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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B60C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B60C
管理番号 1347665
異議申立番号 異議2018-700359  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-04-27 
確定日 2018-11-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6225068号発明「空気入りタイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 1 特許第6225068号の明細書及び特許請求の範囲を,平成30年9月10日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項[1?6]について,訂正することを認める。 2 特許第6225068号の請求項1?6に係る特許を維持する。 
理由 第1 主な手続の経緯等
特許第6225068号(請求項の数は6。以下「本件特許」という。)は,平成26年4月23日にされた特許出願に係るものであって,平成29年10月13日にその特許権が設定登録され,同年11月1日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後,平成30年4月27日に特許異議申立人村川明美(以下,単に「異議申立人」という。)より本件特許の請求項1?6に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てがされ,同年7月11日付けで取消理由(以下,単に「取消理由」という場合がある。)が通知され,同年9月10日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正請求書が提出されることで特許請求の範囲の訂正(以下「本件訂正」という。)が請求がされた。
なお,本件訂正は職権調査に基づいて通知された取消理由に対応するために請求されたものであるので,当合議体は,本件には法120条の5第5項ただし書き所定の特別の事情があると認め,本件訂正の請求について,異議申立人に対し,同項所定の意見書を提出する機会を与えていない。

第2 本件訂正の可否
1 特許権者の請求の趣旨
結論第1項に同旨。

2 訂正の内容
訂正請求書並びにそれに添付された訂正特許請求の範囲によれば,特許権者の求める訂正は,実質,以下のとおりである。すなわち,特許請求の範囲を以下のとおり訂正する。
・ 本件訂正前
「【請求項1】
トレッド部に,タイヤ周方向に連続してジグザグ状にのびるセンター主溝と,前記センター主溝から少なくとも第1トレッド端までのびる複数本の第1横溝と,前記センター主溝から少なくとも第2トレッド端までのびる複数本の第2横溝とが設けられた空気入りタイヤであって,
前記第1横溝及び第2横溝の各々は,前記センター主溝からタイヤ軸方向に沿ってのびる軸方向部と,前記軸方向部に連なりかつタイヤ軸方向に対して傾けられた傾斜部とを含み,
タイヤ周方向で互いに隣り合う前記第1横溝間には,前記センター主溝と前記第1トレッド端との間でタイヤ軸方向に連続する第1ブロックが区分され,
タイヤ周方向で互いに隣り合う前記第2横溝間には,前記センター主溝と前記第2トレッド端との間でタイヤ軸方向に連続する第2ブロックが区分されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1横溝のタイヤ周方向長さは,前記第1横溝のタイヤ周方向の配列ピッチよりも大きい請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第2横溝のタイヤ周方向長さは,前記第2横溝のタイヤ周方向の配列ピッチよりも大きい請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1横溝の前記傾斜部及び前記第2横溝の前記傾斜部は,前記軸方向部側の内側傾斜部と,そのタイヤ軸方向外側に配されかつ前記内側傾斜部よりもタイヤ軸方向に対する角度が小さい外側傾斜部とを含む請求項1乃至3のいずれかに記載に空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記軸方向部,前記内側傾斜部,及び,前記外側傾斜部は,いずれも直線状である請求項4記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第1横溝は,前記センター主溝の前記第1トレッド端側に突出する第1突部からのび,
前記第2横溝は,前記センター主溝の前記第2トレッド端側に突出する第2突部からのびている請求項1乃至5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。」
・ 本件訂正後
「【請求項1】
トレッド部に,タイヤ周方向に連続してジグザグ状にのびるセンター主溝と,前記センター主溝から少なくとも第1トレッド端までのびる複数本の第1横溝と,前記センター主溝から少なくとも第2トレッド端までのびる複数本の第2横溝とが設けられた空気入りタイヤであって,
前記第1横溝及び第2横溝の各々は,前記センター主溝からタイヤ軸方向に沿って略一定の溝幅でのびる軸方向部と,前記軸方向部に連なりかつタイヤ軸方向に対して傾けられた傾斜部とを含み,
タイヤ周方向で互いに隣り合う前記第1横溝間には,前記センター主溝と前記第1トレッド端との間でタイヤ軸方向に連続する第1ブロックが区分され,
タイヤ周方向で互いに隣り合う前記第2横溝間には,前記センター主溝と前記第2トレッド端との間でタイヤ軸方向に連続する第2ブロックが区分されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1横溝のタイヤ周方向長さは,前記第1横溝のタイヤ周方向の配列ピッチよりも大きい請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第2横溝のタイヤ周方向長さは,前記第2横溝のタイヤ周方向の配列ピッチよりも大きい請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1横溝の前記傾斜部及び前記第2横溝の前記傾斜部は,前記軸方向部側の内側傾斜部と,そのタイヤ軸方向外側に配されかつ前記内側傾斜部よりもタイヤ軸方向に対する角度が小さい外側傾斜部とを含む請求項1乃至3のいずれかに記載に空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記軸方向部,前記内側傾斜部,及び,前記外側傾斜部は,いずれも直線状である請求項4記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第1横溝は,前記センター主溝の前記第1トレッド端側に突出する第1突部からのび,
前記第2横溝は,前記センター主溝の前記第2トレッド端側に突出する第2突部からのびている請求項1乃至5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。」

3 本件訂正の可否についての判断
(1) 請求項1についての訂正
この訂正は,請求項1に係る発明(空気入りタイヤ)の構成要素である「第1横溝」及び「第2横溝」を構成する「軸方向部」について,訂正前に「センター主溝からタイヤ軸方向に沿ってのびる軸方向部」としていたものを「センター主溝からタイヤ軸方向に沿って略一定の溝幅でのびる軸方向部」とすることで「軸方向部」が有する溝幅について限定を付加するものであり,特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないといえる。しかも,上述の限定事項については,願書に添付した明細書の【0039】に記載がある。
よって,請求項1についての訂正は,特許法(以下,単に「法」という場合がある。)120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであるといえ,また願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるから,同条9項で準用する法126条5項で規定する要件を満たすといえ,さらに実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもないから,同126条6項で規定する要件を満たすと判断される。
(2) 請求項2?6についての訂正
この訂正は,請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2?6について,実質的に請求項1についての訂正と同様に訂正するものである。
よって,請求項2?6についての訂正も,請求項1と同様に,法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり,また,同条9項で準用する法126条5項及び6項で規定する要件を満たすと判断される。
(3) 小括
以上のとおりであるから,本件訂正は,法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり,同条9項で準用する法126条5?6項で規定する要件を満たす。
よって,結論の第1項のとおり,本件訂正を認める。

第3 本件発明
上記第2で検討のとおり本件訂正は認められるので,本件特許の請求項1?6に係る発明は,訂正特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下,請求項の番号に応じて各発明を「本件発明1」などといい,これらを併せて「本件発明」という場合がある。)。
「【請求項1】
トレッド部に,タイヤ周方向に連続してジグザグ状にのびるセンター主溝と,前記センター主溝から少なくとも第1トレッド端までのびる複数本の第1横溝と,前記センター主溝から少なくとも第2トレッド端までのびる複数本の第2横溝とが設けられた空気入りタイヤであって,
前記第1横溝及び第2横溝の各々は,前記センター主溝からタイヤ軸方向に沿って略一定の溝幅でのびる軸方向部と,前記軸方向部に連なりかつタイヤ軸方向に対して傾けられた傾斜部とを含み,
タイヤ周方向で互いに隣り合う前記第1横溝間には,前記センター主溝と前記第1トレッド端との間でタイヤ軸方向に連続する第1ブロックが区分され,
タイヤ周方向で互いに隣り合う前記第2横溝間には,前記センター主溝と前記第2トレッド端との間でタイヤ軸方向に連続する第2ブロックが区分されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1横溝のタイヤ周方向長さは,前記第1横溝のタイヤ周方向の配列ピッチよりも大きい請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第2横溝のタイヤ周方向長さは,前記第2横溝のタイヤ周方向の配列ピッチよりも大きい請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1横溝の前記傾斜部及び前記第2横溝の前記傾斜部は,前記軸方向部側の内側傾斜部と,そのタイヤ軸方向外側に配されかつ前記内側傾斜部よりもタイヤ軸方向に対する角度が小さい外側傾斜部とを含む請求項1乃至3のいずれかに記載に空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記軸方向部,前記内側傾斜部,及び,前記外側傾斜部は,いずれも直線状である請求項4記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第1横溝は,前記センター主溝の前記第1トレッド端側に突出する第1突部からのび,
前記第2横溝は,前記センター主溝の前記第2トレッド端側に突出する第2突部からのびている請求項1乃至5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。」

第4 平成30年7月11日付け取消理由の概要
要するに,請求項1?4及び6に係る発明は,本件特許の出願前に頒布された下記の刊行物に記載された発明であって,法29条1項3号に該当し特許を受けることができないものであるから,その発明に係る特許は取り消すべき,というものである。
・ 特開昭61-249807号公報(異議申立書の証拠方法である甲4。以下,単に「甲4」という。)

第5 取消理由についての当合議体の判断
以下述べるように,取消理由は理由がないと判断する。
1 甲4に記載された発明
甲4には,特に請求項1及び第1図の記載から,次のとおりの発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認める。
「トレッド踏面部に複数のラグを周方向にほぼ等間隔に配列してなる一対のラグ列を具え,一方のラグ列のラグと他方のラグ列のラグとを相互に周方向に半ピッチずつずらせて配置し,両ラグ列の相互に隣接するラグによりほぼ人字形状を呈するラグ対を構成する不整地走行用空気入りタイヤにおいて,
前記トレッド踏面部をその幅方向に見て相互にほぼ等しい幅を有する中央領域と両側領域との3つの領域に区分し,前記ラグはトレッド踏面部の中央領域では比較的大きな略長方形状を,また両側領域では細長い棒状形状をそれぞれ呈するごとく形成し,タイヤの中心線側に位置する前記ラグの略長方形状部分の稜線を折線状として該稜線と,これと対向する隣接ラグの略長方形状部分の折線状稜線との間に踏面部の中央領域を周方向にジグザグ状に延在する1本の連続的な主溝を限定し,タイヤの側端に面する前記ラグの稜線と,タイヤの中心線側に位置する前記ラグの棒状形状部分の稜線とを相互にほぼ等しい距離だけ離間した連続曲線状とし,これら連続曲線状の稜線がタイヤの幅方向に対してなす角度はタイヤの中心線鋼に向けて減少するごとく設定し,前記トレッド踏面部の中央領域におけるネガティブを両側領域におけるネガティブの約70%以下としており,
ラグ列のラグ間に形成された溝は,ジグザグ状に延在する主溝における突出する突部からトレッド端まで連続して延びており,主溝の近傍付近ではタイヤ軸方向に沿って,その後はタイヤ軸方向に対して傾けて設けられている,不整地走行用空気入りタイヤ」

2 本件発明1について
(1) 甲4発明との一致点及び相違点
本件発明1と甲4発明を対比すると,甲4発明の「一方のラグ列のラグ」と「他方のラグ列のラグ」は,本件発明1の「第1ブロック」と「第2ブロック」にそれぞれ相当し,また,「一方のラグ列」の間に形成された溝(以下,「一方の横溝」という。)と「他方のラグ列」の間に形成された溝(以下,「他方の横溝」という。)は,「第1横溝」と「第2横溝」にそれぞれ相当する。
また,甲4発明の「一方の横溝」及び「他方の横溝」における「主溝の近傍付近」部分は本件発明1の「軸方向部」に,「タイヤ軸方向に対して傾けて設けられている」部分は「傾斜部」にそれぞれ相当する。
そうすると,両発明の一致点及び相違点は,それぞれ次のとおりのものと認める。
・ 一致点
「トレッド部に,タイヤ周方向に連続してジグザグ状にのびるセンター主溝と,前記センター主溝から少なくとも第1トレッド端までのびる複数本の第1横溝と,前記センター主溝から少なくとも第2トレッド端までのびる複数本の第2横溝とが設けられた空気入りタイヤであって,
前記第1横溝及び第2横溝の各々は,前記センター主溝からタイヤ軸方向に沿ってのびる軸方向部と,前記軸方向部に連なりかつタイヤ軸方向に対して傾けられた傾斜部とを含み,
タイヤ周方向で互いに隣り合う前記第1横溝間には,前記センター主溝と前記第1トレッド端との間でタイヤ軸方向に連続する第1ブロックが区分され,
タイヤ周方向で互いに隣り合う前記第2横溝間には,前記センター主溝と前記第2トレッド端との間でタイヤ軸方向に連続する第2ブロックが区分されていることを特徴とする空気入りタイヤ」である点。
・ 相違点1
第1横溝(一方の横溝)及び第2横溝(他方の横溝)におけるセンター主溝(主溝)からタイヤ軸方向に沿ってのびる部分である「軸方向部」について,本件発明1は「略一定の溝幅」でのびるものであるのに対し,甲4発明はそのような構成を有していない点。
(2) 相違点1についての検討
甲4発明の「一方の横溝」及び「他方の横溝」における「主溝の近傍付近」部分は,上記1で認定のとおり,略一定の溝幅でのびるような構成を有していない。また,甲4の図1を参照しても,主溝から離れるにしたがって溝幅が増加する構成が記載されてはいるものの,相違点に係る構成のような記載はみあたらない。そうすると,相違点1は実質的な相違点である。
(3) 小括
以上のとおりであるから,本件発明1は,本件特許の出願前に頒布された刊行物(甲4)に記載された発明であるということはできない。

3 本件発明2?4及び6について
本件訂正後の請求項2?4及び6の記載は請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから,これら請求項に係る本件発明2?4及び6についても,本件発明1と同様に,甲4に記載された発明であるということはできない。

4 まとめ
以上のとおりであるから,請求項1?4及び6に係る発明は本件特許の出願前に頒布された刊行物に記載された発明であって法29条1項3号に該当し特許を受けることができないものであるから,その発明に係る特許は取り消すべき,との取消理由には,理由がない。

第6 異議申立人の主張に係る申立理由の概要
異議申立人の主張は,概略,次のとおりである。
(1) 請求項1?6に係る発明は,法29条2項の規定により特許を受けることができない発明である。すなわち,これら発明は,甲1に記載された発明を主たる引用発明としたとき,この主たる引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである(以下「申立理由」という。)。
(2) そして,上記申立理由には理由があるから,本件の請求項1?6に係る発明についての特許は,法113条2号に該当し,取り消されるべきものである。
(3) また,証拠方法として書証を申出,甲4のほか,以下の文書(甲1?3及び5)を提出する。
・甲1: 特公平5-7201号公報
・甲2: 特開平5-155204号公報
・甲3: 特開2011-152836号公報
・甲5: 特開2005-22542号公報

第7 申立理由についての当合議体の判断
当合議体は,以下述べるように,申立理由には理由はないと判断する。
1 甲1に記載された発明
甲1には,特に特許請求の範囲第1項,4欄21?30行,図2などの記載から,次のとおりの発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「リブ状の底部隆起を周設された一個の中心周縁溝によつて相互に分離された2条のトレツドリブ領域を有する,ブレーカを備えた車両用空気タイヤにおいて,
中心周縁溝はタイヤ周方向に連続して直線状に延びるように設けられ,該中心周縁溝の溝幅はトレツドの接地幅の約20?25%であり,
トレツドの幅にほぼ等しい幅を有するブレーカがその半径方向外側の領域の中心周縁溝に対応する範囲で少なくとも一層のコード織物層によつて補強されており,
該コード織物層の幅が中心周縁溝の幅より約50?70%広く,
前記トレツドリブ領域がタイヤ軸方向に沿って延びる部分とタイヤ周方向に対して約30度の角度で斜めに延在する部分とからなる相互に平行なリブを持つパターンを有し,
両側トレツドリブ領域のリブが全体で対称的にV字形に配置されている車両用空気タイヤ。」

2 本件発明1について
(1) 甲1発明との一致点及び相違点
本件発明1と甲1発明を対比すると,両発明の一致点及び相違点は,それぞれ次のとおりのものと認める。
・ 一致点
「トレッド部に,タイヤ周方向に連続してのびるセンター主溝と,前記センター主溝から少なくとも第1トレッド端までのびる複数本の第1横溝と,前記センター主溝から少なくとも第2トレッド端までのびる複数本の第2横溝とが設けられた空気入りタイヤであって,
前記第1横溝及び第2横溝の各々は,前記センター主溝からタイヤ軸方向に沿って略一定の溝幅でのびる軸方向部と,前記軸方向部に連なりかつタイヤ軸方向に対して傾けられた傾斜部とを含み,
タイヤ周方向で互いに隣り合う前記第1横溝間には,前記センター主溝と前記第1トレッド端との間でタイヤ軸方向に連続する第1ブロックが区分され,
タイヤ周方向で互いに隣り合う前記第2横溝間には,前記センター主溝と前記第2トレッド端との間でタイヤ軸方向に連続する第2ブロックが区分されていることを特徴とする空気入りタイヤ。」である点。
・ 相違点2
センター主溝(中心周縁溝)について,本件発明1はタイヤ周方向に連続して「ジグザグ状」にのびるように設けられているのに対し,甲1発明は「直線状」に設けられている点。
(2) 相違点2についての検討
甲1の記載(特に2欄12行?3欄24行参照)によれば,甲1発明の中心周縁溝は,雨天時,タイヤの前面にたまった水を排出溝として後方へ素早く排出させるべく機能させるものであると解される。そして,このような排水作用を期待してタイヤ周方向に連続して「直線状」に設けられた甲1発明の中心周縁溝について,これを水の後方への排出を妨げる構成とすること,例えば「ジグザグ状」とすることには阻害事由があるといわざるを得ない。
そうすると,仮に,タイヤ周方向に連続してジグザグ状にのびる中心周縁溝(センター主溝)が周知技術であったとしても,甲1発明の中心周縁溝として上記相違点2に係る構成を採用することは想到容易でない。
(3) 小括
以上のとおりであるから,本件発明1は,甲1に記載された発明(甲1発明)を主たる引用発明としたとき,甲1発明から想到容易であるということはできない。

3 本件発明2?6について
本件訂正後の請求項2?6の記載は請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから,これら請求項に係る本件発明2?6についても,本件発明1と同様に,甲1発明から想到容易であるということはできない。

4 まとめ
以上のとおりであるから,申立理由には理由がない。

第8 むすび
したがって,取消理由並びに異議申立人の主張する申立理由によっては,請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。また,他に当該特許が法113条各号のいずれかに該当すると認めうる理由もない。
よって,結論の第2項のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に、タイヤ周方向に連続してジグザグ状にのびるセンター主溝と、前記センター主溝から少なくとも第1トレッド端までのびる複数本の第1横溝と、前記センター主溝から少なくとも第2トレッド端までのびる複数本の第2横溝とが設けられた空気入りタイヤであって、
前記第1横溝及び第2横溝の各々は、前記センター主溝からタイヤ軸方向に沿って略一定の溝幅でのびる軸方向部と、前記軸方向部に連なりかつタイヤ軸方向に対して傾けられた傾斜部とを含み、
タイヤ周方向で互いに隣り合う前記第1横溝間には、前記センター主溝と前記第1トレッド端との間でタイヤ軸方向に連続する第1ブロックが区分され、
タイヤ周方向で互いに隣り合う前記第2横溝間には、前記センター主溝と前記第2トレッド端との間でタイヤ軸方向に連続する第2ブロックが区分されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1横溝のタイヤ周方向長さは、前記第1横溝のタイヤ周方向の配列ピッチよりも大きい請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第2横溝のタイヤ周方向長さは、前記第2横溝のタイヤ周方向の配列ピッチよりも大きい請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1横溝の前記傾斜部及び前記第2横溝の前記傾斜部は、前記軸方向部側の内側傾斜部と、そのタイヤ軸方向外側に配されかつ前記内側傾斜部よりもタイヤ軸方向に対する角度が小さい外側傾斜部とを含む請求項1乃至3のいずれかに記載に空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記軸方向部、前記内側傾斜部、及び、前記外側傾斜部は、いずれも直線状である請求項4記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第1横溝は、前記センター主溝の前記第1トレッド端側に突出する第1突部からのび、
前記第2横溝は、前記センター主溝の前記第2トレッド端側に突出する第2突部からのびている請求項1乃至5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-11-06 
出願番号 特願2014-89438(P2014-89438)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (B60C)
P 1 651・ 121- YAA (B60C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鏡 宣宏  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 阪▲崎▼ 裕美
須藤 康洋
登録日 2017-10-13 
登録番号 特許第6225068号(P6225068)
権利者 住友ゴム工業株式会社
発明の名称 空気入りタイヤ  
代理人 浦 重剛  
代理人 住友 慎太郎  
代理人 浦 重剛  
代理人 石原 幸信  
代理人 石原 幸信  
代理人 苗村 潤  
代理人 苗村 潤  
代理人 住友 慎太郎  

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