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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1347439
審判番号 不服2018-1296  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-31 
確定日 2019-01-22 
事件の表示 特願2016-519140「タッチパネル用導電シート及び静電容量式タッチパネル」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月19日国際公開、WO2015/174126、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)3月9日(優先権主張 2014年5月16日)を国際出願日とする出願であって、平成29年4月27日付けの拒絶理由の通知に対し、平成29年6月30日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成29年10月24日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年1月31日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年10月24日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-15に係る発明は、以下の引用文献1-9に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.米国特許出願公開第2014/0055702号明細書
2.特開2014-056461号公報
3.特開2012-103761号公報
4.特開2014-026510号公報
5.特開2012-185813号公報
6.特開2013-084639号公報
7.特開2013-080425号公報
8.特開2012-238278号公報
9.特開2013-025626号公報

第3 本願発明
本願請求項1-15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明15」という。)は、平成30年1月31日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
検出領域に配置された複数の検出電極と、周辺配線領域に配置されて前記検出電極を端子部に電気的に接続するための複数の周辺配線とが形成された樹脂フィルムを有し、且つ前記樹脂フィルムが屈曲部を有する三次元形状をなすタッチパネル用導電シートであって、
前記検出電極が、金属導体細線が交差して構成された網目状の第1金属メッシュからなり、
前記周辺配線が、前記検出電極をなす前記金属導体細線と同一材料の金属導体細線が交差して構成された網目状の第2金属メッシュからなり、
且つ前記第1金属メッシュの線幅が5μm以下、開口率が94.0%以上であり、前記第1金属メッシュ及び前記第2金属メッシュを構成する前記金属導体細線の延在方向が前記樹脂フィルムの前記屈曲部の屈曲線方向に対して20°?70°の角度で傾斜し、
前記屈曲部の屈曲線方向に対する前記第1金属メッシュの傾斜角度と、前記第2金属メッシュの傾斜角度とが同一であることを特徴とするタッチパネル用導電シート。
【請求項2】
請求項1記載のタッチパネル用導電シートにおいて、前記樹脂フィルムが、前記検出電極又は前記周辺配線の少なくともいずれか一方を含む領域に前記屈曲部を有するタッチパネル用導電シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタッチパネル用導電シートにおいて、前記第2金属メッシュの平均メッシュピッチが、前記第1金属メッシュの平均メッシュピッチに比して小さいタッチパネル用導電シート。
【請求項4】
請求項3記載のタッチパネル用導電シートにおいて、前記第2金属メッシュの平均メッシュピッチが10?50μmであるタッチパネル用導電シート。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか1項に記載のタッチパネル用導電シートにおいて、前記第1金属メッシュと前記第2金属メッシュとの線幅が同一であるタッチパネル用導電シート。
【請求項6】
請求項1?5のいずれか1項に記載のタッチパネル用導電シートにおいて、前記検出領域に、少なくとも隣接する前記検出電極同士の間に、前記検出電極及び前記周辺配線の双方から絶縁され、前記第1金属メッシュと同一の面密度を有する第1応力分散部を有するタッチパネル用導電シート。
【請求項7】
請求項6記載のタッチパネル用導電シートにおいて、前記第1応力分散部が前記検出電極を構成する前記金属導体細線と同一材料の金属導体細線が交差して構成され、前記第1金属メッシュと同一のメッシュ形状をなす金属メッシュからなるタッチパネル用導電シート。
【請求項8】
請求項6又は7記載のタッチパネル用導電シートにおいて、前記周辺配線領域に、少なくとも隣接する前記周辺配線同士の間に、前記検出電極及び前記周辺配線の双方から絶縁され、前記第2金属メッシュと同一の面密度を有する第2応力分散部を有するタッチパネル用導電シート。
【請求項9】
請求項8記載のタッチパネル用導電シートにおいて、前記第2応力分散部が前記周辺配線を構成する前記金属導体細線と同一材料の金属導体細線が交差して構成され、前記第2金属メッシュと同一のメッシュ形状をなす金属メッシュからなるタッチパネル用導電シート。
【請求項10】
請求項1?9のいずれか1項に記載のタッチパネル用導電シートにおいて、前記検出電極の少なくとも1個の内部には、前記検出電極を構成する前記金属導体細線が断線された応力緩和部が形成されているタッチパネル用導電シート。
【請求項11】
請求項10記載のタッチパネル用導電シートにおいて、前記応力緩和部は、前記検出電極を構成する前記金属導体細線を部分的に断線することにより形成されているタッチパネル用導電シート。
【請求項12】
請求項1?11のいずれか1項に記載のタッチパネル用導電シートにおいて、前記第1金属メッシュの形状がランダムパターンであるタッチパネル用導電シート。
【請求項13】
請求項1?12のいずれか1項に記載のタッチパネル用導電シートにおいて、前記第2金属メッシュの形状が定型パターンであるタッチパネル用導電シート。
【請求項14】
請求項1?13のいずれか1項に記載のタッチパネル用導電シートにおいて、前記樹脂フィルムが、前記検出電極及び前記周辺配線が形成された面を内側として屈曲されることによって三次元形状をなしているタッチパネル用導電シート。
【請求項15】
請求項1?14のいずれか1項に記載されたタッチパネル用導電シートを備える静電容量式タッチパネル。」

第4 引用文献、引用発明等について
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審にて付与したものである。

「[0001] This relates generally to electronic devices, and more particularly, to electronic devices with displays.」

(当審仮訳)
[0001] 本発明は、一般に電子デバイスに関し、より詳しくは、ディスプレイを備える電子装置に関する。

「[0005] A display may be provided with an active central region and a peripheral inactive region. The active central region may include planar structures such as color filter layer substrates, thin-film-transistor substrates, and planar touch sensor structures. The peripheral inactive region may be provided with thin-film-transistor gate driver circuitry and other structures.

[0006] The display may have one or more flexible edges in the peripheral inactive region. The flexible edges may be bent at an angle with respect to the planar central active portion of the display. Conductive lines may pass between components in the active central region such as display pixels and touch sensor electrodes and components in the inactive peripheral region such as gate driver circuitry and patterned interconnect lines. Each conductive line may include an unbent segment on a portion of a display layer in the active central region and may have a bent segment that traverses the bend on the flexible edge of the display layer.

[0007] Display layers may be formed from polymers and other flexible materials. Each bent segment may be configured to be less susceptible to increases in resistance from bending than each unbent segment.」

(当審仮訳)

[0005] ディスプレイに、中央のアクティブ領域及び周辺の非アクティブ領域を設けることができる。中央のアクティブ領域はカラーフィルタ層基板、薄膜トランジスタ基板、及び、平面タッチセンサ構造のような平面構造を含むことができる。周辺の非アクティブ領域は薄膜トランジスタのゲート駆動回路及び他の構造物を備えてもよい。

[0006] ディスプレイは、周辺の非アクティブ領域に1つ以上の可撓性の縁部を有してもよい。可撓性の縁部は、前記ディスプレイの中央の平坦な部分に対してある角度で屈曲させることができる。導電線は、表示画素及びタッチセンサ電極等のアクティブ領域内の要素と、ゲートドライバ回路及びパターン形成された相互接続線等の非アクティブ領域内の要素との間を通ることができる。各導電線は、アクティブ領域の表示層の一部分に曲げられていないセグメントを含むことができ、表示層の可撓性縁部の屈曲部を横断する曲げられたセグメントを有することができる。

[0007] 表示層は、ポリマーおよび他の可撓性材料から形成されてもよい。各屈曲部は、曲げられていないセグメントよりも曲げ抵抗の増加の影響を受けにくいように構成されてもよい。」

「[0085] As shown by illustrative display structures 140′ of FIG. 11, line segments such as line segment 150 in bent region 144 of inactive area IA may, if desired, be fully or partly formed from structures that are different than the structures used in forming line segments 148 and 152. In particular, line segment 150 may be formed from materials such as copper that are more flexible and less prone to resistance increases upon bending than the materials of segments 148 and 152 and/or may be formed from structures such as parallel lines, mesh structures, structures using supplemental layers of bendable conductor, meandering line structures, structures with undulating surfaces, or other structures that allow segment 150 to be more flexible and more resistant to damage and resistance increases when bent than unbent segments 148 and 152. Configurations of the type shown in FIG. 11 may be used where it is desired to form segments such as segment 148 (and, if desired, segments such as segment 152) from materials such as aluminum that can be prone to stress-induced cracking for compatibility with other display fabrication operations).」

(当審仮訳)
[0085] 図11の例示的なディスプレイ構造140′によって示されるように、非アクティブ領域IAの曲がった領域144では、線セグメント150のような線セグメントは、必要に応じて、線セグメント148及び152の形成に使用される構造とは完全に又は部分的に異なる構造から形成されてもよい。特に、線セグメント150は、セグメント148および152の材料よりも柔軟で曲げたときの抵抗増加が少ない銅などの材料から形成することができ、および/または、平行線、メッシュ構造、屈曲可能な導体の補助層を使用する構造、蛇行線構造、波形表面を有する構造、または、屈曲していないセグメント148および152よりも柔軟で曲げたときのダメージや抵抗増加が少ない他の構造とすることができる。図11に示すように、望ましい場合には、他のディスプレイ製造動作との互換性のため、応力によるクラックが発生しやすいアルミニウムのような材料からセグメント148(および所望であればセグメント152のようなセグメント)のようなセグメントを形成することができる。

「[0087] In the illustrative configuration of line segment 150 of FIG. 13, line segment 150 has a meandering path. The use of the meandering path allows line segment 150 to stretch slightly when bent due the presence of the bend of region 144. The illustrative meandering path of FIG. 13 has bends such as bends 156 at angles A of 90°. FIG. 14 shows an illustrative meandering path configuration for segment 150 that has bends 158 at angles B of about 30-150°. Other types of meandering path shapes may be used if desired (e.g., paths with curved shapes, paths with combinations of curved and straight segments, etc.).」

(当審仮訳)
[0087] 図13の線セグメント150の例示的な構成では、線セグメント150が蛇行した経路を有している。蛇行した経路を使用することにより、屈曲部144により屈曲される際に線セグメント150は、わずかに伸びることが可能となる。図13の蛇行した経路は、90°の角度Aで屈曲部156のような湾曲部を有している。図14は、約30?150°の角度Bで屈曲部158を有するセグメント150の例示的な蛇行した経路を示している。必要であれば、他のタイプの蛇行した経路の形状を用いることができる(例えば、湾曲した形状の、湾曲したセグメントと直線セグメントとの組み合わせ、など)。

「[0089] If desired, line segments such as line segment 150 may be formed from conductive mesh structures. This type of arrangement is shown in FIG. 17. As shown in FIG. 17, line segments 148 and 152 may be formed from solid lines. Line segment portion 150 may be formed from a mesh having a conductive grid layout with an array of openings (e.g., conductive metal grid 162 with openings 160).」

(当審仮訳)
[0089] 所望であれば、線セグメント150などの線セグメントは導電メッシュ構造から形成されてもよい。このタイプの構成は、図17に示されている。図17に示すように、線セグメント148および152は、一本の線から形成されてもよい。セグメント150は、一連の開口部(例えば、開口部160を有する導電性金属グリッド162)を持つ導電格子レイアウトを有するメッシュから形成されてもよい。

以上の記載、特に下線部によれば、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ディスプレイに、中央のアクティブ領域及び周辺の非アクティブ領域を設け、
周辺の非アクティブ領域に1つ以上の可撓性の縁部を有し、可撓性の縁部は、前記ディスプレイの中央の平坦な部分に対してある角度で屈曲させることができ、
導電線は、表示画素及びタッチセンサ電極等のアクティブ領域内の要素と、ゲートドライバ回路及びパターン形成された相互接続線等の非アクティブ領域内の要素との間を通ることができ、
各導電線は、アクティブ領域の表示層の一部分に曲げられていないセグメントを含むことができ、表示層の可撓性縁部の屈曲部を横断する曲げられたセグメントを有することができ、
表示層は、ポリマーおよび他の可撓性材料から形成され、
非アクティブ領域IAの曲がった領域144では、線セグメント150のような線セグメントは、必要に応じて、線セグメント148及び152の形成に使用される構造とは完全に又は部分的に異なる構造から形成されてもよく、線セグメント150などの線セグメントは導電メッシュ構造から形成される、
ディスプレイの表示層。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0058】
タッチパネル成型体の主面及び側面には、複数の導体細線によって網目状にそれぞれ形成される網目状導体、即ち、接触検知電極、電極間配線、引出配線が形成されている。
【0059】
タッチパネルフィルム成型体のxy主面に加えて、更にxz側面とyz側面の少なくとも一方には、島状の接触検知電極の電極列(島状電極列)が形成されている。島状電極列は、隣接する島状電極が電極間配線によって接続され、複数の島状電極の直列接続である。島状電極及び電極間配線は導体細線によって形成された網目状をなしている。」

したがって、引用文献2には、「接触検知電極、電極間配線、引出配線」が、「複数の導体細線によって網目状に形成される網目状導体」からなることが記載されている。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明における「ディスプレイの表示層」は、ポリマーおよび他の可撓性材料から形成され、その上に各導電線やタッチセンサ電極等を形成するものであるから、本願発明1における「タッチパネル用導電シート」に相当する。
また、引用発明における「タッチセンサ電極」、「相互接続線」は、それぞれ本願発明1における「複数の検出電極」、「前記検出電極を端子部に電気的に接続するための複数の周辺配線」に相当し、引用発明においてタッチセンサ電極が配置される「アクティブ領域」が本願発明1における「検出領域」に相当し、引用発明において相互接続線等が配置される「非アクティブ領域」が本願発明1における「周辺配線領域」に相当する。
そして、引用発明において、表示層が「可撓性縁部の屈曲部」を有することは、本願発明1においてタッチパネル用導電シートが「屈曲部を有する三次元形状をなす」ことに相当する。
さらに、引用発明において「非アクティブ領域IAの曲がった領域144」にある「線セグメント150」が「導電メッシュ構造から形成される」ことは、本願発明1において「前記周辺配線が、前記検出電極をなす前記金属導体細線と同一材料の金属導体細線が交差して構成された網目状の第2金属メッシュからな」ることと、「前記周辺配線が、網目状の金属メッシュからな」ることで共通するといえる。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
検出領域に配置された複数の検出電極と、周辺配線領域に配置されて前記検出電極を端子部に電気的に接続するための複数の周辺配線とが形成され、且つ屈曲部を有する三次元形状をなすタッチパネル用導電シートであって、
前記周辺配線が、網目状の金属メッシュからなる
ことを特徴とするタッチパネル用導電シート。

(相違点)
(相違点1)本願発明1は、「タッチパネル用導電シート」が「樹脂フィルム」を有するのに対し、引用発明の表示層は、ポリマーおよび他の可撓性材料から形成されることが特定されるのみで樹脂フィルムを有することについて明記されていない点。

(相違点2)本願発明1は、「検出電極が、金属導体細線が交差して構成された網目状の第1金属メッシュからな」るものであるのに対し、引用発明は、そのような特定はされていない点。

(相違点3)本願発明1は、「前記周辺配線が、前記検出電極をなす前記金属導体細線と同一材料の金属導体細線が交差して構成された網目状の第2金属メッシュからな」るものであるのに対し、引用発明は、周辺配線を網目状の金属メッシュにすることについては記載されているもの、金属導体細線が交差して構成された網目状の金属メッシュとすることや、検出電極と同一材料とすることについては特定されていない点。

(相違点4)本願発明1は、「前記第1金属メッシュの線幅が5μm以下、開口率が94.0%以上であり、前記第1金属メッシュ及び前記第2金属メッシュを構成する前記金属導体細線の延在方向が前記樹脂フィルムの前記屈曲部の屈曲線方向に対して20°?70°の角度で傾斜」するものであるのに対し、引用発明は、そのような特定はされていない点。

(相違点5)本願発明1は、「前記屈曲部の屈曲線方向に対する前記第1金属メッシュの傾斜角度と、前記第2金属メッシュの傾斜角度とが同一である」のに対し、引用発明は、そのような特定はされていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2,4について検討する。相違点2に係る本願発明1の、「検出電極が、金属導体細線が交差して構成された網目状の第1金属メッシュからな」ることについて、引用文献2には、「接触検知電極、電極間配線、引出配線」が、「複数の導体細線によって網目状に形成される網目状導体」からなることが記載されており、引用発明、引用文献2に記載された発明はいずれもタッチパネルの導体を曲げることに関するものであるから、引用発明に引用文献2に記載された構成を適用し、「検出電極が、金属導体細線が交差して構成された網目状の第1金属メッシュからな」る構成とすることは容易になし得たものと認められる。
しかしながら、引用発明、引用文献2に記載された発明では、金属メッシュの線幅、開口率、屈曲線に対する角度をどのように設計すべきかについては具体的に特定されておらず、特に、「第1金属メッシュ」、「第2金属メッシュ」の金属導体細線の延在方向を「屈曲線方向に対して20°?70°の角度で傾斜」させることについて、引用文献2-9には一切記載されていない。また、引用文献1の図14には周辺配線を約30°?150°の角度で蛇行した経路とする例が記載されているものの、当該記載を参酌したとしても、金属メッシュの金属導体細線の延在方向を「屈曲線方向に対して20°?70°の角度で傾斜」させることまで容易になし得たものとはいえない。
そして、本願発明1は、相違点4に係る構成により、金属メッシュを構成する金属導体細線の延在方向と屈曲線方向とを所定角度で交差することで切断を生じ難くするという格別の効果を奏するものであるから、このような構成とすることが単なる設計的事項であるとはいえない。
よって、相違点4に係る「前記第1金属メッシュの線幅が5μm以下、開口率が94.0%以上であり、前記第1金属メッシュ及び前記第2金属メッシュを構成する前記金属導体細線の延在方向が前記樹脂フィルムの前記屈曲部の屈曲線方向に対して20°?70°の角度で傾斜」するという構成を引用発明に採用することが容易に想到し得たとはいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、及び、引用文献2-9に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-15について
本願発明2-15も、本願発明1と同様に、「前記第1金属メッシュの線幅が5μm以下、開口率が94.0%以上であり、前記第1金属メッシュ及び前記第2金属メッシュを構成する前記金属導体細線の延在方向が前記樹脂フィルムの前記屈曲部の屈曲線方向に対して20°?70°の角度で傾斜」するという構成を有するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、及び、引用文献2-9に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-15は、「前記第1金属メッシュの線幅が5μm以下、開口率が94.0%以上であり、前記第1金属メッシュ及び前記第2金属メッシュを構成する前記金属導体細線の延在方向が前記樹脂フィルムの前記屈曲部の屈曲線方向に対して20°?70°の角度で傾斜」するという事項を有するものとなっているため、本願発明1-15は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-9に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-01-07 
出願番号 特願2016-519140(P2016-519140)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 菅原 浩二  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 菊地 陽一
稲葉 和生
発明の名称 タッチパネル用導電シート及び静電容量式タッチパネル  
代理人 宮寺 利幸  
代理人 千馬 隆之  
代理人 坂井 志郎  
代理人 仲宗根 康晴  
代理人 関口 亨祐  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 大内 秀治  

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