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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1348719
異議申立番号 異議2017-700558  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-05 
確定日 2018-12-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6040741号発明「挽肉入りソースの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6040741号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。 特許第6040741号の請求項1-9に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6040741号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、平成24年12月7日の出願であって、平成28年11月18日に特許権の設定登録がなされ、平成28年12月7日に特許掲載公報が発行されたところ、平成29年6月5日に特許異議申立人荒井夏代(以下、「申立人」という。)により全請求項について特許異議の申立てがなされた。
その後の手続の経緯は次のとおりである。

平成29年 8月21日付け 取消理由通知
同年10月23日 意見書(特許権者),訂正請求書提出
同年11月 1日 上申書(特許権者)提出
同年11月29日付け 訂正拒絶理由通知
同年12月26日 意見書(特許権者),手続補正書提出
平成30年 4月11日 意見書(申立人)提出
同年 5月30日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 8月 3日 意見書(特許権者),訂正請求書提出
同年 9月19日 意見書(申立人)提出
同年10月11日 上申書(特許権者)提出

第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
平成30年8月3日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す)。
なお、平成29年12月26日付け手続補正書によって補正された平成29年10月23日付け訂正請求書による訂正は特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「(1)厚さ1?3cmのシート状にした挽肉をコンベアーオーブンで品温が70℃?105℃になるまで焼成する工程、」とあるのを、「(1)厚さ1?2cmのシート状にした挽肉をコンベアーオーブン(マイクロ波加熱装置を除く)で品温が70℃?105℃になるまで焼成する工程、」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「工程(1)を焼成時間が7分?10分30秒である、」とあるのを、「工程(1)を焼成時間が7分?10分30秒であり、シート状にした挽肉の厚さが2cmである、」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7に「前記挽肉が前記ソースの全質量に基づき1?50質量%含まれる請求項1?6のいずれか1項記載の方法。」とあるのを、「前記挽肉が前記ソースの全質量に基づき1?50質量%含まれる請求項3?6のいずれか1項記載の方法。」に訂正する。
(4)訂正事項4
「前記挽肉が前記ソースの全質量に基づき1?50質量%含まれ、シート状にした挽肉の品温が75?100℃になるまで焼成することを特徴とする、請求項1記載の方法。」を、新たに請求項8とする。
(5)訂正事項5
「前記挽肉が前記ソースの全質量に基づき1?50質量%含まれ、シート状にした挽肉の品温が75?100℃になるまで焼成することを特徴とする、請求項2記載の方法。」を、新たに請求項9とする。

2.訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1の「シート状にした挽肉」の厚さについて、訂正前の「1?3cm」から「1?2cm」に厚さの範囲を減縮すると共に、「コンベアオーブン」からマイクロ波加熱装置を除外するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
そして、訂正事項1は、上記のとおり、数値範囲を減縮すると共に、特定の構成を除くものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないし、新規事項を追加するものではないことは明らかである。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2の「シート状にした挽肉」の厚さを2cmに特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
そして、訂正事項2は、請求項2の数値範囲を特定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないし、本件特許明細書には【実施例1】として、段落【0014】に、厚さ2cmのシート状にした挽肉を9分焼成した旨の記載があるから、新規事項を追加するものでもない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は訂正前の「請求項1?6のいずれか1項」を引用していた請求項7を「請求項3?6のいずれか1項」を引用するものとすることにより、引用する請求項の数を減少するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
そして、訂正事項3は、多数項を引用している請求項7の引用請求項数を減少させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないし、新規事項を追加するものではないことは明らかである。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の「請求項1?6のいずれか1項」を引用していた請求項7のうち請求項1を引用するものについて、「シート状にした挽肉の品温が75?100℃になるまで焼成する」という限定を加えて、新たに請求項8とするものである。
訂正事項4は、多数項を引用している請求項7の引用請求項数を減少させると共に、新たな限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
そして、訂正事項4は、多数項を引用している訂正前の請求項7の引用請求項数を減少させると共に、新たな限定を加えるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないし、本件特許明細書の段落【0010】には「本発明における焼成後の品温は、70℃?105℃であり、好ましくは75?100℃である。」の記載があるから、新規事項を追加するものでもない。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の「請求項1?6のいずれか1項」を引用していた請求項7のうち請求項2を引用するものについて、「シート状にした挽肉の品温が75?100℃になるまで焼成する」という限定を加えて、新たに請求項9とするものである。
訂正事項5は、多数項を引用している請求項7の引用請求項数を減少させると共に、新たな限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
そして、訂正事項5は、多数項を引用している訂正前の請求項7の引用請求項数を減少させると共に、新たな限定を加えるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないし、本件特許明細書の段落【0010】には「本発明における焼成後の品温は、70℃?105℃であり、好ましくは75?100℃である。」の記載があるから、新規事項を追加するものでもない。

(6)一群の請求項について
訂正前の請求項2?7は、請求項1を直接又は間接に引用するものであり、上記訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1?7に対応する訂正後の請求項1?9は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項である。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-9〕についての訂正を認める。

第3 本件発明
上記のとおり本件訂正は認められるから、本件訂正により訂正された訂正請求項1?9に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」等といい、また、それらをまとめて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1?9に記載された次のとおりのものである。

【請求項1】
挽肉入りソースの製造方法であって、
(1)厚さ1?2cmのシート状にした挽肉をコンベアーオーブン(マイクロ波加熱装置を除く)で品温が70℃?105℃になるまで焼成する工程、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
工程(1)の焼成時間が7分?10分30秒であり、シート状にした挽肉の厚さが2cmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
挽肉入りソースがボロネーゼソースであることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
(2-1)香味野菜をソテーする工程、
(2-2)水及び添加物をミキシングする工程、及び
(2-3)工程(1)、(2-1)及び(2-2)の生成物及びトマトを投入し、加熱してボロネーゼソースを製造する工程、を含む請求項3記載の方法であって、
前記添加物が、調味料、香辛料、増粘剤又はそれらの組み合わせからなる前記方法。
【請求項5】
(3)工程(2-3)で得られたボロネーゼソースを冷凍又はレトルト殺菌する工程、を更に含む請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記挽肉が、牛肉、豚肉、鶏肉、鴨肉及び鹿肉からなる群から選択される請求項1?5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記挽肉が前記ソースの全質量に基づき1?50質量%含まれる請求項3?6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記挽肉が前記ソースの全質量に基づき1?50質量%含まれ、シート状にした挽肉の品温が75?100℃になるまで焼成することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記挽肉が前記ソースの全質量に基づき1?50質量%含まれ、シート状にした挽肉の品温が75?100℃になるまで焼成することを特徴とする、請求項2記載の方法。

第4 当審の判断
1.取消理由の概要
本件特許に対し、本件訂正前の請求項1?7に対して通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

(1)理由1
本件特許の請求項1?7に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物である甲第2号証に記載された発明及び甲第1,3?10号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)理由2
本件特許は、請求項1の「品温が70?105℃」に関し、肉の部位によって加熱時の品温が大きく異なる技術常識に照らすと、本件特許明細書の発明な詳細な説明に、シート状にした挽肉のどの部位の品温が特定の温度範囲となるのか記載されておらず、本件特許明細書は、当業者がその発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(3)理由3
本件特許は、請求項1?7に係る発明において、シート状にした挽肉の厚さを1?3cmに特定しているが、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、所定の効果を奏することが具体的に確認されているのは、実施例で採用されている厚さ2cmの場合のみであり、厚さ2cm以外のものも同様の効果を奏するとはいえないから、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(4)理由4
請求項1に係る発明において、シート状にした挽肉の品温を70?105℃に特定しているが、本件特許明細書の発明の詳細な説明を参酌しても、シート状にした挽肉のどの部位の品温が斯かる特定範囲にあるべきかが明確でないから、請求項1?7に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

●刊行物一覧
甲第1号証:特開2010-22364号公報
甲第2号証:杉村昌宏,本場のミートソーススパゲティ・ボロネーゼ,All About暮らし[online],2002年5月30日,インターネット:<URL:http://allabout.co.jp/gm/gc/60082>
甲第3号証:日本調理科学会近畿支部 焼く分科会,「過熱水蒸気オーブンを用いた調理に関する基礎的研究-ハンバーグステーキ焼成時の温度履歴と製品について」,日本調理科学会誌,2007年,Vol.40, No.6, p.420-426
甲第4号証:株式会社フジマック製ジェットオーブンのカタログ,2005年11月
甲第5号証:食品設備実用総覧編集委員会,「食品設備実用総覧」,株式会社産業調査会出版部,昭和56年1月15日,p.139及び奥付
甲第6号証:社団法人日本食品機械工業会,「最新・日本の食品機械総覧<'93?'94>」,社団法人日本食品機械工業会,平成4年4月30日,p.426及び奥付
甲第7号証:アサヒ装設株式会社の総合カタログ,2001年5月,p.29-30
甲第8号証:新しい食品加工技術と装置編集委員会,「新しい食品加工技術と装置-その開発と進歩-」,株式会社産業調査会事典出版センター,1991年1月10日,p.108-113及び奥付
甲第9号証:岡崎守男,外2名,「<食品工学基礎講座> ○に5 加熱と冷却」,株式会社光琳,平成3年8月15日,p200-203及び奥付
甲第10号証:渕上倫子,「テキスト 食物と栄養科学シリーズ5 調理学」,株式会社朝倉書店,2006年3月30日,p.68-71及び奥付
甲第11号証:沖谷明紘,「シリーズ<食品の科学> 肉の科学」,株式会社朝倉書店,1996年5月20日,p118-119及び奥付
以下、上記甲第1号証?甲第11号証を、それぞれ甲1?甲11という。

2.刊行物の記載
(1)甲1の記載
ア.「マイクロ波乾燥された畜肉及び/又は魚介類加工品を含有することを特徴とするレトルト食品。」(【請求項1】)

イ.「本発明はレトルト殺菌を行っても硬くなったり、味抜けしたり、ぱさぱさですじっぽくなることのない畜肉及び/又は魚介類加工品含有レトルト食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
本発明は、マイクロ波によって膨化乾燥された畜肉及び/又は魚介類加工品を含有するレトルト食品に関するものである。
【発明の効果】
本発明によれば、あらかじめマイクロ波によって膨化乾燥されているためレトルト殺菌による蛋白質の過変性を防止することが出来、さらにマイクロ波にて膨化乾燥された加工食品特有のポーラス構造によって自然なふんわり柔らかな食感を得ることができるばかりか、ポーラス構造中に調味液等が充分にしみこむためレトルト殺菌による味抜けも起こり得ないという効果を有する。
【発明を実施するための形態】
本発明のレトルト食品はマイクロ波を照射して水分含有原料混合物を膨化乾燥した畜肉及び/又は魚介類加工品を含有することを主要な特徴とする。」(段落【0004】?【0007】)

ウ.「原料の混練には、例えば、縦型ケーキミキサー、真空ミキサー等の混合機を使用することができる。また、調製後の生地の水分含量が前記のような好ましい範囲内となるように、混練の際もしくは混練の前に、所望により水を添加してもよい。マイクロ波加熱に供する際の生地の雰囲気温度としては、特に限定はないが、生地が膨化乾燥されやすく、三次元立体構造を形成しやすいという観点から、好ましくは90?130℃である。
調製された生地は、マイクロ波加熱を効率的に実施する観点から、加熱する以前に所望の形状に成型するのが好ましい(加熱前成型)。生地の形状は特に限定されるものではなく、公知の方法により、例えば粒状、棒状、円筒状等、所望の形状に成型すればよい。マイクロ波加熱による加熱ムラを防ぐ観点から、生地は均一な形状をしていることが好ましい。例えば、円筒形に連続して押出し成型することにより均一な形状の生地とすることができる。この場合の生地の直径としては、マイクロ波半減深度を考慮し、生地中心部まで効率よくマイクロ波加熱を行う観点から、30mm以下であることが好ましく、20mm以下であることがより好ましい。なお、通常、直径の下限としては5mm程度である。しかし、生地の成分によってマイクロ波加熱のされやすさは異なるため、一概にこの範囲に限定されるものではない。
次いで、成型された生地をマイクロ波加熱に供する。本発明において、マイクロ波加熱はバッチ式によっても連続式によっても行うことができるが、より効率的な生産を可能にする観点から、連続式にて行うことが好ましい。マイクロ波加熱をバッチ式で行う場合、使用するマイクロ波加熱装置としては、例えばオーブン式マイクロ波加熱装置(ミクロ電子(株)社製)、バッチ式マイクロ波加熱装置(島田理化工業(株)社製)等が挙げられる。一方、連続式で行う場合、使用するマイクロ波加熱装置としては、例えばオーブン連続式マイクロ波加熱装置(ミクロ電子(株)社製)、マイクロ波膨化乾燥機((株)MR社製)等が挙げられる。」(段落【0021】?【0023】)

エ.「本発明のレトルト食品は畜肉及び/又は魚介類が用いられレトルト殺菌された食品であれば食品形態、種類を問われるものではなく、例えばミートソース等のパスタソース、タンタン麺等の麺類の具、麻婆豆腐、カレー、スープ、粥、雑炊等があげられる。」(段落【0034】)

上記ア.?エ.の事項によると、甲1には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が掲載されている。
「ミートソースの製造方法であって、畜肉をマイクロ波加熱装置で乾燥する工程を含む製造方法。」

(2)甲2の記載
甲2には、以下の事項が掲載されている。
ア.「ボロネーゼソースを作る上での最大のポイントは、最初に挽肉を“ガツン”と焼くこと。
“炒める”のではなく、“焼く”といったのは、ちょうどステーキを焼くように、挽肉に焼き色をつけ、旨みを封じ込めるのが大切だからだ。
最初は強火で、肉をしょっちゅう混ぜたりせずに、ざっくりと挽肉全体に焼き色をつけながら水分を飛ばしていくようにするといい。」

イ.「■材料(ボロネーゼソース)
・牛挽肉 1kg
?部位は好みで。できれば牛の塊の部分を粗めに挽いてもらおう。
・トマトの水煮(缶詰)1リットルぐらい
・ワイン
?赤のハーフボトル1本。安いものでよい。
・玉ねぎ1/4個、セロリ1/2本、にんじん1/3本
・にんにく 一かけ
・ベイリーブ(月桂樹の葉) 1枚
・オリーブオイル
・塩、コショウ」

ウ.「1.ソフリットを作る。
玉ねぎ、にんじん、セロリ、にんにくを、それぞれ細かいみじん切りにし、少し多め(100mlぐらい)のオリーブオイルとともに、火にかける。
このとき、あとで煮込みにかけるナベを使えば、そのまま煮込みに入れる。
汚れものをなるべく出さないことが、料理をラクにするコツだ。
決して焦がさないように、弱火でじっくり炒めていく。
10?20分も炒め、全体がペースト状になればOK。
時間に余裕があれば、30分以上、茶色くなるまで炒めてもよい。甘味と旨みが増すようだ。」

エ.「3.大きめの鉄のフライパンか、中華鍋を用意し、強火にかけて十分熱する。
煙が立つほど熱したら、サラダオイル(分量外)をひいて、塩・コショウをした挽肉を入れる。
最初ざっくりと広げたら、それ以上混ぜずに、しっかり焼き色をつける。
何か焦げてしまいそうで混ぜたい衝動にかられるが、男はガマン。多少強めに焦げるぐらいが肉の旨みが生きる。
焦げすぎるギリギリまで焼いたら、フライ返しなどを使って肉をざっくりと返していき、再びじっくり焼き色をつける。」

オ.「5.焼きあがった肉を、煮込み用のナベに入れ、ソフリットと合わせる。
ナベを火にかけ全体を混ぜ合わせたら、強火にしてナベを熱する。
ここへ、ワインの2/3量を注ぎ入れる。
入れた瞬間、「ジューッ」とワインが沸く程度にナベを熱しておくとよい。短時間で一気にワインを沸かしてアルコールを飛ばすのだ。」

カ.「7.水煮トマトを、煮込みナベに入れる。ここに、ベイリーブス1枚を入れる。
沸騰したら弱火?中火におとし、ボコッボコッとやわらかい煮込みの状態をキープする。決してボコボコと沸騰させないようにする。あくまでやわらかくだ。」

キ.「8.この状態でおよそ1時間程度煮込む。ナベ底が焦げ付かないように、ときどき底から混ぜておけばいい。
最後に、塩・コショウで味を調え、ボロネーゼソースの完成だ。」

ク.「一晩自然にさましたボロネーゼは、冷凍して保存しておくのが一番だ。
ジプロックなどの密封保存袋に一回で使う分ごとにわけて入れ、そのまま冷凍する。あまり長く冷凍しておくと味と風味が落ちるが、まあ1ヶ月ぐらいなら大丈夫だろう。 」

上記ア.?キ.の事項によると、甲2には以下の発明(以下、「甲2-1発明」という。)が掲載されている。
「ボロネーゼソースの製造方法であって、(A)ざっくりと広げた挽肉をフライパンか中華鍋で焼き色を付ける工程を含む製造方法。」

また、甲2には以下の発明(以下、「甲2-2発明」という。)が掲載されている。
「(B)玉ねぎ、にんじん、セロリ、にんにくを炒める工程、及び(A)ざっくりと広げた挽肉をフライパンか中華鍋で焼き色を付ける工程の生成物と工程(B)の生成物を合わせ、水煮トマトを入れて煮込む工程、塩、コショウで味を調える工程、を含むボロネーゼソースを製造する方法。」

(3)甲3の記載
ア.「1.ハンバーグ焼成時の内部温度履歴
焼成中の中央試料の中心(以後中心と略す)3点、および中央試料の端(以後端と略す)3点の計6点の内部温度履歴を図2に示した。中央底面から10mm点と端底面から15mm点以外の4測定点は、焼成開始時にはハンバーグの外にある。したがってこれらの測定点についてはハンバーグの熱膨張に伴い熱電対がハンバーグ内に入った後の温度履歴を示した。



3.判断
事案に鑑み、以下理由4及び2から検討する。

(1)理由4及び2について
本件発明1は、シート状にした挽肉の「品温が70℃?105℃になるまで焼成する」ことで、メイラード反応により肉の好ましい香りを有する挽肉入りソースを製造する方法である(段落【0002】,【0003】参照。)が、特許請求の範囲の記載からは「品温」がシート状にした挽肉のどこの部位の温度を特定しているのか判然としない。そこで、発明の詳細な説明を参酌するに、「品温」についての何ら説明はなく、またシート状の肉の温度は測定する部位によって異なることが技術常識であることからすれば、本件発明1の「品温が70℃?105℃」の記載は不明確であり、また、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が発明を実施することができる程度に記載されているものとはいえない。

特許権者は、平成29年10月23日付け意見書(以下、「意見書1」という。)において、「『品温』が最も熱の通り難い中心温度を意味して用いていることは当業者に明らかである。」(意見書1の44頁)と主張しているが、根拠とされた甲3の記載は、中心温度と品温の関係を直接対応させたものとは認められず、上記主張のような技術常識を認めることはできず、当該主張は採用できない。
この点さらに、特許権者は、平成30年8月3日付け意見書(以下、「意見書2」という。)において、乙第8?9号証を提示して、食品衛生上の安全を担保するため、「肉の加熱調理温度を測定する際に、最低温度点あるいは最も火の通り難い箇所(本件の場合にはシート状の挽肉の中心付近)の温度を測定して管理することは極めて当然であり、技術常識であるといえる。」と主張しているが、本件特許明細書には「品温」が「最低温度点」である旨の記載はなく、また、本件発明は食品衛生を意図したものではなく、「品温」を特定の温度範囲にすることで、メイラード反応により肉の好ましい香りが付与されたボロネーゼソースを製造するものであるから、「品温」が「最低温度点」であるとする根拠はない。

また、特許権者は、「100℃以下ではメイラード反応による香ばしい肉の香りがほとんど生成しないことが当業者にとって常識である。」(意見書1の45頁)、「品温の最低温度70℃を肉表面の温度と理解すれば焼成の目的を達成し得ないことは明らかであることから、当業者であれば『品温70℃?105℃』を肉表面の温度であると理解することはない」(意見書1の45頁)と主張し、意見書1に添付した実験成績証明書(乙第1号証)を示して、「実際に中心温度(品温)を70℃?105℃の範囲にすることで良好な結果が得られているのであるから、中心温度(品温)を」「70℃?105℃の範囲としても、異議申立人が指摘するような『メイラード反応が強すぎて表面が焦げる』ことによる悪影響も特にないことは明確である。」(意見書1の45?46頁)と主張している。
しかしながら、シート状にした挽肉の中心温度を「品温」とした乙第1号証の挽肉からなるシートが発明の課題を解決できたとしても、そのことが本件発明の「品温」が中心温度であることをいうものではない。さらに、中心以外の温度(例えば、中心と表面の間の温度)を70℃とした場合に、表面でメイラード反応が起こらないとはいえない。

更に、特許権者は、意見書2において「もし仮に、『品温』を、シート状挽肉の表面温度としたときに、オーブンの庫内温度210℃で3分加熱した場合に、焼成後の温度が人間の体温より低い30℃ということはない。『品温』が内部温度を指しているであろうことは当業者であれば容易に理解できる。」(意見書2の12頁)と主張している。
しかし、本件特許明細書には品温の測定を、いつ、どのように行っているのかの特定がなく、測定の条件によっては、オーブンの庫内温度210℃で3分加熱した場合に、焼成後の挽肉の中心以外の温度が30℃になることを否定できない。
また、特許権者は意見書2において、他の副材料の入っていない挽肉では「ハンバーグステーキにおけるような顕著な温度勾配が内部に生じるものではない」(意見書2の15頁)と主張しているが、仮にシート状の挽肉に温度勾配がないのであれば、表面温度で計っても、中心温度を計っても、ほぼ同じ温度になるはずであり、この点からも「品温」が中心温度であるということはできない。
加えて、特許権者は平成30年10月11日付け上申書(以下、「上申書」という。)において、本件特許明細書の表2に記載された実験結果をグラフにプロットした場合に、品温が直線的に120℃まで上昇していることについて、「品温が100℃を超えることについても技術的矛盾はない。」(上申書の3頁)と主張しているが、仮に当該技術的矛盾がないとしても、品温が中心温度であるとはいえない。
よって、意見書1、2及び上申書の記載を参酌しても、品温が中心温度であるとすることはできないから、特許権者の主張は採用できない。

したがって、本件特許請求の範囲の請求項1?9の記載は明確でなく、また、発明の詳細な説明の記載は本件発明を当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとは認められないから、特許法第36条第6項第2号及び同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(2)理由1について
ア.本件発明1について
上記(1)で述べたとおり、本件発明1の「品温」は不明確であるが、仮にシート状にした挽肉の「品温」がシート状の挽肉のいずれかの温度を特定するものであるとして、以下に検討する。

本件発明1と甲2-1発明を比較すると、甲2-1発明の「ボロネーゼソース」は、挽肉を含んでいるから、本件発明1の「挽肉入りソース」に相当し、甲2-1発明の「ざっくりと広げた挽肉」は、シート状といえるから、本件発明1の「シート状にした挽肉」に相当し、甲2-1発明の「焼き色を付ける工程」は、フライパンか中華鍋による焼成であるから、本件発明1の「焼成する工程」に相当する。
よって、本件発明1と甲2-1発明は、次の一致点及び相違点を有する。

【一致点】
挽肉入りソースの製造方法であって、
シート状にした挽肉を焼成する工程、
を含む製造方法。

【相違点】
1.シート状にした挽肉について、本件発明1は、厚さ1?2cmとしているのに対し、甲2-1発明は厚さが不明である点
2.焼成する工程を、本件発明1は、コンベアーオーブン(マイクロ波加熱装置を除く)で行っているのに対して、甲2-1発明はフライパンか中華鍋で行っている点
3.本件発明1は、品温が70℃?105℃になるまで焼成しているのに対し、甲2-1発明は品温が不明である点

以下、相違点について検討する。
相違点1について:
甲2-1発明も、フライパンや中華鍋上で挽肉を「ざっくりと広げたら、それ以上混ぜずに、しっかりと焼き色を付け」(上記2.(2)エ.の記載参照。)ており、広げられた挽肉の厚さを1?2cmとすることは通常の範囲の厚さであり、当業者であれば適宜なし得る設計的事項にすぎない。
なお、特許権者は意見書2で、甲2では「フライパン上で返してほぐす工程を行っており、コンベアーオーブン内で均一な厚さのシート状にして焼成することとは全く異なる工程であり、一定の厚さのシート状にして焼成することなど甲第2号証からは全く示唆されない。」(意見書2の22頁)と主張しているが、本件発明1は シート状にした挽肉を均一な厚さにすることまでは要件としていない。そして、広げられた挽肉の厚さとして1?2cmが通常の範囲の厚さであることからすれば、その採用は設計的事項にすぎない。
よって、甲2-1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が技術常識に基づいて容易に想到できたものである。

相違点2について:
ボロネーゼソースは一般に本願出願前に市販されていることに照らすと、家庭で行う調理・加工の技術を食品工業の大量生産に適用することは当業者であれば当然に考慮することであり、甲2-1発明の、ボロネーゼソースを大量生産するにあたって、シート状の挽肉に焼き色を付けるためにフライパンか中華鍋に換えて、大量の挽肉の焼成に適した手段として、たとえば甲4ないし甲7に記載されたような従来周知のコンベアーオーブン(マイクロ波加熱装置を除く)を採用することは当業者が適宜なし得たことである。
なお、特許権者は意見書2において「甲第2号証には、本件訂正発明の工業的な食品調理における課題について記載も示唆もされていないから、そもそも甲2-1発明から出発して、挽肉の工業的なボロネーゼソースの課題を想起した上で、シート状の挽肉に焼き色を付けるためにフライパンか中華鍋に代えて、食品工業における大量調理において用いることができる手段を用いることを当業者が容易に想到しうるとはいえない。」(意見書2の21頁)と主張している。
しかし、甲2には「挽肉に焼き色を付け」(上記2.(2)ア.の記載参照。)ることが記載されており、焼き色を付けることがメイラード反応に基づくこと及びメイラード反応により好ましい肉の香りを付与できることは、食品の技術分野においての技術常識である。
そして、ボロネーゼソースにおいて、好ましい肉の香りを付与するという課題は家庭用と工業用において共に内在する共通の課題であり、その解決手段として肉の表面に焼き色を付ける(すなわち、メイラード反応を起こす)ことが甲2に記載されているのであり、当該解決手段は家庭用であろうと工業用であろうと共通するものであるから、そのための具体的解決手段として甲4?7に記載された周知のコンベアーオーブンを採用して工業用として実施することに困難性は認められない。
なお、甲4?7に示されたコンベアーオーブンは、調理例としてハンバーグ等を示しているにすぎないが、コンベアーオーブンは表面に焼き色を付ける(すなわち、メイラード反応を起こす)ことができる手段であるから、挽肉の表面に焼き色を付ける手段として当該コンベアーオーブンを採用できることは明らかである。
よって、甲2-1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成を採用することは、周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものである。

相違点3について:
本件発明1が品温を70℃?105℃としているのは挽肉の表面でメイラード反応を起こすためである(段落【0002】,【0003】,【0009】,【0010】参照。)。
一方、甲2-1発明も、挽肉に焼き色を付けているのであるから、本件発明1同様、表面でメイラード反応を起こしているものと認められる。
してみれば、甲2-1発明において、明記はないものの挽肉の表面でメイラード反応を起こす温度として、本件発明1と同様の温度となっている蓋然性は高いものと認められ、具体的に品温として70℃?105℃を採用した点は挽肉にメイラード反応を起こしうる温度範囲として選択しうる設計的事項にすぎない。
また、このことは、品温を、シート状にした挽肉の中心温度以外の部位に特定したとしても、同様である。
なお、特許権者は意見書2で、「本件訂正発明1では焦げないような温度で焼成しているのに対し、甲2-1発明では焦げるように焼成しており、この点において、両者の温度は異なるということができる」(意見書2の23頁)と主張しているが、甲2には、「なにか焦げてしまいそうで混ぜたい衝動にかられるが、男はガマン。多少強めに焦げるぐらいが肉の旨みが生きる。」(上記2.(2)エ.の記載参照。)と記載されているのであり、焦がすことが要件であるとまではいえないし、表面が多少焦げたところで両者の温度が異なるとはいえない。
よって、甲2-1発明において、相違点3に係る本件発明1の構成は実質的な相違点ではない。

そして、これら相違点を総合的に勘案しても、本件発明の奏する作用効果は、甲2-1発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

以上のとおりであるから、本件発明1は、甲2-1発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ.本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用して、更に「工程(1)の焼成時間が7分?10分30秒である」という限定及び「シート状にした挽肉の厚さが2cmである」という限定を加えるものである。
しかし、本件発明2が「工程(1)の焼成時間が7分?10分30秒」と特定しているのは、挽肉の品温を70℃?105℃にしてメイラード反応を起こすためと認められるところ、甲3には、挽肉から成るハンバーグ焼成時の内部温度と時間の関係が記載されており(図2)、当該記載からすれば、2cm程度の厚さの挽肉の表面でメイラード反応を起こし、品温を70℃から105℃とするためには、おおよそ7分?10分30秒の時間を要するものと認められる。
よって、本件発明2の「工程(1)の焼成時間が7分?10分30秒である」との構成は、甲2-1発明に包含されるものであり、また仮に異なるとしても技術常識に基づき当業者が容易に想到できることである。
また、シート状にした挽肉の厚さを2cmとした点も、甲2-1発明において挽肉に焼き色を付けるに際しての挽肉の厚さとして通常用いられる域を出るものとは認められない。
以上のとおりであるから、本件発明2は、上記ア.で検討したのと同様、甲2-1発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ.本件発明3について
本件発明3は、本件発明1又は2を引用して、更に「挽肉入りソースがボロネーゼソースである」という限定を加えるものである。
しかし、甲2-1発明もボロネーゼソースに係る発明である。
よって、本件発明3は、上記ア.又はイ.で検討したのと同様、甲2-1発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ.本件発明4について
甲2-1発明の(A)工程と甲2-2発明の(A)は同一であるから、甲2-2発明の「(A)ざっくりと広げた挽肉をフライパンか中華鍋で焼き色を付ける工程と、本件発明4の「工程(1)」との対比判断は、上記ア.で検討済みである。
また、甲2-2発明の「玉ねぎ、にんじん、セロリ、にんにく」は本件発明4の「香味野菜」に、また同様に、「炒める」は「ソテーする」に、「水煮トマト」は「トマト」に、「入れて煮込みボロネーゼソースを製造する」は「投入し、加熱してボロネーゼソースを製造する」に、「塩、コショウ」は「調味料」に相当する。
してみれば、本件発明4と甲2-2発明は、上記ア.で検討した一致点及び相違点に加えて、次の点で相違する。

本件発明4は、「(2-2)水及び添加物をミキシングする工程」を含み、工程(2-2)の生成物を、「工程(1)及び(2-1)の生成物及びトマト」と共に投入しており、「前記添加物が、調味料、香辛料、増粘剤又はそれらの組合わせからなる」のに対し、甲2-2発明には、工程(2-2)がなく、工程(1)及び(2-1)の生成物及びトマトを投入した後に塩、コショウ(添加物)を加えている点

上記相違点について検討すると、甲2-2発明では、トマトとして水煮トマトを用いているから、調味料を投入する前の工程(A)及び(B)の生成物及びトマトには、水煮トマトの水が含まれているから、上記相違点に係る構成は塩、コショウ(調味料)の投入時期の相違に他ならず当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。

以上のとおりであるから、本件発明4は、甲2-2発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

オ.本件発明5について
本件発明5は、本件発明4を引用して、更に「工程(2-3)で得られたボロネーゼソースを冷凍又はレトルト殺菌する工程を更に含む」という限定を加えるものである。
しかし、本件発明5の「工程(2-3)で得られたボロネーゼソースを冷凍する工程」は、食品製造における周知の技術にすぎない(上記2.(2)ク.の記載参照。)。
よって、本件発明5は、上記ア.ないしエ.で検討したのと同様、甲2-2発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

カ.本件発明6について
本件発明6は、本件発明1?5を引用して、更に「挽肉が、牛肉、豚肉、鶏肉、鴨肉及び鹿肉からなる群から選択される」という限定を加えるものである。
しかし、挽肉として牛肉を用いることは、ボロネーゼソースの製造における周知技術にすぎない(上記2.(2)イ.の記載参照。)。
よって、本件発明6は、上記ア.ないしオ.で検討したのと同様、甲2-1発明又は甲2-2発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

キ.本件発明7について
本件発明7は、本件発明1?6を引用して、更に「挽肉が、ソースの全質量に基づき1?50質量%含まれる」という限定を加えるものである。
しかし、ボロネーゼソースにおいて、挽肉をソースの全質量に対して、どの程度用いるかは当業者が適宜決定できることであり、甲2にもソースの全量に基づき1?50質量%含まれるものが記載されている(上記2.(2)イ.の記載参照。)。
よって、本件発明7は、上記ア.ないしカ.で検討したのと同様、甲2-1発明又は甲2-2発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ク.本件発明8及び9について
本件発明8及び9は、それぞれ本件発明1及び2を引用して、更に「挽肉が、ソースの全質量に基づき1?50質量%含まれ、シート状にした挽肉の品温が75?100℃になるまで焼成する」という限定を加えるものである。
しかし、挽肉が、ソースの全量に基づき1?50質量%含まれる点は、上記キ.で指摘したように甲2に記載されている。
また、シート状にした挽肉の品温が75?100℃になるまで焼成した点も、上記ア.で検討したシート状にした挽肉の品温が70?105℃になるまで焼成した場合と比して格別の作用効果を奏するものとは認められず、甲2-1発明と実質的な相違をもたらす構成とは認められない。
よって、本件発明8及び9は、上記ア.及びイ.で検討したのと同様、甲2-1発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ケ.小括
以上のとおり、本件発明1?9は、甲2-1発明及び周知技術又は甲2-2発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1?9は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(3)理由3について
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、発明が解決しようとする課題について「大量調理においても肉の好ましい香りを有する挽肉入りソースの製造方法を提供する」(段落【0003】参照。)と記載されている。
ここで、本件発明1では、焼成の対象として「厚さ1?2cmのシート状の挽肉」と特定されているが、発明の詳細な説明において、上記課題を解決したものとして具体的に確認したものは実施例の厚さ2cmのシート状の挽肉を用いた実施例のみである。
そして、厚さ2cmの実施例で、上記課題が解決できたとしても、挽肉の厚さが異なれば肉の加熱状態が異なることが技術常識であることを踏まえると、厚さ1?2cmの全ての範囲で課題を解決できることは理解できないから、当業者といえども本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、厚さ1?2cmのシート状の挽肉を用いた場合に発明の課題を解決できることは認識できない。
なお、特許権者は意見書2において「本件訂正発明1では焼成の程度を品温(中心温度)で規定しているので、『1?2cm』の範囲のシート状にした挽肉の加熱時の温度が外部と内部で多少異なるとしても、同じ品温(中心温度)まで焼成すれば、焼成の程度を一定にすることができる。」(意見書2の16頁)と主張している。
しかし、本件発明1はメイラード反応により肉に好ましい香りを付与すると共に、メイラード反応が強すぎることを防止するために品温を特定したものであり(段落【0010】参照。)、実施例において、厚さ2cmのシート状の挽肉で検証しているのであるところ、厚さが半分の1cmになれば、同じ品温でも挽肉表面でのメイラード反応が厚さが2cmの場合と同様であるとはいえない。そうすると、2cmの厚さでメイラード反応が好ましく生じたからといって半分の1cmの厚さでも同様の結果が生じるということはできない。
よって、請求項1の記載まで発明の内容を拡張ないし一般化することはできず、本件発明1を発明の詳細な説明に記載されたものとすることはできない。

なお、特許権者は乙第1号証を提出することにより、シート状の挽肉の厚さが1cm又は3cmであっても本件発明の効果を奏する旨主張しているが、乙第1号証は本件特許出願後になされた事後的な実験結果を示すのみであり、シート状の挽肉の厚さを1?2cmに特定したものが本件発明の課題を解決できることを明細書に記載された事項に基づいて導けることをいうものではない。
また、仮に乙第1号証を採用し得たとしても、乙第1号証記載の実験結果はオーブンの予熱温度(本件特許明細書では、厚さ2cmの肉に対して210℃でオーブンを予熱しているのに対し、乙第1号証では、厚さ1cmの肉に対して180℃又は190℃でオーブンを予熱している)やシート状にした挽肉の形状及び状態(本件特許発明では、鉄板上でシート状にした挽肉を9分焼成しているのに対し、乙第1号証では、金属製トレー上でシート状にした挽肉を7分又は10分焼成している)において、本件特許明細書記載の実施例の条件と同じであるとはいえないから、乙第1号証の実験結果は、シート状の挽肉の厚さが1?2cmの範囲において本件発明の課題が、解決されたことを証明するものではない。

よって、本件発明1が発明の詳細な説明の記載でサポートされているとはいえず、本件特許請求の範囲の請求項1及び請求項1の「厚さ1?2cmのシート状にした挽肉」との特定事項を有する請求項3?8は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?9は、甲2-1発明又は甲2-2発明と甲2?10記載の事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本件発明1?9について、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載には不備があり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
更に、本件特許請求の範囲の請求項1,3?8の記載には不備があり、本件特許請求の範囲は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
加えて、本件特許請求の範囲の請求項1?9の記載には不備があり、本件特許請求の範囲は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
よって、本件発明1?9に係る特許は、特許法第113条第2号及び同条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挽肉入りソースの製造方法であって、
(1)厚さ1?2cmのシート状にした挽肉をコンベアーオーブン(マイクロ波加熱装置を除く)で品温が70℃?105℃になるまで焼成する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
工程(1)の焼成時間が7分?10分30秒であり、シート状にした挽肉の厚さが2cmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
挽肉入りソースがボロネーゼソースであることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
(2-1)香味野菜をソテーする工程、
(2-2)水及び添加物をミキシングする工程、及び
(2-3)工程(1)、(2-1)及び(2-2)の生成物及びトマトを投入し、加熱してボロネーゼソースを製造する工程、を含む請求項3記載の方法であって、
前記添加物が、調味料、香辛料、増粘剤又はそれらの組み合わせからなる前記方法。
【請求項5】
(3)工程(2-3)で得られたボロネーゼソースを冷凍又はレトルト殺菌する工程、を更に含む請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記挽肉が、牛肉、豚肉、鶏肉、鴨肉及び鹿肉からなる群から選択される請求項1?5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記挽肉が前記ソースの全質量に基づき1?50質量%含まれる請求項3?6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記挽肉が前記ソースの全質量に基づき1?50質量%含まれ、シート状にした挽肉の品温が75?100℃になるまで焼成することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記挽肉が前記ソースの全質量に基づき1?50質量%含まれ、シート状にした挽肉の品温が75?100℃になるまで焼成することを特徴とする、請求項2記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-11-09 
出願番号 特願2012-267997(P2012-267997)
審決分類 P 1 651・ 537- ZAA (A23L)
P 1 651・ 536- ZAA (A23L)
P 1 651・ 121- ZAA (A23L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 松原 寛子  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 佐々木 正章
井上 哲男
登録日 2016-11-18 
登録番号 特許第6040741号(P6040741)
権利者 日本製粉株式会社
発明の名称 挽肉入りソースの製造方法  
代理人 市川 さつき  
代理人 山崎 一夫  
代理人 浅井 賢治  
代理人 弟子丸 健  
代理人 浅井 賢治  
代理人 秋澤 慈  
代理人 服部 博信  
代理人 市川 さつき  
代理人 秋澤 慈  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 ▲吉▼田 和彦  
代理人 山崎 一夫  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 弟子丸 健  
代理人 箱田 篤  
代理人 服部 博信  
代理人 箱田 篤  
代理人 ▲吉▼田 和彦  
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