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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16L |
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管理番号 | 1348169 |
審判番号 | 不服2018-373 |
総通号数 | 231 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-03-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-01-12 |
確定日 | 2019-02-05 |
事件の表示 | 特願2014-524744号「管継手」拒絶査定不服審判事件〔平成26年1月16日国際公開,WO2014/010452,請求項の数(1)〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 経緯の概略 本願は,2013年7月1日(優先権主張:2012年7月13日,日本国)を国際出願日とする出願であって,その経緯は,概ね次のとおりである。 平成25年11月12日 手続補正書(条約19条) 平成29年 3月31日 拒絶理由通知書 平成29年 5月25日 意見書及び手続補正書 平成29年10月24日 拒絶査定 平成30年 1月12日 拒絶査定不服審判請求書及び手続補正書 平成30年10月 3日 拒絶理由通知書 平成30年11月14日 意見書及び手続補正書 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成30年11月14日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり,本願発明は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 チューブが挿入されるボディと,前記ボディの内部に設けられ,前記チューブを着脱自在な着脱機構とを備え,流体圧機器に接続される管継手であって, 前記ボディには,前記チューブと前記流体圧機器とを連通させるオリフィス部が設けられるとともに, 前記オリフィス部は,前記ボディに対して交換可能な複数のオリフィス部材を備えるとともに, 前記各オリフィス部材には,それぞれ開口径の異なるオリフィスが設けられ, 前記オリフィス部材は,前記チューブの先端内周に挿入されるインナースリーブであり, 前記インナースリーブの外周部には,前記チューブの先端内周に対して摺接する突出部としての凸部が設けられ, 前記チューブは,前記凸部が前記チューブの先端内周に摺接している状態で,前記着脱機構の内周に挿入されることにより,前記着脱機構を介して前記ボディに装着され, 前記インナースリーブは,前記チューブの先端に当接するフランジ部を有するとともに, 前記フランジ部は,前記チューブの先端との接触部位が傾斜面に形成されることを特徴とする管継手。」 第3 原査定の概要 原査定(平成29年10月24日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願発明は,以下の引用文献1?3に記載された発明に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 (引用文献) 1 実願昭63-67148号(実開平1-169697号)のマイクロフィルム 2 実願昭61-95524号(実開昭63-1990号)のマイクロフィルム 3 実願平1-88234号(実開平3-26891号)のマイクロフィルム 第4 当審にて通知した拒絶の理由の概要 当審にて通知した拒絶の理由の概要は次のとおりである。 本願発明は,以下の引用文献1?8に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 (引用文献) 1 実願昭63-67148号(実開平1-169697号)のマイクロフィルム(原査定の引用文献1) 2 実願昭61-95524号(実開昭63-1990号)のマイクロフィルム(同引用文献2) 3 特開平6-300150号公報(当審において新たに引用した文献) 4 特開2001-260846号公報(同) 5 特開昭51-133631号公報(同) 6 特開2005-114511号公報(同) 7 実願昭62-22017号(実開昭63-129631号)のマイクロフィルム(同) 8 特開2000-240830号公報(同) 第5 当審にて通知した拒絶の理由についての判断 1 引用文献,引用発明等 (1) 引用文献1 ア 引用文献1には,以下の事項が記載されている。 ・「本考案は,油圧機器と流体管路または各種継手と流体管路を接続する継手に関するものである。」(明細書1頁下から6行?下から5行) ・「一般に使用される通過流体の流量を調整する継手は,流体排出側の管用ねじ先端に,絞り穴が形成された円筒形のノズルが螺着されている方式である。この方式の継手に於けるノズルの取り替え作業は,まず流体流入側の流体管路を継手から外し,つぎに継手を流体排出側の油圧機器または各種継手から外し,そしてねじ回しを使用して継手内のノズルを取り替えるという面倒な手順で行っている。また,ノズルに貫通された絞り穴は穴径に比べて長さが長いので,流体の温度変化による粘度変化の影響を受け,通過流量が変動するという問題があった。 上記問題に対して,…絞り穴が形成された円板状のオリフィスを継手内部の流体管路が装嵌される大径穴端面に挿入する方式がある。 … しかし,この方式では絞り穴の形成されたオリフィスは小さく,しかも大径穴に挿入してあるだけのため,オリフィスの取り替え作業時に不注意に紛失する可能性がある。そして,流体管路端面でオリフィスを継手内大径穴端面に押し付けることにより流体の漏れを防いでいるため,もしオリフィスを挿着しないまま継手を組み付けると,流体の漏れが発生してしまう。」(同1頁下から3行?3頁2行) ・「第1図の継手は,油圧機器と流体管路の接続に使われ,1は継手本体で管路接続側9には大径穴11が開口している。その内部にスリーブ3が挿入されていて,継手本体1とスリーブ3とのテーパ部の働きで締付ナット2の締め付けにより,パイプ8の取り付け取り外しができる様になっている。また,継手本体1の機器接続側10には大径穴12が開口しており,大径穴11と大径穴12は連通口5によって連通されている。 連通口5には管路接続側からねじがきってあり,このねじに円筒形状のオリフィス4が螺合されている。オリフィス4の端面には流量調整用の必要径の絞り穴6が開けられており,もう片側の端面から同軸に絞り穴6より大径の取り替え作業用の六角レンチ差し込み穴7が形成されているので,絞り穴自体の幅は短くなっている。そのため,流体の温度変化による粘度変化の影響を受けず,通過流量が変動しない。オリフィス4には絞り穴6の直径だけが異なるものが数種類あり,オリフィス4を交換することにより,流量調整が出来る。」(同4頁4行?5頁3行) ・「以上述べたように本考案においては,従来の方式の長所を生かしながら,取り替え作業時にオリフィスを不注意に紛失することを防止することができる。また,もしオリフィスを挿着しないまま継手を組み付けても,管路端面が継手内大径穴端面を直接押し付けてシールしているため,流体の漏れは発生しない。」(同5頁下から9行?下から3行) イ 上記の記載及び図面の記載からみて,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 (引用発明) 「パイプ8が挿入される継手本体1と,締付ナット2と,前記継手本体1の内部に設けられたスリーブ3とを備え,前記継手本体1と前記スリーブ3とのテーパ部の働きで締付ナット2の締め付けにより,前記パイプ8の取り付け取り外しができる,油圧機器に接続される継手であって, 前記継手本体1には,前記パイプ8と前記油圧機器とを連通させるオリフィス4が設けられるとともに, 前記オリフィス4は,交換可能であり, 前記オリフィス4は,前記継手本体1に対して交換可能な複数のオリフィス4を備えるとともに, 前記各オリフィス4には,それぞれ開口径の異なるオリフィス4が設けられ, 前記オリフィス4は,前記継手本体1の連通口5の内側に設けられたねじに螺合する継手。」 (2) 引用文献2 引用文献2には,以下の事項が記載されている。 ・「本考案は流体制御管に関し,特に流体量を制御するバキューム・コントロール・システムの部品として使用されて有効なものであって,前記流体量による圧力調整を行うためにオリフイスを具備した流体制御管に関するものである。」(明細書1頁下から3行?2頁2行) ・「第1図は流体制御管10の分解説明図であって,11で第1管体を,12で第2管体を,13でオリフイス管体を示してある。即ち,第1管体11は可とう性材料による長尺状のホースで所定位置に配設されているものである。第2管体12は分枝した脚体を具備する分枝管であって,第1図においては一分枝部を示し,切断部20近辺の内壁面に断面半円体の環状突部14が前記切断部20と平行状に形成されているところを示してある。第2管体12は樹脂材あるいは軟質金属材によって形成される。 オリフイス管体13は,樹脂材により一体成型され,全面を円筒体と成し,本体部15には係着部18が外周面に対して半円体の溝体として形成されており,当該形成位置は係着部18と前記第2管体12内壁の環状突部14が丁度係止出来る様に各端末部より同一内方向の寸法位置にそれぞれが形成されている。 そして,更にオリフイス管体13には,本体部15と直列して段差部17をもって肉厚部16があり,前記段差部17の厚さ寸法は第2管体12の肉厚寸法と同一となっている。 そして,中心には設計値によって貫穿されたオリフイス19が貫通している。」(同4頁末行?6頁3行) ・「そこで,図示切断部20方向よりオリフイス管体13の具備する本体部15を前記第2管体12内径へ押圧挿入すれば,本体部15は,環状突部14を半径方向に拡径しながら無理に押込まれ,次いで,係着部18が前記環状突部14にそれぞれ凹凸が合致して嵌合係止される。 これによって,両者は一体化されるが,この時切断部20はオリフイス管体13の段差部17面に対面し合致することになる。 これは,第2管体12の肉厚と段差部17の高さ寸法が一致する様に成型されるためで,これによって,第2管体12の外周面とオリフイス管体13の肉厚部16の外周面とが外径寸法として一致することになる。 次に,かかる一致した状態から第1管体11へオリフイス管体13の肉厚部16を押入すれば,前記肉厚部16は第1管体11の内径を拡径しながら挿入して密着する。 これによって,オリフイス管体13は第1管体11に密着係止すると同時に,第2管体12へも環状突部14を介して係着部18と係止することになる。」(同6頁10行?7頁11行) (3) 引用文献3 引用文献3には,以下の事項が記載されている。 ・「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は,弁付管継手,チェック弁およびチェック弁構造に関し,特に,流体圧回路を構成する管路内への弁機構の内蔵技術に関する。」 ・「【0043】実施例2の改良例 なお,実施例2に係るチェック弁30において,図9に破線で示すように,ポペット32に対し,それを軸線方向に沿って貫通するオリフィス328を形成し,矢印Eの方向の流体に対して固定絞りを行ってもよい。 【0044】また,オリフィス328に代えて,ポペット32において,シート面312との当接部分よりも出口316の側に形成されている流体通過孔324を利用する一方,チェック弁ハウジング31の側面のうち,シート面312よりも出口316の側の位置にオリフィス319を形成して,矢印Fで示す流体通路を確保し,矢印Eの方向の流体に対して固定絞りを行ってもよい。この場合には,オリフィス328を利用した場合に比較して,流体の流れに伴って生じる雑音が低減することが確認できている。」 (4) 引用文献4?8 ア 引用文献4には,以下の事項が記載されている。 ・「【請求項6】 前記仕切部材の底面には,前記第1,第2の部屋を連通させるオリフィスとしての穴部(21d)が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載のABSアクチュエータ。」 … 【請求項8】 前記仕切部材の側面には部分的に径が大きくされた圧入部(21c)が備えられており,この圧入部によって該仕切部材が前記凹部内に固定されるようになっていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載のABSアクチュエータ。」 ・「【0041】また,カップ部材21の側壁には部分的に径大とされた圧入部21cが形成されている。カップ部材21を凹部10内に嵌入した際には,この圧入部が凹部10に圧入され,カップ部材10がハウジング1に固定されるようになっている。 【0042】さらに,カップ部材21の底面21aにはオリフィスとなる穴部21dが形成されており,カップ部材21によって仕切られた2部屋13a,13bが穴部21dを通じて連通し,管路Cと管路Aとが接続されるようになっている。」 イ 引用文献5には,以下の事項が記載されている。 ・「第7図,および第8図は計量オリフイス単体18の外周にゴムなどの可撓性部材22が焼付けなどにより取付けられているもので,この可撓性部材22はくさび形状のリツプ23を有している。可撓性部材22を備えた計量オリフィス単体18を,前記隔壁14の貫孔19内に圧入してバルブボデー8と一体的に固定する。この際リツプ23の作用により取付けは小さい力ででき,取外しは一定以上の大きさの力を加えたときのみ取外すことができ,簡単にはずれるのを防止している。 第9図は上記実施例における可撓性部材22としてゴムなどのOリング24を用いたもので,第8図に示す計量オリフイス単体18と同様に隔壁14の貫孔19に圧入される。 第10図は計量オリフイス単体18の内径にねじ部25を設けた実施例を示し,このねじ部25に治具26の先端部に設けた雄ねじ部27を螺合して計量オリフイス単体18を取付け,取外しするもので,その作業を容易にするものである。 さらに,第11図は第10図におけるねじ部25の他の実施例を示すもので,計量オリフイス18の一端面から軸方向に切込んだ係止溝28を設けたものである。この係止溝28はその終端部において円周方向の折曲溝28Aを有している。該係止溝28には,治具29の先端部に設けた係合突起30を係合して計量オリフイス単体18の取付け,取外しを行なう。この際,治具29は係止溝28に挿入後,係止溝28の終端部で回転させ,これにより折曲溝28Aと係合突起30とが係合して前記作用が可能となるものである。 本発明によれば,ダツシユポツト本体と計量オリフイス部を別体に構成したから,計量オリフイスの加工が容易にできるとともに,目づまり時に計量オリフイス部のみの交換が可能となり交換時のコストを低廉にできるなどの効果を有する。また,ダツシユポツト本体と計量オリフイス部とを可撓性部材を介して嵌合するようにすれば計量オリフイス部の嵌合時に摩耗切屑を発生させることがなく,従つてこの切屑による目づまりの発生を未然に防止できその取外し作業も容易になり,さらに,計量オリフイス単体の内周に取付け,取外し用の治具と係合する係止部を設ければ,その取付け,取外し作業がさらに容易になる効果を有する。」(「補正の掲載」3頁左上欄下から4行?左下欄末行) ウ 引用文献6には,以下の事項が記載されている。 ・「【請求項4】 前記絞り形成部材の外周面の前記エアチューブの内周面に沿った周方向に凸条部を形成して絞り形成部材の上流側と下流側とのシール性を向上させたことを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の空気マイクロメータにおける固定絞り。」 ・「【0024】 また,更に,前記絞り形成部材2Bの外周面の前記エアチューブ1Aの内周面に沿った周方向に凸条部5を形成すれば,エアチューブ1Aの柔軟性や弾性によって依然としてスムーズに挿入可能であり,しかも前記位置決め外周面2Cの密着と共にあるいはこれに代えてこの凸条部5が内周方向でエアチューブ1Aの内周面に強固に弾圧密着して,絞り形成部材2Bの上流側と下流側とのシール性は一層向上し,各種圧力の空気マイクロメータに適用可能となる。」 ・「【0037】 図5に示すように本実施例では前記実施例1での絞り形成部材2Bの短尺な外周面の前記エアチューブ1Aの内周面に沿った周方向に凸条部5を1条形成して絞り形成部材2Bの上流側と下流側とのシール性を一層向上させた構成としている。」 エ 引用文献7には,以下の事項が記載されている。 ・「シリンダ孔を形成した本体と,シリンダ孔に摺動自在に挿入して圧力室を区画するピストンと,前記圧力室に連絡して形成されクラツチオペレーテイングシリンダに連絡される吐出孔と,該吐出孔の流体通路を横切つて配置され絞り孔を形成したプレートを有するクラツチマスタシリンダにおいて,前記プレートの外周に吐出孔内壁に直接圧嵌する取付部を一体に形成したクラツチマスタシリンダ。」(明細書1頁「実用新案登録請求の範囲」) ・「このプレート11は全体の外径が上記底部の内径より大きい外径を有するもので,第4図に示す如く,外径が中径部10の内径より小さくない板部12と,該板部12外周から放射状に突出する複数の係止片13からなる取付部を有し,板部 12には複数の絞り孔14が形成されている。このプレート11は,第3図に示す如く,板部12の周縁部が大径孔8の底に当接するまで押し込まれ,この状態で,係止片13が斜に折曲してその先端が大径部8の底部側内壁に圧接・係合している。」(同4頁下から6行?5頁5行) オ 引用文献8には,以下の事項が記載されている。 ・「【0026】さらに,図5に示されるように,止め輪34を外して,弁体26およびばね部材24を図1とは逆方向に装着することにより,チェック方向を簡便に変更することができる。」 2 対比及び判断 (1) 対比 ア 本願発明と引用発明とを,その有する機能に照らして対比してみるに,引用発明の「パイプ8」,「継手本体1」,「油圧機器」,「継手」は,それぞれ,本願発明の「チューブ」,「ボディ」,「流体圧機器」,「管継手」に相当する。, イ 引用発明は,「継手本体1」の内部に設けられた「スリーブ3」を備え,「継手本体1」と「スリーブ3」とのテーパ部の働きで「締付ナット2」の締め付けにより,パイプ8の取り付け取り外しができるものであるから,当該「継手本体1」の「テーパ部」,「締付けナット2」及び「スリーブ3」は,本願発明の「着脱機構」に相当する。 ウ 引用発明の「オリフィス4」は,「継手本体1」に設けられ,「パイプ8」と「油圧機器」とを連通させるとともに,交換可能なオリフィスであるから,本願発明の「オリフィス部」に相当する。 エ そうすると,本願発明と引用発明とは,次の点で一致し,相違する。 (一致点) 「チューブが挿入されるボディと,前記ボディの内部に設けられ,前記チューブを着脱自在な着脱機構とを備え,流体圧機器に接続される管継手であって, 前記ボディには,前記チューブと前記流体圧機器とを連通させるオリフィス部が設けられるとともに, 前記オリフィス部は,前記ボディに対して交換可能な複数のオリフィス部材を備えるとともに, 前記各オリフィス部材には,それぞれ開口径の異なるオリフィスが設けられる,管継手。」 (相違点) 本願発明は,「前記オリフィス部材は,前記チューブの先端内周に挿入されるインナースリーブであり」,「前記インナースリーブの外周部には,前記チューブの先端内周に対して摺接する突出部としての凸部が設けられ」,「前記チューブは,前記凸部が前記チューブの先端内周に摺接している状態で,前記着脱機構の内周に挿入されることにより,前記着脱機構を介して前記ボディに装着され」,「前記インナースリーブは,前記チューブの先端に当接するフランジ部を有するとともに」,「前記フランジ部は,前記チューブの先端との接触部位が傾斜面に形成される」のに対し,引用発明は,「前記オリフィス4は,前記継手本体1の連通口5の内側に設けられたねじに螺合する」点。 (2) 相違点についての判断 引用例2,3に記載されているように,内挿側となる管体の内周にオリフィス部材を固定することは,従前より知られた構造である。突出部を摺接させることで部材を固定することは常套手段で,オリフィスを突出部の摺接によって固定することも慣用されている(例えば,引用例4?7参照。)。 また,引用発明において,オリフィス4を固定する部位は,当業者が適宜に選択でき,オリフィス4を固定する手段として,その他の手段が採用可能であることも,当業者であれば容易に理解できる。 しかしながら,相違点に係る「前記オリフィス部材は,前記チューブの先端内周に挿入されるインナースリーブであり」,「前記インナースリーブの外周部には,前記チューブの先端内周に対して摺接する突出部としての凸部が設けられ」,「前記チューブは,前記凸部が前記チューブの先端内周に摺接している状態で,前記着脱機構の内周に挿入されることにより,前記着脱機構を介して前記ボディに装着され」,「前記インナースリーブは,前記チューブの先端に当接するフランジ部を有するとともに」,「前記フランジ部は,前記チューブの先端との接触部位が傾斜面に形成される」構成については,引用文献1?8には記載されておらず,本願出願前において周知技術であるともいえない。 そして,本願発明は,「ボディには,チューブと流体圧機器とを連通させるオリフィス部が設けられており,速度制御弁のように,作業者による誤作動を可及的に抑制することができる。しかも,流体圧機器の速度制御は,オリフィス部に設けられたオリフィスの作用下に,簡単且つ確実に遂行可能になる。」(本願明細書【0021】),「特に,オリフィス部を交換することにより,オリフィスの開口径を選択することができる。このため,種々の流体圧機器に良好に採用することが可能になり,汎用性の向上が容易に図られる。さらに,オリフィスを設けることにより,流体圧機器側に細孔を形成する必要がない。これにより,細孔の加工費が削減され,経済的である。」(同【0022】),「その際,流体用チューブ12の先端内周には,インナースリーブ66が装着されるとともに,前記インナースリーブ66のフランジ部72が傾斜面72aを有している。従って,フランジ部72と流体用チューブ12の先端との間には,隙間が形成され,この隙間を介して,作業者がインナースリーブ66を前記流体用チューブ12から容易且つ迅速に取り外すことができる。」(同【0047】)といった効果を奏するものである。 したがって,本願発明は,引用発明及び引用文献2?8に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。 第6 原査定についての判断 1 引用文献,引用発明等 (1) 引用文献1,2について 原査定の引用文献1,2に記載された事項については,前記第5・1(1),(2)のとおりである。 (2) 引用文献3について 原査定の引用文献3には,以下の事項が記載されている。 ・「前記プラグ19の内部には高圧空気の逆流を防止する逆止弁26が装着される。すなわち,プラグ19の内部にはカップ状の弁ハウジング27が螺着されており,この弁ハウジング27の側壁には一対の大径の通孔28が穿設されるとともに,その底壁には小径のオリフィス29が穿設されている。また,前記弁ハウジング27の外周には可撓性材料で形成したリング状の弁体30が装着されている。この弁体30の外周の自由端は自己の弾性によってプラグ19の内周面に当接しており,エアジョイント17側からプラグ19側への空気の流通を許容し,逆方向の空気の流通を規制するように構成されている。」(明細書9頁2?14行) 2 対比及び判断 本願発明と引用発明に係る一致点,相違点は,前記第5・2(1)のとおりである。 既に述べたとおり,引用文献1,2には前記相違点に係る構成は記載されておらず,引用文献3にも記載されていない。 そして,本願発明は,前記効果(前記第5・2(2))を奏するものである。 したがって,本願発明は,引用発明及び引用文献2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。 3 以上のとおりであるから,原査定を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり,原査定の理由及び当審にて通知した拒絶の理由によって,本願を拒絶することはできない。 他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-01-21 |
出願番号 | 特願2014-524744(P2014-524744) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(F16L)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 大谷 光司、黒石 孝志 |
特許庁審判長 |
藤原 直欣 |
特許庁審判官 |
窪田 治彦 莊司 英史 |
発明の名称 | 管継手 |
代理人 | 坂井 志郎 |
代理人 | 千葉 剛宏 |
代理人 | 宮寺 利幸 |
代理人 | 千馬 隆之 |
代理人 | 関口 亨祐 |
代理人 | 大内 秀治 |
代理人 | 仲宗根 康晴 |