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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N
管理番号 1348388
審判番号 不服2017-10305  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-11 
確定日 2019-01-30 
事件の表示 特願2016-510709「振動式センサ用に駆動信号を生成する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月30日国際公開、WO2014/176122、平成28年 6月23日国内公表、特表2016-518606〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)4月18日(パリ条約による優先権主張 2013年4月23日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年10月24日付けで拒絶理由が通知され、平成29年1月25日付けで意見書及び誤訳訂正書が提出され、同年3月9日付けで拒絶査定されたところ、同年7月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
その後当審において平成30年3月19日付けで拒絶理由が通知され、同年7月11日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?17に係る発明は、平成30年7月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定されたものであって、その請求項1に係る発明は、次のとおりであると認める。
「 【請求項1】
振動式センサ(5)の駆動信号を生成する方法(600)であって、
振動信号を付与するように構成された振動要素(104、510)を振動させる工程と、
受信回路(134)を用いて前記振動要素(104、510)から振動信号を受信する工程と、
前記受信回路(134)及び前記振動要素(104、510)に連結された駆動回路(138)を用いて、前記振動要素(104、510)を振動させる駆動信号を生成する工程と、
生成された駆動信号の位相を振動信号の位相と比較する工程と、
生成された駆動信号の位相と振動信号の位相との比較からコマンド周波数ωを決定する工程と、
駆動回路(138)内の開ループ駆動部(147)内の信号生成器(147c)にコマンド周波数ωを供給する工程とを備え、
前記駆動信号は駆動回路(138)内の開ループ駆動部(147)の信号生成器(147c)によってコマンド周波数ωにて生成される、方法(600)。」(以下、「本願発明1」という。)

第3 当審における拒絶の理由の概要
1.(明確性)本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

3.(新規性)本件出願の請求項1に係る発明は、その優先権主張日前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由1
請求項1には「前記駆動信号は駆動回路(138)内の開ループ駆動部(147)によって生成される、」と記載されている。

しかしながら、「開ループ駆動部(147)」がどのような構成であるのか、また、「開ループ駆動部(147)」が「前記駆動信号」をどのように生成するのか明確でない。

したがって、請求項1に係る発明は、明確でない。
請求項1を直接または間接的に引用する請求項2?9も同様である。
カテゴリーを物の発明から方法の発明に変えた請求項10も同様である。
請求項11を直接または間接的に引用する請求項11?18も同様である。

理由3
引用文献1:特表2004-511771号公報

第4 当審の判断
1 理由1 (明確性) (特許法第36条第6項第2号)について
上記拒絶理由に対する請求人の意見書による主張は、「請求項1に係る発明にて、開ループ駆動部(147)内が信号生成器(147c)を備える旨、駆動信号は信号生成器(147c)によってコマンド周波数ωにて生成される旨を明らかにした。」である。
上記主張によっても、「駆動部」の限定事項である「開ループ」がどのような技術事項を示すのかは、未だ、明らかにされておらず、請求項1の「開ループ駆動部(147)」が示す技術事項は明らかでない。
したがって、請求項1に係る発明は明確でないから、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない。

2 理由3 (新規性)(特許法第29条第1項第3号)について
(1)本願発明1は、上記第2に摘記した【請求項1】に記載されたものであるが、そのうち、「開ループ駆動部(147)」については、上記1で検討したとおり必ずしも明確であるとはいえない。
そこで、本願明細書の記載を参照する。
本願明細書には、
「【0030】
駆動回路138は、振動要素104用の駆動信号を生成する。駆動回路138は、生成された駆動信号の特性を修正する。周囲の流体によって影響を受けるように、振動要素104は略共振振動数に維持される。駆動回路138は開ループ駆動部147を含む。開ループ駆動部147は駆動回路138によって用いられて、駆動信号を生成し、生成された駆動信号を振動要素104に(例えば、第1ピエゾ要素122に)供給する。幾つかの実施形態では、開ループ駆動部147は、最初の周波数ω0で開始して、目標位相差φtに達する駆動信号を生成する。開ループ駆動部147は振動信号からのフィードバックに基づいて作動しない。従って、開ループ駆動部147は、下記により詳細に記述されるように、振動信号を濾過することによりノイズの無い生成された駆動信号を時間遅れなしで供給する。」、
「【0035】
測定された位相差φmは目標位相差φtと比較される。目標位相差φtは振動信号と生成された駆動信号の所望の位相差である。実施形態にて、目標位相差φtが約45°であれば、測定された位相差φmと目標位相差φtとの差は、測定された位相差φmが45°と同じ又は約45°であれば、ゼロである。しかし、代替の実施形態では、あらゆる適切な目標位相差φtが用いられ得る。測定された位相差φmと目標位相差φtとの比較を用いて、位相検知器147bはコマンド周波数ωを生成することが出来る。
【0036】
コマンド周波数ωは駆動信号を生成するのに用いられる。更に又は或いは、測定された位相差φmと目標位相差φt間の比較からは決定されない最初の周波数ω0が用いられる。最初の周波数ω0は、最初に生成された駆動信号を形成するのに用いられる予め選択された周波数である。最初に生成された駆動信号が上記の如く、サンプリングされ、サンプリングされた振動信号と比較される。最初に生成された駆動信号のサンプルと振動信号のサンプルの比較は、コマンド周波数ωを生成するのに用いられる。あらゆる適切な単位も使用することができるが、コマンド周波数ωと最初の周波数ω0は、ラジアン/秒の単位を有する。コマンド周波数ω又は最初の周波数ω0は、信号生成器147cに供給される。」、
「【0049】
ステップ640で、測定された位相差φmは目標位相差φtと比較される。上記に記載の実施形態にて、目標位相差φtは45°である。比較結果が測定された位相差φmが目標位相差φtと同じであることを示せば、方法600はステップ660にてコマンド周波数ω又は最初の周波数ω0と同じ駆動信号を生成し続ける。測定された位相差φmが目標位相差φtと同じでなければ、ステップ650にてコマンド周波数ωが決定される。
【0050】
ステップ650で、コマンド周波数ωは測定された位相差φmから決定される。例えば、上記に記載の実施形態にて、測定された位相差φmが目標位相差φtよりも小さければ、コマンド周波数ωが増加される。しかし、代替の実施形態において、コマンド周波数ωは代替の手段を用いて測定された位相差φmから決定される。これらの又は他の実施形態において、コマンド周波数ωはステップ660にて駆動信号を生成するのに用いられる。」
という記載事項があり、これら記載事項から、「開ループ駆動部(147)」は、最初の周波数ω0で開始して、目標位相差φtに達する駆動信号を生成するものであり、測定された位相差φmと目標位相差φtを比較して、測定された位相差φmが目標位相差φtよりも小さければ、コマンド周波数ωを増加して、信号生成器147cに供給するという動作を行うものであると解するのが相当である。
したがって、以下、本願発明1の「開ループ駆動部(147)」は上記のように解釈して、検討を続ける。

(2) 引用刊行物及びその記載事項
ア 本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特表2004-511771号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

(ア)「【0001】
本発明は、振動可能なユニット、駆動/受信ユニット及び制御/評価ユニットを有し、前記振動可能なユニットが容器内部の規定された測定位置内に配置されており、もしくは振動ユニットが、規定された浸漬深さまで媒体内に浸漬するように設置されており、かつ駆動/受信ユニットが振動可能なユニットを励振するかもしくは駆動/受信ユニットが振動可能なユニットの振動を受信する、容器内の媒体の粘度を測定及び/又は監視する装置に関する。」

(イ)「【0006】
本発明の課題は、振動検出器を容器内の媒体の粘度の測定及び/又は監視のために使用することである。」

(ウ)「【0023】
図2には、駆動信号と応答信号の間の周波数差dfに対する粘度ηの依存性が対数目盛を使用して図示されている。曲線族は、異なった位相シフトdf(φn-φm)(ここで、n,m∈N、n≠mである)におけるグラフである。所定の位相シフトdf(φn-φm)にける周波数変化dfは、粘度ηに対する明らかな依存性を示す。従って、本発明による装置1の第1の選択的実施例によれば少なくとも2つの所定の位相値φ1、φ2における周波数差dfを測定することにより、粘度ηを決定することが可能である。」

(エ)「【0025】
図4は、本発明による装置1の第1実施例のブロック図を示す。この第1実施態様によれば、漸進的に2つの所定の位相φ1、φ2が駆動振動と応答信号との間に設定される。両者の位相値φ1、φ2の設定は、以下になお詳細に説明する励振回路9を介して行われる。引き続き、位相値φ1、φ2と結合された周波数値f1、f2が決定される。引き続き、周波数変化df=f2-f1により、記憶されたデータを採用して媒体の粘度ηが算出される。この粘度測定のための第1のモードは、振動検出器を用いて予め決められた充填高さが達成されたことを確認することができるような方法と多くの類似性を有する。唯一の相異は、原理的に、充填面測定の場合には専ら振動可能なユニット2の固有周波数もしくは共振周波数が考慮されるが、一方粘度測定の場合には振動可能なユニット2の少なくとも2つの位相値φ1、φ2及び異なった周波数f1、f2及び/又は相応する周波数変化df=f2-f1が考慮される点にある。
【0026】
この高度の類似性に基づき、振動可能なユニット2を充填面、密度及び/又は粘度測定のためのユニバーサルセンサとして構成することも比較的に簡単に可能である。充填面は、既に述べたように、通常共振周波数frの監視により算出される。有利には、粘度ηの測定は、2つの互いに異なる位相値φ1、φ2を設定しかつ相応する周波数及び/又は相応する周波数変化df=f2-f1を算出することにより行われる。所定の位相値φ1、φ2における周波数変化df=f2-f1は、関数的に粘度ηに依存する。
【0027】
振動可能なユニット2は、図示の場合にはディスク状の圧電素子5、駆動電極6及び2つの受信電極7からなる圧電励振/受振ユニットを介して励振される。この場合には、圧電素子5は、振動可能なユニット2の機械的部分、即ち膜4と振動素子3、及び電気的部分、駆動電極6と受信電極7の間の界面の機能を担う。圧電素子5は、一方では電気駆動信号を機械信号に変換し、他方では機械信号を電気応答信号に変換する。もちろん、ディスク状圧電素子5の代わりにいわゆるスタック駆動装置を使用することができることは自明なことである。」

(オ)「【0030】
本発明による装置1の選択的実施例によれば、周波数fは所定の周波数帯域内で変化される。従って、振動可能なユニット2は異なった周波数で駆動される(→周波数掃引)。異なった周波数には、異なった位相値が配属されている。一定の周波数帯域の連続的経過は図6にグラフで示されている。図7には、この本発明による装置1のブロック図が示されている。
【0031】
この本発明による装置の第2実施例においては、周波数掃引中に、予め固定された位相値φ1、φ2に属する2つの周波数f1、f2が局在化される。具体的には、この目的のための一定の周波数範囲f1、f2が連続的ステップにおいて掃引される。予め固定された位相値φ1、φ2が測定されるや否や、位相値φ1、φ2に属する周波数f1、f2が算出される。引き続き、周波数差df=f2-f1に基づき、媒体の粘度ηが決定される。
【0032】
振動可能なユニット2は、信号発生器19によって所定の周波数及び有利には所定の振幅の駆動信号Txで励振される。駆動信号Txは、信号マッチングユニット18に供給され、該ユニットは信号を、受信ユニット21で読み取ることができるように処理する。従って、受信ユニット21は振動可能なユニット2の応答信号Rxを受信し、位相メータ22は駆動信号と応答信号の間の相応する位相シフトを決定する。制御ユニット20は、周波数変化dfを算出するための全プロセスに対して応答可能である。これは位相比較を実施し、信号発生器19の周波数を制御しかつ最後に相応する周波数差dfを計算する。引き続き、算出された周波数変化dfにより、コンバータ23内で媒体の粘度ηが決定される。このために、記憶されたテーブル値、特性曲線又は式が使用される。」

(カ)
図4


図6


図7


(キ)認定事項1
段落【0031】の「周波数掃引中に、予め固定された位相値φ1、φ2に属する2つの周波数f1、f2が局在化される。具体的には、この目的のための一定の周波数範囲f1、f2が連続的ステップにおいて掃引される。予め固定された位相値φ1、φ2が測定されるや否や、位相値φ1、φ2に属する周波数f1、f2が算出される。」が示す技術事項が必ずしも明確であるとはいえないところ、段落【0030】の「周波数fは所定の周波数帯域内で変化される。従って、振動可能なユニット2は異なった周波数で駆動される(→周波数掃引)。」との記載、段落【0031】?【0032】の記載、図4、6及び7、並びに、引用文献1の他の全記載を参照すると、「駆動信号Tx」の「周波数f」を「所定の周波数帯域内で」「連続的ステップ」で掃引し、「周波数f」での「駆動信号と応答信号の間の相応する位相シフト」が「予め固定された位相値φ1、φ2」であれば、これら「位相値φ1、φ2」に相応する周波数fを、それぞれ、「周波数f1、f2」とする技術事項であると解するのが相当である。

(ク)認定事項2
段落【0032】の「駆動信号Txは、信号マッチングユニット18に供給され、該ユニットは信号を、受信ユニット21で読み取ることができるように処理する。従って、受信ユニット21は振動可能なユニット2の応答信号Rxを受信し、位相メータ22は駆動信号と応答信号の間の相応する位相シフトを決定する。」が示す技術事項が必ずしも明確であるとはいえないところ、図4、6及び7、並びに、引用文献1の他の全記載を参照すると、「駆動信号Tx」及び「振動可能なユニット2の応答信号Rx」は、「信号マッチングユニット18に供給され、」該「信号マッチングユニット18」は、「駆動信号Tx」及び「応答信号Rx」を「受信ユニット21で読み取ることができるように処理」し、「位相メータ22は駆動信号と応答信号の間の相応する位相シフトを決定する」という技術事項であると解するのが相当である。

(3) 引用発明
上記(ア)?(カ)の記載と、(キ)?(ク)の認定事項を踏まえれば、以下の上記引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「振動可能なユニット2を異なった周波数fで駆動する周波数掃引方法であって、
振動可能なユニット2は、信号発生器19によって所定の周波数fの駆動信号Txで励振され、
駆動信号Tx及び振動可能なユニット2の応答信号Rxは、信号マッチングユニット18に供給されて、該信号マッチングユニット18は、駆動信号Tx及び応答信号Rxを受信ユニット21で読み取ることができるように処理し、位相メータ22は駆動信号と応答信号の間の相応する位相シフトを決定し、
制御ユニット20は、周波数変化dfを算出するための全プロセスに対して応答可能であり、位相比較を実施し、信号発生器19を制御して、駆動信号Txの周波数fを所定の周波数帯域内で連続的ステップで掃引し、周波数fでの駆動信号と応答信号の間の相応する位相シフトが予め固定された位相値φ1、φ2であれば、これら位相値φ1、φ2に相応する周波数fを、それぞれ、周波数f1、f2とする、周波数掃引方法。」(以下、「引用発明」という。)

(4) 対比・判断
本願発明1と引用発明とを対比する(下線は当審で付与した。)。

ア 引用発明の「振動可能なユニット2」、「周波数f」、「駆動信号Tx」、「応答信号Rx」、「受信ユニット21」及び「信号発生器19」は、それぞれ、本願発明1の、「振動要素(104、510)」、「コマンド周波数ω」、「駆動信号」、「振動信号」、「受信回路(134)」及び「信号生成器(147c)」に相当する。
また、引用発明の「信号発生器19」、「制御ユニット20」及び「位相メータ22」は、本願発明1の「駆動回路(138)」相当し、さらに、引用発明の「振動可能なユニット2」、「信号マッチングユニット18」、「信号発生器19」、「制御ユニット20」及び「位相メータ22」は、本願発明1の「振動式センサ(5)」に相当する。

イ 振動センサで粘度を測定する方法に用いられる引用発明では、「振動可能なユニット2は、」「駆動信号Txで励振され」ると、「駆動信号Tx」より位相が遅れた「応答信号Rx」を生じることは、技術常識から明らかである。
また、引用発明では、「位相メータ22は駆動信号と応答信号の間の相応する位相シフトを決定」するのであるから、「該信号マッチングユニット18は、駆動信号Tx及び応答信号Rxを受信ユニット21で読み取ることができるように処理」した後に、「受信ユニット21」が、「駆動信号Tx及び応答信号Rx」を受信することは自明である。
すると、引用発明の「振動可能なユニット2は、」「駆動信号Txで励振され、駆動信号Tx及び振動可能なユニット2の応答信号Rxは、信号マッチングユニット18に供給されて、該信号マッチングユニット18は、駆動信号Tx及び応答信号Rxを受信ユニット21で読み取ることができるように処理」することは、本願発明1の「振動信号を付与するように構成された振動要素(104、510)を振動させる工程と、受信回路(134)を用いて前記振動要素(104、510)から振動信号を受信する工程」に相当する。


ウー1 本願発明1の「生成された駆動信号の位相を振動信号の位相と比較する工程と、生成された駆動信号の位相と振動信号の位相との比較からコマンド周波数ωを決定する工程と、駆動回路(138)内の開ループ駆動部(147)内の信号生成器(147c)にコマンド周波数ωを供給する工程とを備え、前記駆動信号は駆動回路(138)内の開ループ駆動部(147)の信号生成器(147c)によってコマンド周波数ωにて生成される」は、
「前記受信回路(134)及び前記振動要素(104、510)に連結された駆動回路(138)を用いて、前記振動要素(104、510)を振動させる駆動信号を生成する工程」を、より詳細に特定する記載であると認められる。
この「より詳細に特定する記載」のうち、上述のとおり、「開ループ駆動部(147)」が示す事項は必ずしも明らかではなく、さらに、「生成された駆動信号の位相と振動信号の位相との比較からコマンド周波数ωを決定する」において、比較からどのように決定するのかが具体的に特定されていないところ、上記(1)での検討を参照すると、
本願発明1の「前記受信回路(134)及び前記振動要素(104、510)に連結された駆動回路(138)を用いて、前記振動要素(104、510)を振動させる駆動信号を生成する工程と、生成された駆動信号の位相を振動信号の位相と比較する工程と、生成された駆動信号の位相と振動信号の位相との比較からコマンド周波数ωを決定する工程と、駆動回路(138)内の開ループ駆動部(147)内の信号生成器(147c)にコマンド周波数ωを供給する工程とを備え、前記駆動信号は駆動回路(138)内の開ループ駆動部(147)の信号生成器(147c)によってコマンド周波数ωにて生成される」と記載された技術事項には、
「駆動回路(138)」内の「開ループ駆動部(147)」は、最初の周波数ω0で開始して、目標位相差φtに達する駆動信号を生成するものであり、あるコマンド周波数ωにおける測定された位相差φmと目標位相差φtを比較して、測定された位相差φmが目標位相差φtよりも小さければ、コマンド周波数ωを増加して、この増加したコマンド周波数ωを「開ループ駆動部(147)」内の「信号生成器(147c)」に供給し、「信号生成器147c」が駆動信号を生成するという動作を行うという具体的な工程が含まれると認められる。

ウー2 一方、引用発明の「振動可能なユニット2は、信号発生器19によって所定の周波数fの駆動信号Txで励振され」ること、「制御ユニット20は、周波数変化dfを算出するための全プロセスに対して応答可能であり、位相比較を実施し、信号発生器19を制御して、駆動信号Txの周波数fを所定の周波数帯域内で連続的ステップで掃引し、周波数fでの駆動信号と応答信号の間の相応する位相シフトが予め固定された位相値φ1、φ2であれば、これら位相値φ1、φ2に相応する周波数fを、それぞれ、周波数f1、f2とする」ことは、まず、「信号発生器19」は所定の周波数fの駆動信号Txを発生するものであり、「制御ユニット20」は、ある「周波数f」で「掃引」を開始し、その周波数fでの駆動信号と応答信号の間の相応する位相シフトが予め固定された位相値φ1、φ2となるように、周波数fでの位相シフトと予め固定された位相値φ1、φ2と比較して、両者が異なれば、周波数fを連続的に増加(または減少)させていくという動作を含むことは明らかである。

ウー3 上記ウー1、ウー2において、引用発明の、ある「周波数f」で「掃引」を開始し、その周波数fでの駆動信号と応答信号の間の相応する位相シフトが予め固定された位相値φ1、φ2となるように、周波数fでの位相シフトと予め固定された位相値φ1、φ2と比較して、両者が異なれば、周波数fを連続的に増加(または減少)させていくことは、本願発明1の、最初の周波数ω0で開始して、目標位相差φtに達する駆動信号を生成するものであり、あるコマンド周波数ωにおける測定された位相差φmと目標位相差φtを比較して、測定された位相差φmが目標位相差φtよりも小さければ、コマンド周波数ωを増加していくことに相当する。
また、引用発明の「信号発生器19」は、所定の周波数fの駆動信号Txを発生することは、本願発明1の、この増加したコマンド周波数ωを「開ループ駆動部(147)」内の「信号生成器(147c)」に供給し、「信号生成器147c」が駆動信号を生成することに相当する。

ウー4 上記ウー1?ウー3での検討から、引用発明の「振動可能なユニット2は、信号発生器19によって所定の周波数fの駆動信号Txで励振され、」「制御ユニット20は、周波数変化dfを算出するための全プロセスに対して応答可能であり、位相比較を実施し、信号発生器19を制御して、駆動信号Txの周波数fを所定の周波数帯域内で連続的ステップで掃引し、周波数fでの駆動信号と応答信号の間の相応する位相シフトが予め固定された位相値φ1、φ2であれば、これら位相値φ1、φ2に相応する周波数fを、それぞれ、周波数f1、f2とする」ことは、本願発明1の「前記受信回路(134)及び前記振動要素(104、510)に連結された駆動回路(138)を用いて、前記振動要素(104、510)を振動させる駆動信号を生成する工程と、生成された駆動信号の位相を振動信号の位相と比較する工程と、生成された駆動信号の位相と振動信号の位相との比較からコマンド周波数ωを決定する工程と、駆動回路(138)内の開ループ駆動部(147)内の信号生成器(147c)にコマンド周波数ωを供給する工程とを備え、前記駆動信号は駆動回路(138)内の開ループ駆動部(147)の信号生成器(147c)によってコマンド周波数ωにて生成される」ことに相当するといえる。

エ 引用発明の「周波数掃引方法」は、「周波数f」を「掃引」して、該「周波数f」の「駆動信号Tx」を生成するものであり、その「駆動信号Tx」で「振動可能なユニット2」を励振させ、その「応答信号Rx」と「駆動信号Tx」とから、「制御ユニット20」が「周波数変化df」を算出するのであるから、引用発明の「振動可能なユニット2」、「信号マッチングユニット18」、「信号発生器19」、「制御ユニット20」及び「位相メータ22」は、「駆動信号Tx」で駆動されているといえる。
すると、引用発明の「周波数掃引方法」は、本願発明1の「振動式センサ(5)の駆動信号を生成する方法」に相当する。

そうすると、本願発明1と引用発明とは、
「振動式センサ(5)の駆動信号を生成する方法(600)であって、
振動信号を付与するように構成された振動要素(104、510)を振動させる工程と、
受信回路(134)を用いて前記振動要素(104、510)から振動信号を受信する工程と、
前記受信回路(134)及び前記振動要素(104、510)に連結された駆動回路(138)を用いて、前記振動要素(104、510)を振動させる駆動信号を生成する工程と、
生成された駆動信号の位相を振動信号の位相と比較する工程と、
生成された駆動信号の位相と振動信号の位相との比較からコマンド周波数ωを決定する工程と、
駆動回路(138)内の開ループ駆動部(147)内の信号生成器(147c)にコマンド周波数ωを供給する工程とを備え、
前記駆動信号は駆動回路(138)内の開ループ駆動部(147)の信号生成器(147c)によってコマンド周波数ωにて生成される、方法(600)。」で一致し、相違点はない。

(5) 小括
本願発明1は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定される発明に該当し、特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本願の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号の要件を満たしておらず、また、本願発明1は特許法第29条第1項第3号に規定される発明に該当し特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-08-31 
結審通知日 2018-09-05 
審決日 2018-09-20 
出願番号 特願2016-510709(P2016-510709)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北川 創  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
信田 昌男
発明の名称 振動式センサ用に駆動信号を生成する方法  
代理人 特許業務法人 有古特許事務所  

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