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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09J
管理番号 1347653
異議申立番号 異議2017-700551  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-05-31 
確定日 2018-11-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6040901号発明「ラミネート積層体用接着剤組成物、これを使用した積層体、および二次電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6040901号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正することを認める。 特許第6040901号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。  
理由 第1 手続の経緯

特許第6040901号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成25年9月20日の出願であり、平成28年11月18日にその特許権の設定登録がされ、同年12月7日にその特許掲載公報が発行され、平成29年5月31日に、その特許について特許異議申立人岩崎勇(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、同年8月2日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年9月29日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があり、これに対し、平成30年1月16日付けで異議申立人より意見書が提出され、同年3月12日付けで手続補正指令書(方式)が通知され、同年3月30日に特許権者より手続補正書の提出があり、同年5月7日付けで取消理由通知書(決定予告)が通知され、その指定期間内である同年7月9日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があり、これに対し、同年8月21日付けで異議申立人より意見書が提出されたものである。


第2 訂正の適否

1 訂正事項

上記平成30年7月9日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし5について訂正することを求めるものであって、その具体的訂正事項は次のとおりである。
なお、平成29年9月29日になされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に「酸基又は水酸基含有ポリオレフィン樹脂(A)、トリアゾール環、ピロール環、ピラゾール環、チアゾール環及びイミダゾール環からなる群から選択される構造を有する化合物である、窒素原子を環構造中に有する五員環構造の複素環状化合物(B)、及び前記酸基又は水酸基含有ポリオレフィン樹脂(A)と反応性を有する硬化剤(C)を、前記ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対して、前記複素環状化合物(B)を0.01?10重量部となる割合、かつ、前記硬化剤(C)を0.1?30重量部となる割合で含有することを特徴とするラミネート用接着剤組成物。」とあるのを、「酸価が1?200mgKOH/gの酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂および/または水酸基価が1?200mgKOH/gの水酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂(A)、トリアゾール環を有する化合物である、窒素原子を環構造中に有する五員環構造の複素環状化合物(B)、及び前記酸基又は水酸基含有ポリオレフィン樹脂(A)と反応性を有する硬化剤(C)としてエポキシ樹脂またはポリイソシアネート化合物を、前記ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対して、前記複素環状化合物(B)を0.01?10重量部となる割合、かつ、前記硬化剤(C)を0.1?30重量部となる割合で含有することを特徴とする一次または二次電池の電解液封止フィルムまたは電極部保護フィルム用接着剤組成物。」と訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4,5も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2に「酸基又は水酸基含有ポリオレフィン樹脂(A)が、酸価が1?200mgKOH/gの酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂および/または水酸基価が1?200mgKOH/gの水酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂である請求項1記載のラミネート用接着剤組成物。」とあるのを、「酸価が1?200mgKOH/gの酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂および/または水酸基価が1?200mgKOH/gの水酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂(A)、2-エチル-4-メチルイミダゾール、及び前記酸基又は水酸基含有ポリオレフィン樹脂(A)と反応性を有する硬化剤(C)としてエポキシ樹脂またはポリイソシアネート化合物を、前記ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対して、前記2-エチル-4-メチルイミダゾールを0.01?10重量部となる割合、かつ、前記硬化剤(C)を0.1?30重量部となる割合で含有することを特徴とする一次または二次電池の電解液封止フィルムまたは電極部保護フィルム用接着剤組成物。」と訂正する。(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4,5も同様に訂正する。)

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項3に「前記硬化剤(C)がエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、及び、メラミン樹脂からなる群の少なくとも1つの化合物である請求項1、2又は3記載のラミネート用接着剤組成物。」とあるのを、「酸価が1?200mgKOH/gの酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂および/または水酸基価が1?200mgKOH/gの水酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂(A)、トリアゾール環またはイミダゾール環を有する化合物である、窒素原子を環構造中に有する五員環構造の複素環状化合物(B)、及び前記酸基又は水酸基含有ポリオレフィン樹脂(A)と反応性を有する硬化剤(C)を、前記ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対して、前記複素環状化合物(B)を0.01?10重量部となる割合、かつ、前記硬化剤(C)を0.1?30重量部となる割合で含有し、前記硬化剤(C)がポリイソシアネート化合物を含み、エポキシ樹脂を含まないラミネート用接着剤組成物。」と訂正する。(請求項3の記載を引用する請求項4,5も同様に訂正する。)


2 訂正事項の訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項について

(1)訂正事項1について

ア 上記訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「酸基又は水酸基含有ポリオレフィン樹脂(A)」を、「酸価が1?200mgKOH/gの酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂および/または水酸基価が1?200mgKOH/gの水酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂(A)」に限定し、訂正前の請求項1に記載された「トリアゾール環、ピロール環、ピラゾール環、チアゾール環及びイミダゾール環からなる群から選択される構造を有する化合物である、窒素原子を環構造中に有する五員環構造の複素環状化合物(B)」を、「トリアゾール環を有する化合物である、窒素原子を環構造中に有する五員環構造の複素環状化合物(B)」に限定し、訂正前の請求項1に記載された「前記酸基又は水酸基含有ポリオレフィン樹脂(A)と反応性を有する硬化剤(C)」を、「エポキシ樹脂またはポリイソシアネート化合物」に限定し、訂正前の請求項1に記載された「ラミネート用接着剤組成物」を、「一次または二次電池の電解液封止フィルムまたは電極部保護フィルム用接着剤組成物」に限定するものであるから、上記訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 上記訂正事項1は、願書に添付した明細書の段落【0017】の「前記変性ポリオレフィン樹脂としては、樹脂の酸価が1?200mgKOH/gの酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂および/または水酸基価が1?200mgKOH/gの水酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。」、同段落【0053】の表1及び段落【0055】の「前記表中で用いた各種原料は、下記のものを用いた。・・・
BT120(城北化学工業株式会社製)ベンゾトリアゾール 不揮発分100%
エピクロン 860(DIC株式会社製)ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量240 不揮発分100%
バーノック D-750(DIC株式会社製)ポリイソシアネート化合物、NCO%13.0 不揮発分75%」、同段落【0041】の「本発明の積層体は、一次または二次電池の電解液封止フィルムまたは電極部保護フィルムとして使用できるが、この場合プラスチック層側に極性有機溶媒および/または塩類等と接触させて使用する。」等の記載に基づくものであるから、上記訂正事項1は、新規事項を追加するものではない。

ウ 上記訂正事項1は、訂正前の「変性ポリオレフィン樹脂(A)」、「複素環状化合物(B)」、「硬化剤(C)」、「接着剤組成物」を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について

ア 上記訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改め、さらに、訂正前の請求項1に記載された「トリアゾール環、ピロール環、ピラゾール環、チアゾール環及びイミダゾール環からなる群から選択される構造を有する化合物である、窒素原子を環構造中に有する五員環構造の複素環状化合物(B)」を、「2-エチル-4-メチルイミダゾール」に限定し、訂正前の請求項1に記載された「前記酸基又は水酸基含有ポリオレフィン樹脂(A)と反応性を有する硬化剤(C)」を、「エポキシ樹脂またはポリイソシアネート化合物」に限定し、訂正前の請求項1に記載された「ラミネート用接着剤組成物」を、「一次または二次電池の電解液封止フィルムまたは電極部保護フィルム用接着剤組成物」に限定するものであるから、上記訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 上記訂正事項2は、願書に添付した明細書の段落【0053】の表1及び段落【0055】の「前記表中で用いた各種原料は、下記のものを用いた。・・・
キュアゾール 2E4MZ(四国化成工業株式会社製)イミダゾール 不揮発分100%
エピクロン 860(DIC株式会社製)ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量240 不揮発分100%
バーノック D-750(DIC株式会社製)ポリイソシアネート化合物、NCO%13.0 不揮発分75%」、同段落【0041】の「本発明の積層体は、一次または二次電池の電解液封止フィルムまたは電極部保護フィルムとして使用できるが、この場合プラスチック層側に極性有機溶媒および/または塩類等と接触させて使用する。」等の記載に基づくものであるから、上記訂正事項2は、新規事項を追加するものではない。

ウ 上記訂正事項2は、訂正前の「複素環状化合物(B)」、「硬化剤(C)」、「接着剤組成物」を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について

ア 上記訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改め、さらに、訂正前の請求項1に記載された「酸基又は水酸基含有ポリオレフィン樹脂(A)」を、「酸価が1?200mgKOH/gの酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂および/または水酸基価が1?200mgKOH/gの水酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂(A)」に限定し、訂正前の請求項1に記載された「トリアゾール環、ピロール環、ピラゾール環、チアゾール環及びイミダゾール環からなる群から選択される構造を有する化合物である、窒素原子を環構造中に有する五員環構造の複素環状化合物(B)」を、「トリアゾール環またはイミダゾール環を有する化合物である、窒素原子を環構造中に有する五員環構造の複素環状化合物(B)」に限定し、訂正前の請求項1に記載された「前記酸基又は水酸基含有ポリオレフィン樹脂(A)と反応性を有する硬化剤(C)」を、「ポリイソシアネート化合物を含み、エポキシ樹脂を含まない」ものに限定するものであるから、上記訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮及び引用関係の解消を目的とするものである。

イ 上記訂正事項3は、願書に添付した明細書の段落【0017】の「前記変性ポリオレフィン樹脂としては、樹脂の酸価が1?200mgKOH/gの酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂および/または水酸基価が1?200mgKOH/gの水酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。」、同段落【0053】の表1及び段落【0055】の「前記表中で用いた各種原料は、下記のものを用いた。・・・
キュアゾール 2E4MZ(四国化成工業株式会社製)イミダゾール 不揮発分100%
BT120(城北化学工業株式会社製)ベンゾトリアゾール 不揮発分100%
・・・
バーノック D-750(DIC株式会社製)ポリイソシアネート化合物、NCO%13.0 不揮発分75%」等の記載に基づくものであるから、上記訂正事項3は、新規事項を追加するものではない。

ウ 上記訂正事項3は、訂正前の「変性ポリオレフィン樹脂(A)」、「複素環状化合物(B)」、「硬化剤(C)」を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)これらの訂正事項1?3に係る訂正は、一群の請求項に対して請求されたものである。


3 小括

上記「2」のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第5項?第6項の規定に適合するから、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正することを認める。


第3 本件発明

上記「第2」のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件訂正後の請求項1ないし5に係る発明(以下、各請求項に係る発明を項番に対応して「本件発明1」などといい、併せて「本件発明」ということがある。)の記載は、次のとおりである。

「【請求項1】
酸価が1?200mgKOH/gの酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂および/または水酸基価が1?200mgKOH/gの水酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂(A)、トリアゾール環を有する化合物である、窒素原子を環構造中に有する五員環構造の複素環状化合物(B)、及び前記酸基又は水酸基含有ポリオレフィン樹脂(A)と反応性を有する硬化剤(C)としてエポキシ樹脂またはポリイソシアネート化合物を、前記ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対して、前記複素環状化合物(B)を0.01?10重量部となる割合、かつ、前記硬化剤(C)を0.1?30重量部となる割合で含有することを特徴とする一次または二次電池の電解液封止フィルムまたは電極部保護フィルム用接着剤組成物。
【請求項2】
酸価が1?200mgKOH/gの酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂および/または水酸基価が1?200mgKOH/gの水酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂(A)、2-エチル-4-メチルイミダゾール、及び前記酸基又は水酸基含有ポリオレフィン樹脂(A)と反応性を有する硬化剤(C)としてエポキシ樹脂またはポリイソシアネート化合物を、前記ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対して、前記2-エチル-4-メチルイミダゾールを0.01?10重量部となる割合、かつ、前記硬化剤(C)を0.1?30重量部となる割合で含有することを特徴とする一次または二次電池の電解液封止フィルムまたは電極部保護フィルム用接着剤組成物。
【請求項3】
酸価が1?200mgKOH/gの酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂および/または水酸基価が1?200mgKOH/gの水酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂(A)、トリアゾール環またはイミダゾール環を有する化合物である、窒素原子を環構造中に有する五員環構造の複素環状化合物(B)、及び前記酸基又は水酸基含有ポリオレフィン樹脂(A)と反応性を有する硬化剤(C)を、前記ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対して、前記複素環状化合物(B)を0.01?10重量部となる割合、かつ、前記硬化剤(C)を0.1?30重量部となる割合で含有し、前記硬化剤(C)がポリイソシアネート化合物を含み、エポキシ樹脂を含まないラミネート用接着剤組成物。
【請求項4】
請求項1?3の何れか1つに記載のラミネート用接着剤を金属層とポリオレフィン樹脂層との間に使用した積層体。
【請求項5】
請求項4記載の積層体を含む二次電池。」


第4 平成30年5月7日付けで通知した取消理由(決定予告)の概要

標記取消理由の概要は、以下のとおりである。

「理由1.本件特許の請求項1?3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された引用例1に記載された発明に基づいて、又は、本件特許の請求項1?5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された引用例2に記載された発明及び引用例3?5に記載の周知の技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、取り消すべきものである(以下、「取消理由1」という。)。

理由2.本件特許は、特許請求の範囲の記載が実施例と同等の効果を有すると解されず、本件発明の課題を解決できるとは認められないことから、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから取り消すべきものである(以下、「取消理由2」という。)。

引用例1:特開2002-235061号公報(甲第1号証)
引用例2:特開2012-216364号公報(甲第2号証)
引用例3:特開2002-53730号公報(甲第3号証)
引用例4:特開平10-204256号公報(甲第4号証)
引用例5:“酸無水物硬化エポキシ樹脂”「熱硬化性樹脂」Vol.2 No.1 1981年(甲第5号証)
(甲第1?5号証は、平成29年5月31日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に添付されたものである。)」

なお、上記取消理由1は、申立理由のうち、甲1又は甲2を主引例とする訂正前の請求項1ないし5に対する進歩性欠如に関する理由と同趣旨である。
また、上記取消理由2は、申立理由のうち、サポート要件に関する理由と同趣旨である。


第5 取消理由1に関する当審の判断

1 甲号証に記載の事項

(1)甲1(特開2002-235061号公報)

甲1には、次の記載がある。なお、下線は、当審が付与したものであり、以下、同様である。

(1-1)「【請求項1】分子内にカルボキシル基を含有するポリオレフィン系共重合体(a)40?80重量部および芳香族ビニル化合物重合体ブロック(b1)と共役ジエン系化合物重合体ブロック(b2)を有するブロック共重合体(b)60?20重量部、ならびにエポキシ樹脂(c)を、前記ポリオレフィン系共重合体(a)およびブロック共重合体(b)の合計100重量部に対し、1?50重量部含有することを特徴とする熱反応性接着剤組成物。
【請求項2】ポリオレフィン系共重合体(a)におけるカルボキシル基を含有するモノマーユニットの含有量が4?30重量%であることを特徴とする請求項1記載の熱反応性接着剤組成物。
・・・
【請求項4】エポキシ樹脂(c)の硬化促進剤をさらに含んでいることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の熱反応性接着剤組成物。
【請求項5】基材の片面または両面に、請求項1?4のいずれかに記載の熱反応性接着剤組成物から形成される接着層を有することを特徴とする熱反応性接着フィルム。」

(1-2)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱反応性接着剤組成物および熱反応性接着フィルムに関する。本発明の熱反応性接着剤組成物は、比較的短時間の硬化で優れた接着性を示し、かつ耐熱性を有する接着層を形成できる。当該接着層を有する接着フィルムは、電子部品等の固定用途、特にICパッケージ等の電子部品内で使用される金属の補強材とポリイミドフィルム等の耐熱フィルムの接着やICチップの固定等に有利に利用することができる。」

(1-3)「【0009】上記接着剤組成物では、ポリオレフィン成分であるポリオレフィン系共重合体(a)を含有しており応力緩和性がよい。通常、ポリオレフィン成分は、結晶性ポリマーであり、溶剤に難溶性であるが、上記接着剤組成物においてポリオレフィン成分として用いているポリオレフィン系共重合体(a)は、分子内にカルボキシル基を含有するため、これとブロック共重合体(b)の混合物が溶剤に可溶となり、必ずしもホットメルトコーティングを行う必要がなく、架橋及び硬化速度の制御が容易である。また、上記接着剤組成物は、架橋及び硬化速度の制御が容易なため、架橋・硬化剤としてエポキシ樹脂(c)をある一定量添加することにより、優れた耐熱性・接着性を実現できる。
・・・
【0024】本発明の接着剤組成物は、前記ポリオレフィン系共重合体(a)、ブロック共重合体(b)およびエポキシ樹脂(c)を、前記割合で含有してなるが、さらにエポキシ樹脂(c)の硬化促進剤を含有することができる。硬化促進剤としては、各種イミダゾール系化合物及びその誘導体、アミン系触媒、りん系触媒、ジシアンジアミド、ヒドラジン化合物及びこれらをマイクロカプセル化したものが使用できる。このような硬化促進剤の配合量は、所望とする硬化速度より適宜選定できるが、通常ポリオレフィン系共重合体(a)とブロック共重合体(b)の合計100重量部に対して5重量部以下である。好ましくは0.01?5重量部程度、さらに好ましくは0.1?1重量部である。
・・・
【0027】本発明の接着フィルムは、基材上に、前記接着組成物による接着層を形成することにより作製する。接着層の形成は、たとえば、前記接着剤組成物を溶剤に溶解し、基材に塗布し、加熱乾燥により行うことができる。ここで、溶剤としては特に限定はないが、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤が溶解性が良好であり好適に用いられる。また、接着層の形成は、ホットメルトコーティングも可能であるが、接着剤組成物の硬化開始温度が低い場合にはゲル化のおそれがあるため、ホットメルトコーティングする場合には、接着剤組成物がゲル化しない硬化開始温度となるように硬化促進剤等の使用割合を適宜に調整する。
【0028】前記基材としては、たとえば、剥離ライナーとしての剥離処理フィルムがあげられる。剥離処理フィルムとしては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド等のプラスチックフィルム及び、グラシン紙、ポリエチレンをラミネートした上質紙等にシリコーン、フッ素等の離型処理を施した剥離ライナーがあげられる。
【0029】基材としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエ-テルケトン等のプラスチックフィルム基材及びその多孔質基材、セルロース、ポリアミド、ポリエステル、アラミド等の不織布基材、アルミ箔、SUS箔等の金属フィルム基材、スチールウール基材、金属メッシュ基材等が含まれる。基材として剥離性フィルムを用いる場合には、剥離性フィルムに形成した接着層を上記基材上に転写することもできる。」

(1-4)「【0033】実施例1
エチレン-メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル(株)製、ニュクレルN1560)、マレイン酸変成ブロック共重合体(旭化成工業(株)製、タフテックM1943)およびエポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製、エピコート828)、をそれぞれ表1の組成比となるように配合し、濃度20重量%となるようにトルエン溶媒に溶解し接着剤組成物の溶液を作成した。
【0034】この接着剤組成物溶液を、剥離ライナーとしてシリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布した後、150℃で3分乾燥させる事により、厚さ50μmの熱硬化型接着剤の層を形成して、熱反応性接着フィルムを作製した。
【0035】実施例2?3
実施例1において、接着剤組成物の配合に硬化促進剤を各々表1の組成比となるように混合した以外は、実施例1と同様にして厚さ50μmの熱硬化型接着剤の層を形成して、熱反応性接着フィルムを作製した。
【0036】
・・・
【0042】
【表1】

注1:ニュクレルN1560(三井・デュポンポリケミカル(株)製,メタクリル酸のモノマーユニット15重量%含有)
注2:タフテックM1943(旭化成工業(株)製,芳香族ビニル化合物重合体ブロック(b1)と共役ジエン系化合物重合体ブロック(b2)の重量比が(b1)/(b2)=20/80)
注3:エピコート828(油化シェル(株)製)
注4:DBU(サンアプロ(株)製)」

(2)甲2(特開2012-216364号公報)
甲2には、次の記載がある。

(2-1)「【請求項1】
基材層、バリア層、接着層及びシーラント層がこの順に積層されてなる電池用外装体であって、前記接着層が、プロピレン成分を70質量%以上含有すると共に酸成分を0.1?10質量%含有する酸変性ポリプロピレン樹脂と、オキサゾリン化合物及びエポキシ化合物の少なくとも一方を含む架橋剤とを含有し、前記酸変性ポリプロピレン樹脂100質量部に対し前記架橋剤を0.1?40質量部の割合で含有し、さらに、シーラント層がポリプロピレン樹脂からなることを特徴とする電池用外装体。
【請求項2】
架橋剤が、エポキシ化合物と共に、イソシアネート化合物及びアミノ樹脂の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1記載の電池用外装体。
【請求項3】
発電要素と、請求項1又は2記載の電池用外装体を具備する電池。」

(2-2)「【0002】
近年、パソコン、携帯電話等の携帯端末装置、ビデオカメラ、衛星などに用いられる電池として、超薄型化、小型化の可能なリチウム電池が盛んに開発されている。このようなリチウム電池の構造としては、例えば、正極材としてアルミニウム箔、負極材として銅箔を適用し、各金属箔上に、活物質や電解液を含む層を各々形成して電極となし、これらの層間に電解液を含むセパレータを設けた構成の発電要素と、これを封止する外装体とを有する構造があげられる。
【0003】
このリチウム電池の外装体には、従来用いられていた金属製缶とは異なり、軽量で電池の形状を自由に選択できるという利点から、基材層/アルミニウム箔層/シーラント層のような構成の積層体が用いられるようになってきた。
【0004】
リチウム電池は、電池内容物として正極材及び負極材と共に、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチルなどの非プロトン性溶媒にリチウム塩を溶解した電解液もしくはその電解液を含浸させたポリマーゲルからなる電解質層を含んでいる。このような強浸透性の溶媒がシーラント層を通過すると、アルミニウム箔層とシーラント層間とのラミネート強度を低下させてデラミネーションを生じさせ、最終的には電解液が漏れ出すといった問題が生じる。また、電池の電解質たるリチウム塩としてはLiPF_(6)、LiBF_(4) 等の物質が用いられているが、これらの塩は水分との加水分解反応によりフッ酸を発生し、フッ酸がアルミニウム箔を腐食することによりラミネート強度を低下させる。電池用外装材は、このように電解質に対する耐性を有していることが必要である。
【0005】
さらに、リチウム電池はさまざまな環境下で使用されることを想定して、より過酷な耐性を備えている必要がある。例えば、モバイル機器に使用される場合には、車内等の60?70℃という高温環境での耐漏液性が要求される。
・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記提案されているリチウム電池用包装材料は、いずれも耐電解液性、耐漏液性の点でいまだ不十分であった。
【0009】
本発明の課題は、耐電解液性と共に、耐漏液性にも優れる電池用外装体及び前記外装体を用いた電池を提供することにある。
・・・
【0014】
基材層は、単層もしくは多層の耐熱性高分子フィルムからなり、例えば、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルム等の延伸もしくは未延伸フィルムなどの単体フィルム、あるいは前記単体フィルムを積層した多層フィルムなどが使用できる。耐ピンホール性、絶縁性を向上させるために総厚みは6?40μmが好ましく、さらに好ましくは10?25μmである。
【0015】
基材層とバリア層の間には、必要に応じて、プライマー層を設けることができる。プライマー層は、シランカップリング剤やポリエステルポリオールあるいはポリエーテルポリオール、アクリルポリオールを主剤としたポリウレタン系接着剤からなっており、塗布量は乾燥状態で1?5g/m^(2)とすることが好ましい。
【0016】
バリア層は、アルミナやシリカを蒸着した蒸着層、またはアルミニウム箔などを用いることができるが、バリア性の点からアルミニウム箔を用いることが好ましい。」

(2-3)「【0032】
このように本発明では、架橋剤として、オキサゾリン化合物及びエポキシ化合物の少なくとも一方を用いるが、これらを含めた全ての架橋剤の含有量が前記した範囲内にあれば、他の架橋剤を併用してもよい。他の架橋剤としては、任意のものが使用できるが、実用上、イソシアネート化合物、アミノ樹脂(メラミン化合物、尿素化合物など)、カルボジイミド化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤などが好適である。中でも、架橋剤としてエポキシ化合物を使用する場合において、イソシアネート化合物及びアミノ樹脂の少なくとも一方を併用することが好ましい。これは、酸変性ポリプロピレン樹脂に含まれるカルボキシル基とエポキシ基との反応により生じる水酸基と、イソシアネート化合物及びアミノ樹脂の一方又は両者を反応させることで、より強固に架橋され、耐電解液性や耐漏液性が高まるからである。結果として、このように架橋された酸変性プロピレン樹脂を用いることで、基材(アルミ箔、プロピレンシーラント)との良好な密着性を維持し、耐電解液性、耐漏液性をより発現させることができる。」

(2-4)「【実施例】
【0058】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0059】
(1)酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸成分の含有量
酸成分の含有量は下記に示す方法を用いて求めた。すなわち、酸変性ポリオレフィン樹脂の酸価をJIS K5407に準じて測定し、その値から酸成分の含有量(グラフト率)を次式より求めた。
含有量(質量%)=(グラフトした酸成分の質量)/(グラフト後の酸変性ポリオレフィン樹脂の質量)×100
【0060】
・・・
【0062】
(4)酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体及び架橋剤含有溶液の固形分濃度
酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体又は架橋剤含有溶液を適量秤量し、これを150℃下で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで乾燥し、それぞれの固形分濃度を次式より求めた。
固形分濃度(質量%)=(残留した固形分)/(採取した酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体又は架橋剤含有溶液)×100
【0063】
・・・
【0064】
(6)耐電解液性
作製した外装体を100×15mmの寸法に裁断して試験片とした。この試験片を、電解液を充填した容器中に挿入して密栓し、85℃又は100℃で24時間保管後、さらに水中に1昼夜浸漬した後の試験片の剥離状況を目視で観察した。剥離が認められなかったものを○、剥離が認められたものを×とした。なお、電解液は、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1(質量比)の溶液にLiPF_(6)が1.5Mになるように調整した液を用いた。
【0065】
(7)耐漏液性
作製した電池を50℃の乾燥機に入れて、耐漏液性を調べた。電解液の漏れが認められなかったものを○、電解液の漏れが認められたものを×とした。
【0066】
下記4種の酸変性ポリオレフィン樹脂を作製した。
【0067】
(酸変性ポリプロピレン樹脂P-1の製造)
プロピレン-エチレン共重合体(プロピレン/エチレン=82/18質量%、重量平均分子量85000)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を180℃に保って攪拌下、酸成分として無水マレイン酸35.0g、ラジカル発生剤としてジ-t-ブチルパーオキサイド6.0gをそれぞれ2時間かけて加え、その後1時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥して酸変性ポリプロピレン樹脂P-1(重量平均分子量40000)を得た。
【0068】
(酸変性ポリプロピレン樹脂P-2の製造)
プロピレン樹脂(重量平均分子量75000)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を190℃に保って攪拌下、酸成分として無水マレイン酸32.0g、ラジカル発生剤としてジ-t-ブチルパーオキサイド6.0gをそれぞれ2時間かけて加え、その後1時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥して酸変性ポリプロピレン樹脂P-2(重量平均分子量30000)を得た。
【0069】
(酸変性ポリプロピレン樹脂P-3の製造)
プロピレン-エチレン共重合体(プロピレン/エチレン=65/35質量%、重量平均分子量80000)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を190℃に保って攪拌下、酸成分として無水マレイン酸32.0g、ラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド6.0gをそれぞれ2時間かけて加え、その後1時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥して酸変性ポリプロピレン樹脂P-3(重量平均分子量35000)を得た。
【0070】
(酸変性ポリプロピレン樹脂P-4の製造)
プロピレン-エチレン共重合体(プロピレン/エチレン=82/18質量%、重量平均分子量85000)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を190℃に保って攪拌下、酸成分として無水マレイン酸48.0g、ラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド9.0gをそれぞれ2時間かけて加え、その後1時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥して酸変性ポリプロピレン樹脂P-4(重量平均分子量40000)を得た。
【0071】
参考例1
〔酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体E-1の製造〕
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリプロピレン系樹脂(P-1)、60.0gのテトラヒドロフラン、6.9gのN,N-ジメチルエタノールアミン(酸変性ポリプロピレン樹脂中の酸成分のカルボキシル基に対して1.0倍当量)及び173.1gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した後、ヒーターの電源を切り60℃まで自然冷却した。冷却後60℃に保持し、撹拌及び減圧下で脱溶剤を行い、必要に応じて水を添加し、媒体を水に置換した。
【0072】
次に、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白黄色の均一な酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体E-1(固形分濃度20質量%)を得た。
【0073】
参考例2
〔酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体E-2の製造〕
酸変性ポリプロピレン樹脂P-1に代えてP-2を用いた以外は、E-1の調製方法に準じて酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体E-2(固形分濃度20質量%)を得た。
【0074】
参考例3
〔酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体E-3の製造〕
酸変性ポリプロピレン樹脂P-1に代えてP-3を用いた以外は、E-1の調製方法に準じて酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体E-3(固形分濃度20質量%)を得た。
【0075】
参考例4
〔酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体E-4の製造〕
酸変性ポリプロピレン樹脂P-1に代えてP-4を用いた以外は、E-1の調製方法に準じて酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体E-4(固形分濃度20質量%)を得た。
【0076】
参考例5
〔酸変性ポリエチレン樹脂水性分散体E-5の製造〕
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリエチレン樹脂(アルケマ社製ボンダイン「TX-8030」)、90.0gのイソプロパノール、3.0gのトリエチルアミン及び147.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を145℃に保ってさらに30分間撹拌した。その後、ヒーターの電源を切り室温(約25℃)まで撹拌下で自然冷却した。冷却後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリエチレン樹脂水性分散体E-5(固形分濃度20質量%)を得た。
【0077】
水性分散体E-1?E-5の製造に使用した各樹脂の組成を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
一方、下記4種の架橋剤含有溶液を用いた。
【0080】
(架橋剤含有溶液K-1)
・・・
【0082】
(架橋剤含有溶液K-3)
アデカ社製「アデカレジンEM-0517」(ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ化合物、固形分濃度51質量%)を水で希釈し、固形分濃度が10質量%の水性溶液とした。
【0083】
(架橋剤含有溶液K-4)
BASF社製「バソナートHW-100」(非ブロック型の多官能イソシアネート化合物、イソシアネート含有率約17%)を水で希釈し、固形分濃度が10質量%の水性溶液とした。
(架橋剤含有溶液K-5)
日本サイテックインダストリーズ社製サイメル325(イミノ基型メラミン樹脂イソブタノール溶液、固形分濃度80質量%)をイソプロパノールで希釈し、固形分濃度が10質量%の溶液とした。
【0084】
さらに、下記の電極用ペーストを作製した。
・・・
【0087】
実施例1
基材層として厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(ユニチカ社製「エンブレットPET-12」)を使用し、基材層のコロナ処理面に、二液硬化型のポリウレタン系接着剤(東洋モートン社製)をグラビアコートし、乾燥して目付量5g/m^(2)のプライマー層を形成した。そして、プライマー層の表面に、両面を酸脱脂した厚さ40μmの軟質アルミニウム箔(8079材、東洋アルミニウム社製、商品名:CE)を貼り合わせバリア層を形成した。
【0088】
一方、酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体E-1と架橋剤含有溶液K-1とを室温下でメカニカルスターラーにて攪拌(100rpm)・混合し、酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体E-1の固形分100質量部に対して架橋剤含有溶液K-1の固形分が5質量部含まれる水性コート剤J-1を調製した。
【0089】
次いで、バリア層の表面に、水性コート剤J-1を塗布し、150℃で2分間乾燥して目付量0.7g/m^(2)の接着層を形成した。
【0090】
その後、押出機を備えたラミネート装置を用いて、接着層表面にシーラント樹脂としてポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製「ノバテックPP FL02A」)を溶融押出(押出ラミネート)して、35μmのポリプロピレン樹脂からなるシーラント層を形成させて外装体を得た。
【0091】
一方、40μmのアルミニウム箔に、正極用ペーストC-1を乾燥後の厚みが30μmとなるように塗工し、乾燥させて50mm×100mmの正極を得た。40μmの銅箔に負極用ペーストA-1を乾燥後の厚みが30μmとなるように塗工し、乾燥させて50mm×100mmの負極を得た。乾燥は、正極、負極とも85℃で30分乾燥した後、120℃減圧下で12時間乾燥させた。90mm×150mmのシーラント層を上側とする外装体、正極タブ、塗工面を上面とする正極、58mm×110mmのセパレータ(ポリプロピレンの微多孔膜)、塗工面を下面とする負極、負極タブ、シーラント層を下側とする90mm×150mmの外装体の順に積層させてから、そのうちの3辺を15mm幅でヒートシールし、袋状にした。残りの1辺は、正極、負極のそれぞれのタブとして10mm×50mm×15μmのアルミニウム箔を袋から10mmだけ出しておき、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1の溶液にLiPF_(6)が1.5Mになるように調整した電解液を充填してからヒートシールして封止した。ヒートシールは、160℃×1kg/cm^(2)×1秒の条件で行った。
【0092】
実施例2、3
実施例1において、樹脂と架橋剤との比率を表2記載のように変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って水性コート剤J-2、J-3を調製し、外装体、電池を得た。
【0093】
実施例4
実施例1において、水性コート剤調製の際、酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体E-1に代えて酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体E-2を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って水性コート剤J-4を調製し、外装体、電池を得た。
【0094】
実施例5
実施例1において、架橋剤含有溶液K-1に代えて架橋剤含有溶液K-2を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って水性コート剤J-5を調製し、外装体、電池を得た。
【0095】
実施例6、7
実施例1において、接着層の目付量を0.07g/m^(2) 、3g/m^(2)に変更した以外は、実施例1と同様の操作により、外装体、電池を得た。
【0096】
実施例8
実施例7において、ポリプロピレン樹脂を押出ラミネートする代わりに、無延伸ポリプロピレン樹脂フィルム(東レ社製「トレファンNO」、フィルム厚み:40μm)を重ね合わせ、熱ラミネート(120℃、30秒間)することでシーラント層を積層した以外は、実施例7と同様の操作により、外装体、電池を得た。
・・・
【0106】
実施例9
実施例1において、架橋剤含有溶液K-1に代えて架橋剤含有溶液K-3を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って水性コート剤J-6を調製し、外装体、電池を得た。
【0107】
実施例10、11
実施例9において、樹脂と架橋剤との比率を表3記載のように変更した以外は、実施例9と同様の操作を行って水性コート剤J-7、J-8を調製し、外装体、電池を得た。
【0108】
実施例12
実施例9において、水性コート剤調製の際、酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体E-1に代えて酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体E-2を用いた以外は、実施例9と同様の操作を行って水性コート剤J-9を調製し、外装体、電池を得た。
【0109】
実施例13、14
実施例9において、架橋剤含有溶液K-3に代えて、樹脂と架橋剤との比率を表3記載のように調整して架橋剤含有溶液K-3、架橋剤含有溶液K-4又は架橋剤含有溶液K-3、架橋剤含有溶液K-5を併用した以外は、実施例9と同様の操作を行って水性コート剤J-10、J-11を調製し、外装体、電池を得た。
【0110】
実施例15、16
実施例9において、接着層の目付量を0.07g/m^(2) 、3g/m^(2)に変更した以外は、実施例9と同様の操作により、外装体、電池を得た。
【0111】
実施例17、18
実施例13において、接着層の目付量を0.07g/m^(2) 、3g/m^(2)に変更した以外は、実施例13と同様の操作により、外装体、電池を得た。
【0112】
実施例19、20
実施例14において、接着層の目付量を0.07g/m^(2) 、3g/m^(2)に変更した以外は、実施例14と同様の操作により、外装体、電池を得た。
【0113】
実施例21?23
実施例16、18、20において、ポリプロピレン樹脂を押出ラミネートする代わりに、無延伸ポリプロピレン樹脂フィルム(東レ社製「トレファンNO」、フィルム厚み:40μm)を重ね合わせ、熱ラミネート(120℃、30秒間)することでシーラント層を積層した以外は、実施例16、18、20と同様の操作で外装体、電池を得た。
【0114】
実施例24
実施例1において、架橋剤含有溶液K-1に代えて、樹脂と架橋剤との比率を表3記載のように調整して架橋剤含有溶液K-1、架橋剤含有溶液K-3を併用した以外は、実施例9と同様の操作を行って水性コート剤J-12を調製し、外装体、電池を得た。
・・・
【0121】
実施例1?24及び比較例1?19で得られた各外装体について、耐電解液性、耐漏液性試験を行った。結果を表2、3に示す。
【0122】
【表2】


【0123】
【表3】



(3)甲3(特開2002-53730号公報)
甲3には、次の記載がある。

(3-1)「【請求項1】(a)不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂及び(b)カルボン酸基又はその酸無水物と反応しうる官能基を有する架橋剤よりなる金属基材への押出しラミネート用樹脂組成物。
【請求項2】架橋剤(b)がエポキシ樹脂、フェノール樹脂及びアミノ樹脂から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の樹脂組成物。」

(3-2)「【0025】また、架橋を促進するため触媒を用いることも可能であり3級アミン、4級アンモニウム塩などのアミノ系触媒、有機カルボン酸金属塩、イミダゾール化合物などを挙げることができる。」

(4)甲4(特開平10-204256号公報)
甲4には、次の記載がある。

(4-1)「【請求項1】(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂硬化剤、(C)無機充填材、(D)硬化促進剤、及び(E)エポキシ樹脂100重量部と無水マレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマー5?100重量部とを触媒の存在下、加熱反応させてなる反応生成物からなるエポキシ樹脂組成物において、フェノール樹脂硬化剤(B)50重量部に対して、該反応生成物(E)1?50重量部を添加してなることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。」

(4-2)「【0009】本発明に用いる硬化促進剤としては、一般に封止用樹脂組成物に用いられているものをひろく使用できる。代表的なものとしては、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、トリフェニルホスフィン、ベンジルジメチルアミン、2-メチルイミダゾール等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いてもよい。
【0010】本発明である反応生成物(E)に用いる無水マレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーは、無水マレイン酸変性ポリエチレン系オリゴマー又は無水マレイン酸変性ポリプロピレン系オリゴマーが好ましい。これら以外だと、密着性が不十分になり、耐半田性試験において剥離等の不良が発生する傾向がある。エポキシ樹脂と無水マレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーとを触媒の存在下、予め加熱反応させることにより反応生成物(E)が得られ、この反応生成物を樹脂組成物の1成分として用いることにより、リードフレーム等の各種部材との密着性向上、及び低弾性率化が計れる。無水マレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーとエポキシ樹脂との配合割合としては、エポキシ樹脂100重量部に対し無水マレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーは5?100重量部が好ましく、無水マレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーが5重量部未満だと、密着性の向上に効果が少なく、100重量部を越えると、反応生成物の溶融粘度が高くなり好ましくない。反応に用いるエポキシ樹脂としては、前記したものと同一のもので構わない。無水マレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーとエポキシ樹脂との反応生成物(E)を得るための反応条件としては、温度80?180℃、反応時間30分?8時間程度が好ましい。温度が80℃未満だと、反応に用いるエポキシ樹脂の溶融粘度が高く、無水マレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーと十分な均一混合がされず、180℃を越えると、反応が進み過ぎ、反応生成物の溶融粘度が高くなるため好ましくない。これらの反応を促進する触媒としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、トリフェニルホスフィン、ベンジルジメチルアミン、2-メチルイミダゾール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。」

(5)甲5(“酸無水物硬化エポキシ樹脂”「熱硬化性樹脂」Vol.2 No.1 1981年)
甲5には、次の記載がある。

(5-1)「3 硬化に関する諸問題
3.1 硬化メカニズム
酸無水物でエポキシ樹脂を硬化する場合に、無触媒で硬化するかあるいは何らかの触媒の存在下で硬化する場合と硬化メカニズムは異なる。
・・・
酸無水物硬化の大半は硬化温度を下げ、硬化時間を短縮するために硬化促進剤を併用する。硬化促進剤としては第三アミンがもっとも一般的である。第三アミンを併用して硬化する場合は、次に示すように第三アミンと酸無水物によるカルボニウムアニオンが生成し、これがエポキシ基を攻撃し最終的には酸無水物とエポキシ基の交互共縮合によるポリエステルが生成する。
通常、塩基性触下ではエーテル結合は生成しない。従って第三アミンのような塩基性の硬化促進剤を使用する場合、酸無水物はエポキシ基の当量に近い程度配合されるのが普通である。第三アミンとしては、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの他、最近ではイミダゾール誘導体などがよく使われる。
・・・
3.2 反応の活性化エネルギー
酸無水物の硬化反応の活性化エネルギーについてはいくつかの報告があるが、表2(省略)に他の硬化システムと比較して示した^(5))。この表の酸無水物についての値は無触媒硬化の場合である。これにベンジルジメチルアミンのような第三アミン系硬化促進剤を添加しても、あまり活性化エネルギーに変化はないが、2-エチル-4-メチルイミダゾールを使用すると活性化エネルギーは26kcal/mol前後に増加することが見出されており、宮本らはこれをイミダゾール中の活性水素の反応によると説明している^(7))。」(第30頁左欄第6行?第31頁右欄第8行)

(5-2)「4 酸無水物硬化エポキシ樹脂の構造と物性
4.1 架橋構造
エポキシ樹脂硬化剤を硬化メカニズム、化学的架橋構造の面から極めて大まかに分類すると、ポリアミドアミン迄含めたポリアミン系硬化剤と酸無水物硬化剤、それとルイス酸コンプレックス、イミダゾールのようなエポキシ基を重合させる触媒的硬化剤の三つの群にわけることが可能と考えられる。」(第33頁左欄第22行?右欄第5行)


2 刊行物に記載の発明

(1)甲1発明について

甲1には、上記1(1)(1-1)から、「分子内にカルボキシル基を含有するポリオレフィン系共重合体40?80重量部および芳香族ビニル化合物重合体ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックを有するブロック共重合体60?20重量部、硬化促進剤、及びエポキシ樹脂を含有し、エポキシ樹脂は前記ポリオレフィン系共重合体およびブロック共重合体の合計100重量部に対し、1?50重量部含有する接着剤組成物」が記載されている。また、上記(1-4)に、分子内にカルボキシル基を含有するポリオレフィン系共重合体50重量部に対して、硬化促進剤を0.1又は1重量部、かつ、エポキシ樹脂を10重量部となる割合で含有する接着剤組成物の例が記載されていることから、分子内にカルボキシル基を含有するポリオレフィン系共重合体100重量部に対して、硬化促進剤を0.2又は2重量部、かつ、エポキシ樹脂を20重量部となる割合で含有する接着剤組成物の例が記載されているといえる。
そうすると、甲1には、「分子内にカルボキシル基を含有するポリオレフィン系共重合体、硬化促進剤、及びエポキシ樹脂を含有し、当該ポリオレフィン系共重合体100重量部に対して、硬化促進剤を0.2又は2重量部、かつ、エポキシ樹脂を20重量部となる割合で含有する接着剤組成物。」(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

(2)甲2発明について

甲2には、上記1(2)(2-1)に、「酸変性ポリプロピレン樹脂、オキサゾリン化合物及びエポキシ化合物の少なくとも一方を含む架橋剤とを含有し、前記酸変性ポリプロピレン樹脂100質量部に対し前記架橋剤を0.1?40質量部となる割合で含有する接着剤組成物。」であり、架橋剤がエポキシ化合物と共に、イソシアネート化合物及びアミノ樹脂の少なくとも一方を含むこと、当該接着剤組成物はバリア層とシーラント層との間に使用されるラミネート用接着剤組成物であることが記載されているといえる。
そうすると、甲2には、「酸変性ポリプロピレン樹脂、エポキシ化合物、イソシアネート化合物及びアミノ樹脂の少なくとも一方を含む架橋剤とを含有し、前記酸変性ポリプロピレン樹脂100質量部に対し前記架橋剤を0.1?40質量部となる割合で含有する接着剤組成物。」(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。


3 本件発明と甲1発明との対比・判断

(1)本件発明1について

ア 本件発明1と甲1発明との一致点・相違点

本件発明1と甲1発明を対比する。

甲1発明の「分子内にカルボキシル基を含有するポリオレフィン系共重合体」は、本件発明1の「酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂」に、甲1発明の「エポキシ樹脂」は、上記1(1)(1-3)の段落【0009】から本件発明1の「硬化剤(C)」にそれぞれ相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明は、「酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂及び硬化剤(C)としてエポキシ樹脂を含有し、当該ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、前記硬化剤(C)を20重量部となる割合で含有する接着剤組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。

【相違点1-1】接着剤組成物において、本件発明1は、トリアゾール環を有する化合物である、窒素原子を環構造中に有する五員環構造の複素環状化合物(B)をポリオレフィン樹脂100重量部に対して0.01?10重量部含むのに対して、甲1発明は、そのような複素環状化合物を含むことが明示されていない点。

【相違点1-2】酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂において、本件発明1は、酸価が1?200mgKOH/gであるのに対し、甲1発明は、そのような記載がない点。

【相違点1-3】接着剤組成物において、本件発明1は、「一次または二次電池の電解液封止フィルムまたは電極部保護フィルム用」であるのに対し、甲1発明は、そのような記載がない点。

イ 相違点に関する判断

事案に鑑みて、はじめに、【相違点1-1】について検討する。

まず、甲1の上記1(1)(1-1)?(1-4)には、トリアゾール環を有する化合物を硬化促進剤として用いることが記載されていないから、上記【相違点1-1】は、実質的な相違点となるものである。

次に、上記【相違点1-1】が、当業者が容易に想到し得るものであるのか否かについて検討する。

甲1の段落【0024】には、「硬化促進剤としては、各種イミダゾール系化合物及びその誘導体、アミン系触媒、りん系触媒、ジシアンジアミド、ヒドラジン化合物及びこれらをマイクロカプセル化したものが使用できる。」旨記載されている。

そこで、甲1発明において、これらの記載から硬化促進剤としてトリアゾール環を有する化合物を選択することができるかを検討するに、甲2?5を参酌しても、酸とエポキシの反応における硬化促進剤としてトリアゾール環を有する化合物を使用する旨記載されていない。

一方、本件明細書の段落【0048】?段落【0055】の実施例、特に段落【0052】には、本件発明の接着剤の硬化条件として、「乾燥条件:80℃、60秒 エージング条件:40℃、3日」を採用し、さらに、段落【0053】の【表1】には、硬化促進剤としてBT120(ベンゾトリアゾール)を使用した実施例1?3,5,6が、初期接着強度と耐電解質性に優れた結果が得られていることが理解でき、本件発明1は【相違点1-1】の発明特定事項を有することにより段落【0036】に記載された低温短時間の乾燥で優れた密着性という本件発明1の効果を奏するものと認められる。

これを踏まえると、甲1発明は、硬化促進剤としてトリアゾール環を有する化合物を採用することについて着目していないから、甲2?5を参酌しても、当該化合物を選択する動機付けがあるとはいえない。

そうすると、本件発明1は、他の【相違点1-2】、【相違点1-3】を検討するまでもなく、甲1発明、甲1に記載の事項及び甲2?5に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本件発明2について

ア 本件発明2と甲1発明との一致点・相違点

本件発明2と甲1発明を対比する。

甲1発明の「分子内にカルボキシル基を含有するポリオレフィン系共重合体」は、本件発明2の「酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂」に、甲1発明の「エポキシ樹脂」は、上記1(1)(1-3)の段落【0009】から本件発明2の「硬化剤(C)」にそれぞれ相当する。

そうすると、本件発明2と甲1発明は、「酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂及び硬化剤(C)としてエポキシ樹脂を含有し、当該ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、前記硬化剤(C)を20重量部となる割合で含有する接着剤組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。

【相違点1-4】接着剤組成物において、本件発明2は、2-エチル-4-メチルイミダゾールをポリオレフィン樹脂100重量部に対して0.01?10重量部含むのに対して、甲1発明は、そのような化合物を含むことが明示されていない点。

【相違点1-5】酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂において、本件発明2は、酸価が1?200mgKOH/gであるのに対し、甲1発明は、そのような記載がない点。

【相違点1-6】接着剤組成物において、本件発明2は、「一次または二次電池の電解液封止フィルムまたは電極部保護フィルム用」であるのに対し、甲1発明は、そのような記載がない点。

イ 相違点に関する判断

事案に鑑みて、はじめに、【相違点1-4】について検討する。

まず、甲1の上記1(1)(1-3)の段落【0024】には、硬化促進剤として各種イミダゾール系化合物及びその誘導体を使用できることが記載されているが、イミダゾール系化合物として具体的に2-エチル-4-メチルイミダゾールが記載されていないことから、上記【相違点1-4】は、実質的な相違点となるものである。

さらに、上記【相違点1-4】が、当業者が容易に想到し得るものであるのか否かについて検討する。

甲3の上記1(3)(3-2)には、架橋を促進するための触媒としてイミダゾール化合物等を挙げることができる旨、甲4の上記1(4)(4-2)には、硬化促進剤として2-メチルイミダゾール等が挙げられること、甲5の上記1(5)(5-1)には、酸とエポキシの反応における硬化促進剤として2-エチル-4-メチルイミダゾールが挙げられている。

そこで、甲1発明において、甲3?5の記載から硬化促進剤として2-エチル-4-メチルイミダゾールを選択することができるかを検討するに、甲3?5の記載からみて、酸とエポキシの反応における硬化促進剤としてイミダゾール化合物が使用されることは周知の事項であり、さらに、甲5の上記記載から、当該硬化促進剤として2-エチル-4-メチルイミダゾールはよく知られた化合物であるといえるものの、甲5の上記(5-1)には、2-エチル-4-メチルイミダゾールを使用すると活性化エネルギーが増加する、つまり、反応を進行させるのにより熱エネルギーを要する旨記載されていることから、甲1発明において、硬化促進剤である各種イミダゾール化合物として敢えて当該公知の化合物を採用することは、動機付けがない。

一方、本件明細書の段落【0048】?段落【0055】の実施例、特に段落【0052】には、本件発明の接着剤の硬化条件として、「乾燥条件:80℃、60秒 エージング条件:40℃、3日」を採用し、さらに、段落【0053】の【表1】には、硬化促進剤としてキュアゾール 2E4MZ(イミダゾール)(特許権者が提出した乙第3号証より、2-エチル-4-メチルイミダゾールに相当する。)を特定量使用した実施例2?4,6が、初期接着強度と耐電解質性に優れた結果が得られていることが理解でき、本件発明2は【相違点1-4】の発明特定事項を有することにより、段落【0036】に記載された低温短時間の乾燥で優れた密着性という本件発明2の効果を奏するものと認められる。

これを踏まえると、甲1発明は、硬化促進剤として2-エチル-4-メチルイミダゾールを採用することについて着目していないから、甲2?5を参酌しても、当該具体的な化合物を選択する動機付けがあるとはいえない。

そうすると、本件発明2は、他の【相違点1-5】、【相違点1-6】を検討するまでもなく、甲1発明、甲1に記載の事項及び甲2?5に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本件発明3について

ア 本件発明3と甲1発明との一致点・相違点

本件発明3と甲1発明を対比する。

甲1発明の「分子内にカルボキシル基を含有するポリオレフィン系共重合体」は、本件発明3の「酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂」に、甲1発明の「エポキシ樹脂」は、上記1(1)(1-3)の段落【0009】から、本件発明3の「硬化剤(C)」にそれぞれ相当する。また、甲1の上記(1-2)に、接着剤組成物が金属の補強材とポリイミドフィルム等の耐熱フィルムとを接着する態様が記載されており、上記(1-3)に、接着剤組成物による接着層を形成する基材としてアルミ箔等の金属フィルム基材も示唆されていることから、ラミネート用接着剤組成物の態様が記載されているといえる。

そうすると、本件発明3と甲1発明は、「酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂及び硬化剤(C)を含有し、当該ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、前記硬化剤(C)を20重量部となる割合で含有するラミネート用接着剤組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。

【相違点1-7】接着剤組成物において、本件発明3は、トリアゾール環またはイミダゾール環を有する化合物である、窒素原子を環構造中に有する五員環構造の複素環状化合物(B)をポリオレフィン樹脂100重量部に対して0.01?10重量部含むのに対して、甲1発明は、そのような化合物を含むことが明示されていない点。

【相違点1-8】酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂において、本件発明3は、酸価が1?200mgKOH/gであるのに対し、甲1発明は、そのような記載がない点。

【相違点1-9】硬化剤(C)が、本件発明3は、「ポリイソシアネート化合物を含み、エポキシ樹脂を含まない」であるのに対し、甲1発明は、エポキシ樹脂である点。

イ 相違点に関する判断

事案に鑑みて、はじめに、【相違点1-9】について検討する。

まず、甲1の上記1(1)(1-1)?(1-4)には、硬化剤としてポリイソシアネート化合物を含み、エポキシ樹脂を含まないことが記載されていないから、上記【相違点1-9】は、実質的な相違点となるものである。
さらに、上記【相違点1-9】が、当業者が容易に想到し得るものであるのか否かについて検討する。

甲1の段落【0009】の記載からみて、甲1発明において、エポキシ樹脂を含有させることは優れた耐熱性・接着性を発揮させるために必須の構成とするものであり、甲1発明においてエポキシ樹脂を含有しないということは、そもそも想定されていないものというべきであり、甲1発明において、エポキシ樹脂を含まないようにすることは、当業者が容易になし得たこととは到底いえない。

そうすると、本件発明3は、他の【相違点1-7】、【相違点1-8】を検討するまでもなく、甲1発明、甲1に記載の事項及び甲2?5に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


4 本件発明と甲2発明との対比・判断

(1)本件発明1について

ア 本件発明1と甲2発明との一致点・相違点

本件発明1と甲2発明を対比する。

甲2発明の「酸変性ポリプロピレン樹脂」は、本件発明1の「酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂」に相当し、甲2発明の「エポキシ化合物、イソシアネート化合物及びアミノ樹脂を含む架橋剤」の「エポキシ化合物」及び「イソシアネート化合物」は、上記1(2)(2-4)の段落【0082】及び【0083】の記載からみて、本件明細書の段落【0026】、【0028】に記載のエポキシ樹脂、ポリイソシアネート化合物と同様の化合物を示すことから、本件発明1の硬化剤(C)としての「エポキシ樹脂」と「ポリイソシアネート化合物」にそれぞれ相当する。また、甲2発明における当該架橋剤の酸変性ポリプロピレン樹脂100質量部に対する0.1?40質量部という添加量も、0.1?30質量部の範囲で本件発明1の範囲と重複する。
そうすると、本件発明1と甲2発明は、「酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂、硬化剤(C)としてエポキシ樹脂及びポリイソシアネート化合物とを含有し、前記酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対し前記硬化剤(C)を0.1?30質量部となる割合で含有する接着剤組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。

【相違点2-1】接着剤組成物において、本件発明1は、トリアゾール環を有する化合物である、窒素原子を環構造中に有する五員環構造の複素環状化合物(B)をポリオレフィン樹脂100重量部に対して0.01?10重量部含むのに対して、甲2発明は、そのような複素環状化合物を含むことが明示されていない点。

【相違点2-2】酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂において、本件発明1は、酸価が1?200mgKOH/gであるのに対し、甲2発明は、そのような記載がない点。

【相違点2-3】接着剤組成物において、本件発明1は、「一次または二次電池の電解液封止フィルムまたは電極部保護フィルム用」であるのに対し、甲2発明は、そのような記載がない点。

イ 相違点に関する判断

事案に鑑みて、はじめに、【相違点2-1】について検討する。

まず、甲2の上記1(2)(2-1)?(2-4)には、トリアゾール環を有する化合物を硬化促進剤として用いることが記載されていないから、上記【相違点2-1】は、実質的な相違点となるものである。

さらに、上記【相違点2-1】が、当業者が容易に想到し得るものであるのか否かについて検討する。

甲3?5を参酌しても、酸とエポキシの反応における硬化促進剤としてトリアゾール環を有する化合物を使用する旨記載されておらず、硬化促進剤としてトリアゾール環を有する化合物を採用することについて着目していない甲2に記載の発明において、甲3?5を参酌しても、当該化合物を選択する動機付けがあるとはいえない。

そうすると、本件発明1は、他の【相違点2-2】、【相違点2-3】を検討するまでもなく、甲2発明、甲2に記載の事項及び甲3?5に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本件発明2について

ア 本件発明2と甲2発明との一致点・相違点

本件発明2と甲2発明を対比する。

甲2発明は、上記4(1)アで検討したとおり、本件発明2と甲1発明は、「酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂、硬化剤(C)としてエポキシ樹脂及びポリイソシアネート化合物とを含有し、前記酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対し前記硬化剤(C)を0.1?30質量部となる割合で含有する接着剤組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。

【相違点2-4】接着剤組成物において、本件発明2は、2-エチル-4-メチルイミダゾールをポリオレフィン樹脂100重量部に対して0.01?10重量部含むのに対して、甲2発明は、そのような化合物を含むことが明示されていない点。

【相違点2-5】酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂において、本件発明2は、酸価が1?200mgKOH/gであるのに対し、甲2発明は、そのような記載がない点。

【相違点2-6】接着剤組成物において、本件発明2は、「一次または二次電池の電解液封止フィルムまたは電極部保護フィルム用」であるのに対し、甲2発明は、そのような記載がない点。

イ 相違点に関する判断

事案に鑑みて、はじめに、【相違点2-4】について検討する。

まず、甲2の上記1(2)(2-1)?(2-4)には、2-エチル-4-メチルイミダゾールを硬化促進剤として用いることが記載されていないから、上記【相違点2-4】は、実質的な相違点となるものである。

さらに、上記【相違点2-4】が、当業者が容易に想到し得るものであるのか否かについて検討する。

甲5の上記1(5)(5-1)には、酸とエポキシの反応における硬化促進剤として2-エチル-4-メチルイミダゾールが挙げられている。

そこで、甲2発明において、甲5の記載から硬化促進剤として2-エチル-4-メチルイミダゾールを選択することができるかを検討するに、甲5の上記記載から、当該硬化促進剤として2-エチル-4-メチルイミダゾールはよく知られた化合物であるといえるものの、甲5の上記(5-1)には、2-エチル-4-メチルイミダゾールを使用すると活性化エネルギーが増加する、つまり、反応を進行させるのにより熱エネルギーを要する旨記載されていることから、甲1発明において、硬化促進剤である各種イミダゾール化合物として敢えて当該公知の化合物を採用することは、動機付けがない。

一方、本件明細書の段落【0048】?段落【0055】の実施例、特に段落【0052】には、本件発明の接着剤の硬化条件として、「乾燥条件:80℃、60秒 エージング条件:40℃、3日」を採用し、さらに、段落【0053】の【表1】には、硬化促進剤としてキュアゾール 2E4MZ(イミダゾール)(特許権者が提出した乙第3号証より、2-エチル-4-メチルイミダゾールに相当する。)を特定量使用した実施例2?4,6が、初期接着強度と耐電解質性に優れた結果が得られていることが理解でき、本件発明2は【相違点2-4】の発明特定事項を有することにより、段落【0036】に記載された低温短時間の乾燥で優れた密着性という本件発明2の効果を奏するものと認められる。

これを踏まえると、甲2発明は、硬化促進剤として2-エチル-4-メチルイミダゾールを採用することについて着目していないから、甲5を参酌しても、当該具体的な化合物を選択する動機付けがあるとはいえない。

そうすると、本件発明2は、他の【相違点2-5】、【相違点2-6】を検討するまでもなく、甲2発明、甲2に記載の事項及び甲5に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本件発明3について

ア 本件発明3と甲2発明との一致点・相違点

本件発明3と甲2発明を対比すると、上記4(1)アで検討した事項に加え、上記1(2)(2-1)より、甲2発明の接着剤組成物はバリア層とシーラント層との間に使用されるラミネート用接着剤組成物であることが記載されているといえることを考慮すると、本件発明3と甲2発明は、「酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂及び硬化剤(C)を含有し、当該ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、前記硬化剤(C)を20重量部となる割合で含有するラミネート用接着剤組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。

【相違点2-7】接着剤組成物において、本件発明3は、トリアゾール環またはイミダゾール環を有する化合物である、窒素原子を環構造中に有する五員環構造の複素環状化合物(B)をポリオレフィン樹脂100重量部に対して0.01?10重量部含むのに対して、甲2発明は、そのような化合物を含むことが明示されていない点。

【相違点2-8】酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂において、本件発明3は、酸価が1?200mgKOH/gであるのに対し、甲2発明は、そのような記載がない点。

【相違点2-9】硬化剤(C)が、本件発明3は、「ポリイソシアネート化合物を含み、エポキシ樹脂を含まない」であるのに対し、甲2発明は、エポキシ樹脂及びポリイソシアネート化合物を含む点。

イ 相違点に関する判断

事案に鑑みて、はじめに、【相違点2-9】について検討する。

まず、甲2の上記1(2)(2-1)の請求項2及び同(2-4)の実施例には、硬化剤としてポリイソシアネート化合物に加え、エポキシ樹脂を含むことが記載されているから、上記【相違点2-9】は、実質的な相違点となるものである。

さらに、上記【相違点2-9】が、当業者が容易に想到し得るものであるのか否かについて検討する。

甲2の上記(2-3)の段落【0032】の記載からみて、甲2発明において、初めに添加されているエポキシ化合物と共に、イソシアネート化合物を含有させることによって架橋がより強固になり、耐電解液性や耐漏液性を高めるために必須の構成とするものであり、甲2発明においてイソシアネート化合物のみを含有させ、エポキシ化合物を含まないとすることはそもそも想定されていないから、甲2発明において、エポキシ化合物を含まないようにすることは、当業者が容易になし得たこととは到底いえない。

そうすると、本件発明3は、他の【相違点2-7】、【相違点2-8】を検討するまでもなく、甲2発明、甲2に記載の事項及び甲3?5に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本件発明4について

本件発明4は、本件発明1?3を引用し、本件発明1?3の接着剤組成物を金属層とポリオレフィン樹脂層との間に使用した積層体の発明であるから、本件発明1?3と同様に、本件発明4は、甲2発明及び甲2に記載の事項及び甲3?5に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)本件発明5について

本件発明5は、本件発明4を引用し、本件発明4の積層体を含む二次電池の発明であるから、本件発明1?3を引用する本件発明4と同様に、本件発明5は、甲2発明、甲2に記載の事項及び甲3?5に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


5 異議申立人の平成30年8月21日付け意見書(以下、単に「意見書」という。)における主な主張について

(1)異議申立人の主張

標記意見書における、取消理由1についての異議申立人の主張は、概ね以下のとおりである(意見書第14頁)。

「上述の通り、異議申立人は、本件特許の新請求項3が、新請求項1,2に比べて(B)成分をイミダゾール環を有する化合物の単独使用の場合まで拡張している点でサポート性を有さないことを主に詳述してきたが、サポート性を有さない結果として本件特許の新請求項3の発明が進歩性も有さないことは明らかである。」

(2)当該主張についての検討

上記第5 3(3)及び4(3)で検討したとおり、本件発明3は、甲1発明及び甲1に記載された事項、又は、甲2発明、甲2に記載の事項及び甲3?5に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

そして、本件発明の優れた効果についても、本件明細書より看取できるといえるから、異議申立人の上記の主張は、採用できない。


第6 取消理由2に関する当審の判断

1 本件発明1について

本件発明の解決すべき課題は、「金属層とプラスチック層との接着性に優れ、防湿性、耐熱性、絶縁性、耐久性等を満足し、更に、耐電解質性を兼ね備え、経時で層間剥離を生じることがないラミネート積層体用接着剤組成物、それを使用した積層体、および二次電池を得ること」(【0004】)である。
この課題に対し、本件発明1は、「酸価が1?200mgKOH/gの酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂および/または水酸基価が1?200mgKOH/gの水酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂(A)、トリアゾール環を有する化合物である、窒素原子を環構造中に有する五員環構造の複素環状化合物(B)、及び前記酸基又は水酸基含有ポリオレフィン樹脂(A)と反応性を有する硬化剤(C)としてエポキシ樹脂またはポリイソシアネート化合物を、前記ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対して、前記複素環状化合物(B)を0.01?10重量部となる割合、かつ、前記硬化剤(C)を0.1?30重量部となる割合で含有することを特徴とする一次または二次電池の電解液封止フィルムまたは電極部保護フィルム用接着剤組成物。」を特定する。

本件特許明細書の段落【0053】の【表1】を参酌するに、複素環状化合物(B)として、トリアゾール環を有する化合物である、窒素原子を環構造中に有する五員環構造の複素環状化合物を使用した実施例1?3,5,6において、優れた接着性(初期接着強度)と耐電解質性とを呈していること、本件明細書の段落【0007】には、「アルミニウム箔等の金属層と極性の低いオレフィンシートとの間に使用することで優れた接着性を発現する。その結果、本接着剤を使用した積層体は、良好な防湿性、耐熱性、耐溶剤性、耐久性等を発揮できる。
また、その積層体を二次電池用積層体として用いた場合、プロピレンカーボネートやエチレンカーボネートといった電解質に対して、優れた耐性を有する為、経時での層間剥離を生じることがない。」と記載されており、つまり、優れた接着性(初期接着強度)と耐電解質性は、防湿性、耐熱性、耐溶剤性、耐久性や経時での層間剥離を生じさせないという課題を解決できるものであることから、本件発明1は、本件発明の課題を解決できると認められ、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。

そして、特定の酸価または水酸基価を有する変性ポリオレフィン樹脂(A)、特定の五員環構造の複素環状化合物(B)及び特定の硬化剤(C)の配合量についても、各成分が本件発明1に記載の配合量のほぼ中央値を採用した実施例が開示されているのであるから、当該配合量の数値範囲の上限及び下限においても課題を解決できないとまではいえない。

また、本件発明1を引用する本件発明4,5も同様である。


2 本件発明2について

本件発明の解決すべき課題は、上記1で記載したとおりである。
この課題に対し、本件発明2は、「酸価が1?200mgKOH/gの酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂および/または水酸基価が1?200mgKOH/gの水酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂(A)、2-エチル-4-メチルイミダゾール、及び前記酸基又は水酸基含有ポリオレフィン樹脂(A)と反応性を有する硬化剤(C)としてエポキシ樹脂またはポリイソシアネート化合物を、前記ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対して、前記2-エチル-4-メチルイミダゾールを0.01?10重量部となる割合、かつ、前記硬化剤(C)を0.1?30重量部となる割合で含有することを特徴とする一次または二次電池の電解液封止フィルムまたは電極部保護フィルム用接着剤組成物。」を特定する。

本件特許明細書の段落【0053】の【表1】を参酌するに、複素環状化合物(B)として、2-エチル-4-メチルイミダゾールを使用した実施例2?4,6において、上記1と同様、前記本件発明の課題を解決しているといえるから、本件発明2は、本件発明の課題を解決できると認められ、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。

そして、特定の酸価または水酸基価を有する変性ポリオレフィン樹脂(A)、特定の複素環状化合物(B)及び特定の硬化剤(C)の配合量についても、各成分が本件発明2に記載の配合量のほぼ中央値を採用した実施例が開示されているのであるから、当該配合量の数値範囲の上限及び下限においても課題を解決できないとまではいえない。

また、本件発明2を引用する本件発明4,5も同様である。


3 本件発明3について

本件発明の解決すべき課題は、上記1で記載したとおりである。
この課題に対し、本件発明3は、「酸価が1?200mgKOH/gの酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂および/または水酸基価が1?200mgKOH/gの水酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂(A)、トリアゾール環またはイミダゾール環を有する化合物である、窒素原子を環構造中に有する五員環構造の複素環状化合物(B)、及び前記酸基又は水酸基含有ポリオレフィン樹脂(A)と反応性を有する硬化剤(C)を、前記ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対して、前記複素環状化合物(B)を0.01?10重量部となる割合、かつ、前記硬化剤(C)を0.1?30重量部となる割合で含有し、前記硬化剤(C)がポリイソシアネート化合物を含み、エポキシ樹脂を含まないラミネート用接着剤組成物。」を特定する。

本件特許明細書の段落【0053】の【表1】を参酌するに、複素環状化合物(B)として、トリアゾール環またはイミダゾール環を有する化合物である、窒素原子を環構造中に有する五員環構造の複素環状化合物を使用した実施例1?6において、上記1と同様、前記本件発明の課題を解決しているといえるから、本件発明3は、本件発明の課題を解決できると認められ、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。

そして、特定の酸価または水酸基価を有する変性ポリオレフィン樹脂(A)、特定の五員環構造の複素環状化合物(B)及び特定の硬化剤(C)の配合量についても、各成分が本件発明3に記載の配合量のほぼ中央値を採用した実施例が開示されているのであるから、当該配合量の数値範囲の上限及び下限においても課題を解決できないとまではいえない。

また、本件発明3を引用する本件発明4,5も同様である。


4 異議申立人の平成30年8月21日付け意見書(以下、単に「意見書」という。)における主な主張について

(1)異議申立人の主張

標記意見書における、取消理由2についての異議申立人の主張は、概ね以下のとおりである(意見書第5?14頁)。

「この新請求項3に記載の「イミダゾール環」を有する化合物について、本件特許の明細書【0023】には、18種類もの様々な化合物が例示されている。・・・
しかしながら、本件特許の明細書の実施例では、このような様々な化合物の中の一つの化合物(四番目に例示されている「2-エチル-4-メチルイミダゾール」)の効果を実証しているにすぎず、残りのイミダゾール環を有する様々な化合物については何ら効果を実証していない。すなわち、「2-エチル-4-メチルイミダゾール」以外のイミダゾール環を有する化合物については、何ら効果を実証しておらず、サポート性がない。」

「つまり、甲第5号証には、本件特許の明細書の実施例で使用した「2-エチル-4-メチルイミダゾール」が、第三アミン系硬化促進剤のような他の硬化促進剤と比べて優れた効果促進作用を有することが示されている。これは逆に言うと「2-エチル-4-メチルイミダゾール」以外のイミダゾール環を有する化合物については、「2-エチル-4-メチルイミダゾール」ほどの高い硬化促進作用を有するとは言えないことを示している。
・・・
さらに述べると、本件特許の明細書の実施例で効果を確認した「2-エチル-4-メチルイミダゾール」は、他の硬化促進剤と比べて優れた効果促進作用を有することが甲第5号証においても示されているが、他のイミダゾール環を有する化合物については、その作用効果が全く不明である。」

「さらに述べると、本件特許の新請求項3は、(C)成分の規定の条件を満たしたものの中で(B)成分の効果を実施例で確認しておらず、上記とは別の意味でもサポート要件を満たしていない。
・・・
具体的に述べると、本件特許の明細書の全ての実施例(実施例1?6)のうち、新請求項3の「硬化剤(C)がポリイソシアネート化合物を含み、エポキシ樹脂を含まない」という要件を満たすのは、実施例5,6のみである。
・・・
上記の表から明らかなように、本件特許の新請求項3の(B)成分の要件で効果を検証しているのは、(B)成分としてトリアゾール環を有する化合物のみを使用する実施例5、トリアゾール環を有する化合物とイミダゾール環を有する化合物を併用する実施例6だけであり、イミダゾール環を有する化合物のみを単独で使用する場合は、効果が全く検証されていない。」

(2)当該主張についての検討

まず、五員環構造の複素環状化合物(B)として、2-エチル-4-メチルイミダゾールを選択した実施例2?4,6の効果を、2-エチル-4-メチルイミダゾール以外のイミダゾール環を有する化合物である、窒素原子を環構造中に有する五員環構造の複素環状化合物においても同様な効果が得られるといえるかについて検討する。

異議申立人が、意見書の第11頁第14行?第12頁第9行において二級アミンと三級アミンにおいて硬化時間に有意な差があるという主張の根拠として挙げた甲5のTable1を参酌するに、確かに、三級アミンの1-メチルイミダゾールは、二級アミンの2-メチルイミダゾールのGel time(硬化時間)をみると、6分の差が示されているが、他の硬化促進剤と比べると、そもそもイミダゾール環を有するこれらの化合物の硬化時間は小さいことが看取できるし、他の硬化促進剤の構造の差による硬化時間の差と比べても6分という差は小さいことが理解でき、イミダゾール環を有する硬化促進剤が群としてエポキシと酸との迅速な反応に寄与することが分かる。

したがって、2-エチル-4-メチルイミダゾール以外のイミダゾール環を有する化合物である、窒素原子を環構造中に有する五員環構造の複素環状化合物においても、2-エチル-4-メチルイミダゾールと同様な効果が得られることは自明であるといえるから、異議申立人の主張は採用できない。

次に、硬化剤としてポリイソシアネート化合物のみを含む接着剤組成物において、硬化促進剤としてイミダゾール環を有する化合物のみを選択した場合にも、トリアゾール環を有する化合物単独(実施例5)やトリアゾール環を有する化合物及びイミダゾール環を有する化合物を両方添加した場合(実施例6)と同様の効果が得られるか否かについて検討する。

本件明細書の実施例4は、硬化剤(C)として、エポキシ樹脂のみを用いているものの、硬化促進剤としてイミダゾール環を有する化合物を単独で用いてトリアゾール環を有する化合物を単独で用いた場合(実施例1)と同様の初期接着強度と耐電解質性を発揮していること、ポリイソシアネート化合物はエポキシ樹脂と同様に反応性が高いことを考慮すると、硬化剤としてポリイソシアネート化合物のみを含む接着剤組成物において、硬化促進剤としてイミダゾール環を有する化合物のみを選択した場合に課題を解決できないほどに効果が劣るとは直ちにいえず、異議申立人の主張は採用することができない。


第7 取消理由で採用しなかった申立理由

異議申立人は、申立理由として、本件発明1?3に対して、甲1に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号違反であること、本件発明4,5に対して、甲1に記載された発明により単独で、又は甲1を主引例として甲2を副引例とする同条第2項違反であること、また、本件発明1?5に対する、同法第36条第4項第1号違反であることを、それぞれ主張する。

1 特許法第29条第1項第3号違反について

上記第5 3(1)?(3)でも検討したとおり、本件発明1?3と甲1発明とは、【相違点1-1】、【相違点2-1】、【相違点3-1】で実質的に異なることから、本件発明1?3は甲1に記載された発明ではない。


2 特許法第29条第2項違反について

異議申立人は、特許異議申立書の第16頁最終行?第18頁第9行において、要するに、甲1発明の成分(a)は、ポリオレフィン系共重合体であるから、ポリオレフィンとの親和性に優れるため、金属の補強材とポリイミドフィルム等の耐熱フィルムの接着に前記接着剤組成物を使用する(甲1の段落【0001】)際に、当該耐熱フィルムの材料としてポリオレフィンを採用することは当業者が容易に想到しうることであるし、本件明細書の段落【0002】に記載のとおり、二次電池が金属箔とプラスチックを貼り合わせた積層体を含むことは従来周知であり、甲1発明を金属とポリオレフィンフィルムとの接着に使用した積層体を二次電池に適用することは当業者が容易に想到しうることにすぎない旨主張する。

しかしながら、第5 3及び4でも検討したとおり、甲1発明からは、その他の甲1又は甲2に記載の事項を考慮したとしても、本件発明1?3を当業者が容易に発明できたものとはいえないことから、本件発明1?3を引用する本件発明4,5も、同様に当業者が容易に発明できたものとはいえない。

したがって、甲1発明、甲1に記載の発明、又は、甲1に記載の発明及び甲2に記載された技術的事項から、本件発明4,5を容易に発明することができたとはいえない。


3 特許法第36条第4項第1号違反について

異議申立人は、特許異議申立書の第25頁下から5行?第31頁第7行において、要するに、本件特許の請求項1に記載の「酸基又は水酸基含有ポリオレフィン樹脂(A)」、「五員環構造の複素環状化合物(B)」、及び「前記酸基又は水酸基含有ポリオレフィン樹脂(A)と反応性を有する硬化剤(C)」として、本件明細書の実施例で効果を実証しているのは、それぞれ「酸価55mgKOH/g、水酸基価40mgKOH/gの酸基又は水酸基含有ポリオレフィン樹脂(A)」、「トリアゾール環又はイミダゾール環を有する化合物である、窒素原子を環構造中に有する五員環構造の複素環状化合物」、「エポキシ化合物及びポリイソシアネート化合物」のみであるから、当該実施例で得られた効果と同様の効果が請求項1に記載の範囲までそのまま得られるとは当業者には到底認められず、本件明細書は当業者が本件特許の請求項1?5の発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない、と主張する。

しかしながら、特許法第36条第4項第1号は、明細書の発明の詳細な説明の記載は、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したもの」でなければならないと定めるところ、この規定にいう「実施」とは、物の発明においては、そのものを作ることができ、かつ、その物を使用できることである。また、明細書の記載が実施可能要件を満たすといえるためには、明細書にその物を生産する方法及び使用する方法についての具体的な記載が必要であるが、そのような記載がなくても、明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき、当業者がその物を作ることができ、かつ、その物を使用できるのであれば、上記の実施可能要件を満たすということができる。また、「使用できる」といえるためには、特許発明に係る物について、例えば発明が目的とする作用効果等を奏する態様で用いることができることを要するというべきである。

これを本件に当てはめると、本件発明1は、「一次電池または二次電池の電解液封止フィルムまたは電極部保護フィルム用接着剤組成物」であるから、明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たすといえるためには、本件発明1の接着剤組成物を製造することができ、「一次電池または二次電池の電解液封止フィルムまたは電極部保護フィルム用接着剤組成物」として用いることができる程度に発明の詳細な説明の記載があれば足りるのであって、「当該実施例で得られた効果と同様の効果が請求項1に記載の範囲までそのまま得られること」まで記載されていることを要するものではない。

そして、発明の詳細な説明の記載および技術常識を勘案すれば、本件発明1の接着剤組成物を製造することができ、「一次電池または二次電池の電解液封止フィルムまたは電極部保護フィルム用接着剤組成物」として用いることができることは、明らかである。

したがって、本件明細書は当業者が本件特許の請求項1?5の発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえ、特許法第36条第4項第1号に違反するものではない。


第8 むすび

上記「第5」ないし「第7」で検討したとおり、本件特許1ないし5は、特許法第29条第1項及び同法同条第2項の規定に違反してされたものであるということはできず、同法第113条第2号に該当するものではなく、同法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号の規定に違反してされたものであるということはできず、同法第113条第4号に該当するものではないから、上記取消理由1,2及び上記申立理由によっては、本件特許1ないし5を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1ないし5を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり、決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸価が1?200mgKOH/gの酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂および/または水酸基価が1?200mgKOH/gの水酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂(A)、トリアゾール環を有する化合物である、窒素原子を環構造中に有する五員環構造の複素環状化合物(B)、及び前記酸基又は水酸基含有ポリオレフィン樹脂(A)と反応性を有する硬化剤(C)としてエポキシ樹脂またはポリイソシアネート化合物を、前記ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対して、前記複素環状化合物(B)を0.01?10重量部となる割合、かつ、前記硬化剤(C)を0.1?30重量部となる割合で含有することを特徴とする一次または二次電池の電解液封止フィルムまたは電極部保護フィルム用接着剤組成物。
【請求項2】
酸価が1?200mgKOH/gの酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂および/または水酸基価が1?200mgKOH/gの水酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂(A)、2-エチル-4-メチルイミダゾール、及び前記酸基又は水酸基含有ポリオレフィン樹脂(A)と反応性を有する硬化剤(C)としてエポキシ樹脂またはポリイソシアネート化合物を、前記ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対して、前記2-エチル-4-メチルイミダゾールを0.01?10重量部となる割合、かつ、前記硬化剤(C)を0.1?30重量部となる割合で含有することを特徴とする一次または二次電池の電解液封止フィルムまたは電極部保護フィルム用接着剤組成物。
【請求項3】
酸価が1?200mgKOH/gの酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂および/または水酸基価が1?200mgKOH/gの水酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂(A)、トリアゾール環またはイミダゾール環を有する化合物である、窒素原子を環構造中に有する五員環構造の複素環状化合物(B)、及び前記酸基又は水酸基を含有する変性ポリオレフィン樹脂(A)と反応性を有する硬化剤(C)を、前記ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対して、前記複素環状化合物(B)を0.01?10重量部となる割合、かつ前記硬化剤(C)を0.1?30重量部となる割合で含有し、前記硬化剤(C)がポリイソシアネート化合物を含み、エポキシ樹脂を含まないラミネート用接着剤組成物。
【請求項4】
請求項1?3の何れか1つに記載のラミネート用接着剤を金属層とポリオレフィン樹脂層との間に使用した積層体。
【請求項5】
請求項4記載の積層体を含む二次電池。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-11-14 
出願番号 特願2013-195475(P2013-195475)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C09J)
P 1 651・ 121- YAA (C09J)
P 1 651・ 536- YAA (C09J)
P 1 651・ 537- YAA (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松原 宜史  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 蔵野 雅昭
阪▲崎▼ 裕美
登録日 2016-11-18 
登録番号 特許第6040901号(P6040901)
権利者 DIC株式会社
発明の名称 ラミネート積層体用接着剤組成物、これを使用した積層体、および二次電池  
代理人 河野 通洋  
代理人 小川 眞治  
代理人 河野 通洋  
代理人 小川 眞治  

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