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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F23Q
管理番号 1348157
審判番号 不服2017-15892  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-26 
確定日 2019-02-05 
事件の表示 特願2015- 25906号「熱源機器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年8月18日出願公開,特開2016-148490号,請求項の数(2)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 経緯の概略
本願は,平成27年2月13日の出願であって,その経緯は,概ね次のとおりである。
平成28年 6月 3日 拒絶理由通知書
平成28年 7月22日 意見書,手続補正書
平成28年10月20日 拒絶理由通知書(最後)
平成28年12月 8日 意見書
平成29年 2月28日 拒絶理由通知書(最後)
平成29年 5月 2日 意見書,手続補正書
平成29年 7月28日 拒絶査定
平成29年10月26日 拒絶査定不服審判請求書
平成30年 8月27日 拒絶理由通知書
平成30年10月26日 意見書,手続補正書

第2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」,「本願発明2」という。)は,平成30年10月26日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1及び2は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
燃焼させるためのバイオマス燃料が配置される燃焼部と,
前記バイオマス燃料に着火する着火装置と,
を備えた燃焼装置と,
前記燃焼部に空気を供給する給気ファンと,
前記給気ファンとは別に設けられたダイアフラムポンプと,
を備えた熱源機器であって,
前記着火装置は電気ヒータと,前記電気ヒータが発生した熱を前記バイオマス燃料に送り出すための空気を供給する着火用空気供給管とを備え,前記電気ヒータは,前記着火用空気供給管の内部に設けられ,前記着火用空気供給管の他端は,外部から取り込んだ空気を前記着火用空気供給管に供給する前記ダイアフラムポンプに接続されており,当該電気ヒータが発生した熱によって,前記バイオマス燃料に着火することを特徴とする熱源機器。
【請求項2】
前記燃焼部は,
筒状の燃焼器と,
前記燃焼器の内部に収容され,前記バイオマス燃料が載置される火格子と,
を備え,
前記燃焼器の前記火格子の上方の内壁には,着火用穴が形成され,
前記着火用空気供給管の一端が,前記着火用穴に挿入されていることを特徴とする請求項1に記載の熱源機器。」

第3 原査定の概要
原査定(平成29年7月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願発明1及び2は,以下の引用文献A?Dに記載された発明に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
(引用文献)
A 特開2008-107005号公報
B 特開2004-191016号公報
C 特開2013-104628号公報
D 米国特許出願公開第2014/0299119号明細書

第4 当審にて通知した拒絶の理由の概要
当審にて通知した拒絶の理由の概要は次のとおりである。
本願発明1及び2は,以下の引用文献1?4に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
(引用文献)
1 特開2005-172383号公報(当審において新たに引用した文献)
2 特開2004-191016号公報(原査定の引用文献B)
3 特開2013-104628号公報(原査定の引用文献C)
4 米国特許公開第2014/0299119号明細書(原査定の引用文献D)
5 特開2008-107005号公報(原査定の引用文献A)

第5 当審にて通知した拒絶の理由についての判断
1 引用文献,引用発明等
(1) 引用文献1について
ア 引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。
・「【請求項1】
ペレット着火用の棒状発熱体と,この棒状発熱体を内設してペレット燃焼器に臨む筒状のガイドパイプとからなり,このガイドパイプ内に送風機から空気の供給を受け,加熱空気を吐出する吐出口を先端に形成したペレット燃焼器着火装置において,
上記棒状熱発熱体およびガイドパイプは,横断面形状を同心円状に形成し,そのガイドパイプの基部側には,給気を受ける横断面上に少なくとも3箇所の導入口を等分周位置に貫通形成したことを特徴とするペレット燃焼器着火装置。」
・「【0001】
本発明は,木質ペレットを燃料とするペレットストーブに着火するためのペレット燃焼器着火装置に関するものである。」
・「【0005】
解決しようとする問題点は,ペレット燃焼器着火装置の構成の大型化,複雑化を招くことなく,吐出空気の温度を確保した上で吐出流量を増加することにより,ペレット燃焼器内の木質ペレット燃料に着火するまでの時間の短縮化を図ることにある。」
・「【0007】
本発明のペレット燃焼器着火装置は,給気を受けるガイドパイプの横断面位置の導入口から空気が導入され,この空気は加熱されつつ吐出口から排出されてペレット燃焼器内のペレットを加熱する。上記導入口は,少なくとも3箇所の等分周位置に配置したことから,丸棒状発熱体の外周の少なくとも3等分位置に空気を受けるので,2つの導入口を対向配置した場合より発熱体の表面温度が均一化される。したがって,発熱体の表面における熱伝達量が増加するので,吐出口における加熱空気の温度を確保しつつ導入空気の流量を増加することができる。その結果,装置の大型化,複雑化を招くことなく,着火までの時間を短縮することができる。」
・「【0008】
本発明の実施の形態について,以下に図面に基づいて詳細に説明する。
ペレット燃焼器着火装置の半縦断側面図を図1に,そのS?S線断面図を図2に示す。ペレット燃焼器着火装置1は,丸棒状に形成したペレット着火用の発熱体(棒状発熱体)2と,この発熱体2を内設してペレット燃焼器に臨む円筒状のガイドパイプ3とからなり,このガイドパイプ3の基部側に形成した丸孔による導入口4…に送風機から空気を受け,加熱空気を吐出する吐出口5を先端に形成して構成される。発熱体2は,ガイドパイプ3の中空部に基部側の通電リード部をねじ止めして同心に構成する。ガイドパイプ3は,給気を受ける横断面位置Sに少なくとも3箇所の導入口4…を等分周位置に配置する。
【0009】
上記構成のペレット燃焼器着火装置1は,給気を受けるガイドパイプ3の横断面位置Sの導入口4…から空気が導入され,この空気は加熱されつつ吐出口5から排出されて後述のペレット燃焼器14内のペレットFを加熱する。上記導入口4…は,少なくとも3箇所の等分周位置に配置したことから,丸棒状発熱体2の外周の少なくとも3等分位置に空気を受けるので,従来の2つの導入口を対向配置した場合より発熱体2の表面温度が均一化される。したがって,発熱体2の表面における熱伝達量が増加するので,吐出口5における加熱空気の温度を確保しつつ導入空気の流量を増加することができる。その結果,装置の大型化,複雑化を招くことなく,着火までの時間を短縮することができる。
【0010】
上記特性を有するペレット燃焼器着火装置1は,図3のペレットストーブの内部透視側面図に示すように,ペレットストーブ11の背面部に設けた室内循環用送風機12を受ける背面室13を貫通して取付け,その先端を燃焼室11aに突出して温度条件の許容範囲で可能な限りペレット燃焼器14に近接させ,その背面側の着火窓に臨んで配置する。ペレット燃焼器14の上方には,ペレット供給管15が傾斜配置され,ペレット燃焼器14に木質ペレット燃料Fを投下供給する。また,燃焼室11aの上部には,背面室13から連通する熱交換部16が構成され,循環される室内空気が加熱送出される。
【0011】
上述の構成によるペレットストーブ11は,スタート指令によってペレット燃焼器着火装置1に通電されるとともに所定量の木質ペレット燃料がペレット供給管15からペレット燃焼器14に供給される。この状態で,ペレット燃焼器着火装置1の発熱による加熱空気がペレット燃焼器14内の木質ペレット燃料Fに供給され,着火温度まで短時間で加熱されることにより,木質ペレット燃料Fが燃焼を開始する。この時点で炎センサの検出信号によってペレット燃焼器着火装置1の通電を止めるように図示せぬ制御部によって制御する。家庭用ストーブについての実測例によれば,導入口が2口対向の旧タイプの着火装置で3分を要した着火時間が略50秒短縮されて2分で着火可能となった。」
イ したがって,引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明1)
「木質ペレット燃料Fが配置されるペレット燃焼器14と,
前記木質ペレット燃料Fに着火するペレット燃焼器着火装置1と,
を備えた燃焼室11aと,
室内循環用送風機12と,
を備えたペレットストーブ11であって,
前記ペレット燃焼器着火装置1は棒状発熱体2と,前記棒状発熱体2が発生した熱を前記木質ペレット燃料Fに送り出すための空気を供給するガイドパイプ3とを備え,前記棒状発熱体2は,前記ガイドパイプ3の内部に設けられ,前記ガイドパイプ3の他端は,外部から取り込んだ空気の一部を前記ガイドパイプ3に供給する前記室内循環用送風機12に接続されており,当該棒状発熱体2が発生した熱によって,前記木質ペレット燃料Fに着火するペレットストーブ11。」

(2) 引用文献2について
ア 引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
・「【請求項1】
装置本体内に設けられ,木材チップからなるペレット状の固体燃料が収納される燃料収納部と,前記装置本体内に設けた,点火手段を有する燃焼部と,前記燃料収納部内から取り込まれる前記固体燃料を搬送し,燃料供給経路を通して前記固体燃料を前記燃焼部に供給する燃料搬送手段と,前記燃焼部の表面に形成した空気取入れ孔を通して前記燃焼部内に空気を供給する空気供給手段とを具備し,前記点火手段は,前記燃焼部内にその一部が位置するように配置した発熱部材を有する木質ペレット状燃料燃焼装置の点火方法において,
最初に前記発熱部材を発熱させて前記燃焼部内を予熱した後に前記燃焼部内に点火のための所定量の前記固体燃料を供給し,更に,前記空気供給手段により前記燃焼部内に所定量の空気を供給して,前記発熱部材の発熱による加熱により供給した前記固体燃料に点火して着火させ,その後,前記固体燃料の前記燃焼部内への供給量を段階的に増加させると共に,前記空気供給手段から前記燃焼部内への空気供給量を増加させる,
ことを特徴とする木質ペレット状燃料燃焼装置の点火方法。
【請求項2】
前記発熱部材は,先端側が前記燃焼部内に位置するように配置した棒状の点火ヒータであり,前記点火ヒータの外周面に,その長手方向に沿って,前記空気供給手段から供給される空気の一部を取り込んで前記点火ヒータ表面周囲を通して,前記点火ヒータ先端側から前記燃焼部内に流すような空気通路を有する外筒を設け,
前記空気供給手段から供給される空気の一部を,前記外筒の空気通路に送って,前記点火ヒータの熱で加熱された空気を前記点火ヒータの先端側から前記燃焼部内に送り,前記点火ヒータの発熱による加熱と,前記加熱された空気とによって,前記固体燃料に点火して着火させる,
ことを特徴とする請求項1に記載の木質ペレット状燃料燃焼装置の点火方法。」
・「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,燃料として木質ペレット状の燃料を用いた暖房機等の木質ペレット状燃料燃焼装置の点火方法に関する。」
・「【0007】
そこで本発明は,木質ペレット状燃料などの固体燃料を用いた場合においても,未燃焼のガスの発生を抑えて,安全に点火を行うことができる木質ペレット状燃料燃焼装置の点火方法を提供することを目的とする。」
・「【0014】
この木質ペレット状燃料燃焼装置1は,直方体状の枠体2を有しており,枠体2の下部には燃料としての樹皮系ペレット(以下,単にペレットという)3が収納される燃料収納部4が設けられており,燃料収納部4の上部には燃焼室本体5が設けられている。また,枠体2の燃料収納部4と燃焼室本体5の背面側には,燃料としてのペレット3を燃焼室本体5内に搬送する燃料搬送部6が設けられている。」
・「【0019】
燃焼室本体5は,ペレット3を燃焼させるバーナー部12,バーナー部12の下部に設けたペレット3の燃焼によって発生する灰を回収処理する灰処理部13,灰処理部13の下方に配置した灰回収容器14,バーナー部12の上方に形成された燃焼室15,燃焼室15の上方に設置した放熱部16等を備えている。
【0020】
バーナー部12は,バーナーケース19に箱状のバーナー本体17を装着し,バーナー本体17内に燃料搬送部6から搬送供給されるペレット3を開口した上部から取り入れるホッパー17aを設け,バーナー本体17内の前面下部に位置するように配置した棒状の点火ヒータ18を有している。バーナー本体17を内側に取付けたバーナーケース19の背面側には,装置外から供給される燃焼用空気をバーナー本体17内に取り込む送気管20が接続されている。
【0021】
点火ヒータ18の先端側はバーナー本体17内に位置しており,バーナー本体17の外周面には,その長手方向に沿って点火ヒータ18を保護する外筒53がバーナーケース19に接続されるようにして設置されており,外筒53と点火ヒータ18との間にはバーナー本体17内に連通している空気通路54が形成されている。また,外筒53内に形成された空気通路55の先端側は,送気管20と連通しているバーナーケース19内の空気通路56と連通しており,空気通路55の後端側(バーナーケース19と反対側)には,点火ヒータ18周囲の空気通路54と連通している複数の空気取入れ穴53aが形成されている。なお,本実施の形態では,空気取入れ穴53aは上下左右に4ヶ所形成されているが,これに限らず,いずれか1ヶ所に空気取入れ穴53aを形成するようにしても良い。
【0022】
このような構成により,送気管20側からバーナーケース19内に取り込まれる燃焼用の空気の一部は,バーナーケース19内の空気通路56を通して外筒53の空気通路55に送り込まれ,更に,外筒53の各空気取入れ穴53aを通して点火ヒータ18周囲の空気通路54に送り込まれ,点火ヒータ18の側面に沿ってバーナー本体17内に送り込まれる。よって,点火ヒータ18への通電により発熱しているときには,空気通路54を流れる空気は加熱され,高温の熱風となって点火ヒータ18先端側からバーナー本体17内に送り込まれる。」
・「【0032】
バーナーケース19に接続した送気管20は,枠体2内の中央背面側に設置した給排気用送風機42に接続されており,給排気用送風機42の回転駆動によって給排気用送風機42に接続した吸気筒43から吸気される。吸気筒43には,室内から室外に伸びるように設置した給排気筒(不図示)が連結されており,この給排気筒を通して室外から外気が吸気筒43に吸気される。更に,給排気用送風機42の回転駆動によって放熱部16の排気室33に接続した排気筒43aの排気口から燃焼室15の排ガスが排気される。排気筒43aの排気口には,室内から室外に伸びるように設置した給排気筒(不図示)が連結されており,この給排気筒を通して排ガスが室外に排気される。」
・「【0038】
即ち,点火時において,ペレット3を過供給するとバーナー本体17内が暖まりだす点火の前後で未燃焼のガスが多量に発生し,燃焼室15が白煙で覆われ,それ以降の着火は爆発的な燃焼の危険がある。そこで,点火においては,点火ヒータ18の発熱及び点火ヒータ18の発熱によって加熱された空気によりバーナー本体17内を予熱後,ペレット3を一定量のみ供給し,燃焼に合わせてペレット3の供給量と空気供給量を段階的に上げるような燃焼前工程(本実施の形態では,図6に示すように,予熱,点火1,2,3,予熱燃焼1,2,強制燃焼1,2,3の各工程)を行う(詳細は後述する)。」
・「【0042】
本実施の形態における本燃焼の前の燃焼前工程を開始するにあたって,木質ペレット状燃料燃焼装置1の電源を投入した後に運転スイッチ(不図示)をONし,給排気用送風機(BM)42のみを10秒間駆動回転させる(運転開始)。この際,給排気用送風機(BM)42は制御レベルF1の回転数(制御レベル1より小さい回転数(例えば1300rpm)で回転駆動される。次に,給排気用送風機(BM)42を制御レベルF1で回転駆動した状態で点火ヒータ18を2分間ONしてバーナー本体17内を予熱する(予熱)。この際,ペレット攪拌モータ(PM2)8を5秒間駆動して燃料攪拌部材9を回転させ,ペレット3を攪拌する。
【0043】
次に,点火ヒータ(H)18をON状態で,かつ給排気用送風機(BM)42を制御レベルF1で回転駆動した状態で,スクリュー駆動用モータ(PM1)39を制御レベル6で20秒間回転駆動して,ペレット3を燃料搬送スクリュー38の回転によって排出筒41を通してホッパー17aにより案内して,バーナー本体17下部の灰処理部13の上方へ一定量落下させる(点火1)。
【0044】
次に,点火ヒータ(H)18をON状態で,かつ給排気用送風機(BM)42を制御レベルF1で40秒間回転駆動する(点火2)。この際,点火ヒータ18近傍の温度が所定温度以上となって,供給されたペレット3に着火される。このとき,点火ヒータ18の周囲の空気通路54からの加熱空気がペレット3を加熱しているので,ペレット3の着火が促進され,確実に着火される。次に,点火ヒータ18をON状態で,かつ給排気用送風機(BM)42を制御レベルF2で回転駆動した状態で,スクリュー駆動用モータ(PM1)39を制御レベルF1で30秒間回転駆動して,ペレット3を燃料搬送スクリュー38の回転によって排出筒41を通してホッパー本体17内に順次供給し,ペレット3に点火させる(点火3)。
【0045】
次に,点火ヒータ(H)18をON状態で,かつ給排気用送風機(BM)42を制御レベル1で回転駆動した状態で,スクリュー駆動用モータ(PM1)39を制御レベルF1で2分間回転駆動して,ペレット3を燃料搬送スクリュー38の回転によって排出筒41を通してバーナー本体17内に順次供給し,灰処理部13の上方に最初に供給されている着火状態にあるペレット,及び点火ヒータ18による加熱により供給されるペレット3を予備燃焼させる(予備燃焼1)。この際,対流サーモスタット44が約60度以上になると,対流用モータ(FM)34をONして対流用ファン35を低回転(例えば1500rpm)させる。
【0046】
次に,上記予備燃焼1から点火ヒータ(H)18をON状態で,かつ給排気用送風機(BM)42を制御レベル2で回転駆動し,スクリュー駆動用モータ(PM1)39を制御レベル1で約3分間回転駆動して,ペレット3を燃料搬送スクリュー38の回転によって排出筒41を通してバーナー本体17内に順次供給し,灰処理部13の上方に最初に供給されている燃焼状態にあるペレット,及び点火ヒータ18による加熱により供給されるペレット3を予備燃焼させる(予備燃焼2)。この際,上記予備燃焼1から対流サーモスタット44が約60度以上であると,対流用モータ(FM)34がON状態で対流用ファン35が低回転(例えば1500rpm)されている。
【0047】
そして,この予備燃焼2において,切替えサーモスタット44が約60度以上になると,上記予備燃焼2から点火ヒータ18をON状態で,かつ給排気用送風機(BM)42を制御レベル3で回転駆動し,スクリュー駆動用モータ(PM1)39をレベル2で約3分間回転駆動して,ペレット3を燃料搬送スクリュー38の回転によって排出筒41を通してバーナー本体17内に順次供給し,灰処理部13の上方に最初に供給されている燃焼状態にあるペレット,及び点火ヒータ18による加熱により供給されるペレット3を強制燃焼させる(強制燃焼1)。この際,対流用モータ(FM)34がON状態で対流用ファン35が低回転(例えば1500rpm)されている。」
・「【0049】
上記した予熱から強制燃焼1までは点火ヒータ18がONされているので,点火ヒータ18が発熱状態にある。このため,本実施の形態では,上記した予熱から強制燃焼1の工程時において,送気管20側からバーナーケース19内に取り込まれる燃焼用の空気の一部は,バーナーケース19内の空気通路56を通して外筒53の空気通路55に送り込まれ,更に,外筒53の各空気取入れ穴53aを通して点火ヒータ18周囲の空気通路54に送り込まれ,発熱している点火ヒータ18によって加熱される。そして,加熱された高温の空気(熱風)が点火ヒータ18表面からバーナー本体17内に送り込まれる。
【0050】
よって,点火ヒータ18による加熱と,加熱される高温の空気(熱風)とによって,供給したペレット3に対する点火から着火をより短時間で確実に行うことができる。」
イ したがって,引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明2)
「ペレット3が配置されるバーナー部12と,
前記ペレット3に着火する装置と,
を備えた燃焼室本体5と,
前記バーナー部12に空気を供給する給排気用送風機42と,
を備えた木質ペレット状燃料燃焼装置1であって,
前記ペレット3に着火する装置は点火ヒータ18と,前記点火ヒータ18が発生した熱を前記ペレット3に送り出すための空気を供給する空気通路54,55を有する外筒53とを備え,前記点火ヒータ18は,前記外筒53の内部に設けられ,前記外筒53の空気通路55は,外部から取り込んだ空気の一部を前記外筒53に供給する前記給排気用送風機42に,バーナーケース19内の空気通路56及び送気管20を介して接続されており,当該点火ヒータ18が発生した熱によって,前記ペレット3に着火する木質ペレット状燃料燃焼装置1。」

(3) 引用文献3について
ア 引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。
・「【請求項1】
風入口から流入したエアを吹出口から燃料に向けて吹き出す送風管と,
内蔵する抵抗体の抵抗値が正の温度係数を有する複数のセラミックヒータと,
電源による前記セラミックヒータへの電圧印加動作を制御する制御装置とを備え,
複数の前記セラミックヒータが,前記送風管の内側に,前記送風管の内側を通過する前記エアの流れに対して直列に配置され,前記抵抗体毎に前記電源の出力に個別に接続され,
前記制御装置が,前記各セラミックヒータに前記電源の出力電圧を継続印加して行う前記抵抗体の本発熱動作を,所定の時間差を設けて開始させることを特徴とするストーブの点火装置。
【請求項2】
前記燃料は木質ペレットであり,前記送風管の前記吹出口から吹き出す加熱エアによって当該木質ペレットを着火させる請求項1記載のストーブの点火装置。」
・「【0001】
この発明は,木質ペレット等の燃料を着火させる暖房器具の点火装置に関する。」
・「【0009】
この発明は,上記背景技術に鑑みて成されたものであり,燃料に点火する時の突入電流を小さく抑えることができ,簡単な構造でメンテナンスも容易な暖房器具の点火装置を提供することを目的とする。」
・「【0013】
この発明の暖房器具の点火装置は,燃料に点火する際,各セラミックヒータごとに電源電圧を継続印加するタイミング,すなわち本発熱動作を開始させるタイミングをずらすことによって,突入電流を小さく抑え電源の負担を軽減することができる。」
・「【0017】
以下,この発明の暖房器具の点火装置の一実施形態について,図1?図7に基づいて説明する。この実施形態に係る点火装置20は,図1,図2に示すように,風入口22から流入したエアを吹出口24から燃料に向けて吹き出す送風管26と,送風管26の内側に設置され,通過するエアを加熱する2つのセラミックヒータ28,30と,セラミックヒータ28,30の発熱を制御する制御装置32とを備えている。」
・「【0019】
送風管26は,2つの管状部材38,40で構成されている。管状部材38には,円筒状外形の先端部に吹出口24が設けられ,内側にセラミックヒータ28が配置され,その根元部分が管状部材38の後端部に固定されている。そして,管状部材38の後端部からセラミックヒータ28のリード線34が外部に引き出されている。また,管状部材38側面に,暖房器具に取り付ける際に使用するネジ止め用の取付部38aが左右一対に立設されている。
【0020】
管状部材40は,円筒状外形の先端部が閉鎖され,内側にセラミックヒータ30が配置されその根元部分が管状部材40の後端部に固定されている。そして,管状部材40の後端部からセラミックヒータ30のリード線36が外部に引き出されている。また,管状部材38側面の後端部寄りの位置に,風入口22が開口している。
【0021】
管状部材38,40は,管状部材38側面の後端部寄りの位置と,管状部材40側面の先端部寄りの位置とが溶接等によって一体に連結され,内側の空間が連通孔42を通じて連続している。ここでは,この点火装置20が取り付けられる暖房器具の内部の構造に合わせ,管状部材38,40が所定の角度で交差する(ここでは直角に交差する)ように接続され,一体の送風管26が形成されている。
【0022】
以上の構成を備えた点火装置20は,送風管26の風入口22からエアが流入し,セラミックヒータ28,30によって加熱された加熱エアを吹出口24から吹き出すことができる。制御装置32の構成と機能については,以下の後の動作説明の中で述べる。
【0023】
次に,点火装置20が搭載された暖房装置44の構成を説明するとともに,点火装置20を用いて暖房装置44の燃料に点火する動作について説明する。暖房装置44は,木質ペレットWを燃料とする室内暖房用のストーブである。木質ペレットWは,間伐材や製材端材等の木材を破砕してペレット状に圧縮した固形燃料であり,近年,再生可能で地球環境に優しい新しい燃料として注目されている。木質ペレットにも複数の種類があるが,一般的には200?400℃に加熱するとペレット中で燃焼ガスの分解が始まり,その状態が長時間継続すると着火に至る。また,400℃以上に加熱すると短時間のうちに着火する。」
・「【0025】
暖房装置44において,燃料を燃焼させ熱エネルギーを発生させる部分は,図5の模式図に示すように,ペレットタンク52,燃焼室54,ファン56及び点火装置20で構成されている。ペレットタンク52は,上方の供給口50から木質ペレットWが投入され,下端部分の排出ノズル52aから木質ペレットWを定量排出するものである。
【0026】
燃焼室54は木質ペレットWを燃焼させる空間であり,下方に排出ノズル52aから定量排出された木質ペレットWを受ける燃焼ポット58と,木質ペレットWが燃焼して発生した熱エネルギーを吸収するための図示しない熱交換器とが設けられている。点火装置20は,管状部材38の吹出口24寄りの部分が燃焼室54の内に差し込まれ,管状部材40及び風入口22が燃焼室54の外側に位置するように取り付けられ,室温に近い常温エアを風入口22から取り込み,吹出口24から吹き出す加熱エアが燃焼ポット58内の木質ペレットWに直接吹き付けられる構造になっている。
【0027】
ファン56は,排気通路60を通じて燃焼室54内の空気を減圧する方向に駆動される。従って,ファン56を駆動することによって筺体46の内側に図5の破線で示すような空気流が発生し,木質ペレットWの燃焼に必要な酸素が燃焼室54内に取り込まれ,その燃焼により生じた熱エネルギーを受け取った空気が熱交換器に移送される。そして,熱交換された空気が屋外に排出される。同様に,点火装置20の風入口22に常温エアが流入し,加熱エアが吹出口24から吹き出される空気流も発生する。」
・「【0033】
点火装置20は,上記の要領でセラミックヒータ28,30を発熱させ,送風管26に取り込まれた常温エアを加熱して吹出口24から加熱エアを吹き出す。加熱エアは,セラミックヒータ28,30に第二の突入電流Irp(12)が流れる頃に260℃を超えさせ,その後450?500℃を目指して上昇させるとよい。すると,木質ペレットWは,加熱エアの温度が260℃を超えた頃から燃焼ガスの分解が始まり,450℃に達するまでには着火する。」
・「【0035】
また,加熱エアを吹き出す吹出口24に近い方のセラミックヒータ28から順番に本発熱動作を開始させるので,加熱エアの温度の上昇が速い。仮に,吹出口24から離れているセラミックヒータ30の方から本発熱動作をさせたとすると,抵抗体30aの発熱を受けた加熱エアが冷めた管状部材38を通過するときに熱を奪われ,吹出口24から吹き出すときに温度が低下してしまう。従って,上記のようにセラミックヒータ28の方から本発熱動作をさせることによって,加熱エアの温度を効率よく上昇させることができ,燃料への点火及び着火の時間を短縮することができる。」
イ したがって,引用文献3には次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明3)
「木質ペレットWが配置される燃焼ポット58と,
前記木質ペレットWに点火する点火装置20と,
を備えた燃焼室54と,
前記燃焼室54に空気を取り込むファン56と,
を備えた暖房装置44であって,
前記点火装置20はセラミックヒータ28,30と,前記セラミックヒータ28,30が発生した熱を前記木質ペレットWに送り出すための空気を供給する送風管26とを備え,前記セラミックヒータ28,30は,前記送風管26の内部に設けられ,前記ファン56は,前記燃焼室54内の空気を減圧する方向に駆動されることで,前記暖房装置44の筺体46の内側に空気流が発生させ,木質ペレットWの燃焼に必要な酸素を燃焼室54内に取り込むとともに,前記送風管26の風入口22に空気を流入させる空気流も発生させるように構成されており,当該セラミックヒータ28,30が発生した熱によって,前記木質ペレットWに着火する暖房装置44。」

(4) 引用文献4について
引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。
・「[0034] As shown in FIGS. 1 and 2 , igniter 10 has a body 12 that defines an internal compartment, or interior compartment, 14 with at least one inlet 16 through which air is delivered to the internal compartment and at least one outlet 18 through which gases may exit, or be emitted from, the internal compartment. … Igniters 10 according to the present disclosure may further include an air delivery mechanism 70 that is adapted to selectively positively provide a flow of air to the internal compartment of the body.」
(訳:図1及び2に示すように,点火器10は,内部区画に空気が供給される少なくとも1つの入口16,内部区画からガスが排出又は放出される少なくとも1つの出口18を備えた内部区画14を画定する本体12を有する。…本開示のよる点火器10は,本体の内部区画への空気の流れを選択的,積極的に提供するように適合された空気供給機構70を,さらに含むことができる。)
・「[0049] As schematically represented in FIG. 4 , air delivery mechanism 70 includes at least air propulsion source 72 , drive assembly 82 , and actuator 94 . Air propulsion source 72 includes one or more devices that, when energized or otherwise actuated, create airflow 54 , such as from air external the igniter that is drawn through an air inlet 56 into an air conduit 68 that extends through air injection port 64 to the lower chamber. …Additional illustrative, non-exclusive examples of air propulsion sources 72 that may be utilized in an air delivery mechanism 70 for igniters 10 according to the present disclosure include one or more fans, piston pumps, centrifugal compressors, axial compressors, radial compressors, roots compressors, vain pumps, gear pumps, diaphragm pumps, peristaltic pumps, squirrel cage blowers and bellows pumps. 」
(訳:図4に概略的に示すように,空気供給機構70は,少なくとも空気推進源72,駆動アセンブリ82及びアクチュエータ94を含む。空気推進源72は,通電されるか又は他の方法で作動されると,空気入口56を通って,空気注入ポート64を通って下部チャンバに延びる空気導管68内に引き込まれる,点火器の外部の空気からのような空気流54を生成する一つまたは複数の装置を含む。…本開示による点火器10のための空気供給機構70において利用され得る空気推進源72のさらなる例示的な非排他的な例は,一つ以上のファン,ピストンポンプ,遠心圧縮機,軸方向圧縮機,ラジアルコンプレッサ,ルーツ圧縮機,ベーンポンプ,ギアポンプ,ダイヤフラムポンプ,蠕動ポンプ,かご形ブロワ,及びベローズポンプを含む。)

2 本願発明1について
(1) 引用発明1に関し
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを,その機能に照らして対比すると,引用発明1の「木質ペレット燃料F」,「ペレット燃焼器14」,「ペレット燃焼器着火装置1」,「燃焼室11a」,「ペレットストーブ11」,「棒状発熱体2」,「ガイドパイプ3」は,それぞれ,本願発明1の「バイオマス燃料」,「燃焼部」,「着火装置」,「燃焼装置」,「熱源機器」,「電気ヒータ」,「着火用空気供給管」に相当する。
そして,引用発明1の「ペレット燃焼器着火装置1」は,「棒状発熱体2と,前記棒状発熱体2が発生した熱を前記木質ペレット燃料Fに送り出すための空気を供給するガイドパイプ3とを備え,前記棒状発熱体2は,前記ガイドパイプ3の内部に設けられ」,「当該棒状発熱体2が発生した熱によって,前記木質ペレット燃料Fに着火する」ものであるから,本願発明1の「着火装置」とは,「電気ヒータと,前記電気ヒータが発生した熱を前記バイオマス燃料に送り出すための空気を供給する着火用空気供給管とを備え,前記電気ヒータは,前記着火用空気供給管の内部に設けられ」,「当該電気ヒータが発生した熱によって,前記バイオマス燃料に着火する」点で共通するものである。
そうすると,本願発明1と引用発明1とは,次の点で一致し,相違するといえる。
(一致点1)
「燃焼させるためのバイオマス燃料が配置される燃焼部と,
前記バイオマス燃料に着火する着火装置と,
を備えた燃焼装置と,
を備えた熱源機器であって,
前記着火装置は電気ヒータと,前記電気ヒータが発生した熱を前記バイオマス燃料に送り出すための空気を供給する着火用空気供給管とを備え,前記電気ヒータは,前記着火用空気供給管の内部に設けられ,当該電気ヒータが発生した熱によって,前記バイオマス燃料に着火する熱源機器。」
(相違点1)
本願発明1は,「熱源機器」が「前記燃焼部に空気を供給する給気ファン」と「前記給気ファンとは別に設けられたダイアフラムポンプ」を備え,「前記着火用空気供給管の他端は,外部から取り込んだ空気を前記着火用空気供給管に供給する前記ダイアフラムポンプに接続されて」いるのに対し,引用発明1は,「ペレットストーブ11」が,「室内循環用送風機12」を備え,「前記ガイドパイプ3の他端は,外部から取り込んだ室内空気の一部を前記ガイドパイプ3に供給する前記室内循環用送風機12に接続されて」いるものである点。
イ 相違点1についての判断
ダイアフラムポンプはエアポンプとして広く利用され,引用文献4には,燃料の燃焼に係る送風手段としてダイアフラムポンプが例示されている(前記1(4))。
しかし,前記相違点1に係る「前記給気ファンとは別に設けられたダイアフラムポンプ」を備え,「前記着火用空気供給管の他端は,外部から取り込んだ空気を前記着火用空気供給管に供給する前記ダイアフラムポンプに接続されて」いるという構成は,引用文献1,4には記載されておらず,本願出願前において周知技術であるともいえない。
そして,本願発明1は,「燃焼に要するコストが低く,小型化が可能な燃焼装置を提供することができる。」(本願明細書【0010】)ものである。
したがって,給気ファンの点について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明1及び引用文献4に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

(2) 引用発明2に関し
ア 対比
本願発明1と引用発明2とを,その機能に照らして対比すると,引用発明2の「ペレット3」,「バーナー部12」,「ペレット3に着火する装置」,「燃焼室本体5」,「給排気用送風機42」,「木質ペレット状燃料燃焼装置1」,「点火ヒータ18」,「外筒53」は,それぞれ,本願発明1の「バイオマス燃料」,「燃焼部」,「着火装置」,「燃焼装置」,「給気ファン」,「熱源機器」,「電気ヒータ」,「着火用空気供給管」に相当する。
そして,引用発明2の「ペレット3に着火する装置」は,「点火ヒータ18と,前記点火ヒータ18が発生した熱を前記ペレット3に送り出すための空気を供給する空気通路54,55を有する外筒53とを備え,前記点火ヒータ18は,前記外筒53の内部に設けられ」,「当該点火ヒータ18が発生した熱によって,前記ペレット3に着火する」ものであるから,本願発明1の「着火装置」とは,「電気ヒータと,前記電気ヒータが発生した熱を前記バイオマス燃料に送り出すための空気を供給する着火用空気供給管とを備え,前記電気ヒータは,前記着火用空気供給管の内部に設けられ」,「当該電気ヒータが発生した熱によって,前記バイオマス燃料に着火する」点で共通するものである。
そうすると,本願発明1と引用発明2とは,次の点で一致し,相違するといえる。
(一致点2)
「燃焼させるためのバイオマス燃料が配置される燃焼部と,
前記バイオマス燃料に着火する着火装置と,
を備えた燃焼装置と,
前記燃焼部に空気を供給する給気ファンと,
を備えた熱源機器であって,
前記着火装置は電気ヒータと,前記電気ヒータが発生した熱を前記バイオマス燃料に送り出すための空気を供給する着火用空気供給管とを備え,前記電気ヒータは,前記着火用空気供給管の内部に設けられ,当該電気ヒータが発生した熱によって,前記バイオマス燃料に着火する熱源機器。」
(相違点2)
本願発明1は,「熱源機器」が,「前記給気ファンとは別に設けられたダイアフラムポンプ」を備え,「前記着火用空気供給管の他端は,外部から取り込んだ空気を前記着火用空気供給管に供給する前記ダイアフラムポンプに接続されて」いるのに対し,引用発明2は,「木質ペレット状燃料燃焼装置1」が,「前記バーナー部12に空気を供給する給排気用送風機42」を備え,「前記外筒53の空気通路55は,外部から取り込んだ空気の一部を前記外筒53に供給する前記給排気用送風機42に,バーナーケース19内の空気通路56及び送気管20を介して接続されて」いるものである点。
イ 相違点2についての判断
ダイアフラムポンプはエアポンプとして広く利用され,引用文献4には,燃料の燃焼に係る送風手段としてダイアフラムポンプが例示されている(前記1(4))。
しかし,前記相違点2に係る「前記給気ファンとは別に設けられたダイアフラムポンプ」を備え,「前記着火用空気供給管の他端は,外部から取り込んだ空気を前記着火用空気供給管に供給する前記ダイアフラムポンプに接続されて」いるという構成は,引用文献2,4には記載されておらず,本願出願前において周知技術であるともいえない。
そして,本願発明1は,前記効果(前記(1)イ)を奏するものである。
したがって,本願発明1は,引用発明2及び引用文献4に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

(2) 引用発明3に関し
ア 対比
本願発明1と引用発明3とを,その機能に照らして対比すると,引用発明3の「木質ペレットW」,「燃焼ポット58」,「点火装置20」,「燃焼室54」,「ファン56」,「暖房装置44」,「セラミックヒータ28,30」,「送風管26」は,それぞれ,本願発明1の「バイオマス燃料」,「燃焼部」,「着火装置」,「燃焼装置」,「給気ファン」,「熱源機器」,「電気ヒータ」,「着火用空気供給管」に相当する。
そして,引用発明3の「点火装置20」は,「セラミックヒータ28,30と,前記セラミックヒータ28,30が発生した熱を前記木質ペレットWに送り出すための空気を供給する送風管26とを備え,前記セラミックヒータ28,30は,前記送風管26の内部に設けられ」,「当該セラミックヒータ28,30が発生した熱によって,前記木質ペレットWに着火する」ものであるから,本願発明1の「着火装置」とは,「電気ヒータと,前記電気ヒータが発生した熱を前記バイオマス燃料に送り出すための空気を供給する着火用空気供給管とを備え,前記電気ヒータは,前記着火用空気供給管の内部に設けられ」,「当該電気ヒータが発生した熱によって,前記バイオマス燃料に着火する」点で共通するものである。
そうすると,本願発明1と引用発明3とは,次の点で一致し,相違するといえる。
(一致点3)
「燃焼させるためのバイオマス燃料が配置される燃焼部と,
前記バイオマス燃料に着火する着火装置と,
を備えた燃焼装置と,
前記燃焼部に空気を供給する給気ファンと,
を備えた熱源機器であって,
前記着火装置は電気ヒータと,前記電気ヒータが発生した熱を前記バイオマス燃料に送り出すための空気を供給する着火用空気供給管とを備え,前記電気ヒータは,前記着火用空気供給管の内部に設けられ,当該電気ヒータが発生した熱によって,前記バイオマス燃料に着火する熱源機器。」
(相違点3)
本願発明1は,「熱源機器」が,「前記給気ファンとは別に設けられたダイアフラムポンプ」を備え,「前記着火用空気供給管の他端は,外部から取り込んだ空気を前記着火用空気供給管に供給する前記ダイアフラムポンプに接続されて」いるのに対し,引用発明3は,「暖房装置44」が,「前記燃焼室54に空気を取り込むファン56」を備え,「前記ファン56は,前記燃焼室54内の空気を減圧する方向に駆動されることで,前記暖房装置44の筺体46の内側に空気流が発生させ,木質ペレットWの燃焼に必要な酸素を燃焼室54内に取り込むとともに,前記送風管26の風入口22に空気を流入させる空気流も発生させるように構成されて」いるものである点。
イ 相違点3についての判断
ダイアフラムポンプはエアポンプとして広く利用され,引用文献4には,燃料の燃焼に係る送風手段としてダイアフラムポンプが例示されている(前記1(4))。
しかし,前記相違点3に係る「前記給気ファンとは別に設けられたダイアフラムポンプ」を備え,「前記着火用空気供給管の他端は,外部から取り込んだ空気を前記着火用空気供給管に供給する前記ダイアフラムポンプに接続されて」いるという構成は,引用文献3,4には記載されておらず,本願出願前において周知技術であるともいえない。
そして,本願発明1は,前記効果(前記(1)イ)を奏するものである。
したがって,本願発明1は,引用発明3及び引用文献4に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

3 本願発明2について
本願発明2は,本願発明1を特定するための事項を全て含むものであるから,その余の事項を検討するまでもなく,本願発明1と同様の理由により,引用発明1?3及び引用文献4に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

第6 原査定についての判断
1 引用文献,引用発明等
(1) 引用文献Aについて
ア 引用文献Aには,図面とともに次の事項が記載されている。
・「【請求項1】
底部内側に燃焼ポットが取付けられた燃焼室を有し,該燃焼室内で燃料を燃して発生した燃焼ガスを外部に強制排気することにより燃焼室内の気圧を低下させて燃焼室内に外気を強制吸入する強制給排気構造を有する燃焼器具であって,
該燃焼室内の底部に取付けられた燃焼ポットの上端外周が,燃焼室内壁に内接しあるいは僅かな間隙を有して配設され,前記燃焼ポットの周壁の一部あるいは全周が傾斜した周壁を有するホッパ型であることを特徴とする燃焼器具。」
・「【0001】
本発明は,燃焼器具に関し,特に,薪や石炭あるいは練炭などを含む植物由来の固形燃料を燃せる燃焼器具に関する。」
・「【0005】
本発明はこのような事実から考えられたもので,不完全燃焼を防止でき,清掃が容易な燃焼器具を提供することを目的としている。」
・「【0009】
本発明の燃焼器具は,燃焼室内の底部に取付けられた燃焼ポットの上端外周が,燃焼室内に内接しあるいは僅かな間隙を有して配設されているから,燃焼室内面と燃焼ポットの周壁の間に間隙がなく,ペレット投入孔から投入された小型固形燃料が,燃焼ポット外の燃焼室の底に落下できない。また,燃焼ポットの周壁の一部あるいは全周が傾斜した周壁を有するホッパ型であるから,燃焼ポット下部の開口近くの固形燃料が燃えると,燃焼ポットの上部の固形燃料は常時下部の開口に向って移動し確実に燃焼し,不完全燃焼を防止できる。その結果,固形燃料の燃焼滓は,確実に燃焼ポット下部の開口から下の灰受けに落下し,周辺を汚染することがなく,燃焼器具消火後の清掃が楽で,燃焼効率の高い燃焼器具が得られた。その上,従来の燃焼ポットのままでは,まきや石炭など大型の固形燃料を燃すことができなかったが,燃焼室内面と燃焼ポットの周壁の間に間隙がない本発明の燃焼器は,目皿を反転したり部品を交換せずに大型固形燃料を燃せる。」
・「【0015】
本発明の燃焼器具は,図1に示すように,一側面すなわち前方(あるいは側方)に開口1aを有し,この開口1aに封止体としての開閉自在な扉1bをとりつけた略閉鎖された燃焼室1を有している。この燃焼室1は,略閉鎖されたものであるが,完全な密閉とは言えず,下記のように外部と連通している。先ず始めに,上記開口1aないしこの開口1aと扉1bの間に形成される隙間がある。次に,燃焼室1内に設けられた隔壁2により仕切られた空間3に開口された燃焼ガス排気孔4がある。すなわち,燃焼室1の一部は,隔壁2により仕切られた空間3となっており,この空間3は,排気孔4と連通していて,燃焼ポット5で植物由来の固形燃料を燃焼させたときに発生する燃焼ガスを燃焼室1から屋外に排気する。この排気孔4には,燃焼ガスを強制排気する排気器具としての排風ファン4aが取付けられている。
【0016】
また,燃焼室1は,燃焼ポット5の底部に形成された開口5aと,この下方の燃焼室1の第2の開口1cと,ここに連通される灰受室6の一端に形成された第3の開口6aとにより外部と連通している。また,燃焼室1に外気を吸入する吸入孔7がある。さらに,固形燃料8を投入するペレット投入孔11でも外部と連通している。図中の二重線で示した矢印は,燃焼ガスや空気の流通経路を示す。固形燃料8としては,植物由来の固形燃料である木質系ペレットなどの小さなものを使用している。
【0017】
この燃焼室1内の底部には,燃焼室1の内壁面に上端の外周が内接する円錐形あるいは角錐形の周壁を有する燃焼ポット5が取付けられている。この錐形の底部には開口5aが有り,開口5aには目皿5bを取付けている。この錐形の燃焼ポット5は,図2に示すように,周壁が上方より下方に向って順次狭くなる傾斜壁が一部に設けられた燃焼ポット12であっても良い。燃焼ポット5,12の底部の開口5aは,燃焼室1の周壁を貫通させて設けられた吸入孔7を介して外部と連通し,燃焼ポット5内に外気を吸入できる構造である。
【0018】
また,燃焼ポット5の下部の開口5a近傍には,固形燃料8に着火させる熱源としてのヒーター9が取付けてある。このヒーター9は,燃焼室1の隔壁2や外壁を貫通するヒーター挿入孔10に挿脱自在に挿入され,先端が開口5aの周壁を貫通して燃焼ポット5内に達している。このヒーター9には,リード線10aが取付けられ,リード線10aは,外部の電源に接続され,図示しないオン・オフ切換えスイッチが取付けられている。図では,このヒーター9は,燃焼ポット5の下部開口内に先端のみが露出しているが,ヒーター9の主要部を露出させ,燃焼ポット5に投入された木質系ペレットである固形燃料8に直節接触させてもよく,電源として乾電池を内蔵させるなど木質系ペレットである固形燃料8に着火できれば他の方法であっても良い。」
・「【0022】
上記構成の燃焼器具は,
1)ペレット投入孔11から小型固形燃料である木質系ペレット8を燃焼ポット5に投入する。あるいは,
2)ペレット投入孔11から小型固形燃料である木質系ペレット8を燃焼ポット5に投入した上にペレット投入孔11から投入できない大きさの大型固形燃料である薪や石炭(図示せず)を燃焼ポット5内の木質系ペレット8上に投入する。
その後,排風ファン4aに取付けられたスイッチをオンにすると共にヒーター9にもスイッチを入れる。すると,ヒーター9の性能にもよるが,2?3分で木質系ペレット8に着火する。2)の場合は,着火した木質系ペレット8の火が,大型固形燃料である薪や石炭に点火する。消火する時は,燃焼ポット5内の大小の固形燃料8の自然消火を待つか,燃焼中の固形燃料8を燃焼ポット5から取り出して消火する。大小の固形燃料8が燃焼ポット5内で燃焼して発生した燃焼ガスは,排風ファン4aの作動により隔壁2で区分された空間3を通って排気孔4から外部に排気される。こうして排気孔4から燃焼ガスが排気されると,燃焼室1内の気圧が下がり吸入孔7から燃焼ポット5の下部の開口5aを通って燃焼室1に外気が吸入され,燃焼ポット5内に固形燃料8がある限り燃焼し続けることができる。
【0023】
上記構成の燃焼器具は,該燃焼室1内の底部に取付けられた燃焼ポット5の上端外周が,燃焼室1内に内接しあるいは僅かな間隙を有して配設されており,燃焼室1内壁と燃焼ポット5の上端外周の間にほとんど間隙がない。したがって,ペレット投入孔11から勢い良く投入された小型固形燃料8でも,必ず燃焼ポット5内に落下する。さらに,燃焼ポット5の周壁の一部あるいは全周が傾斜した周壁を有するホッパ型であるから,大量の小型固形燃料8を燃焼ポット5内に投入しても外気が供給される燃焼ポット5の下の開口5a近傍の小型固形燃料8が,先に燃焼する。したがって,開口5a近傍の小型固形燃料8が燃焼すると,常に燃焼ポット5の底部の開口5aに向って重力が働いているので残った小型固形燃料8は,開口5aに向って移動する。その結果,燃焼して発生した燃焼滓である灰は,自動的に開口5aから下の灰受皿1dに落下することになる。もちろん,燃えかけの薪など大型固形燃料が,燃焼ポット5外に落下することがないから,安心して燃すことができる。」
イ したがって,引用文献Aには次の発明(以下「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明A)
「木質系ペレット8が配置される燃焼ポット5と,
前記木質系ペレット8に着火する装置と,
を備えた燃焼室1と,
前記燃焼ポット5内の燃焼ガスを外部に排気する排風ファン4aと,
前記排風ファン4aが燃焼ガスを外部に排気することにより,外気を前記燃焼室1に吸入する吸入孔7と,
を備えた燃焼器具であって,
前記木質系ペレット8に着火する装置はヒーター9と,ヒーター挿入孔10とを備え,前記ヒーター9は,前記ヒーター挿入孔10の内部に設けられ,当該ヒーター9が発生した熱によって,前記木質系ペレット8に着火する燃焼器具。」

(2) 引用文献B?Dについて
引用文献B?Dに記載された事項については,前記第5・1(2)?(4)のとおりである。

2 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明Aとを,その機能に照らして対比すると,引用発明Aの「木質系ペレット8」,「燃焼ポット5」,「木質系ペレット8に着火する装置」,「燃焼室1」,「燃焼器具」,「ヒーター9」は,それぞれ,本願発明1の「バイオマス燃料」,「燃焼部」,「着火装置」,「燃焼装置」,「熱源機器」,「電気ヒータ」に相当する。
引用発明Aは,「排風ファン4aが燃焼ガスを外部に排気することにより,外気を前記燃焼室1に吸入する」ものであるから,「排風ファン4a」は,本願発明1の「給気ファン」に相当する。
引用発明Aの「ヒーター挿入孔10」は,本願発明1の「着火用空気供給管」に対応し,両者は「ヒーターを挿入する部材」である点で共通し,引用発明Aの「木質系ペレット8に着火する装置」は,「ヒーター9と,ヒーター挿入孔10とを備え,前記ヒーター9は,前記ヒーター挿入孔10の内部に設けられ,当該ヒーター9が発生した熱によって,前記木質系ペレット8に着火する」ものであるから,本願発明1の「着火装置」とは,「電気ヒータ」と,「ヒーターを挿入する部材」とを備え,前記「電気ヒータ」は,前記「ヒーターを挿入する部材の内部に設けられ」,「当該電気ヒータが発生した熱によって,前記バイオマス燃料に着火する」点で共通するものである。
そうすると,本願発明1と引用発明Aとは,次の点で一致し,相違するといえる。
(一致点A)
燃焼させるためのバイオマス燃料が配置される燃焼部と,
前記バイオマス燃料に着火する着火装置と,
を備えた燃焼装置と,
前記燃焼部に空気を供給する給気ファンと,
を備えた熱源機器であって,
前記着火装置は電気ヒータと,ヒーターを挿入する部材とを備え,前記電気ヒータは,前記ヒーターを挿入する部材の内部に設けられ,当該電気ヒータが発生した熱によって,前記バイオマス燃料に着火する熱源機器。」
(相違点A)
本願発明1は,「熱源機器」が,「前記給気ファンとは別に設けられたダイアフラムポンプ」を備え,「着火装置」が「前記電気ヒータが発生した熱を前記バイオマス燃料に送り出すための空気を供給する着火用空気供給管」を備え,「前記着火用空気供給管の他端は,外部から取り込んだ空気を前記着火用空気供給管に供給する前記ダイアフラムポンプに接続されて」いるのに対し,引用発明Aは,そのようには構成されていない点。
イ 相違点Aについての判断
引用文献B,C(引用文献2,3)には,着火装置が電気ヒータと,前記電気ヒータが発生した熱をバイオマス燃料に送り出すための空気を供給する着火用空気供給管とを備え,該電気ヒータが発生した熱によって,前記バイオマス燃料に着火するものが記載されている(前記第5・1(2)?(3))。
そして,ダイアフラムポンプはエアポンプとして広く利用され,引用文献D(引用文献4)には,燃料の燃焼に係る送風手段としてダイアフラムポンプが例示されている(前記第5・1(4))。
しかし,前記相違点Aに係る「前記給気ファンとは別に設けられたダイアフラムポンプ」を備え,「着火装置」が「電気ヒータと,前記電気ヒータが発生した熱を前記バイオマス燃料に送り出すための空気を供給する着火用空気供給管とを備え」,「前記着火用空気供給管の他端は,外部から取り込んだ空気を前記着火用空気供給管に供給する前記ダイアフラムポンプに接続されて」いるという構成は,引用文献A?Dには記載されておらず,本願出願前において周知技術であるともいえない。
そして,本願発明1は,前記効果(前記第5・2(1)イ)を奏するものである。
したがって,本願発明1は,引用発明A及び引用文献B?Dに記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

3 本願発明2について
本願発明2は,本願発明1を特定するための事項を全て含むものであるから,その余の事項を検討するまでもなく,本願発明1と同様の理由により,引用発明A及び引用文献B?Dに記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

4 以上のとおりであるから,原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり,原査定の理由及び当審にて通知した拒絶の理由によって,本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-01-21 
出願番号 特願2015-25906(P2015-25906)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F23Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤原 弘  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 莊司 英史
窪田 治彦
発明の名称 熱源機器  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  

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