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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 H01M 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H01M 審判 全部申し立て 特174条1項 H01M |
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管理番号 | 1348692 |
異議申立番号 | 異議2018-700264 |
総通号数 | 231 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-03-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-03-28 |
確定日 | 2018-12-06 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6220396号発明「電極組立体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6220396号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?14〕について訂正することを認める。 特許第6220396号の請求項1?14に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6220396号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?14に係る特許についての出願は、2014年(平成26年)5月23日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2013年5月23日 韓国(KR),2013年11月22日 韓国(KR),2014年5月22日 韓国(KR))を国際出願日とする出願であって、平成29年10月6日に特許権の設定登録がされ、同年10月25日に特許掲載公報が発行され、平成30年3月28日付けで請求項1?14(全請求項)に対し、特許異議申立人である平賀博(以下、「申立人」という。)によって特許異議の申立てがされ、同年6月19日付けで当審から特許権者に対して取消理由が通知され、同年9月20日付けで特許権者から意見書の提出とともに訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、同年11月2日付けで申立人から意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否について 1 本件訂正請求の趣旨 本件訂正請求の趣旨は、「特許第6220396号の特許請求の範囲を本件請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?14について訂正することを求める。」というものである。 2 訂正事項 本件訂正請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すために当審において付したものである。 [訂正事項] 特許請求の範囲の範囲の請求項1の「前記分離膜の末端は隣接した分離膜の末端と接合されず、」という記載を 「前記第1段階は、 第1電極材料、第1分離膜材料、第2電極材料及び第2分離膜材料が順次配置された状態で供給すること; 前記第1電極材料及び第2電極材料を所定の大きさに切断すること; 加圧を介して、または加圧及び加熱を介して前記電極材料と隣接した前記分離膜材料を互いに接着すること;及び 前記第1分離膜材料と第2分離膜材料を、前記第1電極材料及び第2電極材料の大きさに対応するよう所定の大きさに切断すること;を含み、 前記第1段階によって製造された前記基本単位体で、前記分離膜の末端は隣接した分離膜の末端と接合されず、」と訂正する。 3 一群の請求項について 本件訂正前の請求項1?14は、請求項2?14が、本件訂正請求の対象である請求項1を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項1?14について請求されたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 4 訂正要件の検討 (1)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 本件訂正は、「互いに同一の個数の電極と分離膜が交互に積層された構造を有する1種の基本単位体を製造する第1段階」を「前記第1段階は、 第1電極材料、第1分離膜材料、第2電極材料及び第2分離膜材料が順次配置された状態で供給すること; 前記第1電極材料及び第2電極材料を所定の大きさに切断すること; 加圧を介して、または加圧及び加熱を介して前記電極材料と隣接した前記分離膜材料を互いに接着すること;及び 前記第1分離膜材料と第2分離膜材料を、前記第1電極材料及び第2電極材料の大きさに対応するよう所定の大きさに切断すること;を含み、」と限定するとともに、「前記分離膜の末端は隣接した分離膜の末端と接合され」ないとされる対象を「前記第1段階によって製造された前記基本単位体」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 イ 新規事項の有無 (ア)本件特許の願書に添付された明細書及び図面(以下、「本件明細書等」という。)には、以下の記載がある。なお、「・・・」は記載の省略を表す(以下同様)。 「【0019】 [基本単位体の製造] 図7を参照して代表的に第1基本単位体を製造する工程に対して検討してみる。先ず、第1電極材料121、第1分離膜材料122、第2電極材料123及び第2分離膜材料124を準備する。ここで第1分離膜材料122と第2分離膜材料124は互いに同一の材料であり得る。その後、第1電極材料121をカッターC_(1)を介して所定の大きさに切断し、第2電極材料123もカッターC_(2)を介して所定の大きさに切断する。その後、第1電極材料121を第1分離膜材料122に積層し、第2電極材料123を第2分離膜材料124に積層する。 【0020】 その後、ラミネータL_(1)、L_(2)で電極材料と分離膜材料を互いに接着させることが好ましい。このような接着により電極と分離膜が一体に結合された基本単位体が製造され得る。結合の方法は多様であり得る。ラミネータL_(1)、L_(2)は接着のために材料に圧力を加えるか圧力と熱を加える。このような接着は、単位体スタック部を製造する際に基本単位体の積層をより容易にする。また、このような接着は基本単位体の整列にも有利である。このような接着後に第1分離膜材料122と第2分離膜材料124をカッターC_(3)を介して所定の大きさに切断すれば、基本単位体110aが製造され得る。このような過程中に分離膜の末端は隣接した分離膜の末端と接合されない。 【0021】 このように、基本単位体で電極は隣接した分離膜に接着され得る。または分離膜が電極に接着されるとみることもできる。・・・通常、電極は分離膜より小さい。」 「【0029】 ・・・分離膜は、通常、電極より大きい。・・・」 「【図7】 」 (イ)前記(ア)の記載のうち、「先ず、第1電極材料121、第1分離膜材料122、第2電極材料123及び第2分離膜材料124を準備する。」「その後、第1電極材料121をカッターC_(1)を介して所定の大きさに切断し、第2電極材料123もカッターC_(2)を介して所定の大きさに切断する。その後、第1電極材料121を第1分離膜材料122に積層し、第2電極材料123を第2分離膜材料124に積層する。」(【0019】)ことに関し、図7も参照すると、ラミネータL_(1)、L_(2)に導入される前の段階では、カッターC_(1)で所定の大きさに切断された第1電極材料121、帯状に連続した第1分離膜122、カッターC_(2)で所定の大きさに切断された第2電極材料123、及び、帯状に連続した第1分離膜124が上側から順次配置されている状態で供給されることを看取できるから、本件明細書等には、本件訂正に係る訂正事項のうちの「第1電極材料、第1分離膜材料、第2電極材料及び第2分離膜材料が順次配置された状態で供給すること; 前記第1電極材料及び第2電極材料を所定の大きさに切断すること;」に相当する事項が記載されている。 (ウ)次に、前記(ア)の記載のうち、「その後、ラミネータL_(1)、L_(2)で電極材料と分離膜材料を互いに接着させることが好ましい。このような接着により電極と分離膜が一体に結合された基本単位体が製造され得る。結合の方法は多様であり得る。ラミネータL_(1)、L_(2)は接着のために材料に圧力を加えるか圧力と熱を加える。」「このような接着後に第1分離膜材料122と第2分離膜材料124をカッターC_(3)を介して所定の大きさに切断すれば、基本単位体110aが製造され得る。」(【0020】)ことに関し、図7も参照すると、カッターC_(1)で所定の大きさに切断された第1電極材料121、帯状に連続した第1分離膜122、カッターC_(2)で所定の大きさに切断された第2電極材料123、及び、帯状に連続した第1分離膜124が上側から順次配置された状態で、上下方向からラミネータL_(1)、L_(2)によって圧力を加えるか圧力と熱を加えることにより接着されて一体に結合され、その後、カッターC_(3)で第1分離膜材料122及び第2分離膜材料124が所定の大きさに切断されて、基本単位体110aが製造されることを看取できるから、本件明細書等には、本件訂正に係る訂正事項のうちの「加圧を介して、または加圧及び加熱を介して前記電極材料と隣接した前記分離膜材料を互いに接着すること;及び 前記第1分離膜材料と第2分離膜材料を、」「所定の大きさに切断すること;」に相当する事項が記載されている。 また、本件明細書等には、「通常、電極は分離膜より小さい。」(【0021】)、「分離膜は、通常、電極より大きい。」(【0029】)と記載されており、図7からは、基本単位体110aにおいて、第1分離膜材料122及び第2分離膜材料124は、第1電極材料121及び第2電極材料123よりも大きく、第1分離膜材料122及び第2分離膜材料124の周縁部は、第1電極材料121及び第2電極材料123の周縁部に対して延在していることが看取できるから、本件明細書等には、本件訂正に係る訂正事項のうちの「前記第1分離膜材料と第2分離膜材料を、前記第1電極材料及び第2電極材料の大きさに対応するよう所定の大きさに切断すること;」に相当する事項も記載されている。 (エ)さらに、本件明細書等には、「・・・すれば、基本単位体110aが製造され得る。このような過程中に分離膜の末端は隣接した分離膜の末端と接合されない。」(【0020】)と記載されているから、本件訂正に係る訂正事項のうちの「前記第1段階によって製造された前記基本単位体で、前記分離膜の末端は隣接した分離膜の末端と接合されず、」に相当する事項も記載されている。 (オ)以上によれば、本件訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (2)独立特許要件 特許異議の申立ては、本件訂正前の請求項1?14の全請求項に対してされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。 5 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第4項並びに、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 そして、本件訂正は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものではなく、特定の請求項に係る訂正事項について別の請求単位とする求めもない。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、請求項〔1?14〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正が認められたので、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?14に係る発明(以下、「本件発明1?14」という。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 互いに同一の個数の電極と分離膜が交互に積層された構造を有する1種の基本単位体を製造する第1段階;及び 前記1種の基本単位体を繰り返して積層して単位体スタック部を製造する第2段階を含み、 前記第1段階は、 第1電極材料、第1分離膜材料、第2電極材料及び第2分離膜材料が順次配置された状態で供給すること; 前記第1電極材料及び第2電極材料を所定の大きさに切断すること; 加圧を介して、または加圧及び加熱を介して前記電極材料と隣接した前記分離膜材料を互いに接着すること;及び 前記第1分離膜材料と第2分離膜材料を、前記第1電極材料及び第2電極材料の大きさに対応するよう所定の大きさに切断すること;を含み、 前記第1段階によって製造された前記基本単位体で、前記分離膜の末端は隣接した分離膜の末端と接合されず、 前記1種の基本単位体は、第1電極、第1分離膜、第2電極及び第2分離膜が順次積層された4層構造を有し、 前記基本単位体内で前記電極と前記隣接した分離膜との間の接着力は、前記単位体スタック部内で前記基本単位体間の接着力より大きく、 前記基本単位体内の分離膜のうち前記第1分離膜は、両面に接着力を有するコーティング層がコーティングされ、 前記基本単位体内の分離膜のうち前記第2分離膜は、前記第2電極と対向する一面にのみ接着力を有するコーティング層がコーティングされ、 前記第1段階において前記電極は、隣接した分離膜に接着され、 前記分離膜は、多孔性の分離膜基材、及び前記分離膜基材の一面または両面に全体的にコーティングされる多孔性のコーティング層を含み、 前記コーティング層は、無機物粒子と前記無機物粒子を互いに連結及び固定するバインダ高分子の混合物で形成され、 前記電極は、前記コーティング層によって前記隣接した分離膜に接着され、 前記無機物粒子は、充填構造(densely packed structure)を成して前記コーティング層で全体的に無機物粒子間のインタースティシャルボリューム(interstitial volumes)を形成し、前記無機物粒子が限定するインタースティシャルボリュームによって前記コーティング層に気孔構造が形成されることを特徴とする電極組立体の製造方法。 【請求項2】 前記第1段階において前記電極は、前記隣接した分離膜に対向する面で全体的に前記隣接した分離膜に接着されることを特徴とする請求項1に記載の電極組立体の製造方法。 【請求項3】 前記第1段階において前記電極は、ラミネーティングによって前記隣接した分離膜に対向する面で全体的に前記隣接した分離膜に接着されることを特徴とする請求項1に記載の電極組立体の製造方法。 【請求項4】 前記単位体スタック部の最上側または最下側に位置する電極である末端電極に第1補助単位体を積層する第3段階をさらに含み、 前記末端電極が正極であるとき、前記第1補助単位体は前記末端電極から順次、分離膜、負極、分離膜及び正極が積層されて形成され、 前記末端電極が負極であるとき、前記第1補助単位体は前記末端電極から順次、分離膜及び正極が積層されて形成されることを特徴とする請求項1に記載の電極組立体の製造方法。 【請求項5】 前記第1補助単位体の正極は、 集電体;及び 前記集電体の両面のうち前記基本単位体に対向する一面にのみコーティングされる活物質を備えることを特徴とする請求項4に記載の電極組立体の製造方法。 【請求項6】 前記単位体スタック部の最上側または最下側に位置する分離膜である末端分離膜に第2補助単位体を積層する第4段階をさらに含み、 前記基本単位体で前記末端分離膜に接した電極が正極であるとき、前記第2補助単位体は前記末端分離膜から順次、負極、分離膜及び正極が積層されて形成され、 前記基本単位体で前記末端分離膜に接した電極が負極であるとき、前記第2補助単位体は正極で形成されることを特徴とする請求項1に記載の電極組立体の製造方法。 【請求項7】 前記第2補助単位体の正極は、 集電体;及び 前記集電体の両面のうち前記基本単位体に対向する一面にのみコーティングされる活物質を備えることを特徴とする請求項6に記載の電極組立体の製造方法。 【請求項8】 前記単位体スタック部の最上側または最下側に位置する電極である末端電極に第1補助単位体を積層する第3段階をさらに含み、 前記末端電極が正極であるとき、前記第1補助単位体は前記末端電極から順次、分離膜及び負極が積層されて形成され、 前記末端電極が負極であるとき、前記第1補助単位体は前記末端電極から順次、分離膜、正極、分離膜及び負極が積層されて形成されることを特徴とする請求項1に記載の電極組立体の製造方法。 【請求項9】 前記第1補助単位体は、前記負極の外側に分離膜をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の電極組立体の製造方法。 【請求項10】 前記単位体スタック部の最上側または最下側に位置する分離膜である末端分離膜に第2補助単位体を積層する第4段階をさらに含み、 前記基本単位体で前記末端分離膜に接した電極が正極であるとき、前記第2補助単位体は負極で形成され、 前記基本単位体で前記末端分離膜に接した電極が負極であるとき、前記第2補助単位体は前記末端分離膜から順次、正極、分離膜及び負極が積層されて形成されることを特徴とする請求項1に記載の電極組立体の製造方法。 【請求項11】 前記第2補助単位体は、前記負極の外側に分離膜をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の電極組立体の製造方法。 【請求項12】 前記単位体スタック部の最上側または最下側に位置する分離膜である末端分離膜に第2補助単位体を積層する第4段階をさらに含み、 前記基本単位体で前記末端分離膜に接した電極が負極であるとき、前記第2補助単位体は前記末端分離膜から順次、第1正極、分離膜、負極、分離膜及び第2正極が積層されて形成されることを特徴とする請求項1に記載の電極組立体の製造方法。 【請求項13】 前記第2補助単位体の第2正極は、 集電体;及び 前記集電体の両面のうち前記基本単位体に対向する一面にのみコーティングされる活物質を備えることを特徴とする請求項12に記載の電極組立体の製造方法。 【請求項14】 前記単位体スタック部の最上側または最下側に位置する分離膜である末端分離膜に第2補助単位体を積層する第4段階をさらに含み、 前記基本単位体で前記末端分離膜に接した電極が正極であるとき、前記第2補助単位体は前記末端分離膜から順次、第1負極、分離膜、正極、分離膜及び第2負極が積層されて形成されることを特徴とする請求項1に記載の電極組立体の製造方法。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1?14に係る発明に関し、平成30年6月19日付けで当審から特許権者に通知した取消理由(実施可能要件違反)の概要は以下のとおりである。 発明の詳細な説明の記載は、当業者が、本件訂正前の請求項1?14に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、本件訂正前の請求項1?14に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 2 当審の判断 (1)取消理由の内容 前記1の取消理由の内容は、以下のとおりである。 本件訂正前の請求項1?14に係る発明は、「第1電極、第1分離膜、第2電極及び第2分離膜が順次積層された4層構造」を有する「1種の基本単位体」において、「分離膜の末端は隣接した分離膜の末端と接合されず」という発明特定事項を有しているところ、上記「1種の基本単位体」の製造方法については、本件明細書等の発明の詳細な説明の【0019】,【0020】及び図7に記載されている。 しかし、二次電池用の電極材料や分離膜は薄く形成されることが当業者の技術常識であるから、二次電池用の電極材料や分離膜は外力によって撓むことが可能であり、さらに、本件訂正前の請求項1に係る発明では、第1分離膜と第2分離膜の末端の対抗する面には「接着力を有するコーティング層」が形成されているから、「第1基本単位体」を製造する工程において、「ラミネータL_(1)、L_(2)で電極材料と分離膜材料を互いに接着させる」際や、「第1分離膜材料122と第2分離膜材料124をカッターC_(3)を介して所定の大きさに切断す」る際に、第1分離膜材料と第2分離膜材料が末端で接触し接合されることになると考えられるところ、どのような点に配慮をすれば「分離膜の末端は隣接した分離膜の末端と接合されない」ようにできるのかは、発明の詳細な説明の【0019】,【0020】及び図7の記載を参酌しても明らかにはならない。 したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が、本件訂正前の請求項1?14に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。 (2)取消理由の検討 ア 特許権者から提出された意見書の内容 前記1の取消理由に対して、平成30年9月20日付けで特許権者から提出された意見書の内容は、以下のとおりである。 (ア)本件明細書等(【0019】,【0020】及び図7)の記載によれば、本件発明1の「1種の基本単位体」の製造段階は、 [1]カッター(C_(1)、C_(2))で、電極材料(121、123)を所定の大きさに切断する段階、 [2]ラミネータ(L_(1)、L_(2))で、電極材料(121、123)と分離膜材料(122、124)を互いに接着する段階、及び、 [3]カッター(C_(3))で、分離膜材料(122、124)を所定の大きさに切断する段階 の3つの段階で進められることを確認できる。 (イ)このうち、前記[2]の段階について検討すると、この段階では、第1分離膜材料及び第2分離膜材料は切断されていない状態であり、固定されたロールから巻き取られた状態で、ラミネータL_(1)及びL_(2)に供給されているから、第1分離膜材料及び第2分離膜材料全体にわたり一定の大きさの張力が加わるようになっている。 そのため、ラミネータ(L_(1)、L_(2))によって第1分離膜材料及び第2分離膜材料並びに第1電極材料及び第2電極材料が加圧された場合、第1分離膜材料及び第2分離膜材料は、上方又は下方に垂れることなくピンと張った状態(張力が加わった状態及び/又は張り切った状態)を維持することができる。 したがって、前記[2]の段階で、第1分離膜材料及び第2分離膜材料が互いに接合することはない。 また、本件明細書等の図7によれば、第1電極材料及び第2電極材料は所定の厚さを有しており、ラミネータ(L_(1)、L_(2))は、第1電極材料及び第2分離膜材料に接触するための平坦な表面を有しているから、ラミネート状態の電極材料及び分離膜材料が圧力を加えるために押圧されても、第1分離膜材料及び第2分離膜材料は、電極材料の厚さによって、互いに接合することはない。 たとえ、長い帯状の第1分離膜材料及び第2分離膜材料が、それぞれ、下方と上方に加圧されることがあるとしても、電極材料の厚さが十分に厚く、分離膜材料の剛性が十分に強く、切断された電極材料間の距離が十分に短ければ、前記[2]の段階で、第1分離膜材料及び第2分離膜材料が互いに接合することはない。 さらに、当業者であれば、ラミネータ(L_(1)、L_(2))として、円筒形状のローラを用いる場合であっても、分離膜の末端が加圧されないようにすることも可能である。 (ウ)次に、前記[3]の段階について検討すると、この段階では、カッター(C_(3))による切断の際の圧力は、ラミネータ(L_(1)、L_(2))によって加わる圧力よりも非常に小さいから、第1分離膜材料と第2分離膜材料が互いに接合することはない。 また、第1分離膜材料及び第2分離膜材料の切断時には、カッター(C_(3))によるせん断力が発生するため、第1分離膜材料及び第2分離膜材料に互いを接合するような力が加わることはない。 なお、カッター(C_(3))による切断の際に第1分離膜材料及び第2分離膜材料が「接触」する可能性はあるが、上記のとおり、両者が「接合」することはない。 (エ)さらに、「1種の基本単位体」の製造後の段階において、分離膜材料の末端が互いに接合するか否かを検討すると、製造後の「1種の基本単位体」においては、第1分離膜材料及び第2分離膜材料の末端には張力が作用しないため、分離膜材料の末端が上方又は下方に垂れる可能性はある。 しかし、本件明細書等の発明の詳細な説明の【0020】の記載によれば、分離膜材料に形成されたコーティング層が接着力を発現するためには、少なくとも相当な程度の圧力を加える必要があるといえるから、製造後の「1種の基本単位体」において、第1分離膜材料及び第2分離膜材料の末端が互いに接触するのみで接合されることはない。 (オ)以上のとおりであるから、本件明細書等の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、本件発明1?14に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 イ 当審の判断 (ア)前記第2で検討したとおり、本件訂正によって、本件発明1?14は、前記ア(ア)の3つの段階[1]?[3]に相当する事項を備えるものとなった。 (イ)また、前記ア(イ)において、特許権者は、前記[2]の段階では、第1分離膜材料及び第2分離膜材料全体にわたり一定の大きさの張力が加わるようになっているため、第1分離膜材料及び第2分離膜材料は、上方又は下方に垂れることなくピンと張った状態(張力が加わった状態及び/又は張り切った状態)を維持することができる旨、主張しているところ、第1分離膜材料及び第2分離膜材料全体にわたり一定の張力が加わるようにするためには、ラミネータ(L_(1)、L_(2))の設置位置とカッター(C_(3))の設置位置との間に、ロール状に巻き取られた帯状の第1分離膜材料及び第2分離膜材料に張力を加えて繰り出すためのローラー等の手段(以下、「繰出手段」という。)が必要になると考えられるが、本件明細書等の図7には、このような繰出手段は記載されておらず、発明の詳細な説明の【0019】,【0020】にも、繰出手段に関する記載はない。 しかし、当業者であれば、ラミネータ(L_(1)、L_(2))の設置位置とカッター(C_(3))の設置位置との間に上記の繰出手段が当然に設けられているものとして上記【0019】,【0020】及び図7に記載の製造工程を理解することができるものと認められる。 (ウ)前記(ア)(イ)を踏まえると、前記アの特許権者の主張は、いずれも妥当なものとして理解することができるから、本件明細書等の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、本件発明1?14に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 ウ 申立人の主張について (ア)前記アの特許権者の主張に対して、申立人は、平成30年11月2日付け意見書において、以下の主張をしている。 a 前記[2]の段階についての特許権者の主張(前記ア(イ))に対して (a)特許権者は、第1分離膜材料及び第2分離膜材料全体にわたり一定の大きさの張力が加わるようになっているため、第1分離膜材料及び第2分離膜材料は、上方又は下方に垂れることなくピンと張った状態(張力が加わった状態及び/又は張り切った状態)を維持することができる旨、主張しているが、本件明細書等には「張力が加わるようになっている」ことに関して何ら記載されていないから上記主張は失当である。 (b)特許権者は、第1電極材料及び第2電極材料は所定の厚さを有しており、ラミネータ(L_(1)、L_(2))は、第1電極材料及び第2分離膜材料に接触するための平坦な表面を有しているから、ラミネート状態の電極材料及び分離膜材料が圧力を加えるために押圧されても、第1分離膜材料及び第2分離膜材料は、電極材料の厚さによって、互いに接合することはない旨、主張しているが、本件明細書等には、電極材料の具体的な厚さについて何らの記載もないから上記主張は失当である。 (c)特許権者は、長い帯状の第1分離膜材料及び第2分離膜材料が、それぞれ、下方と上方に加圧されることがあるとしても、電極材料の厚さが十分に厚く、分離膜材料の剛性が十分に強く、切断された電極材料間の距離が十分に短ければ、第1分離膜材料及び第2分離膜材料が互いに接合することはない旨、主張しているが、本件明細書等の図1,2,7等からは、以上のことは看取できないから上記主張は失当である。 (d)特許権者は、前記[2]の段階で、ラミネータ(L_(1)、L_(2))として、円筒形状のローラを用いる場合であっても、分離膜の末端が加圧されないようにすることも可能である旨、主張するが、この場合には、ローラが電極材料と電極材料との間に入り込み、第1分離膜材料と第2分離膜材料が接合されると考えるのが自然であり、そもそも、円筒形状のローラを用いる場合について、本件明細書等には何らの記載もないから上記主張は失当である。 b 前記[3]の段階についての特許権者の主張(前記ア(ウ))に対して 特許権者は、カッター(C_(3))による切断の際の圧力は、ラミネータ(L_(1)、L_(2))によって加わる圧力よりも非常に小さいから、第1分離膜材料と第2分離膜材料が互いに接合することはなく、第1分離膜材料及び第2分離膜材料の切断時には、カッター(C_(3))によるせん断力が発生するため、第1分離膜材料及び第2分離膜材料に互いを接合するような力が加わることはない旨、主張するが、「カッター(C_(3))による切断の際の圧力」と「ラミネータ(L_(1)、L_(2))によって加わる圧力」の大小関係について、本件明細書等には何ら記載されておらず、切断の際に、単位面積当たりの力としては、相当程度の圧力がかかることは容易に想像できるから、上記主張は失当である。 c 「1種の基本単位体」の製造後の段階についての特許権者の主張(前記ア(エ))に対して 特許権者は、分離膜材料の末端が上方又は下方に垂れる可能性があるとしても、本件明細書等の【0020】の記載によれば、分離膜材料に形成されたコーティング層が接着力を発現するためには、少なくとも相当な程度の圧力を加える必要があるといえるから、製造後の「1種の基本単位体」において、第1分離膜材料及び第2分離膜材料の末端が互いに接触するのみで接合されるとはいえない旨主張するが、「分離膜材料に形成されたコーティング層が接着力を発現するためには、少なくとも相当な程度の圧力を加える必要がある」ことは、本件明細書等には記載がなく、本件明細書等(【0020】,【0022】)には、「コーティング層」ではなく「接着剤」によって結合することも記載されており、この場合は分離膜材料が接触するだけで接合されることになるから、上記主張は失当である。 (イ)申立人の前記(ア)の主張について検討する。 a 前記[2]の段階で、1分離膜材料及び第2分離膜材料全体にわたり一定の大きさの張力が加わるようになっていることについては、前記イ(イ)で検討したとおり、当業者であれば、ラミネータ(L_(1)、L_(2))の設置位置とカッター(C_(3))の設置位置との間に張力を加えるための繰出手段が当然に設けられているものとして、本件明細書等の【0019】,【0020】及び図7に記載の製造工程を理解することができるものと認められる。 また、本件明細書等には、電極材料や分離膜材料の厚さや、分離膜材料の剛性、電極材料間の距離について、具体的な値は記載されていないが、これらは当業者であれば適宜設定できるものであり、その際に、これらの値を前記ア(イ)で特許権者が主張する点に配慮して設定すれば、前記[2]の段階で第1分離膜と第2分離膜が接合しないことは、当業者であれば特段の困難なく理解できることである。 さらに、本件明細書等の図面は、いずれも各部材の積層関係、配置関係や大小関係が明らかとなる限度で記載されたものにすぎず、各部材の寸法までが正確に記載されたものではない。 したがって、申立人の前記(ア)a(a)?(c)の主張はいずれも根拠を欠くものであるから、これを採用することはできない。 また、ラミネータ(L_(1)、L_(2))として、円筒形状のローラを用いる場合についての特許権者の主張は予備的なものであって、ラミネータ(L_(1)、L_(2))として、本件明細書等の図7に記載された形状のものを用いた場合に、前記[2]の段階で、第1分離膜と第2分離膜が接合しないことは、特許権者が前記ア(イ)で主張するとおりであるから、申立人の前記(ア)a(d)の主張についても、これを採用することはできない。 b 前記[3]の段階における「カッター(C_(3))による切断の際の圧力」と「ラミネータ(L_(1)、L_(2))によって加わる圧力」の大小関係については、本件明細書等には記載されていないが、ラミネータ(L_(1)、L_(2))による接着段階では、接着のために、材料に対し、ラミネータ(L_(1)、L_(2))の平坦な面で、一定程度の時間、材料に圧力を加えるか圧力と熱を加える必要があるのに対して、カッター(C_(3))による切断の段階では、材料の切断箇所に対して、力を線状に短時間作用させればよいことに照らせば、カッター(C_(3))による切断の段階で、第1分離膜材料と第2分離膜材料が互いに接合しないように条件を設定することは、当業者にとって、特段の困難を要することとはいえない。 したがって、申立人の前記(ア)bの主張についても、これを採用することはできない。 c さらに、「1種の基本単位体」の製造後の段階において、分離膜材料の末端が上方又は下方に垂れて接触する可能性があるとしても、ラミネータ(L_(1)、L_(2))による接着段階のような圧力又は圧力と熱が加わることがないことは明らかであるから、第1分離膜材料と第2分離膜材料が互いに接合することはなく、また、本件発明1?14は、接着のために「接着剤」ではなく「コーティング層」を用いるものであり、この点で、申立人の前記(ア)cの主張は前提を欠くものであるから、これを採用することはできない。 エ 以上にとおりであるから、本件訂正及び平成30年9月20日付けで特許権者から提出された意見書の主張によって、前記1の取消理由は解消した。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要 本件訂正前の請求項1?14に係る特許に対して申し立てられた特許異議申立理由(以下、「申立理由」という。)のうち、取消理由通知において採用しなかったものの概要は、以下のとおりである。 (1)申立理由1(異議申立書の第11頁下から第10行?第5行) 請求項1の「前記分離膜の末端は隣接した分離膜の末端と接合されず」という記載は、「電極と分離膜が交互に積層された構造」を前提にしており、「分離膜」は「電極」と「隣接」しているから「分離膜」同士が「隣接」することはないはずである。 したがって、請求項1及びこれを引用する請求項2?14の記載は明確であるとはいえず、また、請求項1?14に係る発明は、サポート要件を満たしているとはいえない。 (2)申立理由2(異議申立書の第12頁下から第9行?第13頁末行) ア 平成29年9月7日(受付日)付けの手続補正によって、請求項1の「前記基本単位体内の分離膜のうち前記第1分離膜は、両面に接着力を有するコーティング層がコーティングされ、前記基本単位体内の分離膜のうち前記第2分離膜は、前記第2電極と対向する一面にのみ接着力を有するコーティング層がコーティングされ」という事項を追加する補正は、同日(受付日)付け意見書によれば、本件明細書等の【0012】,【0023】,【0028】及び図3の記載を根拠とするものであるが、当該記載を参照しても、上記事項が記載されているとは到底いえない。 したがって、上記事項を追加する補正は新規事項の追加に該当し、また、請求項1?14に係る発明は、サポート要件を満たしているとはいえない。 イ 本件明細書等の【0019】には、「第1分離膜材料122と第2分離膜材料124は互いに同一の材料であり得る。」とあるとおり、「第1分離膜材料」と「第2分離膜材料」が「同一の材料」であることが記載されているのであるから、かかる記載によれば、「第1分離膜」は「両面」にコーティング層が設けられる一方、「第2分離膜」は「片面」にのみコーティング層が設けられているとはいえない。 したがって、請求項1?14に係る発明は、サポート要件を満たしているとはいえない。 ウ 請求項1の「前記第2分離膜は、前記第2電極と対向する一面にのみ接着力を有するコーティング層がコーティングされ」という記載は、「第2分離膜」の「他面」に、何もコーティングされていない場合や、接着力を有しないコーティング層がコーティングされている場合を含め、どのような態様までを含むのかが不明確である。 したがって、請求項1?14に係る発明は、明確であるとはいえない。 エ 請求項1の「接着力を有するコーティング層」という記載は、何をもって「接着力を有する」といえるのかが不明確である。本件明細書等には、「参考に、接着力は剥離力で表現することもできる」(【0028】)と記載されているが、「剥離力」という記載自体が曖昧で不明確であるから、かかる記載によっても、上記の「接着力を有する」という記載は依然として不明確である。 したがって、請求項1?14に係る発明は、明確であるとはいえない。 (3)申立理由3(異議申立書の第14頁第1?7行) 請求項1の「前記分離膜は、多孔性の分離膜基材、及び前記分離膜基材の一面または両面に全体的にコーティングされる多孔性のコーティング層を含み」という記載では、「コーティング層」を含む「分離膜」が、一部の「分離膜」を意味するのか、全ての「分離膜」を意味するのかが、曖昧であるから、請求項1?14に係る発明は、明確であるとはいえない。 (4)申立理由4(異議申立書の第14頁第8?13行) 請求項1には「第1電極」,「第1分離膜」,「第2電極」及び「第2分離膜」という記載と、「電極」及び「分離膜」という記載が混在しているが、後者の記載が、前者の記載の総称として用いられているのか否かが把握できないから、請求項1?14に係る発明は明確であるとはいえない。 (5)申立理由5(異議申立書の第14頁第14?22行) 請求項1の「前記無機物粒子は、充填構造(density packed structure)を成して前記コーティング層で全体的に無機物粒子間のインタースティシャルボリューム(interstitial volume)を形成し、前記無機物粒子が限定するインタースティシャルボリュームによって前記コーティング層に気孔構造が形成される」という記載は、本件明細書等の【0023】?【0026】の記載を参照しても、その意味内容は、依然として不明である。 したがって、請求項1?14に係る発明は、明確であるとはいえず、また、請求項1?14に係る発明は、サポート要件を満たしているとはいえない。 2 当審の判断 (1)申立理由1について 請求項1では「互いに同一の個数の電極と分離膜が交互に積層された構造を有する1種の基本単位体」における「電極」と「分離膜」の大小関係や位置関係は特定されていないが、本件明細書等には、「通常、電極は分離膜より小さい。」(【0021】)、「分離膜は、通常、電極より大きい。」(【0029】)と記載されており、また、「分離膜」は、隣接する電極間を電気的に絶縁するという機能上、「電極」と「電極」の間のいずれの部分にも存在している必要があるといえるから、上記「1種の基本単位体」では、「分離膜」は「電極」よりも大きく、「分離膜」の周縁部は「電極」の周縁部に対して延在しているものと認められる。 したがって、請求項1の「分離膜の末端は隣接した分離膜の末端と接合されず」という記載は、「電極の周縁部から延在する分離膜の周縁部が電極を介さずに接合されることがなく」という意味であると合理的に解することができるから、本件発明1?14は明確であり、サポート要件も満たしている。 (2)申立理由2について ア 本件明細書等の【0012】には、「基本単位体は、第1電極、第1分離膜、第2電極及び第2分離膜が順次積層されて形成され得る。」と記載されているから、かかる記載によれば、「第1分離膜」は、それぞれの面で「第1電極」及び「第2電極」に隣接しており、「第2分離膜」は、「第2電極」に対抗する一面で当該「第2電極」に隣接していることが分かる。 また、【0020】には、「基本単位体で電極は隣接した分離膜に接着され得る。」と記載され、【0023】には、「接着力を有するコーティング層を備える分離膜を介して全体的に電極を分離膜に接着させることができる。」と記載されている。 以上の記載を総合すれば、請求項1に記載の「前記基本単位体内の分離膜のうち前記第1分離膜は、両面に接着力を有するコーティング層がコーティングされ、前記基本単位体内の分離膜のうち前記第2分離膜は、前記第2電極と対向する一面にのみ接着力を有するコーティング層がコーティングされ」という事項は、本件明細書等に記載されているといえるから、当該事項を追加する補正は、新規事項の追加には該当せず、本件発明1?14は、サポート要件を満たしている。 イ 本件明細書等の【0019】には、「第1分離膜材料122と第2分離膜材料124は互いに同一の材料であり得る。」と記載されているが、前記アの検討結果を踏まえれば、当該記載における「同一の材料」とは、コーティング層の有無等の分離膜内の積層構造までを含めて「第1分離膜材料122」と「第2分離膜材料124」が「同一」であることをいうものでなく、コーティング層を除く部分の材料が第1分離膜材料と第2分離膜材料で同一であり得ることをいうものであるから、上記記載は、請求項1の「前記基本単位体内の分離膜のうち前記第1分離膜は、両面に接着力を有するコーティング層がコーティングされ、前記基本単位体内の分離膜のうち前記第2分離膜は、前記第2電極と対向する一面にのみ接着力を有するコーティング層がコーティングされ」という記載と矛盾するものではない。 したがって、本件発明1?14は、サポート要件を満たしている。 ウ 請求項1に記載された「前記第2分離膜は、前記第2電極と対向する一面にのみ接着力を有するコーティング層がコーティングされ」という記載では、「第2分離膜」の「第2電極と対向する一面」の反対側の「他面」については、何らの限定もされておらず任意であることは明らかであるから、上記記載は明確であって、かかる判断は、上記「他面」がどのような態様までを含むのかによって左右されるものではない。 したがって、本件発明1?14は、明確である。 エ 特許請求の範囲及び本件明細書等では「接着力」について明示的に定義はされていないが、一般に「接着」とは「二つの物体の表面どうしが接触し、離れられなくなること」(大辞林・第三版)を意味するから、上記「接着力」についても、「接着」の一般的な意味に基づいて、「二つの物体の表面どうしが接触し、離れられなくなる状態を維持できる能力」という意味で解することができる。 そして、「接着力」をこのように解すれば、請求項1において「接着力」の大小関係を特定した「前記基本単位体内で前記電極と前記隣接した分離膜との間の接着力は、前記単位体スタック部内で前記基本単位体間の接着力より大きく」という記載を理解することができ、また、「参考に、接着力は剥離力で表現することもできる」(【0028】)という記載が、接着された二つの物体を剥離する際に必要となる力である剥離力によって、接着力を表現することができるという意味であることを理解することもできる。 したがって、請求項1の「接着力を有する」という記載は明確であり、本件発明1?14は、明確である。 (3)申立理由3について 請求項1では、「前記分離膜は、多孔性の分離膜基材、及び前記分離膜基材の一面または両面に全体的にコーティングされる多孔性のコーティング層を含み」という記載の前に、「前記1種の基本単位体は、第1電極、第1分離膜、第2電極及び第2分離膜が順次積層された4層構造を有し、」「前記基本単位体内の分離膜のうち前記第1分離膜は、両面に接着力を有するコーティング層がコーティングされ、前記基本単位体内の分離膜のうち前記第2分離膜は、前記第2電極と対向する一面にのみ接着力を有するコーティング層がコーティングされ」という記載がある。 したがって、これらの記載を総合すれば、「前記分離膜は、多孔性の分離膜基材、及び前記分離膜基材の一面」「に全体的にコーティングされる多孔性のコーティング層を含み」という記載における「分離膜」は、「第2分離膜」を意味し、「前記分離膜は、多孔性の分離膜基材、及び前記分離膜基材の」「両面に全体的にコーティングされる多孔性のコーティング層を含み」という記載における「分離膜」は、「第1離膜」を意味することを理解できる。 したがって、本件発明1?14は、明確である。 (4)申立理由4について 前記(3)で検討したとおり、請求項1の「前記分離膜は、多孔性の分離膜基材、及び前記分離膜基材の一面または両面に全体的にコーティングされる多孔性のコーティング層を含み」という記載において、「多孔性の分離膜基材、及び前記分離膜基材の一面」「に全体的にコーティングされる多孔性のコーティング層を含」む「前記分離膜」は、「第2分離膜」を意味し、「多孔性の分離膜基材、及び前記分離膜基材の」「両面に全体的にコーティングされる多孔性のコーティング層を含」む「前記分離膜」は、「第1分離膜」を意味すると解することができるから、これを踏まえれば、請求項1の記載全体を通じて、「電極」は、「第1電極」及び「第2電極」を総称する記載であり、「分離膜」は、「第1分離膜」及び「第2分離膜」を総称する記載であることを理解することができる。 したがって、本件発明1?14は、明確である。 (5)申立理由5について 本件明細書等には、「コーティング層」に形成される「気孔構造」に関し、「コーティング層は無機物粒子等と無機物粒子等を互いに連結及び固定するバインダ高分子の混合物で形成され得る。」(【0023】)、「バインダ高分子はコーティング層に全体的に分布する」(【0024】)、「無機物粒子等は、充填構造(density packed structure)を成してコーティング層で全体的に無機物粒子等間のインタースティシャルボリューム(interstitial volume)を形成することができる。このとき、無機物粒子等が限定するインタースティシャルボリュームによって、コーティング層に気孔構造が形成され得る。」「インタースティシャルボリュームは位置に応じてバインダ高分子により塞がっていることもある。」(【0025】)、「無機物粒子等が充填構造を成すと、コーティング層で局部的に無機物粒子等のインタースティシャルボリュームが形成されるのではなく、コーティング層で全体的に無機物粒子等のインタースティシャルボリュームが形成される。」(【0026】)と記載されている。 上記記載によれば、無機物粒子等が充填構造(density packed structure)を成すことにより、コーティング層の全体にわたって、無機物粒子等間の間隙からなるインタースティシャルボリューム(interstitial volume)が形成され、このインタースティシャルボリュームの一部は、無機物粒子等とともにコーティング層を形成するバインダ高分子によって塞がれることもあるが、塞がれていないインタースティシャルボリュームは、コーティング層の全体にわたって気孔構造を形成することを理解することができる。 したがって、本件発明1?14は、明確であり、サポート要件も満たしている。 第6 結び 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?14に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1?14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 互いに同一の個数の電極と分離膜が交互に積層された構造を有する1種の基本単位体を製造する第1段階;及び 前記1種の基本単位体を繰り返して積層して単位体スタック部を製造する第2段階を含み、 前記第1段階は、 第1電極材料、第1分離膜材料、第2電極材料及び第2分離膜材料が順次配置された状態で供給すること; 前記第1電極材料及び第2電極材料を所定の大きさに切断すること; 加圧を介して、または加圧及び加熱を介して前記電極材料と隣接した前記分離膜材料を互いに接着すること;及び 前記第1分離膜材料と第2分離膜材料を、前記第1電極材料及び第2電極材料の大きさに対応するよう所定の大きさに切断すること;を含み、 前記第1段階によって製造された前記基本単位体で、前記分離膜の末端は隣接した分離膜の末端と接合されず、 前記1種の基本単位体は、第1電極、第1分離膜、第2電極及び第2分離膜が順次積層された4層構造を有し、 前記基本単位体内で前記電極と前記隣接した分離膜との間の接着力は、前記単位体スタック部内で前記基本単位体間の接着力より大きく、 前記基本単位体内の分離膜のうち前記第1分離膜は、両面に接着力を有するコーティング層がコーティングされ、 前記基本単位体内の分離膜のうち前記第2分離膜は、前記第2電極と対向する一面にのみ接着力を有するコーティング層がコーティングされ、 前記第1段階において前記電極は、隣接した分離膜に接着され、 前記分離膜は、多孔性の分離膜基材、及び前記分離膜基材の一面または両面に全体的にコーティングされる多孔性のコーティング層を含み、 前記コーティング層は、無機物粒子と前記無機物粒子を互いに連結及び固定するバインダ高分子の混合物で形成され、 前記電極は、前記コーティング層によって前記隣接した分離膜に接着され、 前記無機物粒子は、充填構造(densely packed structure)を成して前記コーティング層で全体的に無機物粒子間のインタースティシャルボリューム(interstitial volumes)を形成し、前記無機物粒子が限定するインタースティシャルボリュームによって前記コーティング層に気孔構造が形成されることを特徴とする電極組立体の製造方法。 【請求項2】 前記第1段階において前記電極は、前記隣接した分離膜に対向する面で全体的に前記隣接した分離膜に接着されることを特徴とする請求項1に記載の電極組立体の製造方法。 【請求項3】 前記第1段階において前記電極は、ラミネーティングによって前記隣接した分離膜に対向する面で全体的に前記隣接した分離膜に接着されることを特徴とする請求項1に記載の電極組立体の製造方法。 【請求項4】 前記単位体スタック部の最上側または最下側に位置する電極である末端電極に第1補助単位体を積層する第3段階をさらに含み、 前記末端電極が正極であるとき、前記第1補助単位体は前記末端電極から順次、分離膜、負極、分離膜及び正極が積層されて形成され、 前記末端電極が負極であるとき、前記第1補助単位体は前記末端電極から順次、分離膜及び正極が積層されて形成されることを特徴とする請求項1に記載の電極組立体の製造方法。 【請求項5】 前記第1補助単位体の正極は、 集電体;及び 前記集電体の両面のうち前記基本単位体に対向する一面にのみコーティングされる活物質を備えることを特徴とする請求項4に記載の電極組立体の製造方法。 【請求項6】 前記単位体スタック部の最上側または最下側に位置する分離膜である末端分離膜に第2補助単位体を積層する第4段階をさらに含み、 前記基本単位体で前記末端分離膜に接した電極が正極であるとき、前記第2補助単位体は前記末端分離膜から順次、負極、分離膜及び正極が積層されて形成され、 前記基本単位体で前記末端分離膜に接した電極が負極であるとき、前記第2補助単位体は正極で形成されることを特徴とする請求項1に記載の電極組立体の製造方法。 【請求項7】 前記第2補助単位体の正極は、 集電体;及び 前記集電体の両面のうち前記基本単位体に対向する一面にのみコーティングされる活物質を備えることを特徴とする請求項6に記載の電極組立体の製造方法。 【請求項8】 前記単位体スタック部の最上側または最下側に位置する電極である末端電極に第1補助単位体を積層する第3段階をさらに含み、 前記末端電極が正極であるとき、前記第1補助単位体は前記末端電極から順次、分離膜及び負極が積層されて形成され、 前記末端電極が負極であるとき、前記第1補助単位体は前記末端電極から順次、分離膜、正極、分離膜及び負極が積層されて形成されることを特徴とする請求項1に記載の電極組立体の製造方法。 【請求項9】 前記第1補助単位体は、前記負極の外側に分離膜をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の電極組立体の製造方法。 【請求項10】 前記単位体スタック部の最上側または最下側に位置する分離膜である末端分離膜に第2補助単位体を積層する第4段階をさらに含み、 前記基本単位体で前記末端分離膜に接した電極が正極であるとき、前記第2補助単位体は負極で形成され、 前記基本単位体で前記末端分離膜に接した電極が負極であるとき、前記第2補助単位体は前記末端分離膜から順次、正極、分離膜及び負極が積層されて形成されることを特徴とする請求項1に記載の電極組立体の製造方法。 【請求項11】 前記第2補助単位体は、前記負極の外側に分離膜をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の電極組立体の製造方法。 【請求項12】 前記単位体スタック部の最上側または最下側に位置する分離膜である末端分離膜に第2補助単位体を積層する第4段階をさらに含み、 前記基本単位体で前記末端分離膜に接した電極が負極であるとき、前記第2補助単位体は前記末端分離膜から順次、第1正極、分離膜、負極、分離膜及び第2正極が積層されて形成されることを特徴とする請求項1に記載の電極組立体の製造方法。 【請求項13】 前記第2補助単位体の第2正極は、 集電体;及び 前記集電体の両面のうち前記基本単位体に対向する一面にのみコーティングされる活物質を備えることを特徴とする請求項12に記載の電極組立体の製造方法。 【請求項14】 前記単位体スタック部の最上側または最下側に位置する分離膜である末端分離膜に第2補助単位体を積層する第4段階をさらに含み、 前記基本単位体で前記末端分離膜に接した電極が正極であるとき、前記第2補助単位体は前記末端分離膜から順次、第1負極、分離膜、正極、分離膜及び第2負極が積層されて形成されることを特徴とする請求項1に記載の電極組立体の製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-11-28 |
出願番号 | 特願2015-529707(P2015-529707) |
審決分類 |
P
1
651・
55-
YAA
(H01M)
P 1 651・ 537- YAA (H01M) P 1 651・ 536- YAA (H01M) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 冨士 美香 |
特許庁審判長 |
池渕 立 |
特許庁審判官 |
土屋 知久 長谷山 健 |
登録日 | 2017-10-06 |
登録番号 | 特許第6220396号(P6220396) |
権利者 | エルジー・ケム・リミテッド |
発明の名称 | 電極組立体の製造方法 |
代理人 | 鄭 元基 |
代理人 | 相田 京子 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 相田 伸二 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 相田 伸二 |
代理人 | 相田 京子 |
代理人 | 鄭 元基 |