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審決分類 審判 一部申し立て 発明同一  C08F
審判 一部申し立て 2項進歩性  C08F
管理番号 1347662
異議申立番号 異議2018-700210  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-03-08 
確定日 2018-11-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6194964号発明「ポリテトラフルオロエチレン及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6194964号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔6,7〕について訂正することを認める。 特許第6194964号の請求項6及び7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6194964号(請求項の数7。以下,「本件特許」という。)は,平成22年3月30日(優先権主張:平成21年3月30日)を国際出願日とする特許出願(特願2011-507216号)の一部を,平成26年10月1日に新たな出願とした特許出願(特願2014-202908号)の一部を,さらに平成28年2月1日に新たな出願とした特許出願(特願2016-17339号)に係るものであって(分割の適否及び優先権の主張については,後記第5の1(1)アで述べる。),平成29年8月25日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は,同年9月13日である。)。
その後,平成30年3月8日に,本件特許の請求項6及び7に係る特許に対して,特許異議申立人である島村琢哉(以下,「申立人」という。)により,特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は,以下のとおりである。

平成30年 3月 8日 特許異議申立書
6月21日 取消理由通知書
8月24日 意見書,訂正請求書
9月25日 通知書(訂正請求があった旨の通知)
10月25日 意見書(申立人)

第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
平成30年8月24日付けの訂正請求書による訂正(以下,「本件訂正」という。)の請求は,本件特許の特許請求の範囲を上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項6,7について訂正することを求めるものであり,その内容は,以下のとおりである。下線は,訂正箇所を示す。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項6に
「非溶融二次加工性を有し,標準比重が2.160以下であり,平均一次粒子径が150nm以上であり,応力緩和時間が500秒以上であり,29.7N以上の破断強度を有し,一般式:
CF_(3)OCF(CF_(3))CF_(2)OCF(CF_(3))COOX
(式中,Xは水素原子,NH_(4)又はアルカリ金属原子を表す。),及び,一般式:
CF_(3)CF_(2)OCF_(2)CF_(2)OCF_(2)COOX
(式中,Xは水素原子,NH_(4)又はアルカリ金属原子を表す。),
からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素界面活性剤を含む
ことを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末。」
と記載されているのを,
「非溶融二次加工性を有し,標準比重が2.160以下であり,平均一次粒子径が150nm以上であり,応力緩和時間が500秒以上であり,29.7N以上の破断強度を有し,一般式:
CF_(3)OCF(CF_(3))CF_(2)OCF(CF_(3))COOX
(式中,Xは水素原子,NH_(4)又はアルカリ金属原子を表す。),及び,一般式:
CF_(3)CF_(2)OCF_(2)CF_(2)OCF_(2)COOX
(式中,Xは水素原子,NH_(4)又はアルカリ金属原子を表す。),
からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素界面活性剤を含む
ことを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末(ただし,パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)由来の構造単位を有し,標準比重が2.141,平均一次粒子径が240nm,応力緩和時間が594秒,破断強度が29.8Nの粉末を除く)。」
に訂正する。

2 訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正は,訂正前の請求項6におけるポリテトラフルオロエチレン粉末から,特定の粉末を除くものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また,この訂正は,本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものといえるから,同明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(2)一群の請求項について
訂正前の請求項6及び7について,請求項7は,請求項6を直接的に引用するものであり,上記の訂正事項1によって記載が訂正される請求項6に連動して訂正されるものである。したがって,訂正前の請求項6及び7に対応する訂正後の請求項6及び7は,一群の請求項である。そして,本件訂正は,その一群の請求項ごとに請求がされたものである。

3 まとめ
上記2のとおり,訂正事項1に係る訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものに該当し,同条4項に適合するとともに,同条9項において準用する同法126条5項及び6項に適合するものであるから,結論のとおり,本件訂正を認める。

第3 本件発明
前記第2で述べたとおり,本件訂正は認められるので,本件特許の請求項6及び7に係る発明は,本件訂正後の特許請求の範囲の請求項6及び7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下,それぞれ「本件発明6」等という。本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。

【請求項6】
非溶融二次加工性を有し,標準比重が2.160以下であり,平均一次粒子径が150nm以上であり,応力緩和時間が500秒以上であり,29.7N以上の破断強度を有し,一般式:
CF_(3)OCF(CF_(3))CF_(2)OCF(CF_(3))COOX
(式中,Xは水素原子,NH_(4)又はアルカリ金属原子を表す。),及び,一般式:
CF_(3)CF_(2)OCF_(2)CF_(2)OCF_(2)COOX
(式中,Xは水素原子,NH_(4)又はアルカリ金属原子を表す。),
からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素界面活性剤を含む
ことを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末(ただし,パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)由来の構造単位を有し,標準比重が2.141,平均一次粒子径が240nm,応力緩和時間が594秒,破断強度が29.8Nの粉末を除く)。」
【請求項7】
更に、レドックス開始剤を含む請求項6記載のポリテトラフルオロエチレン粉末。

第4 取消理由の概要
1 特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由
本件発明6及び7(本件訂正前の請求項6及び7に係る発明に対応する。)は,下記(1)及び(2)のとおりの取消理由があるから,本件特許の請求項6及び7に係る特許は,特許法113条2号に該当し,取り消されるべきものである。証拠方法として,下記(3)の甲第1号証及び甲第2号証(以下,単に「甲1」等という。)を提出する。

(1)取消理由1(拡大先願)
本件発明6及び7は,本件特許の出願の日前の特許出願であって,本件特許の出願後に特許法41条3項(同法184条の15第2項参照)の規定により出願公開がされたものとみなされた,甲1に係る日本語特許出願の優先権の主張の基礎とされた特願2009-255949号の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲に記載された発明と同一であり,しかも,本件特許の出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく,また本件特許の出願の時において,その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので,同法29条の2の規定により,特許を受けることができないものである。
(2)取消理由2(進歩性)
本件発明6及び7は,甲2に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
(3)証拠方法
・甲1 国際公開第2011/055824号
・甲2 国際公開第2007/046345号

2 取消理由通知書に記載した取消理由
(1)上記1の取消理由1(拡大先願)と同旨。
(2)本件発明6及び7は,甲2に記載された発明並びに参考文献1及び2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである(取消理由3(進歩性))。
・参考文献1 特開2002-201217号公報
・参考文献2 国際公開第2005/061567号

第5 当審の判断
以下に述べるように,取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項6及び7に係る特許を取り消すことはできない。

1 取消理由通知書に記載した取消理由
(1)取消理由1(拡大先願)
ア 特許法29条の2の判断基準日
(ア)分割の適否について
本件特許は,上記第1のとおり,特願2011-507216号(以下,「親出願」という。)の一部を新たな出願とした特願2014-202908号(以下,「子出願」という。)の一部をさらに新たな出願とした特願2016-17339号(以下,「孫出願」ともいう。)に係るものと理解されるので,以下,分割の適否について検討する。
a 親出願からの子出願の分割の適否
子出願は,親出願の出願人が当該親出願を分割したものである。分割は,平成26年10月1日になされているが,親出願の明細書又は特許請求の範囲(以下,「明細書等」という。)について補正をすることができる時(同日付けでなされた拒絶査定不服審判の請求と同時)になされたものである。
親出願の分割直前の明細書等に記載された発明の全部が,子出願の請求項に係る発明とされたものではない。また,子出願の明細書等に記載された事項は,親出願の願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものであり,かつ,親出願の分割直前の明細書等に記載した事項の範囲内のものである。したがって,子出願は,親出願の一部を新たな特許出願としたものといえる。
以上のとおり,親出願からの子出願の分割は,特許法44条1項の規定(形式的要件及び実体的要件)を満たすものである。
b 子出願からの孫出願の分割の適否
孫出願は,子出願の出願人が当該子出願を分割したものである。分割は,平成28年2月1日になされているが,子出願の明細書等について補正をすることができる期間内(平成27年11月26日付けの拒絶理由通知の指定期間内(発送日である同年12月1日から60日以内))になされたものである。
子出願の分割直前の明細書等に記載された発明の全部が,孫出願の請求項に係る発明とされたものではない。また,孫出願の明細書等に記載された事項は,子出願の願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものであり,かつ,子出願の分割直前の明細書等に記載した事項の範囲内のものである。したがって,孫出願は,子出願の一部を新たな特許出願としたものといえる。
以上のとおり,子出願からの孫出願の分割は,特許法44条1項の規定(形式的要件及び実体的要件)を満たすものである。
c 親出願と孫出願との関係
親出願から子出願を分割する直前の親出願の明細書等に記載された発明の全部が,孫出願の請求項に係る発明とされたものではない。また,孫出願の明細書等に記載された事項は,親出願の願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものであり,かつ,親出願から子出願を分割する直前の親出願の明細書等に記載した事項の範囲内のものである。したがって,孫出願は,実質的に親出願の一部を新たな特許出願としたものといえる。
以上のとおり,親出願と孫出願とは,特許法44条1項の規定のうち,実体的要件を満たすものである。
d 小括
以上のとおり,孫出願である本件特許の出願は,適法な分割がなされたものであるから,親出願の時にしたものとみなす(特許法44条2項)。したがって,本件特許の出願日は,平成22年3月30日である。

(イ)優先権の主張について
a 上記(ア)のとおり,本件特許の出願は,適法な分割がなされたものであるところ,親出願は,その出願人が特許を受ける権利を有する特許出願である,平成21年3月30日を出願日とする特願2009-82329号に基づく優先権(国内優先権)の主張を伴うものである(当該優先権の主張については,特許法41条1項の各号に掲げるいずれの場合にも該当しない。)から,本件特許の出願についても,同優先権の主張を伴うものである(同法44条4項)。
b(a)上記の優先権の主張の基礎とされた特願2009-82329号(以下,「優先基礎出願」という。)の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下,「当初明細書等」という。)には,以下の記載がある。

【請求項1】
下記一般式(I)?(III)で表される1種又は2種以上のフルオロエーテルカルボン酸の存在下に,レドックス開始剤を添加してテトラフルオロエチレンを重合する工程を含むことを特徴とするポリテトラフルオロエチレンの製造方法。
一般式(I):
CF_(3)-(CF_(2))_(m)-O-(CF(CF_(3))CF_(2)O)_(n)-CF(CF_(3))COOX (I)
(式中,mは0?4の整数,nは0?2の整数,Xは水素原子,アンモニウム基又はアルカリ金属原子を表す。)
一般式(II):
CF_(3)-(CF_(2))_(m)-O-(CF(CF_(3))CF_(2)O)_(n)-CHFCF_(2)COOX (II)
(式中,mは0?4の整数,nは0?2の整数,Xは水素原子,アンモニウム基又はアルカリ金属原子を表す。)
一般式(III):
CF_(3)-(CF_(2))_(m)-O-(CF(CF_(3))CF_(2)O)_(n)-CH_(2)CF_(2)COOX (III)
(式中,mは0?4の整数,nは0?2の整数,Xは水素原子,アンモニウム基又はアルカリ金属原子を表す。)

【0046】
本発明の製造方法によれば,ポリテトラフルオロエチレンのSSGを2.160以下とすることができる。SSGが2.160以下のポリテトラフルオロエチレンは押出成形物の延伸倍率が3000%を超え,延伸成形に適する。上記SSGは,溶融成形加工性を有しないポリテトラフルオロエチレンの分子量の指標としてASTM D4895-89に規定されるSSGである。
【0047】
本発明の製造方法によれば,ポリテトラフルオロエチレンの一次粒子径を0.180μm以上とすることができる。ポリテトラフルオロエチレンの平均一次粒子径が大きいほど,その粉末を用いてペースト押出成形をする際に,ペースト押出圧力の上昇を抑えられ,造膜製にも優れる。

【0050】
本発明の製造方法により得られるポリテトラフルオロエチレンから多孔体を製造した場合,多孔体の破断強度を29N以上とすることができる。また,多孔体の応力緩和時間を600秒以上とすることができ,より好ましくは650秒以上とすることができる。

【0061】
実施例1
6Lの重合槽に,超純水3600g,パラフィンワックス180g及び界面活性剤(CF_(3)-O-CF(CF_(3))CF_(2)O-CF(CF_(3))COONH_(4))5.4g,コハク酸0.108g,シュウ酸0.0252gを仕込み,窒素パージによる脱気を行い,70℃まで昇温した。重合槽内の温度が安定したのち,テトラフルオロエチレンガスを導入し,2.7MPaの圧力とした。
【0062】
内容物を攪拌しながら,過マンガン酸カリウム3.5mgを溶解した超純水を一定速度で連続的に添加し,重合槽内の圧力が2.7MPaに一定になるよう,TFEを連続的に供給した。TFE消費量が900gの時点で,上記過マンガン酸カリウム3.5mgを溶解した超純水全量を添加した。TFE消費量が1500gの時点で,攪拌及びTFE供給を停止して,重合槽内のTFEをパージして,ついで気相を窒素で置換して,ポリテトラフルオロエチレン水性分散体(固形分29.5質量%)を得た。
【0063】
得られたポリテトラフルオロエチレン水性分散体を固形分濃度15質量%まで希釈し,攪拌機付き容器内で硝酸の存在下において激しく攪拌しポリテトラフルオロエチレンを凝固させた。凝固したポリテトラフルオロエチレンを分離し,210℃において18時間乾燥し,ポリテトラフルオロエチレンの微粉末を得た。得られた微粉末の各種物性を測定した。結果を表1に示す。

【表1】


(b)以上の記載によれば,優先基礎出願の当初明細書等には,ポリテトラフルオロエチレン粉末について,以下の事項が記載されているといえる。
・溶融成形加工性を有しないこと。
・標準比重(SSG)が2.160以下であること。
・平均一次粒子径が0.180μm(180nm)以上であること。
・応力緩和時間が600秒以上であること。
・破断強度が29.7N以上であること。
・一般式(I)?(III)(当審注:式は省略。以下,同様。)で表される1種又は2種以上のフルオロエーテルカルボン酸の存在下に,レドックス開始剤を添加してテトラフルオロエチレンを重合する工程を含む製造方法により製造されること(その結果,得られるテトラフルオロエチレンには,上記の特定のフルオロエーテルカルボン酸及びレドックス開始剤が含まれると解される。)。
・実施例1においては,フルオロエーテルカルボン酸として,一般式(I)に包含される,CF_(3)-O-CF(CF_(3))CF_(2)O-CF(CF_(3))COONH_(4)を用いたこと。

c これに対して,本件発明6及び7においては,平均一次粒子径が「150nm以上」であり,応力緩和時間が「500秒以上」であることが特定されるとともに,含フッ素界面活性剤として,上記の一般式(I)?(III)のいずれにも包含されない,「CF_(3)CF_(2)OCF_(2)CF_(2)OCF_(2)COOX(式中,Xは水素原子,NH_(4)又はアルカリ金属原子を表す。)」を含むことが特定されているが,これらの事項については,優先基礎出願の当初明細書等には何ら記載されていない。
そうすると,本件発明6及び7においてこれらの事項を特定することは,優先基礎出願の当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものといえる。すなわち,本件発明6及び7は,優先基礎出願の当初明細書等に記載された発明とはいえないから,同発明については,優先基礎出願に基づく優先権(国内優先権)の主張の効果(特許法41条2項)は認められない。

(ウ)まとめ
以上のとおりであるから,本件発明6及び7については,特許法29条の2の判断基準日は,本件特許の出願日である平成22年3月30日である。

イ 甲1に係る日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書又は請求の範囲(以下,「甲1当初明細書等」という。)に記載された発明
甲1当初明細書等の記載(請求項1,2,5,7,8,[0011],[0013],[0035],[0040],[0047],[0062],[0063],実施例1,4,7,表1,2)によれば,特に実施例7に着目すると,甲1当初明細書等には,以下の発明が記載されていると認められる。

「PTFE微粒子の平均一次粒子径が0.24μmであるPTFE水性乳化液を用いて製造したPTFEファインパウダーであって,SSGが2.141であり,応力緩和時間が594秒であり,破断強度が29.8Nである,PTFEファインパウダー。」(以下,「先願発明」という。)

ウ 特許法29条の2本文の適用について
甲1に係る日本語特許出願は,平成22年11月8日を国際出願日とするものであるところ,その出願人が特許を受ける権利を有する特許出願である,平成21年11月9日を出願日とする特願2009-255949号に基づく優先権(国内優先権)の主張を伴うものである(当該優先権の主張については,特許法41条1項の各号に掲げるいずれの場合にも該当しない。)。
上記の優先権の主張の基礎とされた特願2009-255949号(以下,「甲1優先基礎出願」という。)の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下,「当初明細書等」という。)には,上記イで指摘した甲1当初明細書等の記載と実質的に同じ記載があるから(請求項1,2,5?8,【0011】,【0013】,【0035】,【0040】,【0047】,【0062】,【0063】,実施例1,4,7,表1,2),甲1優先基礎出願の当初明細書等にも,上記イで認定した先願発明が記載されていると認められる。
そうすると,その先願発明については,甲1に係る日本語特許出願について平成23年5月12日に国際公開がされた時に,甲1優先基礎出願について出願公開がされたものとみなして,特許法29の2本文の規定が適用される(同法41条3項(同法184条の15第2項参照))。
以上まとめると,平成21年11月9日を出願日とする特願2009-255949号(甲1優先基礎出願)は,本件特許の出願の日(平成22年3月30日)前の特許出願であって,本件特許の出願後の平成23年5月12日に出願公開がされたものとみなされたものであり,その当初明細書等には,先願発明が記載されているといえる。
以下,本件発明6及び7が先願発明と同一であるか否かについて,検討する。
なお,本件特許の出願の発明者は,甲1優先基礎出願に係る先願発明をした者と同一ではなく,また本件特許の出願の時において,その出願人が甲1優先基礎出願の出願人と同一でもない。

エ 本件発明6について
(ア)対比
本件発明6と先願発明とを対比する。
先願発明における「PTFEファインパウダー」は,本件発明6における「ポリテトラフルオロエチレン粉末」に相当する。
先願発明における「SSGが2.141」,「応力緩和時間が594秒」,「破断強度が29.8N」は,それぞれ,本件発明6における「標準比重が2.160以下」,「応力緩和時間が500秒以上」,「29.7N以上の破断強度」に相当する。
先願発明に係るPTFEファインパウダーは,「PTFE微粒子の平均一次粒子径が0.24μmであるPTFE水性乳化液」を用いて製造したものであるが,製造されたPTFEファインパウダーにおいても,PTFE微粒子の平均一次粒子径は「0.24μm」(240nm)と認められるから,本件発明6における「平均一次粒子径が150nm以上」に相当する。
そうすると,本件発明6と先願発明とは,
「標準比重が2.160以下であり,平均一次粒子径が150nm以上であり,応力緩和時間が500秒以上であり,29.7N以上の破断強度を有する,ポリテトラフルオロエチレン粉末。」
の点で一致し,以下の点で一応相違する。
・相違点1
本件発明6では,「非溶融二次加工性を有」するのに対して,先願発明では,非溶融二次加工性を有するかどうか不明である点。
・相違点2
本件発明6では,「一般式:CF_(3)OCF(CF_(3))CF_(2)OCF(CF_(3))COOX(式中,Xは水素原子,NH_(4)又はアルカリ金属原子を表す。),及び,一般式:CF_(3)CF_(2)OCF_(2)CF_(2)OCF_(2)COOX(式中,Xは水素原子,NH_(4)又はアルカリ金属原子を表す。),からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素界面活性剤を含む」のに対して,先願発明では,このような含フッ素界面活性剤を含むかどうか不明である点。
・相違点3
本件発明6は,「(ただし,パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)由来の構造単位を有し,標準比重が2.141,平均一次粒子径が240nm,応力緩和時間が594秒,破断強度が29.8Nの粉末を除く)」ものであるのに対して,先願発明は,「PTFE微粒子の平均一次粒子径が0.24μmであるPTFE水性乳化液を用いて製造したPTFEファインパウダーであって,SSGが2.141であり,応力緩和時間が594秒であり,破断強度が29.8Nである,PTFEファインパウダー。」である点。

(イ)相違点3の検討
事案に鑑み,まず相違点3について検討する。
先願発明は,PTFEファインパウダーに関するものであるところ,上記イ,ウのとおり,甲1優先基礎出願の当初明細書等(甲1当初明細書等)における実施例7に着目して認定したものである。
その実施例7においては,TFEを乳化重合して,PTFE水性乳化液を製造する際に,TFEの乳化重合の開始時に,パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)(以下,「MMD」という。)を乳化重合系に含有させることが記載されている(請求項1?4,実施例1,3,4も参照。)。そして,得られたPTFE水性乳化液を用いてPTFEファインパウダーを製造しているが(請求項5,7,8も参照。),上記のとおり,PTFE水性乳化液の製造において,MMDを乳化重合系に含有させている以上,製造されたPTFEファインパウダーは,MMD由来の構造単位を有していると認められる。すなわち,先願発明に係るPTFEファインパウダーは,MMD由来の構造単位を有していると認められる。
そうすると,先願発明に係るPTFEファインパウダーは,SSG(標準比重)が2.141,平均一次粒子径が0.24μm(240nm),応力緩和時間が594秒,破断強度が29.8Nであって,パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)(MMD)由来の構造単位を有するものといえるから,本件発明6において除かれた粉末に相当するものと認められる。すなわち,先願発明に係るPTFEファインパウダーは,本件発明6に係るポリテトラフルオロエチレン粉末から除かれていることになる。
以上によれば,相違点3は実質的な相違点である。

(ウ)小括
したがって,相違点1及び2について検討するまでもなく,本件発明6は先願発明と同一であるとはいえない。

(エ)申立人の主張について
申立人は,甲1に記載された発明は,実施例7のみに限定されるものではなく,(1)甲1には,標準比重([0063]),平均一次粒子径([0047]),応力緩和時間([0062]),特定の含フッ素界面活性剤([0040])について記載され,実施例7以外の実施例にも具体的な値や構造が記載されているが,これらは本件発明6の構成と重複するものであり,また,(2)甲1には,実施例7以外にも本件発明6と同様に,乳化能が低い含フッ素界面活性剤を少量使用し,かつ,レドックス開始剤(水溶性酸化還元系触媒)を使用する製造方法が記載されており([0037],[0040],[0041]),本件発明6と同等の破断強度を有するPTFEファインパウダーが得られることが実質的に示されているといえる,として,本件発明6は取消理由1(拡大先願)を有すると主張する。
しかしながら,甲1において,破断強度について具体的に記載されているのは,実施例1?8及び比較例1?5で実際に得られたPTFEファインパウダーの破断強度のみであり,甲1には,PTFEファインパウダーの好ましい破断強度が具体的にどの程度であるのかについて説明する一般的な記載は,見当たらない。
また,甲1には,TFEの乳化重合に用いられるラジカル重合開始剤([0035]?[0039])や,含フッ素乳化剤([0040],[0041])について記載され,それぞれ好ましいものが例示されるとともに,使用量についても記載されているものの,そもそも,甲1の[0035]?[0041]には,申立人が主張するような,本件発明6と同様の,乳化能が低い含フッ素界面活性剤を少量使用し,かつ,レドックス開始剤(水溶性酸化還元系触媒)を使用する製造方法が記載されているとはいえないから,甲1には,実施例7以外にも,本件発明6と同等の破断強度を有するPTFEファインパウダーが得られることが実質的に示されているなどということはできない。
よって,申立人の主張は,採用することができない。

オ 本件発明7について
本件発明7は,本件発明6を直接的に引用するものであるが,上記エで述べたとおり,本件発明6は先願発明と同一であるとはいえない以上,本件発明7についても同様に,先願発明と同一であるとはいえない。

カ まとめ
以上のとおり,本件発明6及び7は,いずれも,先願発明と同一であるとはいえない。
したがって,取消理由1(拡大先願)によっては,本件特許の請求項6及び7に係る特許を取り消すことはできない。

(2)取消理由3(進歩性)
ア 甲2に記載された発明
甲2の記載(請求項1?6,[0008],[0009],[0015]?[0023],実施例3)によれば,特に実施例3に着目すると,甲2には,以下の発明が記載されていると認められる。

「PTFEの平均一次粒子径が0.275μmであるPTFE水性乳化液を凝集させて得られたPTFEファインパウダーであって,標準比重が2.151であり,応力緩和時間が564秒であり,破断強度が29.4Nである,PTFEファインパウダー。」(以下,「甲2発明」という。)

イ 本件発明6について
(ア)対比
本件発明6と甲2発明とを対比すると,上記(1)エ(ア)で本件発明6と先願発明とを対比したのと同様に,両者は,
「標準比重が2.160以下であり,平均一次粒子径が150nm以上であり,応力緩和時間が500秒以上である,ポリテトラフルオロエチレン粉末。」
の点で一致し,以下の点で相違する。
・相違点1’
本件発明6では,「非溶融二次加工性を有」するのに対して,甲2発明では,非溶融二次加工性を有するかどうか不明である点。
・相違点2’
本件発明6では,「一般式:CF_(3)OCF(CF_(3))CF_(2)OCF(CF_(3))COOX(式中,Xは水素原子,NH_(4)又はアルカリ金属原子を表す。),及び,一般式:CF_(3)CF_(2)OCF_(2)CF_(2)OCF_(2)COOX(式中,Xは水素原子,NH_(4)又はアルカリ金属原子を表す。),からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素界面活性剤を含む」のに対して,甲2発明では,このような含フッ素界面活性剤を含むかどうか不明である点。
・相違点4
本件発明6では,「29.7N以上の破断強度を有」するのに対して,甲2発明では,「破断強度が29.4N」である点。

(イ)相違点4の検討
事案に鑑み,まず相違点4について検討する。
a 甲2発明は,PTFEファインパウダーに関するものであるところ,上記アのとおり,甲2における実施例3に着目して認定したものである。
その実施例3においては,TFEを乳化重合して,PTFE水性乳化液を得る際に,含フッ素乳化剤(本件発明6における「含フッ素界面活性剤」に相当する。)として,EEA(CF_(3)CF_(2)OCF_(2)CF_(2)OCF_(2)COONH_(4))(本件発明6における「CF_(3)CF_(2)OCF_(2)CF_(2)OCF_(2)COOX(式中,Xは水素原子,NH_(4)又はアルカリ金属原子を表す。)」に相当する。)を用いることが記載されている(請求項1?4,[0016]も参照。)。
この点,甲2には,含フッ素モノマーの乳化重合には,含フッ素乳化剤として,パーフルオロオクタン酸アンモニウム(APFO)が一般的に用いられているが,APFOは生物蓄積性が高く,環境面からその排出を抑えることが提案されていることが記載されている([0003])。そして,甲2における「本発明の目的は,APFOを実質的に含有せず,・・・PTFE水性乳化液を提供することである。」([0008]),「本発明のPTFE水性乳化液は,パーフルオロオクタン酸或いはその塩に伴う環境問題を生じない。」([0012])との記載を踏まえると,甲2における実施例3(すなわち,甲2発明に係るPTFEファインパウダーの製造)で用いられるEEAは,環境面からは好ましくないAPFOを代替する含フッ素乳化剤として用いられるものと解される。
また,甲2には,EEAは,LogPOW(1-オクタノール/水分配係数)の値が3.13であり,APFOの3.67に比較して小さく,生物への蓄積性が低いものであることが記載されている([0034],表1)。
b ところで,上記のようなPTFE水性乳化液から得られるPTFEファインパウダーにおいては,高い破断強度が望まれており,その破断強度を高めることは,当業者において周知の課題であるから(参考文献1の特許請求の範囲,【0008】,表1,参考文献2の請求の範囲,【0013】,表1等を参照。),PTFEファインパウダーに関する甲2発明においても,高い破断強度が望まれていることは,当業者にとって自明のことといえる。
しかしながら,TFEを乳化重合して,PTFE水性乳化液を得る際に,含フッ素乳化剤として,環境面から好ましいEEAのようなLogPOWの値が小さいものを用いる場合に,どのような条件等をどのように調整すれば,PTFEファインパウダーの破断強度を高めることができるのかについては,甲2並びに参考文献1及び2のほか,申立人が平成30年10月25日付けの意見書とともに提出した参考資料1(特開2007-16242号公報)のいずれにも,何ら記載されていない。また,そのようなことが技術常識であるともいえない。
そうすると,「破断強度が29.4N」である甲2発明において,「29.7N以上の破断強度」とすることが,当業者が容易に想到することができたということはできない。

(ウ)小括
したがって,相違点1’及び2’について検討するまでもなく,本件発明6は,甲2に記載された発明並びに参考文献1及び2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(エ)申立人の主張について
a 申立人は,レドックス開始剤を使用してPTFEの破断強度を高めることは,周知技術であり(参考文献1,本件明細書に記載の特許文献1),PTFEファインパウダーを製造する際に,含フッ素界面活性剤を少量使用することも,周知技術である(甲2)から,破断強度を高める方法は周知であり,破断強度をわずか0.3N高め,「29.7N以上の破断強度」とすることは,当業者が容易に想到できると主張する。
しかしながら,上記(イ)で述べたとおり,TFEを乳化重合して,PTFE水性乳化液を得る際に,含フッ素乳化剤として,環境面から好ましいEEAのようなLogPOWの値が小さいものを用いる場合に,どのような条件等をどのように調整すれば,PTFEファインパウダーの破断強度を高めることができるのかについては,いずれの証拠にも何ら記載されておらず,また,そのようなことが技術常識であるともいえない以上,甲2発明において,「29.7N以上の破断強度」とすることが,当業者が容易に想到することができたということはできない。
b 申立人は,取消理由3(進歩性)に関する主張の中で,本件明細書の実施例3及び4に具体的に記載された方法以外の方法で破断強度を29.7N以上とするためには,当業者に過度の試行錯誤を強いることになり,本件明細書の発明の詳細な説明は,本件発明6について,当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではないと主張するが,新たな取消理由を主張するものであり,実質的に特許異議申立書の要旨を変更するものといえるから,採用しない。

ウ 本件発明7について
本件発明7は,本件発明6を直接的に引用するものであるが,上記イで述べたとおり,本件発明6が,甲2に記載された発明並びに参考文献1及び2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明7についても同様に,甲2に記載された発明並びに参考文献1及び2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ まとめ
以上のとおり,本件発明6及び7は,いずれも,甲2に記載された発明並びに参考文献1及び2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって,取消理由3(進歩性)によっては,本件特許の請求項6及び7に係る特許を取り消すことはできない。

2 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由
(1)取消理由2(進歩性)
上記1(2)で述べたとおり,本件発明6及び7は,いずれも,甲2に記載された発明並びに参考文献1及び2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明6及び7が,甲2に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことは,明らかである。
したがって,取消理由2(進歩性)によっては,本件特許の請求項6及び7に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおり,取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項6及び7に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件特許の請求項6及び7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)?(III)で表される1種又は2種以上の含フッ素界面活性剤の存在下に、レドックス開始剤を添加して、少なくともテトラフルオロエチレンを乳化重合する工程を含む製造方法により得られ、
標準比重が2.160以下であり、
破断強度が29N以上であり、
応力緩和時間が500秒以上である
ことを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末。
一般式(I):
CF_(3)-(CF_(2))_(m)-O-(CF(CF_(3))CF_(2)O)_(n)-CF(CF_(3))COOX
(式中、mは0?4の整数、nは0?2の整数、Xは水素原子、NH_(4)又はアルカリ金属原子を表す。)
一般式(II):
CF_(3)-(CF_(2))_(m)-O-(CF(CF_(3))CF_(2)O)_(n)-CHFCF_(2)COOX
(式中、mは0?4の整数、nは0?2の整数、Xは水素原子、NH_(4)又はアルカリ金属原子を表す。)
一般式(III):
CF_(3)-(CF_(2))_(m)-O-(CF(CF_(3))CF_(2)O)_(n)-CH_(2)CF_(2)COOX
(式中、mは0?4の整数、nは0?2の整数、Xは水素原子、NH_(4)又はアルカリ金属原子を表す。)
【請求項2】
押出し圧力が9.8?24.5MPaである請求項1記載のポリテトラフルオロエチレン粉末。
【請求項3】
一般式(I)?(III)において、mが0であり、nが0又は1である請求項1又は2記載のポリテトラフルオロエチレン粉末。
【請求項4】
多孔体の成形用材料である請求項1、2又は3記載のポリテトラフルオロエチレン粉末。
【請求項5】
下記一般式(I)?(III)で表される1種又は2種以上の含フッ素界面活性剤の存在下に、レドックス開始剤を添加して、少なくともテトラフルオロエチレンを乳化重合する工程を含むことを特徴とするポリテトラフルオロエチレンの製造方法。
一般式(I):
CF_(3)-(CF_(2))_(m)-O-(CF(CF_(3))CF_(2)O)_(n)-CF(CF_(3))COOX
(式中、mは0?4の整数、nは0?2の整数、Xは水素原子、NH_(4)又はアルカリ金属原子を表す。)
一般式(II):
CF_(3)-(CF_(2))_(m)-O-(CF(CF_(3))CF_(2)O)_(n)-CHFCF_(2)COOX
(式中、mは0?4の整数、nは0?2の整数、Xは水素原子、NH_(4)又はアルカリ金属原子を表す。)
一般式(III):
CF_(3)-(CF_(2))_(m)-O-(CF(CF_(3))CF_(2)O)_(n)-CH_(2)CF_(2)COOX
(式中、mは0?4の整数、nは0?2の整数、Xは水素原子、NH_(4)又はアルカリ金属原子を表す。)
【請求項6】
非溶融二次加工性を有し、標準比重が2.160以下であり、平均一次粒子径が150nm以上であり、応力緩和時間が500秒以上であり、29.7N以上の破断強度を有し、一般式:
CF_(3)OCF(CF_(3))CF_(2)OCF(CF_(3))COOX
(式中、Xは水素原子、NH_(4)又はアルカリ金属原子を表す。)、及び、一般式:
CF_(3)CF_(2)OCF_(2)CF_(2)OCF_(2)COOX
(式中、Xは水素原子、NH_(4)又はアルカリ金属原子を表す。)、
からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素界面活性剤を含む
ことを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末(ただし、パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)由来の構造単位を有し、標準比重が2.141、平均一次粒子径が240nm、応力緩和時間が594秒、破断強度が29.8Nの粉末を除く)。
【請求項7】
更に、レドックス開始剤を含む請求項6記載のポリテトラフルオロエチレン粉末。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-11-13 
出願番号 特願2016-17339(P2016-17339)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (C08F)
P 1 652・ 161- YAA (C08F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 柴田 昌弘三原 健治  
特許庁審判長 岡崎 美穂
特許庁審判官 井上 猛
小柳 健悟
登録日 2017-08-25 
登録番号 特許第6194964号(P6194964)
権利者 ダイキン工業株式会社
発明の名称 ポリテトラフルオロエチレン及びその製造方法  
代理人 特許業務法人安富国際特許事務所  
代理人 特許業務法人 安富国際特許事務所  

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