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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1348406
審判番号 不服2017-16149  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-31 
確定日 2019-02-19 
事件の表示 特願2013-161592「ウェハ搬送用装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月16日出願公開、特開2015- 32702、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年8月2日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 3月28日付け 拒絶理由通知
平成29年 6月 5日 意見書・手続補正
平成29年 7月25日付け 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成29年10月31日 審判請求・手続補正
平成30年 8月28日付け 拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由」という。)
平成30年11月12日 意見書・手続補正(以下,「当審補正」という。)

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願請求項1,2に係る発明は,以下の引用文献1ないし5に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,本願出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開平10-284585号公報
2.特開2001-116707号公報
3.特開2004-71728号公報
4.実願昭62-82157号(実開昭63-193841号)のマイクロフィルム
5.特開2012-23176号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
本願請求項1,2に係る発明は,以下の引用文献1,A及び2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開平10-284585号公報
A.特開2001-284430号公報
2.特開2001-116707号公報

第4 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は,当審補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
半導体製造用のウェハを収容するためのカセット本体から突出部が突出する構成のカセットを置くことが可能な,カセット台と,
前記カセット台に前記カセットが置かれたことを検出するためのカセット検出センサと,を備え,
前記カセット台に前記カセットが置かれた場合における前記カセットの向きを検出するための向き検出センサをさらに備え,
前記向き検出センサは,前記カセット台において前記カセットが上向き姿勢および下向き姿勢の何れか一方の前記姿勢にあるときに前記カセットを検出するように構成されており,かつ,前記カセットが他方の前記姿勢にあるときには前記カセットを検出しないように構成されており,
前記カセット検出センサと前記向き検出センサは互いに別個に設けられており,且つ,前記カセットの状態が制御部によって判定されるように構成されており,
前記制御部では,
前記カセット台に前記カセットが置かれたことを前記カセット検出センサが検出するとともに,前記カセットが下向き姿勢で前記カセット台に置かれたことを前記向き検出センサが検出していない場合に,前記カセットが上向きの姿勢で前記カセット台に置かれたと判定され,且つ,
前記カセット台に前記カセットが置かれたことを前記カセット検出センサが検出するとともに,前記カセットが下向き姿勢で前記カセット台に置かれたことを前記向き検出センサが検出した場合に,前記カセットが下向きの姿勢で前記カセット台に置かれたと判定され,
前記カセット検出センサおよび前記向きセンサは,何れも,前記カセット台に前記カセットが置かれたときに前記カセットの下方に位置するように配置されており,
前記カセット検出センサは,電気信号を発生するセンサの数が単一であり,
前記向き検出センサは,電気信号を発生するセンサの数が単一であることを特徴とする,ウェハ搬送用装置。
【請求項2】
請求項1に記載のウェハ搬送用装置であって,
前記カセット台は,当該カセット台に置かれた前記カセットの前記突出部との接触を回避するための接触回避部を有し,
前記向き検出センサは,前記接触回避部に進入した前記突出部を検出可能に構成されていることを特徴とする,ウェハ搬送用装置。
【請求項3】
請求項2に記載のウェハ搬送用装置であって,
前記突出部は,前記カセット本体に設けられ前記カセットを把持するための把持部を含み,
前記向き検出センサは,前記接触回避部に進入した前記把持部を検出するように構成されていることを特徴とする,ウェハ搬送用装置。」

第5 引用文献及び引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1
当審拒絶理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。以下同じ。)
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,半導体プロセス用ウエハキャリア及びこれを設置するウエハキャリア設置台に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図22は,従来のウエハキャリア100の構造を示す斜視図である。
(中略)
【0003】また,図23は,ウエハキャリア100を設置するためのウエハキャリア設置台200の構造を示す斜視図である。
(中略)
【0004】従来のウエハエッチング装置を用いてウエハの裏面に付着した付着物を除去する場合には,まずウエハが挿入されているウエハキャリア100からウエハを取り出し,次に取り出したウエハを搬送ロボットによって反転機構へ搬送し,その後反転機構でウエハを180°反転させてから,エッチング機構によってウエハの裏面のエッチングを行っていた。」
イ 「【0013】従来のウエハキャリア100においては下側壁50の外側のみにキャリア位置決め部70が設けられていたのに対し,図1に示すように本実施の形態1に係るウエハキャリア101においては下側壁51の外側だけでなく上側壁41の外側にも同一形状のキャリア位置決め部61を設けたため,上側壁41,下側壁51のいずれを下にしてもウエハキャリア101をウエハキャリア設置台201に固定することができる。従って,ウエハの表面8aが上を向いた状態からウエハの裏面8bが上を向くようにウエハ8を反転する際には,図2に示すように下側壁51を下にし,キャリア位置決め部71を溝9にはめ込んでウエハキャリア101をウエハキャリア設置台201に設置した状態から,図3に示すように上側壁41を下にし,キャリア位置決め部61を溝9にはめ込んでウエハキャリア101をウエハキャリア設置台201に設置することにより,ウエハ挿入部1に挿入されているウエハ8を一度にまとめて反転することができる。」
ウ 「【0028】実施の形態4.図13は,本発明の実施の形態4に係るウエハキャリア104の構造を示す斜視図である。本実施の形態4においては,実施の形態3で示したウエハキャリア103と同様のものを用いることができる。具体的には,ウエハ挿入部1と,突起2a,2b及び溝3a,3bと,上側壁44及び下側壁54と,キャリア位置決め部64,74とを備えるウエハキャリア104を用いることができる。
【0029】また,図14は,図13におけるウエハキャリア104の上側壁44及びキャリア位置決め部64を拡大して示す斜視図である。実施の形態3に係るウエハキャリア103と同様に,本実施の形態4に係るウエハキャリア104においても,上側壁44に溝11bが選択的に設けられている。
【0030】また,図15は,本発明の実施の形態4に係るウエハキャリア設置台204の構造の一部を示す斜視図である。基本的な構造は実施の形態3で使用したウエハキャリア設置台203と同様であるが,図11で示した突起10bの代わりにプッシュセンサー12aが設けられている点でこれと相違する。このプッシュセンサー12aは,自身と他のものとの接触を感知するとON状態となり,接触を感知しなければOFF状態となる。
【0031】なお,このプッシュセンサー12aは,ウエハキャリア設置台204の上面に固定されているのではなく,加重によってウエハキャリア設置台204の内部に自由に入出が可能である点で,実施の形態3で示した突起10bと異なる。
【0032】下側壁54を下にした状態でウエハキャリア104をウエハキャリア設置台204に設置した場合は,図16に示すようにプッシュセンサー12aはウエハキャリア104の下側壁54との接触を感知しつつウエハキャリア設置台204の内部に押し込まれ,ON状態となる。一方,図17に示すように,上側壁44を下にした状態でウエハキャリア104をウエハキャリア設置台204に設置した場合は,上側壁44に設けられた溝11bによりプッシュセンサー12aは上側壁44と接触せず,プッシュセンサー12aはOFF状態となる。これにより,プッシュセンサー12aがON状態になった場合はウエハの表面8aが上を向き,OFF状態になった場合はウエハの裏面8bが上を向いていることが分かる。」
エ 図16及び図17には,突出したキャリア位置決め部64,74がウエハキャリア設置台204の溝9にはめ込まれて設置されることが記載されていると認められる。
(2)引用発明
前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「突出したキャリア位置決め部を備えるウエハキャリアが設置されるウエハキャリア設置台であって,ウエハキャリア設置台の上面にプッシュセンサーが設けられ,下側壁を下にした状態でウエハキャリアをウエハキャリア設置台に設置した場合は,プッシュセンサーはON状態となり,一方,上側壁を下にした状態でウエハキャリアをウエハキャリア設置台に設置した場合は,プッシュセンサーはOFF状態となること。」
2 引用文献Aの記載
当審拒絶理由に引用された引用文献Aには,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は基板を収容するキャリアが載置されるキャリア載置装置に関する。」
「【0015】
【発明の実施の形態】図1は本発明のキャリア載置装置1を示す。キャリア載置装置1はキャリアCを載置する載置台3を有し,載置台3上の所定位置に第1ピン5a,第2ピン5b,第3ピン5cが突出している。(以下,第1ピン5a,第2ピン5b,第3ピン5cを総称してピン5という。)前記ピン5はそれぞれ,キャリアCの底部に設けられた第1ピン穴6a,第2ピン穴6b,第3ピン穴6cと嵌合可能であって,該ピン穴と嵌合することによって,キャリアCを位置決めする。(図1では第3ピン穴6cのみ図示。)なお,以下,第1ピン穴6a,第2ピン穴6b,第3ピン穴6cを総称してピン穴6という。また,図1のようにキャリアCがピン5によって位置決めされたときのキャリアCの上下方向における位置を基準位置という。さらに,基準位置にあるキャリアCの底面の上下方向における位置を基準底面位置という。本実施形態では基準底面位置は載置台3の上面USの位置と同じである。なお,キャリアCの前面Fには図示はしないが基板を出し入れする開口が設けられている。次に,載置台3には第1正常センサ7a,第2正常センサ7bが設けられており,キャリアCの底面BS(後述)の上下方向の位置を検出する。
【0016】また,載置台3には載置台3上のキャリアCの有無を検出する有無センサ9の投光部9aが設けられている。投光部9aは載置台3の上面USよりも低い位置に設けられており,キャリアCとは非接触である。そして,投光部9aは斜め上方に向かって検出光DL1を発射している。該検出光DL1はキャリアCが載置台3上でピン5によって位置決めされたとき,該キャリアCが占める空間SPを通過している。そして,検出光DL1の延長上で,前記キャリアCが占める空間SPよりも外には有無センサ9の受光部9bが設けられている。本実施形態の有無センサ9は検出光DL1が遮られたときONになる設定である。」
「【0030】次に図4に従いキャリア載置装置1のハード構成を説明する。
【0031】図のように第1正常センサ7a,第2正常センサ7b,有無センサ9が報知部20に接続されている。
【0032】報知部20は,CPUやRAM,ROMを有して各種情報を処理する情報処理部11と,情報処理部11からの情報を表示するディスプレイ12と,前記情報処理部11と外部装置14とを接続するインターフェース13とを有する。なお,外部装置14としては例えば基板処理装置や基板搬送装置,キャリア搬送装置,などがある。
【0033】次に図5のフローチャートを用いてキャリア載置装置1の動作の一例を説明する。
【0034】キャリア載置装置1は起動直後,即ち図のスタートSSでは第1正常センサ7a,第2正常センサ7bそれぞれは検出光を発射している状態になる。また,有無センサ9も検出光DL1を発射している状態である。その後,図5のステップ1に入る。ステップS1では外部装置14がインターフェース13を通じてキャリアCの載置状態を照会してきたかどうか,情報処理部11が判断する。照会が無い場合はステップS1を繰り返す。照会があった場合はステップS2に進む。
【0035】ステップS2では有無センサ9がONになっているかどうか情報処理部11が判断する。有無センサ9がONになっていれば,載置台3にキャリアCもしくはそれ以外の物体が存在すると判断してステップS3に進む。ステップS3では第1正常センサ7a,および,第2正常センサ7bが共にONかどうか判断し,ONの場合はキャリアCが正常に載置台3に載置されているものと判断してステップS4に進む。ステップS4ではキャリアCが正常に載置されたことをディスプレイ12に表示するとともにインターフェース13を通じてキャリアCが正常に載置されていることを外部装置14に報知する。ステップS3に戻り,第1正常センサ7a,および,第2正常センサ7bが共にONでは無かった場合キャリアCが正常に載置台3に載置されていないと判断し,ステップS5に進む。ステップS5での状態とは有無センサ9がONになっているにもかかわらず,第1正常センサ7a,第2正常センサ7bのいずれかまたは両方がOFFになっている状態であるので,載置台3上に何らかの物体が存在し,その物体が仮にキャリアCであっても当該キャリアCは正常に載置されているわけではないという状態であると推定される。よって,キャリアCが正常に載置されていないことをディスプレイ12に表示し,オペレータにこの旨,報知すると共に,インターフェース13を通じてキャリアCが正常に載置されていないことを外部装置14に報知する。ステップS2に戻って,有無センサ9がOFFの場合はステップS6に進む。ステップS6では第1正常センサ7a,および,第2正常センサ7bの何れかがONになっているかどうか判断する。何れかがONになっている場合はステップS7に進む。ステップS7での状態とは,有無センサ9がOFFでかつ,第1正常センサ7a,および,第2正常センサ7bの何れかがONの状態である。すなわち,キャリアCが正常に載置されていれば少なくとも有無センサ9はONになるはずであるにもかかわらず,有無センサ9はOFFで,第1正常センサ7a,および,第2正常センサ7bの何れかがONになっているということである。従って,ここでは有無センサ9では検出できなかった物体が第1正常センサ7a,および,第2正常センサ7bの何れかで検出されていることになる。
【0036】よって,ステップS5同様,キャリアCは正常に載置されていないことをディスプレイ12に表示し,オペレータにこの旨,報知すると共に,インターフェース13を通じてキャリアCが正常に載置されていないことを外部装置14に報知する。再びステップS6に戻って,第1正常センサ7a,および,第2正常センサ7bの何れもONになっていない場合は載置台3上に何も無い状態であるのでステップS8に進み外部装置14に対してキャリアCが載置されていないことを報知する。
【0037】本実施形態では第1正常センサ7a,第2正常センサ7b,有無センサ9のすべてがONとなって初めてキャリアCが正常に載置されたと判断する。このため,キャリアCが正常に載置されているか否かを正確に報知することができる。
【0038】以上,本実施形態では底部に凹部としてピン穴を有するキャリアCを対象としているが,底部に凸部を有するキャリアの場合,載置台に該凸部と嵌合する凹部を設けて上下方向におけるキャリアの底面の位置が基準底面位置にあるかどうかを検出すればよい。」
3 引用文献2の記載
当審拒絶理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,半導体ウエハ等のウエハが収納されるカセットと,そのようなカセットに収納されたウエハを分析する蛍光X線分析装置に関するものである。」
「【0015】しかも,通常用いるカセットは底部の外側に既製のカセットにない判別用の凸部を形成したものであり,その凸部に対応して凹入するスイッチを有するカセット台と,前記スイッチの凹入に対応してロボットハンドを駆動可能にする判別手段とを本装置が備えているので,例えば,操作者が誤って4.76mm間隔でウエハを収納した150mm用の既製のカセットをカセット台に載置してもスイッチが凹入しないために判別手段によりロボットハンドが駆動可能とならないから,300mmのウエハに対応したロボットハンドがウエハに干渉して損傷させること等が防止され,いっそう安全確実にウエハを搬出入できる。」
4 引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0024】
固定ステージ2上には容器PのボックスP1と蓋P2の密閉を解除する施錠機構26と容器Pの載置有無を検出する在席検出手段であるピン7が設けてある。
【0025】
前記在席検出手段の構造を,図5を参照して詳細に説明する。ピン7は,固定ステージ2の裏面に取り付けられた板ばね28による下方からの付勢により,固定ステージ2の表面から出没可能に設けられており,容器Pが固定ステージ2上に載っていない時は飛出した状態を維持している。
【0026】
板ばね28は上端が固定ステージ2の裏面に取り付けられ,その下端は下方に向いた直線状部分を有する。板ばね28の下方には上方が開放したスリットを有する凹型のフォトセンサ30が設けてあり,スリットに物体が存在するか否かでフォトセンサ30はON/OFF状態となる。
【0027】
固定ステージ2上に容器Pが載せられると,前記ピン7は容器Pに押されて固定ステージ2下へ押し込まれ,その動作に従ってピン7の下に設けられた板ばね28の下端部がフォトセンサ30のスリット内に侵入する。」
5 引用文献4の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。
「依って,斯る構成のマイクロスイッチ機構を用いて,載置台上のウエハキャリアの有無を検出する(中略)ウエハキャリア20の下部一端部縁を上記ヘッド板9上に載置すると,(中略)マイクロスイッチ14をオンするので,これにより載置台19上にウエハキャリア20が載置されていることを確実に検出することが可能となる。」(第5頁第11行-第6頁第7行)
4 引用文献5の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0036】
なお,載置されたカセットをカセット支持台に自動的に固定するカセット固定部及びその固定状態を解除するための構造は,図3?図7に示した例には限定されない。例えば,図8に示すように,カセット支持台2a’,2b’が,2つの断面L字型の移動部材200aが基台20から突出して向かい合って構成される係合部200と,カセット6a,6bが載置されているか否かを検知するセンサ201と,押圧により2つの移動部材200aを互いが離れる方向に移動させる固定解除部202とを備えた構成としてもよい。この場合において,カセット6a’,6b’は,断面がT字を逆さまにした形状を有し2つの回動部材200aと係合する被係合部600を備える。そして,センサがカセット6a’,6b’の存在を検知すると,互いが近づく方向に2つの移動部材200aが移動して被係合部600に係合する。一方,固定解除部202を押圧すると,2つの移動部材200aが離れる方向に移動し,被係合部600との係合状態を解除してカセット6a’,6b’をカセット支持台2a’,2b’から取り外すことができる。」

第6 対比及び判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明との対比
ア 引用発明の「ウエハキャリア」は「半導体プロセス用ウエハキャリア」である(前記第5の1(1)ア【0001】)から「半導体製造用のウェハを収容するための」「カセット」ということができ,すると,引用発明の「突出したキャリア位置決め部を備えるウエハキャリアが設置されるウエハキャリア設置台」は,本願発明1の「半導体製造用のウェハを収容するためのカセット本体から突出部が突出する構成のカセットを置くことが可能な,カセット台」に相当する。
イ 引用発明の「プッシュセンサー」は,「下側壁を下にした状態でウエハキャリアをウエハキャリア設置台に設置した場合は,プッシュセンサーはON状態となり,一方,上側壁を下にした状態でウエハキャリアをウエハキャリア設置台に設置した場合は,プッシュセンサーはOFF状態となる」から「カセットの向きを検出するための向き検出センサ」ということができ,「前記カセット台において前記カセットが上向き姿勢および下向き姿勢の何れか一方の前記姿勢にあるときに前記カセットを検出するように構成されており,かつ,前記カセットが他方の前記姿勢にあるときには前記カセットを検出しないように構成されて」いるといえる。
ウ 引用発明の「ウエハキャリア設置台」は「ウエハを搬送ロボットによって反転機構へ搬送」することを前提とする(前記第5の1(1)ア【0004】)から,「ウェハ搬送用装置」の一部であるといえる。
エ すると,本願発明1と引用発明とは,下記オの点で一致し,下記カの点で相違する。
オ 一致点
「半導体製造用のウェハを収容するためのカセット本体から突出部が突出する構成のカセットを置くことが可能な,カセット台と,
を備え,
前記カセット台に前記カセットが置かれた場合における前記カセットの向きを検出するための向き検出センサを備え,
前記向き検出センサは,前記カセット台において前記カセットが上向き姿勢および下向き姿勢の何れか一方の前記姿勢にあるときに前記カセットを検出するように構成されており,かつ,前記カセットが他方の前記姿勢にあるときには前記カセットを検出しないように構成されていることを特徴とする,ウェハ搬送用装置。」
カ 相違点
(ア)相違点1
本願発明1では,「前記カセット台に前記カセットが置かれたことを検出するためのカセット検出センサと」を備え,「前記カセット検出センサと前記向き検出センサは互いに別個に設けられており,且つ,前記カセットの状態が制御部によって判定されるように構成されており,前記制御部では,前記カセット台に前記カセットが置かれたことを前記カセット検出センサが検出するとともに,前記カセットが下向き姿勢で前記カセット台に置かれたことを前記向き検出センサが検出していない場合に,前記カセットが上向きの姿勢で前記カセット台に置かれたと判定され,且つ,前記カセット台に前記カセットが置かれたことを前記カセット検出センサが検出するとともに,前記カセットが下向き姿勢で前記カセット台に置かれたことを前記向き検出センサが検出した場合に,前記カセットが下向きの姿勢で前記カセット台に置かれたと判定され」るのに対し,引用発明では「カセット検出センサ」を備えず,「前記カセット検出センサと前記向き検出センサ」の両方を用いた判定は行われない点。
(イ)相違点2
本願発明1では「前記カセット検出センサおよび前記向きセンサは,何れも,前記カセット台に前記カセットが置かれたときに前記カセットの下方に位置するように配置されており,前記カセット検出センサは,電気信号を発生するセンサの数が単一であり,前記向き検出センサは,電気信号を発生するセンサの数が単一である」のに対し,引用発明では,「カセット検出センサ」を備えず,センサの「何れも,前記カセット台に前記カセットが置かれたときに前記カセットの下方に位置するように配置されて」いるものではない点。
(2)判断
相違点2について検討する。
相違点2に係る構成について,引用文献A,2ないし5の何れにも記載も示唆もない。
引用文献Aには,キャリアの底面の上下方向の位置を検出する第1正常センサ,第2正常センサの他に載置台上のキャリアの有無を検出する有無センサを設けることが記載されているが,この有無センサは載置台に設けられた投光部から発射しキャリアが占める空間を通過する検出光を有無センサの受光部で受光するもの(前記第5の2【0016】)である。そこで,引用文献Aに記載された技術をさらに設計変更して有無センサの受光部をキャリアの下方すなわち載置台に設ければ,キャリアの底面をセンスできたとしても「キャリアが占める空間」をセンスできなくなるから,そのような設計変更は当業者が容易になし得るものではない。
したがって,他の相違点について検討するまでもなく,本願発明1は,引用文献1,A,2ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3)まとめ
よって,本願発明1は,引用文献1,A,2ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2 本願発明2及び3について
本願発明2及び3は,本願発明1を引用するものであり,本願発明1の発明特定事項をすべて備え,さらに他の発明特定事項を付加したものに相当するから,前記1と同様の理由により,引用文献1,A,2ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第7 原査定についての判断
前記第6のとおり,本願発明1ないし3は,引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-02-04 
出願番号 特願2013-161592(P2013-161592)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中田 剛史  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 深沢 正志
梶尾 誠哉
発明の名称 ウェハ搬送用装置  
代理人 特許業務法人ブライタス  

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