げ回避という課題を回避する点では一致しますが、引用文献2は、不確実な設定を前提としているため、数珠つなぎとなっている遊技球が取り外し動作に支障をきたす可能性があります。
これに対して、本願発明は、不動の寸法を基にして構造を設計するため、目的である、球抜きができない状態であっても、係合状態にある2個の球流路ユニットを相互に取り外すときに、残留している遊技球が取り外し動作に支障をきたすことなく円滑に取り外すことを、確実に達成することができます。」
この主張について検討する。上記(4)(ウ)での検討を踏まえると、引用発明の「上側払出樋4の下端面45aと中間板19の上端面の間隔」である「高さj」は、請求人が主張する「段差部」の高さに相当し、不動の寸法とされるものであり、引用発明の「隙間V2の高さh2」は、請求人が主張する「係合寸法」に相当し、不動の寸法とされるものである。そして、引用発明に引用文献に記載の事項を適用することにより、「高さj」を「球径Dとほぼ同一」にし、「第2の方向へ移動中に対向する開口部同士の隙間寸法」である「上側払出樋4の下端面45aと中間板19の上端面の間隔」を、e1やe2の寸法の大小に関わらず、球径D+高さh2、すなわち、不動の寸法を基にして「遊技球の直径以上」とすることは、当業者が容易になし得たことであり、そのものが、請求人が主張する「流路内の遊技球が如何なる状態で数珠つなぎとなっていても、確実に取り外しが可能」となるという効果を奏するものであることは、引用発明及び引用文献に記載の事項から予測し得る範囲のものであり格別なものとはいえない。
よって、請求人の主張は採用できない。

(6)小括
よって、本願補正発明は引用発明、引用文献に記載の事項、及び、慣用手段又は周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本願補正発明は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年7月7日付けの手続補正書により補正された、上記第2の1.で補正前として記載された次に特定されるとおりのものである(A1?Gについては、当審で付した。C、Gについては、上記第2の3.(1)で本願補正発明として記載されたものと共通するので同一の符号を付与し、A1、B1、D1については、A、B、Dとの共通構成を考慮して付した。)。

「A1 遊技球の流動を案内する流路が形成され、端面に前記流路の開口部が形成された球流路ユニットと、
B1 遊技球流動方向の上流及び下流の関係となるように、前記端面及び前記開口部が対峙することで相互の流路を連通させる複数の球流路ユニットについて、前記相互に隣り合う2個の前記球流路ユニットの前記対峙する端面同士を係合する係合手段と、
C 前記係合手段で係合される、一方の球流路ユニットに対して、他方の球流路ユニットを、少なくともそれぞれの前記流路の開口部同士の対峙関係を維持し、かつ接近離間する第1の方向へ、所定の移動ストローク長の範囲で移動するように案内することで、前記係合手段による係合位置、係合解除位置とされ、前記係合解除位置では、前記第1の方向とは交差する第2の方向へ移動可能とされる案内手段とを有し、
D1 前記他方の球流路ユニットが、前記案内手段により前記係合解除位置とされている場合に、前記開口部同士の隙間寸法が、少なくとも遊技球の直径以上となるように、前記移動ストローク長を設定した

G ことを特徴とする遊技機。」

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願出願前に頒布された下記の引用文献2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献2:特開2003-265794号公報 (本審決における「引用文献」)

3.刊行物に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献の記載事項、引用発明は、上記第2の3.(2)に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、本願補正発明の発明特定事項から、上記第2の2.(1)、(2)で示した限定事項である、
(1)本願補正発明の発明特定事項である「複数の球流路ユニット」について、「複数の」とする限定(構成A1)、
(2)本願補正発明の発明特定事項である「2個の」「球流路ユニット」について、「相互に係合される2個の前記球流路ユニットにおいて、対峙するそれぞれの端面には、前記第2の方向への移動を妨げないように、相互に凹凸の関係となる段差部が形成され、前記段差部の凹凸間の遊技球直径以下の移動ストローク長分の離間によって、前記第2の方向へ移動中に対向する前記開口部同士の隙間寸法が遊技球の直径以上とされる」とする限定(構成E、F)
を省き、誤記(構成B1)、及び、表現上の平仄を合わせるための補正(構成D1)を補正前の表現に戻したものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、上記第2の3.(3)で示した[相違点1]、[相違点2]、[相違点3]のみで相違し、当該相違点1?3に係る本願発明の構成については、上記第2の3.(4)(ア)?(ウ)と同様の理由により、引用発明、引用文献に記載の事項、及び、慣用手段又は周知技術に基づいて当業者が容易になし得たものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、引用文献に記載の事項、及び、慣用手段又は周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-10-24 
結審通知日 2018-10-30 
審決日 2018-11-12 
出願番号 特願2013-202341(P2013-202341)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 徹  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 蔵野 いづみ
田付 徳雄
発明の名称 遊技機  
代理人 福田 浩志  
代理人 加藤 和詳  
代理人 中島 淳  

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