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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F28F
管理番号 1348013
審判番号 不服2018-269  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-10 
確定日 2019-02-04 
事件の表示 特願2015-554076号「取付手段、ガスケット装置、およびアセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔2014年 8月 7日国際公開、WO2014/117902、平成28年 3月22日国内公表、特表2016-508591号、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)12月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年1月30日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成28年7月29日付けで拒絶理由の通知がなされ、平成28年9月23日に意見書の提出及び手続補正がなされ、平成29年2月15日付けで拒絶理由の通知がなされ、平成29年5月17日に意見書の提出がなされ、平成29年10月3日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対し、平成30年1月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、平成30年2月7日に審判請求書の請求の理由を補正する手続補正(方式)がなされ、平成30年3月13日に前置報告がなされ、平成30年3月29日に審判請求人から前置報告に対する上申がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年10月3日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
(進歩性)この出願の請求項1?17に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1?3に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特表昭60-501568号公報
2.特開2000-97583号公報
3.特表2012-512382号公報

第3 本願発明
本願請求項1?15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明15」という。)は、平成30年1月10日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
熱交換器プレートの第1側(8)にガスケット(38)を締結するための、熱交換器プレート(4)の縁部(26、28)と係合するように配置された取付手段(40)であって、該取付手段は、
第1接続部材(42)と、第2接続部材(44)と、ブリッジ(46)と、を具備し、
前記第1接続部材の第1部分(48)は前記ガスケットと係合するように配置され、前記第1接続部材の第2部分(52)は前記ブリッジと係合し、
前記第2接続部材の第1部分(50)は前記ガスケットと係合するように配置され、前記第2接続部材の第2部分(54)は前記ブリッジと係合した取付手段において、
前記取付手段は、前記第1接続部材と第2接続部材との間に配置された複数のフィンガ(60、62、64)をさらに具備し、各フィンガの個々の接続部(66、68、70)は前記ブリッジと係合し、前記フィンガは、前記ブリッジから前記ガスケットに向かって延びるように配置されており、
少なくとも1つの前記フィンガは、前記熱交換器プレートの前記第1側(8)と係合するように配置され、少なくとも1つの別の前記フィンガは、前記熱交換器プレートの反対側の第2側と係合するように配置されており、
各前記フィンガ(60、62、64)は、前記ガスケット(38)に向くように配置された自由端(72、74、76)を備え、
前記フィンガのうちの第1フィンガ(60)の前記自由端(72)は、前記フィンガのうちの第2フィンガ(62、64)の前記自由端(74、76)よりも前記ガスケット(38)に近接して位置決めされるように配置されていることを特徴とする取付手段(40)。
【請求項2】
前記フィンガのうちの第1フィンガ(60)の前記自由端(72)は、前記熱交換器プレート(4)の前記第1側(8)と係合するように配置されており、前記熱交換器プレート(4)の前記第2側と係合するように配置された、前記フィンガのうちの第2フィンガ(62、64)の前記自由端(74、76)よりも、前記ガスケット(38)に近接して位置決めされるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の取付手段(40)。
【請求項3】
前記第1フィンガ(60)は、前記第2フィンガ(74、76)よりも長いことを特徴とする請求項1または2に記載の取付手段(40)。
【請求項4】
前記第1フィンガ(60)の自由端(72)は、前記熱交換器プレート(4)に面して配置された表面(78)において面取りされており、前記第2フィンガ(62、64)の自由端(74、76)は、前記熱交換器プレートから離れるように向かって配置された表面(80)において面取りされていることを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の取付手段(40)。
【請求項5】
一つおきの前記フィンガ(60)は、前記第1側(8)と係合するように配置され、残りの前記フィンガ(62、64)は、前記熱交換器プレート(4)の前記第2側と係合するように配置されていることを特徴とする請求項1?4のいずれか一項に記載の取付手段(40)。
【請求項6】
中間フィンガ(60)が前記熱交換器プレート(4)の前記第1側(8)と係合するように配置された、3つのフィンガ(60、62、64)を具備していることを特徴とする請求項1?5のいずれか一項に記載の取付手段(40)。
【請求項7】
前記ブリッジ(46)は中央部(56)を備え、該中央部は前記ブリッジの残りの部分よりも幅広であることを特徴とする請求項1?6のいずれか一項に記載の取付手段(40)。
【請求項8】
前記ブリッジ(46)は、前記フィンガ(60、62、64)よりも厚いことを特徴とする請求項1?7のいずれか一項に記載の取付手段(40)。
【請求項9】
前記第1および第2接続部材(42、44)はテーパ状であり、前記接続部材の個々の第1部分(48、50)においてより薄くなっていることを特徴とする請求項1?8のいずれか一項に記載の取付手段(40)。
【請求項10】
前記熱交換器プレート(4)の前記第1側(8)と係合するように配置された前記フィンガ(60)はテーパ状であり、前記フィンガの個々の接続部(66)においてより薄くなっており、前記熱交換器プレートの前記前記第2側と係合するように配置された前記フィンガ(62、64)はテーパ状であり、前記フィンガの個々の接続部(68、70)においてより厚くなっていることを特徴とする請求項1?9のいずれか一項に記載の取付手段(40)。
【請求項11】
ガスケット(38)と、請求項1?10のいずれか一項に記載の取付手段(40)と、を具備していることを特徴とするガスケット装置(6)。
【請求項12】
前記ガスケット(38)と前記取付手段(40)とが一体に形成されていることを特徴とする請求項11に記載のガスケット装置(6)。
【請求項13】
前記ガスケット(38)に沿って配置された、請求項1?10のいずれか一項に記載の複数の取付手段(40)と、
前記熱交換器プレート(4)の前記第1側(8)に平行に且つ前記ガスケットに直交して、前記熱交換器プレートの2つの対向した側部を越えて延びた仮想無限直線(L)と、を具備し、
前記ガスケットが熱伝達プレートに締結された場合に、前記仮想無限直線は、前記取付手段の1つのみを通じて延びていることを特徴とする請求項11または12に記載のガスケット装置(6)。
【請求項14】
熱交換器プレート(4)と、ガスケット(38)と、請求項1?10のいずれか一項に記載の取付手段(40)と、を具備していることを特徴とするアセンブリ(2)。
【請求項15】
前記熱交換器プレート(4)は、
該熱交換器プレート(4)の端縁(30、32)に沿って延びた、前記第1側(8)のガスケット溝(18)と、
前記端縁と前記ガスケット溝との間に延びて、波形とされて交互に配置された尾根(34)および谷(36)を具備した、前記熱交換器プレートの縁部(26、28)と、を具備し、
前記ガスケット(38)は前記ガスケット溝内に配置され、前記取付手段(40)は前記熱交換器プレートの端縁の周りに配置され、それにより前記熱交換器プレートの前記第1側(8)と係合するように配置された前記第1および第2接続部材(42、44)ならびに前記フィンガ(60)は、前記縁部の谷の個々の1つ内に配置されており、前記熱交換器プレートの前記第2側と係合するように配置された前記フィンガ(62、64)は、
前記縁部の尾根の個々の1つの下に配置されていることを特徴とする請求項14に記載のアセンブリ(2)。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様である。)。

「2.特許請求の範囲
1. 1つの端部(6)付近にガスケット用の溝(7)を有する熱交換板(5)と、前記溝(7)に挿入され、ガスケットの縦軸方向に間隔を置いて配置された保持手段により保持されるガスケット(1)とからなる組立体であって、前記各保持手段は、前記ガスケット(1)と一体に作られて、熱交換板(5)上のガスケット(1)と同じ側にガスケット(1)の側端部から突出するガスケット突出部(2;10,11;14;20)と、前記ガスケット突出部に接続されたブリッジ部(2A,12;17)と、前記ブリッジ部に付属して前記ガスケット突出部から離れた熱交換板(5)の上側面に配設される少なくとも1つのブリッジ突出部(3,4;13;16a,16c)とからなる板形熱交換器用ガスケット装置において、
前記少なくとも1つのブリッジ突出部(3,4;13;16a,16c)は、ガスケット突出部(2;10,11;14;20)からガスケットの縦軸方向に離れ、かつ、ガスケット(1)に向かって配設され、
前記ブリッジ部(2A,12;17)は、熱交換板(5)の端部(6)の延長の外周上に配置され、前記ブリッジ突出部(3,4;13;16a,16c)が前記端部(6)から前記ガスケット(1)の方へ伸びて熱交換板(5)のガスケット突出部(2;10,11;14;20)とは反対側に位置することを特徴とする板形熱交換器用ガスケット装置。
2. ブリッジ部(2A,12)がガスケットと一体に作られた特許請求の範囲第1項に記載の板形熱交換器用ガスケット装置。
3. ブリッジ部(12)が2つのガスケット突出部(10,11)に接続され、ブリッジ突出部(13)が前記ガスケット突出部の間に位置した特許請求の範囲第2項に記載の板形熱交換器用ガスケット装置。」(同公報に添付の平成3年11月20日発行の「特許法第17条第1項又は第17条の2の規定による補正の掲載」の1ページ左下欄4行?右下欄末行)

「第1図において、ガスケツト1の一部分が示され、該部分はガスケツトと一体形成された突出部2をもつ。これと同様の突出部がガスケツトに沿って複数個所に設けられる(不図示)。
ガスケツト1自身から一定の距離において、ガスケツト突出部2は二つの別の突出部3及び4を担持し、それらの自由端はガスケツト1に向けられている。突出部3及び4は、橋かけ部2Aによってガスケツト突出部2と連結されかつガスケツト突出部2の各側でそれとガスケツトと本質的に同一平面内に配設される。もしガスケツトとすべての突出部が同一の中心面をもつて造られれば、ガスケツトは熱交換器板のガスケツト溝内で回転できるので取扱いの点で有利である。
第3図には比較的薄い板から成る熱交換器板5の縁部の一部分が示される。この縁部自身は6で示されている。縁部6と平行に、板に溝7が造られ、溝7内に第1図によるガスケツト1が付設される。
板の縁部は第4図から明らかなように波形を形成し、谷部8とうね部9とがガスケツト溝7の同一側において、平行にかつガスケツト溝7を横切つて延びる。板の他側には対応する谷部とうね部が形成される。従って、板の一つの側の波形谷部はその板の他側の波形うね部と対応し、その逆もまた同様である。
第3図に示された三つの波形谷部8のうち、外側の二つの谷部は板の縁部6から、ガスケツト溝7からわずかな距離に位置する一点に延び、一方、中央の波形谷部8は板の縁部から直角にガスケツト溝に延びる。よつて、本発明のこの実施例によるガスケツト溝の底部はこの中央の波形谷部の底部と同一平面内に位置する。
ガスケツト1は、ガスケツト突出部2がガスケツト溝と同一の熱交換器板の側における上記中央波形谷部8内の板の縁部6から延び、一方、両方の突出部3及び4が板縁部6から熱交換器板の反対側における波形谷部内のガスケツト溝に向って後向きに延びるようにガスケツト溝7内に保持される。従って、橋かけ部2Aと突出部3,4は、波形谷部8内へのガスケツト突出部2の保持部分を構成する。
図においては、直線状のガスケツト溝7内に配設された直線状ガスケツト1の一部分のみが示されている。一つの板の一つの縁部に沿って造られたこのような直線状ガスケツト溝は、通常、熱交換器板の熱交換区域自身を囲むガスケツト溝の一部分を構成する。しかし、本発明は熱交換器板の実際の熱交換区域の外側に位置する熱交換器に設けられた穴を囲む通常は円形に延びるガスケツト溝と組み合わされても適用できる。このような穴は、板形熱交換器を流通する二つの熱交換媒体のうちの一つの媒体を、第2の熱交換媒体が流通する板間空所を流過させるために、熱交換器板に設けられる。」(2ページ右下欄10行?3ページ右上欄11行)

「第5図には、第1図から第4図までに示された実施例の変更態様が示されている。よつて、この図はガスケツトと一体に造られた突起部10,11を有するガスケツト1の一部分を示す。突出部10,11の末端は、ガスケツト1と平行に延びる橋かけ部12によって互いに連結される。ガスケツト突出部10,11間に、かつ橋かけ部12と一体に造られた突出部13が設けられ、その自由端はガスケツト1に向いて位置する。橋かけ部12と突出部13はガスケツト突出部10,11用の保持部分を構成する。
ガスケツト1を熱交換器板に付設する場合、ガスケツト突出部10,11は、橋かけ部12が板の縁部のすぐ外側に位置するように、板の一つの側における板の縁部に形成された各波形谷部内に配設される。ガスケツト1は、熱交換器板の反対側の波形谷部に形成されたガスケツト溝に向けて突出部13が板縁部6から後向きに延びるようにガスケツト溝内に保持される。」(3ページ右上欄12行?左下欄4行)













したがって、上記記載事項及び図面を総合して、Fig.5の形態を参酌し、ガスケットの保持手段に着目すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「1つの端部(6)付近にガスケット用の溝(7)を有する熱交換板(5)と、前記溝(7)に挿入され、ガスケット(1)の縦軸方向に間隔を置いて配置された保持手段により保持されるガスケット(1)とからなる組立体の前記保持手段であって、
前記各保持手段は、前記ガスケット(1)と一体に作られて、熱交換板(5)上のガスケット(1)と同じ側にガスケット(1)の側端部から突出するガスケット突出部(10,11)と、前記ガスケット突出部(10,11)に接続されたブリッジ部(12)と、前記ブリッジ部(12)に付属して前記ガスケット突出部(10,11)から離れた熱交換板(5)の上側面に配設される少なくとも1つのブリッジ突出部(13)とからなり、
前記少なくとも1つのブリッジ突出部(13)は、ガスケット突出部(10,11)からガスケットの縦軸方向に離れ、かつ、ガスケット(1)に向かって配設され、
前記ブリッジ部(12)は、熱交換板(5)の端部(6)の延長の外周上に配置され、前記ブリッジ突出部(13)が前記端部(6)から前記ガスケット(1)の方へ伸びて熱交換板(5)のガスケット突出部(10,11)とは反対側に位置し、
前記ブリッジ突出部(13)が前記ガスケット突出部(10,11)の間に位置した、板形熱交換器用ガスケット装置の保持手段。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ガスケット本体の外側に嵌合部を備えるガスケットと、ガスケット溝の外側に、ガスケット溝方向の断面が波形の波状部を備え、かつこの波状部にガスケット溝方向のスリットが設けられた伝熱プレートとを有し、上記嵌合部をスリットに嵌合させてガスケットを伝熱プレートに固定するプレート式熱交換器であって、ガスケット溝の底を波状部の山部と谷部の間に配置したものにおいて、
ガスケットと伝熱プレートとの間で、ガスケット溝方向への両者の相対移動を規制するようにしたことを特徴とするプレート式熱交換器。
【請求項2】 上記嵌合部とガスケット本体との間に突出部を介在させ、この突出部を波状部の谷部とガスケット溝方向の両側より係合させて上記相対移動を規制するようにした請求項1記載のプレート式熱交換器。
【請求項3】 嵌合部とスリットとの間に、ガスケット溝方向で相互に係合可能の凹凸嵌合部を設けて上記相対移動を規制するようにした請求項1記載のプレート式熱交換器。
【請求項4】 凹凸嵌合部が、ガスケット溝方向と直交する方向に突出したU字状である請求項3記載のプレート式熱交換器。
【請求項5】 凹凸嵌合部が、ガスケット溝方向と直交する方向に突出したV字状である請求項3記載のプレート式熱交換器。
【請求項6】 ガスケット本体の外側に、上記嵌合部から離隔して第2の突出部を設け、この第2の突出部を波状部の他の谷部とガスケット溝方向の両側より係合させて上記相対移動を規制するようにした請求項1記載のプレート式熱交換器。」

「【0003】ガスケット1を伝熱プレート2に固定する方法としては接着が一般的であるが、保守、保全作業の短縮や接着剤臭の除去を目的として、接着剤の不要な固定方法が開発されている。この方法は、ガスケット1の外周部に突設した嵌合部を伝熱プレート2に設けたスリットに嵌合することによりガスケット1を伝熱プレート2に固定するもので、その一例を図6乃至図8に示す。なお、図6(a)(b)はガスケット1を、図7(a)(b)は伝熱プレート2を、図8(a)(b)は伝熱プレート2にガスケット1を装着した状態をそれぞれ示す。
【0004】図6に示すように、ガスケット1には、その外側にコの字型に突出させたストッパ部1bが一体形成される。ストッパ部1bは、ガスケット本体1aより突出する一対の突出部10と、ガスケット本体1aと平行に配置された嵌合部11とで構成される。伝熱プレート2の周縁部よりも僅かに内側の領域には、図7(a)(b)に示すように、断面波形の波状部2aが形成されており、この波状部2aのうちの山部20およびその両側の谷部21の一部領域に跨ってスリット22が形成されている。ガスケット1の伝熱プレート2への装着は、図8(a)(b)に示すように、伝熱プレート2のガスケット溝2cにガスケット本体1aを嵌め込み、さらにガスケット1の嵌合部11をスリット22に、突出部10を谷部21にそれぞれ嵌め込むことにより行われる。ガスケット1は、嵌合部11とスリット22との係合によりガスケット溝方向(図8(a)(b)図の左右方向)と直交する方向での位置決めがなされ、また、図9に拡大して示すように、突出部10が谷部21の底部においてガスケット溝方向の壁面21aと係合することにより、ガスケット溝方向での位置決めがなされる。」

「【図6】


「【図7】



「【図8】



3.引用文献3について
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【請求項1】
プレート熱交換器(100)のための熱交換器プレート(1)であって、この熱交換器プレート(1)は、
複数のポート(8,9,10,11)と、
複数の分配領域(12)と、
複数の断熱領域(14,15)と、
熱伝達領域(13)と、
前記複数のポート(8,9,10,11)及び前記領域(12,13,14,15)の外側に延びたエッジ領域(16)とを具備し、
この熱交換器プレート(1)は、前記領域(12,13,14,15)の外側で、かつ前記複数のポート(8,9,10,11)の周りで、前記エッジ領域(16)に延びているガスケット溝(20)を有し、
前記ガスケット溝(20)は、前記プレート熱交換器(100)の隣接している熱交換器プレート(1)に対して当接部を密閉するためのガスケット(30)を収容する、熱交換器プレート(1)において、
前記ガスケット溝(20)は、前記熱伝達領域(13)の両側に沿って、前記熱伝達領域(13)の少なくとも1つの凹部(40)を有し、
前記凹部(40)は、クリップ留めタブ(41)が前記凹部(40)のところでこの熱交換器プレート(1)の前記エッジ領域(16)に固定されることを可能にすることを特徴とする熱交換器プレート(1)。
【請求項2】
前記熱伝達領域(13)の両側に沿った前記凹部(40)は、対応する位置に配置されている請求項1の熱交換器プレート。
【請求項3】
前記熱伝達領域(13)の両側に沿った前記凹部(40)は、互いに対して等間隔で配置されている請求項2の熱交換器プレート。
【請求項4】
前記熱伝達領域(13)の両側に沿った前記凹部(40)は、水平中心線(C)に対して等間隔で配置されている請求項2の熱交換器プレート。
【請求項5】
前記エッジ領域(16)は、前記熱伝達領域(13)に沿った前記凹部(40)のところで前記熱伝達領域(13)に沿った残りのエッジ領域(16)よりも幅広い請求項1ないし3のいずれか1の熱交換器プレート。
【請求項6】
前記凹部(40)には、前記クリップ留めタブ(41)が前記凹部(40)の2つの異なる位置(42,43)に交互に受けられることを可能にするために、上側クリップ留めタブ位置(43)及び下側クリップ留めタブ位置(42)が設けられている請求項1ないし5のいずれか1の熱交換器プレート。
【請求項7】
2つの熱交換器プレート(1)が、カセットを形成するために1対として互いに永久的に接合される請求項1ないし6のいずれか1の熱交換器プレート。
【請求項8】
前記カセットは、前記プレート熱交換器(100)の隣接しているカセットに対して当接部を密閉するために、カセットの間に配置された複数のガスケット(30)を有する請求項7の熱交換器プレート。
【請求項9】
熱交換器プレート(1)が、前記カセットを形成するために、溶接によって互いに接合される請求項7又は8の熱交換器プレート。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1の熱交換器プレート(1)のためのガスケット(30)において、
このガスケット(30)には、前記ガスケット溝(20)の前記凹部(40)のところでこのガスケット(30)を前記熱交換器プレート(1)に固定するクリップ留めタブ(41)が設けられており、また、前記熱交換器プレート(1)の前記ポート(8,9,10,11)に近い前記熱交換器プレート(1)にこのガスケット(30)を固定するためのクリップ留めタブ(41)が設けられているガスケット(30)。
【請求項11】
前記クリップ留めタブ(41)は、前記熱交換器プレート(1)の両側の対応する凹部(40)に、それぞれ、前記上側クリップ留めタブ位置及び下側クリップ留めタブ位置(43)で交互に受けられるように配置されている請求項10のガスケット。
【請求項12】
このガスケット(30)は、ゴム又は高分子材料でできている請求項10又は11のガスケット(30)。
【請求項13】
熱交換器プレート(1)のパッケージ(2)と、
請求項1ないし12のいずれか1のガスケット(30)とを具備するプレート熱交換器(100)。」





第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「端部(6)」、「ガスケット(1)」、「熱交換板(5)」、「保持手段」、「ガスケット突出部(10,11)」、「ブリッジ部(12)」、及び「ブリッジ突出部(13)」は、それぞれ、本願発明1の「縁部(26、28)」、「ガスケット(38)」、「熱交換器プレート」、「取付手段(40)」、「第1接続部材(42)」及び「第2接続部材(44)」、「ブリッジ(46)」、及び「フィンガ(60、62、64)」に相当する。

引用発明の「熱交換板(5)上のガスケット(1)と同じ側」は、ガスケットと同じ側を第1側とすると、本願発明1の「熱交換器プレートの第1側(8)」に相当する。
引用発明の「1つの端部(6)付近にガスケット用の溝(7)を有する熱交換板(5)と、前記溝(7)に挿入され、ガスケット(1)の縦軸方向に間隔を置いて配置された保持手段により保持されるガスケット(1)とからなる組立体の前記保持手段」は、ガスケット用の溝が熱交換板の端部付近に位置していることから、当該保持手段は熱交換板の端部と係合しているといえる。そうすると、引用発明の「保持手段」と、本願発明1の「ガスケット(38)を締結するための、熱交換器プレート(4)の縁部(26、28)と係合するように配置された取付手段(40)」とは、「ガスケットを保持するための、熱交換器プレートの縁部と係合するように配置された取付手段」との限りで一致する。
引用発明の「ガスケット(1)の側端部から突出するガスケット突出部(10,11)と、前記ガスケット突出部(10,11)に接続されたブリッジ部(12)」とからなる態様は、その位置関係(引用文献1Fig.5参照)からみて、本願発明1の「第1接続部材(42)と、第2接続部材(44)と、ブリッジ(46)と、を具備し、
前記第1接続部材の第1部分(48)は前記ガスケットと係合するように配置され、前記第1接続部材の第2部分(52)は前記ブリッジと係合し、
前記第2接続部材の第1部分(50)は前記ガスケットと係合するように配置され、前記第2接続部材の第2部分(54)は前記ブリッジと係合」する態様に相当する。
引用発明の「前記ブリッジ部(12)に付属して前記ガスケット突出部(10,11)から離れた熱交換板(5)の上側面に配設される少なくとも1つのブリッジ突出部(13)とからなり、
前記少なくとも1つのブリッジ突出部(13)は、ガスケット突出部(10,11)からガスケットの縦軸方向に離れ、かつ、ガスケット(1)に向かって配設され」、「前記ブリッジ突出部(13)が前記ガスケット突出部(10,11)の間に位置した」態様は、ブリッジ部、ガスケット突出部及びブリッジ突出部の配置関係から(引用文献1Fig.5参照)、本願発明1の「前記取付手段は、前記第1接続部材と第2接続部材との間に配置された複数のフィンガ(60、62、64)をさらに具備し、各フィンガの個々の接続部(66、68、70)は前記ブリッジと係合し、前記フィンガは、前記ブリッジから前記ガスケットに向かって延びるように配置され」た態様と、「前記取付手段は、前記第1接続部材と第2接続部材との間に配置されたフィンガをさらに具備し、フィンガの接続部は前記ブリッジと係合し、前記フィンガは、前記ブリッジから前記ガスケットに向かって延びるように配置され」るとの限りで一致している。
引用発明の「前記ブリッジ部(12)は、熱交換板(5)の端部(6)の延長の外周上に配設され、前記ブリッジ突出部(13)が前記端部(6)から前記ガスケット(1)の方へ伸びて熱交換板(5)のガスケット突出部(10,11)とは反対側に位置し」ていることは、上記のとおり、熱交換板のガスケットと同じ側を第1側としていたので、第1側と反対の熱交換板を第2側とすると、本願発明1の「少なくとも1つの前記フィンガは、前記熱交換器プレートの前記第1側(8)と係合するように配置され、少なくとも1つの別の前記フィンガは、前記熱交換器プレートの反対側の第2側と係合するように配置され(ており)」た態様と、「少なくとも1つのフィンガは、前記熱交換器プレートの反対側の第2側と係合するように配置され」る限りで一致している。また、引用発明の「前記ブリッジ突出部(13)が前記端部(6)から前記ガスケット(1)の方へ伸び」た態様は、その配置関係から(引用文献1Fig.5参照)、本願発明1の「各前記フィンガ(60、62、64)は、前記ガスケット(38)に向くように配置された自由端(72、74、76)を備え」た態様と、「フィンガは、前記ガスケットに向くように配置された自由端を備え」た態様の限りで一致している。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
熱交換器プレートの第1側にガスケットを保持するための、熱交換器プレートの縁部と係合するように配置された取付手段であって、該取付手段は、
第1接続部材と、第2接続部材と、ブリッジと、を具備し、
前記第1接続部材の第1部分は前記ガスケットと係合するように配置され、前記第1接続部材の第2部分は前記ブリッジと係合し、
前記第2接続部材の第1部分は前記ガスケットと係合するように配置され、前記第2接続部材の第2部分は前記ブリッジと係合した取付手段において、
前記取付手段は、前記第1接続部材と第2接続部材との間に配置されたフィンガをさらに具備し、フィンガの接続部は前記ブリッジと係合し、前記フィンガは、前記ブリッジから前記ガスケットに向かって延びるように配置され、
少なくとも1つのフィンガは、前記熱交換器プレートの反対側の第2側と係合するように配置され、
前記フィンガは、前記ガスケットに向くように配置された自由端を備える、
前記前取付手段。」

(相違点1)
取付手段による熱交換器プレートの第1側にガスケットを保持することについて、本願発明1は、「取付手段」により「ガスケット」を「締結」しているのに対して、引用発明は、取付手段による「ガスケット」の保持の具体的な態様までは明らかでない点。

(相違点2)
第1接続部材と第2接続部材との間に配置されたフィンガについて、本願発明1は、「取付手段は、前記第1接続部材と第2接続部材との間に配置された複数のフィンガ(60、62、64)をさらに具備し、各フィンガの個々の接続部(66、68、70)は前記ブリッジと係合し、前記フィンガは、前記ブリッジから前記ガスケットに向かって延びるように配置され」ていて、「少なくとも1つの前記フィンガは、前記熱交換器プレートの前記第1側(8)と係合するように配置され、少なくとも1つの別の前記フィンガは、前記熱交換器プレートの反対側の第2側と係合するように配置されており
各前記フィンガ(60、62、64)は、前記ガスケット(38)に向くように配置された自由端(72、74、76)を備え
前記フィンガのうちの第1フィンガ(60)の前記自由端(72)は、前記フィンガのうちの第2フィンガ(62、64)の前記自由端(74、76)よりも前記ガスケット(38)に近接して位置決めされるように配置されている」のに対して、引用発明は、そのような構成を有していない点。

(2)相違点1、2についての判断
引用文献1には、ガスケット突出部(2)の両側に、二つのブリッジ突出部(Fig.1で部材3及び部材4)を設けたものが記載されているものの、当該構成を、引用発明の「前記ブリッジ突出部(13)が前記ガスケット突出部(10,11)の間に位置した、板形熱交換器用ガスケット装置の保持手段」においても、採用することの記載や示唆はなされていない。また、引用文献1には、熱交換板の縁部が波形として構成されて、谷部とうね部とをなし、当該谷部とうね部にブリッジ突出部及びガスケット突出部が装着される態様からみて、引用発明において、ガスケット突出部の間に位置したブリッジ突出部を、複数のものとすることには、各部材の配置構造を大きく変更する必要があると認められるから、むしろ阻害要因があるといえる。
そうすると、引用発明において、少なくとも1つのブリッジ突出部を複数のものとする動機付けはなく、さらに、ブリッジ突出部を複数のものとすることを前提に、1つのブリッジ突出部を、熱交換板の第1側と係合するように配置し、少なくとも1つの別のブリッジ突出部を、前記熱交換板の反対側の第2側と係合するように配置し、各前記ブリッジ突出部が、前記ガスケットに向くように配置された自由端を備え、前記ブリッジ突出部のうちの第1のブリッジ突出部の前記自由端は、前記ブリッジ突出部のうちの第2のブリッジ突出部の前記自由端よりも前記ガスケットに近接して位置決めされるように配置することも、当業者が容易に想到し得たこととすることはできない。
さらに、取付手段による熱交換器プレートの第1側にガスケットを保持することについて、本願発明1の「締結」とすることは、「熱交換器プレートの第1側と係合するための少なくとも1つのフィンガと、熱交換器プレートの第2側と係合するための少なくとも別のフィンガと、を具備した取付手段によって、熱交換器プレートの縁部はフィンガの間で圧搾され、それにより取付手段は、熱交換器プレートに堅固に固定され得る」(本願明細書【0011】)態様をいうものであり、第1接続部材及び第2接続部材との間(ガスケット突出部間)に配置された複数のフィンガを前提としたものなので、引用発明のブリッジ突出部による保持態様を「締結」とすることも、当業者が容易に想到し得たこととすることはできない。
そして、他の引用文献2及び3においても、上記相違点1及び相違点2に係る本願発明1の特定事項は、記載されていない。
そうすると、引用発明において、相違点1及び相違点2に係る本願発明1の特定事項を採用することが、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たということはできない。
したがって、本願発明1は、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2?15について
本願発明2?15も、上記相違点1及び相違点2に係る本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 原査定について
理由1(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1?15は、「各前記フィンガ(60、62、64)は、前記ガスケット(38)に向くように配置された自由端(72、74、76)を備え、
前記フィンガのうちの第1フィンガ(60)の前記自由端(72)は、前記フィンガのうちの第2フィンガ(62、64)の前記自由端(74、76)よりも前記ガスケット(38)に近接して位置決めされるように配置されていること」を備えるという事項を有するものとなっており、拒絶査定において引用された引用文献1?3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-01-22 
出願番号 特願2015-554076(P2015-554076)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F28F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柿沼 善一金丸 治之  
特許庁審判長 松下 聡
特許庁審判官 山崎 勝司
宮崎 賢司
発明の名称 取付手段、ガスケット装置、およびアセンブリ  
代理人 実広 信哉  
代理人 阿部 達彦  
代理人 村山 靖彦  

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