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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B60R
審判 全部申し立て 2項進歩性  B60R
審判 全部申し立て 特17条の2、3項新規事項追加の補正  B60R
管理番号 1347709
異議申立番号 異議2018-700715  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-09-05 
確定日 2019-01-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第6289537号発明「車両用遠隔始動装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6289537号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第6289537号の請求項1に係る特許についての出願は、平成23年12月12日に出願した特願2011-271425号の一部を平成28年5月30日に新たな特許出願としたものであって、平成30年2月16日に特許権の設定登録がされ、同年3月7日に特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1に係る特許に対し、平成30年9月5日に、特許異議申立人近藤玲子(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされたものである。

第2.本件発明
特許第6289537号の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
制御装置が、該制御装置に対応する携帯機との間でエンジン始動のための無線通信を行った場合、前記制御装置が搭載された車両のエンジンの始動を許可するエンジン始動システムに適用される車両用遠隔始動装置であって、
前記制御装置及び前記携帯機の間で行われる無線通信を中継するリモートコントローラ及び車載機を備え、
前記リモートコントローラは、操作スイッチを備え、更には、前記携帯機及び前記車載機と無線通信可能に構成され、前記操作スイッチが操作されると第1の信号を前記車載機に無線送信するように構成され、
前記車載機は、前記リモートコントローラ及び前記制御装置と無線通信可能に構成にされ、更には、前記制御装置に車両内配線を通じて有線方式で信号入力可能な構成にされ、 前記車載機は、前記リモートコントローラから前記第1の信号を無線方式で受信すると、前記車両内の運転者によって操作可能なエンジン始動用のプッシュスイッチが操作されたことを示す信号と等価な信号を、車両内配線を通じて有線方式で第2の信号として前記制御装置に入力し、前記第2の信号に応答して前記制御装置から無線送信される第3の信号を無線方式で受信し、前記第3の信号を前記リモートコントローラへ無線送信し、
前記リモートコントローラは、前記車載機から前記第3の信号を無線方式で受信すると、前記第3の信号を前記携帯機へ無線送信し、前記第3の信号に応答して前記携帯機から無線送信される、暗証コードを含む第4の信号を無線方式で受信し、受信した前記第4の信号を前記車載機へ無線送信し、
前記車載機は、前記リモートコントローラから前記第4の信号を無線方式で受信すると、前記第4の信号を前記制御装置に無線送信し、
前記制御装置は、無線方式で受信した前記暗証コードを含む前記第4の信号と車両内配線を通じて有線方式で入力される車両内のブレーキペダルが踏み込まれていることを示すブレーキ信号とを前記エンジンの始動の許可判断に用いており、
前記車載機は、前記エンジンの始動が許可されるように、前記第4の信号の前記制御装置への無線送信に関連して、前記車両内のブレーキペダルが踏み込まれていることを示すブレーキ信号を車両内配線を通じて有線方式で前記制御装置に入力すると共に、前記プッシュスイッチが操作されたことを示す信号と等価な信号を有線方式で前記制御装置に入力すること
を特徴とする車両用遠隔始動装置。」

第3.申立理由の概要
申立人は、証拠として、次の甲第1?13号証を提出し、以下の申立理由1?4により、本件発明に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

甲第1号証:登録実用新案第3134699号公報
甲第2号証:米国特許出願公開第2011/0291797号明細書
甲第3号証:特開2011-27002号公報
甲第4号証:株式会社ユピテル製のテレコントロールエンジンスターター
(製品名:VE-Eps58)の取扱説明書、写し
甲第5号証:株式会社ユピテル製のテレコントロールエンジンスターター
(製品名:VE-Eps58)の取付・接続説明書の表紙及
び基本接続図の掲載頁抜粋、写し
甲第6号証:ユピテル テレコントロールエンジンスターター
車種別専用 ハーネス適応表 2011年11月版、写し
甲第7号証:製品データベースの製品検索結果、[online]、株式会社ユ
ピテル、[平成30年8月22日検索]、インターネット:
URL:http://www2.yupiteru.co.jp/manual/manual.html?cd
=VE-Eps58&_ga=2.238071881.837400840.1534911841
-375823856.1534911841、写し
甲第8号証:本件特許出願の審査段階における平成29年12月4日
に提出された意見書
甲第9号証:本件特許出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、
及び図面
甲第10号証:本件特許出願の審査段階における平成28年6月28日
に提出された手続補正書
甲第11号証:藤井信生監修、「ハンディブック 電子」、第1版第10
刷、オーム社、平成15年1月20日、表紙、
p.409及び奥付、写し
甲第12号証:本件特許出願の審査段階における平成29年8月22日
に提出された手続補正書
甲第13号証:新村出版、「広辞苑」、第6版、岩波書店、
2008年1月11日発行、表紙、p.652、
及び奥付、写し

1.申立理由1 特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
本件発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項及び周知技術(甲第3?7号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

2.申立理由2 特許法第17条の2第3項(同法第113条第1号)
平成28年6月28日付け及び平成29年8月22日付けでした手続補正は、新規事項を追加する補正に該当するものであるから、本件発明に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない手続補正をした特許出願に対してされたものである。

3.申立理由3 特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)
本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件発明に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

4.申立理由4 特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号)
本件発明は、明確でないから、本件発明に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

第4.各甲号証の記載事項等
1.甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明
ア.甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。以下同様。
「【請求項1】
認証コードが格納された電子チップを備えたキー手段と、このキー手段から前記認証コードを読み込み解読してエンジン始動の可否を決定するイモビライザ本体を有するイモビライザシステムにおいて、
前記キー手段が装着され、イモビライザ本体からのイモビ信号を受信して、前記電子チップの認証コードを伴うイモビ信号を送信する手段を有する遠隔始動操作用リモコンを備え、
前記イモビライザ本体には前記遠隔始動操作用リモコンへのイモビ信号送信手段と、前記遠隔始動操作用リモコンから送信された認証コードを伴うイモビ信号を前記イモビライザ本体に出力するイモビ信号受信手段を設け、
遠隔リモコン操作によりイモビライザ処理を行わせるようにしたことを特徴とするイモビライザシステム。」

「【請求項7】
チャレンジコード、及びレスポンスコードに係るキー配線に接続した装置本体と、イモビライザ処理用認証コードが格納された電子チップを備えたキー手段が装着された遠隔始動操作用リモコンからなるイモビライザシステムであって、
前記遠隔始動操作用リモコンによる遠隔始動時にECU(エレクトロニックコントロールユニット)から出力されたチャレンジコードを入力し遠距離無線信号に変調して送信する手段と、前記遠距離無線信号を受信した前記遠隔始動操作用リモコンから送信された遠距離無線信号を復調して得られるレスポンスコードをECUに出力する手段とを装置本体に備えるとともに、
装置本体から送信された遠距離無線信号を復調して得られるチャレンジコードを近距離無線信号に変調して送信する手段と、前記近距離無線信号を受信した前記電子チップから送信された近距離無線信号を復調して得られるレスポンスコードを遠距離無線信号に変調して装置本体に送信する手段とを前記遠隔始動操作用リモコン装置に備えることを特徴とするイモビライザシステム。」

「【技術分野】
【0001】
本考案は、停止状態にあるイモビライザ搭載車両のエンジンの遠隔始動ができるようにしたイモビライザシステム、遠隔始動操作用リモコン、及びイモビ信号アダプタに関する。」

「【考案が解決しようとする課題】
【0012】
本考案は、上記従来の問題点に着目し、車両内部にサブキー等を保持することなく、イモビライザ装置を搭載した車両の遠隔始動を可能とするイモビライザシステム、遠隔始動操作用リモコン、及びイモビ信号アダプタを提供する。」

「【考案を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本考案に係るイモビライザシステムおよびイモビ信号アダプタ、及び遠隔始動用リモコンの最良の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0022】
実施形態に係るイモビライザシステムはイモビ信号無線伝送装置本体10(以下、装置本体10と書く。)と遠隔始動操作用リモコン54(以下、リモコン54と書く。)とから構成されている。
【0023】
装置本体10の配置構成を図1に示す。実施形態が適用される車両にはエレクトロニックコントロールユニットECU(イモビ解読ECU14、エンジンECU18)が備えられ、キーシリンダ12に差し込まれたキー操作により、オンオフ動作されるイグニッションスイッチIG1、IG2、アクセサリースイッチACC、スタータスイッチST1、ST2、電源スイッチBの各端子が備えられている。
【0024】
またこれらの端子から延びるキーシリンダ配線16は、イモビ解読ECU14を介してエンジンECU18に接続されている。ここでキーシリンダ配線16はイグニッション(IG1、IG2)、アクセサリ(ACC)、スタータ(ST1、ST2)、チャレンジコード(CC)、レファレンスコード(RC)に係る信号を送信する信号線からなる、IG1信号線16a、IG2信号線16b、ACC信号線16c、ST1信号線16d、ST2信号線16e、CC信号線16f、RC信号線16g、及び電源供給線16hを備えている。
【0025】
また前記キーシリンダ12にはイモビ解読ECU14から発せられた一定のルールの従ったチャレンジコードを近距離無線信号により送信し、キー側から送信されたレスポンスコードを近距離無線信号により受信する近距離無線送受信回路20が配設され、前記CC端子、及び前記RC端子と接続されている。一方、キー内部の電子チップ22においては制御回路24が配設され、前記チャレンジコードを入力して前記チャレンジコードにキー固有のIDコードを掛け合わせることにより前記レスポンスコードを出力する。また前記制御回路24には前記IDコードが記憶されたメモリ26と、前記チャレンジコードを近距離無線信号により受信したあとに前記レスポンスコードを近距離無線信号により送信する近距離無線送受信回路28、及び前記チャレンジコードに係る近距離無線信号により励磁され、前記制御回路に電力を供給する励磁コイル30が接続されている。ここで、キーの内部にある電子チップ22は非常に低消費電力であり、受信した無線によるコイルの励磁電力だけで動作できる回路である。これによりイモビ解読ECU14からのチャレンジコードの送信・受信と、キーからのレスポンスコードの送信・受信が近距離無線信号を介して行うことができる。
【0026】
キーをキーシリンダ12に挿入した場合のイモビライザ処理は以下の手順で行われる。 まず、キーをキーシリンダ12に挿入し、キーをOFF→ACC→IGと操作すると、イモビ解読ECU14が一定のルールに従ったチャレンジコードをキーシリンダの近距離無線送受信回路20にチャレンジコード信号線及びCC端子を介して送信し、前記チャレンジコードが近距離無線送受信回路20において近距離無線信号に変調され、送信される。キーの内部にある励磁コイル30が前記近距離無線信号を受信すると起電力が発生し、これを電源として制御回路24が起動する。一方、キーの内部にある近距離無線送受信回路28が前記近距離無線信号を受信するとこれをチャレンジコードに復調する。前記制御回路24は近距離無線送受信回路28で復調して得られたチャレンジコードが入力されると、メモリ26から前記IDコードを読み出し、これをチャレンジコードに掛け合わせてレスポンスコードを出力する。レスポンスコードはキー内部の近距離無線送受信回路28で受信され、近距離無線信号に変調され送信される。つぎに前記レスポンスコードに係る近距離無線信号はキーシリンダの近距離無線送受信回路20で受信しレスポンスコードに復調され、復調して得られたレスポンスコードはイモビ解読ECU14にRC端子、及びRC信号線16gを介して入力される。入力されたレスポンスコードを解読し、イモビ解読ECU14が期待していたデータであればイモビライザ処理が完了し、前記データをエンジンECU18に転送する。
【0027】
ここまでの一連の動作は、キーを回した一瞬の間に行われ、キーシリンダのキーがセルモータ起動の位置(ST1、ST2)にしたときまでに、エンジンECU18は前記データを受け取っているので、燃料タンクやセルモータ、プラグ類を動作させ、エンジンが始動できる。」

「【0044】
本考案に係るイモビライザシステムにおけるイモビライザ処理を伴う遠隔始動は以下の手順で行われる。
まず、キーをリモコン54のキーケース66に装着し、スイッチ58をオンにする。このとき、キーはマスターキーでも、サブキーでもよい。すると遠隔始動指示送信回路56から遠隔始動指示信号が出力され、遠距離無線送受信回路60に入力され遠距離無線信号に変調され装置本体10側にアンテナ70を介して送信される。送信された遠距離無線信号は本体のアンテナ34を介して遠距離無線送受信回路40で受信され、復調して得られた遠隔始動指示信号を制御部48に出力する。
【0045】
遠隔始動指示信号が入力された制御部48は、シフトレバーがP/Nの位置にあること、サイドブレーキが制動状態であること、車両が停止していること、エンジンが起動していないこと、を条件として遠隔始動可能と判定し、作動電源供給リレースイッチ36a、36b、36cと切替リレースイッチ38a、38bを同時に駆動させる。このとき作動電源がIG1端子、IG2端子、ACC端子に供給され、これを受けてイモビ解読ECU14からはチャレンジコードが出力される。一方、切替リレースイッチ38aはCC-OUT側から遠距離無線送受信回路40側へ、切替リレースイッチ38bはRC-IN端子側から遠距離無線送受信回路40側へそれぞれ制御部からの指令により接点が切り替わっている。これにより、イモビ解読ECU14より出力されたチャレンジコードは、車両側のキーシリンダ12には行かず、信号線16fを介して装置本体10に引き込まれ、またレファレンスコードもキーシリンダからではなく装置本体10が受信したレファレンスコードが信号線16gを介してイモビ解読ECU14が引き込まれる。これによりイモビ解読ECU14出力されたチャレンジコードは接点切替により、装置本体10に引き込まれ、切替リレースイッチ38aを経由して遠距離無線送受信回路40により遠距離無線信号に変調され、アンテナ34を介して送信される。
【0046】
そして前記リモコン54において、装置本体10からチャレンジコードに係る遠距離無線信号がアンテナ70を介して遠距離無線送受信回路60で受信して復調され、遠距離無線送受信回路60は復調して得られたチャレンジコードを近距離無線送受信回路62に出力し、近距離無線送受信回路62において入力されたチャレンジコードは近距離無線信号に変調され、前記近距離無線信号が励磁コイル64を介してキー内部にある電子チップ22を励磁する。すると電子チップ22からレスポンスコードを載せた近距離無線信号が送信され、近距離無線送受信回路62は励磁コイル64を介して前記近距離無線信号を受信して復調し、復調されたレスポンスコードは遠距離無線送受信回路60に出力され、遠距離無線送受信回路60に入力され遠距離無線信号に変調されアンテナ70を介して、装置本体10側に送信される。
【0047】
送信された遠距離無線信号は本体の遠距離無線送受信回路40がアンテナ34を介して受信して復調し、復調して得られたレスポンスコードは、切替リレースイッチ38bを経由してRC信号線16gを通りイモビ解読ECU14に到達する。イモビ解読ECU14は入力されたレスポンスコードを読み込み、解読して、イモビ解読ECU14が期待していたデータであれば、ID照合をパスし、イモビライザ処理が完了したので、前記データをエンジンECU18に転送する。これによりエンジンECU18は燃料ポンプやセルモータ、プラグ類を動作させエンジン始動できる状態となる。このタイミング(T1)を見計らって制御部48がトランジスタアレイ46を介してスタータST1、ST2の作動電源供給リレースイッチ36d、36eを駆動してスタータST1、ST2に給電を行い、エンジンを始動させる。この段階でIG1、IG2、ACCの信号線エンジン始動によりキーシリンダ12側から給電されている。そしてエンジン始動した時期(T2)を見計らって、作動電源供給リレースイッチ36、切替リレースイッチ38の駆動を全て停止してスタータST1、ST2に給電を停止することにより、エンジンのイモビライザ処理を伴う遠隔始動手順は終了する。これによりキーをキーシリンダ12に挿入することなく、キーを装着した前記リモコン54による操作で遠隔始動が行えるのである。」

甲第1号証には、以下の図1が示されている。


イ.上記記載事項から次のことが認定できる。
イ-1.請求項7に記載されたイモビライザシステムは、段落【0023】?段落【0026】に記載されたイモビライザ装置を前提構成としたものであるところ、請求項1の「認証コードが格納された電子チップを備えたキー手段と、このキー手段から前記認証コードを読み込み解読してエンジン始動の可否を決定するイモビライザ本体を有するイモビライザシステムにおいて、」との記載及び段落【0012】の「イモビライザ装置を搭載した車両の遠隔始動を可能とするイモビライザシステム・・・を提供する。」との記載を併せみると、認証コードが格納された電子チップ22を備えたキー手段と、このキー手段から前記認証コードを読み込み解読してエンジン始動の可否を決定するECU(イモビ解読ECU14、エンジンECU18)を有するイモビライザ装置を搭載した車両の遠隔始動を可能とするイモビライザシステムであるといえること。
また、請求項7の「チャレンジコード、及びレスポンスコードに係るキー配線に接続した装置本体と、イモビライザ処理用認証コードが格納された電子チップを備えたキー手段が装着された遠隔始動操作用リモコンからなるイモビライザシステム」との記載から、該「イモビライザ装置を搭載した車両の遠隔始動を可能とするイモビライザシステム」は「チャレンジコード、及びレスポンスコードに係るキー配線に接続した装置本体10と、イモビライザ処理用認証コードが格納された電子チップ22を備えた前記キー手段が装着された遠隔始動操作用リモコン54」を含むこと。

イ-2.請求項7、段落【0025】及び段落【0044】?段落【0047】の記載内容並びに【図1】の図示内容によれば、イモビライザシステムにおけるイモビライザ処理を伴う遠隔始動は以下の手順で行われること。
イモビライザシステムの動作は、遠隔始動操作用リモコン54のスイッチ58がオンされると遠隔始動指示信号が遠距離無線信号に変調されて装置本体10側に送信され、前記装置本体10は、前記遠隔始動操作用リモコン54から送信された遠距離無線信号を受信すると、サイドブレーキが制動状態であることを条件として遠隔始動可能と判定し、このとき作動電源がイモビ解読ECU14のIG1端子、IG2端子、ACC端子に供給され、これを受けて前記イモビ解読ECU14からはチャレンジコードが出力され、前記イモビ解読ECU14から出力された前記チャレンジコードは前記装置本体10に引き込まれ、前記チャレンジコードを遠距離無線信号に変調して前記遠隔始動操作用リモコン54に送信し、前記遠隔始動操作用リモコン54は、前記装置本体10から前記チャレンジコードに係る遠距離無線信号を受信すると、前記チャレンジコードに係る遠距離無線信号を近距離無線信号に変調し、変調された前記近距離無線信号が励磁コイル64を介してキー内部にある電子チップ22を励磁すると前記電子チップ22から前記チャレンジコードにキー固有の認証コードを掛け合わせることによりレスポンスコードを載せた近距離無線信号が送信され、前記レスポンスコードを載せた近距離無線信号を遠距離無線信号に変調して前記装置本体10側に送信し、前記装置本体10は、前記遠隔始動操作用リモコン54から前記レスポンスコードを載せた遠距離無線信号を受信すると、遠距離無線信号を前記レスポンスコードに復調して前記イモビ解読ECU14に送信し、前記イモビ解読ECU14は、入力された前記レスポンスコードを読み込み、解読して、前記イモビ解読ECU14が期待していたデータであれば、前記データをエンジンECU18に転送する。

ウ.甲第1号証に記載された発明
上記記載事項及び認定事項から、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「認証コードが格納された電子チップ22を備えたキー手段と、このキー手段から前記認証コードを読み込み解読してエンジン始動の可否を決定するECU(イモビ解読ECU14、エンジンECU18)を有するイモビライザ装置を搭載した車両の遠隔始動を可能とするイモビライザシステムであって、
イモビライザシステムは、チャレンジコード、及びレスポンスコードに係るキー配線に接続した装置本体10と、イモビライザ処理用認証コードが格納された電子チップ22を備えた前記キー手段が装着された遠隔始動操作用リモコン54を含み、
前記遠隔始動操作用リモコン54による遠隔始動時に前記ECUから出力されたチャレンジコードを入力し遠距離無線信号に変調して送信する手段と、前記遠距離無線信号を受信した前記遠隔始動操作用リモコン54から送信された遠距離無線信号を復調して得られるレスポンスコードを前記ECUに出力する手段とを前記装置本体10に備えるとともに、
前記装置本体10から送信された遠距離無線信号を復調して得られるチャレンジコードを近距離無線信号に変調して送信する手段と、前記近距離無線信号を受信した前記電子チップ22から送信された近距離無線信号を復調して得られるレスポンスコードを遠距離無線信号に変調して装置本体10に送信する手段とを前記遠隔始動操作用リモコン54に備え、
前記遠隔始動操作用リモコン54のスイッチ58がオンされると遠隔始動指示信号が遠距離無線信号に変調されて前記装置本体10側に送信され、
前記装置本体10は、前記遠隔始動操作用リモコン54から送信された遠距離無線信号を受信すると、サイドブレーキが制動状態であることを条件として遠隔始動可能と判定し、このとき作動電源がイモビ解読ECU14のIG1端子、IG2端子、ACC端子に供給され、これを受けて前記イモビ解読ECU14からはチャレンジコードが出力され、イモビ解読ECU14から出力された前記チャレンジコードは前記装置本体10に引き込まれ、前記チャレンジコードを遠距離無線信号に変調して前記遠隔始動操作用リモコン54に送信し、
前記遠隔始動操作用リモコン54は、前記装置本体10から前記チャレンジコードに係る遠距離無線信号を受信すると、前記チャレンジコードに係る遠距離無線信号を近距離無線信号に変調し、変調された前記近距離無線信号が励磁コイル64を介してキー内部にある電子チップ22を励磁すると前記電子チップ22から前記チャレンジコードにキー固有の認証コードを掛け合わせることによりレスポンスコードを載せた近距離無線信号が送信され、前記レスポンスコードを載せた近距離無線信号を遠距離無線信号に変調して前記装置本体10側に送信し、
前記装置本体10は、前記遠隔始動操作用リモコン54から前記レスポンスコードを載せた遠距離無線信号を受信すると、遠距離無線信号を前記レスポンスコードに復調して前記イモビ解読ECU14に送信し、
前記イモビ解読ECU14は、入力された前記レスポンスコードを読み込み、解読して、前記イモビ解読ECU14が期待していたデータであれば、前記データをエンジンECU18に転送する
イモビライザ装置を搭載した車両の遠隔始動を可能とするイモビライザシステム。」

2.甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。なお、申立人が提出した甲第2号証の訳文を参考にした訳文を()内に示す。
「[0024]Referring to FIG. 1, a bypass system in accordance with an illustrative embodiment of the present invention will be described. The bypass module, generally referred to using the reference numeral 2, which serves to interface a remote vehicle starter 4 to a vehicle immobilizer 8 of a vehicle 10 is disclosed within the context of a remote vehicle ignition system 12. As illustrated, bypass module 2 forms part of a remote vehicle ignition system 12 comprising a user 14, a user operated remote transmitter 16 comprising a transmitter antenna 18 for signalling an ignition command over radio frequency (RF) signal 20 to a remote vehicle starter 4 comprising a receiver antenna 22, a vehicle immobilizer 8, and a vehicle computer system 24. 」
(図1を参照しつつ、本発明の例示的な実施形態に係るバイパスシステムを説明する。バイパスモジュールは、参照番号2を用いて一般に参照され、遠隔車両イグニッションシステム12と関連して示されている、遠隔車両始動装置4と車両用イモビライザ8のインターフェースとして機能する。図示のように、バイパスモジュール2は、遠隔車両イグニッションシステム12の一部を構成するものであり、遠隔車両イグニッションシステム12は、ユーザ14、ユーザにより操作される遠隔送信機16、車両用イモビライザ8、及び車両用コンピュータシステム24を備え、遠隔送信機16は、受信アンテナ22を備える遠隔車両始動装置4に無線周波数(RF)信号20によってイグニッションコマンドを送信する送信アンテナ18を備える。)

「[0033]Now with referral to FIGS. 4A, 4B, and 4C, in addition to FIG. 2 and FIG. 1, the bypass module 2 may employ various types of communication interfaces 45 with the vehicle immobilizer 8 depending on the type of vehicle in which the bypass module 2 is installed. These communication interfaces 45 facilitate the adaptability of the bypass module 2 to various vehicle types. In one embodiment shown in FIG. 4A, a first interface 46 involves communication using RF transmitted by an antenna 36, a coil (inductor), or other types of circuits permitting RF communication 46. In another embodiment shown in FIG. 4B, a second interface involves communication by coupling 48 directly in series or in parallel on the vehicle's RF communication wires or antennas 44 depending on the vehicle's security system. A third interface shown in FIG. 4C, involves digital communication 50, in which a communication link with a vehicle's data lines is established to permit direct communication with the immobilizer 8 and the main computer of the vehicle 24. 」
(ここで、図2及び図1に加えて、図4A、4B、及び図4Cを参照すると、前記バイパスモジュール2は、前記バイパスモジュール2が搭載される車両の種類に応じて、車両用イモビライザ8との間において、様々な種類の通信インターフェース45を用いることができる。これらの通信インタフェース45は、前記バイパスモジュール2を様々な車種に適合させることを容易にする。図4Aに示す一つの実施形態において、第1のインタフェース46は、アンテナ36、コイル(インダクタ)、またはRF通信46を可能にする他の種類の回路によって送信されるRFを用いた通信を含む。図4Bに示す他の一つの実施形態において、第2のインタフェースは、前記車両のセキュリティシステムに応じて、前記車両のRF通信線またはアンテナ44に直列または並列された結合部48による通信を含む。図4Cに示す第3のインターフェースは、デジタル通信50を含み、このデジタル通信50においては、前記車両用イモビライザ8及び前記車両24の前記メインコンピュータとの直接通信を可能にするための、車両のデータラインとの通信リンクが確立されている。)

上記記載事項から、甲第2号証には、次の事項(以下「甲第2号証に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「遠隔送信機16、遠隔車両始動装置4、バイパスモジュール2、車両用イモビライザ8、及び車両用コンピュータシステム24を備えた遠隔車両イグニッションシステム12であって、前記バイパスモジュール2と前記車両用イモビライザ8との間の通信インターフェース45として、アンテナ36、コイル(インダクタ)等を用いた無線通信の適用が含まれること。」

3.周知技術(甲第3?7号証)
甲第3号証の特に段落【0021】及び段落【0022】を参酌すると、携帯機8、MPU15を有する車載器9、及び車両側純正キーフリー制御部3を備える車両用遠隔式始動装置において、MPU15が、携帯機8からの認証情報に基づいて認証処理を行った後に、エンジン始動スイッチ2から与えられる信号と同様の信号を車両側純正キーフリー制御部3に有線出力し、前記車両側純正キーフリー制御部3がエンジンを始動させることが記載されている。
甲第6号証及び甲第7号証は、甲第4号証及び甲第5号証に記載された製品(VE-Eps58)が、本件特許出願の原出願の出願日(平成23年12月12日)前に公知となっていることを明らかにするための証拠であるところ、甲第4号証及び甲第5号証を併せみると、テレコントロールエンジンスターター(VE-Eps58)によるエンジンの遠隔始動時に、テレコントロールエンジンスターターからの始動信号を受けたジャンクションユニットがブレーキランプを点灯するための信号を有線出力することが記載されている。

上記甲第3?7号証から、車両用遠隔式始動装置において、リモートコントローラからの始動操作の信号を受信した車載器が、エンジンの始動スイッチやブレーキ操作の動きと等価な信号を車両に有線出力してエンジンの始動やブレーキ操作をすることが周知技術であるといえる。

第5.当審の判断
1.申立理由1について
(1)対比
本件発明と甲1発明とを対比する。
ア.後者の「認証コードが格納された電子チップ22を備えたキー手段」は前者の「携帯機」に相当し、後者の「このキー手段から前記認証コードを読み込み解読してエンジン始動の可否を決定するECU(イモビ解読ECU14、エンジンECU18)」は前者の「制御装置」に相当する。また、甲第1号証の段落【0025】の「また前記キーシリンダ12にはイモビ解読ECU14から発せられた一定のルールの従ったチャレンジコードを近距離無線信号により送信し、キー側から送信されたレスポンスコードを近距離無線信号により受信する近距離無線送受信回路20が配設され」との記載によれば、後者の「イモビライザ装置」は、ECU(イモビ解読ECU14、エンジンECU18)に対応するキー手段との間でエンジン始動のための無線通信を行っているといえるから、後者の「認証コードが格納された電子チップ22を備えたキー手段と、このキー手段から前記認証コードを読み込み解読してエンジン始動の可否を決定するECU(イモビ解読ECU14、エンジンECU18)を有するイモビライザ装置」は前者の「制御装置が、該制御装置に対応する携帯機との間でエンジン始動のための無線通信を行った場合、前記制御装置が搭載された車両のエンジンの始動を許可するエンジン始動システム」に相当し、後者の「イモビライザ装置を搭載した車両の遠隔始動を可能とするイモビライザシステム」は前者の「エンジン始動システムに適用される車両用遠隔始動装置」に相当する。

イ.後者の「遠隔始動操作用リモコン54」及び「装置本体10」は、前者の「リモートコントローラ」及び「車載機」に相当するところ、後者の「前記遠隔始動操作用リモコン54による遠隔始動時に前記ECUから出力されたチャレンジコードを入力し遠距離無線信号に変調して送信する手段と、前記遠距離無線信号を受信した前記遠隔始動操作用リモコン54から送信された遠距離無線信号を復調して得られるレスポンスコードを前記ECUに出力する手段とを前記装置本体10に備える」との構成から、「装置本体10」と「遠隔始動操作用リモコン54」との間は、「遠距離無線信号」を用いて送受信するものであり、同じく後者の「前記装置本体10から送信された遠距離無線信号を復調して得られるチャレンジコードを近距離無線信号に変調して送信する手段と、前記近距離無線信号を受信した前記電子チップ22から送信された近距離無線信号を復調して得られるレスポンスコードを遠距離無線信号に変調して装置本体10に送信する手段とを前記遠隔始動操作用リモコン54に備える」との構成から、「遠隔始動操作用リモコン54」と「キー手段」との間は、「近距離無線信号」を用いて送受信するものといえるから、後者の「遠隔始動操作用リモコン54」は前者の「前記リモートコントローラは、」「更には、前記携帯機及び前記車載機と無線通信可能に構成され」との構成を充足するものであり、また、後者の「装置本体10」と、前者の「前記車載機は、前記リモートコントローラ及び前記制御装置と無線通信可能に構成にされ、更には、前記制御装置に車両内配線を通じて有線方式で信号入力可能な構成にされ」との構成とは、「前記車載機は、前記リモートコントローラと無線通信可能に構成にされ、更には、前記制御装置に車両内配線を通じて有線方式で信号入力可能な構成にされ」との構成の限度で共通する。そして、後者の「ECU」、「キー手段」、「遠隔始動操作用リモコン54」及び「装置本体10」の構成と、前者の「前記制御装置及び前記携帯機の間で行われる無線通信を中継するリモートコントローラ及び車載機を備え」との構成とは、「前記制御装置及び前記携帯機の間で行われる通信を中継するリモートコントローラ及び車載機を備え」との構成の限度で共通する。

ウ.後者の「スイッチ58」は前者の「操作スイッチ」に相当し、後者の「遠隔始動指示信号」は前者の「第1の信号」に相当するから、後者の「前記遠隔始動操作用リモコン54のスイッチ58がオンされると遠隔始動指示信号が遠距離無線信号に変調されて前記装置本体10側に送信され」との構成は前者の「前記リモートコントローラは、操作スイッチを備え、」「前記操作スイッチが操作されると第1の信号を前記車載機に無線送信する」との構成に相当する。

エ.後者の「前記装置本体10は、前記遠隔始動操作用リモコン54から送信された遠距離無線信号を受信する」との構成は前者の「前記車載機は、前記リモートコントローラから前記第1の信号を無線方式で受信する」との構成に相当し、後者の「チャレンジコード」は前者の「第3の信号」に相当し、後者の「前記装置本体10は、」「サイドブレーキが制動状態であることを条件として遠隔始動可能と判定し、このとき作動電源がイモビ解読ECU14のIG1端子、IG2端子、ACC端子に供給され、これを受けて前記イモビ解読ECU14からはチャレンジコードが出力され、イモビ解読ECU14が出力された前記チャレンジコードは前記装置本体10に引き込まれ、前記チャレンジコードを遠距離無線信号に変調して前記遠隔始動操作用リモコン54に送信し」との構成と、前者の「前記車載機は、」「前記車両内の運転者によって操作可能なエンジン始動用のプッシュスイッチが操作されたことを示す信号と等価な信号を、車両内配線を通じて有線方式で第2の信号として前記制御装置に入力し、前記第2の信号に応答して前記制御装置から無線送信される第3の信号を無線方式で受信し、前記第3の信号を前記リモートコントローラへ無線送信し」との構成とは、「前記車載機は、」「信号を、車両内配線を通じて有線方式で前記制御装置に入力し、前記信号に応答して前記制御装置から送信される第3の信号を受信し、前記第3の信号を前記リモートコントローラへ無線送信し」との構成の限度で共通する。

オ.後者の「レスポンスコード」は「チャレンジコードにキー固有の認証コードを掛け合わせることにより」「送信され」るものであるから、前者の「暗証コードを含む第4の信号」に相当し、後者の「前記遠隔始動操作用リモコン54は、前記装置本体10から前記チャレンジコードに係る遠距離無線信号を受信すると、前記チャレンジコードに係る遠距離無線信号を近距離無線信号に変調し、変調された前記近距離無線信号が励磁コイル64を介してキー内部にある電子チップ22を励磁すると前記電子チップ22から前記チャレンジコードにキー固有の前記認証コードを掛け合わせることによりレスポンスコードを載せた近距離無線信号が送信され、前記レスポンスコードを載せた近距離無線信号を遠距離無線信号に変調して前記装置本体10側に送信し」との構成は前者の「前記リモートコントローラは、前記車載機から前記第3の信号を無線方式で受信すると、前記第3の信号を前記携帯機へ無線送信し、前記第3の信号に応答して前記携帯機から無線送信される、暗証コードを含む第4の信号を無線方式で受信し、受信した前記第4の信号を前記車載機へ無線送信し」との構成に相当する。

カ.後者の「前記装置本体10は、前記遠隔始動操作用リモコン54から前記レスポンスコードを載せた遠距離無線信号を受信すると、遠距離無線信号を前記レスポンスコードに復調して前記イモビ解読ECU14に送信し」との構成と、前者の「前記車載機は、前記リモートコントローラから前記第4の信号を無線方式で受信すると、前記第4の信号を前記制御装置に無線送信し」との構成とは、「前記車載機は、前記リモートコントローラから前記第4の信号を無線方式で受信すると、前記第4の信号を前記制御装置に送信し」との構成の限度で共通する。

キ.後者の「前記イモビ解読ECU14は、入力された前記レスポンスコードを読み込み、解読して、前記イモビ解読ECU14が期待していたデータであれば、前記データをエンジンECU18に転送する」との構成と、前者の「前記制御装置は、無線方式で受信した前記暗証コードを含む前記第4の信号と車両内配線を通じて有線方式で入力される車両内のブレーキペダルが踏み込まれていることを示すブレーキ信号とを前記エンジンの始動の許可判断に用いており」との構成は、「前記制御装置は、受信した前記暗証コードを含む前記第4の信号を前記エンジンの始動の許可判断に用い」るとの構成の限度で共通する。

以上によれば、本件発明と甲1発明とは、
「制御装置が、該制御装置に対応する携帯機との間でエンジン始動のための無線通信を行った場合、前記制御装置が搭載された車両のエンジンの始動を許可するエンジン始動システムに適用される車両用遠隔始動装置であって、
前記制御装置及び前記携帯機の間で行われる通信を中継するリモートコントローラ及び車載機を備え、
前記リモートコントローラは、操作スイッチを備え、更には、前記携帯機及び前記車載機と無線通信可能に構成され、前記操作スイッチが操作されると第1の信号を前記車載機に無線送信するように構成され、
前記車載機は、前記リモートコントローラと無線通信可能に構成され、更には、前記制御装置に車両内配線を通じて有線方式で信号入力可能な構成にされ、
前記車載機は、前記リモートコントローラから前記第1の信号を無線方式で受信すると、信号を、車両内配線を通じて有線方式で前記制御装置に入力し、前記信号に応答して前記制御装置から送信される第3の信号を受信し、前記第3の信号を前記リモートコントローラへ無線送信し、
前記リモートコントローラは、前記車載機から前記第3の信号を無線方式で受信すると、前記第3の信号を前記携帯機へ無線送信し、前記第3の信号に応答して前記携帯機から無線送信される、暗証コードを含む第4の信号を無線方式で受信し、受信した前記第4の信号を前記車載機へ無線送信し、
前記車載機は、前記リモートコントローラから前記第4の信号を無線方式で受信すると、前記第4の信号を前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、受信した前記暗証コードを含む前記第4の信号を前記エンジンの始動の許可判断に用いる
車両用遠隔始動装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明は、「車載機」が、「前記制御装置と無線通信可能に構成にされ」、「前記制御装置から無線送信される第3の信号を無線方式で受信し」、「前記第4の信号を前記制御装置に無線送信し」、「前記制御装置は、無線方式で受信した前記暗証コードを含む前記第4の信号」を用いるものであり、「車載機」と「制御装置」との間の信号の受送信が、無線通信可能であり、「前記制御装置及び前記携帯機の間で行われる無線通信を中継するリモートコントローラ及び車載機を備え」るのに対し、
甲1発明は、「装置本体」と「遠隔始動操作用リモコン54」との間及び「遠隔始動操作用リモコン54」と「キー手段」との間の通信は無線方式で行うものであるが、「装置本体10」と「ECU」との間の通信は、無線方式で行うものではない点。

<相違点2>
本件発明の「車載機」は、「前記車両内の運転者によって操作可能なエンジン始動用のプッシュスイッチが操作されたことを示す信号と等価な信号を」、「第2の信号として前記制御装置に入力し、前記第2の信号に応答して前記制御装置から第3の信号を受信」すること、及び「前記エンジンの始動が許可されるように、前記第4の信号の前記制御装置への無線送信に関連して、前記車両内のブレーキペダルが踏み込まれていることを示すブレーキ信号を車両内配線を通じて有線方式で前記制御装置に入力すると共に、前記プッシュスイッチが操作されたことを示す信号と等価な信号を有線方式で前記制御装置に入力」しているのに対し、
甲1発明の「装置本体」は、かかる第2の信号としてイモビ解読ECU14に入力し、前記第2の信号に応答して前記イモビ解読ECU14からチャレンジコードを受信すること、及び、かかるブレーキ信号、及びプッシュスイッチが操作されたことを示す信号と等価な信号をイモビ解読ECU14に入力していない点。

(2)判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
甲1発明の「作動電源がイモビ解読ECU14のIG1端子、IG2端子、ACC端子に供給され」るとの構成(以下「構成A」という。)は、イモビ解読ECU14がチャレンジコードを出力するためのトリガー信号を入力するための構成という観点からすれば、本件発明の「前記車両内の運転者によって操作可能なエンジン始動用のプッシュスイッチが操作されたことを示す信号と等価な信号を」、「第2の信号として前記制御装置に入力し」との構成に、一応、対応しているものと考えられる。
しかしながら、甲1発明は、甲第1号証の段落【0023】の「キーシリンダ12に差し込まれたキー操作により、オンオフ動作されるイグニッションスイッチIG1、IG2、アクセサリースイッチACC、スタータスイッチST1、ST2、電源スイッチBの各端子が備えられている」との記載からみて、通常時のエンジンの始動は、キーシリンダ12に差し込まれたキー操作により始動させるものであって、プッシュスイッチの操作によるものではないこと、また、トリガー信号を内容的にみても、本件発明1の「プッシュスイッチが操作されたことを示す信号」は、本件明細書の段落【0020】に記載されているように、スタータモータを駆動するための信号であって、甲第1号証の段落【0008】に記載され、また【図1】で示されたスタータ(ST1、ST2)に対応するものであるから、甲1発明の構成Aは、本件発明の「車両内の運転者によって操作可能なエンジン始動用のプッシュスイッチが操作されたことを示す信号と等価な信号」とはいえない。
このように、甲1発明は、通常時のエンジンの始動は、キーシリンダ12に差し込まれたキー操作により始動させるものであって、プッシュスイッチの操作によるものではないから、甲1発明の構成Aを、本件発明のように、「プッシュスイッチが操作されたことを示す信号と等価な信号」をイモビ解読ECU14に入力する構成に変更する動機付けは存在しない。
これに加えて、甲1発明の装置本体10は、エンジンの始動が許可されるように、遠距離無線信号を前記レスポンスコードに復調して前記イモビ解読ECU14に送信することに関連して、サイドブレーキの制動状態に関する検出信号をイモビ解読ECU14に入力すると共に上記構成Aとすることはしていない。
これに関連する証拠である甲第3?7号証に示された周知技術は、リモートコントローラからの始動操作の信号を受信した車載器が、エンジンの始動スイッチやブレーキ操作の動きと等価な信号を車両に有線出力してエンジンの始動やブレーキ操作をするものであるが、該等価な信号は、エンジンの始動やブレーキ操作を指令するための信号であり、本件発明のように、エンジンの始動が許可されるように、第4の信号(レスポンスコード)の制御装置への送信に関連して制御装置に送信するものではないから、甲1発明に当該周知技術を適用しても、上記相違点2に係る本件発明の構成には至らない。
なお、甲第2号証に記載された事項は、相違点1に関するものであり、上記相違点2に係る本件発明の構成を容易想到とする契機となるものではない。
したがって、少なくとも、上記相違点2に係る本件発明の構成は容易想到とはいえないものであるから、その余の相違点1を検討するまでもなく、本件発明は甲1発明、甲第2号証に記載された事項及び周知技術(甲第3?7号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2.申立理由2について
(1)平成28年6月28付けでした手続補正について
上記手続補正(甲第10号証、以下「本件補正1」という。)は、特許請求の範囲の請求項1を補正するものであり、「前記制御装置及び前記携帯機の間で行われる無線通信を中継するリモートコントローラ及び車載機を備え」との補正事項(以下この項では「補正事項A」という。)を含むものである。
そこで、上記補正事項Aが、本件特許の願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」といい、特許請求の範囲及び図面をも併せて「当初明細書等」という。)、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものといえるか否か、すなわち、当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるか否かについて、以下検討する。

ア.当初明細書等の記載
(ア)当初明細書には、補正事項Aに関連し、次の記載がある。
「【0022】
リモコン34はスタートボタン37が押下されると無線送受信部36からリモコン始動信号を無線送信し、車載機30はこのリモコン始動信号を無線送受信部32で受信すると、車両制御部4にエンジン始動信号SSW2を出力する。また、車載機30の無線送受信部32は、照合制御部6の無線送受信部18からのリクエスト信号を受信して、このリクエスト信号を増幅して無線送受信部32から無線送信するように構成されている。」

「【0024】
リモコン34の無線送受信部36は、このリクエスト信号を受信すると、受信したリクエスト信号を携帯機16の無線送受信部24に送信する。携帯機16の無線送受信部24はリクエスト信号を受信すると、記憶部28に予め設定された固有の暗証コードを含む暗証コード信号を無線送信する。そして、リモコン34の無線送受信部36は、携帯機16からの暗証コード信号を受信して、暗証コード信号を増幅して再び無線送受信部36から車載機30に無線送信するように構成されている。」

「【0028】
車載機30はこのリクエスト信号を無線送受信部32で受信すると、リクエスト信号を増幅してリモコン34に転送する(図3-d)。尚、照合制御部6から車載機30へのリクエスト信号の送信は、無線に限らず、有線により送信するようにしてもよい。」

「【0030】
携帯機16はリクエスト信号を受信すると、暗証コードを含む暗証コード信号を無線送受信部24あるいはトランスポンダ部26から送信する(図3-f)。リモコン34はこの暗証コード信号を受信すると、暗証コード信号を増幅して無線送受信部36から無線送信する(図3-g)。
【0031】
車載機30はこの暗証コード信号を受信すると、暗証コード信号を無線送受信部32あるいはトランスポンダ部35から照合制御部6の無線送受信部18あるいはトランスポンダ部20に送信する(図3-h)。照合制御部6は暗証コード信号を受信すると、参照コードと暗証コードとの照合を行う。参照コードと暗証コードとが一致したときに、照合制御部6は車両制御部4に、エンジン始動許可信号を出力する。」

イ.検討
上記ア.の各記載事項及び【図2】によれば、制御装置(照合制御部6)から車載機(車載機30)へ無線通信を行うこと、車載器からリモートコントローラ(リモコン34)へ信号を増幅して無線送信すること、リモートコントローラから携帯機(携帯機16)へ無線通信を行うこと、携帯機からリモートコントローラへ無線通信を行うこと、リモートコントローラから車載機へ信号を増幅して無線送信すること、車載機から制御装置へ無線通信を行うことが記載され、リモートコントローラ及び車載機は制御装置及び前記携帯機の中間で信号をうけつぐ機能を有しているといえる。そして、「中継」とは、「中間でうけつぐこと。なかつぎ。」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]を意味するものであるから、リモートコントローラ及び車載機は制御装置及び前記携帯機の間で行われる無線通信を中継するものといえるものである。
そうすると、補正事項Aは、当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえるから、本件補正1は、新規事項を追加する補正には該当しない。

(2)平成29年8月22日付けでした手続補正について
上記手続補正(甲第12号証、以下「本件補正2」という。)は、特許請求の範囲の請求項1を補正するものであり、「前記車載機は、前記エンジンの始動が許可されるように、前記第4の信号の前記制御装置への無線送信に関連して、前記車両内のブレーキペダルが踏み込まれていることを示すブレーキ信号を車両内配線を通じて有線方式で前記制御装置に入力すると共に、前記プッシュスイッチが操作されたことを示す信号と等価な信号を有線方式で前記制御装置に入力すること」との補正事項(以下この項では「補正事項B」という。)を含むものである。
そこで、上記補正事項Bが、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえるか否か検討する。

ア.当初明細書等の記載
(ア)当初明細書には、補正事項Bに関連し、次の記載がある。
「【0021】
本実施形態では、更に、車両1には車載機30が搭載されており、車載機30は無線送受信部32を備えている。車載機30の無線送受信部32は照合制御部6の無線送受信部18との間で無線通信可能であると共に、リモートコントローラ34(以下、リモコン34という。)の無線送受信部36との間でも無線通信可能に構成されている。また、車載機30は、車両制御部4にエンジン始動信号SSW2とブレーキペダルが踏み込まれている際のブレーキ信号を出力できるように、車両制御部4と有線で接続されている。」

「【0030】
携帯機16はリクエスト信号を受信すると、暗証コードを含む暗証コード信号を無線送受信部24あるいはトランスポンダ部26から送信する(図3-f)。リモコン34はこの暗証コード信号を受信すると、暗証コード信号を増幅して無線送受信部36から無線送信する(図3-g)。
【0031】
車載機30はこの暗証コード信号を受信すると、暗証コード信号を無線送受信部32あるいはトランスポンダ部35から照合制御部6の無線送受信部18あるいはトランスポンダ部20に送信する(図3-h)。照合制御部6は暗証コード信号を受信すると、参照コードと暗証コードとの照合を行う。参照コードと暗証コードとが一致したときに、照合制御部6は車両制御部4に、エンジン始動許可信号を出力する。
【0032】
また、車載機30はエンジン始動信号SSW2とブレーキ信号とを車両制御部4に送信し(図3-i,j)、車両制御部4は、照合制御部6からのエンジン始動許可信号と、車載機30からのエンジン始動信号SSW2とブレーキ信号とを受けて、エンジン14を始動する。」

イ.検討
上記ア.の各記載事項及び【図2】によれば、車載機(車載機30)は第4の信号(暗証コード信号)を制御装置(照合制御部6)に無線送信すること、及び車両内のブレーキペダルが踏み込まれていることを示すブレーキ信号を車両内配線を通じて有線方式で制御装置(車両制御部4)に入力すると共に、プッシュスイッチが操作されたことを示す信号と等価な信号(エンジン始動信号SSW2)を有線方式で制御装置(車両制御部4)に入力することが記載されているといえる。そして、「照合制御部6は暗証コード信号を受信すると、参照コードと暗証コードとの照合を行い、参照コードと暗証コードとが一致したときに、照合制御部6は車両制御部4に、エンジン始動許可信号を出力」(段落【0031】)し、「車両制御部4は、照合制御部6からのエンジン始動許可信号と、車載機30からのエンジン始動信号SSW2とブレーキ信号とを受けて、エンジン14を始動する」(段落【0032】)との記載から、エンジン14を始動するため、つまりエンジンの始動が許可されるようにするためには、第4の信号(暗証コード信号)の制御装置(照合制御部6)への送信と、車両内のブレーキペダルが踏み込まれていることを示すブレーキ信号を車両内配線を通じて有線方式で制御装置(車両制御部4)に入力すると共に、前記プッシュスイッチが操作されたことを示す信号と等価な信号(エンジン始動信号SSW2)を有線方式で制御装置(車両制御部4)に入力することが必要となるものと理解できる。
そうすると、第4の信号、ブレーキ信号、及びプッシュスイッチが操作されたことを示す信号と等価な信号の3つの信号は、エンジンの始動が許可されるようにするために必要な信号であり、かかわりつながっている要素といえるから、関連しているものといえるものである。
そうすると、補正事項Bは、当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえるから、本件補正2は、新規事項を追加する補正には該当しない。

(3)小括
したがって、(1)及び(2)のとおり、本件補正1及び2は新規事項を追加する補正には該当しないから、本件発明に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである、とはいえない。

3.申立理由3について
上記2.で検討したように、「前記制御装置及び前記携帯機の間で行われる無線通信を中継するリモートコントローラ及び車載機を備え」との事項(以下「構成A」という。)及び「前記車載機は、前記エンジンの始動が許可されるように、前記第4の信号の前記制御装置への無線送信に関連して、前記車両内のブレーキペダルが踏み込まれていることを示すブレーキ信号を車両内配線を通じて有線方式で前記制御装置に入力すると共に、前記プッシュスイッチが操作されたことを示す信号と等価な信号を有線方式で前記制御装置に入力すること」との事項(以下「構成B」という。)は、発明の詳細な説明に記載されたものといえるものである。そして、本件発明は、「煩雑な作業をすることなく、また、セキュリティレベルの低下を招くこともない車両用遠隔始動装置を提供する」(段落【0009】)との課題を達成し得るものであるから、本件発明に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである、とはいえない。

4.申立理由4について
上記2.で検討したように、構成A及びBは、本件明細書等で説明されており、その構成が明確でない、とはいえないから、本件発明に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである、とはいえない。

第6.むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由1?4及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-12-28 
出願番号 特願2016-107395(P2016-107395)
審決分類 P 1 651・ 561- Y (B60R)
P 1 651・ 537- Y (B60R)
P 1 651・ 121- Y (B60R)
最終処分 維持  
前審関与審査官 森本 康正  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 中川 真一
島田 信一
登録日 2018-02-16 
登録番号 特許第6289537号(P6289537)
権利者 株式会社コムテック
発明の名称 車両用遠隔始動装置  
代理人 名古屋国際特許業務法人  
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