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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 一部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1347659
異議申立番号 異議2018-700343  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-04-25 
確定日 2018-11-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6217673号発明「分岐デキストリン、その製造方法及び飲食品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6217673号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔6-7〕について訂正することを認める。 特許第6217673号の請求項6ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6217673号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成29年10月6日にその特許権の設定登録がされ、平成29年10月25日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成30年 4月25日 : 特許異議申立人篠崎哲也による請求項6及び7に係る特許に対する異議の申立て
同年 6月27日付け: 取消理由通知書
同年 8月31日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年10月 9日 : 特許異議申立人による意見書の提出

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
平成30年8月31日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項1(下線は訂正箇所を示す。)
特許請求の範囲の請求項6及び7に「デキストリンの非還元末端にグルコース又はイソマルトオリゴ糖がα-1,6グルコシド結合で結合した構造を8質量%以上有し、」と記載されている事項を、「デキストリンの非還元末端にグルコース又はイソマルトオリゴ糖がα-1,6グルコシド結合で結合した構造を8質量%以上有し、かつ分子内に1,4-及び1,6-グルコシド結合を有するグルコースを有し、」と訂正する。
そして、本件訂正請求は、一群の請求項〔6-7〕について請求されたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項6及び7の「分岐デキストリン」について、本件特許明細書の「【0021】・・・内部の分岐構造を有するグルコース、すなわち「→4,6)-Glcp-(1→」の割合が、好ましくは5?13質量%、さらに好ましくは6?10質量%である。」及び「【0051】・・・本発明の製造方法で調製された分岐デキストリンはデキストリンに対し、分岐構造である1→6結合を持つグルコース「→6)-Glcp-(1→」及び「→4,6)-Glcp-(1→」の内、「→4,6)-Glcp-(1→」の割合が増加していた。」の記載に基づき、分岐構造をより具体的に特定して限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1は上記のとおりの訂正であるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔6-7〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項6及び7に係る発明(以下「本件発明6及び7」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項6及び7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
本件発明6「デキストリンの非還元末端にグルコース又はイソマルトオリゴ糖がα-1,6グルコシド結合で結合した構造を8質量%以上有し、かつ分子内に1,4-及び1,6-グルコシド結合を有するグルコースを有し、DEが20?28.3であり、10質量%水溶液の浸透圧が140mOSMOL/kg以上であることを特徴とする分岐デキストリンを含む、エネルギー持続剤又は腹持ち剤用の分岐デキストリン組成物。」
本件発明7「1,4-及び1,6-グルコシド結合を有するグルコースを5?13質量%の範囲で有する、請求項6記載のエネルギー持続剤又は腹持ち剤用の分岐デキストリン組成物。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項6及び7に係る特許に対して、当審が平成30年6月27日の特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(1)請求項6及び7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である。よって、請求項6及び7に係る特許は、特許法29条1項3号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)請求項6及び7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2及び甲第3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到することができたものである。よって、請求項6及び7に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

2 甲号証の記載
(1)甲第1号証(特表2006-518200号公報)
ア 甲第1号証(以下「甲1」という。)には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は長められた鎖長及び低いグリセミック指数を有するイソマルト-オリゴサッカライドを製造する方法に関する。」
「【本発明の要約】
【0008】
本発明は、イソマルト-オリゴサッカライドの鎖長を長くする方法であって、スクロースと、炭水化物シロップ中に存在するイソマルト-オリゴサッカライドとの間で、酵素作用下に転移反応を行うことを含むことを特徴とする前記方法に関する。・・・
・・・
【0014】
更に、本発明は、上記方法で得ることができる、長められた鎖長を有するイソマルト-オリゴサッカライドを含むシロップに関する。」
「【詳細な説明】
【0017】
本発明は、イソマルト-オリゴサッカライドの鎖長を長くする方法であって、スクロースと、炭水化物シロップ中に存在するイソマルト-オリゴサッカライドとの間での酵素作用による転移反応を含むことを特徴とする、上記方法に関する。本明細書で使用する“イソマルト-オリゴサッカライド”という用語は、三つまたはそれ以上のモノサッカライド単位を含むイソマルト-オリゴサッカライドを指す。イソマルト-オリゴサッカライドを直接転移反応に付すことによって、長められた鎖長を有するイソマルト-オリゴサッカライドが即座に生ずる。
・・・
【0019】
更に本発明は、次の段階、すなわち
a)一種または二種以上のイソマルト-オリゴサッカライド生成酵素を使用して、マルト-オリゴサッカライドシロップを、イソマルトオリゴサッカライド含有炭水化物シロップに転化する段階、
b)前記炭水化物シロップにスクロースを加える段階、
c)グルカンスクラーゼを加える段階、
d)前記炭水化物シロップ中のイソマルト-オリゴサッカライドを、長められた鎖長を有するイソマルト-オリゴサッカライドに転化することによって、シロップ状混合物を製造する段階、
を含む方法にも関する。
・・・
【0021】
本発明は、特に、イソマルト-オリゴサッカライド生成酵素がトランスグルコシダーゼである方法に関する。この場合、段階a)は、EP 0 875 585に記載の酵素作用反応と同等である。
【0022】
本方法は、第一段階において、マルト-オリゴサッカライドシロップ(すなわち、マルトース及び/またはマルトトリオースを含むシロップ)に作用するトランスグルコシダーゼを用いてイソマルト-オリゴサッカライドを製造することからなる。トランスグルコシダーゼの存在下にマルトースシロップからイソマルト-オリゴサッカライドを合成する間、かなりの量のグルコース(全炭水化物重量に基づいて15?40%)が生成する。イソマルト-オリゴサッカライドの所望の組成が得られた時に、スクロース及びデキストランスクラーゼを前記炭水化物シロップに加えて長鎖のイソマルト-オリゴサッカライド分子を生成する(炭水化物シロップ中のイソマルト-オリゴサッカライドから出発する)。
【0023】
スクロースはトランスグルコシダーゼの基質ではないため、デキストランスクラーゼのみがスクロースを利用してイソマルト-オリゴサッカライドを長鎖化する。
【0024】
イソマルト-オリゴサッカライドを精製しそして転移反応の間に生じた多量のグルコースを除去するために、本方法の段階a)とb)の間にクロマトグラフィーを行うことができる。
【0025】
本発明は、更に、長められた鎖長を有するイソマルト-オリゴサッカライドを含むシロップ状混合物をクロマトグラフィーにより精製することを含む方法に関する。」
「【0031】
更に本発明は、上記の方法で得ることができる、長められた鎖長を有するイソマルト-オリゴサッカライドを含むシロップに関する。
【0032】
加えて、本発明は、長められた鎖長を有するイソマルト-オリゴサッカライドを含む前記シロップを、食品、飲料、飼料、化粧料または医薬品に使用する方法にも関する。
【0033】
前記シロップは、遅消化性もしくは非消化性オリゴサッカライド、低カロリー付与剤、プレバイオティック、ミネラル吸収促進剤、非齲蝕性剤(non-cariogenic agent)、及び/または低グリセミック指数調節性シロップとして使用することができる。
【0034】
長められた鎖長を有するイソマルト-オリゴサッカライドを含む前記特定のシロップは、マルトースと比べて、小腸を通過する際のグルコースの放出が遅く、それ故、グルコースの体内への吸収がより遅い炭水化物材料として定義される。
【0035】
上記特定のシロップの使用は多様である。すなわち、これらは、血漿のグルコースレベルをそれほど高めることなく糖尿病患者に十分な炭水化物を供給するために使用することができる。また、上記特定のシロップを、低下した耐グルコース能の問題を抱える高齢者の飲食物に加えることも有益な効果を達し得る。
【0036】
スポーツ時の栄養補給の分野では、上記特定のシロップは興味深い用途を有し得る。上記シロップは、運動の最中にアスリートに確かでかつ一定した炭水化物を供給することができる。前記シロップは、それゆえに、スポーツ飲料もしくはエネルギー飲料の成分として有利に使用することができる。
・・・
【0038】
食品または飲料組成物中に前記シロップが存在することは、上述の通り、グルコースの放出を遅め、それゆえ、グルコースの体内への吸収を遅くする。これは、低いグリセミック指数と相互関係にある。」
「【実施例】
【0041】
例1
シロップ(IMO,組成:20.4% DP1, 26.0% DP2, 31.2% DP3, 11.7% DP4, 3.9% DP5, 1.6% DP6, 0.8% DP7, 0.5% DP8, 0.3% DP9, 0.2% DP10, 3.4% DP > 10; EP 0 875 585の方法によって得ることができるもの)を33%w/wに濃縮し、そして33%w/wのスクロース溶液を、80/20?50/50(v/v)の様々な比率で加えた。各々の溶液のpHを0.1NのHClを用いて5.2に調節した。全ての溶液を、20分で30℃に加温し、そして3.7U/mlの活性度を有するデキストランスクロース溶液2mlを、これらの調製されたイソマルト-オリゴサッカライド/スクロース溶液20mlに加えた。
【0042】
前記溶液を、30℃で定温放置(インキュベート)し、そしてこの定温放置の48時間後にサンプルを採取した。これらのサンプルを、脱イオン水3mlで希釈し、そして沸騰水浴中に10分間入れた。これらの溶液を、0.45μmフィルターに通して濾過し、そしてHPLCで分析した。得られた結果は表1に示す。
【0043】
【表1】

基質は、DP2?DP3に高い濃度を示しているのに対し、48時間の反応後には、DP4?DP5の範囲(=長められた鎖長を有するイソマルト-オリゴサッカライド)に高い濃度が観察される。
例2:
前記シロップ(IMO,組成:20.4% DP1, 26.0% DP2, 31.2% DP3, 11.7% DP4, 3.9% DP5, 1.6% DP6, 0.8% DP7, 0.5% DP8, 0.3% DP9, 0.2% DP10, 3.4% DP > 10;EP 0 875 585の方法によって得ることができるもの)を33%w/wに濃縮し、そして33%w/wのスクロース溶液を、80/20?50/50(v/v)の様々な比率で加えた。これらの溶液のpHを0.1NのHClを用いて5.2に調節した。全ての溶液を20分間で30℃に加温し、そして6.6U/mlの活性度を有するアルタナンスクラーゼ溶液(ロイコノストックメセンテロイデスNRRL B-1355)2mlを加えた。
【0044】
この溶液を30℃で定温放置し、そして48時間の定温放置の後にサンプルを採取した。これらのサンプルを、脱イオン水3mlで希釈し、そして沸騰水浴中に10分間入れた。これらの溶液を0.45μmフィルターで濾過し、そしてHPLCで分析した。得られた結果を表2に示す。
【0045】
【表2】

基質が、DP2?DP3に高い濃度を示すのに対し、48時間の反応後には、DP4?DP6の範囲(=長められた鎖長を有するイソマルト-オリゴサッカライド)に高い濃度が観察される。
例2で調製したシロップのインビトロでの消化
上記IMOシロップ(組成:20.4% DP1, 26.0% DP2, 31.2% DP3, 11.7% DP4, 3.9% DP5, 1.6% DP6, 0.8% DP7, 0.5% DP8, 0.3% DP9, 0.2% DP10, 3.4% DP > 10;EP 0 875 585の方法に従い得ることができるもの)及び50/50IMOスクロース(v/v)溶液にデキストランスクラーゼを作用させることによって例2で得られたシロップを、37℃及びpH6で2時間、豚腸アセトンパウダーと一緒に定温放置した。
【0046】
マルトースを参照品として使用した。結果を表3に示す。
【0047】
【表3】

上記の結果は、明らかに、本発明によって得ることができるシロップの遅消化性を実証している。」

イ 甲1発明
上記記載事項から、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「重合度4?6の長められた鎖長を有するイソマルト-オリゴサッカライドを含むシロップ」

(2)甲第2号証(Starch、1979年、Vol.31、Nr.11、S.381-384)
ア 甲第2号証(以下「甲2」という。)には、次の事項が記載されている。
「Rapid Determination of Dextrose Equivalent by Cryoscopy」(381頁)
訳:凝固点降下によるデキストロースエクイバレントの迅速な決定

「This paper describes the development of a novel method for determination of Dextrose Equivalent of Malto-dextrins and glucose syrups.」(381頁)
訳:この論文はマルトデキストリンとグルコースシロップのデキストロースエクイバレントを決定する新しい方法の進展状況について述べるものである。



」(382頁)





」(383頁)
訳:図3.10、15、20%溶質濃度での浸透圧とDEの関係

(3)甲第3号証(Dairy Foods、2006年6月、40頁及び42頁)
ア 甲第3号証(以下「甲3」という。)には、次の事項が記載されている。
「Lowering Glycemic Index」
訳:グリセミック指数の低減

「A low-GI diet is thought to be a more moderate approach to weight loss because it has been shown to help control appetite and delay hunger using smarter carbohydrates.」
訳:GIが低い食品は、体重減少へのより穏やかなアプローチであると考えられている。何故なら、より高機能の炭水化物を用いて、食欲をコントロールすることを助け、空腹を遅らせることが示されたからである。

3 当審の判断
(1)特許法29条1項3号について
ア 本件発明6について
(ア)対比
a 本件発明6の「分岐デキストリン」について本件特許明細書を参照すると、「【0015】この明細書において、「分岐デキストリン」とは、通常の澱粉を公知の方法で加水分解して得られる、いわゆる通常のデキストリンと比べて、α-1,6グルコシド結合からなる分岐構造の割合が高いデキストリンを指す。」と記載されている。
これに対し、甲1発明は、「【0019】・・・d)前記炭水化物シロップ中のイソマルト-オリゴサッカライドを、長められた鎖長を有するイソマルト-オリゴサッカライドに転化することによって、シロップ状混合物を製造」(上記2(1)ア)したものであり、イソマルト-オリゴサッカライドはα-1,6グルコシド結合で連なったオリゴサッカライドであり(乙5)、上記転化により長められた鎖長を有するイソマルト-オリゴサッカライドがα-1,6グルコシド結合からなる分岐構造を有するデキストリンであることは明らかである。しかし、甲1発明が、通常のデキストリンと比べて、α-1,6グルコシド結合からなる分岐構造の割合が他の結合構造との関係において高いものであるか否かについては不明である。
そうすると、甲1発明の「重合度4?6の長められた鎖長を有するイソマルト-オリゴサッカライド」は、「デキストリン」という限りにおいて、本件発明6の「デキストリンの非還元末端にグルコース又はイソマルトオリゴ糖がα-1,6グルコシド結合で結合した構造を8質量%以上有し、かつ分子内に1,4-及び1,6-グルコシド結合を有するグルコースを有し、DEが20?28.3であり、10質量%水溶液の浸透圧が140mOSMOL/kg以上であることを特徴とする分岐デキストリン」に相当する。
b 甲1発明の「重合度4?6の長められた鎖長を有するイソマルト-オリゴサッカライドを含むシロップ」は、遅消化性もしくは非消化性オリゴサッカライド並びに低グリセミック指数調節性シロップとして使用することができるものであるから(甲1の【0033】ないし【0038】及び【0047】(上記2(1)ア))、本件発明6の「エネルギー持続剤又は腹持ち剤用」の「デキストリン組成物」に相当する。
c したがって、本件発明6と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「エネルギー持続剤又は腹持ち剤用のデキストリン組成物」
(相違点)
d 相違点1
デキストリンについて、本件発明6が「デキストリンの非還元末端にグルコース又はイソマルトオリゴ糖がα-1,6グルコシド結合で結合した構造を8質量%以上有し、かつ分子内に1,4-及び1,6-グルコシド結合を有するグルコースを有」する「分岐デキストリン」であるのに対し、甲1発明が「重合度4?6の長められた鎖長を有するイソマルト-オリゴサッカライド」であり、結合構造並びに各結合構造の割合が不明である点。
e 相違点2
デキストリンについて、本件発明6が、「DEが20?28.3であり、10質量%水溶液の浸透圧が140mOSMOL/kg以上である」「分岐デキストリン」であるのに対し、甲1発明が「重合度4?6の長められた鎖長を有するイソマルト-オリゴサッカライド」であり、特にDE並びに10質量%水溶液の浸透圧がそれぞれ不明である点。

(イ)判断
事案に鑑み、最初に相違点2について検討する。
甲2の表4には、マルトデキストリンの重合度4ないし6に対応するDEが記載され、図3にはDEと浸透圧との関係について記載されている。
しかし、甲2の表4は、甲1発明のイソマルト-オリゴサッカライドの糖組成におけるDEを示すものではない。
また、甲2は、甲1発明のα-1,6グルコシド結合に係るイソマルト-オリゴサッカライドとは異なるα-1,4グルコシド結合に係るマルトデキストリンについてのDE及び浸透圧を示すものであるから、甲2から理解できるDE及び浸透圧を、結合構造の異なる甲1発明の「DE」及び「10質量%水溶液の浸透圧」の値とすることはできない。
したがって、相違点2は実質的な相違点である。

(ウ)まとめ
よって、相違点1を検討するまでもなく、本件発明6は甲1に記載された発明とはいえない。

イ 本件発明7
本件発明7は本件発明6を引用するものであり、本件発明6の発明特定事項の全てを含むものであるから、上記アで述べたことと同様に本件発明7は甲1に記載された発明とはいえない。

(2)特許法29条2項について
ア 本件発明6
(ア)対比
一致点並びに相違点1及び相違点2については、上記(1)ア(ア)のとおりである。

(イ)判断
事案に鑑み、最初に相違点2について検討する。
上記(1)ア(イ)で述べたとおり、甲2の表4は、甲1発明のイソマルト-オリゴサッカライドの糖組成におけるDEを示すものではない。
また、甲2は、甲1発明のα-1,6グルコシド結合に係るイソマルト-オリゴサッカライドとは異なるα-1,4グルコシド結合に係るマルトデキストリンについてのDE及び浸透圧を示すものであるから、甲2から理解できるDE及び浸透圧を、結合構造の異なる甲1発明の「DE」及び「10質量%水溶液の浸透圧」の値とすることはできない。
特に、甲1発明の「DE」及び「10質量%水溶液の浸透圧」が甲1に記載された実施例等に基づきある程度の予測ないし導出できる値であるとすると、その場合には、結合構造の異なるマルトデキストリンに係る甲2の値を単に適用することの阻害要因があるし、仮に参考値として検討するとしても結合構造の異なるマルトデキストリンに係る甲2の値が甲1発明の糖組成を含めどのような関係になるかについては不明であり、直ちに採用して検討できるものではない。
また、甲3のグリセミック指数に係る記載事項を参照してもDE並びに10質量%水溶液の浸透圧は容易に想到できない。
以上から、相違点2に係る本件発明6の構成を当業者が容易に想到することはできない。

(ウ)まとめ
よって、相違点1を検討するまでもなく、本件発明6は、甲1発明並びに甲2及び甲3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明7
本件発明7は本件発明6を引用するものであり、本件発明6の発明特定事項の全てを含むものであるから、上記アで述べたことと同様に本件発明7は甲1発明並びに甲2及び甲3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項6及び7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項6及び7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デキストリンの非還元末端にグルコース又はイソマルトオリゴ糖がα-1,6グルコシド結合で結合した構造を8質量%以上有し、且つDEが20?28.3であり、10質量%水溶液の浸透圧が140mOSMOL/kg以上であることを特徴とするエネルギー持続剤又は腹持ち剤用の分岐デキストリンの製造方法であって、
原料デキストリンの水溶液にα-マルトース生成アミラーゼ及びトランスグルコシダーゼを、酵素単位比を2:1?30:1に調整して、作用させることにより前記分岐デキストリンを製造することを特徴とする、前記製造方法。
【請求項2】
分岐デキストリンが、1,4-及び1,6-グルコシド結合を有するグルコースを5?13質量%の範囲で有する、請求項1記載のエネルギー持続剤又は腹持ち剤用の分岐デキストリンの製造方法。
【請求項3】
原料デキストリンのDEが2?20である、請求項1または2に記載のエネルギー持続剤又は腹持ち剤用の分岐デキストリンの製造方法。
【請求項4】
原料デキストリンの濃度が20?50質量%である、請求項1?3のいずれか一項に記載のエネルギー持続剤又は腹持ち剤用の分岐デキストリンの製造方法。
【請求項5】
原料デキストリンが澱粉の酸加水分解物である、請求項1?4のいずれか1項に記載のエネルギー持続剤又は腹持ち剤用の分岐デキストリンの製造方法。
【請求項6】
デキストリンの非還元末端にグルコース又はイソマルトオリゴ糖がα-1,6グルコシド結合で結合した構造を8質量%以上有し、かつ分子内に1,4-及び1,6-グルコシド結合を有するグルコースを有し、DEが20?28.3であり、10質量%水溶液の浸透圧が140mOSMOL/kg以上であることを特徴とする分岐デキストリンを含む、エネルギー持続剤又は腹持ち剤用の分岐デキストリン組成物。
【請求項7】
1,4-及び1,6-グルコシド結合を有するグルコースを5?13質量%の範囲で有する、請求項6記載のエネルギー持続剤又は腹持ち剤用の分岐デキストリン組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-11-21 
出願番号 特願2015-46016(P2015-46016)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (A23L)
P 1 652・ 113- YAA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 上條 肇植原 克典  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 窪田 治彦
藤原 直欣
登録日 2017-10-06 
登録番号 特許第6217673号(P6217673)
権利者 松谷化学工業株式会社
発明の名称 分岐デキストリン、その製造方法及び飲食品  
代理人 山崎 一夫  
代理人 弟子丸 健  
代理人 弟子丸 健  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 浅井 賢治  
代理人 浅井 賢治  
代理人 山崎 一夫  
代理人 箱田 篤  
代理人 服部 博信  
代理人 箱田 篤  
代理人 市川 さつき  
代理人 服部 博信  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 市川 さつき  
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