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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C07K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C07K
管理番号 1347552
審判番号 不服2017-18889  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-20 
確定日 2019-01-22 
事件の表示 特願2016-517518「組換えマンネンタケ免疫調節タンパク質とヒト血清アルブミンの融合タンパク質及びその製造方法と応用」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月23日国際公開、WO2015/055026、平成28年12月15日国内公表、特表2016-539080、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年7月11日(パリ条約による優先権主張 2013年10月15日 中国)を国際出願日とする出願であって、平成28年12月27日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年4月10日付けで意見書が提出されたが、平成29年8月29日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年12月20日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年8月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1 理由1(特許法第29条第2項)
本願請求項1-6に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1-8に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献一覧
1.国際公開第2010/135854号
2.特表2011-508749号公報
3.韓国公開特許第10-2012-0079492号公報
4.米国特許出願公開第2004/0063635号明細書
5.国際公開第2013/067355号
6.Protein Expression and Purification,2012年,vol.84,pp.154-160
7.米国特許出願公開第2009/0053173号明細書
8.中国特許出願公開第101463089号明細書

2 理由2(特許法第36条第6項第2号)
請求項1-6に係る発明は不明確であり、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第3 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、平成29年12月20日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
配列番号1に一致するアミノ酸配列からなり、
組換えマンネンタケ免疫調節タンパク質のC末端が、ペプチドGGGGSSを介して、ヒト血清アルブミンに融合されている、
組換えマンネンタケ免疫調節タンパク質およびヒト血清アルブミンの融合タンパク質(rLZ-8-HSA)。
【請求項2】
請求項1に記載の融合タンパク質rLZ-8-HSAを使用することを含んでいる、化学療法薬による白血球減少症を治療する薬物を製造するための方法。
【請求項3】
請求項1に記載の融合タンパク質rLZ-8-HSAを使用することを含んでいる、メラノーマおよび肝癌を治療する薬物を製造するための方法。
【請求項4】
請求項1に記載の融合タンパク質rLZ-8-HSAを使用することを含んでいる、血小板減少症を治療する薬物を製造するための方法。
【請求項5】
請求項1に記載の融合タンパク質、および薬学に認められる補助剤を含んでいる、薬物製剤。
【請求項6】
経口液体、錠剤、丸薬およびカプセルを含む経口剤形、または
付け薬および注射剤を含む非経口剤形にて投与される、請求項5に記載の薬物製剤。」

第4 引用文献の記載事項
1 引用文献1(国際公開第2010/135854号)
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。なお、英語で記載されているので、当審による翻訳文で示す。
(1-1) 「組換えマンネンタケ免疫調節タンパク質の、血小板減少症の予防または治療のための使用が提供される。本発明は、また、組換えマンネンタケ免疫調節タンパク質及び薬学的に許容しうるアジュバントを含む薬学的組成物を提供する。」(表紙頁要約)
(1-2) 「マンネンタケ免疫調節タンパク質のアミノ酸配列:
MSDTALIFRLAWDVKKLSFDYTPNWGRGNPNNFIDTVTFPKVLTDKAYTYRVAVSGRNLGVKPSYAVESDGSQKVNFLEYNSGYGIADTNTIQVFVVDPDTNNDFIIAQWN.」(第5頁第7?9行)

2 引用文献2(特表2011-508749号公報)
原査定の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。
(2-1) 「本発明は、抗腫瘍、白血球数の増加および免疫学的拒絶の阻害等のための、組換えマンネンタケ(Ganoderma lucidium)免疫調節タンパク質(rLZ-8)の医学的使用に関する。該タンパク質遺伝子配列は、マンネンタケに由来し、そしてピキア・パストリス(Pichia pastoris)の真核生物発現系による組換え発現により適するように再設計された。・・・結論として、本発明の組換えマンネンタケ免疫調節タンパク質は、抗腫瘍薬剤または白血球数を増加させる薬剤または免疫阻害剤として使用可能である。」(第1頁要約)
(2-1) 「前記組換えマンネンタケ免疫調節タンパク質(rLZ-8)のアミノ酸配列が:
【化2】
MSDTALIFRLAWDVKKLSFDYTPNWGRGNPNNFIDTVTFPKVLTDKAYTYRVAVSGRNLGVKPSYAVESDGSQKVNFLEYNSGYGIADTNTIQVFVVDPDTNNDFIIAQWN
であり:」(第2頁第17?21行)

3 引用文献3(韓国公開特許第10-2012-0079492号公報)
原査定の理由に引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。なお、韓国語で記載されているので、当審による翻訳文で示す。
(3-1) 「本発明は、抗腫瘍、白血球増強および免疫抑制のための組換えマンネンタケ免疫調節タンパク質の医学的用途を含む生物医薬工学分野に関する。」(第4頁段落[0001])
(3-2) 「1989年に日本人キノらはマンネンタケ菌糸体抽出物から低分子のタンパク質を分離および精製し、LZ-8と名付けた。」(第4頁段落[0003])
(3-3) 「図13は、本発明の実施例によるrLZ-8タンパク質のアミノ酸配列である。」(第6頁段落[0013])
(3-4) 「図13



4 引用文献4(米国特許出願公開第2004/0063635号明細書)
原査定の理由に引用された引用文献4には、次の事項が記載されている。なお、英語で記載されているので、当審による翻訳文で示す。
(4-1) 「ヒト血清アルブミン(HSA)と生物学的活性分子との新規な組み換え融合タンパク質を使用することにより、一般的な健康を促進するためのまたは疾患を予防または治療するための組成物、キット及び方法が提供される。生物学的活性分子は、インビトロまたはインビボで生物学的機能を有するタンパク質またはペプチドであり得、好ましくはヒトに投与される場合、治療活性を有する。生物学的活性分子はHSAに融合させることによりインビボでの生物学的活性分子の安定性を改善することができ、インビボでの毒性の低下およびより長期にわたる治療効果のために治療指数が増加する。さらに、酵母におけるこれらの組み換えタンパク質の効率的で費用効果的生産のための製造プロセスが提供される。」(表紙頁要約)

5 引用文献5(国際公開第2013/067355号)
原査定の理由に引用された引用文献5には、次の事項が記載されている。なお、英語で記載されているので、当審による翻訳文で示す。
(5-1) 「他の局面において、本発明は、LRP6に結合する第1および第2のLRP6一本鎖Fv分子(scFv)およびヒト血清アルブミンを含む単離された低比重リポタンパク質関連タンパク質6(LRP6)構築物であって、第1および第2のscFv分子はヒト血清アルブミンのN-およびC-末端に連結されており、LRP6構築物は古典的Wntシグナル伝達経路を阻害し、LRP6構築物はLRP6結合タンパク質の存在下でWntシグナルの有意な増強を示さない、単離された構築物に関する。」(第3頁第26?32行)

6 引用文献6(Protein Expression and Purification,2012年,vol.84,pp.154-160)
原査定の理由に引用された引用文献6には、次の事項が記載されている。なお、英語で記載されているので、当審による翻訳文で示す。
(6-1) 「この研究では、HSAと遺伝的に融合したhIL-2からなる融合タンパク質をピキア・パストリスのAOX1プロモーターの下で分泌タンパク質として発現させた。・・・精製されたrhIL-2-HSA融合タンパク質は、抗hIL-2抗体及び抗HSAモノクローナル抗体の両方によって認識され得る。生物活性分析により、精製されたrhIL-2-HSA融合タンパク質は、CTLL2細胞におけるIL-2依存的な様式での増殖に対して高レベルの活性を有することが示された。rhIL-2-HSA融合タンパク質は、また、BALB/cマウスモデルで試験した場合、IL-2と比較して血漿中で延長された半減期を示した。」(第154頁要約)

7 引用文献7(米国特許出願公開第2009/0053173号明細書)
原査定の理由に引用された引用文献7には、次の事項が記載されている。なお、英語で記載されているので、当審による翻訳文で示す。
(7-1) 「一般的な健康を促進するためまたは疾患の治療的処置のために、インターフェロン類似体の組成物、キット及び方法が提供される。ヒトインターフェロン類似体は、インターフェロンとヒト血清アルブミンとの融合によって作製される。バイオアッセイは、インターフェロン類似体は、ウイルス攻撃に対してインターフェロンと同じ細胞防御能を有しており、インビボにおいて3?10倍長い作用機能を有することを示す。・・・また、インターフェロンと比較して3?5倍長い貯蔵寿命を有する。」(表紙頁要約)

8 引用文献8(中国特許出願公開第101463089号明細書)
原査定の理由に引用された引用文献8には、次の事項が記載されている。なお、中国語で記載されているので、当審による翻訳文で示す。
(8-1) 「本発明は、ヒト血清アルブミン-インターフェロン融合タンパク質およびそのコード遺伝子およびその適用を開示する。・・・本発明の融合タンパク質は、高い安定性、長い半減期及び高い安全性及び良好な治療効果を医学的に有する。」(第1頁要約)

第5 進歩性についての判断
1 引用発明
上記第4の1によれば、引用文献1には次のとおりの発明が記載されていると認められる。
「アミノ酸配列
MSDTALIFRLAWDVKKLSFDYTPNWGRGNPNNFIDTVTFPKVLTDKAYTYRVAVSGRNLGVKPSYAVESDGSQKVNFLEYNSGYGIADTNTIQVFVVDPDTNNDFIIAQWNからなる、
組換えマンネンタケ免疫調節タンパク質。」(以下、「引用発明1」という。)
また、上記第4の2によれば、引用文献2には次のとおりの発明が記載されていると認められる。
「アミノ酸配列
MSDTALIFRLAWDVKKLSFDYTPNWGRGNPNNFIDTVTFPKVLTDKAYTYRVAVSGRNLGVKPSYAVESDGSQKVNFLEYNSGYGIADTNTIQVFVVDPDTNNDFIIAQWN
からなる、組換えマンネンタケ免疫調節タンパク質。」(以下、「引用発明2」という。)
さらに、上記第4の3によれば、引用文献3には次のとおりの発明が記載されていると認められる。
「アミノ酸配列

からなる、組換えマンネンタケ免疫調節タンパク質。」(以下、「引用発明3」という。)
ここで、引用発明1-3のアミノ酸配列は一致し、引用発明1-3は同一の発明であるため、以下、これらをまとめて「引用発明」という。

2 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、両者は、組換えマンネンタケ免疫調節タンパク質を構成要素とする点で共通するところ、本願発明1の組換えマンネンタケ免疫調節タンパク質部分(配列番号1の第1-110位)と引用発明のアミノ酸配列は97.3%の同一性を有する。したがって、両者は、組換えマンネンタケ免疫調節タンパク質の点で一致し、次の点で相違する。
相違点: 本願発明1は、組換えマンネンタケ免疫調節タンパク質のC末端がペプチドGGGGSSを介してヒト血清アルブミンに融合されており、全体として配列番号1に一致するアミノ酸配列からなる融合タンパク質であるのに対して、引用発明は組換えマンネンタケ免疫調節タンパク質のみからなるものであって、本願発明1の組換えマンネンタケ免疫調節タンパク質部分のアミノ酸配列と97.3%の同一性を有する点。

3 判断
引用文献1-3には、組換えマンネンタケ免疫調節タンパク質を他のタンパク質と融合することについては記載がない。一方、引用文献4-8によれば、本願優先日当時、生物学的に活性な各種タンパク質をヒト血清アルブミンとの融合タンパク質とすることで安定性や半減期が改善できることが広く知られていたとは認められる。しかしながら、ペプチドGGGGSSからなるリンカーが周知慣用であるとは認められず、引用発明の組換えマンネンタケ免疫調節タンパク質について、リンカーとしてGGGGSSという特定のものを用いて、そのC末端側にヒト血清アルブミンを融合することが当業者にとって容易想到であったとまでは認められない。しかも、本願発明1と引用発明とでは組換えマンネンタケ免疫調節タンパク質部分のアミノ酸配列に部分的な相違があるところ、本願の配列番号1の1-110位のとおりの特定のアミノ酸配列に変更することの動機付けも見いだせない。
そして、本願発明1の融合ペプチドが、インビトロおよびインビボにおいて組換えマンネンタケ免疫調節タンパク質よりも優れた生物活性やその持続性、半減期を示した(表1-7、図4)のみならず、ヒト血清アルブミンに替えて融合対象として広く用いられているIgG1のFc断片(Fc1)またはIgG4のFc断片(Fc4)と融合させた場合と比較して優れた生物活性を示したという効果(表1)は、引用文献1-8から予測し得るものではない。
したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献4-8記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいうことができない。
本願発明2-6も本願発明1と同一の構成を含むものであるから、同様に、引用発明及び引用文献4-8記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

第6 原査定について
1 理由1(特許法第29条第2項)について
上記第5のとおりであるから、当業者であっても、本願発明1-6は、拒絶査定において引用された引用文献1-8に基づいて容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

2 理由2(特許法第36条第6項第2号)について
審判請求時の補正により、請求項1-6において特許を受けようとする発明のカテゴリーが明確になり、その他の不明瞭な記載や誤記が明瞭な記載にされた。したがって、原査定の理由2を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-01-04 
出願番号 特願2016-517518(P2016-517518)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (C07K)
P 1 8・ 121- WY (C07K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 白井 美香保  
特許庁審判長 中島 庸子
特許庁審判官 澤田 浩平
長井 啓子
発明の名称 組換えマンネンタケ免疫調節タンパク質とヒト血清アルブミンの融合タンパク質及びその製造方法と応用  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
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