• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16L
管理番号 1348617
審判番号 不服2018-16874  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-19 
確定日 2019-02-26 
事件の表示 特願2014-185008号「配管システム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年4月21日出願公開、特開2016-56906号、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年9月11日の出願であって、平成30年2月7日付けで拒絶理由が通知され、平成30年4月4日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年9月14日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対して、平成30年12月19日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は、次のとおりである。

本願請求項1?5に係る発明は、下記の引用文献1?3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献等一覧:
1.実願昭55-89071号(実開昭57-11387号)のマイクロフィルム
2.特開2004-330559号公報
3.実願昭51-97727号(実開昭53-15516号)のマイクロフィルム

第3 本願発明
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成30年4月4日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「軸心から外周の方向に、少なくとも、第1層、第2層および第3層が積層され、前記第2層が前記第1層および前記第3層より大きい弾性率を有する複数の多層管と、
前記多層管と融着され、前記複数の多層管のうち一の多層管の端部に外挿した第1外挿筒部、前記第1外挿筒部に連設しかつ他の多層管の端部に外挿した第2外挿筒部、および、前記第1外挿筒部と前記第2外挿筒部との境界部の内周面に突設されかつ前記一の多層管の末端と前記他の多層管の末端とを当接させた、前記多層管より小さい弾性率を有する当接突部を含む継手とを含み、
前記第2層が前記多層管の肉厚中央を包含するように位置し、かつ前記当接突部の頂端が前記肉厚中央より前記外周の側に位置する、配管システム。」

なお、本願請求項2?5に係る発明は、いずれも本願発明を引用し、本願発明を減縮するものである。

第4 引用文献等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている。

(1)「本考案は上記の点に鑑み、管の抜け出しを確実に阻止できる管継手を提供するものであり、以下その一実施例を図面に基づいて説明する。
第2図において、(5a),(5b)は互いに接続される汚水管あるいは雑排水管等の管であり、これらの管(5a),(5b)は鋳鉄管あるいは鋼管等から成り、その管端は若干の間隔をあけて相対向している(6)は前記双方の管(5a),(5b)の管端部に外嵌するゴム等から成る筒状の弾性体であり、該弾性体(6)の軸心方向中央部内周面には、周方向全長にわたる環状突起(7)が突設されており、前記管(5a),(5b)の管端はこの環状突起(7)の両側面にそれぞれ接当している。この環状突起(7)は管(5a),(5b)の位置決めを行うものである。前記弾性体(6)の両端部外周面には環状溝(8a),(8b)が形成されており、弾性体(6)の軸心方向中央部外周面には該環状溝(8a)、(8b)間にステンレススチール等の薄板から成る板体(9)が周方向全長にわたって巻回されている。この板体(9)の両端部および前記環状溝(8a),(8b)にはステンレススチール等から成るバンド(10a),(10b)および(lla),(llb)が巻回されている。このバンド(10a),(10b)および(11a),(llb)は長手方向一端部の幅が狭くなっていると共に、この部分に幅方向に対して傾斜する複数の長孔(12)か長手方向適当間隔おきに穿設されており、また長手方向他端部には前記長孔(12)に嵌合するねじ(13)が支持部材(14)を介して取付けられており、このねじ(13)を回転させることにより前記バンド(10a),(10b)および(lla),(llb)の径を調節することかできる。」(明細書2頁3行?同3頁12行参照。)

(2)「



してみれば、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「互いに接続される鋳鉄管あるいは鋼管等から成る管と、双方の管の管端部に外嵌するゴム等から成る筒状の弾性体であり、該弾性体の軸心方向中央部内周面には、周方向全長にわたる環状突起が突設されており、前記管の管端はこの環状突起の両側面にそれぞれ接当している弾性体とを含む、弾性体で接続された管。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献2には、次の事項が記載されている。
(1)「【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。本発明に係る繊維強化中空構造体は、図1に示すように、例えば温室ハウス等で用いられる灌水管として用いられるパイプ1である。このパイプ1は、本体を構成する中間層2と、その内外周に一体に成形された中芯(内層)3および被覆層(外層)4とからなる3層構造となっている。
中間層2は、パイプ1の主要強度部材となるもので、ガラス繊維などの補強繊維にエポキシ、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性のマトリックス樹脂を含浸し、硬化させることによって得られる。
なお、補強繊維としては、他の例えば炭素繊維、ボロン、アラミド繊維、高弾性率の合繊繊維なども使用可能であるが、高価となるため、ガラス繊維を用いることが望ましい。
中芯3、および被覆層4は、熱可塑性樹脂から構成されるもので、接着剤に対する接着性、シール性および前記中間層2の繊維の毛羽立ちを防止し、作業者に対する保護層として機能する。」(段落【0013】?【0016】)

(2)




3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献3には、次の事項が記載されている。
(1)「以下に本考案の一実施例を示す添附図面を参照にして説明すると、本考案の強化プラスチック製パイプ状物は三層構造からなつており、中間層1はガラス繊維等の高強力低伸度の補強用長繊維束を不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂で一体的に結着してなる。中間層1の内側層2及び外側層3は熱可塑性樹脂から構成され、この内外の熱可塑性樹脂層の少なくとも一方は、中間層を構成するマトリックス成分である熱硬化性樹脂と化学的親和性を有する熱可塑性樹脂から形成されている。」(明細書3頁16行?同4頁6行参照。)

(2)「

」(添附図面)

第5 対比・判断
1.対比
引用発明の「弾性体で接続された管」は、弾性体により管を接続するものであるから、本願発明の「配管システム」に相当し、管を互いに接続するものである以上、複数の管を含んでいる。
また、引用発明の「弾性体」は、機能上、本願発明の「継手」を構成するものと認められ、当該「弾性体」の「管の管端部に外嵌するゴム等から成る筒状」の部分及び「環状突起」は、それぞれ本願発明の「第1外挿筒部」又は「第2外挿筒部」及び「当接突部」に相当する。そして、当該弾性体はゴム等から成る以上、当接突起は鋳鉄管あるいは鋼管等から成る管より小さい弾性率を有するものと認められる。
してみると、本願発明と引用発明は、次の一致点及び相違点を有する。

【一致点】
複数の管と、
前記複数の管のうち一の管の端部に外挿した第1外挿筒部、前記第1外挿筒部に連設しかつ他の多層管の端部に外挿した第2外挿筒部、および、前記第1外挿筒部と前記第2外挿筒部との境界部の内周面に突設されかつ前記一の管の末端と前記他の管の末端とを当接させた、前記管より小さい弾性率を有する当接突部を含む継手とを含む、配管システム。

【相違点】
(1)管が、本願発明は「軸心から外周の方向に、少なくとも、第1層、第2層および第3層が積層され、前記第2層が前記第1層および前記第3層より大きい弾性率を有する複数の多層管」であるのに対し、引用発明は、「互いに接続される鋳鉄管あるいは鋼管等から成る管」である点

(2)本願発明は、継手が多層管と融着されるのに対し、引用発明は、管と弾性体を融着するものではない点

(3)本願発明は、第2層が多層管の肉厚中央を包含するように位置し、かつ当接突部の頂端が肉厚中央より外周の側に位置するのに対し、引用発明は、管が多層管でなく、そのような位置関係を備えていない点

2.相違点についての判断
まず、相違点(1)について検討すると、引用発明は鋳鉄管あるいは鋼管等から成る汚水管あるいは雑排水管等の管に係る発明であるから、当該管にあえて多層管を用いる必要性は認められない。
よって、軸心から外周の方向に、少なくとも、第1層、第2層および第3層が積層され、前記第2層が前記第1層および前記第3層より大きい弾性率を有する多層管が引用文献2又は3に記載されているように管として周知の手段である(なお、引用文献2及び3記載のものは中間層(すなわち、第2層)にガラス繊維等を含ませている以上、第2層が第1層および第3層より大きい弾性率を有することは明らかである。)としても、鋳鉄管あるいは鋼管等から成る汚水管あるいは雑排水管等の管を意図している引用発明の管を当該周知の手段に係る多層管に置き換える動機付けはないから、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された事項に基づいて、本願発明を当業者が容易に想到できるとはいえない。
また、仮に、上記置き換えが当業者にとって容易であったとしても、相違点(3)に係る構成の採用が当業者にとって容易であるとはいえない。
すなわち、引用文献2の図1及び引用文献3の添附図面の記載からすれば、これら引用文献記載の多層管も第2層が多層管の肉厚中央を包含するように位置している構成を備えており、当該構成は周知の手段に含まれているといえる。
しかし、引用発明の管を当該周知の手段に係る多層管に置き換えても、引用発明の管状突起(当接突部)は、その頂端が多層管の肉厚中央より外周の側に位置しているとは必ずしもいえない(上記第4の1.(2)の第2図参照。)から、「当接突部の頂端が(多層管の)肉厚中央より外周の側に位置する」という構成を備えることにはならない。
そして、本願発明は当該構成を備えることにより、「多層管200,200’の末端299,299’の面と接する部分が少なくて済み、当接突部350が、配管システム100の外力を効率よく吸収することができる。このため、ずれの角度θの自由度が比較的高い。角度θは、具体的にはたとえば1°以上45°以下である。したがって、継手300部分の耐震性を良好に維持することができる。」(本願明細書の段落【0071】参照。)という作用効果を奏するのであるから、当該構成の採用が設計的事項であるということはできない。
したがって、相違点(2)について判断するまでもなく、本願発明は、当業者であっても、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
また、請求項2?5に係る発明は、いずれも本願発明のすべての構成を包含するものであるから、本願発明と同じ理由により、当業者が引用発明並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願請求項1?5に係る発明は、当業者が引用発明並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶する理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-02-12 
出願番号 特願2014-185008(P2014-185008)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F16L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 嶌田 康平小川 恭司  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 井上 哲男
松下 聡
発明の名称 配管システム  
代理人 特許業務法人 クレイア特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ