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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B32B 審判 全部申し立て 2項進歩性 B32B |
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管理番号 | 1347703 |
異議申立番号 | 異議2018-700825 |
総通号数 | 230 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-02-22 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-10-10 |
確定日 | 2019-01-09 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6311419号発明「光輝性化粧シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6311419号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第6311419号(以下「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成26年4月10日に特許出願され、平成30年3月30日にその特許権の設定登録がされ(特許掲載公報平成30年4月18日発行)、その後、その特許に対し、平成30年10月10日に特許異議申立人藤江桂子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 2.本件発明 本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1及び2」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 少なくとも下側から基材、第一全面ベタ着色層、全面ベタ光輝性顔料層、第二全面ベタ着色層をこの順に有する化粧シートであって、前記第二全面ベタ着色層の乾燥後の塗布量で0.5?2g/m^(2)であることを特徴とする光輝性化粧シート。 【請求項2】 前記基材がポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂であり、前記化粧シートの上側に少なくとも下側から接着剤層、透明熱可塑性樹脂層を有することを特徴とする請求項1記載の光輝性化粧シート。」 3.申立理由の概要 以下、「甲第1号証」等を「甲1」等といい、「甲第1号証に記載された発明」等を「甲1発明」等という。 (理由1)本件発明1及び2は、甲1発明及び周知技術(甲2?甲7)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (理由2)本件発明1及び2は、第二全面べ夕着色層の乾燥後の塗布量で0.5?2g/m^(2)であることを特定しているが、発明の詳細な説明には、実施例として、第二全面べ夕着色層の乾燥後の塗布量で0.5g/m^(2)である例が記載されているのみであり、出願時の技術常識に照らしても、本件発明1及び2が特定する塗布量0.5?2g/m^(2)の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 よって、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 (証拠一覧) 甲1:特開2009-78394号公報 甲2:特開平7-314915号公報 甲3:特開2001-225347号公報 甲4:特開2005-74637号公報 甲5:特開2006-272931号公報 甲6:特開2006-272932号公報 甲7:特開平5-39583号公報 4.甲1?甲7の記載事項 (1)甲1 甲1には、以下の事項が記載されている。 「【特許請求の範囲】 ・・・ 【請求項2】 少なくとも下側から基材、全面ベタ着色層、全面ベタ光輝性顔料層、絵柄層、をこの順に有する化粧材であって、前記全面ベタ光輝性顔料層の層厚が乾燥後の塗布量で1?3g/m^(2)であり、用いる光輝性顔料の粒径が1?40μmであることを特徴とする化粧材。 ・・・ 【請求項5】 前記基材がポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂であり、前記化粧材の上側に少なくとも下側から接着剤層、透明熱可塑性樹脂層を有することを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の化粧材。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、キッチン用部材、鋼板ラミネート用シート、建築内装材、外装材、アルミニウム基材へのラッピング用シート、木質系基材への積層、ラッピング、真空成形用に使われる化粧材に関する。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本発明は、この問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、光輝性顔料を全面ベタ印刷で設け、またその他の絵柄層や樹脂層を設けて製造時のスジ、ムラ、抜け等を生じない安定した光沢感、奥行き感を出すことができる化粧材を提供することにある。」 「【0006】 またその請求項2記載の発明は、少なくとも下側から基材、全面ベタ着色層、全面ベタ光輝性顔料層、絵柄層、をこの順に有する化粧材であって、前記全面ベタ光輝性顔料層の層厚が乾燥後の塗布量で1?3g/m^(2)であり、用いる光輝性顔料の粒径が1?40μmであることを特徴とする化粧材である。」 「【発明の効果】 【0010】 請求項1記載の発明により、粒径と塗布量を同時に限定することにより、全面ベタ光輝性顔料層を安定して製造することが可能となり、安定した光沢感、奥行き感を有する化粧材を提供することが可能となった。 【0011】 また、請求項2に記載の発明により、ベタ光輝性顔料層の下側に全面ベタ着色層があることで、化粧材を貼り合わせる基板などの表面を隠蔽し、全面により安定した色調となり、いくつかの光輝性顔料により限定されたいくつかの色調に限定されることのない任意の色の光輝性を有する化粧材を提供することがが可能となった。」 「【0020】 絵柄層2、全面ベタ着色層4は、本発明の化粧材に絵柄による意匠性を付与するために、必要に応じて設けられるものであり、基材1自体の着色で代用できる場合等には省略も可能である。この絵柄層2は、染料または顔料等の着色剤を適当なバインダー樹脂と共に適当な希釈溶媒中に溶解または分散してなる印刷インキまたは塗料等を使用して、例えばグラビア印刷法またはオフセット印刷法等の各種印刷法や、グラビアコート法またはロールコート法等の各種塗工法などによって形成されるのが一般的である。バインダー樹脂としては、例えばウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、硝化綿等またはそれらの混合物等がよく使用されるが、勿論これらに限定されるものではない。絵柄の種類は、例えば木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字または記号、それらの組み合わせ等、所望により任意であり、単色無地であっても良い。また、化粧材の隠蔽性を向上するために、絵柄層2の裏面側に、二酸化チタンや酸化鉄等の不透明顔料を多く含む不透明な印刷インキまたは塗料による隠蔽層が併設される場合もある。 【0021】 全面ベタ光輝性顔料層3、第1全面ベタ光輝性顔料層5、第2全面ベタ光輝性顔料層6に用いる光輝性顔料としては、天然の雲母に酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物を被覆したパール顔料が好適に使用可能であり、その他アルミ粉等の金属粉も使用可能である。粒径は1?40μmのものを用い、好ましくは5?30μm、特には平均粒径30μmで粒径にばらつきの少ないものが最適である。1μmより小さいと十分な光輝性が発現されず、40μmより大きいとムラやスジなどの不具合が発生し易くなる。・・・」 「【実施例1】 【0025】 基材1として押出法にて製造した厚さ80μmの着色ホモポリプロピレン系樹脂シート( リケンテクノス(株)製:RIVEST TPO)を用い、この表面に、絵柄層2として2液ウレタン樹脂インキを用いて抽象柄をグラビア印刷した。 【0026】 さらにこの表面に、全面ベタ光輝性顔料層3として2液ウレタン樹脂メジウム100重量部、脂肪族系イソシアネート硬化剤3重量部、光輝性顔料(平均粒径30μm)を25重量部添加したインキ(日本光研工業(株)製:MC302)を用いて版深さ38から39μmのヘリオグラッショ法により作製した150線(25.4mmあたり150線)のベタ版により乾燥後の塗布量を2g/m^(2)となるように印刷した。」 「【実施例2】 【0028】 実施例1記載の基材1に、実施例1記載の2液ウレタン樹脂インキにて実施例1記載の150線のベタ版を使い、乾燥後の塗布量3g/m^(2)の全面ベタ着色層4を印刷した。次に、実施例1記載の方法での全面ベタ光輝性顔料層3を印刷した。次に、実施例1記載の絵柄層2として2液ウレタン樹脂インキを用いて抽象柄をグラビア印刷した。次に、実施例1記載の方法で透明熱可塑性樹脂層8を積層して化粧材を得た。得られた化粧材の外観は全面ベタ着色層を背面の色柄としたシート全面に光輝性を有するものとなり、スジ、ムラ、抜けのないものとなった。」 上記記載事項(特に、【請求項2】、【0006】、【0020】?【0021】、【0025】?【0026】及び【0028】の実施例2)から、甲1には、以下の甲1発明が記載されている。 「少なくとも下側から基材1、全面べ夕着色層4、全面べ夕光輝性顔料層3、抽象柄の絵柄層2をこの順に有し、前記全面ベタ光輝性顔料層3の層厚が乾燥後の塗布量で1?3g/m^(2)であり、用いる光輝性顔料の粒径が1?40μmである、化粧材。」 (2)甲2 甲2には、以下の事項が記載されている。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、サーマルヘッド、レーザー等の加熱手段を用いる熱転写プリンターに使用される熱転写シートに関し、更に詳しくは、金属光沢を有する印字物を熱転写プリンターを用いて簡便に得ることのできる金属光沢熱転写シートに関する。」 「【0015】 【実施例】次に実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。尚、文中、部又は%とあるのは特に断りのない限り重量基準である。 実施例1 背面に耐熱スリップ層を形成した厚さ6.0μmのポリエステルフィルム(東レ製、ルミラー)の表面に、下記インキ組成物を固形分塗布量が1.0g/m^(2)になるようバーコーターで塗布し、80℃で乾燥して透明着色層を形成した。・・・」 (3)甲3 甲3には、以下の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、射出成形同時加飾にて使用するラミネートタイプの射出成形同時積層用加飾シートと、それを用いた射出成形同時加飾方法に関する。特に、密着性を低下させずに金属光沢感が得られる加飾シートと加飾方法に関する。」 「【0045】〔実施例1〕図2の如き構成の射出成形同時積層用加飾シートSを、厚さ125μmの無色透明なポリメチルメタクリレート(PMMA)シートを基材シート1として、その裏側とする面に、厚さ1μmの着色透明樹脂層5、厚さ2μmの第1の金属光沢インキ層2A、厚さ2μmの透明樹脂層3、厚さ2μmの第2の金属光沢インキ層2B、厚さ4μmの接着剤層4をこの順にグラビア印刷でそれぞれ全面に形成して作製した。・・・」 (4)甲4 甲4には、以下の事項が記載されている。 「【0049】 実施例1に於いて、更に、金属光沢層3とする光輝性インキ層と、スクラッチ調絵柄層2との間となる様に、厚さ2μmの着色透明インキ層7をグラビア印刷で全面ベタとして形成した他は、実施例1同様にして図3の断面図の如きスクラッチ加工金属調化粧シート10を作製した。なお、着色透明インキ層のインキは、バインダー樹脂として、アクリル樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体との1対1質量比混合物を用い、着色剤にはフタロシアニンブルーを用いた青色透明インキとした。スクラッチ加工された金属調外観を表現したスクラッチ意匠は、立体感に富んだものとなった上、金属光沢の光輝性及び青色の発色共に鮮明であった。」 (5)甲5 甲5には、以下の事項が記載されている。 「【0110】 (化粧シートの作製) 基材シートとして、ポリプロピレンを主成分とする60μmの着色シートを用い、その表裏両表面にコロナ放電処理を施した。その後、着色隠蔽層用の水系塗工剤A、絵柄模様層用の水系塗工剤Bを順次グラビア印刷法にてそれぞれシートの表面全体に均一に塗布・乾燥し、3g/m^(2)の着色隠蔽層(厚さ3μm)及び1g/m^(2)の絵柄模様層(厚さ1μm)を順次形成した。・・・」 (6)甲6 甲6には、以下の事項が記載されている。 「【0109】 (化粧シートの作製) 基材シートとして、ポリプロピレンを主成分とする60μmの着色シートを用い、その表裏両表面にコロナ放電処理を施した。その後、着色隠蔽層用の水系塗工剤A、絵柄模様層用の水系塗工剤Bを順次グラビア印刷法にてそれぞれシートの表面全体に均一に塗布・乾燥し、3g/m^(2)の着色隠蔽層(厚さ3μm)及び1g/m^(2)の絵柄模様層(厚さ1μm)を順次形成した。・・・」 (7)甲7 甲7には、以下の事項が記載されている。 「【0010】 エッチングレジストの印刷方法は、通常のグラビア印刷、シルクスクリーン印刷等でよく、又、印刷される絵柄には特に制限はない。印刷するレジストインキ厚みは固形分で1?5μm(g/m^(2))程度で十分である。エッチングレジスト膜形成後のエッチング処理は、金属蒸着層を形成する金属の種類によって異なるが、金属が、例えば、アルミニウムである場合にはアルカリ金属水酸化物の希薄水溶液が好適である。以上の如くして本発明の部分蒸着化粧シートの基本形態が完成するが、前記の好ましい実施態様で述べた、粘着剤、接着剤、セパレーター、保護フイルム、保護塗料、エンボス、模様印刷等はいずれも従来技術をそのまま使用することが出来る。」 5.申立理由についての判断 (1)理由1(特許法第29条第2項)について ア 本件発明1について 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「基材1」、「全面べ夕着色層4」、「全面べ夕光輝性顔料層3」は、本件発明1の「基材」、「第一全面ベタ着色層」、「全面ベタ光輝性顔料層」にそれぞれ相当する。 また、甲1発明の「化粧材」は、「全面べ夕光輝性顔料層3」を含むから、本件発明1の「光輝性化粧シート」に相当する。 さらに、本件特許明細書【0016】の記載によれば、本件発明1の「第二全面ベタ着色層」は光輝性化粧シートに絵柄による意匠性を付与するためのもので、その絵柄に「抽象柄」を含むものであるから、甲1発明の「抽象柄の絵柄層2」は、本件発明1の「第二全面ベタ着色層」に相当する。 そうすると、両者は少なくとも以下の点で相違し、その余は一致する。 <相違点1> 本件発明1では、第二全面ベタ着色層の乾燥後の塗布量で0.5?2g/m^(2)であるのに対して、甲1発明では、第二全面ベタ着色層(抽象柄の絵柄層2)の乾燥後の塗布量が不明である点。 上記相違点1を検討する。 甲1の【0004】には、「本発明は、この問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、光輝性顔料を全面ベタ印刷で設け、またその他の絵柄層や樹脂層を設けて製造時のスジ、ムラ、抜け等を生じない安定した光沢感、奥行き感を出すことができる化粧材を提供することにある。」とあり、その課題を解決するために、甲1発明では、全面べ夕光輝性顔料層の顔料の粒径や塗布量を限定するものである。そうすると、甲1に接した当業者にとって、甲1発明について、全面べ夕光輝性顔料層と異なる、第二全面ベタ着色層(抽象柄の絵柄層2)の塗布量を調整しようとすることの動機は生じ得ないし、そのようにすることには、全面べ夕光輝性顔料層の顔料の粒径や塗布量を限定することによって課題を解決していることに影響を与えるから、阻害要因が認められる。よって、甲1発明について、上記相違点1に係る本件発明1の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得ることではない。 また、甲2?甲7には、「第二全面ベタ着色層の乾燥後の塗布量で0.5?2g/m^(2)である」点は、記載されていないし、その点を示唆する記載もない。 そして、本件発明1は、上記相違点1に係る構成を有することにより、「全面ベタ光輝性顔料層を安定して製造することが可能となり、ギラギラしすぎ、光輝性顔料の白っぽさが生じない安定した光沢感、奥行き感を有する光輝性化粧シートを提供することが可能となった」(本件特許明細書【0008】及び【0024】)という作用効果を奏するものである。 よって、本件発明1は、甲1発明及び周知技術(甲2?甲7)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明及び周知技術(甲2?甲7)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1及び2は、特許法第29条第2項の規定に違反するものではなく、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。 (2) 理由2(特許法第36条第6項第1号違反)について ア 本件発明1及び2は、「製造時のスジ、ムラ、抜け等を生じない、全面ベタ光輝性顔料層がギラギラしすぎ、光輝性顔料の白っぽさが生じない安定した光沢感、奥行き感を出すことができる光輝性化粧シートを提供すること」(本件特許明細書【0005】)を課題とするものである。 請求項1には、上記課題を解決するために、「少なくとも下側から基材、第一全面ベタ着色層、全面ベタ光輝性顔料層、第二全面ベタ着色層をこの順に有する化粧シートであって、」及び「前記第二全面ベタ着色層の乾燥後の塗布量で0.5?2g/m^(2)であること」を特定するものである。 イ これらの事項に関し、本件特許明細書には、以下の記載がある。 「【0011】 以下に本発明の光輝性化粧シートを図面に基づき詳細に説明する。図1から図4に本発明の光輝性化粧シートの一実施例の断面の構造を示す。基材1、第三全面ベタ着色層5、第一全面ベタ着色層2、全面ベタ光輝性顔料層3、第二全面ベタ着色層4、接着剤層6、透明熱可塑性樹脂層7、などからなり、基材1の裏面にこの光輝性化粧シートを貼り合わせるのを好適なものとするためのプライマー層(図に指示無し)を設けても良い。」 「【0015】 ・・・基材1は、光輝性化粧シートを貼り合わせる基板などの表面の色のばらつきや欠陥等を隠蔽するために、隠蔽性の不透明に着色されたものが用いられる場合が多いが、基板の表面の質感を活かすために、透明乃至半透明のものが用いられる場合もある。」 「【0016】 ・・・特に、第二全面ベタ着色層4は、全面ベタ光輝性顔料層3がギラギラしすぎ、光輝性顔料の白っぽさが生じることが無いように乾燥後の塗布量で0.5?2g/m^(2)であることが望ましい。」 「【実施例1】 【0021】 基材1として押出法にて製造した厚さ70μmの着色ホモポリプロピレン系樹脂シートを用い、この表面に、第一全面ベタ着色層2として2液ウレタン樹脂インキを用いてグラビア印刷した。乾燥後の重量が1.9g/m^(2)であり、有機顔料0.7重量%、ウレタン樹脂99.3重量%であった。 【0022】 さらにこの表面に、全面ベタ光輝性顔料層3として2液ウレタン樹脂メジウム35.6重量%、脂肪族系イソシアネート硬化剤5.0重量%、光輝性顔料(平均粒径30μm)を59.3重量%添加したインキを用いて版深さ38から39μmのヘリオグラッショ法により作製した150線(25.4mmあたり150線)のベタ版により乾燥後の塗布量を1.8g/m^(2)となるように印刷した。 【0023】 次に、第二全面ベタ着色層4として2液ウレタン樹脂インキを用いてグラビア印刷した。乾燥後の重量が0.5g/m^(2)であり、有機顔料0.7重量%、ウレタン樹脂99.3重量%であった。 【0024】 さらにその表面に、接着剤層6として2液硬化型ポリエステルウレタン系接着剤(乾燥後の塗布量5.5g/m^(2))を介して、透明熱可塑性樹脂層7として厚さ100μmの透明2軸延伸ポリエステル樹脂シート(140g/m^(2))をドライラミネートして、本発明の光輝性化粧シートを得た。得られた光輝性化粧シートの外観はシート全面に安定した光輝性を有するものとなり、スジ、ムラ、抜けのないものとなった。」 「【0025】 <比較例1> 第二全面ベタ着色層4を、乾燥後の塗布量を4g/m^(2)となるようにして塗布した以外は実施例1と同様にして光輝性化粧シートを得た。得られた光輝性化粧シートは光輝性が弱く、外観上良くないものとなった。」 「【0026】 <比較例2> 第二全面ベタ着色層4を、乾燥後の塗布量を0.1g/m^(2)となるようにして塗布した以外は実施例1と同様にして光輝性化粧シートを得た。得られた光輝性化粧シートは光輝性が強すぎギラギラし、白っぽくなり、外観上良くないものとなった。」 ウ 上記記載によれば、基材1には、「光輝性化粧シートを貼り合わせる基板などの表面の色のばらつきや欠陥等を隠蔽するために、隠蔽性の不透明に着色されたものが用いられる場合」があるとされることから、基板1を下にして、光輝性化粧シートを基板に貼り合わせるものと理解できる。その際、人から見て、光輝性化粧シートの全面ベタ光輝性顔料層3の上側に、グラビア印刷された第二全面ベタ着色層4が位置することとなるが、その塗布量が増え厚みが大きくなれば、全面ベタ光輝性顔料層3で反射されて人の目に届く光が減ることが明らかである。 このような作用機序を踏まえて、実施例1及び比較例1、2をみてみると、全面ベタ光輝性顔料層3の上面の第二全面ベタ着色層4が、薄い、すなわち塗布量が少ない0.1g/m^(2)(比較例2)では、光輝性が強すぎギラギラし白っぽくなり、それよりも塗布量を増やした0.5g/m^(2)(実施例1)では、シート全面に安定した光輝性を有するものとなり、さらに増やして4g/m^(2)(比較例1)では、光輝性が弱くなってしまうのであるから、第二全面ベタ着色層4の塗布量についての「ギラギラしすぎ、光輝性顔料の白っぽさが生じない安定した光沢感、奥行き感を出すことができる」との課題の解決のためには、少なくとも「0.5g/m^(2)」以上であればよいことが明らかである。そして、この塗布量4g/m^(2)まで増やすと光輝性が弱くなってしまうのであるが、その半分の塗布量「2g/m^(2)」程度であれば光輝性は十分保たれてるものと、当業者であれば認識できるものであるといえる。 よって、 「少なくとも下側から基材、第一全面ベタ着色層、全面ベタ光輝性顔料層、第二全面ベタ着色層をこの順に有する化粧シート」であって、「第二全面ベタ着色層の乾燥後の塗布量で0.5?2g/m^(2)」との事項を備える本件発明1及び2は、本件発明1及び2の課題を解決し得ると当業者が認識できるものであるといえ、発明の詳細な説明に記載された発明である。 エ 小括 以上のとおり、本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。したがって、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第113条第4号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。 6.むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1及び2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2018-12-18 |
出願番号 | 特願2014-80882(P2014-80882) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
Y
(B32B)
P 1 651・ 121- Y (B32B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 斎藤 克也 |
特許庁審判長 |
井上 茂夫 |
特許庁審判官 |
蓮井 雅之 千壽 哲郎 |
登録日 | 2018-03-30 |
登録番号 | 特許第6311419号(P6311419) |
権利者 | 凸版印刷株式会社 |
発明の名称 | 光輝性化粧シート |