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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
管理番号 1348725
異議申立番号 異議2017-701241  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-27 
確定日 2019-01-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6156018号発明「難燃性マスターバッチ、難燃性樹脂組成物およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6156018号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔5?10〕について訂正することを認める。 特許第6156018号の請求項5及び6に係る特許についての本件特許異議の申立てを却下する。 特許第6156018号の請求項1?4及び7?10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6156018号(請求項の数10。以下,「本件特許」という。)は,平成25年9月26日を出願日とする特許出願(特願2013-199793号)に係るものであって,平成29年6月16日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は,平成29年7月5日である。)。
その後,平成29年12月27日に,本件特許の請求項1?10に係る特許に対して,特許異議申立人であるクラリアントケミカルズ株式会社(以下,「申立人」という。)により,特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は,以下のとおりである。

平成29年12月27日 特許異議申立書
平成30年 4月 6日 取消理由通知書
6月 8日 意見書,訂正請求書
6月21日 通知書(訂正請求があった旨の通知)
7月20日 意見書(申立人)
8月 1日 取消理由通知書
10月 5日 意見書,訂正請求書
10月12日 通知書(訂正請求があった旨の通知)

なお,平成30年10月12日付けの通知書(訂正請求があった旨の通知)に対して,申立人から意見書は提出されなかった。

第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
平成30年10月5日付けの訂正請求書による訂正(以下,「本件訂正」という。)の請求は,本件特許の特許請求の範囲を上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項5?10について訂正することを求めるものであり,その内容は,以下のとおりである。下線は,訂正箇所を示す。
なお,平成30年6月8日付けの訂正請求書による訂正の請求は,本件訂正の請求がされたことに伴い,特許法120条の5第7項の規定により,取り下げられたものとみなす。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7に,「請求項5又は6記載の難燃性マスターバッチに」と記載されているのを,「熱可塑性樹脂(a)100質量部に対し,有機リン酸金属塩(b)を20?50質量部の範囲で溶融混練して製造されるものである難燃性マスターバッチに」,「前記有機リン酸金属塩(b)は,比表面積が5〔m^(2)/g〕以上の範囲であり,かつ,最大粒子径が10〔μm〕以下の範囲であり,前記熱可塑性樹脂(a)が,ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリブチレンナフタレートであり,」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に,「熱可塑性樹脂(c)を溶融混練して得られることを特徴とする難燃性樹脂組成物。」と記載されているのを,「熱可塑性樹脂(c)を溶融混練して得られることを特徴とする難燃性樹脂組成物であって,」,「前記難燃性樹脂組成物は,難燃性樹脂組成物のペレットを液体窒素で冷却し粉砕し,次いで,粉砕したペレットの断面を蒸着装置を用いて銀蒸着した後,SEM-EDXによるリンの元素分析を行い,得られた分析結果画像から50μm以上の円相当径の粒状物の個数をカウントし,30視野を観察して平均した際に,ペレットの断面1mm^(2)に2個未満,または,2個以上,5個未満である,難燃性樹脂組成物。」に訂正する。

2 訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正事項1及び2について
訂正事項1及び2に係る訂正は,訂正前の請求項5及び6を削除するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また,これらの訂正は,本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(2)訂正事項3について
ア 訂正事項3に係る訂正は,訂正前の請求項7のうち,請求項5を引用するものについて,引用形式の記載から独立形式の記載に改める訂正を含むものである。
この訂正は,請求項の記載について,訂正前の引用形式の記載を独立形式の記載に改めるものであるから,「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。また,この訂正は,本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
イ 訂正事項3に係る訂正は,訂正前の請求項5における「難燃性マスターバッチ」について,「熱可塑性樹脂(a)100質量部に対し,有機リン酸金属塩(b)を20?50質量部の範囲で含有する」としていたものを,「熱可塑性樹脂(a)100質量部に対し,有機リン酸金属塩(b)を20?50質量部の範囲で溶融混練して製造されるものである」とする訂正を含むものである。
(ア)この訂正は,平成30年4月6日付けの取消理由通知書において指摘した明確性要件違反の取消理由に対して,訂正前の請求項5における「前記有機リン酸金属塩(b)は,比表面積が5〔m^(2)/g〕以上の範囲であり,かつ,最大粒子径が10〔μm〕以下の範囲であり,」との記載が,「(ア)難燃性マスターバッチを製造するために用いられる原料としての有機リン酸金属塩(b)について,比表面積及び最大粒子径を特定している」ことを意味するものであることを明確にするためにされたものであり,明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
(イ)本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲には,以下の記載がある。
「【請求項1】
予め熱可塑性樹脂(a)および有機リン酸金属塩(b)を溶融混練してマスターバッチを製造する工程(1),前記工程(1)で得られた難燃性マスターバッチに,さらに,熱可塑性樹脂(c)を溶融混練する工程(2)を有する難燃性樹脂組成物の製造方法であって,
前記有機リン酸金属塩(b)は,比表面積が5〔m^(2)/g〕以上の範囲であり,かつ,最大粒子径が10〔μm〕以下の範囲であり,
前記熱可塑性樹脂(a)が,ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリブチレンナフタレートである,難燃性樹脂組成物の製造方法。」
「【0017】
本発明に用いる有機リン酸金属塩(b)は,比表面積が1.5〔m^(2)/g〕以上の範囲・・・であり,かつ,粒子径が45〔μm〕以下の範囲・・・である。このような粒子径および比表面積を有する有機リン酸金属塩を原料として用い,これを熱可塑性樹脂(a)と配合して難燃性マスターバッチとすることが重要である。」
以上の記載によれば,上記訂正は,本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(3)訂正事項4について
訂正事項4に係る訂正は,訂正前の請求項7に対して,「難燃性樹脂組成物であって,」,「前記難燃性樹脂組成物は,難燃性樹脂組成物のペレットを液体窒素で冷却し粉砕し,次いで,粉砕したペレットの断面を蒸着装置を用いて銀蒸着した後,SEM-EDXによるリンの元素分析を行い,得られた分析結果画像から50μm以上の円相当径の粒状物の個数をカウントし,30視野を観察して平均した際に,ペレットの断面1mm^(2)に2個未満,または,2個以上,5個未満である,」との記載を追加するものである。
この訂正は,平成30年8月1日付けの取消理由通知書において指摘した明確性要件違反の取消理由に対して,訂正前の請求項7における「難燃性樹脂組成物」が,「物」としてどのような構成を備えたものであるのか明確にするためになされたものであり,明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲には,以下の記載がある。
「【0038】
・ペレット中の有機リン酸金属塩の分散性評価
難燃性樹脂組成物(1)のペレットを液体窒素で冷却し粉砕した。次いで,粉砕したペレットの断面を蒸着装置(株式会社エイコー・エンジニアリング製「IC-50」)を用いて銀蒸着した後,SEM-EDX(株式会社明石ビームテクノロジー製走査型電子顕微鏡「ABT-55」/サーモエレクトロン株式会社製エネルギー分散型X線分析装置「VANTEGE」)によるリンの元素分析を行った。得られた分析結果画像から50μm以上の円相当径の粒状物の個数をカウントした。30視野を観察して平均し,分散性を以下の基準に則して判断した。
【0039】
◎^(+):1mm^(2)に2個未満
◎ :1mm^(2)に2個以上 5個未満
○ :1mm^(2)に5個以上 10個未満
△ :1mm^(2)に10個以上 100個未満
× :1mm^(2)に100個以上」
以上の記載によれば,上記訂正は,本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(4)一群の請求項について
訂正前の請求項5?10について,請求項6?10は,請求項5を直接又は間接的に引用するものであり,上記の訂正事項1によって記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものである。したがって,訂正前の請求項5?10に対応する訂正後の請求項5?10は,一群の請求項である。そして,本件訂正は,その一群の請求項ごとに請求がされたものである。

3 まとめ
上記2のとおり,訂正事項1?4に係る訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものに該当し,同条4項に適合するとともに,同条9項において準用する同法126条5項及び6項に適合するものであるから,結論のとおり,本件訂正を認める。

第3 本件発明
前記第2で述べたとおり,本件訂正は認められるので,本件特許の請求項1?10に係る発明は,本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下,それぞれ「本件発明1」等という。また,本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。

【請求項1】
予め熱可塑性樹脂(a)および有機リン酸金属塩(b)を溶融混練してマスターバッチを製造する工程(1),前記工程(1)で得られた難燃性マスターバッチに,さらに,熱可塑性樹脂(c)を溶融混練する工程(2)を有する難燃性樹脂組成物の製造方法であって,
前記有機リン酸金属塩(b)は,比表面積が5〔m^(2)/g〕以上の範囲であり,かつ,最大粒子径が10〔μm〕以下の範囲であり,
前記熱可塑性樹脂(a)が,ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリブチレンナフタレートである,難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記工程(1)において,熱可塑性樹脂(a)100質量部に対し,有機リン酸金属塩(b)を10?100質量部の範囲で溶融混練する請求項1記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記工程(2)において,難燃性マスターバッチ100質量部に対し,熱可塑性樹脂(c)50?5000質量部の範囲で溶融混練する請求項1又は2記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記有機リン酸金属塩(b)が,下記一般式(1)で表されるホスフィン酸金属塩,下記一般式(2)で表されるホスフィン酸金属塩およびこれらの縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1?3の何れか一項記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
【化1】

(式中,R^(1),R^(2)は,それぞれ,炭素数1?6のアルキル基または炭素数12以下のアリール基であり,R^(3)は炭素原子数1?10の直鎖もしくは分岐鎖状アルキレン基,炭素原子数6?10のアリーレン基,炭素原子数6?10のアルキルアリーレン基または炭素原子数6?10のアリールアルキレン基であり,Mは,カルシウム,アルミニウム又は亜鉛であり,m=2または3,n=1,2または3,x=1または2である。)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
熱可塑性樹脂(a)100質量部に対し,有機リン酸金属塩(b)を20?50質量部の範囲で溶融混練して製造されるものである難燃性マスターバッチに,熱可塑性樹脂(c)を溶融混練して得られることを特徴とする難燃性樹脂組成物であって,
前記有機リン酸金属塩(b)は,比表面積が5〔m^(2)/g〕以上の範囲であり,かつ,最大粒子径が10〔μm〕以下の範囲であり,
前記熱可塑性樹脂(a)が,ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリブチレンナフタレートであり,
前記難燃性樹脂組成物は,難燃性樹脂組成物のペレットを液体窒素で冷却し粉砕し,次いで,粉砕したペレットの断面を蒸着装置を用いて銀蒸着した後,SEM-EDXによるリンの元素分析を行い,得られた分析結果画像から50μm以上の円相当径の粒状物の個数をカウントし,30視野を観察して平均した際に,ペレットの断面1mm^(2)に2個未満,または,2個以上,5個未満である,難燃性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項7記載の難燃性樹脂組成物を成形して得られる成形体。
【請求項9】
請求項7記載の難燃性樹脂組成物を成形して得られる繊維。
【請求項10】
請求項7記載の難燃性樹脂組成物を成形して得られるフィルム又はシート。

第4 取消理由の概要
1 特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由
本件発明1?10は,下記(1)?(6)のとおりの取消理由があるから,本件特許の請求項1?10に係る特許は,特許法113条2号及び4号に該当し,取り消されるべきものである。証拠方法として,下記(7)の甲第1号証?甲第7号証(以下,単に「甲1」等という。)を提出する。

(1)取消理由1(新規性)
本件発明1?9は,甲1に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができないものである。
(2)取消理由2-1(進歩性)
本件発明1?10は,甲1に記載された発明及び甲2?6に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
(3)取消理由2-2(進歩性)
本件発明1?10は,甲2に記載された発明並びに甲1及び3?7に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
(4)取消理由3(実施可能要件)
本件発明1?10は,発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に適合するものではない。
(5)取消理由4(サポート要件)
本件発明1?10は,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に適合するものではない。
(6)取消理由5(明確性要件)
本件発明1?10は,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に適合するものではない。
(7)証拠方法
・甲1 特開2011-168932号公報
・甲2 特開2011-246526号公報
・甲3 特表2010-510397号公報
・甲4 国際公開第2009/150818号
・甲5 特開2006-37100号公報
・甲6 特開2006-37101号公報
・甲7 「カラーマスターバッチ」,日本ゴム協会誌,1983年,56巻,8号,p.473-488

2 取消理由通知書に記載した取消理由
(1)平成30年4月6日付けの取消理由通知書
ア 本件発明5?10は,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に適合するものではない(取消理由6-1(明確性要件))。
イ 本件発明5?10は,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に適合するものではない(取消理由7(サポート要件))。
ウ 本件発明5?10は,発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に適合するものではない(取消理由8(実施可能要件))。
エ 上記1の取消理由1(新規性)(ただし,本件発明5?9に対するもの。)と同旨。
オ 本件発明5?10は,甲2に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができないものである(取消理由9(新規性))。
(2)平成30年8月1日付けの取消理由通知書
本件発明5?10は,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に適合するものではない(取消理由6-2(明確性要件))。

第5 当審の判断
本件特許の請求項5及び6が本件訂正により削除された結果,同請求項5及び6に係る特許についての本件特許異議の申立ては対象を欠くこととなったため,特許法120条の8第1項において準用する同法135条の規定により決定をもって却下すべきものである。
また,以下に述べるように,取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1?4及び7?10に係る特許を取り消すことはできない。

1 取消理由通知書に記載した取消理由
(1)取消理由6-1(明確性要件),取消理由6-2(明確性要件)
ア 平成30年4月6日付けの取消理由通知書では,本件訂正前の請求項5には,有機リン酸金属塩(b)について,「前記有機リン酸金属塩(b)は,比表面積が5〔m^(2)/g〕以上の範囲であり,かつ,最大粒子径が10〔μm〕以下の範囲であり,」と記載されているが,当該記載が,(ア)難燃性マスターバッチを製造するために用いられる原料としての有機リン酸金属塩(b)について,比表面積及び最大粒子径を特定しているのか,あるいは,(イ)製造された難燃性マスターバッチに含有された状態での有機リン酸金属塩(b)について,比表面積及び最大粒子径を特定しているのか,いずれを意味するものであるのか明確でないから,本件訂正前の請求項5に係る発明は明確であるとはいえず,また,同発明を直接又は間接的に引用する本件訂正前の請求項6?10に係る発明についても同様に,明確であるとはいえない旨,指摘した。
これに対して,前記第2のとおり,本件訂正により,本件発明7における難燃性マスターバッチについて,「熱可塑性樹脂(a)100質量部に対し,有機リン酸金属塩(b)を20?50質量部の範囲で溶融混練して製造されるものである」ことが特定された結果,「前記有機リン酸金属塩(b)は,比表面積が5〔m^(2)/g〕以上の範囲であり,かつ,最大粒子径が10〔μm〕以下の範囲であり,」との記載が,(ア)難燃性マスターバッチを製造するために用いられる原料としての有機リン酸金属塩(b)について,比表面積及び最大粒子径を特定していることを意味するものであることが明確にされた。
よって,本件発明7?10について,上記の点に関する明確性要件違反は解消した。

イ 平成30年4月6日付けの取消理由通知書では,本件訂正前の請求項5に係る発明について,製造された難燃性マスターバッチにおいて,有機リン酸金属塩(b)が具体的にどのような状態で存在しているのか不明であるため,難燃性マスターバッチが,「物」としてどのような構成を備えたものであるのか,明確でないから,本件訂正前の請求項5に係る発明は明確であるとはいえず,また,同発明を直接又は間接的に引用する本件訂正前の請求項6?10に係る発明についても同様に,明確であるとはいえない旨,指摘した。
また,平成30年8月1日付けの取消理由通知書でも,上記と同様の指摘をしたほか,物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合において,明確性要件に適合するといえるのは,出願時において不可能・非実際的事情が存在するときに限られるところ,不可能・非実際的事情の存在を認める理由は見いだせないことについても指摘した。
これに対して,前記第2のとおり,本件訂正により,本件発明7に係る難燃性樹脂組成物における有機リン酸金属塩(b)の存在状態について,「難燃性樹脂組成物のペレットを液体窒素で冷却し粉砕し,次いで,粉砕したペレットの断面を蒸着装置を用いて銀蒸着した後,SEM-EDXによるリンの元素分析を行い,得られた分析結果画像から50μm以上の円相当径の粒状物の個数をカウントし,30視野を観察して平均した際に,ペレットの断面1mm^(2)に2個未満,または,2個以上,5個未満である,」ことが特定された結果,難燃性樹脂組成物が,「物」としてどのような構成を備えたものであるのか,明確にされた。そうすると,本件発明7は,経時的要素の記載を含むものの,明確性要件との関係で問題とされるべきプロダクトバイプロセスクレームには該当せず,不可能・非実際的事情の主張立証を要するものではない。
よって,本件発明7?10について,上記の点に関する明確性要件違反は解消した。

ウ 平成30年4月6日付けの取消理由通知書では,本件訂正前の請求項5に係る発明について,「物」としての難燃性マスターバッチにおいて,原料としての有機リン酸金属塩(b)の比表面積及び最大粒子径を特定することが,どのような技術的意味を持つのか理解できないから,本件訂正前の請求項5に係る発明は明確であるとはいえず,また,同発明を直接又は間接的に引用する本件訂正前の請求項6?10に係る発明についても同様に,明確であるとはいえない旨,指摘した。
これに対して,上記イのとおり,本件訂正により,本件発明7に係る難燃性樹脂組成物における有機リン酸金属塩(b)の存在状態について,具体的に特定された結果,難燃性樹脂組成物が,「物」としてどのような構成を備えたものであるのか,明確にされた。
よって,本件発明7?10について,上記の点に関する明確性要件違反は解消した。

エ まとめ
以上のとおりであるから,取消理由6-1(明確性要件),取消理由6-2(明確性要件)は解消した。
したがって,取消理由6-1(明確性要件),取消理由6-2(明確性要件)によっては,本件特許の請求項7?10に係る特許を取り消すことはできない。

(2)取消理由7(サポート要件)
平成30年4月6日付けの取消理由通知書では,本件訂正前の請求項5における有機リン酸金属塩(b)についての記載(比表面積及び最大粒子径の特定)が,上記(1)アのうち,(イ)製造された難燃性マスターバッチに含有された状態での有機リン酸金属塩(b)について,比表面積及び最大粒子径を特定していることを意味するものとすると,そのような発明については,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されているとはいえないから,本件訂正前の請求項5に係る発明は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものとはいえず,また,同発明を直接又は間接的に引用する本件訂正前の請求項6?10に係る発明についても同様に,本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものとはいえない旨,指摘した。
これに対して,上記(1)アのとおり,本件訂正により,本件発明7における有機リン酸金属塩(b)についての記載(比表面積及び最大粒子径の特定)が,(ア)難燃性マスターバッチを製造するために用いられる原料としての有機リン酸金属塩(b)について,比表面積及び最大粒子径を特定していることを意味するものであることが明確にされたから,取消理由7(サポート要件)は解消した。
したがって,取消理由7(サポート要件)によっては,本件特許の請求項7?10に係る特許を取り消すことはできない。

(3)取消理由8(実施可能要件)
平成30年4月6日付けの取消理由通知書では,本件訂正前の請求項5における有機リン酸金属塩(b)についての記載(比表面積及び最大粒子径の特定)が,上記(1)アのうち,(イ)製造された難燃性マスターバッチに含有された状態での有機リン酸金属塩(b)について,比表面積及び最大粒子径を特定していることを意味するものとすると,本件明細書の発明の詳細な説明には,そのような発明について,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないから,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,本件訂正前の請求項5に係る発明について,実施可能要件を満たすものとはいえず,また,同発明を直接又は間接的に引用する本件訂正前の請求項6?10に係る発明についても同様に,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,実施可能要件を満たすものとはいえない旨,指摘した。
これに対して,上記(1)アのとおり,本件訂正により,本件発明7における有機リン酸金属塩(b)についての記載(比表面積及び最大粒子径の特定)が,(ア)難燃性マスターバッチを製造するために用いられる原料としての有機リン酸金属塩(b)について,比表面積及び最大粒子径を特定していることを意味するものであることが明確にされたから,取消理由8(実施可能要件)は解消した。
したがって,取消理由8(実施可能要件)によっては,本件特許の請求項7?10に係る特許を取り消すことはできない。

(4)取消理由1(新規性)(ただし,本件発明5?9に対するもの。)
ア 甲1に記載された発明
甲1には,ホスフィン酸金属塩及び窒素化合物を含有した難燃性ポリエチレンテレフタレート繊維について記載されている(請求項1,3,【0001】)。
また,甲1には,その具体例である実施例1(【0068】,【0069】,表1)において,それぞれ所定量のポリエチレンテレフタレートチップ(ポリマーA),ジエチルホスフィン酸亜鉛(成分A)及びSTABIACE MC-5F(成分B)(ステアリン酸ナトリウム処理メラミンシアヌレート(【0067】))を用いて,組成がポリエチレンテレフタレート/ホスフィン酸亜鉛/メラミンシアヌレート(78重量%/12重量%/10重量%)であるポリマーBを得たことが記載されている。
さらに,甲1には,「成分Aの供給量を調整してリン元素量を調整した他は実施例1と同様に行った」実施例21及び22(【0083】,表4)についても記載されている。
実施例1(表1)と実施例21及び22(表4)を比較すると,P量(成分A)について,前者では「1(wt%)」であるのに対して,後者では「2.0(wt%)」及び「2.5(wt%)」であるが,N量(成分B)については,いずれも「2.5(wt%)」である。すなわち,実施例21及び22では,実施例1を前提として,窒素元素量(成分Bの供給量)は変更せず,リン元素量(成分Aの供給量)のみ変更しているが,その変更に伴い,ポリマーAの供給量は相対的に減少することになる。
具体的には,実施例1におけるポリマーBの組成は,「ポリエチレンテレフタレート/ホスフィン酸亜鉛/メラミンシアヌレート(78重量%/12重量%/10重量%)」であるが,実施例21では,ホスフィン酸亜鉛は24重量%(=12重量%×2.0/1)となり,それに伴い,ポリエチレンテレフタレートは66重量%(=78重量%-(24重量%-12重量%))となる。同様に,実施例22では,ホスフィン酸亜鉛は30重量%(=12重量%×2.5/1)となり,それに伴い,ポリエチレンテレフタレートは60重量%(=78重量%-(30重量%-12重量%))となる。
以上の検討を踏まえると,甲1には,実施例21及び22の記載に基づき,以下の発明が記載されていると認められる。

「テレフタル酸とエチレングリコールから合成されたポリエチレンテレフタレートチップ(ポリマーA),ジエチルホスフィン酸亜鉛(成分A),ステアリン酸ナトリウム処理メラミンシアヌレート(成分B)を分散させた水スラリー(固形分10重量%)を,ニーディングゾーンを4箇所有したベント式2軸混練押出機に供給し,バレル温度285℃,せん断速度100sec^(-1),滞留時間5分の条件にて溶融押し出しし,混練時の樹脂温度は265℃であり,押し出しポリマーを冷水中にストランド状に吐出し,直ちにカッティングして,組成がポリエチレンテレフタレート/ホスフィン酸亜鉛/メラミンシアヌレート(66重量%/24重量%/10重量%)であるチップ(ポリマーB)を得て,
次に,ポリマーBを事前に真空乾燥機で150℃,10時間,2Torrの条件で真空乾燥した後,ポリマーAとポリマーBを重量比1:1で混合し,原料とし,メルト部分が2軸エクストルーダー型となっている溶融紡糸機を用いて,紡糸温度290℃,紡糸速度3000m/分,吐出量40g/分の条件で,孔径0.23mm-孔数24ホールの口金を用いて,紡糸を行い,得られた未延伸糸。」(以下,「甲1発明1」という。)

「テレフタル酸とエチレングリコールから合成されたポリエチレンテレフタレートチップ(ポリマーA),ジエチルホスフィン酸亜鉛(成分A),ステアリン酸ナトリウム処理メラミンシアヌレート(成分B)を分散させた水スラリー(固形分10重量%)を,ニーディングゾーンを4箇所有したベント式2軸混練押出機に供給し,バレル温度285℃,せん断速度100sec^(-1),滞留時間5分の条件にて溶融押し出しし,混練時の樹脂温度は265℃であり,押し出しポリマーを冷水中にストランド状に吐出し,直ちにカッティングして,組成がポリエチレンテレフタレート/ホスフィン酸亜鉛/メラミンシアヌレート(60重量%/30重量%/10重量%)であるチップ(ポリマーB)を得て,
次に,ポリマーBを事前に真空乾燥機で150℃,10時間,2Torrの条件で真空乾燥した後,ポリマーAとポリマーBを重量比1:1で混合し,原料とし,メルト部分が2軸エクストルーダー型となっている溶融紡糸機を用いて,紡糸温度290℃,紡糸速度3000m/分,吐出量40g/分の条件で,孔径0.23mm-孔数24ホールの口金を用いて,紡糸を行い,得られた未延伸糸。」(以下,「甲1発明2」という。)

イ 本件発明7について
(ア)対比
本件発明7と甲1発明1及び甲1発明2とを対比する。
a 甲1発明1及び甲1発明2における「ポリマーB」は,「ポリエチレンテレフタレートチップ(ポリマーA)」のほか,「ジエチルホスフィン酸亜鉛(成分A)」及び「ステアリン酸ナトリウム処理メラミンシアヌレート(成分B)」を含むものであるが,その後,ポリマーAと重量比1:1で混合し,これを原料として溶融紡糸を行い,未延伸糸を得ていることから,未延伸糸を得るために用いられるマスターバッチといえる。
また,上記「ポリマーB」に含まれる「ジエチルホスフィン酸亜鉛(成分A)」は,甲1の記載(【0022】)によれば,難燃性を向上させるものであるから,当該「ポリマーB」は,難燃性を有するものといえる。
以上によれば,甲1発明1及び甲1発明2における「ポリマーB」は,本件発明7における「難燃性マスターバッチ」に相当する。
b 甲1発明1及び甲1発明2における「ポリエチレンテレフタレートチップ(ポリマーA)」,「ジエチルホスフィン酸亜鉛(成分A)」は,それぞれ,本件発明7における「ポリエチレンテレフタレート」である「熱可塑性樹脂(a)」,「有機リン酸金属塩(b)」に相当する。
甲1発明1及び甲1発明2においてポリマーBと混合される「ポリマーA」は,本件発明7における「熱可塑性樹脂(c)」に相当する。そして,甲1発明1及び甲1発明2において最終的に得られる「未延伸糸」は,難燃性を有する樹脂組成物からなるものであるから,本件発明7における「難燃性樹脂組成物」に相当する。
c そうすると,本件発明7と甲1発明1及び甲1発明2とは,少なくとも,
「熱可塑性樹脂(a)に対し,有機リン酸金属塩(b)を溶融混練して製造されるものである難燃性マスターバッチに,熱可塑性樹脂(c)を溶融混練して得られる難燃性樹脂組成物であって,
前記熱可塑性樹脂(a)が,ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリブチレンナフタレートである,
難燃性樹脂組成物。」
の点で一致し,少なくとも,以下の点で相違する。
・相違点1
本件発明7では,熱可塑性樹脂(a)に対し溶融混練される有機リン酸金属塩(b)が,「比表面積が5〔m^(2)/g〕以上の範囲」であり,かつ,「最大粒子径が10〔μm〕以下の範囲」であるのに対して,甲1発明1及び甲1発明2では,比表面積及び最大粒子径が不明である点。
・相違点2
本件発明7では,難燃性樹脂組成物における有機リン酸金属塩(b)の存在状態について,「難燃性樹脂組成物のペレットを液体窒素で冷却し粉砕し,次いで,粉砕したペレットの断面を蒸着装置を用いて銀蒸着した後,SEM-EDXによるリンの元素分析を行い,得られた分析結果画像から50μm以上の円相当径の粒状物の個数をカウントし,30視野を観察して平均した際に,ペレットの断面1mm^(2)に2個未満,または,2個以上,5個未満である」のに対して,甲1発明1及び甲1発明2では,不明である点。

(イ)相違点1の検討
甲1には,甲1発明1及び甲1発明2において,ポリエチレンテレフタレートチップ(ポリマーA)に対し溶融混練されるジエチルホスフィン酸亜鉛(成分A)について,その比表面積及び最大粒子径がそれぞれどの程度であるか,何ら記載されていない。また,上記ジエチルホスフィン酸亜鉛(成分A)の比表面積が「5〔m^(2)/g〕以上の範囲」であり,かつ,最大粒子径が「10〔μm〕以下の範囲」であると認めるに足りる証拠はない。
甲1には,難燃性ポリエチレンテレフタレート繊維中のホスフィン酸金属塩(成分A)について,その平均粒径が1μm以下であることが記載されている(請求項1,【0023】)。現に,甲1発明1及び甲1発明2に係る未延伸糸を所定の条件で延伸した延伸糸について,ジエチルホスフィン酸亜鉛(成分A)の平均粒径が,それぞれ,0.1μm及び0.15μmであることが示されている(【0069】,表4,実施例21,22)。
そして,甲1には,「ホスフィン酸金属塩の平均粒径を1μm以下とする方法については特に限定されない。」(【0023】)として,「例えば,ジエチルホスフィン酸アルミニウムのように融点を有しないホスフィン酸金属塩では,予め粉砕し平均粒径を1μm以下とした微細粉末をポリエチレンテレフタレートに添加し,繊維化することか挙げられる。」(【0024】),「また,例えばジエチルホスフィン酸亜鉛のように融点を有するホスフィン酸金属塩では,ポリエチレンテレフタレートに分散させる前の平均粒径が1μmを超える粒子であってもポリエチレンテレフタレートの溶融紡糸工程で配合して繊維中に微分散させ平均粒径を1μm以下にすることができる。」(【0025】)と記載されている。
上記のとおり,甲1には,ポリエチレンテレフタレートに添加されるホスフィン酸金属塩(成分A)について,その平均粒径は記載されているが,比表面積及び最大粒子径がそれぞれどの程度であるかについては,記載されていない。また,上記の「予め粉砕し平均粒径を1μm以下とした微細粉末」であれば,必ず,比表面積が「5〔m^(2)/g〕以上の範囲」であり,かつ,最大粒子径が「10〔μm〕以下の範囲」であると認めるに足りる証拠はない。
以上によれば,相違点1は実質的な相違点である。

(ウ)相違点2の検討
甲1には,上記(イ)で述べたとおり,難燃性ポリエチレンテレフタレート繊維(甲1発明1及び甲1発明2に係る未延伸糸を所定の条件で延伸した延伸糸)中のホスフィン酸金属塩(成分A)について,その平均粒径が1μm以下であることが記載されているものの,上記未延伸糸について,「難燃性樹脂組成物のペレットを液体窒素で冷却し粉砕し,次いで,粉砕したペレットの断面を蒸着装置を用いて銀蒸着した後,SEM-EDXによるリンの元素分析を行い,得られた分析結果画像から50μm以上の円相当径の粒状物の個数をカウントし,30視野を観察して平均した際に,ペレットの断面1mm^(2)に2個未満,または,2個以上,5個未満である」かどうかは,不明である。また,上記未延伸糸について,上記のような有機リン酸金属塩(b)の存在状態であると認めるに足りる証拠はない。
以上によれば,相違点2は実質的な相違点である。

(エ)小括
したがって,本件発明7は,甲1に記載された発明であるとはいえない。

(オ)申立人の主張について
申立人は,0.1μmの平均粒径を有するジエチルホスフィン酸亜鉛の最大粒子径が,通常,平均粒径の100倍にあたる10μmを超えないことは明らかであり,もし10μmを超える粒子が存在するとしても,それは無視できる程度の量であると考えるのが合理的であると主張する(申立書32頁)。
また,申立人は,甲1の0.1μmという非常に小さい平均粒径を有する有機リン酸金属塩を,本件明細書の実施例で用いられている捕捉粒子径10μmのフィルタ-に付した場合,その大部分がフィルターを通過して回収されるから,甲1の有機リン酸金属塩の平均粒径が,本件明細書の実施例で上記フィルター処理後に得られた最大粒子径10μmの有機リン酸金属塩の平均粒径と同等であるか,それ未満であることは,明らかであるところ,粉砕後の有機リン酸金属塩の粒径分布は,ほぼ正規分布となっていることから,甲1の0.1μmという非常に小さい平均粒径を有する有機リン酸金属塩の最大粒子径が10μmより小さいことは,明らかであると主張する(意見書15?16頁)。
しかしながら,ジエチルホスフィン酸亜鉛(有機リン酸金属塩)の平均粒径が0.1μmであるからといって,必ず,最大粒子径が10μmより小さいとはいえず,また,そのように認めるに足りる証拠はない。この点,申立人自身も,「もし10μmを超える粒子が存在するとしても,それは無視できる程度の量である」,「捕捉粒子径10μmのフィルタ-に付した場合,その大部分がフィルターを通過」する(すなわち,全てが通過するわけではない。)と自認するとおりである。
よって,申立人の主張は採用することができない。

ウ 本件発明8及び9について
本件発明8及び9は,本件発明7を引用するものであるが,上記イで述べたとおり,本件発明7が甲1に記載された発明であるとはいえない以上,本件発明8及び9についても同様に,甲1に記載された発明であるとはいえない。

エ まとめ
以上のとおり,本件発明7?9は,いずれも,甲1に記載された発明であるとはいえない。
したがって,取消理由1(新規性)(ただし,本件発明5?9に対するもの。)によっては,本件特許の請求項7?9に係る特許を取り消すことはできない。

(5)取消理由9(新規性)
ア 甲2に記載された発明
甲2の記載(請求項1,13,【0069】,【0070】,【0083】?【0085】,実施例1(【0104】),実施例18,22(【0116】),表4)によれば,特に実施例18及び22に着目すると,甲2には,以下の発明が記載されていると認められる。

「トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム(クラリアント社製,製品名Pekoflam STC,リン原子含有量23質量%,平均粒径4μm,分解温度300℃以上)を含むマスターバッチと,
2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン(日油社製,ノフマーBC,分解ピーク温度240℃,分解断片(クメン)の沸点152℃)を含むマスターバッチと,
廃PETボトル及び廃PETフィルムからのポリエチレンテレフタレート樹脂を混合して得られた固有粘度0.60のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂1)と,
をエクストルーダーで溶融混合して得られた,上記成分をそれぞれ,2.78質量%,1.00質量%,96.22質量%含む,難燃性ポリエステル樹脂組成物。」(以下,「甲2発明1」という。)

「ポリリン酸アンモニウム1(クラリアント社製,製品名Pekoflam TC204,白色粉末,平均粒径8μm,リン原子含有量32質量%,窒素原子含有量15質量%,重合度1000,分解温度285℃)を含むマスターバッチと,
トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム(クラリアント社製,製品名Pekoflam STC,リン原子含有量23質量%,平均粒径4μm,分解温度300℃以上)を含むマスターバッチと,
2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン(日油社製,ノフマーBC,分解ピーク温度240℃,分解断片(クメン)の沸点152℃)を含むマスターバッチと,
廃PETボトル及び廃PETフィルムからのポリエチレンテレフタレート樹脂を混合して得られた固有粘度0.60のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂1)と,
をエクストルーダーで溶融混合して得られた,上記成分をそれぞれ,1.00質量%,1.39質量%,1.00質量%,96.61質量%含む,難燃性ポリエステル樹脂組成物。」(以下,「甲2発明2」という。)

イ 本件発明7について
(ア)対比
本件発明7と甲2発明1及び甲2発明2とを対比する。
甲2発明1及び甲2発明2における「トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム(クラリアント社製,製品名Pekoflam STC,リン原子含有量23質量%,平均粒径4μm,分解温度300℃以上)」は,有機リン酸金属塩からなる無機リン系難燃剤であり,本件発明7における「有機リン酸金属塩(b)」に相当する。
甲2発明1及び甲2発明2に係る難燃性ポリエステル樹脂組成物は,無機リン系難燃剤(上記トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウムのほか,無機リン-窒素化合物であるポリリン酸アンモニウム1)及び難燃助剤(2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン)以外には,「PET樹脂1」を含むのみであるから,無機リン系難燃剤を含むマスターバッチと,難燃助剤を含むマスターバッチのいずれについても,マスターバッチ基材としては,「PET樹脂1」を使用しているものと解される。そうすると,当該マスターバッチ基材としての「PET樹脂1」は,本件発明7における「ポリエチレンテレフタレート」である「熱可塑性樹脂(a)」に相当する。
甲2発明1及び甲2発明2において,上記の各マスターバッチと溶融混合される「PET樹脂1」は,本件発明7における「熱可塑性樹脂(c)」に相当する。
以上によれば,本件発明7と甲2発明1及び甲2発明2とは,少なくとも,
「熱可塑性樹脂(a)に対し,有機リン酸金属塩(b)を混合した難燃性マスターバッチに,熱可塑性樹脂(c)を溶融混練して得られる難燃性樹脂組成物であって,
前記熱可塑性樹脂(a)が,ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリブチレンナフタレートである,
難燃性樹脂組成物。」
の点で一致し,少なくとも,以下の点で相違する。
・相違点3
本件発明7では,熱可塑性樹脂(a)に対し溶融混練される有機リン酸金属塩(b)が,「比表面積が5〔m^(2)/g〕以上の範囲」であり,かつ,「最大粒子径が10〔μm〕以下の範囲」であるのに対して,甲2発明1及び甲2発明2では,「平均粒径4μm」であるものの,比表面積及び最大粒子径が不明である点。
・相違点4
本件発明7では,難燃性樹脂組成物における有機リン酸金属塩(b)の存在状態について,「難燃性樹脂組成物のペレットを液体窒素で冷却し粉砕し,次いで,粉砕したペレットの断面を蒸着装置を用いて銀蒸着した後,SEM-EDXによるリンの元素分析を行い,得られた分析結果画像から50μm以上の円相当径の粒状物の個数をカウントし,30視野を観察して平均した際に,ペレットの断面1mm^(2)に2個未満,または,2個以上,5個未満である」のに対して,甲2発明1及び甲2発明2では,不明である点。

(イ)相違点3の検討
甲2には,甲2発明1及び甲2発明2におけるトリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウムについて,その比表面積及び最大粒子径がそれぞれどの程度であるか,何ら記載されていない。また,上記トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウムの比表面積が「5〔m^(2)/g〕以上の範囲」であり,かつ,最大粒子径が「10〔μm〕以下の範囲」であると認めるに足りる証拠はない。
甲2には,無機リン系難燃剤は,無機赤リン,無機リン-窒素化合物及び有機リン酸金属塩からなる群より選ばれることが記載され(請求項1,【0055】),甲2発明1及び甲2発明2におけるトリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウムは,上記のうち,有機リン酸金属塩に該当するものである。甲2には,上記有機リン酸金属塩について,以下の記載がある。
「【0070】
本発明に用いられる有機リン酸金属塩は通常,粉体のものが用いられ,粉末の平均粒径は30μm以下であることが好ましく,より好ましくは該粉末の平均粒径10μm以下,特に好ましくは0.5?10μmの範囲である。粉末の平均粒径が30μm以下であれば,有機リン酸金属塩をそのまま熱可塑性ポリエステル樹脂に混合し,均一に分散することができ,この際,粒径が小さいほど分散性は良くなる。したがって,粉末の平均粒径の下限に関しては,特に制限されるものではない。ただし,0.5μm以上であれば,粉塵化し難く,取り扱い性がよく,粉末同士の凝集を防止して単分散し易いことなどから好ましい。」
上記のとおり,甲2には,上記有機リン酸金属塩の平均粒径については記載されているが,比表面積及び最大粒子径がそれぞれどの程度であるかについては,記載されていない。また,上記の平均粒径であれば,必ず,比表面積が「5〔m^(2)/g〕以上の範囲」であり,かつ,最大粒子径が「10〔μm〕以下の範囲」であると認めるに足りる証拠はない。
以上によれば,相違点3は実質的な相違点である。

(ウ)相違点4の検討
甲2には,甲2発明1及び甲2発明2に係る難燃性ポリエステル樹脂組成物におけるトリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウムの存在状態については,何ら記載されておらず,「難燃性樹脂組成物のペレットを液体窒素で冷却し粉砕し,次いで,粉砕したペレットの断面を蒸着装置を用いて銀蒸着した後,SEM-EDXによるリンの元素分析を行い,得られた分析結果画像から50μm以上の円相当径の粒状物の個数をカウントし,30視野を観察して平均した際に,ペレットの断面1mm^(2)に2個未満,または,2個以上,5個未満である」かどうかは,不明である。また,上記難燃性ポリエステル樹脂組成物について,上記のような有機リン酸金属塩(b)の存在状態であると認めるに足りる証拠はない。
以上によれば,相違点4は実質的な相違点である。

(エ)小括
したがって,本件発明7は,甲2に記載された発明であるとはいえない。

(オ)申立人の主張について
申立人は,取消理由9(新規性)についても,取消理由1(新規性)(ただし,本件発明5?9に対するもの。)と同様に主張するが(意見書15?16頁),上記(4)イ(オ)で述べたのと同様の理由により,申立人の主張は採用することができない。

ウ 本件発明8?10について
本件発明8?10は,本件発明7を引用するものであるが,上記イで述べたとおり,本件発明7が甲2に記載された発明であるとはいえない以上,本件発明8?10についても同様に,甲2に記載された発明であるとはいえない。

エ まとめ
以上のとおり,本件発明7?10は,いずれも,甲2に記載された発明であるとはいえない。
したがって,取消理由9(新規性)によっては,本件特許の請求項7?10に係る特許を取り消すことはできない。

2 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由
(1)取消理由1(新規性)(ただし,本件発明1?4に対するもの。)
ア 甲1に記載された発明
上記1(4)アの検討のとおり,甲1には,実施例21及び22の記載に基づき,以下の発明が記載されていると認められる。

「テレフタル酸とエチレングリコールから合成されたポリエチレンテレフタレートチップ(ポリマーA),ジエチルホスフィン酸亜鉛(成分A),ステアリン酸ナトリウム処理メラミンシアヌレート(成分B)を分散させた水スラリー(固形分10重量%)を,ニーディングゾーンを4箇所有したベント式2軸混練押出機に供給し,バレル温度285℃,せん断速度100sec^(-1),滞留時間5分の条件にて溶融押し出しし,混練時の樹脂温度は265℃であり,押し出しポリマーを冷水中にストランド状に吐出し,直ちにカッティングして,組成がポリエチレンテレフタレート/ホスフィン酸亜鉛/メラミンシアヌレート(66重量%/24重量%/10重量%)であるチップ(ポリマーB)を得て,
次に,ポリマーBを事前に真空乾燥機で150℃,10時間,2Torrの条件で真空乾燥した後,ポリマーAとポリマーBを重量比1:1で混合し,原料とし,メルト部分が2軸エクストルーダー型となっている溶融紡糸機を用いて,紡糸温度290℃,紡糸速度3000m/分,吐出量40g/分の条件で,孔径0.23mm-孔数24ホールの口金を用いて,紡糸を行い,未延伸糸を得る,未延伸糸の製造方法。」(以下,「甲1発明1’」という。)

「テレフタル酸とエチレングリコールから合成されたポリエチレンテレフタレートチップ(ポリマーA),ジエチルホスフィン酸亜鉛(成分A),ステアリン酸ナトリウム処理メラミンシアヌレート(成分B)を分散させた水スラリー(固形分10重量%)を,ニーディングゾーンを4箇所有したベント式2軸混練押出機に供給し,バレル温度285℃,せん断速度100sec^(-1),滞留時間5分の条件にて溶融押し出しし,混練時の樹脂温度は265℃であり,押し出しポリマーを冷水中にストランド状に吐出し,直ちにカッティングして,組成がポリエチレンテレフタレート/ホスフィン酸亜鉛/メラミンシアヌレート(60重量%/30重量%/10重量%)であるチップ(ポリマーB)を得て,
次に,ポリマーBを事前に真空乾燥機で150℃,10時間,2Torrの条件で真空乾燥した後,ポリマーAとポリマーBを重量比1:1で混合し,原料とし,メルト部分が2軸エクストルーダー型となっている溶融紡糸機を用いて,紡糸温度290℃,紡糸速度3000m/分,吐出量40g/分の条件で,孔径0.23mm-孔数24ホールの口金を用いて,紡糸を行い,未延伸糸を得る,未延伸糸の製造方法。」(以下,「甲1発明2’」という。)

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明1’及び甲1発明2’とを対比すると,上記1(4)イ(ア)と同様に,両者は,
「予め熱可塑性樹脂(a)および有機リン酸金属塩(b)を溶融混練してマスターバッチを製造する工程(1),前記工程(1)で得られた難燃性マスターバッチに,さらに,熱可塑性樹脂(c)を溶融混練する工程(2)を有する難燃性樹脂組成物の製造方法であって,
前記熱可塑性樹脂(a)が,ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリブチレンナフタレートである,難燃性樹脂組成物の製造方法。」
の点で一致し,以下の点で相違する。
・相違点1’
本件発明1では,熱可塑性樹脂(a)に対し溶融混練される有機リン酸金属塩(b)が,「比表面積が5〔m^(2)/g〕以上の範囲」であり,かつ,「最大粒子径が10〔μm〕以下の範囲」であるのに対して,甲1発明1’及び甲1発明2’では,比表面積及び最大粒子径が不明である点。

(イ)相違点1’の検討
相違点1’は,上記1(4)イ(イ)で検討した相違点1と同様のものであるから,相違点1について述べたのと同様の理由により,相違点1’は実質的な相違点である。

(ウ)小括
したがって,本件発明1は,甲1に記載された発明であるとはいえない。

ウ 本件発明2?4について
本件発明2?4は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが,上記イで述べたとおり,本件発明1が甲1に記載された発明であるとはいえない以上,本件発明2?4についても同様に,甲1に記載された発明であるとはいえない。

エ まとめ
以上のとおり,本件発明1?4は,いずれも,甲1に記載された発明であるとはいえない。
したがって,取消理由1(新規性)(ただし,本件発明1?4に対するもの。)によっては,本件特許の請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。

(2)取消理由2-1(進歩性)
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明1’及び甲1発明2’との一致点及び相違点1’は,上記(1)イ(ア)で認定したとおりである。

(イ)相違点1’の検討
本件明細書の記載(【0002】?【0007】,【0011】,【0017】,【0018】,【0027】,【0028】,【0034】,参考例1,4,5,実施例2?3,6,7,比較例1?10,表1?5)によれば,本件発明1は,難燃性樹脂組成物を製造する際に,難燃剤として,比表面積が「5〔m^(2)/g〕以上の範囲」であり,かつ,最大粒子径が「10〔μm〕以下の範囲」である有機リン酸金属塩(b)を用い,予めポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂(a)と上記有機リン酸金属塩(b)を溶融混練してマスターバッチを製造した後,さらに熱可塑性樹脂(c)を溶融混練することにより,熱可塑性樹脂中における難燃剤の凝集物が生成するのを防ぐというものである。
そして,それにより,表面平滑性,表面外観性及び難燃性に優れる熱可塑性樹脂成形品を提供できるとともに,凝集物を起点とした破壊を防ぎ,機械的強度に優れた熱可塑性樹脂成形品を提供できるという効果を奏するものである。
一方,甲1のほか,甲2?6のいずれにも,難燃剤として,比表面積が「5〔m^(2)/g〕以上の範囲」であり,かつ,最大粒子径が「10〔μm〕以下の範囲」である有機リン酸金属塩(b)を用いることについて記載されておらず,また,そのようなことが本件特許の出願時における技術常識であったともいえない。
そうすると,甲1発明1’及び甲1発明2’において,ジエチルホスフィン酸亜鉛(成分A)について,比表面積を「5〔m^(2)/g〕以上の範囲」とし,かつ,最大粒子径を「10〔μm〕以下の範囲」とすることが,当業者が容易に想到することができたということはできない。

(ウ)小括
したがって,本件発明1は,甲1に記載された発明及び甲2?6に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(エ)申立人の主張について
a 申立人は,甲1には,ホスフィン酸金属塩を予め粉砕して,平均粒径を1μm以下とすることが記載され,甲3には,非可融性の難燃成分を用いる場合には,1μm未満の平均粒度を有する粒子を使用することが好ましいことが記載され,甲2には,難燃剤としての有機リン酸金属塩は通常粉体のものが用いられ,その平均粒径は好ましくは0.5?10μmの範囲であること(【0070】),そのような粉体は,粒度分布が均一であることが望ましく,篩分けなどにより粒度分布が狭く,粒径が揃ったものに調整されたものを利用できること(【0067】)が記載されていること等を指摘して,甲1に記載された発明において,ホスフィン酸金属塩としてできるだけ小さな粒子を使用し,その際に篩分けなどによりその粒径を揃えること,例えば実施例1のように平均粒径が0.1μmである粒子を使用する場合にも,その粒径を篩分けなどにより揃えて,最大粒子径が1μmを超えないようにすることは,当業者が容易に想到し得たことであると主張する(申立書35?36頁)。
しかしながら,申立人が指摘する甲2の記載,すなわち,粒度分布が均一であり,篩分けなどにより粒度分布が狭く,粒径が揃ったものに調整する旨の記載(【0067】)は,無機リン系難燃剤のうち,無機リン-窒素化合物に関する記載であり,有機リン酸金属塩に関する記載ではない。甲2には,有機リン酸金属塩について,粒度分布が均一であり,篩分けなどにより粒度分布が狭く,粒径が揃ったものに調整することは,記載されていない。甲2においては,無機リン系難燃剤に関する記載は,その種類ごとに明確に区別して記載されており(無機赤リン(【0056】,【0057】),無機リン-窒素化合物(【0058】?【0068】),有機リン酸金属塩(【0069】,【0070】)),無機リン-窒素化合物に関する記載を,有機リン酸金属塩に関する記載と同視することは,相当ではない。
よって,申立人の主張は,その前提において失当であり,採用することができない。
b 申立人は,甲1に記載された発明において,有機リン酸金属塩の平均粒径を十分に小さい値,例えば0.1μmとすることは,当業者が容易に想到できたことであり,この場合,有機リン酸金属塩の最大粒子径及び比表面積は,本件発明1の条件を満たすと主張する(意見書17?18頁)。
しかしながら,上記1(4)イ(オ)で述べたとおり,ジエチルホスフィン酸亜鉛(有機リン酸金属塩)の平均粒径が0.1μmであるからといって,必ず,最大粒子径が10μmより小さいとはいえず,また,そのように認めるに足りる証拠はないから,申立人の主張は採用することができない。

イ 本件発明7について
(ア)対比
本件発明7と甲1発明1及び甲1発明2との一致点並びに相違点1及び2は,上記1(4)イ(ア)で認定したとおりである。

(イ)相違点1の検討
相違点1は,上記ア(イ)で検討した相違点1’と同様のものであるから,相違点1’について述べたのと同様の理由により,甲1発明1及び甲1発明2において,ジエチルホスフィン酸亜鉛(成分A)について,比表面積を「5〔m^(2)/g〕以上の範囲」とし,かつ,最大粒子径を「10〔μm〕以下の範囲」とすることが,当業者が容易に想到することができたということはできない。

(ウ)小括
したがって,相違点2について検討するまでもなく,本件発明7は,甲1に記載された発明及び甲2?6に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件発明2?4及び8?10について
本件発明2?4は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり,本件発明8?10は,本件発明7を引用するものであるが,上記ア,イで述べたとおり,本件発明1及び7が,いずれも,甲1に記載された発明及び甲2?6に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明2?4及び8?10についても同様に,甲1に記載された発明及び甲2?6に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ まとめ
以上のとおり,本件発明1?4及び7?10は,いずれも,甲1に記載された発明及び甲2?6に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって,取消理由2-1(進歩性)によっては,本件特許の請求項1?4及び7?10に係る特許を取り消すことはできない。

(3)取消理由2-2(進歩性)
ア 甲2に記載された発明
上記1(5)アのとおり,特に実施例18及び22に着目すると,甲2には,以下の発明が記載されていると認められる。

「トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム(クラリアント社製,製品名Pekoflam STC,リン原子含有量23質量%,平均粒径4μm,分解温度300℃以上)を含むマスターバッチと,
2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン(日油社製,ノフマーBC,分解ピーク温度240℃,分解断片(クメン)の沸点152℃)を含むマスターバッチと,
廃PETボトル及び廃PETフィルムからのポリエチレンテレフタレート樹脂を混合して得られた固有粘度0.60のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂1)と,
をエクストルーダーで溶融混合して,上記成分をそれぞれ,2.78質量%,1.00質量%,96.22質量%含む,難燃性ポリエステル樹脂組成物を得る,難燃性ポリエステル樹脂組成物の製造方法。」(以下,「甲2発明1’」という。)

「ポリリン酸アンモニウム1(クラリアント社製,製品名Pekoflam TC204,白色粉末,平均粒径8μm,リン原子含有量32質量%,窒素原子含有量15質量%,重合度1000,分解温度285℃)を含むマスターバッチと,
トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム(クラリアント社製,製品名Pekoflam STC,リン原子含有量23質量%,平均粒径4μm,分解温度300℃以上)を含むマスターバッチと,
2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン(日油社製,ノフマーBC,分解ピーク温度240℃,分解断片(クメン)の沸点152℃)を含むマスターバッチと,
廃PETボトル及び廃PETフィルムからのポリエチレンテレフタレート樹脂を混合して得られた固有粘度0.60のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂1)と,
をエクストルーダーで溶融混合して,上記成分をそれぞれ,1.00質量%,1.39質量%,1.00質量%,96.61質量%含む,難燃性ポリエステル樹脂組成物を得る,難燃性ポリエステル樹脂組成物の製造方法。」(以下,「甲2発明2’」という。)

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明1’及び甲2発明2’とを対比すると,上記1(5)イ(ア)と同様に,両者は,少なくとも,
「予め熱可塑性樹脂(a)および有機リン酸金属塩(b)を混合してマスターバッチを製造する工程(1),前記工程(1)で得られた難燃性マスターバッチに,さらに,熱可塑性樹脂(c)を溶融混練する工程(2)を有する難燃性樹脂組成物の製造方法であって,
前記熱可塑性樹脂(a)が,ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリブチレンナフタレートである,難燃性樹脂組成物の製造方法。」
の点で一致し,少なくとも,以下の点で相違する。
・相違点3’
本件発明1では,熱可塑性樹脂(a)に対し溶融混練される有機リン酸金属塩(b)が,「比表面積が5〔m^(2)/g〕以上の範囲」であり,かつ,「最大粒子径が10〔μm〕以下の範囲」であるのに対して,甲2発明1’及び甲2発明2’では,「平均粒径が4μm」であるものの,比表面積及び最大粒子径が不明である点。

(イ)相違点3’の検討
本件発明1の内容及び効果については,上記(2)ア(イ)で述べたとおりである。
一方,甲2のほか,甲1及び3?7のいずれにも,難燃剤として,比表面積が「5〔m^(2)/g〕以上の範囲」であり,かつ,最大粒子径が「10〔μm〕以下の範囲」である有機リン酸金属塩(b)を用いることについて記載されておらず,また,そのようなことが本件特許の出願時における技術常識であったともいえない。
そうすると,甲2発明1’及び甲2発明2’において,トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウムについて,比表面積を「5〔m^(2)/g〕以上の範囲」とし,かつ,最大粒子径を「10〔μm〕以下の範囲」とすることが,当業者が容易に想到することができたということはできない。

(ウ)小括
したがって,本件発明1は,甲2に記載された発明並びに甲1及び3?7に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(エ)申立人の主張について
申立人は,取消理由2-2(進歩性)についても,取消理由2-1(進歩性)と同様に主張するが(申立書42?43頁,意見書17?18頁),上記(2)ア(エ)で述べたのと同様の理由により,申立人の主張は採用することができない。

ウ 本件発明7について
(ア)対比
本件発明7と甲2発明1及び甲2発明2との一致点並びに相違点3及び4は,上記1(5)イ(ア)で認定したとおりである。

(イ)相違点3の検討
相違点3は,上記イ(イ)で検討した相違点3’と同様のものであるから,相違点3’について述べたのと同様の理由により,甲2発明1及び甲2発明2において,トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウムについて,比表面積を「5〔m^(2)/g〕以上の範囲」とし,かつ,最大粒子径を「10〔μm〕以下の範囲」とすることが,当業者が容易に想到することができたということはできない。

(ウ)小括
したがって,相違点4について検討するまでもなく,本件発明7は,甲2に記載された発明並びに甲1及び3?7に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 本件発明2?4及び8?10について
本件発明2?4は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり,本件発明8?10は,本件発明7を引用するものであるが,上記イ,ウで述べたとおり,本件発明1及び7が,いずれも,甲2に記載された発明並びに甲1及び3?7に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明2?4及び8?10についても同様に,甲2に記載された発明並びに甲1及び3?7に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

オ まとめ
以上のとおり,本件発明1?4及び7?10は,いずれも,甲2に記載された発明並びに甲1及び3?7に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって,取消理由2-2(進歩性)によっては,本件特許の請求項1?4及び7?10に係る特許を取り消すことはできない。

(4)取消理由4(サポート要件)
申立人は,本件発明1の有機リン酸金属塩(b)には,熱可塑性樹脂(a)の溶融温度において溶融してしまうものが含まれているが,本件明細書には,このような場合について,本件発明1の課題を解決できること(所望の特性を有する成形品を製造できること)は記載されていないから,本件発明1は,発明の詳細な説明に記載されたものではないと主張する。また,本件発明2?10についても同様に主張する(申立書49?50頁,意見書5頁)。
しかしながら,本件明細書の記載(【0002】,【0003】,【0006】,【0007】,【0017】,【0018】)によれば,熱可塑性樹脂成形品における表面平滑性,表面外観性,機械的強度及び難燃性の低下の原因が,凝集物の生成にあることから,本件発明1においては,常温で固体である有機リン酸金属塩(b)を,予め破砕して微細化した後,篩を用いて分級することで,凝集物等の粗大粒子を除去して,比表面積を「5〔m^(2)/g〕以上の範囲」とし,かつ,最大粒子径を「10〔μm〕以下の範囲」とし,これを原料として用いるものであり,それにより,熱可塑性樹脂中における難燃剤の凝集物の生成を防ぐというものである。
そうすると,原料である有機リン酸金属塩(b)が,熱可塑性樹脂(a)の溶融温度において溶融してしまうものであったとしても,予め凝集物等の粗大粒子を除去して所定の比表面積及び最大粒子径としたものと,そうでないものについて,溶融混練等の条件を同条件として難燃性樹脂組成物を製造すれば,前者のほうが,熱可塑性樹脂中における難燃剤の凝集物の生成をより防ぐことができると理解できる。この点,有機リン酸金属塩(b)が,熱可塑性樹脂(a)の溶融温度において溶融してしまう場合に,本件発明1の課題を解決できないことを示す証拠はない。
以上のとおりであるから,本件発明1の有機リン酸金属塩(b)に,熱可塑性樹脂(a)の溶融温度において溶融してしまうものが含まれているからといって,本件発明1について,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合しないということはできない。また,本件発明2?4及び7?10についても同様であり,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合しないということはできない。
したがって,取消理由4(サポート要件)によっては,本件特許の請求項1?4及び7?10に係る特許を取り消すことはできない。

(5)取消理由3(実施可能要件)
申立人は,取消理由4(サポート要件)と同様の理由により,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,本件発明1について,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないと主張する。また,本件発明2?10についても同様に主張する(申立書47?49頁,意見書6頁)。
しかしながら,上記(4)で述べたのと同様の理由により,本件明細書の発明の詳細な説明の記載が,本件発明1?4及び7?10について,実施可能要件に適合しないということはできない。
したがって,取消理由3(実施可能要件)によっては,本件特許の請求項1?4及び7?10に係る特許を取り消すことはできない。

(6)取消理由5(明確性要件)
申立人は,本件発明1の有機リン酸金属塩(b)には,熱可塑性樹脂(a)の溶融温度において溶融してしまうものが含まれているが,そのような有機リン酸金属塩(b)を用いた場合には,マスターバッチ作製の際に,当該有機リン酸金属塩(b)が溶融してしまうから,有機リン酸金属塩(b)の比表面積及び最大粒子径を規定する本件発明1は不明確であると主張する。また,本件発明2?10についても同様に主張する(申立書50?51頁)。
しかしながら,本件発明1は,本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,本件発明1における「前記有機リン酸金属塩(b)は,比表面積が5〔m^(2)/g〕以上の範囲であり,かつ,最大粒子径が10〔μm〕以下の範囲であり,」との記載は,難燃性マスターバッチを製造するために用いられる原料としての有機リン酸金属塩(b)について,比表面積及び最大粒子径を特定していることを意味するものであり,明確である。また,本件発明2?4及び7?10についても同様であり,明確である。
本件発明1の有機リン酸金属塩(b)に,熱可塑性樹脂(a)の溶融温度において溶融してしまうものが含まれているからといって,本件発明1が明確でないとはいえない。また,本件発明2?4及び7?10についても同様である。
したがって,取消理由5(明確性要件)によっては,本件特許の請求項1?4及び7?10に係る特許を取り消すことはできない。

3 申立人のその他の主張について
申立人は,意見書において,下記(1)?(6)のとおり,実施可能要件違反,明確性要件違反及び新規性欠如の取消理由を主張するとともに,下記(7)の参考資料1?5を提出する。
しかしながら,これらの主張は,いずれも,新たな取消理由を主張するものであり,実質的に特許異議申立書の要旨を変更するものといえるから,採用しない。

(1)本件明細書には,シートの製造方法について,押出機及びTダイにより成形した(設定温度280℃)ことが記載されているだけで,Tダイ成形時のリップ間隔等に関する記載がないから,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件発明1?10を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない(6?7,20頁)。
(2)本件明細書には,繊維の製造方法について,金口径0.23μm-12H(ホール)の条件で紡糸を行って繊維サンプルを製造したことが記載されているが,ノズル径0.23μmのノズルを作成することは現実的には不可能であり,仮にそのようなノズルが存在したとしても,それを用いて溶融紡糸を行うことは極めて困難であり,仮に紡糸できたとしても,糸切れの評価を行えるような繊維が得られるとはいえないから,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件発明1?10を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない(6?7,20頁)。
(3)本件明細書には,有機リン酸金属塩(b)の最大粒子径に関する定義が存在しないから,本件発明1?10は明確でない(19?20頁)。
(4)本件明細書には,有機リン酸金属塩(b)の最大粒子径の測定方法の記載がないから,本件発明1?10は明確でない(20?21頁)。
(5)本件発明10は,甲1に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができないものである(16頁)。
(6)本件発明1?4は,甲2に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができないものである(16頁)。
(7)証拠方法
・参考資料1 特許第4049398号公報
・参考資料2 特開2008-260910号公報
・参考資料3 「溶融紡糸用ノズル【製品案内】」,株式会社化繊ノズル製作所ホームページ[平成30年7月19日検索],
・参考資料4 「Exolit^(○R) クラリアントのハロゲンフリー難燃剤」,クラリアントジャパン株式会社,2011年1月
・参考資料5 「粒度分布とその測定」,色材,1970年,vol.43,p.333-343

第6 むすび
以上のとおり,本件特許の請求項5及び6が本件訂正により削除された結果,同請求項5及び6に係る特許についての本件特許異議の申立ては対象を欠くこととなったため,特許法120条の8第1項において準用する同法135条の規定により決定をもって却下すべきものである。
また,取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1?4及び7?10に係る特許を取り消すことはできない。
また,前記第5の3の申立人の主張を考慮しても,他に本件特許の請求項1?4及び7?10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め熱可塑性樹脂(a)および有機リン酸金属塩(b)を溶融混練してマスターバッチを製造する工程(1)、前記工程(1)で得られた難燃性マスターバッチに、さらに、熱可塑性樹脂(c)を溶融混練する工程(2)を有する難燃性樹脂組成物の製造方法であって、
前記有機リン酸金属塩(b)は、比表面積が5〔m^(2)/g〕以上の範囲であり、かつ、最大粒子径が10〔μm〕以下の範囲であり、
前記熱可塑性樹脂(a)が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートである、難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記工程(1)において、熱可塑性樹脂(a)100質量部に対し、有機リン酸金属塩(b)を10?100質量部の範囲で溶融混練する請求項1記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記工程(2)において、難燃性マスターバッチ100質量部に対し、熱可塑性樹脂(c)50?5000質量部の範囲で溶融混練する請求項1又は2記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記有機リン酸金属塩(b)が、下記一般式(1)で表されるホスフィン酸金属塩、下記一般式(2)で表されるホスフィン酸金属塩およびこれらの縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1?3の何れか一項記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
【化1】

(式中、R^(1)、R^(2)は、それぞれ、炭素数1?6のアルキル基または炭素数12以下のアリール基であり、R^(3)は炭素原子数1?10の直鎖もしくは分岐鎖状アルキレン基、炭素原子数6?10のアリーレン基、炭素原子数6?10のアルキルアリーレン基または炭素原子数6?10のアリールアルキレン基であり、Mは、カルシウム、アルミニウム又は亜鉛であり、m=2または3、n=1、2または3、x=1または2である。)
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】
熱可塑性樹脂(a)100質量部に対し、有機リン酸金属塩(b)を20?50質量部の範囲で溶融混練して製造されるものである難燃性マスターバッチに、熱可塑性樹脂(c)を溶融混練して得られることを特徴とする難燃性樹脂組成物であって、
前記有機リン酸金属塩(b)は、比表面積が5〔m^(2)/g〕以上の範囲であり、かつ、最大粒子径が10〔μm〕以下の範囲であり、
前記熱可塑性樹脂(a)が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートであり、
前記難燃性樹脂組成物は、難燃性樹脂組成物のペレットを液体窒素で冷却し粉砕し、次いで、粉砕したペレットの断面を蒸着装置を用いて銀蒸着した後、SEM-EDXによるリンの元素分析を行い、得られた分析結果画像から50μm以上の円相当径の粒状物の個数をカウントし、30視野を観察して平均した際に、ペレットの断面1mm^(2)に2個未満、または、2個以上、5個未満である、難燃性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項7記載の難燃性樹脂組成物を成形して得られる成形体。
【請求項9】
請求項7記載の難燃性樹脂組成物を成形して得られる繊維。
【請求項10】
請求項7記載の難燃性樹脂組成物を成形して得られるフィルム又はシート。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-12-27 
出願番号 特願2013-199793(P2013-199793)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (C08J)
P 1 651・ 121- YAA (C08J)
P 1 651・ 113- YAA (C08J)
P 1 651・ 537- YAA (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大村 博一  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 橋本 栄和
井上 猛
登録日 2017-06-16 
登録番号 特許第6156018号(P6156018)
権利者 DIC株式会社
発明の名称 難燃性マスターバッチ、難燃性樹脂組成物およびその製造方法  
代理人 小川 眞治  
代理人 小川 眞治  
代理人 江崎 光史  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 上西 克礼  
代理人 河野 通洋  
代理人 河野 通洋  
代理人 虎山 一郎  

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