ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G03G |
---|---|
管理番号 | 1348266 |
審判番号 | 不服2018-5821 |
総通号数 | 231 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-03-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-04-26 |
確定日 | 2019-02-05 |
事件の表示 | 特願2017- 88922「引出体、画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月24日出願公開、特開2017-146613、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年10月7日に出願した特願2013-210368号の一部を平成29年4月27日に特願2017-88922号として出願したものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年10月24日付け:拒絶理由通知書 平成29年12月26日 :手続補正書の提出 平成30年1月29日付け :拒絶査定 平成30年4月26日 :審判請求書の提出 平成30年10月5日付け :拒絶理由通知書 平成30年12月10日 :手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定(平成30年1月29日付け拒絶査定)の拒絶の理由の概要は次のとおりである。 この出願の各請求項に係る発明は、以下の引用文献1?3に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等 1.特開平7-325539号公報 2.特開2011-48260号公報 3.特開平11-258969号公報 第3 当審拒絶理由の概要 平成30年10月5日付けの当審拒絶理由の概要は、以下のとおりである。 本件出願は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 第4 本願発明 本願請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明4」という。)は、平成30年12月10日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1?4は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 回転軸に沿って回転する回転体を備え、前記回転体の回転に伴って画像を記録媒体に加熱定着する定着部と、 前記回転体の幅に亘って設けられ、前記定着部によって加熱された空気を第1の流入口から流通させ、前記回転軸に沿った第1の空気流として流通させる第1流通路と、 前記回転体の幅に亘って設けられ、前記第1流通路で流通する空気より低い温度の空気を流通させるように前記第1の流入口とは別の第2の流入口から空気を取り込み、前記第1流通路から分離された空間で、前記回転軸に沿った第2の空気流として流通させる第2流通路と、 内部に前記定着部を収容すると共に、前記第1流通路と前記第2流通路を構成する壁部を有し、画像形成装置本体に対して一体に引き出し可能とされた引出体と、 を備え、 前記壁部は、前記回転軸に沿った方向において、前記第2の空気流が前記第1の空気流全体よりも上側を流れるように、前記第1流通路と前記第2流通路とを仕切る仕切り壁を備え、 前記第2流通路は前記定着部の上側に位置するとともに、前記第2流通路を構成する壁部の一部は前記引出体の外壁の一部を構成している 画像形成装置。 【請求項2】 前記第1流通路、または、前記第2流通路は、前記壁部により複数の流通路に構成されている 請求項1に記載の画像形成装置。 【請求項3】 前記画像形成装置は、前記引出体を引き出すために開閉される開閉部を備え、前記第2の流入口は、前記開閉部側に設けられている 請求項1または2のうちいずれか1項に記載の画像形成装置。 【請求項4】 前記第1流通路および前記第2流通路を流通したそれぞれの空気は、合流した後に、前記画像形成装置の外部へ排出される 請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の画像形成装置。」 第5 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 上記引用文献1には、次の事項が記載されている。(下線は当審が付した。以下同じ。) (1)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明はトナー像を画像定着させる熱定着ユニットが組込まれた画像形成装置、例えば複写機、プリンタ、ファクシミリ、若しくはこれらを複合した画像形成装置として適用される発明に係り、特にファンを用いることなく装置内の昇温を回避し得る装置構成を取ることを可能にした発明に関する。」 (2)「【0014】プロセスユニット取付け空間1Cはボード取付け空間1Bを仕切る仕切り壁1Dの上面側に記録紙搬送路10を形成するとともに、該搬送路10入口端側10aより搬送路10に沿って給紙ガイドローラ18、レジストローラ対4、転写ローラ5と感光体ドラム6、及び熱定着ユニット7が配設されており、給紙カセット2と一体化された手差し給紙部34、給紙カセット2、若しくは不図示の給紙ユニットより給送された記録紙が給紙ガイドローラ18を介してレジストローラ4入口端で待機された後、感光体ドラム6に担持させたトナー像始端と同期させてレジストローラ4を回転させて転写ローラ5により前記トナー像を転写させ、更に熱定着ユニット7の熱定着ローラ対70を挿通させて画像定着を行った後、中間排紙ローラ8、反転排紙ガイド40及び排紙ローラ対9を介して、装置上面側の排紙トレー部20に反転排紙される。 【0015】尚、熱定着ユニット7は、図3に示すように上側にヒートローラ70a、下側に圧力ローラ70bからなる定着ローラ対70と、前記ヒートローラ70aの上側空間を囲繞する矩形状の上側ハウジング71と、前記圧力ローラ70bの底面側を囲繞し、該ユニット7を仕切り壁上の所定位置に設置する為の、矩形状の下側ハウジング72とからなり、前記両ハウジング71、72間の開口の記録紙搬送路10側と連通する入口側に、記録紙をローラニップ位置に導く入口ガイド73を、又中間排紙ローラ8側と連通する出口側に、画像定着後の記録紙を中間排紙ローラ8のニップ位置に導く出口ガイド74を夫々設ける。上側ハウジング71には断熱材が貼着されているとともに、その上側内壁面に、ヒートローラ70aにオフセット防止液を塗布するための液塗布手段75を設ける。」 (3)「【0024】次に排紙ガイド40の構成について図1及び図3に基づいて説明する。排紙ガイド40は、感光体ドラム軸方向に沿って所定間隔毎に垂直に列設した多数枚の垂直ガイド401と、該隣接するガイド401間を連接し、格子状のダクト空間41A、41Bを形成する垂直連接板402と、該垂直連接板402に対し十字状に形成し、前記垂直ガイド401の補強を図る補強板403と、熱定着ユニット7の上側ハウジング71上面より中間排紙ローラ8上面に至る設置部位404、及びこれらを一体的に保持するために長手方向両端側に配した枠体405とを有し、該設置部位404は熱定着ユニット7の上側ハウジング71上面側に形成した遮蔽壁30よりの吸引空気の通路と対面する位置、及び熱定着ユニット7と中間排紙ローラ8との間の出口開口と対面する部位をいずれも開口し、その開口部42A、42Bより前記ダクト41A、41Bを通って固定壁23のスリット開口233より機外に放気される。又、枠体405にはその外側に装置本体1に固設するための取り付け板406及び取り付け軸407が設けられている。 【0025】そしてかかる実施例によれば、熱定着ユニット7のヒートローラ70aによって上側ハウジング71が加温されるが、遮蔽壁30により該加温された熱気がドラムユニット60側に流れるのを阻止する事が出来るのみならず、上側ハウジング71上方に位置する開口部42Aより前記ダクト41Aを通って固定壁23のスリット開口233より機外に放気されて上昇気流Aを作る。又熱定着ユニット7入口側の発熱空気も前記通路30Bを通って前記ダクト41Aに導かれ、同様にスリット開口233より機外に放気されて上昇気流Aを作る。 【0026】そして低気圧の原理により前記上昇気流Aの放出により熱定着ユニット7の入口側の気圧が低下し、遮蔽壁30と記録紙搬送面間の空隙30Aを介してドラムユニット60側より冷気が流れ、結果としてドラムユニット60周囲→空隙30A→熱定着ユニット上面通路30B、42A→ダクト通路41A→スリット開口233の空気の流れも併せて作る事が出来る。従って前記2つの作用により、熱定着ユニット7により加温された熱気の上昇気流Aを利用して、ドラムユニット60側より機内空気を吸引しながら熱定着ユニット7により加温された熱気を排気ダクト41A、41Bを介して開口部233より排気させることが出来るとともに、開口部42Aは前記通路部30Bと対面する部位のみであるために、前記ダクト通路41Aにより上昇気流Aのスリット開口233への案内を確実に行うことが出来るとともに、前記ダクト通路41Aに前記ユニット7の熱気以外のスリット開口233の流入を防ぐことが出来、これによりファンを用いない排気が一層容易となる。」 (4)「【0028】又前記ユニットの出口側上方にもダクト開口部42Bが位置しているために、ヒートローラ70aにより加熱され出口側に流れた熱気がダクト開口部42Bより前記ダクト41B内に導入され、ダクト通路41Bを通って固定壁23のスリット開口233より機外に放気されて上昇気流Aを作る。 【0029】そして前記ユニット出口側の上昇気流Aにより、ユニット出口側の気圧が低下し、その部分に冷気が流入するために、画像熱定着直後の記録紙が冷やされることとなり、好ましい。」 (5)図1?3を参照すると、ダクト空間41Aは、熱定着ユニット7の上側に位置する点、及び、格子状のダクト空間41A、41Bを形成する垂直連接板402には、ダクト空間41Aとダクト空間41Bとを仕切る垂直連接板402が存在する点が示されている。 上記(1)?(5)を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。 「上側にヒートローラ、下側に圧力ローラからなる定着ローラ対と、ヒートローラの上側空間を囲繞する矩形状の上側ハウジングと、を少なくとも有する熱定着ユニットであって、記録紙を熱定着ローラ対に挿通させて画像定着を行う熱定着ユニットを備え、 排紙ガイドは、格子状のダクト空間41A、41Bを形成する垂直連接板を少なくとも有し、 格子状のダクト空間41A、41Bを形成する垂直連接板には、ダクト空間41Aとダクト空間41Bとを仕切る垂直連接板が存在し、 ダクト空間41Aは、熱定着ユニットの上側に位置し、 熱定着ユニットのヒートローラによって上側ハウジングが加温され、加温された熱気は、上側ハウジング上方に位置する開口部よりダクト41Aを通って固定壁のスリット開口より機外に放気されて上昇気流を作り、 熱定着ユニット入口側の発熱空気も通路を通ってダクト41Aに導かれ、同様にスリット開口より機外に放気されて上昇気流を作り、 低気圧の原理により上昇気流の放出により熱定着ユニットの入口側の気圧が低下し、遮蔽壁と記録紙搬送面間の空隙を介してドラムユニット側より冷気が流れ、ドラムユニット周囲から、空隙、熱定着ユニット上面通路、開口部、ダクト通路41A、スリット開口への空気の流れを作ることができ、 ユニットの出口側上方にもダクト開口部が位置しているために、ヒートローラにより加熱され出口側に流れた熱気がダクト開口部よりダクト41B内に導入され、ダクト通路41Bを通って固定壁のスリット開口より機外に放気されて上昇気流を作り、ユニット出口側の上昇気流により、ユニット出口側の気圧が低下し、その部分に冷気が流入するために、画像熱定着直後の記録紙が冷やされる、 ファンを用いることなく装置内の昇温を回避し得る画像形成装置。」 2 引用文献2について 上記引用文献2には、次の事項が記載されている。 「【0053】 図3及び図4は、本発明に係る画像形成装置の外観図である。 図3に示すように、画像形成装置本体100の外面には、開閉可能な扉37が設けてある。図4は、その扉37を開放した状態を示す図である。扉37を開放することによって、開放された箇所から、収容された引出部38(引出ユニット)を引き出し可能に構成されている。本実施例では、引出部38は、画像形成装置本体100に設けた一対のスライド部材39によって支持されており、スライド部材39がスライドして伸縮することにより引出部38の引き出し及び収納可能としているが、それ以外の引出機構を選択して適用することも可能である。 【0054】 図5に示すように、上記引出部38には定着装置8が設けられている。このように、定着装置8を画像形成装置本体100の外部に引き出せるように構成することによって、メンテナンス作業や紙詰まり処理を行いやすくしている。また、受熱板31も定着装置8と一体的に引出可能に構成されている。一方、ここでは図示しない上記ポンプ32、ラジエータ33、ファン34、タンク35は、画像形成装置本体100に固定されている。このように、本実施例では、固定されたポンプ32等に対して受熱板31は移動可能に構成されているが、従来の画像形成装置と異なり、受熱板31を引き出した状態にしても、受熱板31とポンプ32等との連結が分離されない構成となっている。以下、本発明の特徴部分の構成について詳しく説明する。」 上記記載から、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。 「画像形成装置本体の外面には、開閉可能な扉が設けてあり、 扉を開放することによって、開放された箇所から、収容された引出部が引き出し可能に構成されており、 引出部には定着装置が設けられており、 定着装置を画像形成装置本体の外部に引き出せるように構成することによって、メンテナンス作業や紙詰まり処理を行いやすくしている、 画像形成装置。」 3 引用文献3について 上記引用文献3には、次の事項が記載されている。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、複写機・プリンタ・ファクシミリやそれらの複合機など、像担持体上に帯電・書込み・現像・クリーニングなどを行って繰返し画像を形成し、その画像を転写して用紙等の記録媒体に順次記録を行う電子写真式の画像形成装置に適用し得る。詳しくは、そのうち、像担持体を引出体内に収納し、その引出体を装置本体内に出し入れ自在に備える画像形成装置に関する。」 (2)「【0028】そして、このような像担持体ユニット53は、図5に示すように、現像ユニット14とともに、引出体57内に取り出し可能に収納する。 【0029】引出体57は、前後の側板58・59を、その上部両側間に掛け渡して平行に設ける左右のステー61・61と、上部中央間に掛け渡す上ステー60と、図示省略するが、下部中央間に掛け渡す下ステーとで連結して構成してなる。 【0030】さて、そのような引出体57の左右ステー61には、図4(A)に示すように、間隔をあけて下向きの切欠き61aを設ける。一方、装置本体10側のスライドレール67には、同じく図4(A)に示すように、同じ間隔をあけて、細径の首部を有する掛止突起67aを設ける。 【0031】そして、図4(B)に示すように、切欠き61a内に掛止突起67aの首部を入れてスライドレール67にステー61を掛け止め、図3に示すように、装置本体10内に対向して設ける2つのスライドレール67間に引出体57を取り付け、装置本体10内から図示のように引き出せるようにする。」 (3)「【0033】ところで、上述したカラー複写機において、引出体57には、その中を通気すべく、図1に示すように、像担持体ユニット53の背後で後側板59に点線で示す排気口73を設ける一方、像担持体ユニット53の手前で前側板58に送風装置75を取り付けてなる。 【0034】送風装置75は、その箱形ケース76内に吸気ファン77を備え、その手前の正面側にエアフィルタ78を上方に取り出し可能に収納してなる。そして、箱形ケース76の片側側面の上下に、それぞれ送風ダクト79・80の基端を接続してなる。 【0035】そのうち上送風ダクト79は、L状に屈曲した樹脂製パイプで形成し、その先端開口側を、抜き差し孔55bの孔縁寄りを通って引出体57内に挿入してなる。そして、図2に示すように帯電装置13の周りに形成する空気通路82に、先端開口を入り込ませてなる。空気通路82は、帯電装置13の上側を、上記ユニットケース52で支持する断面コ状のダクトカバー83で被って形成してなる。 【0036】下送風ダクト80は、L状に屈曲して上記前側板58の挿通穴を貫通して引出体57内に入り込む入口部80aと、入口部80aから湾曲して下向きに伸びる中間部80bと、中間部80bの下端に接続して像担持体12に沿って軸方向に上記後側板59まで伸びる直線部80cとで形成する。 【0037】入口部80aおよび中間部80bは、1つの樹脂製パイプで一体に形成してなる。直線部80cは、たとえば断面く字状の折曲板材84の像担持体12側の開放部分を細長い板カバー85で塞いでパイプ状に形成する。たとえば前述した引出体57の下ステーを、断面く字状に折り曲げて形成し、そのく字状下ステーの開放部分を細長い板カバーで塞いでパイプ状に形成してもよい。 【0038】なお、直線部80c内には、折曲板材84に不図示のブラケットを介して前記トナー濃度検知センサ51を取り付けてなる。一方、板カバー85には、トナー濃度検知センサ51の検知面と対向する位置に、気流の吹出口を兼ねる小さな検知窓85aを設けてなる。 【0039】さて、上述した図示カラー複写機では、電源の投入により送風装置75を駆動して吸気ファン77を回転すると、その吸気ファン77の回転により引出体57内に図2中矢示するような空気の流れを生ずる。 【0040】そして、エアフィルタ78を通して空気を取り入れる一方、上送風ダクト79と空気通路82を通して上記排気口73から排出するとともに、下送風ダクト80を通して検知窓85aから吹き出し、さらに上記排気口73から排出する空気の流れをつくり、その気流に沿って引出体57内の通気を行う。 【0041】このとき、帯電装置13まわりのオゾンも、滞留することなく気流により排出する。また、下送風ダクト80を通る気流により、トナー濃度検知センサ51に付着したトナーや紙粉等の汚れを除去して排出する。」 上記(1)?(3)を総合すると、引用文献3には、以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。 「像担持体ユニットと現像ユニットが、引出体内に取り出し可能に収納され、 装置本体内に対向して設ける2つのスライドレール間に引出体を取り付け、装置本体内から引き出せるようにし、 引出体には、その中を通気すべく、像担持体ユニットの背後で後側板に排気口が設けられる一方、像担持体ユニットの手前で前側板に送風装置が取り付けられており、 送風装置は、その箱形ケース内に吸気ファンを備え、その手前の正面側にエアフィルタを上方に取り出し可能に収納しており、箱形ケースの片側側面の上下に、それぞれ上送風ダクト及び下送風ダクトの基端が接続されており、 上送風ダクトの先端開口を帯電装置の周りに形成する空気通路に入り込ませて、空気通路は、帯電装置の上側を、ユニットケースで支持する断面コ状のダクトカバーで被って形成されており、 下送風ダクトの直線部は、断面く字状の折曲板材の像担持体側の開放部分を細長い板カバーで塞いでパイプ状に形成されたものであって、直線部内にはトナー濃度検知センサが取り付けられており、板カバーには、トナー濃度検知センサの検知面と対向する位置に、気流の吹出口を兼ねる小さな検知窓が設けられており、 エアフィルタを通して空気を取り入れる一方、上送風ダクトと空気通路を通して排気口から排出するとともに、下送風ダクトを通して検知窓から吹き出し、さらに排気口から排出する空気の流れをつくり、その気流に沿って引出体内の通気を行い、 このとき、帯電装置まわりのオゾンも、滞留することなく気流により排出され、下送風ダクトを通る気流により、トナー濃度検知センサに付着したトナーや紙粉等の汚れを除去して排出する、 画像形成装置。」 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1) 対比 本願発明1と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1における、「上側にヒートローラ、下側に圧力ローラからなる定着ローラ対」を有し、「記録紙を熱定着ローラ対に挿通させて画像定着を行う熱定着ユニット」は、本願発明1の、「回転軸に沿って回転する回転体を備え、前記回転体の回転に伴って画像を記録媒体に加熱定着する定着部」に相当する。 イ 引用発明1における、「ヒートローラにより加熱され出口側に流れた熱気」を「ユニットの出口側上方」の「ダクト開口部」より導入し、「ヒートローラにより加熱され出口側に流れた熱気」、及び、(ユニット出口側に流入した)「冷気」、からなる空気を通す「ダクト41B」と、本願発明1の、「前記回転体の幅に亘って設けられ、前記定着部によって加熱された空気を第1の流入口から流通させ、前記回転軸に沿った第1の空気流として流通させる第1流通路」とは、「前記定着部によって加熱された空気を第1の流入口から流通させ、第1の空気流として流通させる第1流通路」との概念で共通する。 ウ 引用発明1における、「熱定着ユニットのヒートローラによって上側ハウジングが加温され、加温された熱気」、「熱定着ユニット入口側の発熱空気」、及び、「ドラムユニット側」より流れた「冷気」からなる空気を「上側ハウジング上方に位置する開口部」より通す「ダクト41A」と、本願発明1の、「前記回転体の幅に亘って設けられ、前記第1流通路で流通する空気より低い温度の空気を流通させるように前記第1の流入口とは別の第2の流入口から空気を取り込み、前記第1流通路から分離された空間で、前記回転軸に沿った第2の空気流として流通させる第2流通路」とは、「前記第1の流入口とは別の第2の流入口から空気を取り込み、前記第1流通路から分離された空間で、第2の空気流として流通させる第2流通路」との概念で共通する。 エ 引用発明1の、「格子状のダクト空間41A、41Bを形成する垂直連接板」は、本願発明1の「前記第1流通路と前記第2流通路を構成する壁部」に相当する。 オ 引用発明1の、「垂直連接板」には「ダクト空間41Aとダクト空間41Bとを仕切る垂直連接板」が存在する点と、本願発明1の、「前記壁部は、前記回転軸に沿った方向において、前記第2の空気流が前記第1の空気流全体よりも上側を流れるように、前記第1流通路と前記第2流通路とを仕切る仕切り壁を備え」る点とは、「前記壁部は、前記第1流通路と前記第2流通路とを仕切る仕切り壁を備え」る点において共通する。 カ 引用発明1の、「ダクト空間41Aは、熱定着ユニットの上側に位置」する点と、本願発明1の「前記第2流通路は前記定着部の上側に位置するとともに、前記第2流通路を構成する壁部の一部は前記引出体の外壁の一部を構成している」点とは、「前記第2流通路は前記定着部の上側に位置する」点において共通する。 キ 引用発明1の「画像形成装置」は、本願発明1の「画像形成装置」に相当する。 したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点がある。 (一致点) 「回転軸に沿って回転する回転体を備え、前記回転体の回転に伴って画像を記録媒体に加熱定着する定着部と、 前記定着部によって加熱された空気を第1の流入口から流通させ、第1の空気流として流通させる第1流通路と、 前記第1の流入口とは別の第2の流入口から空気を取り込み、前記第1流通路から分離された空間で、第2の空気流として流通させる第2流通路と、 前記第1流通路と前記第2流通路を構成する壁部と、 を備え、 前記壁部は、前記第1流通路と前記第2流通路とを仕切る仕切り壁を備え、 前記第2流通路は前記定着部の上側に位置する、 画像形成装置。」 (相違点1) 「第1流通路」について、本願発明1では、「前記回転体の幅に亘って設けられ」ているのに対し、引用発明1の「ダクト41B」は、定着ローラ対の幅に亘って設けられているとは明記されていない点。 (相違点2) 「第1流通路」について、本願発明1では、定着部によって加熱された空気を「前記回転軸に沿った」第1の空気流として流通させるものであるのに対し、引用発明1では、「ダクト41Bを通」る、「ヒートローラにより加熱され出口側に流れた熱気」、及び、(ユニット出口側に流入した)「冷気」からなる空気は、回転軸に沿って流通しない点。 (相違点3) 「第2流通路」について、本願発明1では、「前記回転体の幅に亘って設けられ」ているのに対し、引用発明1の「ダクト41A」は、定着ローラ対の幅に亘って設けられているとは明記されていない点。 (相違点4) 「第2流通路」について、本願発明1では、「前記第1流通路で流通する空気より低い温度の空気を流通させる」ものであるのに対し、引用発明1では、「ダクト41Bを通」る、「ヒートローラにより加熱され出口側に流れた熱気」、及び、(ユニット出口側に流入した)「冷気」からなる空気の温度と、「ダクト41Aを通」る、「熱定着ユニットのヒートローラによって上側ハウジングが加温され、加温された熱気」、「熱定着ユニット入口側の発熱空気」、及び、「ドラムユニット側」より流れた「冷気」、からなる空気の温度、の大小関係は不明である点。 (相違点5) 「第2流通路」について、本願発明1では、「前記回転軸に沿った」第2の空気流として流通させるものであるのに対し、 引用発明1では、「ダクト41Aを通」る、「熱定着ユニットのヒートローラによって上側ハウジングが加温され、加温された熱気」、「熱定着ユニット入口側の発熱空気」、及び、「ドラムユニット側」より流れた「冷気」、からなる空気は、回転軸に沿って流通しない点。 (相違点6) 本願発明1は、「内部に前記定着部を収容すると共に、前記第1流通路と前記第2流通路を構成する壁部を有し、画像形成装置本体に対して一体に引き出し可能とされた引出体」を備えているのに対し、引用発明1においては、「格子状のダクト空間41A、41Bを形成する垂直連接板」は存在するものの、そのような垂直連接板を有し、内部に熱定着ユニットを収容し、画像形成装置本体に対して一体に引き出し可能とされた「引出体」を有していない点。 (相違点7) 本願発明1は「前記壁部は、前記回転軸に沿った方向において、前記第2の空気流が前記第1の空気流全体よりも上側を流れるように、前記第1流通路と前記第2流通路とを仕切る仕切り壁を備え」ているのに対し、引用発明1では、「ダクト空間41Aとダクト空間41Bとを仕切る垂直連接板」は、回転軸に沿った方向において、ダクト空間41Aを通る、「熱定着ユニットのヒートローラによって上側ハウジングが加温され、加温された熱気」、「熱定着ユニット入口側の発熱空気」、及び、「ドラムユニット側」より流れた「冷気」、からなる空気流が、「ダクト41Bを通」る、「ヒートローラにより加熱され出口側に流れた熱気」、及び、(ユニット出口側に流入した)「冷気」からなる空気流全体よりも上側を流れるようにするものではない点。 (相違点8) 本願発明1は「前記第2流通路を構成する壁部の一部は前記引出体の外壁の一部を構成している」のに対し、引用発明1はそのような構成を有しない点。 (2)相違点についての判断 本願発明1の課題、すなわち、「画像形成装置本体から引き出した引出体に対して作業する際に、引出体の外表面の温度が予め定められた温度以下になるまでの時間を短時間にする」(本願明細書の段落【0004】)という課題に鑑み、当該課題に対応する、上記相違点4、6?8に係る本願発明1の発明特定事項を一体の構成として検討する。 引用発明2?3のいずれも、第1流通路と第2流通路を構成する壁部を有した引出体を備え、その引出体において、第2流通路を第1流通路で流通する空気より低い温度の空気を流通させるようにし、回転軸に沿った方向において、第1流通路と第2流通路とを仕切る仕切り壁を、第2の空気流が第1の空気流全体よりも上側を流れるように構成し、(定着部の上側に位置する)第2流通路を構成する壁部の一部が引出体の外壁の一部であるような構成を有していないことは明らかである。 また、上記相違点4、6?8に係る本願発明1の発明特定事項が当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。 また、上記相違点4単独で検討しても、引用発明2?3のいずれも、第1流通路で流通する空気より低い温度の空気を流通させる第2流通路を有していないことは明らかであり、上記相違点4に係る本願発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 本願発明2?4について 本願発明2?4は本願発明1を減縮した発明であるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第7 原査定について 原査定の拒絶の理由の概要は上記「第2」のとおりであるが、上記「第5」?「第6」のとおりであるから、本願発明1?4は、引用発明1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第8 当審拒絶理由通知について 1 平成30年10月5日付けの当審拒絶理由通知では、本件出願は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、との拒絶の理由を通知している。 2 具体的には、以下のとおりである。 (1)本願発明1の課題について 本願明細書の発明の詳細な説明(段落【0004】)によれば、本願発明1の課題は、「画像形成装置本体から引き出した引出体に対して作業する際に、引出体の外表面の温度が予め定められた温度以下になるまでの時間を短時間にすること」であると認められる。 (2)発明の詳細な説明の記載について 発明の詳細な説明(特に、段落【0055】?【0056】、【0064】?【0072】等)を参照すると、本願発明1の課題が解決される前提として、「第2流通路」は「第1流通路」よりも外壁側に位置していることが必要であるといえる。 (3)サポート要件についての判断 本願発明1においては、 「前記回転体の幅に亘って設けられ、前記定着部によって加熱された空気を第1の流入口から流通させ、前記回転軸に沿った第1の空気流として流通させる第1流通路と、 前記回転体の幅に亘って設けられ、前記第1流通路で流通する空気より低い温度の空気を流通させるように前記第1の流入口とは別の第2の流入口から空気を取り込み、前記第1流通路から分離された空間で、前記回転軸に沿った第2の空気流として流通させる第2流通路と、 内部に前記定着部を収容すると共に、前記第1流通路と前記第2流通路を構成する壁部を有し、画像形成装置本体に対して一体に引き出し可能とされた引出体と、 を備え、 前記壁部は、前記回転軸に沿った方向において、前記第2の空気流が前記第1の空気流全体よりも上側を流れるように、前記第1流通路と前記第2流通路とを仕切る仕切り壁を備える」 となっているが、この特定では、必ずしも、(第1流通路で流通する空気より低い温度の空気を流通させる)「第2流通路」は、「第1流通路」よりも外壁側に位置していないから、引出体の外表面の温度が予め定められた温度以下になるまでの時間を短時間にすることができない、すなわち、本願発明1の課題を解決できないことになる(例えば、「第1流通路」及び「第2流通路」が、「定着部」の下側に位置する場合、「第2の空気流が第1の空気流全体よりも上側を流れる」ためには、「第1流通路」が外壁側に位置することになり、本願発明1の課題を解決できない。)。 してみると、本願発明1は、当業者が発明の詳細な説明の記載から、本願発明1の課題である「画像形成装置本体から引き出した引出体に対して作業する際に、引出体の外表面の温度が予め定められた温度以下になるまでの時間を短時間にすること」を解決し得ると認識し得る範囲のものとはいえない。 請求項2?4に係る発明についても同様である。 3 しかしながら、平成30年12月10日付けの手続補正で、請求項1は「第4」のとおり補正されており、上記拒絶の理由は解消した。 第9 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-01-21 |
出願番号 | 特願2017-88922(P2017-88922) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G03G)
P 1 8・ 121- WY (G03G) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 岡▲崎▼ 輝雄 |
特許庁審判長 |
尾崎 淳史 |
特許庁審判官 |
荒井 隆一 畑井 順一 |
発明の名称 | 引出体、画像形成装置 |
代理人 | 特許業務法人太陽国際特許事務所 |