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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05B
管理番号 1348509
審判番号 不服2017-5596  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-19 
確定日 2019-02-19 
事件の表示 特願2016-505903号「パルス信号反転による電気化学的スケール除去」拒絶査定不服審判事件〔2014年10月 9日国際公開、WO2014/162231、平成28年 7月21日国内公表、特表2016-521440号、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年3月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年4月2日(US)米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年4月20日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年6月27日付けで意見書が提出され、平成28年8月25日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年10月28日付けで意見書が提出され、平成29年1月16日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年4月19日付けで拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成30年5月8日付けで拒絶理由通知(その拒絶理由を、以下「当審拒絶理由1」という。)がされ、平成30年7月23日付けで意見書が提出されると共に手続補正がされ平成30年9月27日付けで拒絶理由通知(その拒絶理由を、以下「当審拒絶理由2」という。)がされ、平成30年11月19日付けで意見書が提出されると共に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年1月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1?15に係る発明は、以下の引用文献A?Dに基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.国際公開第2012/011051号
B.実願平5-73375号(実開平7-37098号)のCD-ROM
C.国際公開第2012/069958号
D.特開2002-336861号公報

第3 当審拒絶理由の概要
1.当審拒絶理由1の概要
(1)理由1(進歩性)について
本願請求項1?15に係る発明は、以下の引用文献1、2に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.国際公開第2012/011051号(拒絶査定時の引用文献A)
2.実願平5-73375号(実開平7-37098号)のCD-ROM (拒絶査定時の引用文献B)

(2)理由2(サポート要件)について
出願時の技術常識に照らしても、本願請求項1?15に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができない。
また、本願請求項1?15に係る発明が、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できたものであるのか不明である。
したがって、本願請求項1?15に係る特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2.当審拒絶理由2の概要
理由(明確性)について
本願請求項1?10に係る発明は、特許請求の範囲の記載が明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第4 本願発明
本願請求項1?10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明10」という。)は、平成30年11月19日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1?10は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
加熱エレメントとカウンタ電極とを有するヒータにおいて液体を加熱する方法であって、
(i)前記加熱エレメントを摂氏140乃至180°Cの範囲の温度に加熱することにより前記ヒータの中の液体を加熱するステップと、
(ii)前記加熱エレメントと前記カウンタ電極との間に非変調のAC電位差を印加するステップとを有し、
前記AC電位差は200乃至2000Hzの範囲内のAC周波数で変化し、1.6乃至3.2Vの振幅を有し、前記液体は前記ヒータの中の前記加熱エレメントと前記カウンタ電極との間を流れ、
前記加熱エレメントと前記カウンタ電極とは、0.5-5mmの範囲の相互距離を有する、
方法。
【請求項2】
前記AC周波数は500乃至1500Hzの範囲にあり、前記AC電位差は正弦波特性を有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒータはフロースルーヒータを有し、前記加熱エレメントは前記カウンタ電極を囲んでいる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記加熱エレメントと接触する液体は6乃至10barの範囲の圧力である、請求項1乃至3いずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記AC電位差とAC周波数とのうち一以上を、(i)前記加熱エレメントと前記カウンタ電極との間の電流と、(ii)前記液体の導電率とのうち一以上の関数として制御するステップを有する、
請求項1乃至4いずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
液体を加熱するように構成され、ヒータ内の液体を加熱する加熱エレメントと、カウンタ電極とを有するヒータと、
前記加熱エレメントと前記カウンタ電極との間に前記液体を流すように構成された流れユニットと、
前記加熱エレメントと前記カウンタ電極との間に非変調のAC電位差を印加するように構成された電源とを有し、
前記AC電位差は200乃至2000Hzの範囲内のAC周波数で変化し、1.6V乃至3.2Vの振幅を有し、
前記加熱エレメントを摂氏140乃至180°Cの範囲の温度に加熱することにより前記ヒータの中の液体を加熱し、
前記加熱エレメントと前記カウンタ電極とは、0.5-5mmの範囲の相互距離を有する、
ヒータ装置。
【請求項7】
前記ヒータはフロースルーヒータを有し、前記加熱エレメントは前記カウンタ電極を囲んでいる、請求項6に記載のヒータ装置。
【請求項8】
昇温された液体を含む飲料を供給する電子デバイスであって、
請求項6または7に記載のヒータ装置を有し、
前記電子デバイスは前記飲料用の加熱された水及び/又は水蒸気を作るように構成されている、
電子デバイス。
【請求項9】
前記電子デバイスはベンディングマシンである、
請求項8に記載の電子デバイス。
【請求項10】
熱い液体と接触している加熱エレメント及びカウンタ電極の間のAC電位差の使用であって、
前記AC電位差は200乃至2000Hzの範囲内の非変調のAC周波数で変化し、1.6V乃至3.2Vの振幅を有し、
前記加熱エレメントを摂氏140乃至180°Cの範囲の温度に加熱することにより前記液体を加熱し、
前記加熱エレメントと前記カウンタ電極とは、0.5-5mmの範囲の相互距離を有し、
前記加熱エレメントのスケール付着を防止又は低減する、
使用。」

第5 引用文献等
1.引用文献1について
当審拒絶理由1において引用された引用文献1(国際公開第2012/011051号)には、図面とともに次の事項が記載されている(摘記に続く翻訳文は、引用文献1のファミリー文献である特表2013-535645号公報を参考にして、当審で作成した。また、翻訳文の下線は当審において理解の一助のために付加した。)。

1a)「CLAIMS:
1. A method of using a water heater (100) arranged for heating an aqueous liquid (20) wherein the water heater (100) comprises a heating element (110) to heat aqueous liquid (20) in the water heater (100), the method comprising:
a. heating aqueous liquid (20) in the water heater (100) with the heating element (110), wherein the heating element (110) is in contact with the aqueous liquid (20); and
b. applying a first AC voltage between the heating element (110) and a counter electrode (120), and applying a DC voltage between the heating element (110) and the counter electrode (120), wherein the DC voltage is at least 0.5 V, and wherein the heating element (110) is chosen as positive electrode. 」

(当審訳:特許請求の範囲:
請求項1.温水器内の水性液体を加熱するための加熱素子を有する水性液体を加熱するための温水器を使用する方法であって、
前記加熱素子が水性液体と接触して、前記加熱素子で前記温水器内の水性液体を加熱するステップと、
前記加熱素子と対抗電極との間に第1のAC電圧を付与し、前記加熱素子と前記対抗電極との間にDC電圧を付与するステップとを有し、ここで、DC電圧は少なくとも0.5Vであり、前記加熱素子は正の電極として選択されている、方法。)

1b)「17. The electronic device (2) according to claim 16, wherein the electronic device (2) is selected from the group consisting of an iron, a pressurized steam generator, a non- pressurized steam generator, a hot liquid vending machine, an electric kettle, a coffee maker, an espresso machine, a washing machine, a dish washer, and a hot-water based weed killing device. 」

(当審訳:請求項17.アイロン、加圧蒸気発生器、非加圧蒸気発生器、熱い飲物の自動販売機、電気ケトル、コーヒーメーカー、エスプレッソマシン、洗濯機、食器洗浄機、温水ベースの雑草除去装置から成るグループから選択される、請求項16に記載の電子装置。)

1c)「The term "water heater" may also refer to a (closed) boiler arranged to produce steam, to a (closed) boiler arranged to produce heated water, to a flow through heater or to a steamer. In a specific embodiment, the heater arranged for heating an aqueous liquid is selected from the group consisting of a flow through heater, a flow through steamer, a heater for heating water and a heater for producing steam. Included are also heater blocks where the heating element and e.g. the tube that carries the water are embedded in a block of aluminum.
Heating may be any heating at temperatures above room temperature, but especially refers to heating (of the aqueous liquid) above 50 °C, such as especially heating the aqueous liquid in the heater to a temperature of at least 85 °C. The term heating may thus include bringing at elevated temperatures, boiling and/or producing steam.
The heater may be any heater, such as a heater of a steam generation device (e.g. as used for a pressurized steam generator (sometimes also indicated as system iron)) for providing steam, a water heater for providing hot drinking water like in a hot liquid vending machine (e.g. for making coffee, tea, cappuccino, or hot chocolate, etc.), an electric kettle, a coffee maker (drip filter), an espresso machine, a pad coffee machine, a boiler (for internal heating of a house (domestic boiler) or of an apartment, an office building), an industrial boiler etc.), a water heater arranged in a washing machine or in a dish washer, or a hot-water based weed killing device (or sprayer) (arranged to providing hot water to kill weed). 」(第13頁第1行?第18行)

(当審訳:「温水器」という用語は、また、蒸気を作るために設けられた(閉じた)ボイラー、加熱水を作るように設けられた(閉じた)ボイラー、フロースルーヒーター、又はスチーマーを指してもよい。特定の実施例において、水性液体を加熱するために設けられたヒーターは、フロースルーヒーター、フロースルースチーマー、水を加熱するためのヒーター及び蒸気を作るためのヒーターからなるグループから選択される。加熱素子及び例えば水を運ぶチューブがアルミニウムのブロックに埋め込まれているヒータブロックも含まれる。
加熱は、室温を超える温度での任意の加熱であるが、50℃を超える(水性液体の)加熱、特に少なくとも85℃の温度までのヒーター内の水性液体の加熱を指す。よって、「加熱」という用語は、昇温にすること、沸騰させること、及び/又は蒸気を作ることを含む。
ヒーターは、蒸気を供給するための(例えば、(時々システムアイロンとしても示される)加圧蒸気発生器のために使われるような)蒸気生成装置のヒーター、熱い飲物の自動販売機(例えば、コーヒー、お茶、カプチーノ又はホットチョコレート等を作るため)のような熱い飲料水を供給するための温水器、電気ヤカン、コーヒーメーカー(ドリップフィルタ)、エスプレッソマシン、パッドコーヒーマシン、(住宅(家庭用ボイラー)又はアパート、オフィスビルの内部暖房のためのボイラー、工業用ボイラー等の)ボイラー、洗濯機若しくは食器洗浄機に配置される温水器、又は(雑草を枯らすために温水を供給するように設けられた)温水ベースの雑草除去装置(又は噴霧器)のような、蒸気生成装置の任意のヒーターでもよい。)

1d)「Figure la schematically depicts a water heater arrangement ("heater arrangement") 1 comprising a water heater ("heater") 100, arranged for heating an aqueous liquid 20. The aqueous liquid 20, especially water, is contained in the heater 100. The heater 100 comprises a metal heating element 110 to heat the aqueous liquid 20 in the heater 100. The heater arrangement 1 further comprises an electrical power 200 supply, arranged to apply a first AC voltage between the heating element 110 and a counter electrode 120. In addition to the first AC voltage a second, lower frequency AC voltage may be added and/or a DC voltage. When a DC voltage is applied, the heating element 110 is chosen as positive electrode. By application of the voltage(s), the metal heating element 110 is protected against scaling and/or scaling formed may be removed. 」(第16頁第33行?第17頁第8行)

(当審訳:図1aは、水性液体20を加熱するために設けられた温水器(「ヒーター」)100を有する温水器装置(「ヒーター装置」)を模式的に示す。水性液体20、特に水が、ヒーター100内に含まれる。ヒーター100は、ヒーター100内の水性液体20を加熱するために金属加熱素子110を有する。ヒーター装置1は、更に、加熱素子110と対抗電極120との間に第1のAC電圧を付与するために設けられた電源200を更に有する。第1のAC電圧に加えて、第2の低周波AC電圧及び/又はDC電圧が加えられる。DC電圧が付与されるとき、加熱素子110は、正電極として選ばれる。電圧の付与により、金属加熱素子110は湯垢形成に抗して保護され、及び/又は形成された湯垢が除去される。)

1e)「Figure lc schematically depicts an embodiment of a flow through heater (FTH), wherein the heater 100 is a heater through which the aqueous liquid 20 flows, while being heated. In the schematic embodiment of figure lc, a heat generation device 115 is connected to the wall of the heater 100, and a rod within the heater is used as counter electrode 120. The wall is connected to a generation device 115 to heat the wall and is preferably of (stainless) steel; the wall is in contact with the aqueous liquid (not depicted) and is thus used as heating element 110. The counter electrode 120 may comprise a material as indicated in the description above for figure lb.
Figure ld schematically depicts substantially the same embodiment as schematically depicted in figure lc, but now in cross-sectional view. Elements 115 heat wall of the heater 100. Therefore, the wall is indicated as heating element 110. Over this wall, i.e. heating element 110, and the counter electrode 120, a voltage is applied with electrical power supply 200. Here, the wall is used as heating element 110, and is preferably of (stainless) steel. The counter electrode 120 may comprise a material as indicated in the description above for figure lb. 」(第17頁第21行?第18頁第2行)

(当審訳:図1cは、フロースルーヒーター(FTH)の実施例を模式的に示し、ここで、ヒーター100は、加熱されている間水性液体20が流れるヒーターである。図1cの模式的実施例において、加熱生成装置115はヒーター100の壁に接続され、ヒーター内のロッドは対抗電極120として使用される。壁を加熱するための生成装置115に壁は接続され、壁は好ましくは(ステンレス)スチールである。壁は、水性液体と接触し(図示されず)、よって、加熱素子110として使用される。対抗電極120は、図1bで説明されたような材料を有する。
図1dは、図1cに模式的に示されたのと実質的に同じ実施例を模式的に示すが、ここでは、断面図である。素子115は、ヒーター100の壁を加熱する。従って、壁は加熱素子110として示される。この壁上に、すなわち加熱素子110上に、及び対抗電極120上に、電圧が電源200により付与される。ここで、壁は加熱素子110として使用され、好ましくは(ステンレス)スチールでできている。対抗電極120は、図1bで説明された材料を有する。」

1f)「Figure 3 schematically depicts an electronic device 2. Figure 3 schematically depicts an electric kettle as example of the electronic device 2. The electronic device 2 comprises the heater arrangement 1. Here, electronics 300 may be arranged to control the heating of heating element 120 and provide power to the electric power supply 200 for imposing the first AC and optional second AC and/or optional DC voltage to the heating element 120 and counter electrode 110.
The heater arrangement 1 may further comprise a sensor (not depicted) to sense parameters like conductivity of the aqueous liquid, the temperature of the aqueous liquid, etc. Further, the heater arrangement 1 may further comprise a controller, to control the one or more features of the first AC and one more features of the one or more of the second AC and DC. The controller may control those one or more features in dependence of the one or more parameters and one or more predefined relations between the one or more parameters and the one or more features.

EXAMPLES
Water preparation
Stock solutions of CaCl_(2) .2H_(2)0 (65.6gr/ltr), MgS0_(4).7H_(2)0 (38gr/ltr) and NaHC0_(3)(76.2 gr/ltr) were made. Standard hard water was made by mixing 50 gram of each stock solution into 9 liter of de-ionized water and adding up to 10 liter. The resulting water had a total hardness of (around) 16.8 °DH (German degree of hardness) and a temporary hardness of (around) 11.2 °DH.
Total hardness is defined as 2.8 x 2 x [mmol/ltr Ca + mmol Mg/ltr] ;
Temporary hardness is defined as 2.8 x [mmol HC0_(3)^(-)/1tr].)

Calcified electrode preparation
In a typical experiment hard water was added to a 250 ml beaker glass. A curled heating element (of stainless steel) was immersed into the water. Water was boiled and kept at 95°C for 30 minutes. During heating a stainless steel tube of 12 mm diameter and a 1 mm Metal oxide (MMO) coated Titanium electrode were immersed in the water at 5 cm depth. The distance between the electrodes was 1 cm. Both electrodes were electrically connected at 4.5 V DC with the stainless steel set as negative electrode. Scale deposited on the tube and adhered firmly.

Descaling experiments
For every experiment a freshly calcified electrode (the stainless steel tube) was used. For the experiments the same setup was used as for calcifying the test electrode. After boiling for 30 minutes the electrode (the stainless steel tube) was investigated for spontaneous removal of the scale and for corrosion. After that the electrode (the stainless steel tube) was rinsed under running tap water with gentle rubbing to further test the loosening of the scale. 」(第19頁第6行?第20頁第11行)

(当審訳:図3は、電子装置2を模式的に示す。図3は、電子装置2の例として電気ケトルを模式的に示す。電子装置2は、加熱装置1を有する。ここで、電子回路300は、加熱素子120の加熱を制御し、電力を電源200へ供給して、第1のAC、オプションで第2のAC及び/又はオプションでDC電圧を加熱素子120及び対抗電極110へ与える。
加熱装置1は、更に、水性液体の導電率、水性液体の温度等のようなパラメータを検知するためのセンサ(図示されず)を有する。更に、加熱装置1は、第1のACの一つ以上の特徴と、第2のAC及びDCの一つ以上の(一つ以上の)特徴とを制御するためのコントローラを有する。コントローラは、一つ以上の特徴と、一つ以上のパラメータと一つ以上の特徴との間の一つ以上の事前に規定された関係とに依存して、これら一つ以上の特徴を制御する。

実施例
水の準備
CaCl_(2).2H_(2)O(65.6gr/ltr)、 MgSO_(4).7H_(2)O(38gr/ltr)及びNaHCO_(3)(76.2gr/ltr)の貯蔵液が作られた。50グラムの各ストック溶液を9リットルの脱イオン化水に混合し、10リットルまで加えることにより、標準硬水が作られた。結果として出来た水は、(約)16.8°DH(硬さのドイツ硬度)のトータルの硬さ及び(約)11.2°DHの一時的な硬さを持った。
トータルの硬さは、2.8x2x[mmol/ltr Ca+mmol Mg/ltr]として規定され、一時的な硬さは、2.8x[mmol HCO_(3)^(-)/ltr]として規定される。

石灰化された電極の準備
典型的な実験では、硬水が250mlのビーカーガラスに加えられた。(ステンレススチール管の)らせん状の加熱素子が水に浸けられた。水が沸騰され、30分間95℃に保たれた。加熱中12mm直径のステンレススチール管及び1mmの酸化金属物(MMO)で被覆されたチタニウム電極が5cmの深さまで水に浸けられた。電極間の距離は1cmであった。両方の電極は、負電極として設定されたステンレススチールと4.5VDCで電気的に接続された。湯垢が管に堆積し、しっかりと付着した。

湯垢除去実験
各実験に対して、新しく石灰化された電極(ステンレススチール管)が使用された。実験のために、テスト電極を石灰化するための同じセットアップが用いられた。30分間沸騰した後、電極(ステンレススチール管)が、湯垢の自発的な除去及び腐食に対して調べられた。その後、電極(ステンレススチール管)は、湯垢の解放を更にテストするために柔らかなラビングで水道水の下、洗浄された。)

1g)「Experiment 1 (AC) (reference example)
A calcified 12 mm stainless steel tube and a small strip of MMO coated titanium of 6 mm width (the counter electrode) were connected to a power supply. 6.8 Vpp was applied with a frequency of 100Hz resulting in 40 mA current. (As power source a funnctiongenerator was used with 50 Ohm impedance ). After heating for 30 minutes at 95 °C the outside of the tube (the electrode) was checked. No spontaneous scale removal was observed. Rinsing under tap water with gentle rubbing showed poor removal of scale. No corrosion was observed.

Experiment 2 (AC) (reference example)
A calcified 12 mm stainless steel tube and a small strip of MMO coated titanium of 6 mm width were connected to a power supply. 6.8 Vpp was applied with a frequency of 10Hz resulting in 40 mA current. After heating for 30 minutes at 95 °C the electrode was checked. No spontaneous scale removal was observed. Rinsing under tap water with gentle rubbing showed good removal of scale. No corrosion was observed.
・・・・・・
When the frequency is lowered too much corrosion of the steel electrode may occur suggesting that lower current may be beneficial.

Experiment 5 (AC) (reference example)
A calcified 12 mm stainless steel tube and a small strip of MMO coated titanium of 6 mm width were connected to a power supply. 4.8 Vpp was applied with a frequency of 2.5Hz resulting in 20 mA current. After heating for 30 minutes at 95 °C the electrode was checked. Scale had loosened from the metal tube spontaneously Rinsing under tap water with gentle rubbing showed good removal of scale beyond the spontaneous cleaned area. No corrosion was observed. 」(第20頁第13行?第21頁第21行)

(当審訳:実験1(AC)(参照例)
石灰化された12mmのステンレススチール管及び6mm幅のMMO被覆されたチタニウムの小さなストリップが電源に接続された。6.8VppACが100Hzの周波数で付与され、結果的に40mA電流となった(電源としてファンクションジェネレータが50オームインピーダンスで用いられた)。95℃で30分間加熱後、管(電極)の外側が調べられた。自発的な湯垢除去は観察されなかった。柔らかなラビングで水道水の下の洗浄は、湯垢の貧弱な除去を示した。腐食が観察されなかった。
実験2(AC)(参照例)
石灰化された12mmのステンレススチール管及び6mm幅のMMO被覆されたチタニウムの小さなストリップが電源に接続された。6.8VppACが10Hzの周波数で付与され、結果的に40mA電流となった。95℃で30分間加熱後、電極が調べられた。自発的な湯垢除去は観察されなかった。柔らかなラビングで水道水の下の洗浄は、湯垢の良好な除去を示した。腐食が観察されなかった。
・・・・・・
周波数があまりにも低いとき、スチール電極の腐食が起こり、低めの電流が有益であることを示唆する。
実験5(AC)(参照例)
石灰化された12mmのステンレススチール管及び6mm幅のMMO被覆されたチタニウムの小さなストリップが電源に接続された。4.8VppACが2.5Hzの周波数で付与され、結果的に20mA電流となった。95℃で30分間加熱後、電極が調べられた。湯垢が金属管から自発的に解放した。柔らかなラビングで水道水の下の洗浄は、自発的にきれいになった領域を越えて湯垢の非常に良好な湯垢の除去を示した。腐食が観察されなかった。)

1h)「Experiment 9 (AC/DC)
A calcified 12 mm stainless steel tube and a small strip of MMO coated titanium of 6 mm width were connected to a power supply. 4.8 Vpp AC was applied with a frequency of 5Hz resulting in 20 mA current. 1.0 V DC was applied as offset with the tube being the postive electrode. After heating for 30 minutes at 95 °C the electrode was checked. Scale had loosened from the metal tube spontaneously. Rinsing under tap water with gentle rubbing showed very good removal of scale beyond the spontaneous cleaned area. No corrosion was observed.

Experiment 10 (AC/DC)
A calcified 12 mm stainless steel tube and a small strip of MMO coated titanium of 6 mm width were connected to a power supply. 4.8 Vpp AC was applied with a frequency of 5Hz resulting in 20 mA current. 1.5 V DC was applied as offset with the tube being the positive electrode. After heating for 30 minutes at 95 °C the electrode was checked. Scale had loosened from the metal tube spontaneously Rinsing under tap water with gentle rubbing showed very good removal of scale beyond the spontaneous cleaned area. No corrosion was observed.
The corrosion tempering effect of a AC on a relative high DC is clear from experiments 9 and 10. 」(第22頁第18行?第23頁第2行)

(当審訳:実験9(AC/DC)
石灰化された12mmのステンレススチール管及び6mm幅のMMO被覆されたチタニウムの小さなストリップが電源に接続された。4.8VppACが5Hzの周波数で付与され、結果的に20mA電流となった。管は正電極であって、1.0VDCがオフセットとして付与された。95℃で30分間加熱後、電極が調べられた。湯垢が金属管から自発的に解放された。柔らかなラビングで水道水の下の洗浄は、自発的にきれいになった領域を越えて湯垢の非常に良好な湯垢の除去を示した。腐食が観察されなかった。
実験10(AC/DC)
石灰化された12mmのステンレススチール管及び6mm幅のMMO被覆されたチタニウムの小さなストリップが電源に接続された。4.8VppACが5Hzの周波数で付与され、結果的に20mA電流となった。管は正電極であって、1.5VDCがオフセットとして付与された。95℃で30分間加熱後、電極が調べられた。湯垢が金属管から自発的に解放された。柔らかなラビングで水道水の下の洗浄は、自発的にきれいになった領域を越えて湯垢の非常に良好な湯垢の除去を示した。腐食が観察されなかった。
相対的に高いDCでACの腐食緩和効果は、実験9及び10から明らかである。)

1i)「Calcified electrode preparation
In a typical experiment hard water was added to a 600 ml beaker glass. A curled heating element was immersed into the water. Water was boiled and kept at 95C for 30 minutes. During heating a stainless steel tube of 12 mm diameter and 10 mm inner diameter was immersed into the water. A 1 mm Metal oxide (Mox) coated Titanium electrode was positioned in the center of the tube. 」(第23頁第24行?第29行)

(当審訳:石灰化された電極準備
典型的な実験では、硬水が600mlビーカーガラスに加えられた。らせん状の加熱素子が、水に浸けられた。水が沸騰され、30分間95℃に保たれた。加熱中、12mm直径及び10mm内径のステンレススチール管が水に浸けられた。1mmの金属酸化物(MOX)被覆されたチタニウム電極が、管の中心に位置付けられた。)

1j)「Experiment 13 (AC/DC)
A calcified (inside) 12 mm stainless steel tube and a 6 mm diameter rod of stainless steel centered inside were connected to a power supply after immersion in standard hard water of 900 μS/cm conductivity. At 95 °C a current of 40 mA was applied at a measured 2.6 Vpp, with a frequency of 0.5 Hz and an offset of -1.5V DC (with the stainless steel tube as positive electrode and the rod as negative counter electrode). After heating for 30 minutes the tube and the rod were checked. All scale had been removed although some signs of corrosion were observed. 」(第24頁第5行?第12行)

(当審訳:実験13(AC/DC)
(内部が)石灰化された12mmのステンレススチール管及び内部中央にステンレススチールがある6mmの直径ロッドが、900μS/cm導電率の標準硬水に浸けられた後、電源に接続された。(正電極として加熱素子及び負対抗電極としてロッドを持って)95℃で40mAの電流が、0.5Hzの周波数及び-1.5VDCのオフセットで、測定2.6Vppで付与された。30分間加熱後、管及びロッドが調べられた。腐食の幾つかの兆候が観察されたが、全ての湯垢が除去された。)

1k)「Experiment 19 (AC/AC/DC)
A stainless steel cylindrical shaped cup with a heating element connected at the outside of the flat bottom was filled with hard water. The radius of the bottom was 5.25 cm. At 3 mm distance from the bottom a stainless steel spiral electrode of 2 mm wire thickness was positioned. The water was heated while two super imposed AC signals (triangular shape) of 1 and 1000 Hz were applied. An offset of 1.5 V was used with the cup as positive electrode. A current of 78 mA was measured giving a current density taking only the bottom into account of 0.9 mA/cm^(2) . Taking the whole cup into account with a water level of 3 cm the current density on the wall of the cup was 0.4 mA/cm^(2) . After 20 minutes heating the cup was emptied. No scale had adhered to the wall. At 56 mA (0.3mA/cm^(2)) similar results were obtained.」(第26頁第4行?第14行)

(当審訳:実験19(AC/AC/DC)
平坦な底部の外部に接続された加熱素子を持つステンレススチールの柱状カップが硬水で満たされた。底部の半径は、5.25cmであった。底部から3mm離れたところで、2mmワイヤ厚さのステンレススチールのらせん状の電極が位置づけられた。1Hz及び1000Hzの2つの重畳されたAC信号(三角形形状)が付与されている間、水が加熱された。1.5Vのオフセットが、正電極としてのカップに用いられた。底部にのみ0.9mA/cm^(2)を考慮して電流密度を与えて、78mAの電流が測定された。全体のカップに3cmの水レベルを考慮して、カップの壁の電流密度は0.4mA/cm^(2)であった。20分加熱後、カップが空になった。湯垢は全く壁に付着しなかった。56mA(0.3mA/cm^(2))で、同様の結果が得られた。)

1l)「




したがって、上記引用文献1には次の6つの発明(以下、それぞれ「引用発明a」、「引用発明b」、「引用文献1記載事項1」、「引用文献1記載事項2」、「引用文献1記載事項3」、「引用文献1記載事項4」という。)が記載されていると認められる(なお、以下の「引用発明a」と「引用発明b」が、上記1k)の実験19に対応し、「引用文献1記載事項1」が、上記1g)の実験5に、「引用文献1記載事項2」が、上記1h)の実験9に、「引用文献1記載事項3」が、上記1h)の実験10に、「引用文献1記載事項4」が、上記1j)の実験13に対応する。)。

(引用発明a)
「液体を加熱するように構成され、加熱装置1内の液体を加熱する加熱素子と、対向電極とを有する加熱装置1と、
前記加熱素子と前記対向電極との間に1Hz及び1000Hzの2つの重畳されたAC信号(三角形形状)を付与する電源200を有し、
さらに、1.5Vのオフセットが正電極である加熱素子に加えられる、
ヒータ装置。」

(引用発明b)
「加熱素子と対向電極を有する加熱装置1によって液体を加熱する方法であって、
前記加熱素子と前記対向電極との間に1Hz及び1000Hzの2つの重畳されたAC信号(三角形形状)を付与するステップと、
1.5Vのオフセットを正電極である加熱素子に加えるステップとを有する、
方法。」

(引用文献1記載事項1)
「ステンレススチール管(加熱素子120)と小さなストリップ(対向電極110)を有する加熱装置1によって液体を加熱する方法であって、
前記ステンレススチール管(加熱素子120)と小さなストリップ(対向電極110)との間に4.8VppACが2.5Hzの周波数で付与されるステップとを有し、
前記ステンレススチール管(加熱素子120)と前記小さなストリップ(対向電極110)とは、1cmの電極間距離を有する、
方法及びその方法を用いたヒータ装置。」

(引用文献1記載事項2)
「ステンレススチール管(加熱素子120)と小さなストリップ(対向電極110)を有する加熱装置1によって液体を加熱する方法であって、
前記ステンレススチール管(加熱素子120)と小さなストリップ(対向電極110)との間に周波数5Hzの4.8VppACと、オフセットとして1.0VDCが付与されるステップとを有し、
前記ステンレススチール管(加熱素子120)と前記小さなストリップ(対向電極110)とは、1cmの電極間距離を有する、
方法及びその方法を用いたヒータ装置。」

(引用文献1記載事項3)
「ステンレススチール管(加熱素子120)と小さなストリップ(対向電極110)を有する加熱装置1によって液体を加熱する方法であって、
前記ステンレススチール管(加熱素子120)と小さなストリップ(対向電極110)との間に周波数5Hzの4.8VppACと、オフセットとして1.5VDCが付与されるステップとを有し、
前記ステンレススチール管(加熱素子120)と前記小さなストリップ(対向電極110)とは、1cmの電極間距離を有する、
方法及びその方法を用いたヒータ装置。」

(引用文献1記載事項4)
「ステンレススチール管(加熱素子120)と小さなストリップ(対向電極110)を有する加熱装置1によって液体を加熱する方法であって、
前記ステンレススチール管(加熱素子120)と小さなストリップ(対向電極110)との間に周波数0.5Hzの2.6VppACと、オフセットとして-1.5VDCが付与されるステップとを有し、
方法及びその方法を用いたヒータ装置。」

2.引用文献2について
当審拒絶理由1において引用された引用文献2(実願平5-73375号(実開平7-37098号)のCD-ROM)には、図面とともに次の事項が記載されている。

2a)「【請求項1】 水を収容するタンクと該タンクに連通するノズルを有し、タンク内の水を加熱して水の蒸気をノズルから噴出するスチームアイロンにおいて、前記タンク内に電極を対向配置し、この電極に極性反転電圧を印加する極性反転駆動手段を設けたことを特徴とするスケール障害防止装置付スチームアイロン。」

2b)「 【0009】
【実施例】
以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。なお、本実施例の説明において、従来例と同一名称部分には同一符号を付し、その詳細説明は省略する。図1には、本考案に係るスケール障害防止装置付スチームアイロンの一実施例が商用電源と接続状態で示されている。本実施例が従来例と異なる特徴的なことは、タンク8内に電極1と電極2とを対向配置し、制御装置6に、電極1,2に極性反転電圧を印加する極性反転駆動手段として機能する矩形パルス発振回路5を設け、この矩形パルス発振回路5と電極1,2とを接続したことである。
【0010】
図2に示すように、制御装置6は、電源回路3と矩形パルス発振回路5を有している。電源回路3は、トランスを有しており、電源(商用電源)からの電圧を降圧して矩形パルス発振回路5に加える。矩形パルス発振回路5は、極性反転電圧を発振して電極1,2にそれぞれ加える(印加する)ものであり、電極1,2は、電極1の極性が正のとき電極2の極性は負となるようにし、その逆に、電極1の極性が負のとき電極2の極性は正となるようにする。」

2c)「【0015】
また、表1に示すように、電極に加える電圧と周波数でこの効果が特に顕著に表れるポイントがあり、効果に差異があることが確認されている。なお、表中、二重丸の印は極めて良好、丸の印は良好、-印は効果がない場合を示している。」

2d)「



2e)「【0017】
本実施例は、以上のように構成されており、次にその動作について説明する。本実施例でも、従来例と同様に、タンク8内に水を注入し、電源コード16を電源に差し込んでスイッチを入れると、ヒータ14の加熱制御が行われ、タンク8内の水はヒータ14により加熱されて蒸気となってノズル9から噴出されるが、本実施例では、タンク8内には電極1,2が対向配置されており、制御装置6の矩形パルス発振回路5により極性反転電圧が電極1,2に印加されるために、電極1と電極2の間には図3の(a)に示したような矩形状のパルス電流が流れる。」

以上のことから、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる(以下、「引用文献2記載事項」という。)。

「水を収容するタンク内の水を加熱して水の蒸気をノズルから噴出するスチームアイロンにおいて、前記タンク内に電極を対向配置し、この電極に電圧5V、周波数1KHzのパルス電圧を印加する極性反転駆動手段を設けたスケール障害防止装置付スチームアイロン。」

3.引用文献Cについて
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献Cには、図面とともに次の事項が記載されている。

3a)「The control circuit 70 of the beverage maker 1 serves for controlling the operation of the pump 40, whereby the position of the three-way valve 60 is controlled in an indirect manner as well, as will be explained later.
The control circuit 70 comprises two components 71, 72 for performing measurements during operation of the beverage maker 1, namely a flow sensor 71 which, in the shown example, is arranged in the tube 21 extending between the water reservoir 20 and the pump 40, and a temperature sensor 72 which is arranged at a position between the flow through heater 30 and the inlet 61 of the three-way valve 60. Furthermore, the control circuit 70 comprises a micro controller 73 for processing the results of the measurements performed by the flow sensor 71 and the temperature sensor 72 during operation of the beverage maker 1, and for setting operation parameters of the pump 40. According to a practical option, the micro controller 73 is adapted to control the power supply to the pump 40. In figure 1, control signals are represented by dashed arrows.
When a user desires to make a quantity of coffee by using the beverage maker 1, the user inserts at least one coffee pad into the brew chamber 50, and activates the beverage maker 1. Naturally, the water reservoir 20 should be filled, at least to a certain extent, so that there is enough water for making the coffee.」(第10頁第7行?第23行)

(当審訳:飲料メーカ1の制御回路70はポンプ40の動作を制御する働きをし、三方弁60の位置はさらに、後述するように、間接的な方法で制御される。
制御回路70は、飲料メーカ1の動作中に測定を実行するための2つの構成要素71、72、すなわち、図示された例では、水リザーバ20とポンプ40との間に延びるチューブ21に配置されたフローセンサ71、及びフロースルーヒータ30と三方弁60の入口61との間に配置された温度センサ72を有する。さらに、制御回路70は、飲料メーカ1の動作中にフローセンサ71及び温度センサ72によって実行される測定の結果を処理するための、及びポンプ40の動作パラメータを設定するためのマイクロコントローラ73を有する。実用的なオプションによれば、マイクロコントローラ73は、ポンプ40の電源を制御するように適合される。図1では、制御信号は点線矢印によって示される。
ユーザが飲料メーカ1を使ってある量のコーヒーを作ることを望む場合、ユーザは少なくとも1つのコーヒーパッドを抽出チャンバ50に挿入し、飲料メーカ1を起動させる。もちろん、水リザーバ20は、コーヒーを作るのに十分な水があるように、少なくともある程度まで、満たされるべきである。)

3b)「As soon as the temperature sensor 72 indicates that the temperature of the water has reached the predetermined temperature, the micro controller 73 activates the pump 40 to realize a water flow at a relatively high rate, for example, 5 ml/s. With the setting of this high flow rate, a second stage starts, in which the flow through heater 30 is fully heated up and capable of heating the water to the desired extent. During the second stage, any deviations between the actual flow rate and the predetermined flow rate are found by means of the flow sensor 71, and are accounted for by adjustments of the operation of the pump 40 by means of the micro controller 73, as is the case in the first stage. 」(第11頁第9行?第16行)

(当審訳:温度センサ72が水の温度が所定値に達したことを示すとすぐに、マイクロコントローラ73は、比較的高い流量、例えば5ml/sでの水の流れを実現するようにポンプ40を作動させる。この高い流量の設定とともに、第2の段階が開始し、この第2の段階では、フロースルーヒータ30が完全に加熱されるとともに水を所望の程度に加熱することができる。第2の段階中、実流量と所定の流量との間の如何なる偏差も、フローセンサ71を用いて発見され、第1の段階での場合のように、マイクロコントローラ73を用いてポンプ40の動作の調整によって相殺される。)

3c)「In the shown example, in both outlets 62, 63 of the valve 60, switching components 64, 65 are arranged, which can be in an opened state, i.e. a state for allowing fluid to pass, or a closed state, i.e. a state for blocking a flow of fluid. 」(第13頁第28行?第30行)

(当審訳:図示された例では、弁60の両方の出口62、63には、切替構成要素64、65が配置され、この切替構成要素64、65は、開放状態、すなわち流体が通過することを許容する状態、又は閉鎖状態、すなわち流体の流れを阻む状態を取り得る。)

3d)「The thresholds of the pressure for switching the switching components 64, 65 do not need to be equal. For example, the switching component 64 associated with the first outlet 62 may be adapted to switch at a lower pressure than the switching component 65 associated with the second outlet 63. In that case, in a situation in which both switching components 64, 65 are in their default state and pressure is built up, the switching component 64 associated with the first outlet 62 switches first. As a result, both switching components 64, 65 are in the closed state for a short while, wherein the switching component 65 associated with the second outlet 63 switches as soon as the threshold for changing the state of this component 65 from the closed state to the opened state is reached. When the pressure is decreased, the switching component 65 associated with the second outlet 63 switches back to the closed position at a certain point, and the switching component 64 associated with the first outlet 62 switches back to the opened position soon afterwards. Examples of threshold values which are suitable in the beverage maker 1 as described on the basis of figure 1 are 0.25 bar for the switching component 64 associated with the first outlet 62, and 0.5 bar for the switching component 65 associated with the second outlet 63. 」(第14頁第21行?第15頁第2行)

(当審訳:切替構成要素64、65を切り替えるための圧力の閾値が等しくなる必要はない。例えば、第1の出口62に関連付けられた切替構成要素64は、第2の出口63に関連付けられた切替構成要素65より低い圧力で切り替わるように適合され得る。この場合、両方の切替構成用度64、65がそれらの初期状態にあり圧力が高められる状況では、第1の出口62に関連付けられた切替構成要素64が最初に切り替わる。結果として、両方の切替構成用度64、65は少しの間、閉鎖状態にあり、第2の出口63に関連付けられた切替構成要素65は、閉鎖状態から開放状態へのこの構成要素65の状態を変化させる閾値に達するとすぐに切り替わる。圧力が減少するとき、第2の出口63に関連付けられた切替構成要素65は、あるポイントにおいて閉鎖位置に切り替わって戻り、第1の出口62に関連付けられた切替構成要素64は、その後すぐに開放位置に切り替わって戻る。図1に基づいて記載された飲料メーカ1に適した閾値の例は、第1の出口62に関連付けられた切替構成要素64に関して0.25barであるとともに、第2の出口63に関連付けられた切替構成要素65に関して0.5barである。)

以上のことから、引用文献Cには、次の技術的事項が記載されていると認められる(以下、「引用文献C記載事項」という。)。

「ポンプ40と、フロースルーヒータ30と、三方弁60を備えた飲料メーカ1において、比較的高い流量である例えば5ml/sでの水の流れをフロースルーヒータ30で実現するようにポンプ40を作動させること、及び、三方弁60の両方の出口62、63には、切替構成要素64、65が配置され、第1の出口62に関連付けられた切替構成要素64に関して0.25barであるとともに、第2の出口63に関連付けられた切替構成要素65に関して0.5barである、飲料メーカ1。」

4.引用文献Dについて
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献Dには、図面とともに次の事項が記載されている。

「【請求項1】 水の循環系に接続される通水管内に間隔を開けて一対の電極を対向配置し、これら電極間に交流電圧を印加することによって循環水中のスケール成分の析出を抑制する電極式スケール成分の析出抑制装置において、前記一対の電極間の負荷電圧と測定される電流値の積(VA値)を予め設定した範囲で制御する制御装置を設けたことを特徴とする電極式スケール成分の析出抑制装置。」

以上のことから、引用文献Dには、次の技術的事項が記載されていると認められる(以下、「引用文献D記載事項」という。)。

「水の循環系に接続される通水管内に間隔を開けて一対の電極を対向配置し、これら電極間に交流電圧を印加することによって循環水中のスケール成分の析出を抑制する電極式スケール成分の析出抑制装置。」

第6 当審拒絶理由についての判断
1.当審拒絶理由1の理由1(進歩性)について
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明bを対比すると、次のことがいえる。

引用発明bの「加熱素子」、「対向電極」、「加熱装置1」、「液体を加熱する方法」は、各文言の意味、機能又は作用等からみて、それぞれ、本願発明1の「加熱エレメント」、「カウンタ電極」、「ヒータ」、「液体を加熱する方法」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明bとの間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「加熱エレメントとカウンタ電極とを有するヒータにおいて液体を加熱する方法。」

(相違点)
(相違点1)
本願発明1は、「前記加熱エレメントを摂氏140乃至180°Cの範囲の温度に加熱することにより前記ヒータの中の液体を加熱するステップ」を有するのに対して、引用発明bは、加熱素子をどの程度の温度に加熱することにより加熱装置1の中の液体を加熱するのか不明な点。
(相違点2)
本願発明1は、「前記加熱エレメントと前記カウンタ電極との間に非変調のAC電位差を印加するステップとを有し、前記AC電位差は200乃至2000Hzの範囲内のAC周波数で変化し、1.6乃至3.2Vの振幅を有し、前記液体は前記ヒータの中の前記加熱エレメントと前記カウンタ電極との間を流れ」るのに対して、引用発明bは、「前記加熱素子と前記対向電極との間に1Hz及び1000Hzの2つの重畳されたAC信号(三角形形状)を付与するステップと、1.5Vのオフセットを正電極である加熱素子に加えるステップ」を有し、当該AC信号の振幅の値及び前記液体が前記加熱装置1の中の前記加熱素子と前記対向電極との間を流れるか否かは不明な点。
(相違点3)
本願発明1は、「前記加熱エレメントと前記カウンタ電極とは、0.5-5mmの範囲の相互距離を有する」のに対して、引用発明bは、加熱素子と対向電極との相互距離が不明な点。

イ 相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点1及び2についてまず検討する。
相違点1について、引用文献1には、加熱素子をどの程度の温度に加熱することにより加熱装置1の中の液体を加熱するのかについて記載はなされていない。さらに、相違点2に係る本願発明1の「前記加熱エレメントと前記カウンタ電極との間に非変調のAC電位差を印加するステップとを有し、前記AC電位差は200乃至2000Hzの範囲内のAC周波数で変化し、1.6乃至3.2Vの振幅を有し、前記液体は前記ヒータの中の前記加熱エレメントと前記カウンタ電極との間を流れ」る方法は、引用文献1及び引用文献2のいずれにも見当たらず、本願優先日前において周知技術ともいえない。
そして、本願発明1は、上記相違点1及び2に係る本願発明1の構成を備えることにより、「スケール形成及び腐食を防止及び/又は低減することができる。」(本願明細書段落0016、0077、0078)という格別の効果を奏するものである。
このような結果を踏まえると、引用発明bにおいて、加熱素子を摂氏140乃至180°Cの範囲の温度に加熱し、1Hz及び1000Hzの2つの重畳されたAC信号(三角形形状)から、より高い周波数である1000Hzのみを採用し、振幅を1.6乃至3.2Vとした非変調ACとし、前記液体を前記加熱装置1の中の前記加熱素子と前記対向電極との間に流すことを、当業者が容易に想到し得たこととすることはできない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明b並びに引用文献1記載事項1?4及び引用文献2記載事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本願発明2?5、10について
本願発明2?5、10も、相違点1?3に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明b並びに引用文献1記載事項1?4及び引用文献2記載事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本願発明6について
ア 対比
本願発明6と引用発明aとを対比すると、次のことがいえる。

引用発明aにおける「加熱素子」、「対向電極」、「加熱装置1」、「ヒータ装置」は、各文言の意味、機能又は作用等からみて、それぞれ、本願発明6における「加熱エレメント」、「カウンタ電極」、「ヒータ」、「ヒータ装置」に相当する。

したがって、本願発明6と引用発明aとの間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「液体を加熱するように構成され、ヒータ内の液体を加熱する加熱エレメントと、カウンタ電極とを有するヒータを有する、
ヒータ装置。」

(相違点)
(相違点4)本願発明6は、「前記加熱エレメントを摂氏140乃至180°Cの範囲の温度に加熱する」のに対して、引用発明aは、加熱素子を加熱する温度が不明な点。
(相違点5)本願発明6は、「前記加熱エレメントと前記カウンタ電極との間に前記液体を流すように構成された流れユニットと、前記加熱エレメントと前記カウンタ電極との間に非変調のAC電位差を印加するように構成された電源とを有し、前記AC電位差は200乃至2000Hzの範囲内のAC周波数で変化し、1.6V乃至3.2Vの振幅を有」するのに対して、引用発明aは、前記加熱素子と前記対向電極との間に前記液体を流すように構成された流れユニットを有するかは不明であり、前記加熱素子と前記対向電極との間に1Hz及び1000Hzの2つの重畳されたAC信号(三角形形状)を付与する電源200を有し、さらに、1.5Vのオフセットが正電極である加熱素子に加えられる点。
(相違点6)本願発明6は、「前記加熱エレメントと前記カウンタ電極とは、0.5-5mmの範囲の相互距離を有する」のに対して、引用発明aは加熱素子と対向電極との相互距離が不明な点。

イ 相違点についての判断
上記相違点4及び5について、まず検討する。
相違点4について、引用文献1には、加熱素子をどの程度の温度に加熱することにより加熱装置1の中の液体を加熱するのかについて記載はなされていない。さらに、相違点5に係る本願発明6の「前記加熱エレメントと前記カウンタ電極との間に前記液体を流すように構成された流れユニットと、前記加熱エレメントと前記カウンタ電極との間に非変調のAC電位差を印加するように構成された電源とを有し、前記AC電位差は200乃至2000Hzの範囲内のAC周波数で変化し、1.6V乃至3.2Vの振幅を有」する構成は、引用文献1及び引用文献2のいずれにも見当たらず、本願優先日前において周知技術ともいえない。
そして、本願発明6は、上記相違点4及び5に係る本願発明6の構成を備えることにより、「スケール形成及び腐食を防止及び/又は低減することができる。」(本願明細書段落0016、0077、0078)という格別の効果を奏するものである。
このような結果を踏まえると、引用発明aにおいて、加熱素子を摂氏140乃至180°Cの範囲の温度に加熱し、加熱素子と対向電極との間に液体を流すように構成された流れユニットと、加熱素子と対向電極との間に、1Hz及び1000Hzの2つの重畳されたAC信号(三角形形状)を付与する電源に代えて、非変調のAC電位差を印加するように構成された電源200とを有し、前記AC電位差は200乃至2000Hzの範囲内のAC周波数で変化し、1.6V乃至3.2Vの振幅を有するよう構成することを、当業者が容易に想到し得たこととすることはできない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明6は、当業者であっても、引用発明a並びに引用文献1記載事項1?4及び引用文献2記載事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本願発明7?9について
本願発明7?9も、相違点1?3に係る本願発明6の構成を備えるものであるから、本願発明6と同じ理由により、当業者であっても、引用発明a並びに引用文献1記載事項1?4及び引用文献2記載事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.当審拒絶理由1の理由2(サポート要件)及び当審拒絶理由2(明確性)について
平成30年11月19日付けの手続補正により、補正後の請求項1は、「前記加熱エレメントを摂氏140乃至180°Cの範囲の温度に加熱する」という技術的事項、「前記加熱エレメントと前記カウンタ電極との間に非変調のAC電位差を印加する」とともに「前記AC電位差は200乃至2000Hzの範囲内のAC周波数で変化し、1.6乃至3.2Vの振幅を有する」という技術的事項、「前記加熱エレメントと前記カウンタ電極とは、0.5-5mmの範囲の相互距離を有する」という技術的事項を有するものとなった。
また、補正後の請求項2?10についても同様の技術的事項を有するものとなった。
その結果、当審拒絶理由1の理由2及び当審拒絶理由2は解消した。

第7 原査定についての判断
平成30年11月19日付けの補正により、補正後の請求項1は、「(i)前記加熱エレメントを摂氏140乃至180°Cの範囲の温度に加熱することにより前記ヒータの中の液体を加熱するステップと、
(ii)前記加熱エレメントと前記カウンタ電極との間に非変調のAC電位差を印加するステップとを有し、
前記AC電位差は200乃至2000Hzの範囲内のAC周波数で変化し、1.6乃至3.2Vの振幅を有し、前記液体は前記ヒータの中の前記加熱エレメントと前記カウンタ電極との間を流れ」との技術的事項を有するものとなった。
また、補正後の請求項2?5についても、補正後の請求項1と同様の技術的事項を有するものとなった。
同様に、補正後の請求項6は、「前記加熱エレメントと前記カウンタ電極との間に前記液体を流すように構成された流れユニットと、
前記加熱エレメントと前記カウンタ電極との間に非変調のAC電位差を印加するように構成された電源とを有し、
前記AC電位差は200乃至2000Hzの範囲内のAC周波数で変化し、1.6V乃至3.2Vの振幅を有し、
前記加熱エレメントを摂氏140乃至180°Cの範囲の温度に加熱することにより前記ヒータの中の液体を加熱し」との技術的事項を有するものとなった。
また、補正後の請求項7?9についても、補正後の請求項6と同様の技術的事項を有するものとなった。
同様に、補正後の請求項10は、「前記AC電位差は200乃至2000Hzの範囲内の非変調のAC周波数で変化し、1.6V乃至3.2Vの振幅を有し、
前記加熱エレメントを摂氏140乃至180°Cの範囲の温度に加熱することにより前記液体を加熱し」との技術的事項を有するものとなった。
これらの技術的事項は、原査定における引用文献A(引用文献1)、引用文献B(引用文献2)、引用文献C及び引用文献Dには記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1?10は、当業者であっても、原査定における引用文献A?Dに基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-02-05 
出願番号 特願2016-505903(P2016-505903)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H05B)
P 1 8・ 121- WY (H05B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 渡邉 聡  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 井上 哲男
宮崎 賢司
発明の名称 パルス信号反転による電気化学的スケール除去  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  

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