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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  A23L
管理番号 1347950
審判番号 無効2015-800008  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-01-09 
確定日 2018-12-17 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5189667号「トマト含有飲料及びその製造方法,並びに,トマト含有飲料の酸味抑制方法」の特許無効審判事件についてされた平成28年5月19日付け審決に対し,知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成28年(行ケ)第10147号,平成29年6月8日判決言渡)があったので,さらに審理のうえ,次のとおり審決する。 
結論 特許第5189667号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1?7〕,〔8?10〕,11について訂正することを認める。 特許第5189667号の請求項1?7,8?10,11に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は,被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5189667号に係る出願は,平成23年4月20日に特許出願され,平成25年2月1日にその発明について特許の設定登録がなされたものである。
以後の本件に係る手続の概要は以下のとおりである。
1 平成27年 1月 9日 本件無効審判の請求(甲第1?37号証添付
)
2 平成27年 3月30日 答弁書(乙第1?4号証添付)の提出
3 平成27年 4月 8日 手続補正書(請求人,甲第24号証の差し替
え)の提出
4 平成27年 4月13日 手続補正書(被請求人,乙第3号証の差し替
え,乙第4号証の取り下げ)
5 平成27年 5月11日 審理事項の通知
6 平成27年 6月19日 口頭審理陳述要領書(請求人,甲第2号証の
2,甲第38?40号証添付)の提出
7 平成27年 7月10日 口頭審理陳述要領書(被請求人,乙第5,6
号証添付)
8 平成27年 7月22日 口頭審理陳述要領書(2)(請求人,甲第4
1?44号証添付)の提出
9 平成27年 7月24日 上申書及び上申書(2)(被請求人,乙第7
号証添付)の提出
10 平成27年 7月24日 口頭審理
11 平成27年11月 4日 審決の予告(一次)
12 平成28年 1月 5日 訂正請求書
13 平成28年 4月20日 審理終結の通知(発送日:平成28年4月
22日)
14 平成28年 4月27日 審理再開申立書の提出(請求人,甲第46
?48号証添付)
15 平成28年 5月19日 一次審決
16 平成29年 6月 8日 判決言渡(平成28年(行ケ)第1014
7号)
17 平成30年 6月27日 上告受理申立て不受理決定(平成29年(
行ヒ)第364号)
18 平成30年 7月27日 審決の予告(二次)
なお,平成28年1月5日付け訂正請求書の副本を請求人に送付したが(発送日:平成28年1月22日),これに対して,請求人より弁駁書の提出はなされなかった。
また,審決の予告(二次)に対して,被請求人からは指定した期間内に何らの応答もなかった。
そして,前記知的財産高等裁判所平成29年6月8日判決,平成28年(行ケ)第10147号(以下「取消判決」という。)は,行政事件訴訟法第33条第1項の規定により,本件無効審判事件について,当合議体を拘束する。

第2 訂正請求
1 訂正の内容
被請求人の平成28年1月5日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は,「特許第5189667号の明細書及び特許請求の範囲を,本請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1?11について訂正する」ことを求めるものである。具体的な訂正事項は以下のとおりである。
(訂正事項1)
請求項1?7からなる一群の請求項に係る訂正であって,特許請求の範囲の請求項1について次のとおり訂正する。
「【請求項1】
糖度が9.4?10.0であり,糖酸比が19.0?30.0であり,グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が,0.36?0.42重量%であることを特徴とする,
トマト含有飲料。」
(訂正事項2)
請求項8?10からなる一群の請求項に係る訂正であって,特許請求の範囲の請求項8について次のとおり訂正する。
「【請求項8】
少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)を配合することにより,糖度が9.4?10.0及び糖酸比が19.0?30.0となるように,並びに,グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が0.36?0.42重量%となるように,前記糖度及び前記糖酸比並びに前記グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量を調整することを特徴とする,
トマト含有飲料の製造方法。」
(訂正事項3)
請求項11に係る訂正であって,特許請求の範囲の請求項11について次のとおり訂正する。
「【請求項11】
少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)を配合することにより,糖度が9.4?10.0及び糖酸比が19.0?30.0となるように,並びに,グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が0.36?0.42重量%となるように,前記糖度及び前記糖酸比並びに前記グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量を調整することを特徴とする,
トマト含有飲料の酸味抑制方法。」

2 訂正の適否
取消判決において,本件訂正について,「本件訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる事項を目的とし,かつ,同条9項で準用する同法126条5項,6項の規定に適合するというべきものである。」(判決書52?54頁)と判断された。
よって,本件訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし,かつ,同条第9項で準用する同法第126条第5項,第6項の規定に適合するので,訂正後の請求項〔1?7〕,〔8?10〕,11について本件訂正を認める。

第3 本件特許発明
本件特許第5189667号の請求項1?11に係る発明は,訂正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。
「【請求項1】
糖度が9.4?10.0であり,糖酸比が19.0?30.0であり,グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が,0.36?0.42重量%であることを特徴とする,
トマト含有飲料。
【請求項2】
粘度が350?1000cPである,
請求項1に記載のトマト含有飲料。
【請求項3】
トマト以外の野菜汁及び果汁の総含有量が0.0?5.0重量%である,
請求項1又は2に記載のトマト含有飲料。
【請求項4】
少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)とを含有する,
請求項1?3のいずれか一項に記載のトマト含有飲料。
【請求項5】
重曹(C)を含有する,
請求項1?4のいずれか一項に記載のトマト含有飲料。
【請求項6】
少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)と脱酸トマト汁(D)とを含有する,
請求項1?5のいずれか一項に記載のトマト含有飲料。
【請求項7】
pHが4.4?4.8である,
請求項1?6のいずれか一項に記載のトマト含有飲料。
【請求項8】
少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)を配合することにより,糖度が9.4?10.0及び糖酸比が19.0?30.0となるように,並びに,グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が0.36?0.42重量%となるように,前記糖度及び前記糖酸比並びに前記グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量を調整することを特徴とする,
トマト含有飲料の製造方法。
【請求項9】
少なくとも重曹(C)を配合することにより,前記糖度及び前記糖酸比を調整することを特徴とする,
請求項8に記載のトマト含有飲料の製造方法。
【請求項10】
少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)と脱酸トマト汁(D)とを配合することにより,前記糖度及び前記糖酸比を調整することを特徴とする,
請求項8又は9に記載のトマト含有飲料の製造方法。
【請求項11】
少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)を配合することにより,糖度が9.4?10.0及び糖酸比が19.0?30.0となるように,並びに,グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が0.36?0.42重量%となるように,前記糖度及び前記糖酸比並びに前記グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量を調整することを特徴とする,
トマト含有飲料の酸味抑制方法。」(以下,請求項の番号に従って,それぞれ,「本件特許発明1」などという。また,本件特許発明1?11をあわせて「本件特許発明」ともいう。)

第4 請求人の主張及び証拠方法
請求人は,審判請求書において,「特許第5189667号の特許請求の範囲の請求項1乃至11に係る発明について,特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め,無効理由の概要は以下のとおりであり,本件特許は無効とすべきであると主張している。
1 無効理由1(実施可能要件)
本件特許は,その発明の詳細な説明の記載が,経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず,請求項1?11に係る発明についての特許は同法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。
詳述するに,以下のとおりである。
(1) 課題と数値規定との実質的関係の理解困難性(委任要件違反)
特許法第36条第4項第1号の発明の詳細な説明の記載は,発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他の,当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならないが(特許法施行規則第24条の2),本件発明の詳細な説明の記載は,この規定に反する。
即ち,本件明細書において,本件特許発明が解決しようとする課題と,その解決手段である数値限定「糖度が7.0?13.0であり,糖酸比が19.0?30.0であり」(段落【0042】)及び「グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が,0.25?0.60重量%である」(段落【0043】)との実質的関係は,不明である。
本件発明の詳細な説明には,本件特許発明が解決しようとする課題として,トマト含有飲料において,主原料となるトマト以外の野菜汁や果汁を配合しなくても,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制される,と記載されている(段落【0008】)。
当該課題を解決するための手段は,トマト含有飲料における糖度を7.0?13.0とし,且つ,糖酸比を19.0?30.0とすることとされている。当該課題と当該数値規定との実質的な関係を裏付けるために,本件発明の詳細な説明においては,12人のパネラーの評価の平均による風味の評価結果という方法が採用されている(段落【0088】,【0090】【表1】)。
しかし,当該風味の評価結果を当業者が理解することはできない。
その理由として,次のア?ウを主張している。
ア 第1に,各風味の強度「やや弱い」の評点が肯定なのか否定なのかが定まっていない。段落【0088】に記載されている「やや弱い」の評点は,「1点」及び 「-1点」である。つまり,「やや弱い」に対する評点が分かれている点である。「やや弱い」の評点が定まっていなければ,各パネラーの評点の平均点の技術上の意味を正確に理解することはできない。
イ 第2に,合計点の技術上の意味が不明である。段落【0088】以降の記載から特に理解できないのは,風味の合計点の算出方法である。例示すると,実施例1において,風味の合計点は,2.5であるが,「-0.7」,「0.8」及び「1.0」を加算しても,「2.5」ではない。他の実施例,比較例及び参考例でも同様である。風味の合計点の算出方法が不明であれば,当該合計点の技術上の意味も不明である。
ウ さらに,本件特許公報の段落【0090】の【表1】において,物性値及び風味評価のカラムが所々「未実施」及び/又は「未測定」であるため,当該課題と当該数値規定との実質的な関係に対する理解をより一層妨げている。
(2) 実施例1?3以外の実施形態の再現困難性
本件特許の請求項1?11の記載「糖度が7.0?13.0であり,糖酸比が19.0?30.0であり,グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が,0.25?0.60重量%であることを特徴とする,トマト含有飲料。」に含まれる下位概念たる「トマト含有飲料」は,実施例1?3の配合により調製されたもの以外にも多岐にわたり得る。
例示列挙すると,
下位概念1:所望の糖度,糖酸比及びグルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量であるトマト含有飲料であって,その原材料がトマト搾汁液(ストレート果汁)のみであるもの。
下位概念2:所望の糖度,糖酸比及びグルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量であるトマト含有飲料であって,その原材料がトマトペーストのみであるもの。
下位概念3:所望の糖度,糖酸比及びグルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量であるトマト含有飲料であって,その原材料がトマトペースト及び透明トマト汁のみであるもの。
下位概念1について,その再現に必要なのは,適切なトマト及びその配合比を特定することである。適切なトマトとは,トマトであって,単独で又は互いに配合することで,所望の「糖度」,「糖酸比」及び「グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量」の値を満足するものである。しかし,本件明細書の発明の詳細な説明において,当該適切なトマト及びその配合比は,何ら説明されていない。また,トマトの物性値に影響する要因は,多岐にわたり,例示すると,品種,産地等などはその一例に過ぎないことは当業界の技術常識である。しかるに,トマトの品種数(約8,000以上)を踏まえると,それらの中から適切なトマトを特定することは,不可能である。
下位概念2について,その再現に必要なのは,適切なトマトペースト及びその配合比を特定することである。適切なトマトペーストとは,トマトペーストであって,単独で又は互いに配合することで,その水戻し後において所望の「糖度」,「糖酸比」及び「グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量」の値を満足するものである。しかし,本件明細書の発明の詳細な説明において,当該適切なトマトペースト及びその配合比は,何ら説明されていない。トマトペーストの物性値に影響する要因は,多岐にわたり,原料であるトマトの品種,産地等などはその一例にすぎないことは当業界の技術常識である。当該技術常識を踏まえると,それらの中から当該適切なトマトペーストを特定するのは,困難である。
下位概念3について,その再現に必要なのは,適切なトマトペースト及び適切な透明トマト汁並びにそれらの配合量を特定することである。これに対して,本件特許公報の発明の詳細な説明が開示しているのは,「トマトペースト(A)と透明トマト汁(B)との重量割合は,1.5?4.5であることが好ましい。」及び「トマトの甘み,酸味,及び濃厚な味わいのバランスをより一層高める観点から,トマトペースト(A)と透明トマト汁(B)との重量割合は,2.5?3.5であることが好ましい。」(段落【0049】),並びに「市販のトマトペースト(Brix:28,酸度:1.60,pH:4.10,Brix4.5調整時の粘度:108cP)と市販の透明濃縮トマト汁(Clear Tomato Concentrate 60°Brix,LYCORED社製,Brix:60,酸度:3.64,pH:4.15)」(段落【0067】)を「A/B=1.9」で配合したもの(実施例1。段落【0090】【表11】)が開示されているにすぎない。

2 無効理由2(サポート要件違反)
本件特許は,その請求項1?11に係る発明が発明の詳細な説明に記載したものではないから,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず,同法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。
詳述するに,以下のとおりである。
(1) 特許請求の範囲が規定する物性値の範囲までの拡張ないし一般化の困難性について
本件特許の明細書及び本件特許の出願時の技術常識を踏まえても,本件特許の請求項1?11の記載「糖度が7.0?13.0であり,糖酸比が19.0?30.0であり,グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が,0.25?0.60重量%である」とそれによって得られる効果との技術的関係を当業者が理解することはできない。本件特許の請求項1?11に記載の物性値の組合せのうち官能評価が良好とされているのは,実施例1?3の物性値の組合せにすぎない。つまり,本件特許の請求項1?11に記載の物性値の組合せのうち実施例1?3の物性値の組合せ以外のものについて,当該物性値の組合せが奏する効果は,実験上,何ら裏付けられていない。
本件特許の出願時における技術常識を踏まえても,本件特許の請求項1?11に記載の「糖度」及び「糖酸比」の組合せのうち実施例1?3の組合せ以外のものについても所望の効果「トマトの甘味,酸味及び濃厚な味わいのバランス」が奏されると当業者が認識することはできない。
本件特許の出願時における技術常識として,「濃厚な味わい」に寄与するのは,糖度及び糖酸比以外にも,温度(甲第3号証190?193頁)や粘度(甲第4号証)等,多岐にわたる。とすれば,糖度及び糖酸比を調整して制御できるのは,高々,「酸味」及び「甘味」にすぎず,「濃厚な味わい」ではない。
「トマトの酸味が抑制され」る点について,実施例1?3並びに比較例2を比較すると,両者において,「グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計」は,ほぼ同等である。他方,「酸度」については,実施例1?3が相対的に低く,比較例2が相対的に高い。また,「酸味」については,実施例1?3が相対的に低く,比較例2が相対的に高い。つまり,「酸味」に寄与するのは,「グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計」ではなく,「酸度」である。「グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計がこの程度の低含有量であることにより,トマト含有飲料の旨味(コク)を過度に損なうことなくトマトの酸味が抑制されて,トマト本来の甘みがより一層際立つ傾向にある」(段落【0043】)とあるものの,当該効果は,裏付けられていない。
そして,「トマト含有飲料の呈味において酸味や甘味が重要な役割を占める」からと言って,何故「酸味や甘味に優れたトマト含有飲料は旨味も当然優れたものであると言える」のか,具体的な説明は全く無く,「旨味が優れた」トマト含有飲料を提供できるとの課題の理解は依然として妨げられている。
(2) 特許請求の範囲が規定する原材料及び配合までの拡張ないし一般化の困難性について
本件特許の請求項1?11に記載のトマト含有飲料のうち官能評価が良好とされているのは,実施例1?3の原材料及びその配合比にすぎない。
つまり,本件特許の請求項1?11に記載の物性値の組合せのうち実施例1?3の原材料及びその配合比以外のものについて,当該実施例以外の原材料及び配合比が奏する効果は,実験上,何ら裏付けられていない。
実施例1?3並びに比較例1の比較から明らかなのは,「トマトペースト」のみを配合しても,換言すれば,脱酸トマト汁及び/又は重曹を配合しなければ,総合評価が良好ではないことである。また,実施例3及び比較例2の比較から明らかなのは,トマトペースト及び透明トマト汁のみを配合しても,換言すれば,重曹を配合しなければ,風味の合計点が相対的に低いこと,及び総合評価が良好ではないことである。つまり,少なくとも,本件特許の請求項5(重曹添加),同6(脱酸トマト汁添加),及び同9(重曹添加)以外について,それらが奏する効果を当業者が認識することはできない。

3 無効理由3(公然実施による新規性喪失)
本件特許の請求項1及び3に係る発明は,その特許出願前に日本国内において公然実施をされた「Celeb de TOMATO(セレブ・デ・トマト)トマトジュースあいこ(大)」(以下「製品1」という。)又は「SWEET RUBY(カゴメ株式会社製造,キャップ表示11.2.10)」(以下「製品2」という。)に係る発明であるから,特許法第29条第1項第2号の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

4 無効理由4(刊行物公知による新規性喪失等)
本件特許の請求項1?4,7,8及び11に係る発明は,その特許出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物(甲第19号証)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。
また,予備的主張として,本件特許の請求項1?4,7,8及び11に係る発明は,その特許出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物(甲第19号証)に記載された発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明できたものであるから,同法第29条第2項により特許を受けることができず,その特許は同法第123条第1項2号により無効とすべきである。
詳述するに,以下のとおりである。
甲第19号証に記載され及びそれに等しい事項から把握されるものは,次のとおりである。
糖度が8.10?8.98であり,
糖酸比が20.25?29.93であり,
グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が0.327?0.
338重量%であり,
トマトを含有する飲料及びその製造方法であり,
粘度が100?800cPであり,
当該飲料は,トマトの搾汁物でもよく,
pHが4.35?4.41であり,
当該トマトの形態は,トマトの搾汁物の他,トマトの粉砕物,抽出物
,濃縮物(トマトペースト,トマトピューレ),及びその希釈物(液
)でもよく,
当該抽出物は,清澄なトマトエキスやその濃縮液等でもよい,
もの。
そして,本件特許出願時の技術常識として,国内品種のトマト果実の酸度は,0.40%程度であったことが知られている(甲第20号証の176頁左欄「(4)酸度」,甲第21号証第2丁「表2」中「果実の特性」の「酸度」の「しょうほう」欄,甲第22号証第3丁「酸度」欄)。また,一般にトマト含有飲料の原材料に用いられる桃太郎トマトの酸度も,0.30から0.40程度である(甲第23号証117頁「表3」,甲第24号証「表1」,甲第25号証193頁「表-5-196」)。さらに,高糖度トマトの一種であるアイコの酸度も0.36程度である(甲第26号証)。しかも,トマト含有飲料の酸度も同程度であることは,本件明細書段落【0090】【表1】の参考例1?10からも明らかである。それゆえ,これらの出願時技術常識に基づき,甲第19号証のトマトを含有する飲料の酸度も0.30?0.40程度であると当業者は理解する。
他方,甲第19号証のトマトを含有する飲料の糖度は,8.10?8.98である。
したがって,当該トマト飲料において,甲第19号証に開示された範囲の糖度を上記技術常識に係る範囲の酸度で除して,その糖酸比が20.25?29.93であると考えてよい。
さらに加えて,本特許の出願時の技術常識として,トマトジュースの粘度は,100?800cP(甲第27号証段落【0018】,甲第28号証85頁図2,甲第29号証請求項1)である。
本件特許の請求項1に係る発明との対比として,本件特許の請求項1に係る発明と甲第19号証発明との一致点は,糖度が8.10?8.98であり,糖酸比が20.25?29.93であり,グルタミン及びアスパラギン酸の含有量の合計が0.327?0.338重量%である,トマト含有飲料の点であり,両者は相違しない。

5 無効理由5(進歩性欠如)
本件特許の請求項5,6,9,及び10に係る発明は,その特許出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物(甲第19号証)に記載された発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

6 請求人は,証拠方法として甲第1?48号証を提出している。
[証拠方法]
甲第1号証:特許登録原簿(特許第5189667号),出力日(平成26年(2014年)9月24日)
甲第2号証:社団法人日本果汁協会監修,「最新果汁・果実飲料事典」,朝倉書店,平成9年(1997年)10月1日,表紙,目次,p.22-23,p.32-35,p.272-273,奥付
甲第2号証の2:社団法人日本果汁協会監修,「最新果汁・果実飲料事典」,朝倉書店,平成9年(1997年)10月1日,表紙,p.232,奥付
甲第3号証:小俣靖,「ポピュラーサイエンスブックス”美味しさ”と味覚の科学」,日本工業新聞社,昭和61年(1986年)10月1日,表紙,p.34-37,p.134-137,p.190-193,奥付
甲第4号証:山本由喜子ら,「デンプン溶液の味覚強度(塩味・甘味)におよぼす粘度の影響」,日本調理科学会誌,日本調理科学会,1999年,Vol.32,No.4,p.334-337
甲第5号証:西村敏英,「新規こく付与物質の特性と食品への応用」,日本食品科学工学会第61回大会講演集,公益社団法人日本食品科学工学会,平成26年(2014年)8月28日,表紙,目次,p.42-43
甲第6号証:「Celeb de TOMATOあいこ(小)」(アマゾンストアホームページ),Amazon Co.jp,出力日平成26年(2014年)11月6日
甲第7号証:「Celeb de TOMATOあいこ(大)」(アマゾンストアホームページ),Amazon Co.jp,出力日平成26年(2014年)11月6日
甲第8号証:カゴメ株式会社(本請求人)の従業員が作成した「市場品評価第1報?2010年度トマトジュースの品質評価結果?」(カゴメ株式会社研究報告書)のスクリーンショット(写し),最終更新日平成23年(2011年)3月2日
甲第9号証:一般財団法人日本食品分析センター,「分析試験成績書 検体名 Ai150805」,書面作成日平成26年(2014年)12月23日
甲第10号証:カゴメ株式会社(本請求人)の従業員が作成した写真撮影報告書,作成日平成27年(2015年)1月5日
甲第11号証:カゴメ株式会社の従業員が栃木県那須塩原市西富山17カゴメ株式会社研究開発本部内で撮影した,カゴメ「SWEET RUBY 11.2.10」(2010年ギフト用)外観写真,撮影日2013年5月24日
甲第12号証:JA全農やまぐち萩加工場の従業員が作成した,カゴメ「SWEET RUBY」(2010年ギフト用)調合チェック表(写し)
甲第13号証:株式会社伊勢丹(現株式会社三越伊勢丹),「2010伊勢丹の贈り物」
甲第14号証:一般財団法人日本食品分析センター,「分析試験成績書 カゴメ(株)SWEET RUBY 11.2.10 17:02」,書面作成日平成25年(2013年)8月12日
甲第15号証:一般財団法人日本食品分析センターの従業員,「カゴメ(株)SWEET RUBY」に関するメール及び添付文書(写し),送信日平成25年(2013年)6月12日
甲第16号証:弁護士・弁理士岩坪哲,「報告書」,作成日平成26年(2014年)11月28日
甲第17号証:カゴメ株式会社(本請求人)の従業員,「Sweet Ruby経時変化試験報告書」,作成日平成26年(2014年)12月1日
甲第18号証:一般財団法人日本食品分析センター,「分析試験成績書 検体名 Ru150404」,書面作成日平成26年(2014年)12月23日
甲第19号証:特開2006-187233号公報
甲第20号証:社団法人農山漁村文化協会,「野菜園芸大百科第2版 トマト」,平成16年(2004年)1月31日,表紙,p.176,奥付
甲第21号証:ホームページ出力物,「品質の優れるジュース用新品種候補『トマト桔梗交44号』」と題するページ
甲第22号証:ホームページ出力物,農研機構の「ジュース向き加工用トマトの多収性新品種候補’盛岡交29号’」と題するページ
甲第23号証:豊田正武ら,「簡易型近赤外分光計による果実及び野菜中の糖度及び酸度の測定」,実践女子大学生活科学部紀要,実践女子大学,2011,第48号,p.115-120
甲第24号証:藤村恵人ら,「根域冷却高糖度化栽培におけるトマトの果実収量」,日本農業気象学会2009年全国大会講演要旨,日本農業気象学会,平成21年(2009年),表紙,目次,p.55
甲第25号証:長崎県,「諌早湾干拓営農技術対策の指針」,平成20年(2008年)3月,表紙,目次,p.191-196
甲第26号証:サカタのタネのホームページ出力物,「プラム型ミニトマトの新品種『アイコ』を新発売」と題するページ
甲第27号証:特開平11-113542号公報
甲第28号証:川崎種一,「食品加工および資材の新知識(流動食品の粘度データ)」,New Food Industry,食品資材研究会,昭和56年(1981年)1月1日,Vol.23,No.1,表紙,p.84-86,奥付
甲第29号証:特開2009-11287号公報
甲第30号証:主なSI単位への換算率表
甲第31号証:特開2008-212012号公報
甲第32号証:特開平1-179647号公報
甲第33号証:特開平1-181745号公報
甲第34号証:「Celeb de TOMATO薫寿(コトブキ)」(アマゾンストアホームページ),Amazon Co.jp,出力日平成26年(2014年)11月6日
甲第35号証:一般財団法人日本食品分析センター,「分析試験成績書 検体名 Ko160802」,書面作成日平成26年(2014年)12月19日
甲第36号証:特開平9-154547号公報
甲第37号証:特開昭61-111673号公報
甲第38号証:カゴメ株式会社の従業員が作成した「『Celeb de TOMATOあいこ』等の購入及び分析について」の陳述書
甲第38号証の2:申請No.:F19700999の証憑台紙(事業所出納)及び納品書
甲第38号証の3:申請No.:F19701005の証憑台紙(事業所出納)及び納品書
甲第38号証の4:カゴメ株式会社の従業員が作成したラボノートの表紙,該当部分及び裏表紙
甲第39号証:カゴメ株式会社の従業員が作成した「Celeb de TOMATO”あいこ”の糖度測定結果について」の陳述書
甲第40号証:カゴメ株式会社の従業員が作成した「再現品の経時変化を基にした,公然実施品2の賞味期間内アミノ酸量について」の陳述書
甲第41号証:カゴメ株式会社の従業員が作成した「報告書」
甲第42号証:栃木博美ら,「トマトの品質に関する産地実態並びにその品種間差異について」,栃木県農業試験場研究報告,1986年,No.32,p.75-86
甲第43号証:特開平11-266824号公報
甲第44号証:特開2002-27955号公報
甲第45号証:特許第5189667号公報(本件特許公報)
甲第46号証:Ron G.Buttery et.al,“Quantitative and Sensory Studies on Tomato Paste Volatiles”,J.Agric.Food Chem.,1990年,Vol.38,No.1,p.336-340及び和訳
甲第47号証:唐沢明,「夜トマトダイエット」,株式会社ぶんか社,2009年3月10日,初版第4刷,p.42-43,68-69
甲第48号証:唐沢明,「トマトジュースダイエットレシピ」,株式会社サンクチュアリ・パブリッシング,2004年4月25日,p.8-9

第5 被請求人の主張の概要
一方,被請求人は,「本件審判請求は,成り立たない。審判費用は請求人の負担とする,」との審決を求め,上記請求人の主張に対し,以下のとおり,本件特許を無効とすべき理由はない旨の主張をしている。
1 無効理由1(実施可能要件)について
(1) 本件特許明細書の段落0088に記載されている各風味の7段階の評点のうち,「やや弱い」の評点が「1点」及び「-1点」と二種類存在する。段落0088に記載されている風味の評点は,上から順に,「非常に強い」(3点),「かなり強い」(2点),「やや弱い」(1点),「感じない又はどちらでもない」(0点),「やや弱い」(-1点),「かなり弱い」(-2点),「非常に弱い」(-3点)と強度が強いものから弱いものへと降順となっているところ,「やや弱い」の評点は「1点」及び「-1点」と二種類存在している。しかしながら,風味の評点が降順となっている以上,1点の「やや弱い」は,「かなり強い」(2点)の評点の次に登場するため,「やや強い」の誤記であることは明らかである。
本件特許発明が解決しようとする課題は,「主原料となるトマト以外の野菜汁や果汁を配合しなくても,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された,新規なトマト含有飲料」等を提供することにあるところ(本件特許明細書の段落0008),実施例1のように酸味の評価が-(マイナス)ということは酸味が弱いことを意味しており,また,甘味と濃厚さの評価が+(プラス)ということは甘味と濃厚さが強いこと,すなわち本発明の課題が解決されていること,酸味,甘味,濃厚さがいずれも優れていることを意味している。各風味の評点は強い+の強度のものから弱い-の強度のものへと降順に表されているため,実施例のものであっても,甘味と濃厚さは+であるにも拘らず,酸味が-になるというように,正負の数値が混在した状態になる。この場合,これらの評点を総合評価のためにそのまま加算すると正確な評価ができないため,+や-の符号を取り除いた絶対値を加算した数値が「総合評価」として表1では表されている。
参考例についてはあくまでも実施例と比較例とを対比する際のベンチマークであることから,本件特許の請求項1に記載されているような主要な物性値(糖度等)のうち,簡便に測定できるものを参考程度に表1中で記載したにすぎない。また,比較例の一部の物性値が「未測定」となっているのは,糖酸比のような主要な物性値が実施例のものと顕著に相違しているため,敢えて出願を遅らせてまで全ての物性値を測定するまでもないと判断したことが理由である。
(2) 原材料がトマト搾汁液(ストレート果汁)であるもののみを用いることは,本件特許発明の発明特定事項ではないから,原材料がトマト搾汁液(ストレート果汁)であるトマト含有飲料を実施できないからといって,そのことが実施可能要件違反の根拠とはなり得ない。
糖度や糖酸比を測定するということは,測定値が意図するものでなかった場合にこれを調整する手段が存在するということである。また,酸味料やアミノ酸を別途添加する方法が本件特許明細書の段落0058に記載されている以上,「糖度が7.0?13.0であり,糖酸比が19.0?30.0であり,グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が,0.25?0.60重量%であ」るトマト含有飲料を製造することは当業者に過度の試行錯誤を強いるものとは言えない。
本件特許の発明の詳細な説明の記載は,本件特許発明1?11を当業者が実施することができる程度に十分且つ明確に記載されたものである。
したがって,その発明の詳細な説明は特許法第36条第4項第1号に違反し,本件特許は同法第123条第1項第4号により無効とされるべきであるとする,請求人の主張は妥当しない。

2 無効理由2(サポート要件違反)について
(1) 本件特許明細書の発明の詳細な説明の全体の記載を参照すれば,「糖度」,「糖酸比」及び「グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計」がいずれも請求項1等に記載されているような特定範囲内である実施例1?3が,本件特許の課題である,「主原料となるトマト以外の野菜汁や果汁を配合しなくても,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された」ものである一方で,「糖度」,「糖酸比」及び「グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計」のうちの少なくともいずれか1つが請求項1等に記載されている特定範囲内のものではない比較例や参考例が,本件特許の課題を解決できていないことを認識できる。
当業者であれば,「糖度」,「糖酸比」及び「グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計」をいずれも請求項1等に記載の特定範囲内とすることで,総合評価(甘味,酸味及び濃厚さ)に優れたトマト含有飲料が得られることを当然に認識できる。
よって,本件特許はサポート要件を満たしていると認められる。
特定範囲の糖度及び糖酸比について,本件特許明細書の段落0042では以下のとおり記載されている。
「本実施形態のトマト含有飲料は,糖度が7.0?13.0であり,且つ,糖酸比が19.0?30.0であることが必要とされる。糖度が7.0未満であり糖酸比が30.0を超えるものは,比較的に低粘度なものとなる傾向にあり,味がぼやけすぎてしまい,飲み難いものとなる。また,糖度が7.0未満であり糖酸比が19.0未満のものは,比較的に低粘度なものとなる傾向にあるが,甘みが乏しく酸味も強いので,飲み難いものとなる。他方,糖度が13.0を超えており糖酸比が30.0を超えるものは,甘みは強いものとなる傾向にあるが,比較的に高粘度となり味がぼやけすぎてしまい,飲み難いものとなる。また,糖度が13.0を超えており糖酸比が19.0未満のものは,甘みは強いものとなる傾向にあるが,比較的に高粘度となり酸味も強いので,飲み難いものとなる。トマトの甘み,酸味,及び濃厚な味わいのバランスをより一層高める観点から,糖度が9.0?13.0であり,且つ,糖酸比が19.0?30.0であることが好ましい。」
更に,本件特許明細書の段落0041では,特定範囲の糖度及び糖酸比とそれによって奏される効果との関係について,推定される作用機序が以下のとおり説明されている。
「本実施形態のトマト含有飲料においては,糖度とともに糖酸比を特定範囲に調整しており,そのため,かかる糖度及び糖酸比の調整の際に著しい高粘度化を抑制し得る。しかも,糖酸比の調整により,謂わばトマト自身の甘みによってトマトの酸味が隠蔽され得るので,得られるトマト含有飲料の酸味が抑制され,トマト本来の甘みが際立ち,飲み易さが高められる。これらの作用が相まった結果,上記構成のトマト含有飲料においては,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みを有しつつも,トマトの酸味が抑制されたものと考えられる。但し,作用は,これらに限定されない。」
要するに,本件特許明細書では,糖度と糖酸比を特定の範囲とすることは,トマトの甘み,酸味,及び濃厚な味わいのバランスを高めるのに重要な要因であることが記載されているのである。
したがって,当業者であれば,「糖度」,「糖酸比」及び「グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計」をいずれも請求項1等に記載の特定範囲内とすることで,総合評価(甘味,酸味及び濃厚さ)に優れたトマト含有飲料が得られることを当然に認識できる。
よって,本件特許はサポート要件を満たしていると認められる。
また,グルタミン酸及びアスパラギン酸の含量が奏する効果についても,その含量を特定範囲内とすることで甘味や酸味等が改善することが本件特許明細書の段落0043に以下のとおり記載されている。
「本実施形態のトマト含有飲料は,アミノ酸を含んでいてもよい。アミノ酸含有量が高いと,トマト含有飲料の旨味(コク)が増す傾向にある。この場合,よりグルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が,0.25?0.60重量%(g/100g)であることが好ましい。グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計がこの程度の低含有量であることにより,トマト含有飲料の旨味(コク)を過度に損なうことなくトマトの酸味が抑制されて,トマト本来の甘みがより一層際立つ傾向にある。」
そして,グルタミン酸及びアスパラギン酸の含量に関して,旨味は本件特許明細書の表1に記載されている評価項目には具体的に存在しないが,トマト含有飲料の呈味において酸味や甘味が重要な役割を占める以上,酸味や甘味に優れたトマト含有飲料は旨味も当然優れたものであると言える。
したがって,請求人の主張はいずれも失当であり,当業者であれば,「糖度」,「糖酸比」及び「グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計」をいずれも請求項1等に記載の特定範囲内とすることで,総合評価(甘味,酸味及び濃厚さ)に優れた,すなわち「トマトの甘味,酸味及び濃厚な味わいのバランスをより一層高め」たトマト含有飲料が得られることを当然に認識できる。
よって,本件特許はサポート要件を満たしていると認められる。
(2) サポート要件を満たしているか否かを判断する際に,特許請求の範囲と対比するのは発明の詳細な説明の全体の記載である。
糖度等を調整する方法は本件特許明細書に記載されており,また,その調整は当業者に過度の試行錯誤を強いるものではない。
上述から明らかなとおり,本件特許の明細書及び本件特許の出願時の技術常識を踏まえれば,本件特許発明はサポート要件を満たしていることは明らかである。
さらに,本件特許発明について,本件訂正において,糖度並びにグルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計を審決の予告において一般化ないし拡張することができるものと判断された範囲に限定する訂正を行った。
したがって,本件特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第1号に適合せず,本件特許は同法第123条第1項第4号により無効とされるべきであるとする,請求人の主張は妥当しない。

3 無効理由3(公然実施による新規性喪失)について
(1) 請求人が公然実施品と主張する上記製品の分析値は,信憑性のある証拠に基づいて立証されていない。
請求人は,製品1の流通日を幅のある形で主張しているが,請求人が主張する期間内に流通している「Celeb de TAMATO あいこ(食塩無添加)」が,全く同じ製品であるか(設計変更等がなかったのか)は不明であり,また,請求人は製品1の流通当時の分析値が甲第8号証に記載されている旨主張するが(審判請求書の(5-4-1-2)),そもそも,製品1が何ら特定されていない以上,甲第8号証が,製品1に関する書証であるかも不明である。さらに,甲第8号証においても,「Celeb de TAMATO あいこ(食塩無添加)」なる記載や,ファイル名としての「2010-95121-3-2」なる記載及びファイルの更新日時としての「2011/03/02」なる記載(第9,第12及び第13丁)はあるものの,その他製品を特定する情報が一切記載されておらず,甲第8号証が,製品1に関する書証であるか,又は,全く別の製品に関するものであるのかは不明であると言わざるを得ない。
請求人は,甲8号証に記載されている分析値が,製品1の分析値であることの証明を怠っている以上,甲第8号証に記載の分析値をもって,本件特許の請求項1?3に係る発明が特許出願前に公然実施をされた発明であると主張することは著しく失当である。
よって,上述のとおり,製品1に関する書証であるか,又は,全く別の製品に関するものであるのかは不明である甲第8号証に記載の製品1の分析値をもって,本件特許の請求項1?3に係る発明が特許出願前に公然実施をされた発明であると主張することは失当である。更に,請求人は,製品1が約9ヶ月(上記仮定における製造日から分析試験までの期間)の間保存された際の温度条件等や,その期間に生じたであろう経時変化の影響についても立証していないが,後述するとおり,製品2ですら再現した製品2’との関係で経時変化試験結果に疑義がある以上,製品1の「糖度」,「糖酸比」,「グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量」が,分析書作成以前においても本件特許の請求の範囲内であるとの請求人の主張は何ら根拠がなく失当である。
特に,製品1の糖度自体に関して特筆すべきは,甲第6号証及び甲第7号証ではその糖度が「10度以上」と記載されているのにも拘らず,請求人が測定した際には「9.4」に低下しているという事実である。甲第6号証及び甲第7号証では製品1の賞味期限が「1年(常温)」と記載されているが,食品業界では,商品の特徴として謳われている物性値が変化しない範囲で賞味期限が設定される。換言すると,製品1の製造から分析までの期間が上記表のとおり約9ヶ月と賞味期限の範囲内であったならば,常温で保存されている限りは製品1の糖度は「10度以上」を下回るはずがない。この点,請求人は,製品2の保管状況については言及しているものの(審判請求書(5-4-2-3)),製品1の保管状況については何ら説明していない。
よって,分析時の糖度が(賞味期限内である)約9ヶ月という短期間に製造時の「10度以上」から大幅に下回っている事実は,製品1が常温とは異なる過酷な条件に置かれていたことの証左と言える。そのような過酷な条件下に置かれていた製品1の物性値を測定したところで,本件特許出願前の製品1の物性値を正しく表しているとは言えず,製品1は本件特許発明に対する引用発明としての適格性を欠いた製品である蓋然性が極めて高いのである。
よって,信憑性に欠ける証拠に基づき製品1の物性値が主張されている以上,本件特許発明1は,製品1で実施された発明とは同一ではない。また,請求項1に従属する請求項2及び3についても同様である。
さらに,訂正後の本件特許発明1は,グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が「0.36?0.42重量%」である点で,製品1とは明確に相違する。請求項1を引用する本件特許発明3についても,製品1とは明確に相違する。
(2) 製品2(「SWEET RUBY」)に関する書証の信憑性について
請求人は,製品2の製造日等を記載した書証(調合チェック表)が甲第12号証である旨主張するが,甲第12号証には,「SWEET RUBY」との記載はあるが,その他個々の製品を特定する情報が一切記載されていない。また,請求人は,製品2の販売申出日を記載した書証が甲第13号証である旨主張するが,甲第13号証には,甲第11号証に掲載されている製品2の外観写真に相当する写真が掲載されていない。
したがって,甲第12号証及び甲第13号証が,製品2に関する書証であるか,又は,全く別の製品に関するものであるのかは不明であると言わざるを得ない。
製品2の分析試験について,請求人は,食品分析センターが,2013年5月27日に提出された製品2に対して分析試験を行った結果を纏めた,同年8月12日付け分析試験成績書(甲第14号証)に基づき,製品2の「糖度」,「糖酸比」,「グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量」は,下記表2記載の数値であると主張する。
しかしながら,下記表2のとおり,当該分析試験は,製品2が製造されてから約3年経過した後に行ったものであり,経時により変化している可能性が高い。

この点,請求人は,分析試験成績書作成時点における糖度及び酸度が,製造時の値と大きく異ならないことの裏付けとして,製品2の再現品に関するものとされる甲第17号証や,製品2の現行流通品に関するものとされる甲第10号証を提出する。
しかしながら,甲第17号証に示されているとされる経時変化試験は,製品2をサンプルとして試験を行ったものではなく,Sweet Ruby の製造基準書に依拠して作成したとされる製品(以下「製品2’」という。)をサンプルとしているものであり,製品2の経時変化を確認したとは言えない。
すなわち,製品2’の製造に際して依拠したとされる製造基準書(甲第17号証第4丁及び第5丁)には,製造工程について何らの記載もないので,かかる製造基準書に依拠してSweet Rubyを再現できるとは到底考えられず,また,甲第17号証第1丁「2.試験サンプルの作成」に記載されている製品2’の製造方法が,Sweet Rubyの製造方法と同じかどうかの確認もできない。さらに,製品2はペットボトル飲料であるため,飲料の充填後に高熱での殺菌工程にかけられていたはずであるにもかかわらず,製品2’はペットボトルにホットパック充填された後に殺菌されていない等,製品2が経たであろう工程を経ていないことも伺われる。以上からすると,製品2’が,Sweet Rubyの再現品であるとは示されていない。
仮に製品2’がSweet Rubyの再現品であったとしても,製品2’の経時変化を考慮すると,製品2は,少なくとも製造時は本件特許請求の範囲外であり,また,その後も数ヶ月の間,本件の特許請求の範囲外であったと考えられる。
まず,製品2’の経時変化の挙動について検討する。甲第17号証では製品2’のグルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量が製造時(相当月数0ヶ月)に634mg,すなわち,0.634重量%であったことが記載されており,これは本件特許で規定された「0.25?0.60重量%」の範囲外の値である。更に,加速劣化試験により,相当月数0ヶ月に634mgであったものが相当月数1ヶ月の時点で519mgに,相当月数2ヶ月の時点の時点で465mgに,そして相当月数3ヶ月の時点(製造から8ヶ月後)の時点で406mgに急減している。換言すると,(測定値としての)イニシャル値である634mgグルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量は相当月数が3ヶ月経過しただけで約64%の値にまで急減しているのである。最終的に,グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量は292mg,すなわち約46%の値に減少している(相当月数36ヶ月)。
そこで,製造から約36ヶ月後に測定された製品2についても同様にグルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量が顕著に減少していると考えられる。すなわち,製品2’が約36ヶ月の保管期間の間にグルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量が顕著に減少している以上,製品2について測定されたグルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量(437mg)は製品2’の相当数36ヶ月時点における292mgに対応しており,尚且つ,製造から保管までの製品2のグルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の変化も上述のような製品2’の変化と同じ挙動を示したと仮定する。その場合,以下の図に示すとおり,製造時点における製品2のグルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量は製品2’の製造時よりも顕著に高いことが予想される。
この点,請求人は,甲第16号証に基づき,保管状況が「冷温下(4℃)であったことから(甲第16号証),保管条件による経時変化は軽微であることが容易に推測される」旨主張している(審判請求書の(5-4-2-3))。しかしながら,そもそも,甲第16号証は単に「SWEET RUBY」という商品が4℃で保存された旨記載されているに過ぎず,実際に製品2が4℃で保存されていたことを示すものではないため,製品2が4℃で保存されていたとしても,4℃で約36ヶ月の保管期間(製造から測定日までの期間)が加速劣化試験を行った場合のどの程度の保管期間に相当するのかも不明である。
よって,製品2’は経時で著しく変化があるにもかかわらず,製品2については,経時変化は軽微であるなどとする請求人の主張は失当である。
さらに,訂正後の本件特許発明1は,糖度が「9.4?10.0」であり,また,グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が「0.36?0.42重量%」である点で,製品2とは明確に相違する。請求項1を引用する本件特許発明3についても,製品2とは明確に相違する。


4 無効理由4(刊行物公知による新規性喪失等)について
(1) 刊行物公知による新規性喪失について
ア 甲第19号証に記載の発明(以下「甲19発明」という)は,トマトをエステラーゼで処理することで得られる,香味の増強されたトマト酵素処理物に関するものである(請求項1,請求項8等)。
本件特許の請求項1に記載されている物性値のうち,甲第19号証には甲19発明の糖度しか記載されていないところ,請求人は,「出願時技術常識に基づき,甲第19号証に記載されているに等しい事項として,前述のトマトを含有した飲料において,その糖酸比が20.25?29.93であるもの,であることが理解される」と主張している(審判請求書の(5-5-1-2))。
しかしながら,請求人は,糖度については甲第19号証の実施例の酵素処理物のものを引用しておきながら,同号証に記載されていない糖酸比については「出願時技術常識」としてトマト果実のものを引用しており(甲第20号?第25号証),これはトマト酵素処理物のものでもなければトマト含有飲料のものでもない。
また,甲第19号証で原料として使用されているトマト果実は「桃太郎 T-93」であるところ,甲第20号証?第24号証,甲第26号証に記載されているのは別品種である。甲第25号証も「ハウス桃太郎」に関する書証あって(例えば,第191頁第5行),「桃太郎 T-93」に関するものではない。請求人は,「桃太郎 T-93」とは品種が異なるトマト果実の酸度を0.30?0.40程度であるとし,甲第19発明の酸度も「出願時技術常識に基づき,・・・0.30?0.40程度であると当業者は理解する」と主張しているが,乙第3号証の表2には,「桃太郎 T-93」の酸度が「0.61」であることが記載されている。
また,上記の酸度はトマト果実のものであって,トマト酵素処理物のものでもない。この点,請求人は,トマト原料の酸度が0.30?0.40程度であれば,「トマト含有飲料の酸度も同程度であることは,段落【0090】の【表1】の参考例1乃至10からも明らかである。」(審判請求書第62頁第8?9行)と主張しているが,同段落には参考例1?10のトマト含有飲料の酸度は記載されているものの,各トマト原料の酸度は記載されていない。
請求人が主張するとおり仮にトマト酵素処理物の酸度がトマト原料のものと同程度であった場合,請求人は,甲19発明に係るトマト酵素処理物の糖度を「8.10?8.98」として,これを品種が異なるトマト原料の酸度である「0.30?0.40」と糖酸比が「20.25?29.93」になると主張しているが,「8.10?8.98」を「0.61」で除した場合,糖酸比は「13.27?14.72」となり,甲19発明の糖酸比は本件特許の請求項1で規定されている糖酸比の範囲「19.0?30.0」から外れることになる。尚,乙第3号証の表2に記載されている酵素処理前の「桃太郎 T-93」の糖酸比「10.4」も本件特許の範囲外の値である。
甲第19号証に記載されていない酸度を類推するのであればせめて実施例の記載に即して「桃太郎T-93」の酸度を用いるべきである。
よって,本件特許発明1の糖酸比が甲19発明のものと相違することは明らかである。
糖酸比の相違に加え,甲19発明はトマト酵素処理物であって,本件特許発明1のようにトマト含有飲料ではない点でも相違する。甲第19号証には,以下のとおりトマト酵素処理物が「飲料」自体というより寧ろ,他の成分と共にジュースや野菜飲料等に配合されるものであることが記載されている。
「かくして得られるトマト酵素処理物は,例えば,ケチャップ,ソース類,シーズニング類等の調味料等,ジュース,野菜飲料,アルコール飲料等のドリンク類,パン等の主食,キャンディー,クラッカー,ケーキ,クッキー,ゼリー等の菓子類などに食品で通常用いられる任意成分と共に配合することができる。」(段落0022)
すなわち,請求人が主張する糖度「8.10?8.98」は実施例1?4のトマト酵素処理物のものであって,トマト含有飲料のものではない。糖酸比についても同様である。
よって,本件特許発明1は,甲第19号証に記載された発明ではない。
以上から,本件特許発明1は,甲第19号証に記載された発明と同一ではないため,その新規性を喪失していない。請求項1を引用するか,請求項1と同様に,各発明に係るトマト含有飲料の糖酸比が「19.0?30.0」以上である旨規定している請求項2?4,7及び8に係る発明についても同様である。
イ 本件特許発明2
請求人が甲19発明の粘度について甲第27号証?第29号証の記載されているトマトジュースの粘度を根拠としていることから明らかなとおり,甲第19号証には,トマト含有飲料における粘度についての記載は一切ない。
このため,請求人は,甲第27号証?第29号証の記載に基づき,「トマトジュースの粘度は,100?800cP」であると主張する。
しかし,請求人が甲19発明の粘度の根拠としている「100?800cP」の数値は,透明処理したトマトジュース(甲第27号証,請求項1)や,どのように取得したか不明なトマトジュース(甲第28号証)や,粘度調整したトマトジュース(甲第29号証[0006])に基づくものであって,甲第19号証に記載のトマト酵素処理物又は該トマト酵素処理物を配合した飲食品における粘度を示すものではない。例えば,甲第29号証の請求項1には「粘度を250?3000mPa・sの範囲に調整した原料トマトジュースに,植物組織崩壊酵素を添加し」と記載されているが,この粘度は酵素で処理される前のトマトジュースの粘度を記載しているのであって,甲第19号証に記載のトマト酵素処理物の粘度を裏付けるものではない。甲第27号証や甲28号証も同様に,単なる「トマトジュース」の粘度を記載しているに過ぎない。
したがって,仮に甲第19号証に記載されている酵素処理前のトマト,例えば実施例1に記載のトマトホモジネートが甲第27号証?甲第29号証に記載されている「100?800cP」の粘度を有するトマトジュース等に相当したとしても,酵素処理後のトマト酵素処理物,更には該処理物を配合した飲食品の粘度が尚も「100?800cP」を維持し,本件特許発明2の粘度「350?1000cP」と重複することの根拠を請求人は何ら示していない。
以上から,本件特許発明2は,甲第19号証に記載された発明と同一ではないため,その新規性を喪失していない。
ウ 本件特許発明3
本件特許の請求項3は,請求項1又は2に従属する請求項である。そして,上述のとおり,本件特許の請求項1に係る発明は,甲第19号証に記載された発明と同一ではないから,請求項1を直接的乃至間接的に引用する本件特許発明3も同様に甲第19号証に記載された発明と同一ではない。
以上から,本件特許発明3は,甲第19号証に記載された発明と同一ではない。
エ 本件特許発明4
本件特許の請求項4は,請求項1?3のいずれか1項に従属する請求項である。そして,上述のとおり,本件特許の請求項1に係る発明は,甲第19号証に記載された発明と同一ではないから,請求項1を直接的乃至間接的に引用する本件特許発明4も同様に甲第19号証に記載された発明と同一ではない。
オ 本件特許発明7
請求人は,甲第19号証には,トマト含有飲料におけるpHが「4.35?4.41」であることが記載されており,本件特許発明7が,甲第19号証に記載の発明と同一であると主張するが,甲第19号証に記載されているpHは実施例1?4,比較例1?3([0024]?[0030])のトマト酵素処理物のものであって,トマト酵素処理物を配合した「飲食品」のものではない。
いずれにせよ,本件特許の請求項7は,請求項1?6のいずれか1項に従属する請求項である。そして,上述のとおり,本件特許の請求項1に係る発明は,甲第19号証に記載された発明と同一ではないから,請求項1を直接的乃至間接的に引用する本件特許発明7も同様に甲第19号証に記載された発明と同一ではない。
カ 本件特許発明8
本件特許の請求項8は,請求項1と同様に,発明に係るトマト含有飲料の糖酸比が「19.0?30.0」である旨規定している。そして,上述のとおり,本件特許の請求項1に係る発明は,甲第19号証に記載された発明と同一ではないから,本件特許発明8も同様に甲第19号証に記載された発明と同一ではない。
以上から,本件特許発明8は,甲第19号証に記載された発明と同一ではない。
キ 本件特許発明11
本件特許の請求項11は,請求項1と同様に,発明に係るトマト含有飲料の糖酸比が「19.0?30.0」である旨規定している。そして,上述のとおり,本件特許の請求項1に係る発明は,甲第19号証に記載された発明と同一ではないから,本件特許発明11も同様に甲第19号証に記載された発明と同一ではない。
以上から,本件特許発明11は,甲第19号証に記載された発明と同一ではない。
ク 以上より,本件特許発明1?4,7,8及び11は,甲第19号証に記載された発明と同一ではないから,特許法第29条第1項第3号の規定に該当しない。よって,本件特許の請求項1?4,7,8及び11に係る発明が,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものであるとする,請求人の主張は失当である。
(2) 刊行物公知による進歩性欠如(予備的主張)について
ア 本件特許発明1
引用発明である甲19発明の糖度8.10?8.89は「トマト酵素処理物」のものであるところ,請求人が「糖酸比が20.25?29.33」の根拠としている酸度0.30?0.40は「原料トマト」のものであり,0.30?0.40の酸度を導くために使用した甲第20号?第26号証に記載の原料トマトの品種も甲19発明の原料トマトとは異なる。
このように,請求人は由来の異なる測定値を対比している点で,最終的に製造される「トマト含有飲料」の糖度と酸度から糖酸比を算出している本件特許発明とは計算の前提自体が異なっているのである。
甲第19発明の糖度「8.10?8.98」を原料トマトである「桃太郎 T-93」の酸度で「0.61」で除すならば,糖酸比は「13.27?14.72」となる。
ここで,本件特許発明が解決しようとする課題は,「主原料となるトマト以外の野菜汁や果汁を配合しなくても,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された,新規なトマト含有飲料」等を提供すること,換言すると甘味や酸味等の呈味のバランスを高めることにあるところ(段落【0008】,【0042】等),甲19発明が解決しようとする課題は,甘味や酸味等の呈味というより,香気の増強にある(実施例6等)。
甲第19号証は,甘味や酸味等の呈味のバランスを高めるために糖度を「9.00?13.0」の範囲内とし,且つ糖酸比を「19.0?30.0」の範囲内とすることについて記載も示唆もしていない。
イ 以上のとおり,本件特許の請求項1に係る発明は,甲第19号証に記載の発明に基づいて容易になし得るものとはいえないことから,特許法第29条第2項の規定に反するものではない。請求項1を引用するか,請求項1と同様に,各発明に係るトマト含有飲料の糖酸比が「19.0?30.0」である旨規定している請求項2?4,7及び8に係る発明についても同様である。
よって,本件特許の請求項1?4,7及び8に係る発明は,同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものであるとする,請求人の主張は失当である。

5 無効理由5(進歩性欠如)について
(1) 本件特許発明5
トマトジュースのpH調整(酸度低減)のために重曹を添加することが周知であったとしても,甲19発明から出発した場合,当業者が甲19発明に対し重曹を添加する動機付けは存在していない。より具体的には,甲第19号証の実施例1に記載されている酵素処理トマト分離液のpHは4.37であるのに対し,酵素処理されていない点を除き実施例1と同一である比較例1に記載のトマト分離液のpHは4.41である。ここで,甲第19号証の表1に記載されている官能試験結果によれば,「味の酸味」の評点は,pHが0.04低い実施例1の酵素処理トマト分離液の方(「8.0」)が比較例1のもの(「5.0」)より高いことが示されている。
pHが低い実施例1の方が酸味について好ましいことが示されている以上,甲第19号証に接した当業者が,甲19発明のpHをより低下させることはあっても,敢えて重曹を添加してそのpHを増大させ,酸味の評価が劣る比較例1の値に近づけるとは考え難い。
よって,請求人のかかる主張は失当である。
尚,請求人は重曹を含有させることが当業者に容易になし得たことの理由として,「糖酸比20以上のトマトジュースが流通していたこと」等を挙げているが,請求人は,甲第19発明から出発した場合に,なぜ甲第6号証等に記載されている製品1等の糖酸比を参照した上で,同発明に係るトマト酵素処理物に重曹を含有させることが当業者に容易になし得たことであったかについて何ら説明をしていない。
そもそも,本件特許の請求項5は請求項1を引用するものであるところ,本件特許の請求項1に係る発明が甲第19号証に記載の発明に基づいて容易になし得るものとはいえない以上,本件特許発明5は,本件特許発明1と同様に特許法第29条第2項の規定に反するものではない。
(2) 本件特許発明6
酸度調整のためにトマト搾汁液等を脱酸処理することが周知であったとしても,このことが直ちに,甲19発明に脱酸トマト汁を含有させることの容易想到性を裏付けるものとはならない。以下にその理由を示す。
本件特許発明における脱酸トマト汁の役割はクエン酸等の有機酸の除去による酸味の抑制にあるところ(本件特許明細書の段落【0054】),甲第19号証は,香味の増強という課題を解決するために,酵素処理により「香気物質である有機酸を効率よく遊離」させること,すなわち有機酸を増大させることについて教示している。しかしながら,当業者は,甲19発明の酸味が既に好ましいため,脱酸処理により有機酸が除去されてしまう危険性を考慮し,敢えて甲19発明に係るトマト酵素処理物を脱酸処理にかけるとは考え難い。
そもそも,本件特許の請求項6は請求項1を引用するものであるところ,本件特許の請求項1に係る発明が甲第19号証に記載の発明に基づいて容易になし得るものとはいえない以上,本件特許発明6は,本件特許発明1と同様に特許法第29条第2項の規定に反するものではない。
(3) 本件特許発明9
上記(1)で述べた理由と同様の理由から,本件特許発明5と同様に本件特許発明9は特許法第29条第2項の規定に反するものではない。
(4) 本件特許発明10
上記(2)で述べた理由と同様の理由から,本件特許発明6と同様に本件特許発明10は特許法第29条第2項の規定に反するものではない。
(5) 以上のとおり,本件特許の請求項5,6,9及び10に係る発明は,甲第19号証に記載の発明に基づいて容易になし得るものとはいえないことから,特許法第29条第2項の規定に反するものではない。
よって,本件特許の請求項5,6,9及び10に係る発明は,同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものであるとする,請求人の主張は失当である。

そして,被請求人は,証拠方法として,以下の乙第1?3,5?7号証を提出している。
[証拠方法]
乙第1号証:株式会社伊藤園「経時試験報告書」(写し)
乙第2号証:田島,「トマトの市場価格と品質成分値との関連」,フードシステム研究,Vol.1(1994)No.1 p.74-81
乙第3号証:海保ら,「トマト黄化葉巻病抵抗性品種の無加温半促成栽培での品種特性」,成果情報,東京都農林総合研究センター,平成21年3月,p.7-8
乙第5号証:「あいこ2本セット【ギフトラッピング済】-セレブデトマトネットショップ」と題するウェブページのプリントアウト
乙第6号証:「コムピータウン-あいこトマトジュース2本セット|セレブ・デ・トマト」と題するウェブページのプリントアウト
乙第7号証:株式会社ブランドジャパン従業員からの2015年3月20日付けメール(写し)
なお,乙第4号証は取り下げられた。

第6 当審の判断
1 無効理由2(サポート要件違反)について
(1) 取消判決において,無効理由2について,次のように判断された(判決書57?64頁)。
「(4) 発明の詳細な説明に記載された発明と特許請求の範囲に記載された発明との対比
・・・
イ ・・・
(イ) 一般に,飲食品の風味には,甘味,酸味以外に,塩味,苦味,うま味,辛味,渋味,こく,香り等,様々な要素が関与し,粘性(粘度)などの物理的な感覚も風味に影響を及ぼすといえる(甲3,4,・・・)から,飲食品の風味は,飲食品中における上記要素に影響を及ぼす様々な成分及び飲食品の物性によって左右されることが本件出願日当時の技術常識であるといえる。また,トマト含有飲料中には,様々な成分が含有されていることも本件出願日当時の技術常識であるといえる(甲25の193頁の表-5-196参照)から,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された風味の評価試験で測定された成分及び物性以外の成分及び物性も,本件発明のトマト含有飲料の風味に影響を及ぼすと当業者は考えるのが通常ということができる。したがって,『甘み』,『酸味』及び『濃厚』という風味の評価試験をするに当たり,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量を変化させて,これら三つの要素の数値範囲と風味との関連を測定するに当たっては,少なくとも,○1『甘み』,『酸味』及び『濃厚』の風味に見るべき影響を与えるのが,これら三つの要素のみである場合や,影響を与える要素はあるが,その条件をそろえる必要がない場合には,そのことを技術的に説明した上で上記三要素を変化させて風味評価試験をするか,○2『甘み』,『酸味』及び『濃厚』の風味に見るべき影響を与える要素は上記三つ以外にも存在し,その条件をそろえる必要がないとはいえない場合には,当該他の要素を一定にした上で上記三要素の含有量を変化させて風味評価試験をするという方法がとられるべきである。
・・・本件明細書の発明の詳細な説明には,糖度及び糖酸比を規定することにより,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みを有しつつも,トマトの酸味が抑制されたものになるが,この効果が奏される作用機構の詳細は未だ明らかではなく,グルタミン酸等含有量を規定することにより,トマト含有飲料の旨味(コク)を過度に損なうことなくトマトの酸味が抑制されて,トマト本来の甘味がより一層際立つ傾向となることが記載されているものの,『甘み』,『酸味』及び『濃厚』の風味に見るべき影響を与えるのが,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量のみであることは記載されていない。また,実施例に対して,比較例及び参考例が,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量以外の成分や物性の条件をそろえたものとして記載されておらず,それらの各種成分や各種物性が,『甘み』,『酸味』及び『濃厚』の風味に見るべき影響を与えるものではないことや,影響を与えるがその条件をそろえる必要がないことが記載されているわけでもない。そうすると,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがありかつトマトの酸味が抑制されたとの風味を得るために,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量の範囲を特定すれば足り,他の成分及び物性の特定は要しないことを,当業者が理解できるとはいえず,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された風味評価試験の結果から,直ちに,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量について規定される範囲と,得られる効果というべき,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがありかつトマトの酸味が抑制されたという風味との関係の技術的な意味を,当業者が理解できるとはいえない。
(ウ) また,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された風味の評価試験の方法は,・・・評価の基準となる0点である『感じない又はどちらでもない』については,基準となるトマトジュースを示すことによって揃えるとしても,『甘み』,『酸味』又は『濃厚』という風味を1点上げるにはどの程度その風味が強くなればよいのかをパネラー間で共通にするなどの手順が踏まれたことや,各パネラーの個別の評点が記載されていない。したがって,少しの風味変化で加点又は減点の幅を大きくとらえるパネラーや,大きな風味変化でも加点又は減点の幅を小さくとらえるパネラーが存在する可能性が否定できず,各飲料の風味の評点を全パネラーの平均値でのみ示すことで当該風味を客観的に正確に評価したものととらえることも困難である。また,『甘み』,『酸味』及び『濃厚』は異なる風味であるから,各風味の変化と加点又は減点の幅を等しくとらえるためには何らかの評価基準が示される必要があるものと考えられるところ,そのような手順が踏まれたことも記載されていない。そうすると,『甘み』,『酸味』及び『濃厚』の各風味が本件発明の課題を解決するために奏功する程度を等しくとらえて,各風味についての全パネラーの評点の平均を単純に足し合わせて総合評価する,・・・風味を評価する際の方法が合理的であったと当業者が推認することもできないといえる。
以上述べたところからすると,この風味の評価試験からでは,実施例1?3のトマト含有飲料が,実際に,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがありかつトマトの酸味が抑制されたという風味が得られたことを当業者が理解できるとはいえない。
(エ) なお,糖度とグルタミン酸等含有量を,本件明細書の発明の詳細な説明【0090】【表1】に記載されている実施例1と同じく,『9.4』,『0.42』とした上,糖酸比を本件特許請求の範囲の下限値である『19.0』とした場合,酸度は『約0.49』となるから,酸味の評価が実施例1(酸度は約0.34)よりも下がる可能性が高い。仮に酸味の評価が『-0.6』となれば,甘み『0.8』,濃厚『1.0』(実施例1の評価)であるので,合計の評点は『2.4』となり,酸味の評価が『-0.5』となれば,合計の評点は『2.3』となり,酸味の評価が『-0.4』となれば,合計の評点は『2.2』となるところ,これらが総合評価において本件発明の効果を有するとされるものかどうかは明らかでない(本件明細書の発明の詳細な説明【0090】【表1】に記載されている参考例1は「2.4」でも総合評価で「×」とされている。)。
(オ) したがって,本件出願日当時の技術常識を考慮しても,本件明細書の発明の詳細な説明の記載から,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量が本件発明の数値範囲にあることにより,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがありかつトマトの酸味が抑制されたという風味が得られることが裏付けられていることを当業者が理解できるとはいえないから,本件明細書の特許請求の範囲の請求項1,8及び11の記載が,明細書のサポート要件に適合するということはできない。
・・・
(6) 本件発明2?7,9及び10について
ア ・・・
本件発明2?7は,・・・請求項1を引用するものであるから,前記(4)で判示したところからすると,本件明細書の発明の詳細な説明の記載から,本件発明2?7のトマト含有飲料により,本件発明の効果が得られるとは理解できない。
したがって,本件明細書の特許請求の範囲の請求項2?7の記載が,明細書のサポート要件に適合するということはできないというべきである。
イ ・・・
本件発明9及び10は,・・・請求項8を引用するものであるから,前記(4)で判示したところからすると,本件明細書の発明の詳細な説明の記載から,本件発明9及び10で製造するトマト含有飲料が本件発明の効果を奏するとは理解できない。
したがって,本件明細書の特許請求の範囲の請求項9及び10の記載が,明細書のサポート要件に適合するということはできないというべきである。
(7) 小括
よって,本件明細書の特許請求の範囲の請求項1?11の記載が,明細書のサポート要件に適合するということはできない。」
(2) よって,本件特許請求の範囲の請求項1?11の記載は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず,請求人の主張する無効理由2は理由がある。

2 無効理由1(実施可能要件)について
(1) 取消判決において判断されているとおり,「『甘み』,『酸味』及び『濃厚』の各風味が本件発明の課題を解決するために奏功する程度を等しくとらえて,各風味についての全パネラーの評点の平均を単純に足し合わせて総合評価する,・・・風味を評価する際の方法が合理的であったと当業者が推認することもできないといえる。・・・この風味の評価試験からでは,実施例1?3のトマト含有飲料が,実際に,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがありかつトマトの酸味が抑制されたという風味が得られたことを当業者が理解できるとはいえない。」(前記1)から,風味の合計点の技術上の意味は不明である。
そして,既に述べたとおり,本件明細書の特許請求の範囲の請求項1?11の記載が,明細書のサポート要件に適合するということはできないのであって(前記1),同様の理由により,本件明細書の発明の詳細な説明には,当業者が本件特許発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されているとは認められないから,当業者は,本件出願日当時の技術常識を考慮しても,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量が本件特許発明の数値範囲にあることにより,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがありかつトマトの酸味が抑制されたという風味が得られるという技術上の意義を有するものとして本件特許発明を実施することができない。
したがって,本件特許公報の表1中の風味の評価結果を当業者が理解することができず,前記「第4・1(1)イ」の理由により,発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない(特許法施行規則第24条の2)との規定に反すると認められる。
(2) 以上のとおりであるから,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載について,当業者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえず,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
よって,請求人の主張する無効理由1は,理由がある。

第7 むすび
以上のとおりであるから,本件特許の請求項1?11に係る特許についての無効理由1及び2はいずれも理由がある。
したがって,本件の請求項1?11に係る特許は,特許法第36条第4項1号及び同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり,同法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきものである。
審判に関する費用については,特許法第169条2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担するものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖度が9.4?10.0であり、糖酸比が19.0?30.0であり、グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が、0.36?0.42重量%であることを特徴とする、
トマト含有飲料。
【請求項2】
粘度が350?1000cPである、
請求項1に記載のトマト含有飲料。
【請求項3】
トマト以外の野菜汁及び果汁の総含有量が0.0?5.0重量%である、
請求項1又は2に記載のトマト含有飲料。
【請求項4】
少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)とを含有する、
請求項1?3のいずれか一項に記載のトマト含有飲料。
【請求項5】
重曹(C)を含有する、
請求項1?4のいずれか一項に記載のトマト含有飲料。
【請求項6】
少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)と脱酸トマト汁(D)とを含有する、
請求項1?5のいずれか一項に記載のトマト含有飲料。
【請求項7】
pHが4.4?4.8である、
請求項1?6のいずれか一項に記載のトマト含有飲料。
【請求項8】
少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)を配合することにより、糖度が9.4?10.0及び糖酸比が19.0?30.0となるように、並びに、グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が0.36?0.42重量%となるように、前記糖度及び前記糖酸比並びに前記グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量を調整することを特徴とする、
トマト含有飲料の製造方法。
【請求項9】
少なくとも重曹(C)を配合することにより、前記糖度及び前記糖酸比を調整することを特徴とする、
請求項8に記載のトマト含有飲料の製造方法。
【請求項10】
少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)と脱酸トマト汁(D)とを配合することにより、前記糖度及び前記糖酸比を調整することを特徴とする、
請求項8又は9に記載のトマト含有飲料の製造方法。
【請求項11】
少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)を配合することにより、糖度が9.4?10.0及び糖酸比が19.0?30.0となるように、並びに、グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が0.36?0.42重量%となるように、前記糖度及び前記糖酸比並びに前記グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量を調整することを特徴とする、
トマト含有飲料の酸味抑制方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2018-10-22 
結審通知日 2018-10-25 
審決日 2018-11-06 
出願番号 特願2011-94186(P2011-94186)
審決分類 P 1 113・ 536- ZAA (A23L)
P 1 113・ 832- ZAA (A23L)
P 1 113・ 537- ZAA (A23L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤井 美穂  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 窪田 治彦
莊司 英史
登録日 2013-02-01 
登録番号 特許第5189667号(P5189667)
発明の名称 トマト含有飲料及びその製造方法、並びに、トマト含有飲料の酸味抑制方法  
代理人 北谷 賢次  
代理人 遠山 友寛  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 宮下 洋明  
代理人 遠山 友寛  
代理人 北谷 賢次  
代理人 内藤 和彦  
代理人 内藤 和彦  
代理人 速見 禎祥  
代理人 松山 智恵  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 岩坪 哲  
代理人 松山 智恵  
代理人 中村 勝彦  
代理人 中村 勝彦  

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