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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A47J
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A47J
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A47J
管理番号 1348277
審判番号 不服2017-4693  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-04 
確定日 2019-02-12 
事件の表示 特願2015-143859「用具置き付きハンドルを有する蓋を含む調理器具」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月 8日出願公開、特開2016- 22387、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年7月21日(パリ条約による優先権主張2014年7月21日 米国(US))の出願であって、平成28年5月10日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年8月16日に手続補正がされ、平成28年11月28日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年4月4日に拒絶査定不服審判の請求がされ、平成30年6月25日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年10月1日に手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、平成30年10月1日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
容器の上部開放部を覆うための蓋と、
前記蓋に設けられた蓋ハンドルと、を備え、前記蓋ハンドルは、前記蓋に取り付けられた第1の端部と、第2の自由端と、を備え、
前記蓋ハンドル上に設けられ、ハンドル及び機能端を有する用具の用具ハンドルを保持するための前記蓋ハンドルに設けられた用具ハンドル固定要素を有する用具置きをさらに備え、
前記用具置きは、前記蓋ハンドルの上面に用具ハンドル置き要素を有し、
前記用具置きは、前記蓋ハンドル上に用具機能端静止要素を有し、
前記蓋ハンドルの前記用具ハンドル固定要素は、貫通スロットを含み、
前記貫通スロットは、第1の側部と、該第1の側部から間隔を置いて配置された第2の側部とを含み、前記第1の側部及び第2の側部は、前記貫通スロットに位置付けられた用具ハンドルと係合し、
上部開放部を有する容器が設けられ、前記蓋は、前記容器の前記上部開放部を覆うような大きさである
ことを特徴とする調理器具。」

なお、本願発明2ないし4は、それぞれ本願発明1を減縮した発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(米国特許出願公開第2010/0251902号明細書)には、図面とともに次の事項が記載されている。

・「The lid 40 preferably includes an elongate handle 42 on a top surface thereof, preferably disposed generally along a major axis of the preferably ovular lid 40 . The handle 42 is preferably formed from a polymeric material, such as, but not limited to, plastic, and is affixed to the lid 40 via fasteners, such as bolts, screws, rivets, or some other suitable fastener. Alternatively, it is contemplated that the handle 42 could be affixed to the lid 40 using an adhesive or some other fastening method. Moreover, while it is preferred that the handle 42 be separately formed and affixed to the lid 40 , it is within the spirit and scope of the present invention that the lid 40 be made of a polymeric material, such as plastic, and that the handle 42 be integrally formed with the lid 40 . The handle 42 preferably has a slot 44 formed therein by a pair of generally parallel side walls 44 a extending upwardly from the top surface of the lid 40 . Further aspects of the slot 44 will be discussed in greater detail below.
Referring again to FIGS. 1 and 2 , the slow cooker 10 further includes a utensil 50 for manipulating the foodstuff within the cooking pot 30 . The utensil 50 is preferably a large serving spoon or ladle, although the utensil may be of another type, such as a fork, spatula, or the like. The spoon 50 is preferably removably engagable with the handle 42 of the lid 40 . Specifically, the slot 44 of the handle 42 is preferably appropriately sized and shaped to accept at least a portion of the spoon 50 . Preferably, the spoon 50 includes a bowl 50 a attached at one end of a stem or handle 50 b. At least a portion of the handle 50 b is sized to fit within the slot 44 so that the spoon 50 can rest within the slot 44 on top of the lid 40 in a storage or resting position, as shown in FIG. 1 . The side walls 44 a of the slot 44 preferably each include at least one detent or protrusion 44 b extending inwardly therefrom to at least assist in retaining the spoon 50 within the slot 44 .
It is preferable that each side wall 44 a include two spaced apart protrusions 44 b extending inwardly therefrom which engage the handle 50 b of the spoon 50 with a snap fit to retain the spoon 50 within the slot 44 . While this configuration is preferred, the slot 44 may include more or less than four protrusions 44 b therein to retain the spoon 50 therein. Moreover, it is contemplated that the slot 44 include no protrusions and that the spoon 50 be retained within the slot 44 by a friction fit created between the side walls 44 a with the spoon 50 or that the spoon 50 merely rest within the slot 44 without any engagement thereof by the slot 44 . In either event, it is preferred that the spoon 50 be able to be removed from within the slot 44 with a minimal amount of force being applied to the spoon 50 by the user.
(当審訳:
蓋40は、好ましくは、その上部表面上に細長いハンドル42が、好ましくは卵形の蓋40の長軸にほぼ沿って配置されている。ハンドル42は、好ましくはポリマー材料から形成され、限定されないが、プラスチックのような、締結具、ボルト、ねじ、リベット、または他の適切なファスナによって蓋40に固定されている。あるいは、ハンドル42は、接着剤又は他の締結方法を使用して蓋40に固定されてもよいことが期待される。また、ハンドル42は、別個に形成され、蓋40に取り付けられることが好ましいが、本発明の精神および範囲内のものである蓋40は、プラスチックなどの高分子材料を用いることが好ましく、ハンドル42は、蓋40と一体的に形成することができる。ハンドル42は、蓋40の上面から上方に延びるほぼ平行な一対の側壁44aによって形成されたスロット44を有することが好ましい。さらに、スロット44の側面については、以下でより詳細に説明する。
再び図1及び図2を参照すると、スロー・クッカー10はさらに、調理鍋30の中で食材を操作するための器具50を含む。器具50は、給仕用スプーンや取鍋であり、器具は別のタイプであってもよいが、フォーク、ヘラ等である。スプーン50は、蓋40のハンドル42に取り外し可能に係合される。具体的には、ハンドル42のスロット44はスプーン50の少なくとも一部分を受容するようなサイズおよび形状であることが好ましい。好ましくは、スプーン50は、柄又はハンドル50bの一方の端部に取り付けられたくぼみ50aを備えている。柄50bの少なくとも一部分は、スロット44内に嵌合するように寸法決めされ、スプーン50は、図1のように蓋40の最上位の保管位置すなわち静止位置にあってスロット44内に載置され得るようになる。スロット44の側壁44aは、それぞれ、少なくともスプーン50をスロット44内に保持するのを補助するためにそこから内側に延在する少なくとも1つの戻り止めまたは突出部44bが設けられている。
なお、各側壁44aは、そこから内向きに延在する2本の離間した突起44bがスプーン50の柄50bと係合するスナップ嵌めでスロット44内でスプーン50を保持することを含むことを特徴とする。この構成は好適であるが、スロット44はスプーン50を保持するためにその中に4個よりも多い又は少ない突起44bを含むことができる。また、スロット44は、突起を含まないこと及びスプーン50は、スプーン50と側壁44aとの間に形成された摩擦嵌めによってスロット44内に保持されること、又はスプーン50はスロット44により係合することなくスロット44内に留まることが意図されている。いずれにせよ、使用者がスプーン50に付与する力の量を最小にして、スプーン50をスロット44内から取り出すことが可能であることが好適である。)」(段落[0024]?[0026])

・「

」(Fig.1)

・「

」(Fig.2)

そして、Fig.1及びFig.2の記載も参照すると、調理鍋30は上部開放部を有し、蓋40は調理鍋30の上部開放部を覆うためのものであって調理鍋30の上部開放部を覆うような大きさであるといえる。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「調理鍋30の上部開放部を覆うための蓋40と、
前記蓋40に設けられたハンドル42と、を有し、
柄50b及びくぼみ50aを備えるスプーン50の柄50bを保持するための前記ハンドル42に設けられたスロット44を有し、
前記スロット44は、スロット44を形成する一対の側壁44aを含み、前記一対の側壁44aは、前記スロット44に載置された柄50bと側壁44aから内向きに延在する2本の離間した突起44bで係合し、
上部開放部を有する調理鍋30が設けられ、前記蓋40は、前記上部開放部を覆うような大きさである
スロー・クッカー10。」

2.引用文献2について
また、原査定及び当審の拒絶の理由に引用された引用文献2(実願昭57-151812号(実開昭59-55928号)のマイクロフィルム)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「本考案は鍋等の蓋のつまみに関する。
従来、調理時において鍋の蓋をずらしておたま杓子や調理箸を差し入れているが、鍋と蓋との間に隙間ができて、調理の条件等によつてはあまり感心できるものではなく、又鍋の縁上に調理箸等を置くこともあつたが、バランス悪いことから転げ落ちることが多く、再び洗い直さなければならず、甚だ不便なものであつた。
そこで、本考案は、上記事情に鑑み、上面に、置き溝を設けて、この置き溝に調理箸やおたま杓子等の調理具を差し込み載置することができて、この載置で不用意に落下せず、しかも調理に際して片手で摘み上げることができる鍋等の蓋のつまみを提供することを目的とする。
以下本考案は鍋等の蓋のつまみの一実施例を図面に基づき説明する。第1図乃至第3図において、1はつまみである。このつまみ1は基部2と載置部3とからなつている。基部2の下端にはネジ孔4が形成されている。一方載置部3は基部2より径大に形成され、かつ一部が外方に向つて突出されており、又上面が平坦に形成されていると共に、その上面には一側から中心部を径て前記突出部3aの先端に至る1条の置き溝5が形成されている。この置き溝5の幅は調理箸の径やおたま杓子の柄の幅、その他のつまみ1に載置すべき調理具の柄の幅に見合うように形成しておく。置き溝5内の角5aはアールを付けて、汚れの洗い流しが容易にできるようにしておく。そして、第1図に示すように上記つまみ1を鍋の蓋6の表面に位置させ、次で、その蓋6の裏面側より、ビス7を蓋6の孔8内に挿通させた後、このビス7を前記ネジ孔4にネジ込んで、蓋6につまみ1を取り付けるものである。
しかして、第4図に示すように、鍋9により調理する場合、使用の休断時にはおたま杓子10の柄10aの部分を前記蓋6のつまみ1に設けた置き溝5にその都度嵌挿させれば、そのおたま杓子10が蓋6上に安定良く載置できる。この他、調理箸等の調理具も載置できることはもとよりである。おたま杓子10の場合には、柄10aの握り部10bが断熱性を持たせるべく合成樹脂により形成されて、重心が柄10aの中央より握り部10b側に片寄つた位置にあることが多いため、突出部3a側の置き溝5に握り部10b側の柄10aを載置し、又おたま部10cを蓋6の縁部に載置すれば、バランス良くおたま杓子10を載置できて、不用意に落下することもない。又つまみ1を持つ際に、突出部3aの存在によつて形状が大きくなり、かつ握つた時に突出部3aが手の平に当たつて、蓋6がぐらつかず非常に用い易い。一方第5図に示すように調理の途中や調理の完了後、蓋6を取つて調理台11に裏返しに置く際に、つまみ1の上面が広いことから、水平に置くことが可能となり、かつ安定であることから、従来のように蓋6の外縁が調理台に接した斜めに置く場合に比して、蓋6の内面に結露した水滴が調理台11上に流下して、その調理台11あるいはテーブル等を汚すといつたことを効果的に防止できる。
尚、本考案は上記実施例の突出部3aを有するつまみ1の他に、既に市販されているつまみに前記のような置き溝5を設けるのみで、同一の目的が達成でき、又つまみの形状も図示のものに限るものではなく、様々な形状のものにそのまま適用でき、しかも1条の置き溝5に限るものではなく、数条設けてもよいことは勿論である。
以上のように本考案に係る鍋等の蓋のつまみによれば、調理時に使用する著等を一時的につまみの置き溝内に嵌挿させて安定良く載置することができ、しかも箸等の調理具を使用する際には片手で容易に摘み取ることができ、かつ他の片手で蓋を摘み上げることもできることから、頗る便利であり、又従前の蓋にも着脱可能なつまみであれば容易に交換できる等の効果を有する。」(明細書1頁8行?5頁5行)

・「

」(第3図)

・「

」(第4図)

そして、第3図及び第4図の記載も参照すると、鍋は上部開放部を有し、その蓋は鍋等の上部開放部を覆うような大きさであるといえ、置き溝は間隔を置いて配置された一方の側壁と他方の側壁と、両側壁間の底壁とで構成されるといえる。

したがって、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「鍋の上部開放部を覆うための蓋と、
前記蓋に設けられたつまみと、を備え、前記つまみは、前記蓋に取り付けられた基部と、突出部と、を備え、
柄及びおたま部を有するおたま杓子の柄を嵌挿させて安定良く載置するための前記つまみに設けられた置き溝を有し、
前記置き溝は、一方の側壁と、該一方の側壁から間隔を置いて配置された他方の側壁とを含み、前記一方の側壁及び他方の側壁は、前記置き溝に位置付けられた柄が嵌挿し、
上部開放部を有する鍋が設けられ、前記蓋は、前記鍋の前記上部開放部を覆うような大きさである
鍋と蓋。」

第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)引用発明1について
(1-1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明1における「調理鍋30」、「蓋40」、「ハンドル42」、「有(し)」する態様、「柄50b」、「くぼみ50a」、「備える」態様、「スプーン50」、「一対の側壁44a」、「載置された」態様、「側壁44aから内向きに延在する2本の離間した突起44bで係合(し)」する態様、「スロー・クッカー10」は、本願発明1における「容器」、「蓋」、「蓋ハンドル」、「備え」る態様、「ハンドル」及び「用具ハンドル」、「機能端」、「有する」態様、「用具」、「第1の側部と、第1の側部から間隔を置いて配置された第2の側部(と)」及び「第1の側部及び第2の側部」、「位置付けられた」態様、「係合(し)」する態様、「調理器具」に、それぞれ相当する。また、引用発明1における「スロット44」は本願発明1における「用具ハンドル固定要素」に相当し、本願発明1における「貫通スロット」と引用発明1における「スロット44」とは「スロット」の限りにおいて一致している。

したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「容器の上部開放部を覆うための蓋と、
前記蓋に設けられた蓋ハンドルと、を備え、
ハンドル及び機能端を有する用具の用具ハンドルを保持するための前記蓋ハンドルに設けられた用具ハンドル固定要素を有し、
前記蓋ハンドルのスロットは、第1の側部と、第1の側部から間隔を置いて配置された第2の側部とを含み、前記第1の側部及び第2の側部は、前記スロットに位置付けられた用具ハンドルと係合し、
上部開放部を有する容器が設けられ、前記蓋は、前記上部開放部を覆うような大きさである
調理器具。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は「蓋ハンドルは、前記蓋に取り付けられた第1の端部と、第2の自由端と、を備え」という構成を備えるのに対し、引用発明1はそのような構成を備えていない点。

(相違点2)本願発明1では、「蓋ハンドル上に設けられ」た「用具置きをさらに備え、前記用具置きは、前記蓋ハンドルの上面に用具ハンドル置き要素を有し、前記用具置きは、前記蓋ハンドル上に用具機能端静止要素を有し」、「スロット」は「用具置き」が有する「用具ハンドル固定要素」に含まれる「貫通スロット」であるのに対し、引用発明1では、「スロット」が「スロット」であって、そのような構成を備えていない点。

(1-2)相違点についての判断
上記相違点2について検討すると、相違点2に係る本願発明1の「スロット」は「用具置き」が有する「用具ハンドル固定要素」に含まれる「貫通スロット」である構成は、本願の明細書の発明の詳細な説明に記載された「図4及び5の異なる使用位置に示すように、ハンドル114及び機能端118を有する用具110は、図示のようにハンドル60上に載ることができる」(【0015】)ように、「ユーザが用具を複数の静止位置に置くことができる、ハンドル及び用具置きを有する蓋を提供する」(【0005】)ための構成と理解でき、「貫通スロット」は上記引用文献2に記載されていない。なお、本願の図4及び図5は次のとおりである。





したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1及び上記引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)引用発明2について
(2-1)対比
本願発明1と引用発明2とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明2における「鍋」、「つまみ」、「基部」、「突出部」、「柄」、「おたま部」、「おたま杓子」、「嵌挿させて安定良く載置する」、「一方の側壁」、「他方の側壁」、「置き溝に位置付けられた柄が嵌挿(し)」する態様、「鍋と蓋」は、本願発明1における「容器」、「蓋ハンドル」、「第1の端部」、「第2の自由端」、「用具ハンドル」、「機能端」、「用具」、「保持する」、「第1の側部」、「第2の側部」、「用具ハンドルと係合(し)」する態様、「調理器具」に、それぞれ相当する。また、引用発明2における「置き溝」は本願発明1における「用具ハンドル固定要素」に相当し、本願発明1における「貫通スロット」と引用発明2における「置き溝」とは「スロット」の限りにおいて一致している。

したがって、本願発明1と引用発明2との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「容器の上部開放部を覆うための蓋と、
前記蓋に設けられた蓋ハンドルと、を備え、前記蓋ハンドルは、前記蓋に取り付けられた第1の端部と、第2の自由端と、を備え、
ハンドル及び機能端を有する用具の用具ハンドルを保持するための前記蓋ハンドルに設けられた用具ハンドル固定要素を有し、
前記蓋ハンドルのスロットは、第1の側部と、該第1の側部から間隔を置いて配置された第2の側部とを含み、前記第1の側部及び第2の側部は、前記スロットに位置付けられた用具ハンドルと係合し、
上部開放部を有する容器が設けられ、前記蓋は、前記容器の前記上部開放部を覆うような大きさである
調理器具。」

(相違点)本願発明1では、「蓋ハンドル上に設けられ」た「用具置きをさらに備え、前記用具置きは、前記蓋ハンドルの上面に用具ハンドル置き要素を有し、前記用具置きは、前記蓋ハンドル上に用具機能端静止要素を有し」、「スロット」は「用具置き」が有する「用具ハンドル固定要素」に含まれる「貫通スロット」であるのに対し、引用発明2では、「スロット」は「置き溝」であって、そのような構成を備えていない点。

(2-2)相違点についての判断
上記相違点について検討すると、相違点に係る本願発明1の「スロット」は「用具置き」が有する「用具ハンドル固定要素」に含まれる「貫通スロット」であるという構成は、先に「相違点2」について検討したのと同様であって、上記引用文献1に記載されていない。
したがって、本願発明1は上記引用文献2に記載された発明ではなく、また、本願発明1は、当業者であっても、引用発明2に基いて、さらには引用発明2及び上記引用文献1に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし4について
(1)引用発明1について
本願発明2ないし4も、本願発明1の「スロット」は「用具置き」が有する「用具ハンドル固定要素」に含まれる「貫通スロット」であるという構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び上記引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)引用発明2について
本願発明2ないし4も、本願発明1の「スロット」は「用具置き」が有する「用具ハンドル固定要素」に含まれる「貫通スロット」であるという構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明2に基いて、さらには引用発明2及び上記引用文献1に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、平成28年8月16日の手続補正により補正された請求項1ないし4に係る発明について、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、平成30年10月1日の手続補正により補正された請求項1ないし4は、それぞれ「スロット」は「用具置き」が有する「用具ハンドル固定要素」に含まれる「貫通スロット」であるという構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1ないし4は、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審の拒絶の理由について
1.特許法第36条第6項第1号について
当審では、請求項1には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年10月1日の手続補正において、「貫通スロット」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

2.特許法第36条第6項第2号について
当審では、請求項1、3及び4に記載された「用具機能端置き要素」が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年10月1日の手続補正において、「用具機能端静止要素」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

3.特許法第29条第1項第3号又は第29条第2項について
当審では、請求項1に係る発明について、上記引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないとの拒絶の理由を通知している。また、請求項1ないし4に係る発明については、上記引用文献2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとの拒絶の理由を通知している。しかしながら、上記のとおり、本願発明1は、上記引用文献2に記載された発明ではないし、本願発明1ないし4は、上記引用文献2に記載された発明に基いて、さらには上記引用文献2に記載された発明及び上記引用文献1に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、この拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし4は、当業者が引用発明1及び上記引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-01-28 
出願番号 特願2015-143859(P2015-143859)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A47J)
P 1 8・ 121- WY (A47J)
P 1 8・ 113- WY (A47J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 土屋 正志  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 槙原 進
田村 嘉章
発明の名称 用具置き付きハンドルを有する蓋を含む調理器具  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 山本 泰史  
代理人 松下 満  
代理人 弟子丸 健  
代理人 田中 伸一郎  

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