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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1348035
審判番号 不服2017-2651  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-23 
確定日 2019-01-17 
事件の表示 特願2013-246330「電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月 8日出願公開、特開2015-106165〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年11月28日の出願であって、平成28年9月6日付けで拒絶理由が通知され、平成28年11月11日に意見書が提出され、平成28年11月25日付けで拒絶査定がされ、これを不服として平成29年2月23日に審判が請求されたものである。その後、当審により、平成30年3月22日付けで拒絶理由が通知され、平成30年5月21日付けで手続補正がされ、さらに当審により、平成30年5月29日付けで拒絶理由(以下、「当審による拒絶理由」という。)が通知され、平成30年8月1日に意見書が提出された。

第2 本件発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、平成30年5月21日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
表面および背面にタッチセンサを有する電子機器であって、
背面のタッチセンサのスライド操作を検出すると表示中の画面をスクロールさせるスクロールモードと、前記背面のタッチセンサの操作を検出すると表示中のポインタを移動させるポインタモードとの2つの制御モードを有し、前記スクロールモード中に前記背面のタッチセンサの切替え操作を検出すると前記スクロールモードから前記ポインタモードへ制御モードを切り替える制御部と、
前記背面のタッチセンサに対する押圧を検出する押圧検出部と、
所定の振動パターンによる振動を発生させることにより、前記背面のタッチセンサに対して触感を呈示する触感呈示部と、
を備え、
前記制御部は、前記押圧検出部により検出される押圧に基づくデータが所定の基準を満たすと、前記触感呈示部により前記背面のタッチセンサに対して触感を呈示するとともに、前記スクロールモードから前記ポインタモードへ制御モードを切り替えることを特徴とする電子機器。」

第3 通知した拒絶理由の概要
当審による拒絶理由の概要は次のとおりである。
本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.米国特許出願公開第2013/0007653号明細書
2.特開2010-146513号公報

第4 引用文献の記載事項、引用発明
1.引用文献1
(1)記載事項
当審による拒絶理由に引用された米国特許出願公開第2013/0007653号明細書(以下、「引用文献1」という。)には、次の技術事項が記載されている。なお、下線は当審により付与したものであり、括弧内は当審による訳である。

「[0021] FIG.1 is a front perspective view of an electronic device 100 according to an exemplary embodiment. The device 100 may be, for example, a handheld wireless device, such as a mobile phone, a Personal Digital Assistant (PDA), a smart phone, tablet or laptop computer, a multimedia player, a MP3 player, a digital broadcast receiver, remote controller, or any other electronic apparatus.」
([0021]図1は、一実施例の電子機器100の正面図である。該電子機器100は、例えば、携帯電話のようなハンドヘルド無線デバイス、PDA、スマートフォン、タブレットやラップトップコンピュータ、マルチメディアプレーヤ、MP3プレーヤ、デジタル放送受信機、リモートコントローラ、その他の電子機器であり得る。)

「[0023] The device 100 further includes a touch screen display (or first touch sensitive surface)122 positioned on the front housing face 120. The front touch screen display 122 is integrated into the front housing face 120 and is configured as both a display screen and a manual user interface.」
([0023]該機器100は、さらに、ハウジング表面120に位置するタッチスクリーンディスプレイ(又は第1のタッチ感知表面)112を有する。このフロントタッチスクリーンディスプレイ112は、ハウジング表面120に一体化され、ディスプレイスクリーンとマニュアルユーザインターフェースの両方として構成されている。)

「[0024] FIG.2 is a rear view of the device 100 of FIG.1 according to an exemplary embodiment. FIG.2 particularly illustrates a rear (reverse or second) housing face 140 of the housing 110 that is substantially opposite the front housing face 120 of FIG.1. A rear touch pad 142 is positioned on the rear housing face 140 and is configured as another user interface. 」
([0024]図2は、一実施例に関する図1の該機器100の背面図である。図2は、特にハウジング110の後ろの(反対の又は第2の)ハウジング面140を示し、これは図1のハウジング表面120の実質的に反対側である。リアタッチパッド142はハウジング裏面140に位置し、もう一つのユーザインターフェースとして構成されている。)

「[0032] …. FIG.4 is an exemplary flow diagram 400 illustrating a method of operating of the device 100 according to an exemplary embodiment. ….
[0033] In step 410, in a default touch pad mode, the controller 300 may also enable limited control of the device 100 based on inputs at the rear touch pad 142. As described below, in the default mode, the rear touch pad 142 is typically used for scrolling. As noted above, the inputs may be formed from any type of gesture or combination of gestures, including single-and multi-finger glides and taps. 」
([0032]・・・図4は、一実施例の該電子機器100の制御方法を示すフロー図400の一例である。・・・。
[0033]ステップ410では、デフォルトタッチパッドモードにおいて、コントローラ300は、また、リアタッチパッド142の入力に基づいて該機器100の一部の制御を可能にすることができる。以下に述べるように、デフォルトモードにおいては、リアタッチパッド142は、主にスクロールに使用される。上述したように、該入力は、1つ又は複数の指を滑らせたりタップすることを含むいかなるタイプのジェスチャーやジェスチャーの組み合わせからも形成することができる。)

「[0038] Returning to FIG. 4, in step 420, the device 100 monitors inputs received from the user for a first predetermined input. The first predetermined input may be any suitable input, such as a "figure 8" input on the front touch screen display 122 or the rear touch pad 142, a double tap input on the rear touch pad, or a press-and-hold input on the rear touch pad 142 that indicates a user intention to modify the operating mode. ….
[0039] If, however, the first predetermined input is detected in step 420, the flow diagram 400 proceeds to step 430 and the device 100 operates in a second touch pad mode, particularly in a navigation touch pad mode. 」
([0038]図4に戻ると、ステップ420では、該機器100は、第1の所定の入力に対応するユーザからの入力を監視する。第1の所定の入力は、ユーザが操作モードを変更する意図を示す、フロントタッチスクリーンディスプレイ122又はリアタッチパッド142への“8の字”入力、リアタッチパッド上へのダブルタップ入力、又は、リアタッチパッドへのプレス&ホールド入力のようないかなる適切な入力であってもよい。・・・。
[0039]しかしながら、もし、第1の所定の入力がステップ420で検出されると、フロー図400はステップ430に進み、該機器100は、第2のタッチパッドモード、特に、ナビゲーションタッチパッドモードで動作する。)

「[0041] If the navigation mode is not canceled in step 450, the flow diagram 400 proceeds to step 460 in which the device 100 operates in a navigation mode. 」
([0041]ステップ450でナビゲーションモードがキャンセルされなければ、フロー図400はステップ460に進み、該機器100は、ナビゲーションモードを実行する。)

「[0042] …. As such, in substep 461, a first type of touch input (e.g., a finger glide or movement) on the rear touch pad 142 functions to move the displayed pointer icon about a static or near-static image displayed on the front touch screen display 122. 」
([0042]・・・。そのようにサブステップ461では、リアタッチパッド142への第1のタイプのタッチ入力(すなわち、指を滑らせたり動かしたりすること)は、フロントタッチスクリーンディスプレイ122上に表示された静止画像又は略静止画像として表示されたポインタアイコンを移動させる機能として働く。)

「[0045] After one of the touch inputs in step 460, the flow diagram 400 proceeds to step 470 in which the device 100 determines if the intended task in the navigation mode is complete. …. It may be assumed that the task of the user is completed with the selection and the flow diagram 400 returns to step 410 such that the device 100 further operates in the default mode.」
([0045]ステップ460で1つのタッチ入力があった後、フロー図40は、ステップ470に進み、該機器100は、ナビゲーションモード460の所望のタスクが完了したかどうかを決定する。・・・。選択によりユーザのタスクが完了し、そして、フロー図400はステップ410に戻り、該機器100は、さらに、デフォルトモードを実行することとなる。)

(2)引用発明
上記記載事項(特に、下線部を参照されたい。)によれば、次のことがいえる。
引用文献1には、携帯電話等の電子機器100に関して記載されており(段落0021)、該電子機器100は、フロントタッチスクリーンディスプレイ122(段落0023)、及び、リアタッチパッド142(段落0024)を有している。
上記電子機器100の制御方法のフロー図を示す図4を参照し、それに対応する説明によると、上記電子機器100は、コントローラ300による制御として、デフォルトタッチパッドモード410(段落0033)と、ナビゲーションモード460(段落0041)を有する。
デフォルトタッチパッドモード410では、リアタッチパッド142は、指を滑らせるジェスチャーにより主にスクロールに使用される(段落0033)。
ナビゲーションモード460では、リアタッチパッド142へのタッチ入力は、例えば、表示されたポインタアイコンを移動させる機能として働く(段落0042)。
さらに、ユーザによりリアタッチパッド142へプレス&ホールド入力がされると、上記デフォルトタッチパッドモード410から上記ナビゲーションモード460への切替えを行い(段落0038、0039)、その後、ナビゲーションモード460のタスクが完了したことを判断すると、デフォルトタッチパッドモード410に戻る(段落0045)制御を行う。

以上によれば、引用文献1には、電子機器100に関する次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「フロントタッチスクリーンディスプレイ122およびリアタッチパッド142を有する携帯電話等の電子機器100であって、
リアタッチパッド142での指を滑らせるジェスチャーによりスクロールさせるデフォルトタッチパッドモード410と、リアタッチパッド142へのタッチ入力により表示されたポインタアイコンを移動させるナビゲーションモード460とを有し、
リアタッチパッド142へプレス&ホールド入力がされると、上記デフォルトタッチパッドモード410から上記ナビゲーションモード460への切替えが行われ、その後、ナビゲーションモード460のタスクが完了したことを判断すると、デフォルトタッチパッドモード410に戻る制御を行うコントローラ300を備える、電子機器100。」

2.引用文献2
(1)記載事項
当審による拒絶理由に引用された特開2010-146513号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の技術事項が記載されている。なお、下線は当審により付与したものである。

「【0001】
本発明は、押圧による入力を受け付ける入力部を備える入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器や家電製品等には、ユーザによる入力操作を受け付ける入力部として、タッチパネルやタッチスイッチ等の押圧による入力を受け付けるプレート状の入力部を備える入力装置が広く使用されている。このような入力部には、抵抗膜方式や静電容量方式等の種々の方式があるが、いずれも、指やスタイラスペンによる押圧による入力を受け付けるものであって、入力部自体は、押圧されても、押しボタンスイッチのようには変位しない。
【0003】
このため、操作者は、押圧による入力が受け付けられた際にフィードバックを得ることができないことから、例えば、タッチパネルを備える入力装置においては、同じ位置を何度も押圧する等の誤操作による入力ミスが生じ易く、操作者にストレスを与える場合がある。
【0004】
このような入力ミスを防止し得るものとして、例えば、押圧入力を受け付けて、音を鳴らしたり、当該押圧領域に対応して表示部に画像表示されている入力ボタン等の入力用オブジェクトの表示色を変更する等の表示態様を変更したりして、聴覚や視覚により入力操作を確認できるようにしたものが知られている。
【0005】
しかし、聴覚に働きかけるフィードバック方法の場合は、騒音環境下での確認が困難になるとともに、使用機器がマナーモード等で消音状態にある場合は、対応できないことになる。また、視覚に働きかけるフィードバック方法の場合は、表示部に表示されている入力用オブジェクトのサイズが小さいと、特に指入力の場合は、指の下に入力用オブジェクトが隠れて表示態様の変化が確認できない場合がある。
【0006】
また、聴覚や視覚によらず、タッチパネルが入力を受け付けると、タッチパネルを振動させて、操作者の指先に触覚を発生させるようにしたフィードバック方法も提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2003-288158号公報
【特許文献2】特開2008-130055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1,2に開示の技術は、単に、操作者の指先に振動による触覚を発生させるものである。すなわち、タッチパネルを振動させることにより、タッチパネルに接触している操作者の指先に、「ブルブル」といった触感を呈示するもので、例えば、メタルドームを有する押しボタンスイッチを操作した際に感じられる「カッチッ」というような、リアルなクリック触感を呈示するものではない。
【0009】
このため、例えば、携帯電話等の携帯端末、電卓、券売機等の情報機器の入力キーや、電子レンジやテレビ等の家電製品における操作部の入力キー等をタッチパネルで構成して、該タッチパネルに上記のフィードバック技術を適用した場合、操作者は違和感を覚えることになる。
【0010】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、操作者が押圧式の入力部を操作した際に、押しボタンスイッチを操作した場合と同様のリアルなクリック触感を呈示できる入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する請求項1に係る入力装置の発明は、
押圧による入力を受け付ける入力部と、
前記入力部に対する押圧荷重を検出する荷重検出部と、
前記入力部を振動させる振動部と、
前記荷重検出部により検出される押圧荷重が、前記入力部への入力を受け付ける所定の基準を満たした際に、前記入力部を押圧している押圧物に対してクリック触感を呈示するように前記振動部の駆動を制御し、前記入力部への入力を受け付けた後、前記荷重検出部により検出される押圧荷重が所定の基準を満たした際に、前記押圧物に対してクリック触感を呈示するように前記振動部の駆動を制御する制御部と、
を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、入力部への押圧荷重が、入力を受け付ける所定の基準を満たした際に、入力部を振動させ、その後、入力部への押圧荷重が所定の基準を満たした際に入力部を振動させるので、操作者に対して押しボタンスイッチを操作した場合と同様のリアルなクリック触感を呈示することが可能となる。」

第5 対比
本件発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「フロントタッチスクリーンディスプレイ122およびリアタッチパッド142を有する携帯電話等の電子機器100」は、本件発明の「表面および背面にタッチセンサを有する電子機器」に相当する。
引用発明の「リアタッチパッド142での指を滑らせるジェスチャーによりスクロールさせるデフォルトタッチパッドモード410」、「リアタッチパッド142へのタッチ入力により表示されたポインタアイコンを移動させるナビゲーションモード460」は、それぞれ、本件発明の「背面のタッチセンサのスライド操作を検出すると表示中の画面をスクロールさせるスクロールモード」、「前記背面のタッチセンサの操作を検出すると表示中のポインタを移動させるポインタモード」に相当し、両者は、「背面のタッチセンサのスライド操作を検出すると表示中の画面をスクロールさせるスクロールモードと、前記背面のタッチセンサの操作を検出すると表示中のポインタを移動させるポインタモードとの2つの制御モードを有」する点で一致する。
引用発明の「コントローラ300」が行う「リアタッチパッド142へプレス&ホールド入力がされると、上記デフォルトタッチパッドモード410から上記ナビゲーションモード460への切替えが行われ」る制御は、本件発明の「前記スクロールモード中に前記背面のタッチセンサの切替え操作を検出すると前記スクロールモードから前記ポインタモードへ制御モードを切り替える制御部」の制御動作に相当し、両者は、「前記スクロールモード中に前記背面のタッチセンサの切替え操作を検出すると前記スクロールモードから前記ポインタモードへ制御モードを切り替える制御部」を備える点で一致する。
また、引用発明の「コントローラ300」が上記制御を行うには、リアタッチパッド142へプレス&ホールド入力がされたことを検出する検出部が必須であることは明らかであり、「プレス」は「押圧」を意味するから、本件発明と引用発明とは、「前記背面のタッチセンサに対する押圧を検出する押圧検出部」を備える点で一致する。

したがって、本件発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
表面および背面にタッチセンサを有する電子機器であって、
背面のタッチセンサのスライド操作を検出すると表示中の画面をスクロールさせるスクロールモードと、前記背面のタッチセンサの操作を検出すると表示中のポインタを移動させるポインタモードとの2つの制御モードを有し、前記スクロールモード中に前記背面のタッチセンサの切替え操作を検出すると前記スクロールモードから前記ポインタモードへ制御モードを切り替える制御部と、
前記背面のタッチセンサに対する押圧を検出する押圧検出部と、
を備えることを特徴とする電子機器。

[相違点]
本件発明は、「所定の振動パターンによる振動を発生させることにより、前記背面のタッチセンサに対して触感を呈示する触感呈示部と、
を備え、
前記制御部は、前記押圧検出部により検出される押圧に基づくデータが所定の基準を満たすと、前記触感呈示部により前記背面のタッチセンサに対して触感を呈示するとともに、前記スクロールモードから前記ポインタモードへ制御モードを切り替える」ものであるのに対し、引用発明は、リアタッチパッド142へプレス&ホールド入力がされると、上記デフォルトタッチパッドモード410から上記ナビゲーションモード460への切替えが行われるものではあるが、リアタッチパッド142は「触感呈示部」を備えておらず、「前記制御部は、前記押圧検出部により検出される押圧に基づくデータが所定の基準を満たすと、前記触感呈示部により前記背面のタッチセンサに対して触感を呈示するとともに、前記スクロールモードから前記ポインタモードへ制御モードを切り替える」ものではない点。

第6 判断
上記相違点について検討する。
引用発明は、リアタッチパッド142へプレス&ホールド入力がされるとモードの切替えが行われるものであるから、上述したように、リアタッチパッド142へプレス&ホールド入力がされたことを検出する検出部を備えているといえる。該検出部がプレス&ホールド入力がされたことを検出するということは、換言すれば、操作入力された該検出部の出力データ(本件発明でいう「押圧に基づくデータ」)が、プレス&ホールド入力を示すものであるという条件(本件発明でいう「所定の基準」)を満たすということであるから、このことは、本件発明でいう「前記押圧検出部により検出される押圧に基づくデータが所定の基準を満たす」ことに相当するといえる。
したがって、本件発明と引用発明は、「前記押圧検出部により検出される押圧に基づくデータが所定の基準を満たすと、前記スクロールモードから前記ポインタモードへ制御モードを切り替える」点では共通するといえる。
一方、引用文献2の【0001】-【0012】の記載(特に、下線部の記載)によれば、携帯電話等の情報機器に備えられた、押圧による入力を受け付ける入力部を備える入力装置において、入力部を振動させる振動部を備え、検出される押圧荷重が、前記入力部への入力を受け付ける所定の基準を満たした際に、前記入力部を押圧している押圧物に対して触感を呈示するように前記振動部の駆動を制御して、入力に対してフィードバックをする入力装置が記載されている。
プレス&ホールド入力を行う引用発明において、引用文献2に記載された入力装置のように、入力に対してフィードバックをすることが有用であるのは当業者に明らかであり、そのようにすることを妨げる要因もないから、引用発明において、引用文献2に記載の入力装置の技術を適用する動機があるといえる。
したがって、引用発明において、引用文献2に記載された技術を適用し、入力部であるリアタッチパッド142を振動させる振動部を備え、リアタッチパッド142へプレス&ホールド入力がされると、前記リアタッチパッド142上の指に対して触感を呈示するように前記振動部の駆動を制御して、入力に対してフィードバックをすることは、当業者が容易に想到し得ることであり、そのようにして得られる構成は、上記相違点に係る本件発明の構成に他ならない。
よって、本件発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-11-19 
結審通知日 2018-11-20 
審決日 2018-12-03 
出願番号 特願2013-246330(P2013-246330)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 匡  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 山田 正文
千葉 輝久
発明の名称 電子機器  
代理人 片岡 憲一郎  
代理人 太田 昌宏  
代理人 杉村 憲司  

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