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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1347984
審判番号 不服2018-2740  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-27 
確定日 2019-01-10 
事件の表示 特願2013-254695号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年6月22日出願公開、特開2015-112175号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年12月10日の出願であって、平成29年6月26日に手続補正書が提出され、同年7月24日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月22日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月5日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年12月1日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年12月11日付けで、同年12月1日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、平成30年2月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含むものであり、本件補正前の平成29年9月22日にされた手続補正の特許請求の範囲の請求項1の記載と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。また、A?J6については発明を分説するため当審で付与した。)。

(本件補正前)
「【請求項1】
A 遊技媒体が進入可能であり、遊技者にとって有利な第1状態と該第1状態よりも遊技者にとって不利な第2状態とに変化可能な可変入賞手段を備え、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 前記有利状態に制御されたときに、前記可変入賞手段を第2状態から第1状態に制御する遊技ラウンドを所定回数実行可能であり、
C 遊技の進行を制御する遊技制御手段と、
D 前記遊技制御手段が送信する指令情報に基づいて演出を制御する演出制御手段と、
E 遊技機への電力供給が停止しても所定期間記憶内容を保持可能であり、制御を行なう際に発生するデータを記憶可能な記憶手段とを備え、
F 前記遊技ラウンドは、前記可変入賞手段を第1の状態に第1期間制御する第1単位遊技ラウンドと、前記可変入賞手段を第1の状態に前記第1期間よりも短い第2期間制御する第2単位遊技ラウンドとを含み、
G 前記遊技制御手段は、前記有利状態の進行に応じて、前記第1単位遊技ラウンドを実行することを特定可能な第1単位遊技指令情報と、前記第2単位遊技ラウンドを実行することを特定可能な第2単位遊技指令情報とのいずれかの単位遊技指令情報と、前記可変入賞手段への遊技媒体の進入に基づく入賞通知情報とを、送信可能であり、
H 前記演出制御手段は、第1単位遊技指令情報の受信に基づいて所定報知を行ない、前記入賞通知情報の受信に基づいて特定報知を行ない、
I 前記遊技制御手段は、前記有利状態において遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開された場合、前記記憶手段に記憶されたデータに基づいて、前記有利状態の進行に応じた単位遊技指令情報を送信可能であり、
J 前記演出制御手段は、
J5’前記有利状態において遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開された場合、前記遊技制御手段から第1単位遊技指令情報を受信したことに基づいて、前記所定報知を再開可能である、
遊技機。」

(本件補正後)
「【請求項1】
A 遊技媒体が進入可能であり、遊技者にとって有利な第1状態と該第1状態よりも遊技者にとって不利な第2状態とに変化可能な可変入賞手段を備え、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 前記有利状態に制御されたときに、前記可変入賞手段を第2状態から第1状態に制御する遊技ラウンドを所定回数実行可能であり、
C 遊技の進行を制御する遊技制御手段と、
D 前記遊技制御手段が送信する指令情報に基づいて演出を制御する演出制御手段と、
E 遊技機への電力供給が停止しても所定期間記憶内容を保持可能であり、制御を行なう際に発生するデータを記憶可能な記憶手段とを備え、
F 前記遊技ラウンドは、前記可変入賞手段を第1の状態に第1期間制御する第1単位遊技ラウンドと、前記可変入賞手段を第1の状態に前記第1期間よりも短い第2期間制御する第2単位遊技ラウンドとを含み、
G 前記遊技制御手段は、前記有利状態の進行に応じて、前記第1単位遊技ラウンドを実行することを特定可能な第1単位遊技指令情報と、前記第2単位遊技ラウンドを実行することを特定可能な第2単位遊技指令情報とのいずれかの単位遊技指令情報と、前記可変入賞手段への遊技媒体の進入に基づく入賞通知情報とを、送信可能であり、
H 前記演出制御手段は、第1単位遊技指令情報の受信に基づいて所定報知を行ない、前記入賞通知情報の受信に基づいて特定報知を行ない、
I 前記遊技制御手段は、前記有利状態において遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開された場合、前記記憶手段に記憶されたデータに基づいて、前記有利状態の進行に応じた単位遊技指令情報を送信可能であり、
J 前記演出制御手段は、
J1 前記有利状態において遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開された場合、演出表示が再開される前に、復旧中であることを示す復旧画面を、演出表示が実行される演出表示手段に表示可能であり、
J2 前記所定報知として、前記有利状態において実行中の遊技ラウンドの回数を特定可能なラウンド数特定表示を実行可能であり、
J3 前記特定報知として、前記有利状態中に遊技者に付与された利益に関する利益特定報知を実行可能であり、
J4 前記第2単位遊技ラウンド中に前記ラウンド数特定表示及び前記利益特定報知を実行せず、
J5 前記有利状態において遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開された場合、前記遊技制御手段から第1単位遊技指令情報を受信したことに基づいて、前記ラウンド数特定表示を再開可能であり、
J6 前記第1単位遊技ラウンド中に遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開された場合、前記ラウンド数特定表示及び前記利益特定報知を再開する前に、前記復旧画面を表示する、
遊技機。」

2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「演出制御手段」が、「J1 前記有利状態において遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開された場合、演出表示が再開される前に、復旧中であることを示す復旧画面を、演出表示が実行される演出表示手段に表示可能であり、J2 前記所定報知として、前記有利状態において実行中の遊技ラウンドの回数を特定可能なラウンド数特定表示を実行可能であり、J3 前記特定報知として、前記有利状態中に遊技者に付与された利益に関する利益特定報知を実行可能であり、J4 前記第2単位遊技ラウンド中に前記ラウンド数特定表示及び前記利益特定報知を実行せず、J6 前記第1単位遊技ラウンド中に遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開された場合、前記ラウンド数特定表示及び前記利益特定報知を再開する前に、前記復旧画面を表示する」ことを付加して限定するとともに、J3の構成の付加に伴い、「J5’前記有利状態において遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開された場合、前記遊技制御手段から第1単位遊技指令情報を受信したことに基づいて」「再開可能である」対象を補正前の「前記所定報知」から「前記ラウンド数特定表示」に限定したものである。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0011】、【0013】、【0225】?【0227】、【0269】、【0283】及び【0290】並びに図8及び図19などの記載に基づいており、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、前記1(本件補正後)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献に記載された事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2012-249874号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0011】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1?図16にしたがって説明する。
図1には、パチンコ遊技機10が略示されており、パチンコ遊技機10の機体の外郭をなす外枠Y1の開口前面側には、各種の遊技用構成部材をセットする縦長方形の中枠Y2が開放及び着脱自在に組み付けられているとともに、中枠Y2の前面側には前枠Y3が開閉及び着脱自在に組み付けられている。前枠Y3は、図1に示すようにパチンコ遊技機10を機正面側から見た場合において、中枠Y2に重なるように組み付けられている。」

「【0034】
一方、下大入賞口21は、第2始動入賞口17の下方に配設されている。下大入賞口21は、正面視横長矩形状に形成されており、大入賞口ソレノイドSOL3(図8に示す)の作動により開閉動作を行う大入賞口扉21aを備えている。下大入賞口21は、大入賞口扉21aが開動作すると、図示しない遊技球の入球口が開放され、遊技球の入球が許容される。
【0035】
左大入賞口20と下大入賞口21の奥方には、入球した遊技球を検知するカウントスイッチSW3,SW4(図8に示す)がそれぞれ配設されている。左大入賞口20と下大入賞口21は、入球した遊技球をカウントスイッチSW3,SW4で検知することにより、予め定めた個数(例えば9個)の賞球としての遊技球の払出条件を付与し得る。左大入賞口20と下大入賞口21は、当り遊技中に大入賞口扉20a,21aの開動作によって開放されることで遊技球の入球が許容される。このため、大当り遊技中、遊技者は、賞球を獲得できるチャンスを得ることができる。」

「【0050】
以下、本実施形態のパチンコ遊技機10に規定する大当り遊技及び小当り遊技について図5及び図6にしたがって説明する。
大当り遊技は、特図変動ゲームにて大当り図柄が確定停止表示され、その特図変動ゲームの終了後に開始される。大当り遊技が開始すると、最初に大当り遊技の開始を示すオープニング演出が行われる。オープニング演出の終了後には、大入賞口(左大入賞口20、下大入賞口21)が開放されるラウンド遊技が予め定めた規定ラウンド数を上限(本実施形態では、16ラウンド又は9ラウンド)として複数回行われる。1回のラウンド遊技は、大入賞口(左大入賞口20、下大入賞口21)の開閉動作が所定回数行われるまでであり、1回のラウンド遊技中に大入賞口は、規定個数(入球上限個数)の遊技球が入球するまでの間、又は規定時間(ラウンド遊技時間)が経過するまでの間、開放される。また、ラウンド遊技では、ラウンド演出が行われる。そして、大当り遊技の終了を示すエンディング演出が行われ、大当り遊技は終了される。」

「【0079】
一方、大当りJに基づく大当り遊技は、下大入賞口21を開閉動作させる16ラウンド大当り遊技である。そして、この大当り遊技は、長開放動作のラウンド遊技と、超短開放動作のラウンド遊技とが混在するが、その混在の態様が大当りIに基づく大当り遊技と相違する。具体的に言えば、大当りJに基づく大当り遊技は、1?9ラウンドで、下大入賞口21を1回、長開放動作させる。一方で、10?16ラウンドで、下大入賞口21を1回、超短開放動作させる。なお、超短開放動作の間(すなわち、この場合はラウンド間)には、それぞれ「2秒」のインターバル時間が設定されている。また、大当りI,Jに基づく大当り遊技では、ラウンド間のインターバル時間も「2秒」に設定されている。」

「【0096】
次に、パチンコ遊技機10の制御構成について図8を参照して説明する。
本実施形態のパチンコ遊技機10の機裏側には、パチンコ遊技機10全体を制御する主制御手段としての主制御基板30が配設されている。主制御基板30は、パチンコ遊技機10全体を制御するための各種処理を実行するとともに、該処理結果に応じた各種の制御指令(制御コマンド)を出力する。また、機裏側には、統括制御基板31と、表示制御基板32と、ランプ制御基板33と、音声制御基板34とが配設されている。統括制御基板31は、主制御基板30が出力した制御信号(制御コマンド)に基づいて、表示制御基板32、ランプ制御基板33及び音声制御基板34を統括的に制御する。表示制御基板32は、主制御基板30と統括制御基板31が出力した制御信号(制御コマンド)に基づいて、演出表示装置11の表示態様(図柄、各種背景画像、文字、キャラクタなどの表示画像など)を制御する。また、ランプ制御基板33は、主制御基板30と統括制御基板31が出力した制御信号(制御コマンド)に基づいて、パチンコ遊技機10の各枠や遊技盤YBに配設されている装飾ランプRB(図8に図示する)の発光態様(点灯(点滅)/消灯のタイミングなど)を制御する。また、音声制御基板34は、主制御基板30と統括制御基板31が出力した制御信号(制御コマンド)に基づいて、パチンコ遊技機10の各枠に配設されているスピーカSP(図8に図示する)の音声出力態様(音声出力のタイミングなど)を制御する。本実施形態では、統括制御基板31、表示制御基板32、ランプ制御基板33、及び音声制御基板34によって副制御手段が構成されている。」

「【0098】
主制御基板30には、制御動作を所定の手順で実行する主制御用CPU30aと、主制御用CPU30aのメイン制御プログラムを格納する主制御用ROM30bと、必要なデータの書き込み及び読み出しができる主制御用RAM30cが設けられている。そして、主制御用CPU30aには、各種スイッチSW1?SW5が遊技球を検知して出力する検知信号を入力可能に接続されている。また、主制御用CPU30aには、第1特別図柄表示装置12a、第2特別図柄表示装置12b、第1特別図柄保留表示装置13a、第2特別図柄保留表示装置13b、普通図柄表示装置14、普通図柄保留表示装置15、ラウンド報知装置RH、普通電動役物ソレノイドSOL1、及び大入賞口ソレノイドSOL2,SOL3が接続されている。」

「【0105】
次に、統括制御基板31について図8を参照して以下に説明する。
統括制御基板31には、制御動作を所定の手順で実行する統括制御用CPU31aと、統括制御用CPU31aの統括制御プログラムを格納する統括制御用ROM31bと、必要なデータの書き込み及び読み出しができる統括制御用RAM31cが設けられている。統括制御用RAM31cには、パチンコ遊技機10の動作中に適宜書き換えられる各種情報(乱数値、タイマ値、フラグなど)が記憶(設定)される。また、統括制御用CPU31aには、表示制御基板32、ランプ制御基板33及び音声制御基板34が接続されている。統括制御用CPU31aは、各種制御コマンドを入力すると、統括制御プログラムに基づいて各種制御を実行する。
【0106】
次に、表示制御基板32について図8を参照して以下に説明する。
表示制御基板32には、表示制御動作を所定の手順で実行する表示制御用CPU32aと、表示制御用CPU32aの表示制御プログラムを格納する表示制御用ROM32bと、必要なデータの書き込み及び読み出しができる表示制御用RAM32cが設けられてい
る。表示制御用ROM32bには、各種の画像データ(図柄、各種背景画像、文字、キャラクタなどの画像データ)が記憶されている。表示制御用RAM32cには、パチンコ遊技機10の表示動作中に適宜書き換えられる各種情報(乱数値、タイマ値、フラグなど)が記憶(設定)される。また、表示制御用CPU32aには、演出表示装置11が接続されている。表示制御用CPU32aは、各種制御コマンドを入力すると、表示制御プログラムに基づいて各種制御を実行する。」

「【0127】
次に、大当り遊技の当り遊技処理と、当り遊技終了後の遊技状態処理について説明する。
主制御用CPU30aは、当り変動の図柄変動ゲームが終了すると、最初にオープニング演出の実行を指示するオープニングコマンドを統括制御用CPU31aに出力する。また、主制御用CPU30aは、大当りの種類に応じて開閉動作する大入賞口(左大入賞口20、下大入賞口21)と開閉動作の態様を特定し、大入賞口ソレノイドSOL2,SOL3に対して制御信号を出力する。前記制御信号は、開信号と閉信号からなる。開信号が出力された場合は、大入賞口ソレノイドSOL2,SOL3によって大入賞口扉20a,21aの開動作が行われる一方で、閉信号が出力された場合は、大入賞口ソレノイドSOL2,SOL3によって大入賞口扉20a,21aの閉動作が行われる。主制御用CPU30aは、大当り遊技毎に、開放動作時間、インターバル時間、及びラウンド遊技の終了条件(規定個数の入球又は規定時間の経過)をもとに、大入賞口の開閉動作を制御する。また、主制御用CPU30aは、開信号及び閉信号の出力とともに、大入賞口の開放指定コマンドと閉鎖指定コマンドを統括制御用CPU31aに出力する。なお、開放指定コマンドと閉鎖指定コマンドは、開放動作態様(超短開放動作、短開放動作、中開放動作、長開放動作)毎に設定されている。そして、主制御用CPU30aは、最終回のラウンド遊技が終了すると、エンディング演出の実行を指示するエンディングコマンドを出力するとともに、エンディング時間の経過時にエンディング演出を終了させることによって当り遊技を終了させる。本実施形態では、主制御用CPU30aが、入賞手段を開閉動作させる開閉処理を行う開閉制御手段として機能する。」

「【0139】
また、統括制御用CPU31aは、全図柄停止コマンドを入力すると、該コマンドを表示制御用CPU32aに出力する。また、統括制御用CPU31aは、オープニングコマンド、開放指定コマンド、閉鎖指定コマンド、及びエンディングコマンドを入力すると、大当りの種類などを考慮して、これらのコマンドに対応する大当り遊技中の演出を指示する演出指定コマンドを表示制御用CPU32aに出力する。」

「【0183】
そして、オープニング演出の終了後、画像表示部GHには、1?3ラウンドにおいて説明演出が画像表示される(図15(c))。この説明演出は、図16(a),(b)に示すように、統括制御用CPU31aが出力した演出指定コマンド(ADH40H/ADH41H/ADH42H)の入力を契機に、表示制御用CPU32aが画像表示させる。また、大当りIの場合は、10ラウンドを除く各ラウンドにおいて画像表示部GHにラウンド数が表示される。また、大当りJの場合は、1?9ラウンドにおいて画像表示部GHにラウンド数が表示される一方で、10?16ラウンドにおいて画像表示部GHにラウンド数が表示されない。このラウンド数の表示と非表示は、統括制御用CPU31aが出力した演出指定コマンド(A5H21H?29H、2BH?30H、00H)の入力を契機に、表示制御用CPU32aによって制御される。上記ラウンド数に関わる演出指定コマンドは、各ラウンドの最初の開放動作の開始時に、統括制御用CPU31aから出力される。」


上記記載事項を総合すれば、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる(a?j4については本願補正発明のA?J4に対応させて付与した。)。

「a 開閉動作を行う大入賞口扉21aが開動作すると、遊技球の入球口が開放され、遊技球の入球が許容され(【0034】)、入球した遊技球を検知することにより、予め定めた個数の賞球としての遊技球の払出条件を付与し得る下大入賞口21を備え、大当り遊技中に大入賞口扉21aの開動作によって開放されることで、遊技者は、賞球を獲得できるチャンスを得ることができる(【0035】)パチンコ遊技機10(【0011】)であって、
b 大当り遊技が開始すると、下大入賞口21が開放されるラウンド遊技が予め定めた規定ラウンド数を上限として複数回行われ(【0050】)、
c パチンコ遊技機10全体を制御するための各種処理を実行するとともに、該処理結果に応じた各種の制御指令(制御コマンド)を出力する主制御基板30と(【0096】)、
d 主制御基板30が出力した制御信号(制御コマンド)に基づいて、表示制御基板32、ランプ制御基板33及び音声制御基板34を統括的に制御する統括制御基板31と、主制御基板30と統括制御基板31が出力した制御信号(制御コマンド)に基づいて、演出表示装置11の表示態様を制御する表示制御基板32と(【0096】)を備え、
f 大当りJに基づく大当り遊技は、1?9ラウンドで、下大入賞口21を1回、長開放動作させる一方で、10?16ラウンドで、下大入賞口21を1回、超短開放動作させるものであり(【0079】)、
g 主制御基板30の主制御用CPU30aは、開放動作態様(超短開放動作、長開放動作)毎に設定されている開放指定コマンドと閉鎖指定コマンドを出力するものであり(【0098】、【0127】)、
h 統括制御基板31の統括制御用CPU31aは、主制御基板30の主制御用CPU30aが出力した開放指定コマンド、閉鎖指定コマンドを入力すると、大当りの種類などを考慮して、これらのコマンドに対応する大当り遊技中の演出を指示する演出指定コマンドを表示制御基板32の表示制御用CPU32aに出力するものであって(【0098】、【0105】、【0106】、【0127】、【0139】)、
j2 大当りJの場合は、1?9ラウンドにおいて、統括制御基板31の統括制御用CPU31aが出力した演出指定コマンドの入力を契機に、表示制御基板32の表示制御用CPU32aは、画像表示部GHにラウンド数を表示する一方で(【0105】、【0106】、【0183】)、
j4 10?16ラウンドにおいて画像表示部GHにラウンド数を表示しない(【0183】)、
パチンコ遊技機10。」

イ 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-253506号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0001】
本発明は、データのバックアップ機能を備えた遊技機に関する。」

「【0038】
大入賞口36の個数条件および時間条件を基準とする開放動作は大当りラウンドと称されるものであり、個数条件および時間条件のいずれかが満足されたときには大当りラウンドが再開される。この大当りラウンドの繰返し回数には上限値が設定されており、大当りラウンドの繰返し回数が上限値に達したときには大当り遊技が無条件に終了する。
大当りラウンド中には図柄表示器25に大当りラウンド表示が行われる。この大当りラウンド表示は現在の大当りラウンド数に応じたアニメーション画面を表示するものであり、大当りラウンド表示時にはスピーカ7からアニメーション画面の表示内容に連動して遊技音が出力され、LED22がアニメーション画面の表示内容に連動して発光する。これら1回目の大当りラウンド表示?最終回の大当りラウンド表示を大当り表示と称する。」

「【0038】
・・・
2-5.データバックアップ機能
島電源Vinが電源スイッチ88のオフ操作および停電の発生等に基いて遮断されたときにはコンデンサ97からメイン制御装置63のRAM66にバックアップ電源が印加され、メイン制御装置63のRAM66に全てのデータが保管される。このデータのバックアップ状態で電源スイッチ88がオン操作されたり、停電が復旧したときにはメイン制御装置63が電源遮断直前の状態に戻り、下記1)?3)に示すように、電源遮断直前の状態から処理を再開する。」

「【0041】
3)大当り遊技中に島電源Vinが遮断されたときには現在の大当りラウンド数等の遊技データがメイン制御装置63のRAM66にバックアップされる。この遊技データは遊技状態情報に相当するものであり、島電源Vinが復旧したときにはメイン制御装置63が遊技データのバックアップ結果に基いて大当り大入賞口36を開放することで大当り遊技を電源遮断直前の状態から再開する。これと共にメイン制御装置63から演出制御装置77に大当り開始コマンドが送信され、演出制御装置77がメイン制御装置63からの大当り開始コマンドに基いて大当り遊技の演出を電源遮断直前の状態から再開する。」

上記記載事項を総合すれば、引用文献2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる(e?jについては本願補正発明のE?Jに対応させて付与した。)。

「e 島電源Vinが電源スイッチ88のオフ操作および停電の発生等に基いて遮断されたときにコンデンサ97からメイン制御装置63のRAM66にバックアップ電源が印加され、メイン制御装置63のRAM66に全てのデータが保管され、このデータのバックアップ状態で電源スイッチ88がオン操作されたり、停電が復旧したときにメイン制御装置63が電源遮断直前の状態に戻り、電源遮断直前の状態から処理を再開する(【0038】)遊技機(【0001】)であって
i 大当り遊技中に島電源Vinが遮断されたときに現在の大当りラウンド数等の遊技データがメイン制御装置63のRAM66にバックアップされ、島電源Vinが復旧したときにメイン制御装置63が遊技データのバックアップ結果に基いて大当り大入賞口36を開放することで大当り遊技を電源遮断直前の状態から再開すると共にメイン制御装置63から演出制御装置77に大当り開始コマンドが送信され、演出制御装置77がメイン制御装置63からの大当り開始コマンドに基いて大当り遊技の演出を電源遮断直前の状態から再開するものであり(【0041】)、
j5 大当りラウンド中に図柄表示器25に大当りラウンド表示が行われる(【0038】)、
遊技機。」

ウ 本願の出願前に頒布された刊行物である特開2010-75435号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る弾球遊技機の実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態では、本発明に係る弾球遊技機として、パチンコ遊技機を例にとって説明する。」

「【0126】
この特別変動入賞装置管理処理が開始されると、図13において、主制御基板(主制御CPU)27は、まず上記の特別図柄管理処理のステップS320(図12)の処理により、特別図柄が停止したときの停止図柄が大当り図柄であって「大当り中」になっているか否かを判断する(ステップS401)。「大当り中」でなければ(ステップS401:NO)何もしないで、この特別変動入賞装置管理処理を終了してステップS161のLED管理処理(図6)に移行する。
【0127】
一方、「大当り中」である場合は(ステップS401:YES)、特別図柄管理処理(ステップS159)における大当りの当否抽選の結果の大当り遊技に応じた特別変動入賞装置42の一連の動作を制御するために以下の処理を実行していく。
【0128】
「大当り中」である場合(ステップS401:YES)、特別変動入賞装置42の大入賞口40への入賞球が検出されたか否かを判断する(ステップS402)。大入賞口40への入賞球が検出された場合は(ステップS402:YES)、大入賞口入賞コマンドを演出制御基板24に送信する(ステップS403)。この処理段階にて大入賞口40への入賞球が検出された場合に大入賞口入賞コマンドを演出制御基板24に送信するのは以下の理由からである。」

「【0241】
この大入賞口入賞コマンドを受信した場合(ステップS731:YES)、演出制御基板24は、推定純増個数Uを算出する(ステップS732)。この推定純増個数Uは、既に説明したように、遊技球が1個入賞したときに払い出される賞球数mから、大入賞口40に入賞した入賞球1個分と、その1個の入賞球を発生させるために発射させることが必要であった必要無駄球数Yとを減算することにより得られる数値である。
・・・
【0244】
しかしながら、図21Bの(A-1)のように推定純増個数Uの算出式を用いず、図21Bの(A-2)のように推定純増個数U自体を既知の規定数値として導入することもできる。この場合には、図13のステップS403の処理で送信される大入賞口入賞コマンドに、加算単位である推定純増個数Uが「h個(たとえばh=10個)」であるという情報を含ませ、この大入賞口入賞コマンドを受ける度に、上記規定値である「h個」を獲得球数カウンタの値に加算していくだけで(ステップS734)、容易に獲得球数Vを算出することができる。このステップS731およびS734の処理は、大当り中に遊技者が前記入賞により獲得した獲得球数を計数する大当り中獲得球数演算手段に対応する。」

「【0280】
本発明では、計数した獲得球数を一律に報知するのではなく、現在の大当りがどの大当りに属するかを考慮して獲得球数の報知タイミングを定めている。本実施形態では以下の理由から、2ラウンドの大当り中以外の期間で獲得球数を報知するようにしている。」

「【0297】
図27に、この形態における獲得球数表示条件判定処理(図20)の構成例を示す。演出制御基板24は、まず2ラウンド大当り中か否かを判断し(ステップS761、2ラウンド大当り中でない場合には(ステップS761:NO)、獲得球数カウンタの値が上記2500個を1報知単位としてランク分けした個数、たとえば最低ランクの2500個を超えたか否かを判断し(ステップS781)、その個数を超えた場合には(ステップS781:YES)、次回表示個数条件設定として1ランク上の報知単位(たとえば5000個)に更新する(ステップS782)。
【0298】
そして演出制御基板24は、ステップS782の処理の後、獲得球数表示用液晶データを設定し(ステップS763)、これにより獲得球数表示条件判定処理を終了する。この獲得球数表示用液晶データは、図17のステップS536において、液晶制御コマンドありと判断され、ステップS537にて液晶制御コマンドの一部として液晶制御基板25に送信され、獲得球数が画像表示される。」

上記記載事項を総合すれば、引用文献3には以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる(g?j4については本願補正発明のG?J4に対応させて付与した。)。

「g 主制御基板27は、大入賞口40への入賞球が検出された場合、大入賞口入賞コマンドを演出制御基板24に送信し(【0126】、【0128】)、
h 演出制御基板24は、
大入賞口入賞コマンドを受ける度に、規定値である「h個(たとえばh=10個)」を獲得球数カウンタの値に加算し(【0241】、【0244】)、
j4 2ラウンド大当り中でない場合に(【0297】)、
j3 獲得球数カウンタの値が1報知単位としてランク分けした個数、たとえば最低ランクの2500個を超えた場合に、次回表示個数条件設定として1ランク上の報知単位(たとえば5000個)に更新し((【0297】)、獲得球数表示用液晶データを設定し、液晶制御コマンドの一部として液晶制御基板25に送信し、獲得球数を画像表示する(【0298】)、
パチンコ遊技機(【0018】)。」

(3)対比・判断
ア 対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。なお、見出し(a)?(j4)は、本願補正発明のA?J4に対応させている。

(a)引用発明1の「遊技球」、「開閉動作を行う大入賞口扉21aが開動作」し「遊技球の入球口が開放され、遊技球の入球が許容され」る状態、「下大入賞口21」、「大当り遊技中に大入賞口扉21aの開動作によって開放されることで、遊技者は、賞球を獲得できるチャンスを得ることができる」状態、及び「パチンコ遊技機10」は、それぞれ、本願補正発明の「遊技媒体」、「遊技者にとって有利な第1状態」、「可変入賞手段」、「遊技者にとって有利な有利状態」、及び「遊技機」に相当する。
また、引用発明1において、「開閉動作を行う大入賞口扉21a」が「閉」じた状態のとき、「遊技球の入球口が開放」せず、「遊技球の入球が許容され」ず、「大入賞口扉21aが開動作」したときの状態よりも遊技者にとって不利な状態であることは明らかである。
したがって、引用発明1の「a 開閉動作を行う大入賞口扉21aが開動作すると、遊技球の入球口が開放され、遊技球の入球が許容され、入球した遊技球を検知することにより、予め定めた個数の賞球としての遊技球の払出条件を付与し得る下大入賞口21を備え、大当り遊技中に大入賞口扉21aの開動作によって開放されることで、遊技者は、賞球を獲得できるチャンスを得ることができるパチンコ遊技機10」は、本願補正発明の「A 遊技媒体が進入可能であり、遊技者にとって有利な第1状態と該第1状態よりも遊技者にとって不利な第2状態とに変化可能な可変入賞手段を備え、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機」に相当する。

(b)引用発明1の「b 大当り遊技が開始すると、下大入賞口21が開放されるラウンド遊技が予め定めた規定ラウンド数を上限として複数回行われ」ることは、本願補正発明の「B 前記有利状態に制御されたときに、前記可変入賞手段を第2状態から第1状態に制御する遊技ラウンドを所定回数実行可能であ」ることに相当する。

(c)引用発明1の「c パチンコ遊技機10全体を制御するための各種処理を実行するとともに、該処理結果に応じた各種の制御指令(制御コマンド)を出力する主制御基板30」は、本願補正発明の「C 遊技の進行を制御する遊技制御手段」に相当する。

(d)引用発明1の「制御信号(制御コマンド)」は、本願補正発明の「指令情報」に相当する。
したがって、引用発明1の「d 主制御基板30が出力した制御信号(制御コマンド)に基づいて、表示制御基板32、ランプ制御基板33及び音声制御基板34を統括的に制御する統括制御基板31と、主制御基板30と統括制御基板31が出力した制御信号(制御コマンド)に基づいて、演出表示装置11の表示態様を制御する表示制御基板32」からなるものは、本願補正発明の「D 前記遊技制御手段が送信する指令情報に基づいて演出を制御する演出制御手段」に相当する。

(f)引用発明1の「下大入賞口21を1回、長開放動作させる」こと及び「下大入賞口21を1回、超短開放動作させる」ことは、それぞれ、本願補正発明の「前記可変入賞手段を第1の状態に第1期間制御する第1単位遊技ラウンド」及び「前記可変入賞手段を第1の状態に前記第1期間よりも短い第2期間制御する第2単位遊技ラウンド」に相当する。
したがって、引用発明1の「f 大当りJに基づく大当り遊技は、1?9ラウンドで、下大入賞口21を1回、長開放動作させる一方で、10?16ラウンドで、下大入賞口21を1回、超短開放動作させる」ことは、本願補正発明の「F 前記遊技ラウンドは、前記可変入賞手段を第1の状態に第1期間制御する第1単位遊技ラウンドと、前記可変入賞手段を第1の状態に前記第1期間よりも短い第2期間制御する第2単位遊技ラウンドとを含」むことに相当する。

(g)引用発明1の「長開放動作」「に設定されている開放指定コマンドと閉鎖指定コマンド」及び「超短開放動作」「に設定されている開放指定コマンドと閉鎖指定コマンド」は、それぞれ、本願補正発明の「前記第1単位遊技ラウンドを実行することを特定可能な第1単位遊技指令情報」及び「前記第2単位遊技ラウンドを実行することを特定可能な第2単位遊技指令情報」に相当する。
また、引用発明1のfの「大当りJに基づく大当り遊技」の場合に、「1?9ラウンドで」「長開放動作」「に設定されている開放指定コマンドと閉鎖指定コマンド」を「出力」し、「10?16ラウンドで」「超短開放動作」「に設定されている開放指定コマンドと閉鎖指定コマンド」を「出力」することは明らかであるから、「大当りJに基づく大当り遊技」の進行に応じて、「長開放動作」「に設定されている開放指定コマンドと閉鎖指定コマンド」と、「超短開放動作」「に設定されている開放指定コマンドと閉鎖指定コマンド」とのいずれかの「開放指定コマンドと閉鎖指定コマンド」を出力するものといえる。
したがって、引用発明1のfの「1?9ラウンドで、下大入賞口21を1回、長開放動作させる一方で、10?16ラウンドで、下大入賞口21を1回、超短開放動作させる」「大当りJに基づく大当り遊技」の場合に、「g 主制御基板30の主制御用CPU30aは、開放動作態様(超短開放動作、長開放動作)毎に設定されている開放指定コマンドと閉鎖指定コマンドを出力する」ことと、本願補正発明の「G 前記遊技制御手段は、前記有利状態の進行に応じて、前記第1単位遊技ラウンドを実行することを特定可能な第1単位遊技指令情報と、前記第2単位遊技ラウンドを実行することを特定可能な第2単位遊技指令情報とのいずれかの単位遊技指令情報と、前記可変入賞手段への遊技媒体の進入に基づく入賞通知情報とを、送信可能であ」ることとは、「G’前記遊技制御手段は、前記有利状態の進行に応じて、前記第1単位遊技ラウンドを実行することを特定可能な第1単位遊技指令情報と、前記第2単位遊技ラウンドを実行することを特定可能な第2単位遊技指令情報とのいずれかの単位遊技指令情報とを、送信可能であ」る点で共通する。

(h)引用発明1の「画像表示部GHにラウンド数を表示する」ことは、本願補正発明の「所定報知を行な」うことに相当する。
また、引用発明1において、「h 統括制御基板31の統括制御用CPU31aは、主制御基板30の主制御用CPU30aが出力した開放指定コマンド、閉鎖指定コマンドを入力すると、大当りの種類などを考慮して、これらのコマンドに対応する大当り遊技中の演出を指示する演出指定コマンドを表示制御基板32の表示制御用CPU32aに出力するものであって」、「j2 大当りJの場合は、1?9ラウンドにおいて、統括制御基板31の統括制御用CPU31aが出力した演出指定コマンドの入力を契機に、表示制御基板32の表示制御用CPU32aは、画像表示部GHにラウンド数を表示する」のであるから、「画像表示部GHにラウンド数を表示する」ことは、「主制御基板30の主制御用CPU30aが出力した開放指定コマンド」に基づくことは明らかである。
したがって、引用発明1の「h 統括制御基板31の統括制御用CPU31aは、主制御基板30の主制御用CPU30aが出力した開放指定コマンド、閉鎖指定コマンドを入力すると、大当りの種類などを考慮して、これらのコマンドに対応する大当り遊技中の演出を指示する演出指定コマンドを表示制御基板32の表示制御用CPU32aに出力するものであって」、「j2 大当りJの場合は、1?9ラウンドにおいて、統括制御基板31の統括制御用CPU31aが出力した演出指定コマンドの入力を契機に、表示制御基板32の表示制御用CPU32aは、画像表示部GHにラウンド数を表示する」ことと、本願補正発明の「H 前記演出制御手段は、第1単位遊技指令情報の受信に基づいて所定報知を行ない、前記入賞通知情報の受信に基づいて特定報知を行な」うこととは、「H’前記演出制御手段は、第1単位遊技指令情報の受信に基づいて所定報知を行な」う点で共通する。

(j2)引用発明1の「j2 大当りJの場合は、1?9ラウンドにおいて、統括制御基板31の統括制御用CPU31aが出力した演出指定コマンドの入力を契機に、表示制御基板32の表示制御用CPU32aは、画像表示部GHにラウンド数を表示する」ことは、本願補正発明の「J 前記演出制御手段は」「J2 前記所定報知として、前記有利状態において実行中の遊技ラウンドの回数を特定可能なラウンド数特定表示を実行可能であ」ることに相当する。

(j4)引用発明1のfの「下大入賞口21を1回、超短開放動作させる」「j4 10?16ラウンドにおいて画像表示部GHにラウンド数を表示しない」ことと、本願補正発明の「J4 前記第2単位遊技ラウンド中に前記ラウンド数特定表示及び前記利益特定報知を実行」しないことは、「J4’前記第2単位遊技ラウンド中に前記ラウンド数特定表示を実行」しない点で共通する。

そうすると、両者は、
「A 遊技媒体が進入可能であり、遊技者にとって有利な第1状態と該第1状態よりも遊技者にとって不利な第2状態とに変化可能な可変入賞手段を備え、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 前記有利状態に制御されたときに、前記可変入賞手段を第2状態から第1状態に制御する遊技ラウンドを所定回数実行可能であり、
C 遊技の進行を制御する遊技制御手段と、
D 前記遊技制御手段が送信する指令情報に基づいて演出を制御する演出制御手段と、
を備え、
F 前記遊技ラウンドは、前記可変入賞手段を第1の状態に第1期間制御する第1単位遊技ラウンドと、前記可変入賞手段を第1の状態に前記第1期間よりも短い第2期間制御する第2単位遊技ラウンドとを含み、
G’前記遊技制御手段は、前記有利状態の進行に応じて、前記第1単位遊技ラウンドを実行することを特定可能な第1単位遊技指令情報と、前記第2単位遊技ラウンドを実行することを特定可能な第2単位遊技指令情報とのいずれかの単位遊技指令情報とを、送信可能であり、
H’前記演出制御手段は、第1単位遊技指令情報の受信に基づいて所定報知を行ない、
J 前記演出制御手段は、
J2 前記所定報知として、前記有利状態において実行中の遊技ラウンドの回数を特定可能なラウンド数特定表示を実行可能であり、
J4’前記第2単位遊技ラウンド中に前記ラウンド数特定表示を実行しない、
遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明は「E 遊技機への電力供給が停止しても所定期間記憶内容を保持可能であり、制御を行なう際に発生するデータを記憶可能な記憶手段」を備えるのに対し、引用発明1はそのようなものではない点。

(相違点2)
「G’前記遊技制御手段」は、本願補正発明では「前記可変入賞手段への遊技媒体の進入に基づく入賞通知情報」をも送信可能であるのに対し、引用発明1ではそのようなものではない点。

(相違点3)
「H’前記演出制御手段」は、本願補正発明では「前記入賞通知情報の受信に基づいて特定報知を行な」うのに対し、引用発明1ではそのようなものではない点。

(相違点4)
本願補正発明では「I 前記遊技制御手段は、前記有利状態において遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開された場合、前記記憶手段に記憶されたデータに基づいて、前記有利状態の進行に応じた単位遊技指令情報を送信可能であ」るのに対し、引用発明1ではそのようなものではない点。

(相違点5)
本願補正発明では「J 前記演出制御手段は」「J1 前記有利状態において遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開された場合、演出表示が再開される前に、復旧中であることを示す復旧画面を、演出表示が実行される演出表示手段に表示可能であ」るのに対し、引用発明1ではそのようなものではない点。

(相違点6)
本願補正発明では「J 前記演出制御手段は」「J3 前記特定報知として、前記有利状態中に遊技者に付与された利益に関する利益特定報知を実行可能であ」るのに対し、引用発明1ではそのようなものではない点。

(相違点7)
「J 前記演出制御手段」は、本願補正発明では「前記利益特定報知」も実行しないのに対し、引用発明1ではそもそも利益特定報知を実行するものではない点。

(相違点8)
本願補正発明では「J 前記演出制御手段は」「J5 前記有利状態において遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開された場合、前記遊技制御手段から第1単位遊技指令情報を受信したことに基づいて、前記ラウンド数特定表示を再開可能であ」るのに対し、引用発明1ではそのようなものではない点。

(相違点9)
本願補正発明では「J 前記演出制御手段は」「J6 前記第1単位遊技ラウンド中に遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開された場合、前記ラウンド数特定表示及び前記利益特定報知を再開する前に、前記復旧画面を表示する」のに対し、引用発明1ではそのようなものではない点。

イ 判断
以下、上記相違点1?9について検討するが、技術的に関連のある相違点はまとめて検討する。

(相違点1、4及び8について)
引用発明2の「e 島電源Vinが電源スイッチ88のオフ操作および停電の発生等に基いて遮断されたときにコンデンサ97からバックアップ電源が印加され、全てのデータが保管され」る「メイン制御装置63のRAM66」は、相違点1に係る本願補正発明の「E 遊技機への電力供給が停止しても所定期間記憶内容を保持可能であり、制御を行なう際に発生するデータを記憶可能な記憶手段」に相当する。
また、引用発明2の「i 大当り遊技中に島電源Vinが遮断されたときに現在の大当りラウンド数等の遊技データがRAM66にバックアップされ、島電源Vinが復旧したときに遊技データのバックアップ結果に基いて大当り大入賞口36を開放することで大当り遊技を電源遮断直前の状態から再開すると共にメイン制御装置63から演出制御装置77に大当り開始コマンドが送信され」ることは、これによりeの「演出制御装置77がメイン制御装置63からの大当り開始コマンドに基いて大当り遊技の演出を電源遮断直前の状態から再開する」のであることから、大当ラウンド数等の遊技データのバックアップ結果に基づいて大当り遊技の進行に応じた大当り開始コマンドが送信されるものといえるから、これら引用発明2の構成と、相違点4に係る本願補正発明の「I 前記遊技制御手段は、前記有利状態において遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開された場合、前記記憶手段に記憶されたデータに基づいて、前記有利状態の進行に応じた単位遊技指令情報を送信可能であ」ることとは、「I’前記遊技制御手段は、前記有利状態において遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開された場合、前記記憶手段に記憶されたデータに基づいて、前記有利状態の進行に応じた遊技指令情報を送信可能であ」る点で共通する。
さらに、引用発明2は、「j5 大当りラウンド中には図柄表示器25に大当りラウンド表示が行われる」のであるから、iの「演出制御装置77がメイン制御装置63からの大当り開始コマンドに基いて大当り遊技の演出を電源遮断直前の状態から再開する」際には、ラウンド表示が再開されることは明らかであるから、これら引用発明2の構成と、相違点8に係る本願補正発明の「J 前記演出制御手段は」「J5 前記有利状態において遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開された場合、前記遊技制御手段から第1単位遊技指令情報を受信したことに基づいて、前記ラウンド数特定表示を再開可能であ」ることとは、「J 前記演出制御手段は」「J5’前記有利状態において遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開された場合、前記遊技制御手段から遊技指令情報を受信したことに基づいて、前記ラウンド数特定表示を再開可能であ」ることに相当する。

そして、大当り遊技中に停電等に基づいて電源が遮断されても、復旧したときに電源遮断直前の状態から大当り遊技を再開できるように、引用発明1に引用発明2を適用することに格別の困難性はなく、その際に、引用発明2の「復旧したときに」「送信され」る「大当り開始コマンド」に、本願補正発明の「前記有利状態の進行に応じた単位遊技指令情報たる」、引用発明1のgの「長開放動作」「に設定されている開放指定コマンド」を対応させて、相違点1、4及び8に係る本願補正発明の構成に想到することは当業者が容易になし得たものである。

(相違点2、3、6及び7について)
引用発明3の「g 主制御基板27は、大当り中、大入賞口40への入賞球が検出された場合、大入賞口入賞コマンドを演出制御基板24に送信」することは、相違点2に係る本願補正発明の「G 前記遊技制御手段は」「前記可変入賞手段への遊技媒体の進入に基づく入賞通知情報」を「送信可能」とすることに相当する。
引用発明3の「h 演出制御基板24は、大入賞口入賞コマンドを受ける度に、規定値である「h個(たとえばh=10個)」を獲得球数カウンタの値に加算し」「j3 獲得球数カウンタの値が1報知単位としてランク分けした個数、たとえば最低ランクの2500個を超えた場合に、次回表示個数条件設定として1ランク上の報知単位(たとえば5000個)に更新し、獲得球数表示用液晶データを設定し、液晶制御コマンドの一部として液晶制御基板25に送信し、獲得球数を画像表示する」ことは、相違点3に係る本願補正発明の「H 前記演出制御手段は」「前記入賞通知情報の受信に基づいて特定報知を行な」うことに相当する。
引用発明3のgの「大当り中、大入賞口40への入賞球が検出された場合」、「h 演出制御基板24は」、j3の「獲得球数を画像表示する」ことは、相違点6に係る本願補正発明の「J 前記演出制御手段は」「J3 前記特定報知として、前記有利状態中に遊技者に付与された利益に関する利益特定報知を実行可能であ」ることに相当する。
引用発明3の「h 演出制御基板24は」「j4 2ラウンド大当り中でない場合に」j3の「獲得球数を画像表示する」ことは、2ラウンド大当り中の場合に獲得球数を画像表示しないこととなるから、相違点7に係る本願補正発明の「J 前記演出制御手段は」「J4’前記第2単位遊技ラウンド中に」「前記利益特定報知」を「実行」しないことに相当する。
したがって、引用発明3は、相違点2、3、6及び7に係る本願補正発明の構成を有する。

そして、引用発明1において、遊技の興趣向上のために、獲得球数を画像表示する引用発明3を適用して、相違点2、3、6及び7に係る本願補正発明の構成に想到することは当業者が容易になし得たものである。

(相違点5及び9について)
パチンコ遊技機において、演出制御手段が、有利状態(大当り遊技中)において遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開された場合、演出表示が再開される前に、復旧中であることを示す復旧画面を、演出表示が実行される演出表示手段に表示可能であること、すなわち相違点5に係る本願補正発明の構成は、例えば、

ア 特開2001-259209号公報(下線は当審で付した。)
「【0056】そして、遊技機が停電した場合、停電から復帰したときに、遊技制御装置100は、バックアップ回路401によりバックアップされた遊技データに関わらず、即ち停電前に変動表示ゲーム中であったか、大当たり遊技中(ファンファーレ、ラウンド、インターバル等)であったか、客待ち状態であったかの遊技状態に関わらず一定の復旧画面指定コマンドを含ませた所定の停電復旧コマンドを、表示制御装置200に送信する。この場合、遊技制御装置100は、その復旧画面指定コマンドに加え、停電復旧コマンドとして、バックアップされた変動表示ゲームの各停止図柄(例えば、左停止図柄、右停止図柄、中停止図柄)コマンドを送信する。また、確率変動状態に対しては、低確率状態のときは低確率情報コマンドを、高確率状態のときは高確率情報コマンドを送信する。表示制御装置200は、これらのコマンドを受信すると、可変表示装置4にそのコマンドに基づく表示を正常復帰可能なコマンド受信まで行う。
【0057】この停電復旧コマンドの例を図4に、復旧画面の表示の例を図5に示す。復旧画面指定コマンドに基づき、“停電復帰しました。遊技再開しています。画面復帰はしばらくお待ち下さい。”等のメッセージ画面を表示すると共に、そのメッセージ画面に、各停止図柄コマンドに基づき、左停止図柄、中停止図柄、右停止図柄(例えば、3,3,7)を、また確率情報コマンドに基づき、高確率中のときは“高確率中”等の文字を表示する。」

「【0059】また、大当たり遊技中に停電した場合、停電から復帰したときに、同じく復旧画面指定コマンド、各停止図柄コマンド、確率情報コマンドからなる停電復旧コマンドを送信して、可変表示装置4に図5のようにこれらのコマンドに基づく復旧画面表示を行う。この場合、図5における左停止図柄、中停止図柄、右停止図柄は同一図柄(例えば、3,3,3)を表示する。この後、遊技制御装置100が、バックアップデータに基づき、新たなラウンドコマンドを送信すると、またはインターバルコマンドを送信すると、または大当たり遊技終了コマンド等を送信すると、復旧画面表示を終了する。即ち、大当たりのファンファーレ表示中に停電した場合、そのファンファーレ表示の終了まで、大当たりのラウンド表示中に停電した場合、そのラウンド表示の終了まで、大当たりのインターバル表示中に停電した場合、そのインターバル表示の終了まで、復旧画面表示を行う。そして、この終了時に新たなコマンド(ラウンドコマンドまたはインターバルコマンドまたは大当たり遊技終了コマンド等)を送信して、そのコマンドに基づく表示に入る。なお、ラウンド表示中、遊技制御装置100が送信するカウントコマンド等の補助的なコマンドは、表示制御装置200は取り込まないようにしてある。」

イ 特開2003-126450号公報(下線は当審で付した。)
【0068】図14は特別図柄表示装置28に表示される復電通常画面の一表示形態を示す図である。特別図柄の変動中に電源断が発生した場合、該図柄変動に関わる当否判定結果が外れである場合には、電源復帰後に復電通常画面が表示される。画面には「電源が復帰しました」「遊技を再開して下さい」のように復電した旨及び遊技の再開を促す旨が表示される。また、画面の背景色を例えば、青色で表示する。」

「【0074】なお、図11の復電処理において、電源断時からバックアップ用電源によって保持されている変動フラグの値によって特別図柄の変動中でないと判別した場合には、メインCPUはステップS28に進み、大当りフラグF1の値により大当り中か否かを判別する(ステップS28)。大当り中である場合、メインCPUは、表示制御回路55に復電Aコマンドを送信し(ステップS29)、復電処理を終えてメインルーチンに戻る。これにより、特別図柄表示装置28の画面に復電通常画面が表示される。なお、この後、大当り遊技に関わるコマンドがメインCPUから表示CPUに送信され、特別図柄表示装置28の画面表示も通常の遊技状態に復帰する。」

に記載されているように周知技術である。

そして、大当り遊技中に画像表示部にラウンド数を表示する引用発明1に、大当遊技中に電源が遮断され復旧したときに大当り遊技を電源遮断直前の状態から再開する引用発明2、及び獲得球数を画像表示する引用発明3を適用した際に、大当り遊技を電源遮断直前の状態から再開する前に先ず復旧画面を表示させる周知技術を採用するか否かは、当業者が適宜選択し得る設計的事項にすぎず、周知技術の採用により、ラウンド数の表示及び獲得球数の画像表示を再開する前に復旧画面を表示する、すなわち相違点9に係る本願補正発明とすることに当業者にとって格別の困難性はない。

したがって、引用発明1に引用発明2及び引用発明3を適用し、周知技術を勘案して、相違点5及び9に係る本願補正発明の構成に想到することは当業者が容易になし得たものである。

そして、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明1、2及び3並びに周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1、2及び3並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、
ア 本願補正発明では、「有利状態において電断して復旧したときには、演出表示の再開前に復旧画面を表示可能である」という特徴Cを備えることにより、遊技機が動作停止したとき(電力供給が停止したとき)には、動作再開時(電力供給が再開されたとき)に、復旧画面によって現在の遊技機の状態(復旧中であること)が容易に把握できるので、遊技機の動作停止に伴う不信感や不安感を払拭し易いという効果が期待され、また、本願補正発明では、「第2単位遊技ラウンドのときには、ラウンド数特定表示を行わず、可変入賞手段の入賞に基づいて遊技者に付与された利益に関する利益特定報知を行わない」という特徴Bを備えることにより、第2単位遊技ラウンドのときには、ラウンド数特定表示及び利益特定報知が行われないため、遊技機が動作停止したときには、動作再開時に現在の遊技機の状態が把握できない虞があるが、本願補正発明では、上記したように特徴Cを備えることにより、遊技機の動作再開時には復旧画面が表示され、このため、第2単位遊技ラウンドのときに電断して復旧したとしても、現在の遊技機の状態が容易に把握できるので、遊技者に対して、動作停止前の状態から継続した状態で遊技が再開されることに対して安心感を抱かせることができるという効果(以下、有機的な効果1という)が期待され、
イ 本願補正発明では、「第1単位遊技指令情報を受信すると(第1単位遊技ラウンドのとき)、遊技ラウンドの回数を特定可能なラウンド数特定表示を行う」という特徴A、「有利状態において電断して復旧したときには、第1単位遊技指令情報を受信するとラウンド数特定表示を再開可能である」という特徴Dを備えることにより、第1単位遊技ラウンドのときに電断して復旧したとしても、第1単位遊技指令情報に基づいてラウンド数特定表示が再開されるので、電断時におけるラウンド数特定表示の不具合の発生を低減することができ、遊技者の不安感や不信感を払拭し易いという効果が期待され、そして、本願補正発明では、特徴A、特徴Dに加えて「第1単位遊技ラウンド中に電断して復旧したときには、ラウンド数特定表示及び利益特定報知を再開する前に、復旧画面を表示する」という特徴Eを備えることにより、第1単位遊技ラウンドのときに電断して復旧したときには、ラウンド数特定表示や利益特定報知が再開される前に復旧画面が表示されるので、最初に復旧画面の表示、次いでラウンド数特定表示等の再開というように丁寧に順を踏んで表示が再開されることになり、遊技者は付与された利益(例えば出玉)が失われていないことを容易に理解でき、遊技者に安心感を与えやすいという効果(以下、有機的な効果2という)が期待され、
ウ 本願補正発明では、特徴A-Eを備えることにより、上記した有機的な効果1、2の相乗効果として、「第1単位遊技ラウンド及び第2単位遊技ラウンドを含む遊技ラウンドにおいて遊技機が電断したときに、付与された利益(例えば出玉)が失われるのではないかという遊技者の不信感や不安感をより早期に払拭させる(動作停止前の状態から継続した状態で遊技が再開されていることを早期に認識させる)ことが可能となり、遊技機の動作停止により生じる興趣低下を最小限にできる」という総合的な効果が期待される旨主張する。

しかしながら、上記アについて、前記(3)イ(相違点5及び9について)で検討したように、パチンコ遊技機において、演出制御手段が、有利状態(大当り)において遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開された場合、演出表示が再開される前に、復旧中であることを示す復旧画面を、演出表示が実行される演出表示手段に表示可能であることは周知技術であり、復旧画面が動作停止前の状態から継続した状態で遊技が再開されることを報知することは技術常識であるから、請求人が主張する、復旧画面によって現在の遊技機の状態(復旧中であること)が容易に把握できるので、遊技機の動作停止に伴う不信感や不安感を払拭し易いという効果、及び第2単位遊技ラウンドのときに電断して復旧したとしても、現在の遊技機の状態が容易に把握できるので、遊技者に対して、動作停止前の状態から継続した状態で遊技が再開されることに対して安心感を抱かせることができるという効果は、引用発明1、2及び3並びに周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

さらに、上記イについて、本願補正発明において、「第1単位遊技指令情報を受信すると(第1単位遊技ラウンドのとき)、遊技ラウンドの回数を特定可能なラウンド数特定表示を行う」という特徴A、「有利状態において電断して復旧したときには、第1単位遊技指令情報を受信するとラウンド数特定表示を再開可能である」という特徴Dを備えることにより、第1単位遊技ラウンドのときに電断して復旧したとしても、第1単位遊技指令情報に基づいてラウンド数特定表示が再開されるので、電断時におけるラウンド数特定表示の不具合の発生を低減することができ、遊技者の不安感や不信感を払拭し易いという効果が期待される点は、前記(3)イ(相違点1、4及び8について)で検討したように、大当り遊技中に停電等に基づいて電源が遮断されても、復旧したときに電源遮断直前の状態から大当り遊技を再開できるように、引用発明1に引用発明2を適用することに格別の困難性はなく、その際に、引用発明2の「復旧したときに」「送信され」る「大当り開始コマンド」に、引用発明1のgの「長開放動作」「に設定されている開放指定コマンド」を対応させることは当業者が容易になし得たものであり、これにより、長開放動作のときに電断して復旧したとしても、長開放動作に対応する開放指定コマンドに基づいてラウンド数特定表示が再開されることとなるから、電断時におけるラウンド数特定表示の不具合の発生の低減ができ、遊技者の不安感や不信感を払拭し易いという効果は、引用発明1及び2の奏する効果から予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
また、請求人が主張する、第1単位遊技ラウンドのときに電断して復旧したときには、ラウンド数特定表示や利益特定報知が再開される前に復旧画面が表示されるので、最初に復旧画面の表示、次いでラウンド数特定表示等の再開というように丁寧に順を踏んで表示が再開されることになり、遊技者は付与された利益(例えば出玉)が失われていないことを容易に理解でき、遊技者に安心感を与えやすいという効果は、引用発明1に引用発明2を適用した構成による効果と、演出表示が再開される前に復旧中であることを示す復旧画面を表示することの効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがってまた、上記ウについて、請求人が主張する「第1単位遊技ラウンド及び第2単位遊技ラウンドを含む遊技ラウンドにおいて遊技機が電断したときに、付与された利益(例えば出玉)が失われるのではないかという遊技者の不信感や不安感をより早期に払拭させる(動作停止前の状態から継続した状態で遊技が再開されていることを早期に認識させる)ことが可能となり、遊技機の動作停止により生じる興趣低下を最小限にできる」という総合的な効果は、引用発明1、2及び3並びに周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

よって、請求人の主張は採用できない。

(5)本件補正についてのむすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成29年9月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1の(本件補正前)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶理由
原査定の拒絶の理由は、
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された以下の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。

特開2012-249874号公報(引用文献1)
特開2006-51337号公報(以下「引用文献4」という。)
特開2005-253506号公報(引用文献2)

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2の記載事項は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

また、引用文献4には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0052】
・・・
[実施例2]
図11に示すように、弾球遊技機の一種であるパチンコ機51の遊技盤2には複合型の表示装置53が取り付けられている。」

「【0062】
統合基板46は、主制御基板60から送信されてくるデータ及びコマンドを受信し、それらを図柄制御用、音制御用及びランプ制御用のデータに振り分けて、演出図柄制御装置65、音制御基板67及びランプ制御基板66に分配する。
【0063】
演出図柄制御装置65は、LCDパネルユニット55と共に演出図柄制御装置65を構成しており、図柄制御用のデータに基づいて、LCDパネルユニット55の表示を制御する。」

「【0091】
図17(a)に示す変動終了後処理では、主制御基板60は大当たりAフラグが1にセットされているときは(S85:YES)、大当たりA処理を行い(S86)、大当たりBフラグが1にセットされているときは(S87:YES)、大当たりB処理を行う(S
88)。
【0092】
大当たりA処理又は大当たりB処理は、変動終了処理(図16)で第2中断コマンド又は第1中断コマンドを送信後に所定時間(例えば0.6秒程度)経過したときに開始インターバルコマンドを統合基板46に送信して、LCDパネルユニット55での大当たり開始インターバル表示、スピーカからの大当たり開始インターバル音声の出力、各種LED及び各種ランプでの大当たり開始インターバル発光を行わせる処理、その後のラウンド終了毎にラウンド間インターバルコマンドを統合基板46に送信して、LCDパネルユニット55でのラウンド間インターバル表示、スピーカからのラウンド間インターバル音声の出力、各種LED及び各種ランプでのラウンド間インターバル発光を行わせる処理、最終ラウンドの終了時に終了インターバルコマンドを統合基板46に送信して、LCDパネルユニット55での終了インターバル表示、スピーカからの終了インターバル音声の出力、各種LED及び各種ランプでの終了インターバル発光を行わせる処理、ラウンドの開始毎にラウンド数表示コマンドを統合基板46に送信して、LCDパネルユニット55でのラウンド数表示を行わせる処理、大入賞口30のカウントスイッチで入賞球が検出される毎に入賞コマンドを統合基板46に送信して、LCDパネルユニット55での入賞数表示を行わせる処理等を適宜実行し、大当たり遊技(特別遊技)に伴う演出制御を行う。」

上記記載事項を総合すれば、引用文献4には以下の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されているものと認められる(d?hについては本願補正発明のD?Hに対応させて付与した。)。


「d 主制御基板60から送信されてくるデータ及びコマンドを受信し、それらを図柄制御用、音制御用及びランプ制御用のデータに振り分けて、演出図柄制御装置65、音制御基板67及びランプ制御基板66に分配する統合基板46と(【0062】)、図柄制御用のデータに基づいて、LCDパネルユニット55の表示を制御する演出図柄制御装置65と(【0063】)を備え、
g 主制御基板60は、大入賞口30のカウントスイッチで入賞球が検出される毎に入賞コマンドを統合基板46に送信して(【0092】)、
h LCDパネルユニット55での入賞数表示を行わせる処理を実行する(【0092】)、
パチンコ機51(【0052】)。」

4 対比・判断
ア 対比
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本願補正発明から、「J 前記演出制御手段」について、「J1 前記有利状態において遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開された場合、演出表示が再開される前に、復旧中であることを示す復旧画面を、演出表示が実行される演出表示手段に表示可能であり、J2 前記所定報知として、前記有利状態において実行中の遊技ラウンドの回数を特定可能なラウンド数特定表示を実行可能であり、J3 前記特定報知として、前記有利状態中に遊技者に付与された利益に関する利益特定報知を実行可能であり、J4 前記第2単位遊技ラウンド中に前記ラウンド数特定表示及び前記利益特定報知を実行せず、J6 前記第1単位遊技ラウンド中に遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開された場合、前記ラウンド数特定表示及び前記利益特定報知を再開する前に、前記復旧画面を表示する」という限定事項を削除し、「J5’前記有利状態において遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開された場合、前記遊技制御手段から第1単位遊技指令情報を受信したことに基づいて」「再開可能である」対象を「前記ラウンド数特定表示」から「前記所定報知」に上位概念化したものである。

そうすると、前記第2の[理由]2(3)アと同様に、本願発明と引用発明1を対比すると、両者は、

「A 遊技媒体が進入可能であり、遊技者にとって有利な第1状態と該第1状態よりも遊技者にとって不利な第2状態とに変化可能な可変入賞手段を備え、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 前記有利状態に制御されたときに、前記可変入賞手段を第2状態から第1状態に制御する遊技ラウンドを所定回数実行可能であり、
C 遊技の進行を制御する遊技制御手段と、
D 前記遊技制御手段が送信する指令情報に基づいて演出を制御する演出制御手段と、
を備え、
F 前記遊技ラウンドは、前記可変入賞手段を第1の状態に第1期間制御する第1単位遊技ラウンドと、前記可変入賞手段を第1の状態に前記第1期間よりも短い第2期間制御する第2単位遊技ラウンドとを含み、
G’前記遊技制御手段は、前記有利状態の進行に応じて、前記第1単位遊技ラウンドを実行することを特定可能な第1単位遊技指令情報と、前記第2単位遊技ラウンドを実行することを特定可能な第2単位遊技指令情報とのいずれかの単位遊技指令情報とを、送信可能であり、
H’前記演出制御手段は、第1単位遊技指令情報の受信に基づいて所定報知を行なう、
遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明は「E 遊技機への電力供給が停止しても所定期間記憶内容を保持可能であり、制御を行なう際に発生するデータを記憶可能な記憶手段」を備えるのに対し、引用発明1はそのようなものではない点。

(相違点2)
「G’前記遊技制御手段」は、本願発明では「前記可変入賞手段への遊技媒体の進入に基づく入賞通知情報」をも送信可能であるのに対し、引用発明1ではそのようなものではない点。

(相違点3)
「H’前記演出制御手段」は、本願発明では「前記入賞通知情報の受信に基づいて特定報知を行な」うのに対し、引用発明1ではそのようなものではない点。

(相違点4)
本願発明では「I 前記遊技制御手段は、前記有利状態において遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開された場合、前記記憶手段に記憶されたデータに基づいて、前記有利状態の進行に応じた単位遊技指令情報を送信可能であ」るのに対し、引用発明1ではそのようなものではない点。

(相違点8’)
本願発明では「J 前記演出制御手段は」「J5’前記有利状態において遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開された場合、前記遊技制御手段から第1単位遊技指令情報を受信したことに基づいて、前記所定報知を再開可能であ」るのに対し、引用発明1ではそのようなものではない点。

イ 判断

(相違点1、4及び8’について)
相違点8’は相違点8を上位概念化したものであるところ、前記[理由]2(3)イで検討したように、相違点1、4及び8に係る本願補正発明の構成に想到することは、引用発明1に引用発明2を適用して当業者が容易になし得たものであるから、相違点1、4及び8’に係る本願発明の構成も、引用発明1に引用発明2を適用して当業者が容易になし得たものである。

(相違点2及び3について)
引用発明4の「d 主制御基板60から送信されてくるデータ及びコマンドを受信し、それらを図柄制御用、音制御用及びランプ制御用のデータに振り分けて、演出図柄制御装置65、音制御基板67及びランプ制御基板66に分配する統合基板46と、図柄制御用のデータに基づいて、LCDパネルユニット55の表示を制御する演出図柄制御装置65」は、本願発明の「D 前記遊技制御手段が送信する指令情報に基づいて演出を制御する演出制御手段」に相当する。
引用発明4の「g 主制御基板60は、大入賞口30のカウントスイッチで入賞球が検出される毎に入賞コマンドを統合基板46に送信」することは、相違点2に係る本願発明の「G 前記遊技制御手段は」「前記可変入賞手段への遊技媒体の進入に基づく入賞通知情報」を「送信可能」とすることに相当する。
引用発明4のgの「入賞コマンド」が「送信」されて「h LCDパネルユニット55での入賞数表示を行わせる処理を実行する」ことは、この処理がdの「統合基板46」及び「演出図柄制御装置65」により実行されることは明らかであるから、相違点3に係る本願発明の「H 前記演出制御手段は」「前記入賞通知情報の受信に基づいて特定報知を行な」うことに相当する。
したがって、引用発明4は、相違点2及び3に係る本願発明の構成を有する。

そして、引用発明1において、遊技の興趣向上のために、入賞数表示を行わせる引用発明4を適用して、相違点2及び3に係る本願発明の構成に想到することは当業者が容易になし得たものである。

そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明1、2及び4の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願発明は、引用発明1、2及び4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-11-12 
結審通知日 2018-11-13 
審決日 2018-11-27 
出願番号 特願2013-254695(P2013-254695)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柴田 和雄  
特許庁審判長 石井 哲
特許庁審判官 蔵野 いづみ
藤田 年彦
発明の名称 遊技機  

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