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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1347988
審判番号 不服2018-3089  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-05 
確定日 2019-01-10 
事件の表示 特願2014-110621号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月14日出願公開、特開2015-223366号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年5月28日の出願であって、平成29年4月26日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月10日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年11月24日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、平成30年3月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成30年3月5日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年3月5日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、本件補正前の平成29年7月10日付けの手続補正書における特許請求の範囲の請求項1が、
「【請求項1】
所定の始動条件の成立を契機として情報を取得する取得手段と、その取得手段により取得された情報に基づいて判定を行う判定手段と、その判定手段による判定結果に基づいて表示手段に識別情報の動的表示を実行させる動的表示実行手段と、を備え、その動的表示実行手段により実行される前記識別情報の動的表示において所定の識別情報が現出された場合に、遊技者に所定の遊技価値を付与する遊技機において、
前記取得手段により取得される情報を少なくとも前記判定手段による判定に用いられるまで所定の数を上限として記憶する記憶手段と、
その記憶手段に記憶されている情報のそれぞれに基づいて実行される前記識別情報の動的表示の実行時間を判断する判断手段と、
遊技者による操作が可能な操作手段と、
その操作手段に対して所定期間継続して所定の操作がなされた場合に、前記判断手段により判断された前記実行時間に基づく報知が可能な報知手段と、を備えることを特徴とする遊技機。」
から、本件補正後の請求項1として、
「【請求項1】
A 所定の始動条件の成立を契機として情報を取得する取得手段と、
B その取得手段により取得された情報に基づいて判定を行う判定手段と、
C その判定手段による判定結果に基づいて表示手段に識別情報の動的表示を実行させる動的表示実行手段と、を備え、
D その動的表示実行手段により実行される前記識別情報の動的表示において所定の識別情報が現出された場合に、遊技者に所定の遊技価値を付与する遊技機において、
E 前記取得手段により取得される情報を少なくとも前記判定手段による判定に用いられるまで所定の数を上限として記憶する記憶手段と、
F その記憶手段に記憶されている情報のそれぞれに基づいて実行される各々の前記識別情報の動的表示の実行時間を判断する判断手段と、
G 遊技者による操作が可能な操作手段と、
H その操作手段に対して所定期間継続して所定の操作がなされた場合に、前記判断手段により判断された各々の前記識別情報の動的表示の実行時間を報知可能な報知手段と、を備えることを特徴とする遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。また、当審においてA?Hに分説した。)。

2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「判断手段」に関して、「判断する」「前記識別情報の動的表示の実行時間」を、「各々の前記識別情報の動的表示の実行時間」に限定するとともに、「報知手段」に関して、「報知」する内容が「前記実行時間に基づく」ものから、「各々の前記識別情報の動的表示の実行時間」に限定するものであって、かつ、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件補正は、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面の段落【0261】?【0267】、【0503】、図9等の記載に基づいており、新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)引用例1
ア 引用例1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2010-178967号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の(1-1)?(1-12)の事項が記載されている。

(1-1)「【0024】
まず、図1を用いて、本発明の第1実施形態に係るパチンコ機100の全体構成について説明する。なお、同図はパチンコ機100を正面側(遊技者側)から見た外観斜視図である。」

(1-2)「【0039】
可変入賞口130は、本実施形態では遊技盤102の中央部下方に1つだけ配設している。この可変入賞口130は、ソレノイドによって開閉自在な扉部材1301によって入球可能状態になったり、入球不能状態になったりする。すなわち、その扉部材1301の閉鎖中は可変入賞口130への入球は不可能であるが、特図1変動遊技に当選し、第1特図表示装置198が大当り図柄を停止表示した場合、または、特図2変動遊技に当選し、第2特図表示装置114が大当り図柄を停止表示した場合には、扉部材1301が所定の時間間隔、所定の回数で開閉し、可変入賞口130への入球が可能になる。本実施形態のパチンコ機100では、扉部材1301が、開放時間29秒、閉鎖時間1.5秒の開閉動作(ただし可変入賞口130に10個目の入球があった時点で閉鎖)を、15回連続で行う場合(以下、この場合を15ラウンドと称する)と、開放時間0.9秒、閉鎖時間0.2秒の開閉動作を、2回連続で行う場合(以下、この場合を2ラウンドと称する)とがある。可変入賞口130は大入賞口と呼ばれることがあり、扉部材1301と可変入賞口130を併せてアタッカと呼ばれることがある。可変入賞口130への入球を所定の球検出センサ(カウントセンサ)が検出した場合、後述する払出装置552を駆動し、所定の個数(本実施形態では15球)の球を賞球として図1に示す貯留皿144に排出する。なお、可変入賞口130に入球した球は、パチンコ機100の裏側に誘導した後、遊技島側に排出する。」

(1-3)「【0056】
図3(b)は装飾図柄の一例を示したものである。本実施形態の装飾図柄には、「装飾1」?「装飾10」の10種類がある。第1特図始動口126に球が入球したことを第1始動口センサが検出したこと、あるいは第2特図始動口128に球が入球したことを第2始動口センサが検出したことを第1特図始動口126または第2特図始動口128に球が入賞したことを条件にして、装飾図柄表示装置110の左図柄表示領域110a、中図柄表示領域110b、右図柄表示領域110cの各図柄表示領域に、「装飾1」→「装飾2」→「装飾3」→・・・・「装飾9」→「装飾10」→「装飾1」→・・・の順番で表示を切り替える「装飾図柄の変動表示」を行う。そして、「特図B」の15R大当りを報知する場合には、図柄表示領域110a?110cに15R大当りに対応する、同じ装飾図柄が3つ並んだ図柄組合せ(例えば「装飾1-装飾1-装飾1」や「装飾2-装飾2-装飾2」等)を停止表示する。「特図A」の15R特別大当りを報知する場合には、同じ奇数の装飾図柄が3つ並んだ図柄組合せ(例えば「装飾3-装飾3-装飾3」や「装飾7-装飾7-装飾7」等)を停止表示する。」

(1-4)「【0090】
<主制御部タイマ割り込み処理>
次に、図6を用いて、主制御部300のCPU304が実行する主制御部タイマ割り込み処理について説明する。なお、同図は主制御部タイマ割り込み処理の流れを示すフローチャートである。」

(1-5)「【0117】
続いて、特図2についての特図関連抽選処理(特図2関連抽選処理)を行い(ステップS214)、次に、特図1についての特図状態更新処理(特図1状態更新処理)を行って(ステップS215)から、今度は、特図1についての特図関連抽選処理(特図1関連抽選処理)を行う(ステップS216)。特図2関連抽選処理や特図1関連抽選処理についても詳細は後述するが、主制御部300は、特図2関連抽選処理を特図1関連抽選処理よりも先に行う。こうすることで、特図2変動遊技の開始条件と、特図1変動遊技の開始条件が同時に成立した場合でも、特図2変動遊技が先に変動中となるため、特図1変動遊技は変動を開始しない。また、装飾図柄表示装置110による、特図変動遊技の大当り判定の結果の報知は、副制御部400によって行われ、第2特図始動口128への入賞に基づく抽選の抽選結果の報知が、第1特図始動口126への入賞に基づく抽選の抽選結果の報知よりも優先して行われる。また、ステップS215における特図1状態更新処理では、特図1の状態に応じて、上述のステップS213における特図2状態更新処理で説明した各処理を行う。」

(1-6)「【0127】
<入賞受付処理>
次に、図7および図8を用いて、図6に示す主制御部タイマ割り込み処理におけるステップS209の入賞受付処理について説明する。
【0128】
図7は、第1特図始動口126に関する入賞受付処理と、第2特図始動口128に関する入賞受付処理それぞれの流れを示すフローチャートである。
【0129】
まず、第1特図始動口126に関する入賞受付処理を行う。図7に示すステップS1101では、第1特図始動口126への入賞があったか否かを判定する。ここでは、図6に示すステップS203における入賞判定パターン情報と一致するか否かの判定結果を用いて判定する。入賞があった場合にはステップS1102に進み、入賞がなかった場合には図7に示すステップS1201に進む。主制御部300のRAM308には特図1保留数記憶領域が設けられている。ステップS1102では、RAM308の特図1保留数記憶領域を参照し、保留している特図1変動遊技の数が所定数(本実施形態では4)未満であるか否かを判定し、所定数未満の場合はステップS1103に進む。
【0130】
ステップS1103では、第1特図始動口126に対応するカウンタ回路316の当選用カウンタ値記憶用レジスタから値を特図1当選乱数値として取得する。上述のごとく、図4に示すカウンタ回路316の当選用カウンタ値記憶用レジスタには、第1始動口センサが遊技球を検出したことによって送られてきた信号の受信タイミングで、カウンタ回路316の特図1当選用カウンタにおいてラッチされた値(ハードウエア乱数値)が記憶されている。ここで取得したこのハードウエア乱数値(特図1当選乱数値)は、詳しくは後述する特図1関連抽選処理(ステップS216)において特図1変動遊技における大当りか否かの判定に用いられる。
・・・
【0132】
主制御部300のRAM308には、特図1の乱数値記憶領域も設けられている。ステップS1104では、その特図1の乱数値記憶領域に、上述のステップS1103で取得した4種類の値(特図1当選乱数値、特図1乱数値、特図1ラウンド決定乱数値、および特図1時短決定乱数値)を格納する。特図1の乱数値記憶領域はさらに、特図1変動遊技の保留数に応じた4つの領域に区分けされており、このステップS1104では、上記4種類の値をひとまとめにして、これら4つの領域のうちの未格納の領域に格納する。すなわち、特図1の乱数値記憶領域のうちの第1特図変動遊技の保留数に基づいて決定される記憶領域に、ステップS1103で取得した乱数値を格納する。ステップS1104の実行が終わると、ステップS1105に進む。
・・・
【0134】
次に、第2特図始動口128に関する入賞受付処理を行う。図7に示すステップS1201からステップS1205までの各ステップは、図7に示すステップS1101からステップS1105までの各ステップにおける「第1」を「第2」に読み替えるとともに「特図1」を「特図2」に読み替えたステップと同一である。ここでは、保留に関する事項のみ説明し、他の事項についての説明は省略する。
【0135】
主制御部300のRAM308には特図2保留数記憶領域も設けられている。ステップS1202では、RAM308の特図2保留数記憶領域を参照し、保留している特図2変動遊技の数が所定数(本実施形態では4)未満であるか否かを判定し、所定数未満の場合はステップS1203に進む。
【0136】
ステップS1203では、特図2当選乱数値、特図2乱数値、特図2ラウンド決定乱数値、および特図2時短決定乱数値を取得するとともに、RAM308に設けた特図2保留数記憶領域の値を更新する。このステップS1203では、RAM308の特図2保留数記憶領域の値に1を加算することによって特図2保留数記憶領域の値を更新する。この値の更新は、特図2関連抽選処理における抽選を行う権利の個数をカウントすることに相当し、ここでは、その権利を保留したことにはならない。」

(1-7)「【0145】
<特図関連抽選処理>
次に、図6に示す主制御部タイマ割り込み処理におけるステップS214の特図2関連抽選処理について説明する。図9は主制御部300のCPU304が実行する特図2関連抽選処理の流れを示すフローチャートである。」

(1-8)「【0148】
以上説明したステップS2101からステップS2103までの各条件が、本発明にいう抽選禁止条件の一例に相当する。特図2又は特図1変動遊技の抽選結果は、装飾図柄表示装置110において、変動表示を経て確定表示(停止表示)によって報知される。以下、装飾図柄表示装置110において、変動表示を開始してから確定表示(停止表示)するまでの間を図柄変動停止表示と称することがある。
・・・
【0149】
図9に示すステップS2103に続いて実行されるステップS2104では、RAM308に設けた特図2保留数記憶領域を参照し、特図2変動遊技の保留数が0より大きいか否かを判定する。すなわち、保留している特図2変動遊技の数が1以上であるか否かを判定し、0であれば、図6に示す主制御部タイマ割り込み処理に戻る。
【0150】
一方、保留している特図2変動遊技の数が1以上であればステップS2105に進んで、当りの判定を行う。このステップS2104における条件が、本発明にいう抽選開始条件の一例に相当する。すなわち、本実施形態では、特図2関連抽選処理における抽選を行う権利の個数が1以上であることが抽選を開始する条件になる。これは、第2特図始動口128への遊技球の入球に基づくことを条件とするものである。
・・・
【0152】
ステップS2105では、RAM308の特図2の乱数値記憶領域から特図2当選乱数値を取得し、その取得した特図2当選乱数値について当りの判定を行う。RAM308の特図2の乱数値記憶領域には、図7に示す、第2特図始動口128に関する入賞受付処理におけるステップS1204において、ハードウエア乱数値である特図2当選乱数値が格納される。このステップS2105では、その特図2当選乱数値を取得し、図10(a)に示す当り判定テーブルを用いて、特図2当選乱数値について特図2変動遊技の抽選を行い、ステップS2106に進む。」

(1-9)「【0155】
図10(a)に示す当り判定テーブルには、特図2変動遊技状態(特図低確率状態,特図高確率状態)と、第2特図始動口大当りデータおよび第2特図始動口小当りデータそれぞれとの関係が規定されている。図9に示すステップS2105における当りの判定では、取得した特図2当選乱数値が、図10(a)の当り判定テーブルに示す第2特図始動口用大当りデータの数値範囲に属していれば特図2変動遊技の大当りに当選と判定し、その数値範囲に属さなければ特図2変動遊技の大当りに不当選(はすれ)と判定する。」

(1-10)「【0185】
図2に示す装飾図柄表示装置110の左図柄表示領域110a、中図柄表示領域110bおよび右図柄表示領域110cはそれぞれに表示される装飾図柄は、第2特図表示装置114の図柄変動停止表示に合わせて変動表示され、最後に停止表示される。ここでは、この装飾図柄表示装置110に表示される装飾図柄を用いて、装飾図柄の変動時間を40秒として説明する。」

(1-11)「【0197】
次に、特図2関連抽選処理に続いて実行される特図1関連抽選処理(図6のステップS216)について触れておく。図15は、主制御部300のCPU304が実行する特図1関連抽選処理の流れを示すフローチャートである。この図15に示すステップS2201からステップS2231までの各ステップは、図9に示すステップS2101からステップS2131までの各ステップにおける「第2」を「第1」に読み替えるとともに「特図2」を「特図1」に読み替えたステップと同一である。」

(1-12)「【0643】
また、予告報知手段は、前記第2の入賞記憶部に前記妨害解除抽選手段による妨害解除抽選が当選する入賞記憶がある場合に、実行中の予告報知を終了するようにしてもよい。この終了は、すぐに終了してもよいし、次の変動開始タイミングで終了するようにしてもよい。
(変更例α)
また、保留している複数の図柄変動に対する変動タイマを先読みし、保留の合計変動時間を遊技者に認識可能に表示してもよい。たとえば、1つ目の保留が30秒で、2つ目の保留が20秒で、3つ目の保留が10秒である場合に、合計60秒を表示してもよい。また、この遊技台は特図1と特図2を設け、特図2への入賞が容易である入賞容易状態と特図2への入賞が困難である入賞困難状態があるようにしてもよい。また、この遊技台は、特図2の抽選のほうが特図1の抽選よりも有利な抽選結果が得られやすいようにしてもよい。また、この遊技台は、特図2の変動が特図1の変動よりも優先して変動するようにしてもよい。上記構成を備えた場合に、従来、特図入賞容易状態にトイレに行きたくなった場合やジュースを買いに行きたくなった場合など遊技者が休憩したく思った場合でも特図1の抽選を行わせたくないために行けないという問題があったが、変動時間の合計を表示することで、たとえば長いリーチがかかったときなどに遊技者はトイレに行くことができ、遊技者の健康を悪化させることを防止したり、適度な休憩をしたりすることができるという効果がある。なお、特図2が入賞容易状態の場合にのみ、総保留数の合計変動時間を表示するようにしてもよい。また、特図2と特図1の両方に保留がある場合には、特図2の全保留に対する総変動時間を表示するようにしてもよい。また、遊技者による所定の操作部の操作があった場合に前記総変動時間を表示するようにしてもよい。この場合、総変動時間の表示に合わせてスピーカの音量を低下させたり、ランプや液晶の光量を低下させたりするなど演出内容を異ならせてもよい。また、総変動時間の表示は合算せず、30秒、20秒、10秒など、個別に表示してもよい。また、保留の中に大当たりが存在する場合には、総変動時間を表示しないようにしてもよく、または総変動時間の表示の代わりに大当たり告知をしてもよく、また、大当たり後の保留に対する変動時間を総変動時間から減算した時間を総変動時間として表示してもよい。また、総変動時間の表示は数値表示ではなく、バーがじょじょに縮んでいく表示などにしてもよい。また、総変動時間には、現在変動している変動の残り変動時間を加えてもよく、加えなくてもよい。」

イ 認定事項
上記「ア」から、次の(1-a)?(1-h)の事項が認定できる。

(1-a)段落【0090】には「主制御部300のCPU304が実行する主制御部タイマ割り込み処理について説明する。」と記載され、段落【0127】?【0130】には、「主制御部タイマ割り込み処理におけるステップS209の入賞受付処理について説明する。・・・図7は、第1特図始動口126に関する入賞受付処理と、第2特図始動口128に関する入賞受付処理それぞれの流れを示すフローチャートである。・・・第1特図始動口126に関する入賞受付処理を行う。図7に示すステップS1101では、第1特図始動口126への入賞があったか否かを判定する。・・・入賞があった場合にはステップS1102に進み、・・・所定数未満の場合はステップS1103に進む。・・・ステップS1103では、第1特図始動口126に対応するカウンタ回路316の当選用カウンタ値記憶用レジスタから値を特図1当選乱数値として取得する。」と記載され、段落【0134】には、「第2特図始動口128に関する入賞受付処理を行う。図7に示すステップS1201からステップS1205までの各ステップは、図7に示すステップS1101からステップS1105までの各ステップにおける「第1」を「第2」に読み替えるとともに「特図1」を「特図2」に読み替えたステップと同一である。」と記載され、段落【0152】には、「RAM308の特図2の乱数値記憶領域には、図7に示す、第2特図始動口128に関する入賞受付処理におけるステップS1204において、ハードウエア乱数値である特図2当選乱数値が格納される。」と記載されていることから、引用例1には、「第1特図始動口126又は特2特図始動口128への入賞があった場合に特図1当選乱数値又は特図2当選乱数値を取得する主制御部300のCPU304」が記載されているといえる。

(1-b)段落【0145】には、「図9は主制御部300のCPU304が実行する特図2関連抽選処理の流れを示すフローチャートである。」と記載され、段落【0152】には、「ステップS2105では、RAM308の特図2の乱数値記憶領域から特図2当選乱数値を取得し、その取得した特図2当選乱数値について当りの判定を行う。」と記載され、段落【0155】には、「図9に示すステップS2105における当りの判定では、取得した特図2当選乱数値が、図10(a)の当り判定テーブルに示す第2特図始動口用大当りデータの数値範囲に属していれば特図2変動遊技の大当りに当選と判定し、その数値範囲に属さなければ特図2変動遊技の大当りに不当選(はすれ)と判定する。」と記載され、段落【0197】には、「図15は、主制御部300のCPU304が実行する特図1関連抽選処理の流れを示すフローチャートである。この図15に示すステップS2201からステップS2231までの各ステップは、図9に示すステップS2101からステップS2131までの各ステップにおける「第2」を「第1」に読み替えるとともに「特図2」を「特図1」に読み替えたステップと同一である。」と記載されていることから、引用例1には、「取得された特図1当選乱数値又は特図2当選乱数値を用いて特図1変動遊技又は特図2変動遊技が大当たりに当選したか否かを判定する主制御部300のCPU304」が記載されているといえる。

(1-c)段落【0056】には、「装飾図柄表示装置110の左図柄表示領域110a、中図柄表示領域110b、右図柄表示領域110cの各図柄表示領域に、「装飾1」→「装飾2」→「装飾3」→・・・・「装飾9」→「装飾10」→「装飾1」→・・・の順番で表示を切り替える「装飾図柄の変動表示」を行う。」と記載され、段落【0117】には、「装飾図柄表示装置110による、特図変動遊技の大当り判定の結果の報知は、副制御部400によって行われ」と記載され、段落【0148】には、「特図2又は特図1変動遊技の抽選結果は、装飾図柄表示装置110において、変動表示を経て確定表示(停止表示)によって報知される。」と記載されていることから、引用例1には、「特図1又は特図2変動遊技の大当り判定の結果の報知をする際に装飾図柄の変動表示を装飾図柄表示装置110に行わせる副制御部400」が記載されているといえる。

(1-d)段落【0024】には、「本発明の第1実施形態に係るパチンコ機100」と記載され、段落【0039】には、「特図1変動遊技に当選し、第1特図表示装置198が大当り図柄を停止表示した場合、または、特図2変動遊技に当選し、第2特図表示装置114が大当り図柄を停止表示した場合には、扉部材1301が所定の時間間隔、所定の回数で開閉し、可変入賞口130への入球が可能になる。・・・可変入賞口130への入球を所定の球検出センサ(カウントセンサ)が検出した場合、後述する払出装置552を駆動し、所定の個数(本実施形態では15球)の球を賞球として図1に示す貯留皿144に排出する。」と記載され、段落【0056】には、「装飾図柄表示装置110の左図柄表示領域110a、中図柄表示領域110b、右図柄表示領域110cの各図柄表示領域に、「装飾1」→「装飾2」→「装飾3」→・・・・「装飾9」→「装飾10」→「装飾1」→・・・の順番で表示を切り替える「装飾図柄の変動表示」を行う。そして、「特図B」の15R大当りを報知する場合には、図柄表示領域110a?110cに15R大当りに対応する、同じ装飾図柄が3つ並んだ図柄組合せ(例えば「装飾1-装飾1-装飾1」や「装飾2-装飾2-装飾2」等)を停止表示する。」と記載され、段落【0117】には、「装飾図柄表示装置110による、特図変動遊技の大当り判定の結果の報知は、副制御部400によって行われ」と記載されていることから、引用例1には、「副制御部400によって行われる装飾図柄表示装置110の装飾図柄の変動表示において大当りを報知する装飾図柄の図柄組合せを停止表示し、大当たりである場合には可変入賞口130への入球を可能として入球に基づく賞球を排出する、パチンコ機100」が記載されているといえる。

(1-e)段落【0129】?【0130】には、「ステップS1102では、RAM308の特図1保留数記憶領域を参照し、保留している特図1変動遊技の数が所定数(本実施形態では4)未満であるか否かを判定し、所定数未満の場合はステップS1103に進む。・・・ステップS1103では、第1特図始動口126に対応するカウンタ回路316の当選用カウンタ値記憶用レジスタから値を特図1当選乱数値として取得する。」と記載され、段落【0132】には、「主制御部300のRAM308には、特図1の乱数値記憶領域も設けられている。ステップS1104では、その特図1の乱数値記憶領域に、上述のステップS1103で取得した4種類の値(特図1当選乱数値、特図1乱数値、特図1ラウンド決定乱数値、および特図1時短決定乱数値)を格納する。特図1の乱数値記憶領域はさらに、特図1変動遊技の保留数に応じた4つの領域に区分けされており、このステップS1104では、上記4種類の値をひとまとめにして、これら4つの領域のうちの未格納の領域に格納する。」と記載され、段落【0134】?【0136】には「第2特図始動口128に関する入賞受付処理を行う。図7に示すステップS1201からステップS1205までの各ステップは、図7に示すステップS1101からステップS1105までの各ステップにおける「第1」を「第2」に読み替えるとともに「特図1」を「特図2」に読み替えたステップと同一である。・・・主制御部300のRAM308には特図2保留数記憶領域も設けられている。ステップS1202では、RAM308の特図2保留数記憶領域を参照し、保留している特図2変動遊技の数が所定数(本実施形態では4)未満であるか否かを判定し、所定数未満の場合はステップS1203に進む。・・・ステップS1203では、特図2当選乱数値、特図2乱数値、特図2ラウンド決定乱数値、および特図2時短決定乱数値を取得するとともに、RAM308に設けた特図2保留数記憶領域の値を更新する。」と記載され、段落【0145】には、「図9は主制御部300のCPU304が実行する特図2関連抽選処理の流れを示すフローチャートである。」と記載され、段落【0149】?【0152】には、「図9に示すステップS2103に続いて実行されるステップS2104では、RAM308に設けた特図2保留数記憶領域を参照し、特図2変動遊技の保留数が0より大きいか否かを判定する。・・・保留している特図2変動遊技の数が1以上であればステップS2105に進んで、当りの判定を行う。・・・ステップS2105では、RAM308の特図2の乱数値記憶領域から特図2当選乱数値を取得し、その取得した特図2当選乱数値について当りの判定を行う。RAM308の特図2の乱数値記憶領域には、図7に示す、第2特図始動口128に関する入賞受付処理におけるステップS1204において、ハードウエア乱数値である特図2当選乱数値が格納される。このステップS2105では、その特図2当選乱数値を取得し、図10(a)に示す当り判定テーブルを用いて、特図2当選乱数値について特図2変動遊技の抽選を行い、ステップS2106に進む。」と記載され、段落【0197】には、「特図2関連抽選処理に続いて実行される特図1関連抽選処理(図6のステップS216)について触れておく。図15は、主制御部300のCPU304が実行する特図1関連抽選処理の流れを示すフローチャートである。この図15に示すステップS2201からステップS2231までの各ステップは、図9に示すステップS2101からステップS2131までの各ステップにおける「第2」を「第1」に読み替えるとともに「特図2」を「特図1」に読み替えたステップと同一である。」と記載されていることから、引用例1には、「特図1変動遊技又は特図2変動遊技の抽選を行う際に用いる保留として、取得した特図1当選乱数値及び特図2当選乱数値をそれぞれ4つまで特図1の乱数値記憶領域及び特図2の乱数値記憶領域に記憶可能なRAM308」が記載されているといえる。

(1-f)段落【0145】には、「図6に示す主制御部タイマ割り込み処理におけるステップS214の特図2関連抽選処理について説明する。図9は主制御部300のCPU304が実行する特図2関連抽選処理の流れを示すフローチャートである。」と記載され、段落【0152】「ステップS2105では、RAM308の特図2の乱数値記憶領域から特図2当選乱数値を取得し、その取得した特図2当選乱数値について当りの判定を行う。RAM308の特図2の乱数値記憶領域には、図7に示す、第2特図始動口128に関する入賞受付処理におけるステップS1204において、ハードウエア乱数値である特図2当選乱数値が格納される。このステップS2105では、その特図2当選乱数値を取得し、図10(a)に示す当り判定テーブルを用いて、特図2当選乱数値について特図2変動遊技の抽選を行い、ステップS2106に進む。」と記載され、段落【0185】には、「図2に示す装飾図柄表示装置110の左図柄表示領域110a、中図柄表示領域110bおよび右図柄表示領域110cはそれぞれに表示される装飾図柄は、第2特図表示装置114の図柄変動停止表示に合わせて変動表示され、最後に停止表示される。」と記載され、段落【0197】には、「特図2関連抽選処理に続いて実行される特図1関連抽選処理(図6のステップS216)について触れておく。図15は、主制御部300のCPU304が実行する特図1関連抽選処理の流れを示すフローチャートである。この図15に示すステップS2201からステップS2231までの各ステップは、図9に示すステップS2101からステップS2131までの各ステップにおける「第2」を「第1」に読み替えるとともに「特図2」を「特図1」に読み替えたステップと同一である。」と記載され、段落【0643】には、「また、保留している複数の図柄変動に対する変動タイマを先読みし、保留の合計変動時間を遊技者に認識可能に表示してもよい。たとえば、1つ目の保留が30秒で、2つ目の保留が20秒で、3つ目の保留が10秒である場合に、合計60秒を表示してもよい。・・・また、総変動時間の表示は合算せず、30秒、20秒、10秒など、個別に表示してもよい。」と記載されていることから、引用例1には、「RAM308の特図1又は特図2の乱数値記憶領域に保留として記憶された特図1又は特図2当選乱数値に基づいて装飾図柄の変動表示が行われ、複数の保留の装飾図柄の変動表示の変動時間を個別に表示するために保留している複数の図柄変動に対する変動タイマの先読みを行うこと」が記載されているといえる。

(1-g)段落【0643】には、「また、遊技者による所定の操作部の操作があった場合に前記総変動時間を表示するようにしてもよい。」と記載されていることから、引用例1には、「遊技者による操作が可能な所定の操作部」が記載されているといえる。

(1-h)段落【0024】には、「本発明の第1実施形態に係るパチンコ機100」と記載され、段落【0643】には、「また、保留している複数の図柄変動に対する変動タイマを先読みし、保留の合計変動時間を遊技者に認識可能に表示してもよい。たとえば、1つ目の保留が30秒で、2つ目の保留が20秒で、3つ目の保留が10秒である場合に、合計60秒を表示してもよい。・・・また、遊技者による所定の操作部の操作があった場合に前記総変動時間を表示するようにしてもよい。・・・また、総変動時間の表示は合算せず、30秒、20秒、10秒など、個別に表示してもよい。」と記載されていることから、引用例1には、「遊技者による所定の操作部の操作がなされた場合に、保留している複数の図柄変動に対する変動タイマの先読みに基づいて複数の保留の図柄変動の変動時間を個別に遊技者に認識可能に表示する、パチンコ機100」が記載されているといえる。

ウ 引用例1に記載された発明
上記(1-1)?(1-12)の記載事項および(1-a)?(1-h)の認定事項を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。

「a 第1特図始動口126又は特2特図始動口128への入賞があった場合に特図1当選乱数値又は特図2当選乱数値を取得する主制御部300のCPU304と、(認定事項1-a)
b 取得された特図1当選乱数値又は特図2当選乱数値を用いて特図1変動遊技又は特図2変動遊技が大当たりに当選したか否かを判定する主制御部300のCPU304と、(認定事項1-b)
c 特図1又は特図2変動遊技の大当り判定の結果の報知をする際に装飾図柄の変動表示を装飾図柄表示装置110に行わせる副制御部400と、を備え、(認定事項1-c)
d 副制御部400によって行われる装飾図柄表示装置110の装飾図柄の変動表示において大当りを報知する装飾図柄の図柄組合せを停止表示し、大当たりである場合には可変入賞口130への入球を可能として入球に基づく賞球を排出する、パチンコ機100において、(認定事項1-d)
e 特図1変動遊技又は特図2変動遊技の抽選を行う際に用いる保留として、取得した特図1当選乱数値及び特図2当選乱数値をそれぞれ4つまで特図1の乱数値記憶領域及び特図2の乱数値記憶領域に記憶可能なRAM308、を備え、(認定事項1-e)
f RAM308の特図1又は特図2の乱数値記憶領域に保留として記憶された特図1又は特図2当選乱数値に基づいて装飾図柄の変動表示が行われ、複数の保留の装飾図柄の変動表示の変動時間を個別に表示するために保留している複数の図柄変動に対する変動タイマの先読みを行い、(認定事項1-f)
g 遊技者による操作が可能な所定の操作部、を備え、(認定事項1-g)
h 遊技者による所定の操作部の操作がなされた場合に、保留している複数の図柄変動に対する変動タイマの先読みに基づいて複数の保留の図柄変動の変動時間を個別に遊技者に認識可能に表示する、パチンコ機100。(認定事項1-h)」

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する(下記の(a)?(h)は、引用発明の構成に対応している。)。

(a)引用発明の「第1特図始動口126又は特2特図始動口128への入賞」は、本願補正発明の「所定の始動条件の成立」に相当する。
また、引用発明の「特図1当選乱数値又は特図2当選乱数値」は、本願補正発明の「情報」に相当する。

よって、引用発明の「第1特図始動口126又は特2特図始動口128への入賞があった場合に特図1当選乱数値又は特図2当選乱数値を取得する主制御部300のCPU304」は、本願補正発明の「所定の始動条件の成立を契機として情報を取得する取得手段」に相当する。

(b)引用発明の「取得された特図1当選乱数値又は特図2当選乱数値」及び「特図1変動遊技又は特図2変動遊技の大当たりに当選したか否かを判定」は、本願補正発明の「その取得手段により取得された情報」及び「判定」にそれぞれ相当する。

よって、引用発明の「取得された特図1当選乱数値又は特図2当選乱数値を用いて特図1変動遊技又は特図2変動遊技が大当たりに当選したか否かを判定する主制御部300のCPU304」は、本願補正発明の「その取得手段により取得された情報に基づいて判定を行う判定手段」に相当する。

(c)引用発明の「特図1又は特図2変動遊技の大当り判定の結果」、「装飾図柄表示装置110」及び「装飾図柄の変動表示」は、本願補正発明の「その判定手段による判定結果」、「表示手段」及び「識別情報の動的表示」にそれぞれ相当する。

よって、引用発明の「特図1又は特図2変動遊技の大当り判定の結果の報知をする際に装飾図柄の変動表示を装飾図柄表示装置110に行わせる副制御部400」は、本願補正発明の「その判定手段による判定結果に基づいて表示手段に識別情報の動的表示を実行させる動的表示実行手段」に相当する。

(d)引用発明の「大当りを報知する装飾図柄の図柄組合せ」は、本願補正発明の「所定の識別情報」に相当する。
また、引用発明において「大当たりである場合には可変入賞口130への入球を可能として入球に基づく賞球を排出する」ことは、遊技者に遊技価値である遊技球を付与することであるから、本願補正発明の「遊技者に所定の遊技価値を付与する」ことに相当する。
そして、引用発明の「パチンコ機100」は遊技機の一種であるから、本願補正発明の「遊技機」に相当する。

よって、引用発明の「副制御部400によって行われる装飾図柄表示装置110の装飾図柄の変動表示において大当りを報知する装飾図柄の図柄組合せを停止表示し、大当たりである場合には可変入賞口130への入球を可能として入球に基づく賞球を排出する、パチンコ機100」は、本願補正発明の「その動的表示実行手段により実行される前記識別情報の動的表示において所定の識別情報が現出された場合に、遊技者に所定の遊技価値を付与する遊技機」に相当する。

(e)引用発明は「取得した特図1当選乱数値及び特図2当選乱数値をそれぞれ4つまで」「記憶可能」であることは、本願補正発明の「前記取得手段により取得される情報」を「所定の数を上限として記憶する」ことに相当する。
また、引用発明においては、記憶した保留の情報を「特図1変動遊技又は特図2変動遊技の抽選を行う際に用い」ており、記憶した保留の情報は特図1変動遊技又は特図2変動遊技の大当たりに当選したか否かを判定するまで記憶されるものであるといえる。

よって、引用発明の「特図1変動遊技又は特図2変動遊技の抽選を行う際に用いる保留として、取得した特図1当選乱数値及び特図2当選乱数値をそれぞれ4つまで特図1の乱数値記憶領域及び特図2の乱数値記憶領域に記憶可能なRAM308」は、本願補正発明の「前記取得手段により取得される情報を少なくとも前記判定手段による判定に用いられるまで所定の数を上限として記憶する記憶手段」に相当する。

(f)引用発明の「装飾図柄の変動表示の変動時間」は、本願補正発明の「前記識別情報の動的表示の実行時間」に相当する。
また、引用発明は「保留している複数の図柄変動に対する変動タイマの先読みを行」うことにより、「複数の保留の装飾図柄の変動表示の変動時間を個別に表示」していることから、引用発明は、記憶された複数の保留の変動表示の変動時間を個別に判断する手段を備えているといえる。

よって、引用発明の「RAM308の特図1又は特図2の乱数値記憶領域に保留として記憶された特図1又は特図2当選乱数値に基づいて装飾図柄の変動表示が行われ、複数の保留の装飾図柄の変動表示の変動時間を個別に表示するために保留している複数の図柄変動に対する変動タイマの先読みを行」う手段は、本願補正発明の「その記憶手段に記憶されている情報のそれぞれに基づいて実行される各々の前記識別情報の動的表示の実行時間を判断する判断手段」に相当する。

(g)引用発明の「遊技者による操作が可能な所定の操作部」は、「遊技者による操作が可能な操作手段」であるといえる。

よって、引用発明の「遊技者による操作が可能な所定の操作部」は、本願補正発明の「遊技者による操作が可能な操作手段」に相当する。

(h)引用発明の「遊技者による所定の操作部の操作」と、本願補正発明の「その操作手段に対して所定期間継続して所定の操作」とは、「その操作手段に対」する「所定の操作」である点で共通する。
そして、引用発明の「保留している複数の図柄変動に対する変動タイマの先読みに基づいて複数の保留の図柄変動の変動時間」は、本願補正発明の「前記判断手段により判断された各々の前記識別情報の動的表示の実行時間」に相当する
また、引用発明は、「図柄変動の変動時間を個別に遊技者に認識可能に表示する」ものであることから、遊技者に変動時間を認識可能に表示して報知を行う手段を有しているといえる。
さらには、引用発明「パチンコ機100」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。

よって、引用発明の「遊技者による所定の操作部の操作がなされた場合に、保留している複数の図柄変動に対する変動タイマの先読みに基づいて複数の保留の図柄変動の変動時間を個別に遊技者に認識可能に表示する、パチンコ機100。」と、本願補正発明の「その操作手段に対して所定期間継続して所定の操作がなされた場合に、前記判断手段により判断された各々の前記識別情報の動的表示の実行時間を報知可能な報知手段と、を備えることを特徴とする遊技機。」とは、「その操作手段に対して所定の操作がなされた場合に、前記判断手段により判断された各々の前記識別情報の動的表示の実行時間を報知可能な報知手段と、を備える遊技機。」である点で共通する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「A 所定の始動条件の成立を契機として情報を取得する取得手段と、
B その取得手段により取得された情報に基づいて判定を行う判定手段と、
C その判定手段による判定結果に基づいて表示手段に識別情報の動的表示を実行させる動的表示実行手段と、を備え、
D その動的表示実行手段により実行される前記識別情報の動的表示において所定の識別情報が現出された場合に、遊技者に所定の遊技価値を付与する遊技機において、
E 前記取得手段により取得される情報を少なくとも前記判定手段による判定に用いられるまで所定の数を上限として記憶する記憶手段と、
F その記憶手段に記憶されている情報のそれぞれに基づいて実行される各々の前記識別情報の動的表示の実行時間を判断する判断手段と、
G 遊技者による操作が可能な操作手段と、
H’ その操作手段に対して所定の操作がなされた場合に、前記判断手段により判断された各々の前記識別情報の動的表示の実行時間を報知可能な報知手段と、を備える遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願補正発明は、報知手段による報知を操作手段に対して所定期間継続して所定の操作がなされた場合に行うのに対して、引用発明は操作手段に対して所定の操作がなされた場合に行っており、所定期間継続した操作であることを特定していない点。(構成H)

(3)判断
ア 相違点についての検討
遊技機において、操作部における誤操作を防止することは周知の課題であり、これを解決するために所定期間の継続した操作である長押し操作を検出することは周知技術である(例えば、特開2011-177378号公報の段落【0016】、【0067】、特開2013-59447号公報の段落【0272】等。他にも、遊技機において所定期間の継続した操作を検出する技術の例として、特開2005-52341号公報の段落【0114】、特開2013-146621号公報の段落【0059】-【0060】、【0253】-【0255】等)。

そして、引用発明において、操作部における誤操作を防止するために、変動時間を表示するための操作部の操作として周知技術である所定期間の継続した操作を用いるように構成し、上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 本願補正発明が奏する効果について
上記相違点によって本願発明が奏する効果は、当業者が引用発明及び周知技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

ウ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において「本願発明は、上述した通り、操作手段に対して所定の操作が所定期間継続して行われると、保留されている各々の識別情報の動的表示の実行時間を報知する、という特徴的構成を有するものです。これにより、何らかの事情がある場合に、保留されている識別情報の動的表示の中で、どの識別情報の動的表示が実行されたタイミングで用件を済ませばよいかを、容易に判断できるという格別の効果があります。
これに対し、引用文献1に記載される発明は、保留の変動時間の合計を表示するものであり、本願発明のように各々の変動時間を表示するものではありません。よって、引用文献1では、保留されている変動表示の中で、どの変動表示が実行されたタイミングで用件を済ませばよいかを判断することもできません。つまり、引用文献1には、本願発明の特徴的構成は開示されておらず、また、本願発明が解決した課題を解決することもできません。 」と主張しており(審判請求書の「3.本願が特許されるべき理由(4)本願と引用文献との対比 」参照。)、引用文献1(引用例1)に記載の発明は、保留の変動時間の合計を表示するものであって、各々の変動時間を表示するものでは無い旨を主張している。
しかしながら、上記第2の3(1)イ(1-h)にも示した引用例1の段落【0643】の記載から明らかなように、引用発明は、先読みに基づいて保留の変動時間を個別に表示するものであり(構成f、h)、請求人が主張する本願補正発明の特徴的構成と同様の構成を有するものである。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

(4)まとめ
以上のように、本願補正発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年7月10日付けの手続補正書により補正された、上記第2の1で示した特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3 引用例
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された引用例1の記載事項は、上記第2の3(1)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、本願補正発明の発明特定事項から、上記第2の1の補正箇所を示す下線部の構成に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2の3(3)で検討したとおり、当業者が引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-11-06 
結審通知日 2018-11-13 
審決日 2018-11-27 
出願番号 特願2014-110621(P2014-110621)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福田 知喜  
特許庁審判長 奥 直也
特許庁審判官 田付 徳雄
藤田 年彦
発明の名称 遊技機  
代理人 岡田 伸一郎  

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