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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G08G
管理番号 1347426
審判番号 不服2018-118  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-05 
確定日 2019-01-22 
事件の表示 特願2013- 92309「車両距離表示警告装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月17日出願公開、特開2014-215798、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年4月25日の出願であって、平成29年3月21日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年5月10日付けで手続補正がされ、平成29年10月26日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年1月5日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年10月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.本願の請求項1ないし5に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2記載の技術及び引用文献3、4に記載された周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2003-231449号公報
2.特開2008-97376号公報
3.特開2013-69247号公報
4.特開平11-326140号公報

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、拒絶査定時の請求項2及び請求項4を削除する補正であり、特許法第17条の2第3項から第5項までの要件に違反しているものとはいえない。

第4 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成30年1月5日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
外部スキャンツール用コネクタと、現在の車速情報を取得する車速測定装置と、前方の車両との車間距離情報を取得する車間距離測定装置とを備えた車両の前記外部スキャンツール用コネクタに着脱自在に接続され、
前記外部スキャンツール用コネクタを介して前記車両と通信する対車両通信部と、
車速ごとに警告車間距離を設定する警告車間距離設定部と、
前記車速測定装置が取得した車速情報と、前記車間距離測定装置が取得した車間距離情報とを、前記対車両通信部を介して取得し、取得した車速情報に基づいて前記警告車間距離設定部で設定された警告車間距離を取得し、取得した警告車間距離と、取得した車間距離情報とを比較する車間距離比較部と、
前記車間距離比較部による比較の結果に基づいて、ドライバに対して警告を行う警告部と、
を備え、前記車両に車間距離警告機能を付与する、車載機。
【請求項2】
前記車速測定装置が取得した車速情報に基づく車速、前記車間距離測定装置が取得した車間距離情報に基づく車間距離、及び前記車間距離比較部による比較の結果のうち、少なくとも1つを無線通信により送信する無線通信部
を更に備えた、請求項1の車載機。
【請求項3】
前記車間距離比較部による比較の結果に基づいて、必要な車間距離を確保していないと判定された回数、走行時間、及び日時のうち、少なくとも1つを記録手段に記憶する警告情報記憶部
を更に備えた、請求項1又は2の車載機。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項アないしキが記載されている。

ア.「【請求項1】 前方車両と自車両の車間距離を計測する車間距離計測手段と、
前記車間距離計測手段からの信号から自車両と前方車両が物理的に衝突するかどうかを示した基本危険度ポテンシャルを計算する制御ユニットと、
前記基本危険度ポテンシャルに基づいて車間距離を制御する車両制御装置と、
自車両の衝突試験結果に基づく自車両安全データが格納された自車両安全データ格納メモリと、
運転者の個人差を反映した運転能力データが格納された運転能力データ格納メモリと、
自車両周囲の環境に関する情報を検出し格納された環境情報メモリと、
上記評価データ格納メモリと運転能力データ格納メモリと環境情報メモリからの情報に基づいて基本危険度ポテンシャルを変更する補正手段とからなる運転支援装置。」

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、道路上を走行する車両事故防止を図るために、車間距離を測定し、測定した車間距離に応じて注意、警報を出し、さらには車両を制御することにより、運転を支援する運転支援装置に関する。
【0002】
【従来の技術】交通事故の原因は運転者の居眠り、漫然運転、あせり、緊張など人的要因に起因するものが大半を占めている(交通事故総合分析センター イタルダ・インフォメーションより)。このような事情から、現在、自車両と前方車両との車間距離を測定し車間距離警報を発するものや安全な車間距離を保つシステムが開発され、実際に一部の自動車に搭載されている。
【0003】例えば、安全な車間距離を保つシステムとしては、自車両と前方車両との距離を計測し、車速および減速度を基に安全な車間距離を算出して、警報を出すあるいは安全な車間距離を保つという内容が登録特許第2830576号に開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、人が安全と感じる車間距離は物理的に衝突しない車間距離とは必ずしも一致しない。同じ物理的に安全な車間距離でもたとえば、前方車両がトラックのように大型車両である場合と乗用車である場合とでは前方車両がトラックである場合の方が人は危険と感じる。
【0005】また、自車両の車種や自車両が衝突に強いかどうかによっても安全の感じ方が異なる。例えば、衝突試験により衝突に強い車両に乗っている場合と弱い車両の場合を比較した場合、人は衝突に強い車両に乗っている場合の方が安全と感じる。したがって、前方車両や自車両の種類によらず物理的に安全な車間距離で警報を発したとき人は違和感を覚える。
【0006】さらに前車や自車の種類によらず同一の安全な車間距離で継続して走行すると、違和感や不安感による過度の緊張状態が続き疲労を招くことになる。この疲労が判断力の低下につながり事故を引き起こす可能性がある。また、人はこの状態に長く耐えられないので自らブレーキやアクセルを操作しこの状態を避けようとする。
【0007】つまり、従来の技術では人が安全と感じるかどうかということがまったく考慮されていないため人間の感覚に合わず、結果として上記システムが搭載されていても限定された状況でしか使用できないという実用上の大きな問題があった。」

ウ.「【0017】図1は本発明を構成する装置類が装着された自車両100となる自動車を上方からみた図である。101は車間距離計測手段となるフロントレーダであり、前方車両あるいは障害物との距離を計測する。102は外気温センサであり、外気の温度を計測する。103は車速計測手段となる車速センサであり、自車両の速度を計測する。104はブレーキ油圧センサであり、ブレーキの油圧を計測する。105はスロットルセンサであり、スロットルの開度を計測する。106、111は側方監視装置であり、自車両の右または左の車両や障害物との距離を計測し、映像を撮影するものである。107はスピーカおよびマイクであり運転者へ音声で警報を知らせ、運転者の音声をシステムへ入力する。108はヘッドアップディスプレイやインスツルメントパネルなどの表示装置であり、運転者へ情報を表示して伝達する。109はステアリング周りのスイッチ類(灯火スイッチ、イグニッションスイッチ、ワイパースイッチ、方向指示器)である。200はシステム全体を制御する制御ユニットである。112は日射センサであり車室内外の明るさを計測する。113はナビゲーション装置などのタッチスイッチ付の表示装置であり地図情報などを表示すると共に、運転者の生年月日、年齢、性別、運転経験などが入力できる。114は車室内カメラであり運転者の状態や乗員数などを画像として取り込む。115は前方監視カメラであり前方の画像を撮影する。116は後方監視カメラであり後方の画像を撮影する。117はGPS用の衛星からの信号を受信するアンテナである。118は各種地上波(ラジオ、VICS、ビーコン、電話)の信号を受信するアンテナである。119は後方監視用のレーダであり、後方車両や障害物との距離を計測する。
【0018】図2は、本発明を構成する装置類が装着された自車両100の信号の流れを記載する制御ブロック図である。フロントレーダ101、車速センサ103、外気温センサ102、ワイパースイッチなどの各種情報入力手段205から得られた信号は制御ユニット200に入力ポート201を介して集められ、メモリ202に蓄えられる。CPU203はメモリ202から必要な情報を読み出し、状況を判断し制御対象と制御方法を決め制御出力ポート204を介して各種アクチュエータ206である表示装置108やスピーカ107のHMI(Human Machine Interface)さらにはスロットル207やブレーキ208の車両制御装置へ制御信号を出力する。なお、この制御信号には画像や音声のデータも含まれる。」

エ.「【0023】次にメモリ202に格納されたデータに基づいてCPU203で基本危険度ポテンシャルが算出される過程を示す。ここで基本危険度ポテンシャルとはフロントレーダ101あるいは後方監視レーダからの情報と車速センサ103からの情報に基づいて、計算される自車両と前方車両あるいは後方車両が物理的に衝突する危険度を表わすものであり、以下に説明する基本ポテンシャル曲線が示す危険度のことである。
【0024】図11のように自車両401をはさんで前方車両402および後方車両403がある場合の衝突の危険度を図6(a)のように表わす。横軸に自車両401と前方車両402そして自車両402と後方車両403との距離をとり、縦軸に危険度を表わす。危険度により制御レベル1、制御レベル2、制御レベル3で分けられており、制御レベル1以下が車間距離自動制御可能領域であり、制御レベル2以下が車間距離注意領域であり、制御レベル3以下が車間距離警報領域であり、制御レベル3以上が車間距離制動制御領域である。前方車両との衝突の危険度あるいは後方車両との衝突の危険度を表わす基本ポテンシャル曲線を描く。前方車両401と後方車両403が同じ大きさの車両であった場合、基本ポテンシャル曲線は、自車両401が前方車両402と後方車両403の中間点に位置するときに一番低くなる。基本ポテンシャル曲線は、自車両401が前方車両402の場所あるいは後方車両403の場所では無限大になる。
【0025】自車両401が前方車両402に近づき前方車両注意喚起位置Afを越したとき、表示装置108に注意を喚起する表示をする。また自車両401が前方車両402に近づき前方車両警報発生位置Bfを越したとき、スピーカ107から警報音を鳴らす。さらに自車両401が前方車両402に近づき前方車両制動制御位置Cfを越したとき、スロットル開度を閉じるあるいはブレーキをかけ自車両401の制動制御をする。
【0026】同様に、自車両401が後方車両403に近づき後方車両注意喚起位置Abを越したとき、表示装置108に注意を喚起する表示をする。また自車両401が後方車両403に近づき後方車両警報発生位置Bbを越したとき、スピーカ107から警報音を鳴らす。さらに自車両401が後方車両403に近づき後方車両制動制御位置Cbを越したとき、所定の速度以下であればスロットル開度を上げ速度を上げる。さらにまた、自車両401が前方車両注意喚起位置Afと後方車両注意喚起位置Abの間は車間距離自動制御区間であり、基本ポテンシャル曲線が一番低い前方車両402と後方車両403の中間点に自車両401が位置するように制御される。なお、基本ポテンシャル曲線は、自車両401の制御に違和感がないようにするために、放物線の形をし、中央が一番低く、連続的に増加する曲線となっている。」

オ.「【0034】ステップ308では、前回データと今回データを比較しHMIまたは車両の制御が必要かを判断する。HMIまたは車両の制御が必要な場合とは、車間距離自動制御可能領域から車間距離注意領域に変わった場合、車間距離注意領域から車間距離警報領域に変わった場合、車間距離警報領域から車間距離制動制御領域へ変わった場合である。HMIまたは車両の制御が必要な場合はステップ309へ、HMIまたは車両の制御が必要ない場合はステップ313へ進む。
【0035】ステップ309では、前回データと今回データを比較しHMIの制御が必要かどうかを判断する。HMIの制御が必要な場合はステップ310へ進み、必要ない場合はステップ311へ進む。
【0036】ステップ310の詳細を図8に示す。ステップ801ではHMI制御に必要な各種情報がメモリ202より読み出される。ステップ802では、CPU203にて読み出された情報が解析されHMI制御方法が決定される。ステップ803では、決定されたHMI制御を実行するための制御信号が制御信号出力ポート204を通して各種HMIへ出力される。その出力信号に応じて各種HMI、たとえばヘッドアップディスプレイ108では注意表示を行うなどの所定の動作をする。HMIの制御が必要な場合の例としては、図7において制御レベル1とポテンシャル曲線1の交点Aよりも車間距離が縮まり注意を提示すべき状態となった場合や、図7において制御レベル2とポテンシャル曲線1の交点Bよりも車間距離が縮まり警報を提示すべき状態となった場合である。
【0037】ステップ311では、前回データと今回データを比較し車両の制御が必要かどうかを判断する。車両の制御が必要な場合はステップ312へ進み、必要ない場合はステップ313へ進む。
【0038】ステップ312の詳細を図9に示す。ステップ901では車両制御に必要な各種情報がメモリ202より読み出される。ステップ902では、CPU203にて読み出された情報が解析され車両制御方法が決定される。ステップ903では、決定された車両制御を実行するための制御信号が制御信号出力ポート204を通して各種車両制御装置へ出力される。その出力信号に応じて各種車両制御装置、たとえばスロットル開度を小さくし減速するなどの所定の動作をする。車両の制御が必要な場合の例としては、図7において制御レベル1とポテンシャル曲線1の交点Aよりも車間距離が縮まり車間距離を広げるべき状態となった場合や、危険度ポテンシャルマップにおいて制御レベル3とポテンシャル曲線1の交点Cよりも車間距離が縮まり制動をかけるべき状態となった場合である。図10にHMIの表示例を示す。図10では、前方車両の接近に伴いヘッドアップディスプレイにてウィンドシールドに警報を重畳表示し、後方・側方から接近する2輪車の警報を表示した例を示している。警報を補足する情報、たとえば前方車との距離もヘッドアップディスプレイ108にて表示する。また、表示と同時にスピーカ107より音声でも警報を発生するようにしている。」

カ.引用文献1の【図6】に示される「(a)基本危険度ポテンシャル」からみて、縦軸上の制御レベル1に対応する横軸上の値として、Afが示され、このAfは、上記【0025】の記載からみて「前方車両注意喚起位置Af」を表しているといえる。さらに、引用文献1に記載された発明は、上記エ.の記載より、この「前方車両注意喚起位置Af」を設定する手段を備えているといえる。

キ.上記エ.の記載より、引用文献1には、「自車両401が前方車両402に近づき前方車両注意喚起位置Afを越したとき、表示装置108に注意を喚起する表示をする」ことが示され、この車両注意喚起位置Afは、前方車両からの距離が所定値以下になる位置であると引用文献1の【図6】の記載等から解されるから、引用文献1に記載された発明は、自車両401と前方車両402との距離が前方車両注意喚起位置Afに対応する前方車両からの距離とを比較する手段を備えているといえる。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「自車両の速度を計測する車速センサ103と、前方車両との距離を計測するフロントレーダ101とを備え、
フロントレーダ101からの情報と車速センサ103からの情報に基づいて、横軸に自車両401と前方車両402との距離をとり、縦軸に自車両と前方車両が物理的に衝突する危険度を表わす基本危険度ポテンシャルを算出し、危険度により制御レベル1、制御レベル2、制御レベル3で分けられ、制御レベル1に対応する前方車両注意喚起位置Afを設定する手段と、
前方車両注意喚起位置Afに対応する前方車両からの距離と自車両401と前方車両402との距離とを比較する手段と、
自車両401が前方車両402に近づき前方車両注意喚起位置Afを越したとき、注意を喚起する表示をする表示装置108と、
を備え、車間距離警告機能を有した運転支援装置。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の段落【0066】の記載からみて、当該引用文献2には、車速情報に基づいた車速ごとに車間距離異常と判断する車間距離異常閾値を設定するという技術的事項が記載されていると認められる。

3.その他の文献について
また、引用文献3(段落【0035】、【0065】参照。)及び引用文献4(段落【0002】参照。)の記載からみて、警告を行うユニットを外部スキャンツール用コネクタに着脱自在に接続することは、周知技術であると認められる。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明における「車速センサ103」、「フロントレーダ101」は、それぞれ、本願発明1における「車速測定装置」、「車間距離測定装置」に相当し、「自車両の速度を計測する車速センサ103」、「前方車両との距離を計測するフロントレーダ101」は、それぞれ、本願発明1における「現在の車速情報を取得する車速測定装置」、「前方の車両との車間距離情報を取得する車間距離測定装置」に相当する。
引用発明における「フロントレーダ101からの情報と車速センサ103からの情報に基づいて、横軸に自車両401と前方車両402との距離をとり、縦軸に自車両と前方車両が物理的に衝突する危険度を表わす基本危険度ポテンシャルを算出し、危険度により制御レベル1、制御レベル2、制御レベル3で分けられ、制御レベル1に対応する前方車両注意喚起位置Afを設定する手段」と、本願発明1の「車速ごとに警告車間距離を設定する警告車間距離設定部」とは、「車速を考慮した警告車間距離を設定する警告者間距離設定部」で共通する。
また、引用発明の「前方車両注意喚起位置Afに対応する前方車両からの距離」は、警告を行う車間距離である点で、本願発明1の「警告車間距離」と共通し、引用発明の「自車両401と前方車両402との距離」は、本願発明1の「車間距離情報」に相当する。そして、引用発明の「前方車両注意喚起位置Afに対応する前方車両からの距離と自車両401と前方車両402との距離とを比較する手段」は、警告を行う車間距離と車間距離情報とを比較する比較手段である点で、本願発明1の「取得した警告車間距離と、取得した車間距離情報とを比較する車間距離比較部」と共通する。
さらに、引用発明の「自車両401が前方車両402に近づき前方車両注意喚起位置Afを越したとき、注意を喚起する表示をする表示装置108」は、比較手段による比較の結果に基づいて、ドライバに対して警告を行う警告部である点で、本願発明1の「前記車間距離比較部による比較の結果に基づいて、ドライバに対して警告を行う警告部」と共通する。また、引用発明の「車間距離警告機能を有した運転支援装置」は、車間距離警告装置である点で、本願発明1の「車両に車間距離警告機能を付与する、車載機」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点1、相違点2がある。

(一致点)
「現在の車速情報を取得する車速測定装置と、前方の車両との車間距離情報を取得する車間距離測定装置とを備え、
車速を考慮した警告車間距離を設定する警告車間距離設定部と、
警告を行う車間距離と、車間距離情報とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較の結果に基づいて、ドライバに対して警告を行う警告部と、
を備える、車間距離警告装置。」

(相違点1)
本願発明1は、車両に「外部スキャンツール用コネクタ」が備えられ、この「外部スキャンツール用コネクタを介して前記車両と通信する対車両通信部」を備えた車載器が、車両の車速測定装置が取得した車速情報と車間距離測定装置が取得した車間距離情報とを、対車両通信部を介して取得する車載器であって、さらに車両に車間距離警告機能を付与する車載器であるのに対し、引用発明は、外部スキャンツール用コネクタを備えた車両に車間距離警告機能を付与する車載器ではなく、運転支援装置であって、外部スキャンツール用コネクタを介して前記車両と通信する対車両通信部を備えておらず、車速センサ103からの情報と前方車両402との距離は、外部スキャンツール用コネクタを介して前記車両と通信する対車両通信部を介することなく、取得している運転支援装置である点。

(相違点2)
車速を考慮した警告車間距離を設定する警告者間距離設定部が、本願発明1では、「車速ごとに警告車間距離を設定する」のに対して、引用発明では、「フロントレーダ101からの情報と車速センサ103からの情報に基づいて、横軸に自車両401と前方車両402との距離をとり、縦軸に自車両と前方車両が物理的に衝突する危険度を表わす基本危険度ポテンシャルを算出し、危険度により制御レベル1、制御レベル2、制御レベル3で分けられ、制御レベル1に対応する前方車両注意喚起位置Afを設定する」点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、引用発明は車間距離警告機能を有した運転支援装置であって、車両に車間距離警告機能を付与する車載器ではない。すなわち、引用発明は、車両と一体化した装置において、運転者に対し車間距離に関する警告を行う装置であり、このような機能を有さない車両に「車間距離警告機能を付与する、車載器」ではない。そして、引用文献1には、車間距離警告に関して、車両とは別に設けた装置として、車両に車間距離警告を行う機能を付与することの記載も示唆もない。したがって、引用文献1には、引用発明を「車両に距離警告機能を付与する」車載器とすることに関して、動機付けを欠き、また、「車両に距離警告機能を付与する」車載器については、引用文献1ないし4の何れの文献にも記載されていないことから、本願発明1は、当業者であっても容易にできたものであるとはいえない。
この点に関し、警告を行うユニットを外部スキャンツール用コネクタに着脱自在に接続することは、引用文献3,4に記載されているとおり、本願の出願前において周知技術であり、車両から通信部を介して得られた情報を当該ユニットで表示することもまた周知技術であるといえる。しかしながら、引用文献1には、周知技術である外部スキャンツール用コネクタを設けることも、この外部スキャンツール用コネクタから車速に関する情報と車間距離に関する情報を外部のユニットが得ることも、何ら記載されておらず、引用発明において特定される装置のどの箇所に外部スキャンツール用コネクタ、あるいは外部スキャンツール用コネクタを介して通信する対車両通信部を設けるのか明らかでなく、引用発明に外部スキャンツール用コネクタまたは対車両通信部を設けることは、当業者にとって容易であるとはいえない。
仮に、引用発明に外部スキャンツール用コネクタとこれに着脱自在に接続する車載器を設けたとしても、この車載器が引用文献1に記載された種々の車両に関する情報の中から、車速に関する情報と車間距離に関する情報をスキャンツール用コネクタを介して取得し、車間距離警告機能を車両に付与するようにすることは、引用文献1ないし4の何れの文献にも示されておらず、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
したがって、本願発明1は、上記相違点2について判断するまでもなく、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献3,4に示される上記周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2、3について
本願発明2、3は、本願発明1の有する発明特定事項を有し、さらに限定した発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項、引用文献3、4にされる周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-01-10 
出願番号 特願2013-92309(P2013-92309)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G08G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 倉橋 紀夫  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 山村 和人
長馬 望
発明の名称 車両距離表示警告装置  
代理人 特許業務法人東京アルパ特許事務所  

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