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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1347609
審判番号 不服2018-1555  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-05 
確定日 2019-01-04 
事件の表示 特願2016- 13435号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月 3日出願公開、特開2017-131380号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年1月27日の出願であって、同年10月25日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月20日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年5月9日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年7月6日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年11月2日付けで、同年7月6日付け手続補正でした補正の却下の決定がなされるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、平成30年2月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成30年2月5日付け手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成30年2月5日付け手続補正についての補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、平成28年12月20日付け手続補正によって補正された本件補正前の請求項1に、
「表示手段と、
操作検出手段と、
演出メッセージ表示領域を前記表示手段に設定し、前記演出メッセージ表示領域を設定しているときに所定のエラーを検出した場合に前記演出メッセージ表示領域に重ねてエラーメッセージ表示領域を設定し、
遊技者に対し前記操作検出手段の操作を促す操作促進画像を表示する操作促進画像表示領域を前記表示手段に設定し、前記操作促進画像表示領域を設定しているときに前記所定のエラーを検出した場合に前記操作促進画像であることを認識可能な状態で前記操作促進画像表示領域に重ねて前記エラーメッセージ表示領域を設定する制御手段と、
を含む遊技機。」とあったものを、

「表示手段と、
操作検出手段と、
演出メッセージを前記表示手段に表示し、前記演出メッセージを表示しているときに所定のエラーを検出した場合に前記演出メッセージがエラーメッセージの視認性を妨げない状態となるように前記演出メッセージに前記エラーメッセージを重ねて表示し、
前記演出メッセージとして遊技者に対し前記操作検出手段の操作を促す操作促進画像を前記表示手段に表示し、前記操作促進画像を表示しているときに前記所定のエラーを検出した場合に、前記操作促進画像であることを認識可能な状態としつつ前記操作促進画像が前記エラーメッセージの視認性を妨げない状態となるように前記操作促進画像の前面側に前記エラーメッセージを重ねて表示する制御手段と、
を含む遊技機。」とする補正を含むものである(下線は、補正前後の箇所を明示するために合議体が付した。)。

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、次の補正事項からなる。
ア 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「演出メッセージ表示領域」を「演出メッセージ」とする補正。
イ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「エラーメッセージ表示領域」を「エラーメッセージ」とする補正。
ウ 本件補正前の請求項1に「演出メッセージ表示領域」又は「エラーメッセージ表示領域」を「表示手段」に「設定」していたものから、「演出メッセージ」又は「エラーメッセージ」を「表示手段」に「表示」するとする補正。
エ 本件補正前の請求項1に「所定のエラーを検出した場合に前記演出メッセージ表示領域に重ねてエラーメッセージ表示領域を設定」とあったものを、「所定のエラーを検出した場合に前記演出メッセージがエラーメッセージの視認性を妨げない状態となるように前記演出メッセージに前記エラーメッセージを重ねて表示」とする補正。
オ 本件補正前の請求項1に「遊技者に対し前記操作検出手段の操作を促す操作促進画像を表示する操作促進画像表示領域を前記表示手段に設定」とあったものを、「前記演出メッセージとして遊技者に対し前記操作検出手段の操作を促す操作促進画像を前記表示手段に表示」とする補正。
カ 本件補正前の請求項1に「前記操作促進画像表示領域を設定しているときに前記所定のエラーを検出した場合に前記操作促進画像であることを認識可能な状態で前記操作促進画像表示領域に重ねて前記エラーメッセージ表示領域を設定する」とあったものを、「前記操作促進画像を表示しているときに前記所定のエラーを検出した場合に、前記操作促進画像であることを認識可能な状態としつつ前記操作促進画像が前記エラーメッセージの視認性を妨げない状態となるように前記操作促進画像の前面側に前記エラーメッセージを重ねて表示する」とする補正。

2 本件補正の目的
(1)ア 上記1(2)アないしウ、オの補正は、本件補正前における表示手段における表示内容を具体的に特定していないものから、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)の【0972】ないし【0985】、図149等の記載に基づいて、表示手段による表示内容を「演出メッセージ」及び「エラーメッセージ」と、具体的に特定して限定するものである。
イ 上記1(2)エの補正は、上記(ア)における限定に加えて、当初明細書等の【0982】、図149等の記載に基づいて、「演出メッセージにエラーメッセージを重ねて表示」すするのが「演出メッセージがエラーメッセージの視認性を妨げない状態となるように」と限定するものである。
ウ 上記1(2)カの補正は、上記(ア)における限定に加えて、当初明細書等の【0979】、図149等の記載に基づいて、「操作促進画像の前面側にエラーメッセージを重ねて表示する」のが「前記操作促進画像であることを認識可能な状態としつつ前記操作促進画像が前記エラーメッセージの視認性を妨げない状態となるように」と限定するものである。

(2)以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)の補正は、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。また、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)の補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が補正の前後において同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明を再掲すると、次のとおりのものである。なお、記号AないしEは、分説するため合議体が付した。

「A 表示手段と、
B 操作検出手段と、
C 演出メッセージを前記表示手段に表示し、前記演出メッセージを表示しているときに所定のエラーを検出した場合に前記演出メッセージがエラーメッセージの視認性を妨げない状態となるように前記演出メッセージに前記エラーメッセージを重ねて表示し、
D 前記演出メッセージとして遊技者に対し前記操作検出手段の操作を促す操作促進画像を前記表示手段に表示し、前記操作促進画像を表示しているときに前記所定のエラーを検出した場合に、前記操作促進画像であることを認識可能な状態としつつ前記操作促進画像が前記エラーメッセージの視認性を妨げない状態となるように前記操作促進画像の前面側に前記エラーメッセージを重ねて表示する制御手段と、
E を含む遊技機。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-8848号公報(平成27年1月19日出願公開、以下「引用例」という。)には、遊技台に関し、次の事項が図とともに記載されている(下線は引用発明等の認定に関連する箇所を明示するために合議体が付した。以下同様。)。
ア 「【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態1に係る遊技台(例えば、パチンコ機100等の弾球遊技機やスロット機等の回胴遊技機)について詳細に説明する。
【0010】
<全体構成>
まず、図1を用いて、本発明の実施形態1に係るパチンコ機100の全体構成について説明する。なお、同図はパチンコ機100を正面側(遊技者側)から見た外観斜視図である。
【0011】
パチンコ機100は、外部的構造として、外枠102と、本体104と、前面枠扉106と、球貯留皿付扉108と、発射装置110と、遊技盤200と、をその前面に備える。
・・・略・・・
【0021】
図3は、遊技盤200を正面から見た略示正面図である。遊技盤200には、外レール202と内レール204とを配設し、遊技球が転動可能な遊技領域124を区画形成している。
【0022】
遊技領域124の略中央には、演出装置206を配設している。この演出装置206には、略中央に装飾図柄表示装置208を配設し、その周囲に、普通図柄表示装置210と、第1特別図柄表示装置212と、第2特別図柄表示装置214と、普通図柄保留ランプ216と、第1特別図柄保留ランプ218と、第2特別図柄保留ランプ220と、高確中ランプ222を配設している。なお、以下、普通図柄を「普図」、特別図柄を「特図」と称する場合がある。」
イ 「【図3】


ウ 「【0254】
<演出装置による演出(変動遊技の流れ)の一例>
遊技の興趣の向上を目的として、演出装置206(例えば、装飾図柄表示装置208や、演出可動体224など)による演出の多様化が図られている。一方で、パチンコ機100では様々なエラーが起こりうる場合があり、演出装置206等を用いてエラーを報知することで、遊技者の不利益の防止や不正者の不正行為等の早期発見を促すようにしている。
【0255】
しかしながら、エラー報知を過剰に行いすぎてしまうとエラー報知のみに注目が集まってしまい、演出への注目が低下してしまう問題点が指摘される。
【0256】
本実施形態のパチンコ機100は、演出に注目させることが可能な報知手段を有するものであり、以下これについて具体的に説明する。
【0257】
まず、本実施形態の説明の前提として、図21および図22を参照して、エラーの報知を行っていない状態の、装飾図柄表示装置208による演出の一例について説明する。
【0258】
装飾図柄表示装置208をはじめとする演出装置206では、情報に対応する報知を少なくとも実行可能である。情報とは例えば、遊技(デモ中の演出も含む)に関する情報やパチンコ機100のエラーに関する情報である。」
エ 「【0426】
<実施例3>
図33は、遊技中に重要度の高いエラーを報知する場合の演出の一例を時系列で示した概要図である。
【0427】
図33(a)に示すタイミングは、特図変動遊技において変動を停止した状態で、かつ、特図1変動遊技が4つ保留されている状態を示している。この状態では、主制御部300は、図示しない第1特図表示装置212(または第2特図表示装置214)を用いて特図のはずれの停止表示を行うとともに、図示しない第1特図保留ランプ218を4つ点灯することで、特図1変動遊技の保留数が4であることを報知する。
【0428】
また、第2副制御部500は、特図の停止表示に合わせて、装飾図柄表示装置208の左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208cを用いて、はずれに対応する装飾図柄の図柄組合せ(この例では、「装飾2-装飾7-装飾3」)を停止表示するとともに、特図1保留表示領域208d1に、通常保留の保留アイコンPI1?PI4を表示することで、特図1変動遊技の保留数が4であることを報知する。また、特図1保留数表示領域208g1には、特図1の保留数「4」を表示し、特図2保留数表示領域208g2には、特図2の保留数「0」を表示している。
【0429】
図33(b)に示すタイミングは、同図(a)の保留アイコンPI1_1の消化による特図1変動遊技が実行中で、かつ、特図1変動遊技の保留が3になった状態を示している。特図1変動遊技の実行中の状態では、主制御部300は、特図1表示装置212を用いて特図1の変動表示を開始するとともに、図示しない第1特図保留ランプ218を3つ点灯して、特図1変動遊技の保留数が3であることを報知する。また、第2副制御部500は、特図1用の第4図柄表示領域208f1を点滅表示して変動中であることを報知し、図柄表示領域208a?208cに、装飾図柄の変動表示を実行している。またこの状態では、第2副制御部500は、実行中(消化中)の特図変動遊技に対応する変動アイコンCIを、変動表示領域208d3に表示し、特図1保留表示領域208d1に、保留アイコンPI1_1?PI1_3を表示する。さらに、特図1保留数表示領域208g1には、特図1の保留数「3」を表示し、特図2保留数表示領域208g2には、特図2の保留数「0」を表示している。
【0430】
図33(c)に示すタイミングは、変動遊技中に振動センサーエラーが発生した状態を示している。
【0431】
振動センサーエラーは、振動検知手段(各種センサ320に含まれる、振動検知センサ)が、閾値を超える振動を検出した場合に少なくともエラーと判定されるものである。このエラーは、不正者が遊技台をたたく等の行為をした場合に検出される可能性があるものであって、振動検知センサー自体が壊れていることをエラーとするものではない。
【0432】
第2副制御部500は、主制御部300から振動センサーエラーの情報を受信すると、装飾図柄表示装置208で行っていた、変動遊技等の通常の演出表示を消去し(通常の演出表示の前面に重ねて)、振動エラー表示E2を行う。振動エラー表示Eは例えば「振動エラーが発生しました! エラー解除SWを操作してエラーを解除してください。」などの文字列を表示する。また、振動エラー表示E2に加えて、音声による報知(警報)も同時に実行される。
【0433】
振動センサーエラーは、上述の如く不正行為との関連性が高く、エラー報知のうちでも重要度の高いエラーである。したがって、このような重要度の高いエラーを報知する場合には、遊技は停止される。また、重要度の高いエラーは、他の報知(第一の報知)によって視認困難とならないように、報知される(例えば、ここでは、装飾図柄表示装置208には、振動エラー表示E2以外の表示は行われていない)。
【0434】
振動センサーエラー(重要度の高いエラー)は、店員等がエラー解除スイッチ168を操作することによって、解除可能である。換言すれば、エラー解除スイッチ168の操作を受付けるまでは、エラー解除が行われない。
【0435】
図33(d)は、店員等が払出基板172に備えられているエラー解除スイッチ168を操作している状態を示している。このようにエラー解除スイッチ168が操作されることによって、振動センサーエラーは解除され、図33(e)に示すように、装飾図柄表示領域208に、エラーに関する表示(振動エラー解除表示E3)が表示される。
【0436】
図33(f)に示すタイミングは、同図(b)に示す変動遊技の演出表示が復帰した状態である。この状態では、振動センサーエラーが解除された直後であるので、変動遊技の演出表示に合わせて、引き続き、装飾図柄表示装置208のエラー情報報知領域208hに、エラー情報表示E(振動エラー解除表示E4)が表示される。図示のように、この場合の振動エラー解除表示E4は、図33(e)の振動エラー解除表示E3と異なる表示態様であってもよいし同じ表示態様であってもよい。
【0437】
この場合、変動する装飾図柄(遊技に関する情報(変動中であるという情報)の報知)によって、エラーに関する情報の報知が遊技者に視認困難となっている。つまり、実施例3では、特図1の変動遊技中である情報(第一の情報)に対応する変動する装飾図柄が第一の報知であり、振動エラー解除表示E4が第三の報知である。また、特図1の変動遊技中である情報(第一の情報)を報知する、特図1用の第4図柄表示領域208f1の点滅表示が、第二の報知となる。エラー解除情報の報知(振動エラー解除表示E4)は、重要度の低いエラーに関する情報の報知であるので、第一の報知によって遊技者に視認困難としても問題はなく、エラーの過剰な報知を防止することができる。また、エラー解除情報の報知中であっても、遊技は進行できる。
【0438】
なお、実施例3において、図33(e)に示す振動エラー解除表示E3を行わず、同図(f)の演出表示に復帰するものであってもよい。
【0439】
このように、相対的に重要度の高いエラー(第一のエラー)の場合には、遊技を停止するとともに、当該エラーの報知が遊技者(または店員)に視認容易となるように報知する。つまり第一のエラーの報知は、他の情報の報知(第一の報知など)によって視認困難とされるものではなく、この場合本実施形態の第三の報知とならない。一方、相対的に重要度の低いエラー(第二のエラー)の場合には、遊技に関する第一の報知によって、第二のエラーの報知を視認困難とするものであり、この場合、第二のエラー報知は第三の報知ということができる。」
オ 「【図33】


カ 「【0440】
<実施例4>
図34は、デモを含む遊技中において、エラーを報知する場合の演出の一例を時系列で示した概要図であり、ここではデモ中に、遊技者ごとの個別識別情報の設定モードが実行される場合を例に示す。
【0441】
図34(a)に示すタイミングは、特図1変動遊技が実行中で、かつ、特図1変動遊技、特図2変動遊技の保留がいずれも0の状態を示している。第2副制御部500は、特図1用の第4図柄表示領域208f1を点滅表示して変動中であることを報知するとともに図柄表示領域208a?208cに、装飾図柄の変動表示を実行している。
【0442】
図34(b)に示すタイミングは、特図1変動遊技の実行中に扉開放エラーが検出された状態を示す。前面枠扉開放センサ1061によって前面枠扉106の開放が検出された場合、第2副制御部500は、装飾図柄表示装置208のエラー情報報知領域208hに、エラー情報表示E(扉開放エラー表示E5)を表示して、エラーを報知する。なお、このエラーは、相対的に重要度の低いエラーということができ、遊技は進行可能である。なお、扉開放エラーは、前面枠扉開放センサ1061による前面枠扉106の開放の検出だけでなく、内枠開放センサ1041による本体104の開放の検出や、球貯留皿付扉開放センサ1082による球貯留皿付扉108の開放の検出であってもよい。
【0443】
図34(c)に示すタイミングは、特図1変動遊技において変動を停止した状態を示している。この状態では、主制御部300は、図示しない第1特図表示装置212を用いて特図のはずれの停止表示を行うとともに、第2副制御部500は、特図の停止表示に合わせて、装飾図柄表示装置208の左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208cを用いて、はずれに対応する装飾図柄の図柄組合せ(この例では、「装飾2-装飾7-装飾3」)を停止表示している。また、第2副制御部500は(エラー解除条件が成立していないため)、エラー情報報知領域208hのエラー情報表示E(扉開放エラー表示E5)を継続する。
【0444】
図34(d)に示すタイミングは、デモ演出を行っている状態を示す。エラー情報報知領域208hに表示されるエラーの重要度が低いため、エラー情報表示Eが表示中であっても、遊技(この場合、デモ演出)は停止せず、遊技が進行している。
【0445】
また、この状態で前面枠扉106等に設けられた個別識別情報設定ボタン700を操作することで、遊技者ごとの個別識別情報の設定が可能な設定モードに移行することができる。
【0446】
図34(e)に示すように、デモ演出中に個別識別情報設定ボタン700を操作すると、個別識別情報の設定モードに移行し、第2副制御部500は、装飾図柄表示装置208に、図34(f)に示す個別識別情報設定画面を表示する。そして、装飾図柄表示装置208の例えば左下方に設けられた操作ガイド表示領域704に、個別識別情報設定ボタン700の操作を促す操作画像CGを表示する。
【0447】
また第1副制御部400は、これに合わせて個別識別情報設定ボタン700も振動や発光などによってその態様を変化させ個別識別情報設定ボタン700の操作を促す。
【0448】
また、エラー情報報知領域208hのエラー情報表示E(扉開放エラー表示E5)は継続して表示されているため、扉開放エラー表示E5は、個別識別情報設定ボタン700の操作を促す操作画像と一部が重畳し、その視認が困難となっている。すなわちこの場合、個別識別情報設定ボタン700の操作を促す操作画像の表示が第一の報知となり、個別識別情報設定ボタン700の操作を促す、当該ボタン自体の態様の変化(振動や発光など)が第二の報知となる。そして、第一の報知によって、扉開放エラー表示E5(第三の報知)が視認困難とされている。この状態で図34(g)に示すように個別識別情報設定ボタン700が操作されると図34(h)に示すように操作に応じた画面に遷移する。
【0449】
図34(h)に示すタイミングでは、扉開放エラーが解除された状態を示す。扉開放エラーの解除によって、扉開放エラー表示E5は消去され、操作ガイド表示領域704に個別識別情報設定ボタン700の操作を促す操作画像が視認容易に表示される。
【0450】
なお、本実施例において、同図(d)のデモ表示のタイミングで、個別識別情報設定ボタン700の操作を促す、当該ボタン自体の態様の変化(振動や発光など)を実行してもよい。
【0451】
扉開放エラーが検出された場合は、例えば、遊技領域124内での球つまり等が発生している(球つまりを解消するために前面枠扉106を開放している)ことが想定され、遊技領域124が露出している恐れがある。しかし、個別識別情報の設定モードであれば、遊技球を不正に排出(払出)される危険性が少ないといえる。したがって、この場合に(扉開放エラーを重要度の低い第二のエラーとして)遊技(デモや個別識別情報設定モードへの移行)を継続可能とすることで、遊技者を待たせることなく、遊技者の持ち時間を有効活用できる場合がある。」
キ 「【0793】
また、本発明の実施の形態に記載された作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用および効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。また、実施例に記載した複数の構成のうち、1つの構成に記載している内容を、他の構成に適用することでより遊技の幅を広げられる場合がある。」
ク 「【図34】


ケ 装飾図柄表示装置における演出表示を時系列で示した図34(f)及び(h)(上記キ)の記載からみて、操作画像CGには「PUSH」と示されていることが看取できる。
コ 上記アないしケからみて、引用例1には、【0793】(上記キ)の「1つの構成に記載している内容を、他の構成に適用する」と記載されており、この記載に基づき、実施例4に実施例3の構成を適用した実施態様として、次の発明が記載されている。なお、aないしeについては本願補正発明のAないしEに対応させて付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。
「a 遊技盤200に形成された遊技領域124の略中央に配設された演出装置206のさらにその略中央に配設された装飾図柄表示装置208と(【0021】、【0022】)、
b 前面枠扉106等に設けられた個別識別情報設定ボタン700と(【0445】)、
c’、d’ 装飾図柄表示装置208に、前面枠扉開放センサ1061によって前面枠扉106の開放が検出された場合、エラー情報表示E(扉開放エラー表示E5)を表示し、デモ演出中に個別識別情報設定ボタン700を操作すると、個別識別情報の設定モードに移行し、個別識別情報設定ボタン700の操作を促す「PUSH」と示された操作画像CGを表示し、扉開放エラー表示E5が、個別識別情報設定ボタン700の操作を促す操作画像CGと一部が重畳し、その視認を困難とし、操作画像CGは認識可能とし、且つ、相対的に重要度の高いエラーの場合には、当該エラーの報知が遊技者または店員に視認容易となるように報知する、第2副制御部500(【0432】、【0439】、【0442】、【0446】、【0448】)と、
を備える、
e パチンコ機100。」(以下「引用発明」という。)

(3)対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。なお、以下の見出し(a)ないし(e)は、本願補正発明のAないしEに対応させている。

(a)引用発明の「装飾図柄表示装置208」は、本願補正発明の「A 表示手段」に相当する。

(b)引用発明の「個別識別情報設定ボタン700」は、技術常識からみて、該ボタン700の操作を検出する手段を備えることは明らかである。そうすると、引用発明は、本願補正発明の特定事項である「B 操作検出手段」を備えることは明らかである。

(c)引用発明の「操作画像CG」は、デモ演出中の操作により表示され、個別識別情報設定ボタン700の操作を促すものであり、示された「PUSH」はメッセージということができるから、本願補正発明の「『演出メッセージ』又は『遊技者に対し操作検出手段の操作を促す操作促進画像』」に相当する。ちなみに、個別識別情報の設定表示が「演出」に相当することは、例えば特開2014-87439号公報(特に【0291】の「メニュー演出(例えば、ユーザーメニュー表示の演出)」との記載や図3参照。)にみられるように当業者に知られていることである。
また、引用発明の「扉開放エラー表示E5」は、本願補正発明の「エラーメッセージ」に相当する。
そして、引用発明は、扉開放エラー表示E5(エラーメッセージ)が、技術常識からみて、扉開放のエラーを検出した場合に表示されることは明らかであり、個別識別情報設定ボタン700の操作を促す操作画像CG(演出メッセージ)と一部が重畳しているから、引用発明の特定事項c’、d’と、本願補正発明の特定事項Cとは、「C’演出メッセージを前記表示手段に表示し、前記演出メッセージを表示しているときに所定のエラーを検出した場合に前記演出メッセージに前記エラーメッセージを重ねて表示し」ている点で一致する。


(d)引用発明は、扉開放エラー表示E5(エラーメッセージ)が、扉開放のエラーを検出した場合に表示されることは明らかであり、個別識別情報設定ボタン700の操作を促す操作画像CG(操作促進画像)と一部が重畳し、操作画像CG(操作促進画像)は認識可能であるから、引用発明の特定事項c’、d’と、本願補正発明の特定事項Dとは、「D’前記演出メッセージとして遊技者に対し前記操作検出手段の操作を促す操作促進画像を前記表示手段に表示し、前記操作促進画像を表示しているときに前記所定のエラーを検出した場合に、前記操作促進画像であることを認識可能な状態となるように前記操作促進画像に前記エラーメッセージを重ねて表示する制御手段」である点で一致する。

(e)引用発明の「パチンコ機100」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。


イ 上記アからみて、本願補正発明と引用発明とは、
「A 表示手段と、
B 操作検出手段と、
C’演出メッセージを前記表示手段に表示し、前記演出メッセージを表示しているときに所定のエラーを検出した場合に前記演出メッセージに前記エラーメッセージを重ねて表示し、
D’前記演出メッセージとして遊技者に対し前記操作検出手段の操作を促す操作促進画像を前記表示手段に表示し、前記操作促進画像を表示しているときに前記所定のエラーを検出した場合に、前記操作促進画像であることを認識可能な状態となるように前記操作促進画像に前記エラーメッセージを重ねて表示する制御手段と、
E を含む遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。

・相違点1(特定事項C)
「前記演出メッセージに前記エラーメッセージを重ねて表示」することに関し、
本願補正発明では、「前記演出メッセージがエラーメッセージの視認性を妨げない状態となるように」しているのに対し、
引用発明では、そのような特定はない点。

・相違点2(特定事項D)
「前記エラーメッセージを重ねて表示する」ことに関し、
本願補正発明では、「前記操作促進画像の前面側」であり、「前記操作促進画像であることを認識可能な状態としつつ前記操作促進画像が前記エラーメッセージの視認性を妨げない状態となるように」しているのに対し、
引用発明では、そのような特定はない点。

(4)判断
事案に鑑み、相違点1及び2についてまとめて検討する。
ア 遊技機の表示手段において、エラー表示を最前のレイヤーで表示することは本願の出願前に周知(以下「周知技術1」という。例.平成29年11月2日付け補正の却下の決定で引用された特開2014-117582号公報(【0001】、【0110】、図21等には、最前面レイヤーは、エラー報知画像だけが表示される、システム用の表示層として構成されていることが記載されている。)、同補正の却下の決定で引用された特開2013-343号公報(【0001】、【0089】、図9等には、エラー表示260は、予告表示262より優先して表示されるため、予告表示262より上位のレイヤーに表示されて予告表示262の一部がエラー表示260に覆われて隠れる形となることが記載されている。)、特開2015-66296号公報(【0001】、【0252】ないし【0256】、図23等には、球排出レバー132の操作を要求する操作要求報知はオーラ画像よりも手前のレイヤーに表示され、チャンスボタン136の長押し操作を要求する操作要求報知はオーラ画像よりも奥のレイヤーに表示されていることが記載されている。))である。
イ 遊技機の表示手段において、エラー表示をその視認性を妨げないように他の演出画像の一部に重ねて表示することは本願の出願前に周知(以下「周知技術2」という。例.上記特開2013-343号公報(【0001】、【0089】、図9等には、エラー表示260は、予告表示262より優先して表示されるため、予告表示262より上位のレイヤーに表示されて予告表示262の一部がエラー表示260に覆われて隠れる形となり、エラー表示260を十分視認できることが記載されている。)、特開2013-9719号公報(【0001】、【0042】、図6等には、満杯エラー画像31aを演出画像30と重ね合わせて表示し、前記満杯エラー画像31aと前記演出画像30を十分視認できることが記載されている。)、特開2005-334454号公報(【0001】、【0053】ないし【0055】、図1等には、正常動作画面110の一部にエラー画面120を重ねて表示し、エラー画面120は十分視認できることが記載されている。))である。
ウ 引用発明は、扉開放エラー表示E5については、個別識別情報設定ボタン700の操作を促す操作画像CGと一部が重畳して表示され、その視認が困難なものであるが、相対的に重要度の高いエラーの場合には、当該エラーの報知が遊技者に視認容易となるように報知するものである。そうすると、当業者であれば、エラーの重要度に応じて、エラー表示をどの程度まで視認容易とするかを試みるものである。他方で、上記イで周知技術2として示したように、エラー表示をその視認性を妨げないように他の演出画像の一部に重ねて表示することは周知であり、当該周知技術2に基づけば、引用発明において、エラーの重要性に応じて、対応するエラー表示(エラーメッセージ)をその視認性を妨げないように操作画像CG(演出メッセージ又は操作促進画像)の一部に重ねて表示することは当業者が適宜なし得たことである。そして、そもそも引用発明がエラー表示を操作画像CG(操作促進画像)に重ねた状態であっても操作画像CG(操作促進画像)を認識可能なように表示していることを考慮すれば、エラー表示(エラーメッセージ)の視認性を妨げない状態にしたからといって、操作画像CG(操作促進画像)を敢えて意識的に認識不可能とすることは考えにくいから、操作画像CG(操作促進画像)が認識可能としつつ、前述のようにエラー表示(エラーメッセージ)をその視認性を妨げないように操作画像CG(演出メッセージ又は操作促進画像)の一部に重ねて表示することは当業者が適宜なし得たことである。
エ 上記アで示した周知技術1に基づけば、引用発明において、エラー表示(エラーメッセージ)を操作画像CG(操作促進画像)の「前面」に重ねるようになすことは当業者が適宜なし得たことである。
オ 以上のとおりであるから、引用発明において、上記相違点1及び2に係る本願補正発明の特定事項のようになすことは、当業者が周知技術1及び2に基づいて容易に想到し得たことである。

カ 本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、周知技術1及び2の奏する効果から予測することができた程度のものである。

キ 審判請求人の主張について
(ア)審判請求人は、審判請求書において、概略以下のとおり主張している。
「(3)本願発明が特許されるべき理由
(a)本願発明の説明
本願発明は、・・・構成を備えることによりエラーメッセージと、操作促進画像を重畳した状態でもエラーメッセージの視認性を保つことができるという顕著な作用効果を奏するものである。
・・・略・・・
(c)請求項1について
・・・略・・・
これに対して、引用文献1は、個別識別情報設定ボタン700の操作を促す操作画像CGを表示する操作ガイド表示領域704とエラー情報表示Eを表示する情報報知領域208hと、の一部が重畳することを開示する。
しかしながら、引用文献1は、エラー報知を過剰に行いすぎてしまうとエラー報知のみに注目が集まってしまい、演出への注目が低下してしまう問題を解決すべく(段落番号〔0255〕)、エラー報知を遊技情報の報知と一部重ねることでエラー報知の視認性を妨げる状態にしているものである。
すなわち、引用文献1は、エラー報知を過剰に行いすぎることを課題にしてエラー報知の視認性を妨げるものであり、請求項1に記載の発明とはまったく異なる技術を開示するものである。
したがって、引用文献1は、請求項1に記載の・・・を開示しない。
また、請求項1に記載の発明と引用文献1に記載の発明とは、まったく異なるばかりか相反する技術思想を有するものであり、請求項1に記載の発明は、引用文献1に記載の発明から想到し得ない。
したがって、このような引用文献1およびエラー表示を最前のレイヤーで表示する旨の記載がある引用文献2,3に基づいて、当業者が請求項1に記載の発明を容易に想到し得たとも考えられない。」

(イ)しかしながら、上記(4)ウのとおり、引用発明は、相対的に重要度の高いエラー表示は遊技者に視認容易となるように報知しているものであるから、各周知技術を適用する動機があるものであり、審判請求人の主張を採用することはできない。

(5)独立特許要件のむすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、当業者が引用例1に記載された発明、周知技術1及び2に基づいて容易に発明をすることができたものである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成28年12月20日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものであるところ、そのうち請求項1に係る発明は、上記第2〔理由〕1(1)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 原査定の理由の概略
原査定の拒絶の理由は、以下を含むものである。
(進歩性)この出願の平成28年12月20日付け手続補正により補正された請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献1:特開2015-8848号公報

3 引用文献
引用文献1(引用例1)の記載事項は、上記第2〔理由〕3(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願補正発明は、上記「第2〔理由〕1(2)」のとおり、本願発明を特定するために必要な事項を限定したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定したものに相当する本願補正発明が、上記「第2〔理由〕3」に記載したとおり、当業者が引用発明、周知技術1及び2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用発明、周知技術1及び2に基づいて容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例1に記載された発明、周知技術1及び2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-10-26 
結審通知日 2018-11-06 
審決日 2018-11-19 
出願番号 特願2016-13435(P2016-13435)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中野 直行阿部 知  
特許庁審判長 石井 哲
特許庁審判官 鉄 豊郎
荒井 誠
発明の名称 遊技機  
代理人 服部 毅巖  
代理人 長澤 隆行  

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