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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61M
管理番号 1347561
審判番号 不服2017-427  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-12 
確定日 2019-01-04 
事件の表示 特願2013-549676「加湿器」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月 2日国際公開、WO2012/100291、平成26年 3月17日国内公表、特表2014-506486〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)1月24日(優先権主張 平成23年1月24日)を国際出願日とする特許出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成28年 1月 6日付け:拒絶理由通知書
平成28年 4月18日 :意見書の提出
平成28年 9月 1日付け:拒絶査定
平成29年 1月12日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成29年 1月19日 :手続補正書(方式)の提出
平成29年12月20日付け:拒絶理由通知書
平成30年 4月25日 :意見書、手続補正書の提出


第2 本件発明
平成30年4月25日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の発明(以下、「本件発明」という。)は、以下のとおりである。
「電気的抵抗性および熱伝導性のある材料からなる多孔質構造体であって、蒸気出口を有する多孔質構造体と、
前記多孔質構造体へ送達させるためのある量の液体を受け入れる液体入口と、
前記多孔質構造体の少なくとも一部を囲んで前記ある量の液体を封じ込める外側ハウジングと、
を備える加湿器であって、
前記多孔質構造体が、前記多孔質構造体に電圧が印加されると熱が発生して前記ある量の液体を実質的に蒸発させるように構成され、且つ、前記蒸気出口が、生じた蒸気を前記外側ハウジングから呼吸ガス流れ経路の中へ送達させて、前記呼吸ガス流れ経路の中を流れるガスを加湿するように構成されており、
前記蒸気出口が、前記呼吸ガス流れ経路内の呼吸に適したガスの流れに曝されるように構成されている、加湿器。」


第3 拒絶の理由
本件発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1及び引用文献2に記載された発明並びに周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
1.特開平10-28737号公報
2.特開昭49-128337号公報


第4 引用文献の記載及び引用発明
当審の拒絶理由通知で引用した特開平10-28737号公報(以下、「引用文献」という。)には、その図面とともに、以下の事項が記載されている。
【請求項1】には「発熱体の外面に、径が微細とされると共に水を通過させないで水蒸気を通過させる微孔保有周壁をそれぞれ備える多数の中空繊維が保持されている、ことを特徴とする加湿調整ユニット。」と記載されている。
段落【0049】には、「その図1において、1は、患者の肺に接続されるアダプタ(図示略)と吸気ガス供給源(図示略)とを接続する人工呼吸器における吸気回路の吸気管1で、この吸気管1の内部が吸気通路2を構成することになっており、この吸気通路2を通って、吸気ガス3(吸気ガスの存在と、その流れ方向を矢印で示す)が吸気ガス供給源からアダプタに向けて流れることになっている。」と記載されている。
段落【0053】には、「加湿構成体7は、図3に示すように、発熱体13と、該発熱体13の外面に保持される多数の中空繊維14と、該発熱体13及び多数の中空繊維14を嵌挿するメッシュカバ-チュ-ブ15とを備えている。」と記載されている。
【図1】には、吸気通路(2)内に加湿構成体(7)が吸気ガス(3)の流れ方向に沿って配置されている点が開示されている。

まず、中空繊維の微孔保有周壁における微孔は水蒸気を通過させることから、当該微孔は水蒸気放出部であるといえ、加湿調整ユニット(4)は水蒸気放出部を有する中空繊維(14)を備えた加湿構造体(7)を備えるといえる。
さらに、加湿構造体(7)は吸気通路(2)内の吸気ガス(3)の流れ方向に沿って配置されることから、中空繊維(14)の水蒸気放出部から生じた水蒸気は吸気通路(2)に供給され、当該吸気通路(2)の中を流れる吸気ガス(3)を加湿するように構成されており、前記水蒸気放出部が、吸気通路(2)内の通気ガス(3)の流れに曝されるように構成されている点が開示されているといえる。

してみれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「水蒸気放出部を有する加湿構成体(7)、
を備える加湿調整ユニット(4)であって、
前記水蒸気放出部が、生じた水蒸気を吸気通路(2)に供給して、前記吸気通路(2)の中を流れる吸気ガス(3)を加湿するように構成されており、
前記水蒸気放出部が、吸気通路(2)内の吸気ガス(3)の流れに曝されるように構成されている、
加湿調整ユニット。」


第5 対比
本件発明と引用発明を対比すると、以下のとおりである。
引用発明の「水蒸気放出部」は、本件発明の「蒸気出口」に相当し、以下同様に、「水蒸気」は「蒸気」に、「供給」は「送達」に、「加湿調整ユニット(4)」は「加湿器」に、「吸気通路(2)」は「呼吸ガス流れ経路」に、「吸気ガス(3)」は「ガス」に、それぞれ相当する。
また、「加湿構成体7」は、加湿手段である点で、「多孔質構造体」と共通する。

してみれば、本件発明と引用発明とは、以下の構成において一致する。
「蒸気出口を有する加湿手段
を備える加湿器であって、
前記蒸気出口が、生じた蒸気を呼吸ガス流れ流路に送達して、前記呼吸ガス流れ経路の中を流れるガスを加湿するように構成されており、
前記蒸気出口が、前記呼吸ガス流れ経路内のガスの流れに曝されるように構成されている、
加湿器。」

本件発明と引用発明とは、以下の2点で相違する。

(相違点1)
本件発明の「加湿器」は、「電気的抵抗性および熱伝導性のある材料からなる多孔構造体」と、「前記多孔質構造体へ送達させるためのある量の液体を受け入れる液体入口と、多孔質構造体の少なくとも一部を囲んで前記ある量の液体を封じ込める外側ハウジングと、を備える」ものであり、当該「多孔質構造体が、前記多孔質構造体に電圧が印加されると熱が発生してある量の液体を実質的に蒸発させるように構成され」ているものであるのに対して、引用発明1の「加湿調整ユニット」は、「加湿手段」は備えるものの、このような構成を有しない点。

(相違点2)
本件発明の「蒸気出口」が「呼吸に適したガスの流れに曝される」のに対して、引用発明の「水蒸気放出部」がそのような構成を有しているか明らかでない点。

第6 判断
上記相違点1について検討する。
当審の拒絶理由通知で引用した特開昭49-128337号公報(以下、「引用文献2」という。)には、その図面とともに、以下の事項が記載されている。
引用文献2の3ページ右下欄6行ないし4ページ左上欄16行には、「第2図による実施例の場合は構成要素は伝熱体合金製の薄壁管7であつて、この中で多孔性物体1’が管の内壁と電気的には絶縁されながらも熱的には伝導関係を持つて配置されている。電気的絶縁は絶縁ワニスの層8によつて行なうことが出来る。この管7は再び断熱性被覆10によつて包囲されている。
この実施例にあつては、管7と多孔性物体1’は電気的に直列に接続されている。この目的のため、図面中の多孔性物体1’と管7双方の右側末端は金属製蓋11によつて導電的に相互に接続されている。図面中の多孔性物体1’の左側末端は電源の一極と接続された接続部12を備えている。この電源の他の極は、多孔性物体1と接続部12に対して電気的に絶縁された図面中の左側の管7の末端と接続されている。加熱すべき媒体は接続部12を通つて供給され、矢印6の方向に多孔性物体1’を貫流して、場合によっては蒸気の形で蓋11内の中央開口部13を通って排出する。
冒頭に述べた如く、構成要素のすなわちこの場合は管7の電気的抵抗は多孔性物体1’の電気抵抗の倍数である。この結果、多孔性物体1’は直接的な電流通過では管7よりも暖まらず、むしろ多孔性物体1’の望み通りの加熱はもつぱら管7から与えられる熱を受容することによつて行なわれる。管7と多孔性物体1’の抵抗比はほぼ5:1になる。電気抵抗を高めるためには、帯の全長が伝熱体として作用する様に彎曲部に互いに距離をもたせた帯で管7をくるむことで良い。」と記載されている。
また、Fig2には、管(7)は多孔性物体(1’)の少なくとも一部を囲む点が開示されている。

上記記載を踏まえると、引用文献2の「多孔性物体(1’)」は、「電気的抵抗性および熱伝導性のある材料からなる」点が記載されているといえる。
「加熱すべき媒体は接続部12を通つて供給」されることから、引用文献2の「加湿器」は、「多孔性物体(1’)に供給させるための入口」を備えているといえる。
また、上記「多孔性物体(1’)」に電流通過する、すなわち、「電圧が印可されると熱が発生する」点が記載されているといえる。
さらに、引用文献2の「媒体」は「多孔性物体(1’)」を貫流し、「蒸気」は「中央開口部(13)」を通って排出されることから、当該蒸気は「多孔性物体(1’)」の当該「中央開口部13」に対向する部分を通過していることは明らかである。これを踏まえると、引用文献2には「管(7)は多孔性物体(1’)の少なくとも一部(中央開口部(13)の部分を除いて)を囲んで」いる点、多孔性物体(1’)の当該「対向する部分」が「蒸気出口」として構成される点がそれぞれ記載されているといえる。
そして、「管(7)」内に「入口」から「ある量の媒体」が供給された場合に、当該「ある量の媒体」は、これら「管(7)」と「多孔性物体(1’)」で定められる空間内にを「封じ込め」られた状態となり、この状態で加熱されることで「実質的に蒸発」するよう構成されるものであることは明らかである。

してみれば、引用文献2には、上記の記載事項および開示事項からみて、「電気的抵抗性および熱伝導性のある材料からなる多孔性物体(1’)であって、前記多孔性物体(1’)へ供給するためのある量の媒体を受け入れる入口と、蒸気出口を有する多孔性物体(1’)と、前記多孔性物体(1’)の少なくとも一部を囲んである量の液体を封じ込める管(7)とを備える蒸気発生手段であって、当該多孔性物体(1’)は電圧が印可されると熱が発生して、ある量の媒体を実質的に蒸発させるよう構成された蒸気発生手段。」という事項が記載されているといえる。

引用発明の「加湿手段」として引用文献2に記載の蒸気発生手段を採用することは、蒸気発生という同一技術分野に属する公知の技術的手段を単に置換したものに過ぎないので、当業者にとって何ら困難性はなく、引用発明に上記引用文献2に記載の事項を適用して、上記相違点1に係る本件発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たものである。


次に、上記相違点2について検討する。
引用発明の「加湿調整ユニット」が人工呼吸器に用いるものであり、水蒸気を患者に対して供給することを踏まえれば、当該水蒸気を「吸気ガス(3)」の流れに曝すに当たって、患者の「呼吸に適した」ものとなるよう調整する程度のことは、必要に応じて設定することのできる単なる設計事項に過ぎない。


請求人は、平成30年4月25日提出の意見書において、
「審判官殿のこのご判断について出願人は次のように反論致します。すなわち、引用文献1に開示の発明に「抵抗加熱要素としての多孔性物質」を適用すると、引用文献1の技術的解決手段を根本的に変更することになります。引用文献1に開示の発明は、加湿器が破損したときにも水漏れに関連する不都合を著しく改善するチューブ内の加湿器に関するものです。引用文献1に開示された発明では、水が中空繊維に送達されますが、繊維材料の微孔保有周壁の制限された空孔率によって、水蒸気だけが多数の中空繊維を通過し、水は中空繊維の内部の管腔(lumen)内に閉じ込められます。そのため、加湿器への損傷の程度にかかわらず、繊維は常に液体水の漏れが防止されます。」
と主張する。
しかしながら、加湿器が破損したときの水漏れの不都合を改善することは、本件発明の技術的課題ではなく、請求人が主張するような特殊事情にまで配慮する必要はない。

また、請求人は、同意見書において、「引用文献2に開示の発明では、液体が電気的電熱体16を通ることになっています(第165頁左上欄第8行?第10行)。そのため、引用文献1に開示の「多数の中空繊維14及び電気的抵抗性ある材料を有する発熱体13」を引用文献2の「抵抗加熱要素としての多孔性物体」に置き換えると、引用文献1に開示の「問題を解決するための手段」を根本的に変更する必要があります。
従って、当業者が引用文献1に開示の発明を引用文献2の記載事項及び周知技術に基づいて変更することは考え難いと思われます。」
と主張する。
しかしながら、「問題を解決するための手段」が何を指すのか不明であり、「根本的に変更する必要があります。」とする理由についても不明である。

さらに、請求人は、「引用文献2に開示の発明は加湿器に関するものでなく、炭化水素燃料を気化させるための装置に関するものです(第165頁左上欄第11行?第13行)。当業者が、引用文献1の人工呼吸器を改造するために炭化水素燃料を気化させるための装置を検討することは考え難いと思われます。」
と主張する。
しかしながら、本件発明における加熱対象は「液体」であり、「水」と限定しているわけではない。また、本件発明は、液体を蒸発させるための加熱手段として、「通電のみ」と限定しているわけでもない。
仮に、本件発明が、加熱対象を「水」に限定し、「通電のみ」による加熱で液体を蒸発させるものであったとしても、そもそも、蒸気発生の技術分野において、多孔性物体を通電発熱することで蒸気を発生させることは優先日当時の技術水準からみて従来周知の技術的手段である(国際公開第2010/073160号の段落【0020】、段落【0016】およびFIG.4、特開平4-340041号公報の段落【0010】及び【図1】等を参照。)ことを踏まえれば、引用文献2に開示された「蒸気発生手段」に触れた当業者が、当該「蒸気発生手段」を引用発明の「水蒸気発生手段」として採用しようとする動機付けは充分に存在するといえる。また、水を蒸発させるにあたって、多孔性物体として、引用文献2に記載のホイスカーのほか、SiCや炭素繊維などの材料のうちからどれを採用するかは、実施する際に、供給する水の量や加熱量、効率性等を勘案して、必要に応じて選択することのできる単なる設計事項に過ぎず、当業者にとって通常の創作能力の発揮に過ぎない。

よって、請求人の主張は採用できない。

そして、本件発明の効果も、引用発明、引用文献2に記載された事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものに過ぎず、格別顕著なものということはできない。


第7 むすび
以上のとおり、本件発明は、引用文献1及び2に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-08-01 
結審通知日 2018-08-06 
審決日 2018-08-17 
出願番号 特願2013-549676(P2013-549676)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金丸 治之久島 弘太郎  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 瀬戸 康平
芦原 康裕
発明の名称 加湿器  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 阿部 達彦  
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