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審決分類 審判 全部申し立て 1項2号公然実施  F24F
審判 全部申し立て 2項進歩性  F24F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F24F
管理番号 1348728
異議申立番号 異議2018-700661  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-08-07 
確定日 2019-01-28 
異議申立件数
事件の表示 特許第6276450号発明「空気調和機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6276450号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6276450号の請求項1?15に係る特許についての出願は、
平成29年4月28日に特許出願され、平成30年1月19日に特許権の設定登録がされ、平成30年2月7日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成30年8月7日に特許異議申立人熊谷秀雄(以下、「異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

2.本件特許発明
特許第6276450号の請求項1?15の特許に係る発明(以下、それぞれ「特許発明1」?「特許発明15」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器を冷媒が循環する冷媒回路と、
少なくとも前記圧縮機及び前記膨張弁を制御する制御手段と、
所定の報知を行う報知手段と、を備え、
前記凝縮器及び前記蒸発器の一方は室外熱交換器であり、他方は室内熱交換器であり、前記報知手段は、前記室内熱交換器の凍結の処理を開始する前に、当該処理を行う旨の報知を行い、
前記制御手段は、前記報知手段による前記報知が開始されてから所定時間が経過するまでにリモコン又は携帯端末から所定のキャンセル指令を受信した場合、前記処理の開始を行わないこと
を特徴とする空気調和機。
【請求項2】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器を冷媒が循環する冷媒回路と、
少なくとも前記圧縮機及び前記膨張弁を制御する制御手段と、を備え、
前記凝縮器及び前記蒸発器の一方は室外熱交換器であり、他方は室内熱交換器であり、
前記制御手段は、前記室内熱交換器の凍結の処理を開始してから所定時間が経過した後に、リモコン又は携帯端末から当該処理のキャンセル指令を受信した場合、前記室内熱交換器の乾燥を行い、
前記乾燥は、前記室内熱交換器に空気を送り込む室内ファンの駆動によって行われること
を特徴とする空気調和機。
【請求項3】
前記処理に関する所定の報知を行う報知手段をさらに備えること
を特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記制御手段は、前記室内熱交換器の前記乾燥として、暖房運転を行うこと
を特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記室内熱交換器の凍結は、暖房運転、冷房運転、又は除湿運転の後に行われること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記報知手段は、前記室内熱交換器の凍結の処理を行っているとき、当該処理を行っている旨の報知を行うこと
を特徴とする請求項1又は請求項3に記載の空気調和機。
【請求項7】
前記報知手段は、前記室内熱交換器が収容されている室内機から所定の報知音を発生させる報知音発生部を有し、
所定の時間帯において前記報知音発生部は、前記報知を行うための報知音を発生させないこと
を特徴とする請求項1又は請求項3に記載の空気調和機。
【請求項8】
前記報知手段は、前記室内熱交換器が収容されている室内機、前記リモコン、又は前記携帯端末で所定の表示を行うことによって、前記報知を行うこと
を特徴とする請求項1又は請求項3に記載の空気調和機。
【請求項9】
前記報知手段は、前記室内熱交換器が収容されている室内機の上下風向板を開くことによって、前記報知を行うこと
を特徴とする請求項1又は請求項3に記載の空気調和機。
【請求項10】
前記室内熱交換器の凍結の処理を開始してから所定時間が経過する前に、前記リモコン又は前記携帯端末から当該処理のキャンセル指令を受信した場合、前記制御手段は、当該処理を中止すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空気調和機。
【請求項11】
前記キャンセル指令の受信後であって前記室内熱交換器の乾燥中、前記リモコン又は前記携帯端末から所定のキャンセル指令を再び受信した場合、前記制御手段は、前記室内熱交換器の乾燥を中止すること
を特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
【請求項12】
前記室内熱交換器の凍結を含む洗浄処理中、前記リモコン又は前記携帯端末から空調運転の運転指令を受信した場合、前記制御手段は、前記洗浄処理を中止し、さらに、前記洗浄処理を中止してから所定時間が経過した後、前記運転指令に基づく空調運転を開始すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空気調和機。
【請求項13】
前記室内熱交換器の凍結を含む洗浄処理を、前記リモコン又は前記携帯端末からのキャンセル指令に基づいて中止してから所定時間が経過する前に、前記リモコン又は前記携帯端末から空調運転の運転指令を受信した場合、前記制御手段は、前記所定時間が経過した後、前記運転指令に基づく空調運転を開始すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空気調和機。
【請求項14】
前記制御手段は、前記室内熱交換器を凍結させているときの冷媒の蒸発温度を、除湿運転における冷媒の蒸発温度よりも低くすること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空気調和機。
【請求項15】
前記制御手段は、前記室内熱交換器を凍結させているときの冷媒の蒸発温度を氷点下とすること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空気調和機。」

3.申立理由の概要
異議申立人は、証拠として甲第1号証?甲第11号証(以下、それぞれ「甲1」?「甲11」と略記する。)を提出し、以下の取消理由を主張する。
(1)取消理由1(特許法第29条第1項第2号)
特許発明1、5、6、8、10は、本件特許の出願前に公然実施され甲1が取扱説明書となっているHaier社の空気調和機(型番:KFR-50GW/19HDA22AU1)又は甲2が取扱説明書となっているHaier社の空気調和機(型番:KFR-35GW/15DBA21AU1)であって、特許法第29条第1項第2号に掲げる発明に該当するから、本件特許の請求項1、5、6、8、10に係る特許は特許法第29条第1項第2号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2)取消理由2(特許法第29条第1項第3号)
特許発明2、4、12、13は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するから、本件特許の請求項2、4、12、13に係る特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

なお、特許異議申立書の12頁の「理由の要点」にある「請求項2、4、10、12に係る発明は、甲第3号証記載の発明である。」という記載は、異議申立人が主張する取消理由(第57、65頁)の内容からみて、「請求項2、4、12、13に係る発明は、甲第3号証記載の発明である。」という記載の誤記であると認められる。

(3)取消理由3(特許法第29条第2項)
特許発明1?15は、本件特許の出願前に公然実施され甲1が取扱説明書となっているHaier社の空気調和機(型番:KFR-50GW/19HDA22AU1)、本件特許の出願前に公然実施され甲2が取扱説明書となっているHaier社の空気調和機(型番:KFR-35GW/15DBA21AU1)、又は本件特許の出願前に頒布された刊行物に記載された発明である甲3発明と、本件特許の出願前に頒布された刊行物に記載された事項である甲4?甲11に記載の事項及び周知技術(特許異議申立書51頁)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1?15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

<甲号証等証拠一覧>
1.甲1:Haier社のルームエアコン型番KFR-50GW/19HDA22AU1の取扱説明書
(付随1)甲1の部分日本語訳
(付随2)甲1の更新日を示す書面
(付随3)甲1の対象製品であるHaier社のルームエアコン型番KFR-50GW/19HDA22AU1の発売年月を示す書面
2.甲2:Haier社のルームエアコン型番KFR-35GW/15DBA21AU1の取扱説明書
(付随1)甲2の部分日本語訳
(付随2)甲2の更新日を示す書面
3.甲3:中国特許出願公開第106369740号明細書
(付随1)甲3の部分日本語訳
(付随2)甲3の全文機械翻訳
4.甲4:中国特許出願公開第106556110号明細書
(付随1)甲4の部分日本語訳
(付随2)甲4の全文機械翻訳
5.甲5:中国特許出願公開第101256061号明細書
(付随1)甲5の部分日本語訳
(付随2)甲5の全文機械翻訳
6.甲6:特開2010-14288号公報
7.甲7:特開2008-138913号公報
8.甲8:中国特許出願公開第106288216号明細書
(付随1)甲8の部分日本語訳
(付随2)甲8の全文機械翻訳
9.甲9:中国特許出願公開第105486164号明細書
(付随1)甲9の部分日本語訳
(付随2)甲9の全文機械翻訳
10.甲10:中国特許出願公開第104848738号明細書
(付随1)甲10の部分日本語訳
(付随2)甲10の全文機械翻訳
11.甲11:特開2012-220061号公報

4.甲各号証の記載
(1)甲1について
甲1には、以下の記載がある。

1a)「


」(第1頁右上欄。)
この記載から、甲1がHaier社の空気調和機の取扱説明書であることと、当該取扱説明書の対象となる型番の1つとして「KFR-50GW/19HDA22AU1」という記載が読み取れる。

1b)「

」(第1頁左下欄の左欄。)
空気調和機が「室内機」と「室外機」を備えることが読み取れる。

1c)「

」(第2頁右上欄の右欄下から第19?1行)

以下に示す部分日本語訳は、甲1の第2頁右上欄の右欄下から第19?1行に対応する異議申立人が提出した部分日本語訳を参考に当審で作成したものである(甲1の記載と当該部分日本語訳の相違を示すならば、甲1の「MV・・・」という記載が、当該部分日本語訳では「1.PMVモード、・・・」という訳文になっており、当該部分日本語訳の「2.」、「3.」、「4.」という記載が、甲1にはない。)。
なお、下線は理解の一助のために当審が付与した。甲2?甲11についても同じ。
「■セルフクリーン(NHC、HDAシリーズ掲載機能)
◆機能の説明:本機能の目的は蒸発器の洗浄です。
◆開始・終了:セルフクリーンボタンを押すと、この機能が開始され、本体パネルとリモコンに「CL」と表示されます。20?30分運転して洗浄が終わると、本体が2回鳴り、自動的に機能を終了し、元の状態に戻ります。セルフクリーン運転中に、再びセルフクリーンボタンを押しても無効であり、機能を停止することはできません。運転停止ボタンを押すか、又は他のモードに切り換えると、この機能が停止されます。
◆注意事項:
MVモード、タイマー、安眠モードではこの機能は無効です。
セルフクリーン機能が始まると、室内機の風量が小さくなったり、風が出なくなったり、冷たい風が吹き出すことがあります。
セルフクリーン運転の前後及びセルフクリーン運転中に、熱膨張・冷収縮による音が発生することがありますが、これは正常な物理的現象です。
リモコンとパネルに「CL」が表示されている時間は、異なることがあります。
5.室外環境温度が0度以下の場合、セルフクリーン運転中、ディスプレイスクリーンに「F25」と表示されることがありますが、これはシステム保護が正常に機能しているためであり、電源を切り10秒後に再起動すれば問題ありません。
6.凍結洗浄に最適な条件は、室内温度15?27℃、湿度35%?60%、室外温度30?40℃(冷房運転期)、室外温度10℃未満(暖房運転期)です。
7.空気が乾燥しすぎていると(湿度20%未満)、凍結洗浄には適しません。また、空気の湿度が高すぎると(湿度70%超)、水量が増加し、氷が水に流されてしまうため、凍結がはっきりと分からない可能性があります。」

ここで、上記「■セルフクリーン」の説明全体を技術的にみると、上記「蒸発器の洗浄」及び「セルフクリーン」は共に「凍結洗浄」による洗浄を意味すると解される。

以上のことから、甲1から次の発明を把握できる(以下、「甲1から把握される発明」という。)。

「蒸発器の洗浄の機能を備え、
当該洗浄は凍結洗浄であり、
セルフクリーンボタンを押すと、この機能が開始され、本体パネルとリモコンに「CL」と表示され、
セルフクリーン運転中に、運転停止ボタンを押すか、又は他のモードに切り換えると、この機能が停止される、
室外機、室内機を備えた空気調和機。」

(2)甲2について
甲2には、以下の記載がある

2a)

」(第1頁右上欄。)
この記載から、甲2がHaier社の空気調和機の取扱説明書であることと、当該取扱説明書の対象となる型番の1つとして「KFR-35GW/15DBA21AU1」という記載が読み取れる。

2b)「

」(第1頁左下欄の左欄。)
空気調和機が「室内機」と「室外機」を備えることが読み取れる。

2c)「

」(第2頁左上欄の左欄18?28行)

日本語訳
「■セルフクリーン
◆機能の説明:本機能の目的は蒸発器の洗浄です。
◆開始・終了:セルフクリーンボタンを押すと、この機能が開始され、本体パネルとリモコンに「CL」と表示されます。23?30分運転して洗浄が終わると、本体が2回鳴り、自動的に機能を終了し、元の状態に戻ります。セルフクリーン運転中に、再びセルフクリーンボタンを押しても無効であり、機能を停止することはできません。運転停止ボタンを押すか、又は他のモードに切り換えると、この機能が停止されます。
◆注意事項:
1.セルフクリーン機能が始まると、室内機の風量が小さくなったり、風が出なくなったりすることがあります(冷たい風が吹き出す可能性があります)。
2.PMVモード、タイマー、安眠モードではこの機能は無効です。
3.リモコンとパネルに「CL」が表示されている時間は、異なることがあります。」

以上のことから、甲2から次の発明を把握できる(以下、「甲2から把握される発明」という。)。

「蒸発器の洗浄の機能を備え、
セルフクリーンボタンを押すと、この機能が開始され、本体パネルとリモコンに「CL」と表示され、
セルフクリーン運転中に、運転停止ボタンを押すか、又は他のモードに切り換えると、この機能が停止される、
室外機、室内機を備えた空気調和機。」

(3)甲3について
甲3には、以下の記載がある。
3a)「



日本語訳
「【0051】
図1を参照されたい。図1は本発明にかかる空調機蒸発器自動洗浄の制御方法の第1実施例に関するフローチャートである。
【0052】
第1実施例では、空調機蒸発器自動洗浄の制御方法は以下のステップを合む。
【0053】
ステップS10:空調機が自動洗浄モードに入った後、他モード切換制御指令を検知する。
【0054】
本実施例では、空調機は制御指令を受け蒸発器自動洗浄モードに入り、空調機の蒸発器に対して自動洗浄を行う。自動洗浄の過程において、冷暖房機は、冷房、フロスト、デフロストおよび高温乾燥の4つの段階を含む。冷房専用機は冷房、フロスト、及びデフロストの3つの段階を含む。デフロスト段階は、室内ファンから空気を送り、霜を溶かす段階である。上述の4つ又は3つの段階を経て、空調機の自動洗浄過程が完了する。空調機は蒸発器自動洗浄に入った後、他モード切換制御指令を検知する。他のモードは冷房モードや暖房モードなどである。他モード切換制御指令は、ユーザーが空調機制御器(例えばリモコンや携帯電話など)から発信してもよいし、空調室内温度が所定の温度(例えば26度又は27度などのユーザーのニーズによって設定された温度)になった時に自動的に発信されてもよい。
【0055】
ステップS20:他モード切換制御指令を検知した後、室外機の運転を停止するように制御し、また室内機を所定の回転速度で運転するように制御する。
【0056】
「他モード切換制御指令を検知した後」とは、蒸発器自動洗浄モードから退出する必要があること、他のモードへ切り換えることを意味する。この時、室外機は運転を停止する。つまり、圧縮機と室外ファンの運転を制御し、室内環境に対し熱交換の操作を行わずに、まず蒸発器自動洗浄モードから退出して室外機を停止した状態で運転し、室内ファンは運転する。これにより、例えばフロスト段階で発生する蒸発器におけるフロスト、デフロスト段階で発生する熱風、冷房及びフロスト段階で発生する冷風などの、自動洗浄モードで空調機を運転することにより発生する他のモードへの切換や室内環境への影響を解消する。上述の所定の回転速度は、低速、中速、または高速でもよいが、本実施例では低速が好ましい。室内ファンを低速で運転することにより、自動洗浄モードにおける室内環境への影響を解消するという前提のもと、この段階で室内のユーザーに不快感を与えることをできるだけ避ける。
【0057】
ステップS30:空調機が他モード切換条件を満たした後、空調機を制御し、他のモードに切り換えて運転する。
【0058】
室外機を停止し、室内機を所定の回転速度で運転するように制御した後、空調機が他モード切換条件を満たしたか否か判断する。条件を満たしたか否かの判断は、蒸発器の表面温度、室外機の停止制御、室内機の運転が上述の状態で維持されている時間により行ってよい。空調機が他モード切換条件を満たした後、空調機を制御し、他のモードへ切り換えて運転する。例えば、冷房又は暖房モードに切り換えて運転し、室内の温度を調節する。本実施例は自動洗浄モードを退出する過程で先に室外機の運転を停止し、室内機を所定の回転速度で運転するように制御する。そして、空調機が他モード切換条件を満たした後、空調機を制御して他のモードへ切り換えて運転する。自動洗浄モードから退出し、他のモードへ切り換えるまでには1つの緩衝段階がある。既存の技術では自動洗浄モードから他のモードに直接切り換わるため、ユーザーのニーズに基づいてモードの切り換えをすることができず、空調快適性が悪く、空調機の故障を引き起こすことさえある。この空調機では、緩衝段階があることにより、このような問題を効果的に防ぎ、空調快適性を向上することができる。」

3b)「



日本語訳
「【0066】
本発明の実施例の空調機では、より良く空調機の運転を制御し、空調快適性を向上するために、蒸発器自動洗浄モードにおいて複数の運転段階が存在する。運転段階によって空調機の状態は異なり、自動洗浄モードを退出して他のモードに切り換えて運転する状況も異なる。図4を参照されたい。本発明の好ましい1つの実施例では、他モード切換制御指令を検知した後に、以下のステップを含む。
【0067】
ステップS40:他モード切換制御指令を検知した後、自動洗浄モードの現在の運転段階を取得する。
【0068】
ステップS50:現在の運転段階がフロスト段階である時、室外機の運転を停止するように制御し、また室内機を所定の回転速度で運転するように制御する。
【0069】
ステップS60:空調機が他モード切換条件を満たした後、空調機を制御し、他のモードへ切り換えて運転する。
【0070】
空調機の蒸発器自動洗浄モードにおいて、冷房、フロスト、デフロスト、及び/又は高温乾燥などを含む複数の運転段階が存在する。他モード切換制御指令を検知した後、自動洗浄モードにおける現在の運転段階を取得する。現在の運転段階がフロスト段階である場合は、蒸発器の表面に既にフロストが発生している。この時、もし冷房モード又は暖房モードに切り換えると空調機に影響を及ぼしてしまう。例えば、冷房モードに切り換えると、蒸発器の温度が低すぎて、蒸発器の凍結により室内機が故障して運転を停止するおそれがあるので、使用に影響を及ぼしてしまう。暖房モードに切り換えた場合は、蒸発器の温度が低すぎるため、室内に冷風が吹き出さないように室内機が回転を停止してしまい、フロストが長時間溶けないおそれがある。よって、この時、室外機の運転を停止するように制御し、また室内機を所定の回転速度で運転するように制御する必要がある。そして、空調機が他モード切換条件を満たした後に、空調機を制御し、他のモードへ切り換えて運転する。」

以上のことから、甲3には、次の事項が記載されている(以下、「甲3に記載された発明」という。)。

「フロスト段階を含む室内機の蒸発器の自動洗浄モードに入った後、ユーザーによる空調機制御器(例えばリモコンや携帯電話など)からの発信により、他モード切換制御指令を検知すると、
前記自動洗浄モードにおける現在の運転段階を取得し、現在の運転段階がフロスト段階である場合は、室外機の運転を停止するように制御し、また室内機を所定の回転速度で運転するように制御する、
空調機。」

(4)甲4について
甲4には、以下の記載がある。




日本語訳
「【0018】
実施例1
【0019】
空調室内機の自動洗浄方法は、空調機が通電された後、以下のステップを順に行う。
【0020】
ステップ1:室内機を除湿冷房モード又は冷房モードで運転し、室内ファンは停開ロジックを実行し、蒸発器を低温の環境で維持する。蒸発器の表面を通過した空気が低温環境において凝縮水を出すように、且つ凍らないようにする。凝縮水が蒸発器の表面で流れることで、蒸発器表面の埃を流す。そして、ガイド溝により凝縮水を排出する。これを洗浄が終わるまで続ける。
【0021】
ステップ2:室内機を暖房モードで運転し、室内ファンは停開ロジックを実行する。蒸発器の温度を上昇させて表面の水分を急速に蒸発させ、蒸発器に対し乾燥処理を行う。これを乾燥が終わるまで続ける。
【0022】
ステップ3:室内機を送風モードで運転し、蒸発器の温度を下げる。これを正常温度が保たれた後、自動洗浄から退出するまで続ける。」

以上のことから、甲4には、次の事項が記載されている(以下、「甲4記載事項」という。)。

「凝縮水を利用して蒸発器表面の埃を流す室内機の自動洗浄後に、室内機を暖房モードで運転し、蒸発器に対し乾燥処理を行う空調室内機。」

(5)甲5について
甲5には、以下の記載がある。


」(第3/3頁第10?14行)

日本語訳
「このように、冷房、暖房、及び送風機能を組み合わせて利用する。つまり、まず急速冷房で、空気中の水蒸気を蒸発器の表面で急速に霜又は氷にし、次に急速暖房を行って、熱により蒸発器表面の霜又は氷を水に変化させ、表面の埃やその他の微細な雑物をその水で流し、蒸発器を乾燥させる。そして、送風を行い、蒸発器に蓄積されている水分をさらに乾かす。これにより、本発明では、通常の空調機の上に部品やコストを追加することなく、また人為的な関与や、空調機の分解や組立を必要とすることもなく、空調機を特定のプログラムの要求に従って運転するだけで、蒸発器の自動洗浄を行うという目的を達成することができる。」

以上のことから、甲5には、次の事項が記載されている(以下、「甲5記載事項」という。)。

「急速冷房で、空気中の水蒸気を蒸発器の表面で急速に霜又は氷にし、次に急速暖房を行って、熱により蒸発器表面の霜又は氷を水に変化させ、表面の埃やその他の微細な雑物をその水で流し、蒸発器を乾燥させる空調機。」

(6)甲6について
甲6には、以下の記載がある。
「【0017】
次に、図3を参照して、図1に示す空気調和機の室内機1と室外機30の全体構成と、冷凍サイクル回路、および冷媒パス(冷媒流路)の構成例を説明する。」

「【0020】
室外機30内には、圧縮機31、四方切換弁32,室外熱交換器33、冷媒膨張手段である電動膨張弁34、室外送風機35等の冷凍サイクル回路の構成部品が配置されている。室内熱交換器17、圧縮機31、四方切換弁32,室外熱交換器33、電動膨張弁34は、冷媒配管6を介して接続されており、ヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成している。」

「【0024】
図3に示す室内熱交換器17における冷媒流路の構成は、冷房運転時および除湿運転サイクル時の状態を示している。以下、冷房運転時および除湿運転サイクル時における冷媒の流れを基準にして説明する。また、暖房運転サイクル時の冷媒流路の構成は、図3に示す場合とは逆方向になり、矢印で示す冷媒入口Mと冷媒出口Nの表記は逆になる。」

「【0040】
そこで、本発明の実施形態では、冷房運転時もしくは再熱除霜運転時に、親水性プレコートフィンFの少なくも一部に着霜させて、その後に親水性プレコートフィンFから除霜させる。各親水性プレコートフィンFの少なくも一部に着霜させると、着霜時には、各親水性プレコートフィンFの先端部(端面)側から着霜する。これにより、この除霜の時の除霜水を用いて各親水性プレコートフィンFに付着した塵埃等の汚れを除去するのである。すなわち、除霜水は各親水性プレコートフィンFの先端部(端面)を確実に流れることにより、塵埃などの汚れを効率良く確実に除去できる。」

「【0059】
図9では、縦軸が室内熱交換器17の温度(TC)を示し、横軸が時間を示している。図9に示すように、通常の冷房運転サイクル時には、室内熱交換器17の凍結を防止するために、室内熱交換器17の温度(TC)が0℃以上になるように制御している。しかし、本発明の実施形態では、室内熱交換器17の温度(TC)が温度Tcice(ただし、Tcice<0℃)をT時間以上設けることにより、室内熱交換器17の親水性プレコートフィンFに対して着霜させる。この室内熱交換器17の温度(TC)の値と時間(着霜運転時間)Tの長さを調整することにより、親水性プレコートフィンFに対する着霜量を調整することができる。」

以上のことから、甲6には、次の事項が記載されている(以下、「甲6記載事項」という。)。

「室内機1と室外機30を備え、冷房運転時もしくは再熱除霜運転時に、親水性プレコートフィンFの少なくも一部に着霜させ、その後に親水性プレコートフィンFから除霜させ、除霜水を用いて塵埃等の汚れを除去する制御において、
室内熱交換器17の温度(TC)が温度Tcice(ただし、Tcice<0℃)をT時間以上設けることにより、室内熱交換器17の親水性プレコートフィンFに対して着霜させ、当該温度(TC)の値と時間(着霜運転時間)Tの長さを調整することにより、親水性プレコートフィンFに対する着霜量を調整する空気調和機。」

(7)甲7について
甲7には、以下の記載がある。
「【0006】
しかしながら、上記構成の熱交換器において、夏場などの冷房運転時には、熱交換器が蒸発器として作用し表面に水滴が発生するため、この水滴の流下に伴い、表面に付着した油分も洗い流せる作用が得られるが、暖房運転時は、凝縮器として作用し、水滴が生じないため、冬季においては、油分が付着したまま堆積してしまうといった問題点があった。」

「【0014】
図1に示すように、本第1実施形態に係る空気調和機1の冷凍サイクルは、室内機2に収容され、室内ファン3を備えた室内側熱交換器4、室外機5に各々収容される四方切換弁6、圧縮機7、室外ファン8を備えた室外側熱交換器9及び膨張手段10を順次配管接続してなる。
【0015】
図2に示すように、空気調和機1の制御装置11は、室内機2に収容された室内制御回路13と、室内制御回路13と通信可能なリモコン14と、室外機5に収容された室外制御回路15とを備える。」

「【0020】
このクリーン運転モードは、暖房運転後に、四方切換弁6を切り換えて、室内側熱交換器4を蒸発器として作用させる運転モードであり、室内側熱交換器4に水分を付着させることが可能な冷房運転あるいは除湿運転である。」

「【0036】
熱交換器クリーン運転後、すなわち冷房運転後には、暖房運転および送風運転を行うのが好ましい。これにより、ドレンパン21やドレンホースに滴下し残っている水分は、暖房による暖気あるいは送風により、暖房時期の低温時に結露水がドレンパン21やドレンホースに残り、凍結するのを回避できる。」

以上のことから、甲7には、次の事項が記載されている(以下、「甲7記載事項」という。)。

「暖房運転後に、四方切換弁6を切り換えて、室内側熱交換器4を蒸発器として作用させるクリーン運転モードは、室内側熱交換器4に水分を付着させることが可能な冷房運転あるいは除湿運転であり、熱交換器クリーン運転後、すなわち冷房運転後には、暖房運転および送風運転を行う空気調和機。」

(8)甲8について
甲8には、以下の記載がある。




日本語訳
「【0052】
本実施例では、空調機は制御指令を受けて蒸発器自動洗浄モードに入り、空調機の蒸発器に対して自動洗浄を行う。自動洗浄の過程は、冷房、フロスト、デフロスト、および高温乾燥の4つの段階を含む。上述の4つの段階を経て空調機の自動洗浄過程が完了する。空調機は、蒸発器自動洗浄に入った後、空調機の前回の正常運転時の運転モードを取得する。運転モードは、冷房、暖房、送風などを含む。上述の、前回の正常運転時の運転モードの取得は、現時点から直近の正常運転時の運転モードを取得すること、または現時点から直近の正常運転時の運転モードを取得して、取得した運転モードの運転時間が所定の時間(10分又は20分などユーザーが自分で決めた時間)を超えたことを判断し、この運転モードを前回の正常運転時の運転モードとすることなどを含む。
【0053】
ステップS20:運転モードに基づいて風ガイド板の風ガイド角度を確定する。
【0054】
予め設定した運転モードと風ガイド板の風ガイド角度の対応関係の例は以下のとおりである。運転モードが冷房モードの時は、風ガイド板の風ガイド角度を、人がいるエリアに吹く風ガイド角度に確定する。或いは、運転モードが暖房モードの時は、風ガイド板の風ガイド角度を地面に向けて吹く風ガイド角度になるように確定する。或いは、運転モードが冷房モードの時は、風ガイド板の風ガイド角度を部屋の天井に吹く風ガイド角度になるように確定する。」

以上のことから、甲8には、次の事項が記載されている(以下、「甲8記載事項」という。)。

「冷房、暖房、送風などの運転モードに基づいて風ガイド板の風ガイド角度を確定し、該運転モードの後に、冷房、フロスト、デフロスト、および高温乾燥の4つの段階を含む蒸発器自動洗浄を行う空調機。」

(9)甲9について
甲9には、以下の記載がある。




日本語訳
「【請求項1】
空調機が自動洗浄モードに入った時に、冷房モードをスタートするステップと、
蒸発温度を下げることにより、空気中の水分を室内熱交換器で凝縮させ、霜又は薄氷にするステップと、
設定した冷房時間だけ冷房モードで運転を続けた後、空調機の運転モードを冷房モードから暖房モードへ切り換えることにより、熱交換器の霜又は薄氷を溶かして熱交換器の洗浄に使うステップを含むことを特徴とする空調機の室内熱交換器の洗浄制御方法。
【請求項2】
風ガイド板の風吹出角度を小さく調節し、吹出風速を下げることにより、蒸発温度を下げることを特徴とする請求項1に記載の空調機の室内熱交換器の洗浄方法。」

以上のことから、甲9には、次の事項が記載されている(以下、「甲9記載事項」という。)。

「空調機が自動洗浄モードに入った時に、冷房モードをスタートするステップと、
蒸発温度を下げることにより、空気中の水分を室内熱交換器で凝縮させ、霜又は薄氷にするステップとを含み、
風ガイド板の風吹出角度を小さく調節し、吹出風速を下げることにより、蒸発温度を下げる空調機の室内熱交換器の洗浄方法。」

(10)甲10について
甲10には、以下の記載がある。




日本語訳
「【0040】
ステップ103:フロストが完了したか否か判断する。
【0041】
好ましくは、フロストが完了したか否かの判断は具体的に以下のとおりである。室内熱交換器内管の温度がT_(内管)≦第二所定温度T_(S2)であり、且つこの温度条件で第2所定時間t_(S2)維持した後であれば、フロストが完了したと判断し、そうでなければフロストがまだ完了していないと判断する。ここで、T_(S2)は-35℃以上0℃以下であり、t_(S2)は10分以上120分以下である。さらに好ましくは、T_(S2)は-20℃以上-18℃以下であり、T_(S2)は15分以上60分以下である。」

以上のことから、甲10には、次の事項が記載されている(以下、「甲10記載事項」という。)。

「室内熱交換器内管の温度がT_(内管)≦第二所定温度T_(S2)(-35℃以上0℃以下)であり、且つこの温度条件で第2所定時間t_(S2)(10分以上120分以下)維持した後であれば、フロストが完了したと判断し、そうでなければフロストがまだ完了していないと判断する、フロストが完了したか否かの判断方法。」

(11)甲11について
甲11には、以下の記載がある。
「【0020】
本発明によれば、使用者の利用状況に応じて自動運転を行う浴室換気暖房乾燥装置であって、運転モードを必須として、強弱設定、風向設定、温度設定のうち少なくとも1つ以上の情報で示される運転に関する履歴情報と、履歴情報から最適な運転を予測する運転想定手段と、使用者が在宅かどうかを検知する在宅検知手段と、使用者が在宅と検知した場合に自動運転の開始の一定時間前に使用者に自動運転を開始する旨を報知するとともに待機状態とする自動運転事前報知手段とを備えた構成にしたことにより、使用者が在宅の際は事前に自動運転開始のアナウンスがあるので、使用者の意図と合致する場合はそのまま、異なる場合は自動運転開始前に止めたり別の運転にしたりできるので、使用者はいつどんな自動運転がはじまるのかが事前にわかり、実行可否の対応が可能となり、使用者の意思と合致した運転が行われるという効果を得ることができる。」

以上のことから、甲11には、次の事項が記載されている(以下、「甲11記載事項」という。)。

「使用者が在宅と検知した場合に自動運転の開始の一定時間前に使用者に自動運転を開始する旨を報知するとともに待機状態とし、使用者の意図と異なる場合は自動運転開始前に止めたり別の運転にしたりできる浴室換気暖房乾燥装置。」

5.当審の判断
(1)特許法第29条第1項第2号について
ア 特許発明1について
(ア)甲1から把握される発明について
事案に鑑み、最初に、特許発明1が、甲1から把握される発明(上記4.(1))といえるかについて、以下検討する。

a 対比
特許発明1と、甲1から把握される発明とを対比すると、甲1から把握される発明の「空気調和機」、「蒸発器」は、それぞれ、特許発明1の「空気調和機」、「蒸発器」に相当する。
さらに、甲1から把握される発明の「室内機」は、特許発明1の「室内熱交換器」と、「室内機」の限りで一致する。
また、特許発明1では、凝縮器及び蒸発器の一方は室外熱交換器であって、他方は室内熱交換器であるが、蒸発器が室内熱交換器である場合、甲1から把握される発明の「蒸発器」の「凍結洗浄」は、特許発明1の「室内熱交換器の凍結の処理」に相当する。

よって、両者は、室内機と蒸発器を有し、室内熱交換器の凍結の処理を行う空気調和機である点で一致し、少なくとも下記の点で相違する。

(相違点1)
特許発明1は、「所定の報知を行う報知手段を備え、」「前記報知手段は、前記室内熱交換器の凍結の処理を開始する前に、当該処理を行う旨の報知を行い、前記制御手段は、前記報知手段による前記報知が開始されてから所定時間が経過するまでにリモコン又は携帯端末から所定のキャンセル指令を受信した場合、前記処理の開始を行わない」のに対して、甲1から把握される発明は、「セルフクリーンボタンを押すと、この機能が開始され、本体パネルとリモコンに「CL」と表示され、セルフクリーン運転中に、運転停止ボタンを押すか、又は他のモードに切り換えると、この機能が停止される」点。

b 相違点1に対する当審の判断
特許発明1の「前記室内熱交換器の凍結の処理を開始する前に、当該処理を行う旨の報知」とは、洗浄処理の開始条件が成立した場合に「前記室内熱交換器の凍結の処理を開始する」ことを報知音や表示ランプ等によりユーザに知らしめる事前の報知である(本件特許の明細書の段落0043、0044、0092、0093)。
一方で、甲1から把握される発明では、「セルフクリーンボタンを押すと、この機能が開始され、本体パネルとリモコンに「CL」と表示され」るのであって、当該「CL」との表示は、ユーザのボタン操作に起因して行われるものであるから、特許発明1にいう「所定の報知」は、甲1から把握される発明の「表示」とは異なるものである。
さらに、甲1から把握される発明は、特許発明1の上記報知を前提とする制御、すなわち「前記報知手段による前記報知が開始されてから所定時間が経過するまでにリモコン又は携帯端末から所定のキャンセル指令を受信した場合、前記処理の開始を行わない」ものではない。
そして、当該相違点1に係る特許発明1の構成を備えることにより、特許発明1は、「その後に洗浄処理が行われることを、ユーザに対して事前に報知できる」とともに、「ユーザの意図に反して洗浄処理が行われることを回避できる」という効果を奏する(本件特許の明細書の段落0051、0052)。
したがって、上記相違点1は、実質的な相違点であり、特許発明1が甲1から把握される発明とはいえない。

以上から、甲1が取扱説明書となっているHaier社の空気調和機(型番:KFR-50GW/19HDA22AU1)が、本件特許の出願前に公然実施をされたか否かについて検討するまでもなく、特許発明1は、特許法第29条第1項第2号に掲げる発明に該当するとはいえない。

c 異議申立人の主張について
異議申立人は、特許異議申立書の第20頁において、「なお、B1およびC1に関し、甲1発明では、
「セルフクリーンボタンを押すと、この機能が開始され、本体パネルとリモコンに「CL」と表示」
されるが、凍結洗浄処理の「凍結の処理」が瞬時に始まるわけではなく、蒸発器の温度がだんだんと氷点下まで下がり、その後に「凍結の処理」が始まることから、本体パネルとリモコンに「CL」と表示されてから「凍結の処理」が始まるまでには一定の時間が存在する。この期間においても甲1発明の
「運転停止ボタンを押すか、又は他のモードに切り換えると、この機能が停止されます。」
というキャンセル実行は当然に可能であり、キャンセルされた場合に蒸発器の凍結洗浄の処理が行われないことは明白である。
P1に関しても、C11の「運転停止ボタンを押すか、又は他のモードに切り換えると、この機能が停止されます」というキャンセル機能に特に時期的な制限は無く、「凍結の処理を開始してから所定時間が経過する前」であってもキャンセルは可能で凍結洗浄の処理は当然に中止される。」と主張する。
しかしながら、上記「CL」の表示は、上記bにおいて説示したとおり、特許発明1の「所定の報知」ではないから、異議申立人の主張は前提において技術的に正確性を欠くものである。
したがって、異議申立人の上記主張は理由がない。

(イ)甲2から把握される発明について
上記(ア)と同様、事案に鑑み、最初に、特許発明1が、甲2から把握される発明(上記4.(2))といえるかについて、以下検討する。

a 対比
特許発明1と、甲2から把握される発明とを対比すると、甲2から把握される発明の「空気調和機」、「蒸発器」は、それぞれ、特許発明1の「空気調和機」、「蒸発器」に相当する。
さらに、甲2から把握される発明の「室内機」は、特許発明1の「室内熱交換器」と、「室内機」の限りで一致する。
よって、両者は、「室内機と蒸発器を有する空気調和機。」である点で一致し、下記の点で少なくとも相違する。

(相違点2)
特許発明1は、「所定の報知を行う報知手段を備え、」「前記報知手段は、前記室内熱交換器の凍結の処理を開始する前に、当該処理を行う旨の報知を行い、前記制御手段は、前記報知手段による前記報知が開始されてから所定時間が経過するまでにリモコン又は携帯端末から所定のキャンセル指令を受信した場合、前記処理の開始を行わない」のに対して、甲2から把握される発明は、「セルフクリーンボタンを押すと、この機能が開始され、本体パネルとリモコンに「CL」と表示され、セルフクリーン運転中に、運転停止ボタンを押すか、又は他のモードに切り換えると、この機能が停止される」点。

b 相違点2に対する当審の判断
特許発明1の、「前記室内熱交換器の凍結の処理を開始する前に、当該処理を行う旨の報知」とは、洗浄処理の開始条件が成立した場合に「前記室内熱交換器の凍結の処理を開始する」ことを報知音や表示ランプ等によりユーザに知らしめる事前の報知である(本件特許の明細書の段落0043、0044、0092、0093)。
一方で、甲2から把握される発明では、「セルフクリーンボタンを押すと、この機能が開始され、本体パネルとリモコンに「CL」と表示され」るのであって、当該「CL」との表示は、ユーザのボタン操作に起因して行われるものであるから、特許発明1にいう「所定の報知」は、甲2から把握される発明の「表示」とは異なるものである。
さらに、甲2から把握される発明は、特許発明1の上記報知を前提とする制御、すなわち「前記報知手段による前記報知が開始されてから所定時間が経過するまでにリモコン又は携帯端末から所定のキャンセル指令を受信した場合、前記処理の開始を行わない」ものではない。
そして、当該相違点2に係る特許発明1の構成を備えることにより、特許発明1は、「その後に洗浄処理が行われることを、ユーザに対して事前に報知できる」とともに、「ユーザの意図に反して洗浄処理が行われることを回避できる」という効果を奏する(本件特許の明細書の段落0051、0052)。
したがって、上記相違点2は、実質的な相違点であり、特許発明1が甲2から把握される発明とはいえない。

以上から、甲2が取扱説明書となっているHaier社の空気調和機(型番:KFR-35GW/15DBA21AU1)が、本件特許の出願前に公然実施をされたか否かについて検討するまでもなく、特許発明1は、特許法第29条第1項第2号に掲げる発明に該当するとはいえない。

c 異議申立人の主張について
異議申立人は、特許異議申立書の第23頁において、「なお、甲2発明では、
「セルフクリーンボタンを押すと、この機能が開始され、本体パネルとリモコンに「CL」と表示」
されますが、「凍結の処理」が瞬時に始まるわけではなく、蒸発器の温度がだんだんと氷点下まで下がり、その後に「凍結の処理」が始まることから、本体パネルとリモコンに「CL」と表示されてから「凍結の処理」が始まるまでには一定の時間が存在する。この期間においても甲2発明の
「運転停止ボタンを押すか、又は他のモードに切り換えると、この機能が停止されます。」
というキャンセル実行は当然に可能であり、キャンセルされた場合に蒸発器の凍結の処理が行われないことは明白である。」と主張する。
しかしながら、上記「CL」の表示は、上記bにおいて説示したとおり、特許発明1の「所定の報知」ではないから、異議申立人の主張は前提において技術的に正確性を欠くものである。
したがって、異議申立人の上記主張は理由がない。

(ウ)小括
以上、検討したとおり、特許発明1は、特許法第29条第1項第2号に掲げる発明に該当するとはいえないから、その発明に係る特許は取り消すべきものであるとはいえない。

イ 特許発明5、6、8、10について
特許発明5、6、8、10は、特許発明1を引用し、特許発明1の発明特定事項の全てを含むものであるから、特許発明5、6、8、10のいずれも、甲1が取扱説明書となっているHaier社の空気調和機(型番:KFR-50GW/19HDA22AU1)又は甲2が取扱説明書となっているHaier社の空気調和機(型番:KFR-35GW/15DBA21AU1)ということはできない。
よって、特許発明5、6、8、10のいずれも特許法第29条第1項第2号に掲げる発明に該当するともいえないから、その発明に係る特許は取り消すべきものであるとはいえない。

(2)特許法第29条第1項第3号について
ア 特許発明2について
(ア)対比
特許発明2と、甲3に記載された発明(上記4.(3))とを対比すると、甲3に記載された発明の「空調機」は、特許発明2の「空気調和機」に相当する。
甲3に記載された発明の「室内機」は、特許発明2の「室内熱交換器」と、「室内機」の限りで一致する。
また、特許発明2では、凝縮器及び蒸発器の一方は室外熱交換器であって、他方は室内熱交換器であるが、蒸発器が室内熱交換器である場合、甲3に記載された発明の「室内機の蒸発器」は、特許発明2の「蒸発器」に相当し、甲3に記載された発明の「フロスト段階を含む室内機の蒸発器の自動洗浄モード」は、特許発明2の「室内熱交換器の凍結の処理」に相当する。

よって、両者は、室内機の蒸発器を備え、室内熱交換器の凍結の処理を行う空気調和機である点で一致し、下記の点で少なくとも相違する。

(相違点3)
特許発明2は、「前記制御手段は、前記室内熱交換器の凍結の処理を開始してから所定時間が経過した後に、リモコン又は携帯端末から当該処理のキャンセル指令を受信した場合、前記室内熱交換器の乾燥を行い、前記乾燥は、前記室内熱交換器に空気を送り込む室内ファンの駆動によって行われる」のに対して、甲3に記載された発明は、「室内機の蒸発器の自動洗浄モードに入った後、ユーザーによる空調機制御器(例えばリモコンや携帯電話など)からの発信により、他モード切換制御指令を検知すると、前記自動洗浄モードにおける現在の運転段階を取得し、現在の運転段階がフロスト段階である場合は、室外機の運転を停止するように制御し、また室内機を所定の回転速度で運転するように制御する」点。

(イ)相違点3に対する当審の判断
特許発明2の、「前記制御手段は、室内熱交換器の凍結の処理を開始してから所定時間が経過した後に、リモコン又は携帯端末から当該処理のキャンセル指令を受信した場合、前記室内熱交換器の乾燥を行い、前記乾燥は、前記室内熱交換器に空気を送り込む室内ファンの駆動によって行われる」における「所定時間」とは、凍結中に所定時間以上が経過している場合には、室内熱交換器12の表面に氷が付着している可能性を考慮して設定されるものである(本件特許の明細書の段落0061、0062、0068)。
一方、甲3に記載された発明は、室内機の蒸発器の自動洗浄モードに入った後、ユーザーによる空調機制御器(例えばリモコンや携帯電話など)からの発信により、他モード切換制御指令を検知するものであって、他モード切換制御指令の検知が、自動洗浄モードに入ってから所定時間が経過した後の検知であるのか否かについて判断するものではない。
そして、当該相違点3に係る構成を備えることにより、特許発明2は、室内熱交換器12の表面に氷が付着している可能性がある場合に、この氷が室温で溶けた後の水を蒸発させ、さらに乾燥させることで、室内熱交換器12の表面に多量の水が付着することが防止し、防菌・防黴の効果が奏されるという効果を奏する(本件特許の明細書の段落0061、0062、0071)。
したがって、上記相違点3は、実質的な相違点であり、特許発明2が、甲3に記載されているとはいえない。

(ウ)異議申立人の主張について
異議申立人は、特許異議申立書の第26、27頁において、「また、E3に関し、E32やE33の「他モード切換制御指令」は、E33に記載があるように「蒸発器自動洗浄モードから退出する必要があること、他のモードへ切り換えることを意味」し、「他モード切換制御指令」=蒸発器自動洗浄モードのキャンセル指令、という関係が一義的に成り立つ。そして、E32の「空調機は蒸発器自動洗浄に入った後、他モード切換制御指令を検知する。」という記載から、蒸発器自動洗浄に入った後、所定時間が経過してから「他モード切換制御指令」=蒸発器自動洗浄モードのキャンセル指令、が入ってくることが把握できる。
さらに、R3に関し、R31?R35の記載から、「他モード切換制御指令」=蒸発器自動洗浄モードのキャンセル指令、を受けたときに、蒸発器自動洗浄モードの複数の運転段階(冷房、フロスト、デフロスト、及び/又は高温乾燥など)のうち、運転段階がフロスト段階なのか、他の段階なのかを確認して、それに合わせて制御を行う技術思想が把握される。そして、R35の後段の記載にあるように、「空調機が他モード切換条件を満たした後に、空調機を制御し、他のモードへ切り換えて運転する」という制御が採られている。これは、空調機が他モード切換条件を満たすまでの時間か経過した後に他のモードの運転を開始するということであり、甲3発明は、R3の「洗浄処理を中止し、さらに、前記洗浄処理を中止してから所定時間が経過した後、前記運転指令に基づく空調運転を開始する」発明だと言える。」と主張する。
しかしながら、上記(イ)において説示したとおり、特許発明2の「所定時間」とは、凍結中に所定時間以上が経過している場合には、室内熱交換器12の表面に氷が付着している可能性を考慮して設定されるものであるから、甲3に記載された発明は、室内熱交換器の凍結の処理を開始してから当該「所定時間」が経過した後に、リモコン又は携帯端末から当該処理のキャンセル指令を受信した場合、前記室内熱交換器の乾燥を行い、前記乾燥は、前記室内熱交換器に空気を送り込む室内ファンの駆動によって行われるという特許発明2の技術的事項を有しないといえる。
したがって、異議申立人の上記主張は理由がない。

(エ)小括
以上検討したとおり、本件発明2は、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するとはいえないから、その発明に係る特許は取り消すべきものであるとはいえない。

イ 特許発明4、12、13について
特許発明4、12、13は、特許発明2を引用し、特許発明2の発明特定事項の全てを含むものであるから、特許発明4、12、13のいずれも、甲3に記載された発明ということはできない。
よって、特許発明4、12、13のいずれも特許法第29条第1項第3号に掲げる発明にも該当するともいえないから、その発明に係る特許は取り消すべきものであるとはいえない。

(3)特許法第29条第2項について
ア 特許発明1について
(ア)甲1から把握される発明について
事案に鑑み、最初に、特許発明1が、甲1から把握される発明(上記4.(1))に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものか否かについて検討する。

a 対比
特許発明1と、甲1から把握される発明とを対比すると、上記(1)ア(ア)aの相違点1において少なくとも相違する。

b 相違点1に対する当審の判断
上記(1)ア(ア)bにおいて説示したとおり、特許発明1の「前記室内熱交換器の凍結の処理を開始する前に、当該処理を行う旨の報知」とは、洗浄処理の開始条件が成立した場合に「前記室内熱交換器の凍結の処理を開始する」ことを報知音や表示ランプ等によりユーザに知らしめる事前の報知である(本件特許の明細書の段落0043、0044、0092、0093)。
一方で、甲1から把握される発明では、「セルフクリーンボタンを押すと、この機能が開始され、本体パネルとリモコンに「CL」と表示され」るのであって、当該「CL」との表示は、ユーザのボタン操作に起因して行われるものであるから、特許発明1にいう「所定の報知」は、甲1から把握される発明の「表示」とは異なるものである。
さらに、甲1から把握される発明は、上記報知を前提とした、「前記報知手段による前記報知が開始されてから所定時間が経過するまでにリモコン又は携帯端末から所定のキャンセル指令を受信した場合、前記処理の開始を行わない」ものではない。
そして、上記相違点1に係る特許発明1の構成は、甲2から把握される発明(上記4.(2))、甲3に記載された発明(上記4.(3))、甲4記載事項?甲11記載事項(上記4.(4)?4.(11))のいずれにもなく、また、本件特許の出願前に周知技術であったともいえない。

以上から、甲1が取扱説明書となっているHaier社の空気調和機(型番:KFR-50GW/19HDA22AU1)が本件特許の出願前に公然実施をされたか否かについて検討するまでもなく、特許発明1は、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、その発明に係る特許は取り消すべきものであるとはいえない。

(イ)異議申立人の主張について
異議申立人は、特許異議申立書の第38、39頁において、甲11を挙げ、空気調和機の分野において、所定運転の事前アナウンス(報知)も所定運転のキャンセルも周知技術であり、その技術の作用効果である使用者の意思の反映も周知の効果であるとし、空気調和機の開発、設計を行う当業者であれば、甲第1号証などによって甲1発明を知ると、本体パネルとリモコンに「CL」と表示されることでユーザーが室内熱交換器の凍結が始まることを自然に把握できると認識し、更に、そのユーザーの把握の効果として、ユーザーの意思で運転停止ボタンを押して凍結洗浄を停止させることができると認識することになるため、特許権者が意見書(平成29年11月28日)で述べている特許発明1の作用効果は、甲1発明を知る当業者であれば、甲1発明に係る空気調和機が具備する必然的な作用効果だと認識するものに過ぎないという旨の主張をする。
しかしながら、仮に、空気調和機の分野において、所定運転の事前アナウンス(報知)も所定運転のキャンセルも周知技術であったとしても、甲1から把握される発明、すなわちセルフクリーンボタンを押すと、この機能が開始され、本体パネルとリモコンに「CL」と表示されることを前提とする発明において、当該「CL」という表示を、いわゆる自動洗浄運転に係る洗浄処理の開始条件が成立したことを報知音や表示ランプ等によりユーザに知らしめる事前の報知とすることは、到底想定し得ることではない。
したがって、異議申立人の上記主張は理由がない。

(ウ)甲2から把握される発明について
事案に鑑み、最初に、特許発明1が、甲2から把握される発明(上記4.(2))に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものか否かをまず先に検討する。

a 対比
特許発明1と、甲2から把握される発明とを対比すると、上記(1)ア(イ)aの相違点2において少なくとも相違する。

b 相違点2に対する当審の判断
上記(1)ア(イ)bにおいて説示したとおり、特許発明1の「前記室内熱交換器の凍結の処理を開始する前に、当該処理を行う旨の報知」とは、洗浄処理の開始条件が成立した場合に「前記室内熱交換器の凍結の処理を開始する」ことを報知音や表示ランプ等によりユーザに知らしめる事前の報知である(本件特許の明細書の段落0043、0044、0092、0093)。
一方で、甲2から把握される発明では、「セルフクリーンボタンを押すと、この機能が開始され、本体パネルとリモコンに「CL」と表示され」るのであって、当該「CL」との表示は、ユーザのボタン操作に起因して行われるものであるから、特許発明1にいう「所定の報知」は、甲2から把握される発明の「表示」とは異なるものである。
さらに、甲2から把握される発明は、上記報知を前提とした、「前記報知手段による前記報知が開始されてから所定時間が経過するまでにリモコン又は携帯端末から所定のキャンセル指令を受信した場合、前記処理の開始を行わない」ものではない。
そして、上記相違点2に係る特許発明1の構成は、甲1から把握される発明(上記4.(1))、甲3に記載された発明(上記4.(3))、甲4記載事項?甲11記載事項(上記4.(4)?4.(11))のいずれにもなく、また、本件特許の出願前に周知技術であったともいえない。

以上から、甲2が取扱説明書となっているHaier社の空気調和機(型番:KFR-35GW/15DBA21AU1)が本件特許の出願前に公然実施をされたか否かについて検討するまでもなく、特許発明1は、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、その発明に係る特許は取り消すべきものであるとはいえない。

(エ)小括
したがって、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、その発明に係る特許は取り消すべきものであるとはいえない。

イ 特許発明2について
(ア)対比
特許発明2と、甲3に記載された発明とを対比すると、上記(2)ア(ア)の相違点3において少なくとも相違する。

(イ)相違点3に対する当審の判断
上記(2)ア(イ)において説示したとおり、特許発明2の、「前記制御手段は、室内熱交換器の凍結の処理を開始してから所定時間が経過した後に、リモコン又は携帯端末から当該処理のキャンセル指令を受信した場合、前記室内熱交換器の乾燥を行い、前記乾燥は、前記室内熱交換器に空気を送り込む室内ファンの駆動によって行われる」における「所定時間」とは、凍結中に所定時間以上が経過している場合には、室内熱交換器12の表面に氷が付着している可能性を考慮して設定されるものである(本件特許の明細書の段落0061、0062、0068)。
一方、甲3に記載された発明は、室内機の蒸発器の自動洗浄モードに入った後、ユーザーによる空調機制御器(例えばリモコンや携帯電話など)からの発信により、他モード切換制御指令を検知するものであって、他モード切換制御指令の検知が、自動洗浄モードに入ってから所定時間が経過した後の検知であるのか否かについて判断するものではない。
そして、上記相違点3に係る特許発明2の構成は、甲1から把握される発明(上記4.(1))、甲2から把握される発明(上記4.(2))、甲4記載事項?甲11記載事項(上記4.(4)?4.(11))のいずれにもなく、また、本件特許の出願前に周知技術であったともいえない。

(ウ)小括
特許発明2は、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件特許の請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、その発明に係る特許は取り消すべきものであるとはいえない。

ウ 特許発明3、4、11について
特許発明3、4、11は、特許発明2を引用し、特許発明2の発明特定事項の全てを含むものであるから、特許発明2についての判断と同様の理由により、特許発明3、4、11は、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件特許の請求項3、4、11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、その発明に係る特許は取り消すべきものであるとはいえない。

エ 特許発明5?10、12?15について
特許発明5?10、12?15は、特許発明1を引用し、特許発明1の発明特定事項の全てを含むものであるか、又は、特許発明2を引用し、特許発明2の発明特定事項の全てを含むものであるから、特許発明1又は特許発明2についての判断と同様の理由により、特許発明5?10、12?15は、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件特許の請求項5?10、12?15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、その発明に係る特許は取り消すべきものであるとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-01-18 
出願番号 特願2017-89849(P2017-89849)
審決分類 P 1 651・ 112- Y (F24F)
P 1 651・ 113- Y (F24F)
P 1 651・ 121- Y (F24F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 石田 佳久  
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 宮崎 賢司
莊司 英史
登録日 2018-01-19 
登録番号 特許第6276450号(P6276450)
権利者 日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
発明の名称 空気調和機  
代理人 特許業務法人磯野国際特許商標事務所  

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