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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06Q
管理番号 1348739
異議申立番号 異議2018-700826  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-10-11 
確定日 2019-02-04 
異議申立件数
事件の表示 特許第6309504号発明「プログラム、情報処理装置及び情報処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6309504号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6309504号の請求項1?7に係る特許についての出願は,平成27年12月26日に特許出願され,平成30年3月23日にその特許権の設定登録がされ,平成30年4月11日に特許掲載公報が発行された。その後,その特許に対し,平成30年10月11日に特許異議申立人櫻井裕により特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明
特許第6309504号の請求項1?7の特許に係る発明(以下,請求項1?7に係る発明をそれぞれ「本件発明1」?「本件発明7」という)は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
患者を識別するための第1識別情報を端末装置より取得する第1取得部と,
前記第1識別情報と,患者を識別する情報として予め記憶部に記憶された第1識別情報とが一致するか否かを判定する第1判定部と,
前記第1識別情報が一致すると判定した場合,前記第1識別情報に対応する患者の医療情報を前記端末装置へ出力する第1出力部と,
前記第1識別情報が一致すると判定した場合に,看護師または医師を識別するための第2識別情報を前記端末装置から取得する第2取得部と,
前記第2識別情報と,前記記憶部に看護師または医師を識別する情報として予め記憶された第2識別情報とが一致するか否か判定する第2判定部と,
前記第2識別情報が一致すると判定した場合に,前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面を前記端末装置へ出力する第2出力部と,
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記入力画面から入力された,取得した前記状態情報の履歴に基づいて生成された前記患者の状態の変化を示すための変化情報を前記端末装置へ出力する第3出力部をさらに備えた請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
患者を識別するための第1識別情報を端末装置より取得する第1取得ステップと,
前記第1識別情報と,患者を識別する情報として予め記憶部に記憶された第1識別情報とが一致するか否かを判定する第1判定ステップと,
前記第1識別情報が一致すると判定した場合,前記第1識別情報に対応する患者の医療情報を前記端末装置へ出力する第1出力ステップと,
前記第1識別情報が一致すると判定した場合に,看護師または医師を識別するための第2識別情報を前記端末装置から取得する第2取得ステップと,
前記第2識別情報と,前記記憶部に看護師または医師を識別する情報として予め記憶された第2識別情報とが一致するか否か判定する第2判定ステップと,
前記第2識別情報が一致すると判定した場合に,前記端末装置において前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面を出力する第2出力ステップと,
を含む情報処理方法。
【請求項4】
患者を識別するための第1識別情報を端末装置より取得する第1取得ステップと,
前記第1識別情報と,患者を識別する情報として予め記憶部に記憶された第1識別情報とが一致するか否かを判定する第1判定ステップと,
前記第1識別情報が一致すると判定した場合,前記第1識別情報に対応する患者の医療情報を前記端末装置へ出力する第1出力ステップと,
前記第1識別情報が一致すると判定した場合に,看護師または医師を識別するための第2識別情報を前記端末装置から取得する第2取得ステップと,
前記第2識別情報と,前記記憶部に看護師または医師を識別する情報として予め記憶された第2識別情報とが一致するか否か判定する第2判定ステップと,
前記第2識別情報が一致すると判定した場合に,前記端末装置において前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面を出力する第2出力ステップと,
をコンピュータに実行させる情報処理プログラム。
【請求項5】
患者を識別するための第1識別情報を取得する第1取得部と,
前記第1取得部で取得した前記第1識別情報を情報処理装置に送信する第1送信部と,
前記第1取得部で取得した前記第1識別情報と記憶部に予め記憶された第1識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記第1識別情報に対応する患者の医療情報を前記情報処理装置から受信し,表示する表示部と,
前記患者の医療情報が前記表示部に表示された場合に,看護師または医師を識別するための第2識別情報を取得する第2取得部と,
前記第2取得部で取得した前記第2識別情報を前記情報処理装置に送信する第2送信部と,
を備え,
前記表示部は,前記第2取得部で取得した前記第2識別情報と記憶部に予め記憶された第2識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面を表示する端末装置。
【請求項6】
患者を識別するための第1識別情報を取得する第1取得ステップと,
前記第1取得ステップで取得した前記第1識別情報を情報処理装置に送信する第1送信ステップと,
前記第1取得ステップで取得した前記第1識別情報と記憶部に予め記憶された第1識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記第1識別情報に対応する患者の医療情報を前記情報処理装置から受信し,端末装置に表示する第1表示ステップと,
前記患者の医療情報が表示された場合に,看護師または医師を識別するための第2識別情報を取得する第2取得ステップと,
前記第2取得ステップで取得した前記第2識別情報を前記情報処理装置に送信する第2送信ステップと,
前記第2取得ステップで取得した前記第2識別情報と記憶部に予め記憶された第2識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面を表示する第2表示ステップと,
を含む端末装置の制御方法。
【請求項7】
患者を識別するための第1識別情報を取得する第1取得ステップと,
前記第1取得ステップで取得した前記第1識別情報を情報処理装置に送信する第1送信ステップと,
前記第1取得ステップで取得した前記第1識別情報と記憶部に予め記憶された第1識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記第1識別情報に対応する患者の医療情報を前記情報処理装置から受信し,端末装置に表示する第1表示ステップと,
前記患者の医療情報が表示された場合に,看護師または医師を識別するための第2識別情報を取得する第2取得ステップと,
前記第2取得ステップで取得した前記第2識別情報を前記情報処理装置に送信する第2送信ステップと,
前記第2取得ステップで取得した前記第2識別情報と記憶部に予め記憶された第2識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面を表示する第2表示ステップと,
をコンピュータに実行させる端末装置の制御プログラム。」

3 申立理由の概要
特許異議申立人は,主たる証拠として「足立理穂 外5名,マルチメディア病床端末での電子カルテ運用,医療情報学連合大会論文集,2006年10月30日,第26巻,p.281,282」(以下「甲第1号証」という。)を,また,従たる証拠として特開2000-285181号公報(以下「甲第2号証」という。),及び前記甲第1号証の発行日についての参考資料として,「J-GLOBAL」(国立研究開発法人 科学技術振興機構)での「マルチメディア病床端末での電子カルテ運用」についての検索結果として,当該文献の詳細情報に「発行年:2006年10月30日」と記載されたページ[URL http://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/200902215784790698]のプリントアウトを提出し,請求項1?7に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから,請求項1?7に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

4 各甲号証の記載
(1)甲第1号証
甲第1号証には以下の記載がある。なお下線は当審において付加したものである。
ア 「医療法人 蜂友会は,1996年より医療の電子化に取り組んできた。その第1期として,はちや整形外科病院(以下 当院 と略す)にオーダーリングシステム(同年8月)を,第2期として,当院画像ファイリングシステム(1998年8月),第3期は,はちやリハビリテーションクリニックに電子カルテシステム(2000年11月),第4期,当院外来部門に電子カルテシステム(2003年9月)の導入を行い,医療情報の電子化に取り組んできた。」(第281頁左欄第2-10行)
イ 「その後当院は,第5期計画として,病棟部門の電子カルテ導入に向けて取り組んできた。その中で病棟での電子カルテ運用に関しては数々の問題に直面した。とりわけ,ベッドサイドでのカルテ参照と入力に関する問題が主であった。」(第281頁左欄第11-15行)
ウ 「これらを解決すべく,PDA端末の導入や無線LANによる運用等をテスト,検討を行ってきた。その中で,Video On Demand(以下 VOD と略す)を利用したマルチメディア病床端末(medical entertainment and information(以下 ME&i と略す)システム)を株式会社Vitasより知る機会を得た。」(第281頁左欄第15-21行)
エ 「病床端末としてのME&iシステムは,コンピュータを格納した目隠しボックス,もしくは床頭台収納型の2タイプが各ベッドの枕元に設置されている。コンピュータと液晶モニター,リモコンで構成されており,操作は,タッチパネル及びマウス機能を有するリモコンで行い,文字入力は,画面上に表示されるソフトウェアキーボードで行う。」(第281頁右欄第3-9行)
オ 「ME&iシステムは,テレビ,ビデオ,ゲーム,ホームページ参照,メール機能を有したVODシステム機能と,電子カルテシステム機能の二つの機能を有している。」(第281頁右欄第14-16行)
カ 「患者が使用するVODシステム画面と,職員が使用する電子カルテシステム画面は,別々の画面となっており,通常ME&iシステムが起動した際は,患者が使用するためのVODシステムメニュー画面が立ち上がる。このメニュー画面の中に電子カルテシステムに切り替えるボタンがあり,職員がこのボタンを押すことによりログイン画面が立ち上がる。」(第281頁右欄第16-23行)
キ 「電子カルテシステムは全ての患者情報を見ることができるため,セキュリティは極めて重要なポイントである。実際のログインには,生体認証機能の一部である指紋認証を取り入れた。」(第281頁右欄第23-26行)
ク 「カルテ参照は,所見参照,オーダー内容の確認,検査結果,放射線画像,MRI画像参照等,当院外来及び,病棟ナースステーション内で使用している端末と同等レベルの機能を有している。」(第281頁右欄第31-34行)
ケ 「また,入力は看護師訪室時のバイタルチェックや症状チェック時の所見,処置実施内容等をソフトウェアキーボードにより簡易入力することができる。」(第281頁右欄第34-37行)
コ 「自分の治療予定,検査結果,画像参照等患者が自由に閲覧できるようになることが究極の情報公開であると考える。しかし,セキュリティの関係でカルテの閲覧には現時点ではまだ職員によるログインが必要となり,患者自身が自由にカルテを閲覧できるわけではないが,職員同席のもと,記録,画像,検査結果,スケジュール等の閲覧が可能であり,情報公開の第一歩であると考えている。」(第282頁右欄第9-16行)
サ 以上ア?コによれば,甲第1号証には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「病床端末としてのME&iシステムは,各ベッドの枕元に設置され,コンピュータと液晶モニター,リモコンで構成されており,操作は,タッチパネル及びマウス機能を有するリモコンで行い,文字入力は,画面上に表示されるソフトウェアキーボードで行うものであり,
ME&iシステムは,テレビ,ビデオ,ゲーム,ホームページ参照,メール機能を有したVODシステム機能と,電子カルテシステム機能の二つの機能を有し,
患者が使用するVODシステム画面と,職員が使用する電子カルテシステム画面は,別々の画面となっており,通常ME&iシステムが起動した際は,患者が使用するためのVODシステムメニュー画面が立ち上がり,このメニュー画面の中に電子カルテシステムに切り替えるボタンがあり,職員がこのボタンを押すことによりログイン画面が立ち上がるものであり,
電子カルテシステムは全ての患者情報を見ることができるため,セキュリティは極めて重要なポイントであり,実際のログインには,生体認証機能の一部である指紋認証を取り入れ,
入力は看護師訪室時のバイタルチェックや症状チェック時の所見,処置実施内容等をソフトウェアキーボードにより簡易入力することができ,
セキュリティの関係でカルテの閲覧には現時点ではまだ職員によるログインが必要となり,患者自身が事由にカルテを閲覧できるわけではないが,職員同席のもと,記録,画像,検査結果,スケジュール等の閲覧が可能である,
ME&iシステム。」

(2)甲第2号証
甲第2号証には以下の記載がある。なお下線は当審において付加したものである。
シ 「【0006】
また,最近は各医療機関において,いわゆる電子カルテによる病院医療情報データベースシステムが整備されつつあるが,このデータベースに記憶されている医療情報のうち入院患者のアクセスが許される医療情報については,入院患者がベッドサイドからアクセスできるようなシステムが要望されている。
【0007】
本発明は,上記の事情に鑑み,ベッドサイドにおいて入院患者および医療スタッフに必要な情報を提供することのできるベッドサイド情報システムを提供することを目的とする。」

ス 「【0029】
図4は,本実施形態におけるメインメニュー画面の遷移図である。
【0030】
図4に示すように,TFT表示装置12に表示されるメインメニュー画面50には「TV」,「TV電話」,「病院情報」,「本システムの使い方」,「医学情報」などの患者のアメニティ向上に資するアメニティ情報のメニュー,「患者向け診療情報」メニュー,「医療スタッフ向け診療情報」メニュー,および「病院医療情報データベース」メニューが表示される。

・・・(途中省略)・・・

【0034】
図6は,本実施形態における患者向け診療情報メニューの遷移図である。
【0035】
図6に示すように,診療情報メニューは,4つの階層からなり,第1階層「患者向け診療情報」メニューの下に第2階層の「認証」メニューがあり,その下に第3階層として「病院スタッフの紹介」メニュー,「診療予定」メニュー,「1週間の食事」メニュー,「食事選択」メニュー,「経過情報」メニュー,「アンケート入力」メニュー,「各種予約」メニュー,「体温入力」メニューなどがあり,「診療予定」メニューの下には「服薬オリエンテーション」メニュー,「術前オリエンテーション」メニュー,「検査オリエンテーション」メニューがあり,また,「経過情報」メニューの下には「検査結果」メニュー,「バイタルサイン」メニューがあり,「各種予約」メニューの下には「床屋,歯医者など」メニューがある。
【0036】
この患者向けメニューは,上述のように,サーバ20に備えられたメニュー内容変更手段により医療スタッフの操作でメニュー内容を個々の入院患者の容態に応じて変更することができるようになっている。
【0037】
図7は,本実施形態における医療スタッフ向け診療情報メニューの遷移図である。
【0038】
図7に示すように,医療スタッフ向け診療情報メニューは4つの階層からなり,第1階層「医療スタッフ向け診療情報」メニューの下に第2階層の「認証」メニューがあり,その下に第3階層として「バイタルサイン照会」メニュー,「投薬・検査結果」メニュー,「クリティカルパス」メニュー,「自動測定」メニュー,「実施入力」メニューなどがある。
【0039】
なお,「自動測定」メニューの下には「体重」メニュー,「体温」メニュー,「血圧」メニュー,「尿量」メニューなどが設定され,また,「実施入力」メニューの下には「処置/材料」メニュー,「注射」メニュー,「看護情報」メニューなどが設定される。」

セ 「【0041】
このベッドサイド情報処理装置のサーバ20には,図1に示すように,患者のアメニティの向上に資するアメニティ情報としてTV映像およびビデオ映像などが記憶されたアメニティ情報記憶手段21と,操作者により選択されたアメニティ情報をアメニティ情報記憶手段21に記憶されたアメニティ情報の中から検索するアメニティ情報検索手段(図示せず)が備えられている。なお,サーバ20にはTV電波を受信するTVアンテナ23が備えられており,一般放送映像を直接受信することができるようになっている。」
ソ 「【0042】
さらに,サーバ20には,患者の診療に資する診療情報が記憶された診療情報記憶手段24と,操作者により選択された診療情報を診療情報記憶手段24に記憶された診療情報の中から検索する診療情報検索手段(図示せず)が備えられている。」
タ 「【0044】
図8に示すように,ベッドサイド端末10のTFT表示装置12にメインメニュー画面50(図4参照)が表示されており(ステップS100),入院患者などの操作者が,リモコン15を操作して患者のIDおよびPWを入力するとともにメインメニュー画面50(図4参照)の中の「TV機能」メニューを選択する(ステップS101)と,ベッドサイド端末10に備えられたメインブラウザが起動する。IDおよびPWは,ベッドサイド端末10からサーバ20に送られる。サーバ20に備えられた認証手段は認証情報管理ファイル26を用いてIDおよびPWの認証を行い(ステップS103),認証の結果をベッドサイド端末10に返す。ベッドサイド端末10は,操作者にTV機能かビデオ機能かを選択させるサブメニューを表示する(ステップS104)。」
チ 「【0057】
図10に示すように,ベッドサイド端末10のTFT表示装置12にメインメニュー画面50(図4参照)が表示されており(ステップS300),入院患者などの操作者が,リモコン15を操作して患者のIDおよびPWを入力するとともにメインメニュー画面50の中の「病院医療情報データベース」メニューを選択する(ステップS301)と,ベッドサイド端末10に備えられたメインブラウザが起動する。IDおよびPWは,ベッドサイド端末10からサーバ20に送られる。サーバ20に備えられた認証手段は認証情報管理ファイル26を用いてIDおよびPWの認証を行い(ステップS303),認証の結果をベッドサイド端末10に返す。ベッドサイド端末10は,操作者に「病院医療情報データベース」メニューの下位のサブメニューを表示する(ステップS304)。」
ツ 「【0059】
サーバ20に備えられた医療情報提供手段は,コンテンツレベルにより,患者別情報か共通情報かを判定し(ステップS307),患者別情報と判定された場合はHISサーバ40の医療情報DB(病院医療情報データベース)41を検索し(ステップS308),検索結果をHTML(Hyper Text Markup Language)化してサーバ20に転送し(ステップS309),サーバ20に備えられたコンテンツファイル24に格納する。コンテンツファイル24に格納された医療情報はベッドサイド端末10に転送され(ステップS311),ベッドサイド端末10に表示される(ステップS312)。一方,ステップS307において共通情報と判定された場合は患者IDによるコンテンツ検索が行われ(ステップS310),検索結果はベッドサイド端末10に転送され(ステップS311),ベッドサイド端末10に表示される(ステップS312)。」
テ 以上シ?ツによれば,甲第2号証には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「ベッドサイドにおいて入院患者および医療スタッフに必要な情報を提供することのできるベッドサイド情報システムであって,
サーバ20には,患者のアメニティの向上に資するアメニティ情報としてTV映像およびビデオ映像などが記憶されたアメニティ情報記憶手段21と,操作者により選択されたアメニティ情報をアメニティ情報記憶手段21に記憶されたアメニティ情報の中から検索するアメニティ情報検索手段が備えられており,
ベッドサイド端末10のTFT表示装置12にメインメニュー画面50が表示されており(ステップS100),入院患者などの操作者が,リモコン15を操作して患者のIDおよびPWを入力するとともにメインメニュー画面50(図4参照)の中の「TV機能」メニューを選択でき(ステップS101),
また,ベッドサイド端末10のTFT表示装置12にメインメニュー画面50が表示されており(ステップS300),入院患者などの操作者が,リモコン15を操作して患者のIDおよびPWを入力するとともにメインメニュー画面50の中の「病院医療情報データベース」メニューを選択する(ステップS301)と,ベッドサイド端末10に備えられたメインブラウザが起動し,IDおよびPWは,ベッドサイド端末10からサーバ20に送られ,サーバ20に備えられた認証手段は認証情報管理ファイル26を用いてIDおよびPWの認証を行い(ステップS303),認証の結果をベッドサイド端末10に返し,
サーバ20に備えられた医療情報提供手段は,コンテンツレベルにより,患者別情報か共通情報かを判定し(ステップS307),患者別情報と判定された場合はHISサーバ40の医療情報DB(病院医療情報データベース)41を検索し(ステップS308),検索結果をHTML(Hyper Text Markup Language)化してサーバ20に転送し(ステップS309),サーバ20に備えられたコンテンツファイル24に格納し,コンテンツファイル24に格納された医療情報はベッドサイド端末10に転送され(ステップS311),ベッドサイド端末10に表示される(ステップS312),
ベッドサイド情報システム。」

5 当審の判断
(1)請求項1に係る発明(本件発明1)について
本件発明1と甲1発明を対比する。
ア 甲1発明の「ME&iシステム」は,実質的に病床端末とVODシステム及び電子カルテシステムがネットワークで接続されたシステムであることは自明であり,当該病床端末から電子カルテシステムにアクセスし,患者情報を病床端末で閲覧可能なシステムであることから,甲1発明の病床端末及び電子カルテシステムは,本件発明1の「端末装置」及び「情報処理装置」に対応するものといえる。
イ 甲1発明の「患者が使用するVODシステム画面と,職員が使用する電子カルテシステム画面は,別々の画面となっており,通常ME&iシステムが起動した際は,患者が使用するためのVODシステムメニュー画面が立ち上がり,このメニュー画面の中に電子カルテシステムに切り替えるボタンがあり,職員がこのボタンを押すことによりログイン画面が立ち上がるものであり」,「電子カルテシステムは全ての患者情報を見ることができるため,セキュリティは極めて重要なポイントであり,実際のログインには,生体認証機能の一部である指紋認証を取り入れ」,及び,「セキュリティの関係でカルテの閲覧には現時点ではまだ職員によるログインが必要となり,患者自身が事由にカルテを閲覧できるわけではないが,職員同席のもと,記録,画像,検査結果,スケジュール等の閲覧が可能である」との事項において,ここでいう「職員」とは一般にカルテを閲覧可能な看護師や医師であることは明らかであり,また,電子カルテシステムへのログインには,指紋認証が取り入れられており,この「指紋」とは「職員」を識別するための情報であることから,甲1発明の「指紋」は,本件発明1における「看護師または医師を識別するための第2識別情報」に相当するものである。
また,前記電子カルテシステムへのログインとして行われる指紋認証は,病床端末から入力された職員の指紋を電子カルテシステムへ送信し,予め記憶された指紋と一致するか否かを判定することにより認証が行われるものであることは技術常識である。
そうすると,本件発明1と甲1発明は,「看護師または医師を識別するための第2識別情報を前記端末装置から取得する第2取得部」及び「前記第2識別情報と,前記記憶部に看護師または医師を識別する情報として予め記憶された第2識別情報とが一致するか否か判定する第2判定部」を備える点で共通するものである。
ウ 甲1発明の「入力は看護師訪室時のバイタルチェックや症状チェック時の所見,処置実施内容等をソフトウェアキーボードにより簡易入力することができ」との事項によると,電子カルテシステムへのログインとして指紋が認証されると,バイタルチェックや症状チェック時の所見,処置実施内容等を入力可能とするものであることから,入力のための画面が電子カルテシステムから病床端末へ出力されるものといえる。
そうすると,本件発明1と甲1発明は,「前記第2識別情報が一致すると判定した場合に,前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面を前記端末装置へ出力する第2出力部」を備える点で共通するものである。
エ 以上のア?ウによれば,本件発明1と甲1発明との一致点,及び,相違点は以下のとおりである。
<一致点>
看護師または医師を識別するための第2識別情報を前記端末装置から取得する第2取得部と,
前記第2識別情報と,前記記憶部に看護師または医師を識別する情報として予め記憶された第2識別情報とが一致するか否か判定する第2判定部と,
前記第2識別情報が一致すると判定した場合に,前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面を前記端末装置へ出力する第2出力部と,
を備える情報処理装置。

<相違点1>
本件発明1では,「患者を識別するための第1識別情報を端末装置より取得する第1取得部」と,「前記第1識別情報と,患者を識別する情報として予め記憶部に記憶された第1識別情報とが一致するか否かを判定する第1判定部」と,「前記第1識別情報が一致すると判定した場合,前記第1識別情報に対応する患者の医療情報を前記端末装置へ出力する第1出力部」を備えているが,甲1発明ではそのような各種処理部を備えていない点。
<相違点2>
本件発明1の「第2取得部」では,「前記第1識別情報が一致すると判定した場合に」「看護師または医師を識別するための第2識別情報を前記端末装置から取得する」ものであるが,甲1発明ではそのような条件はなく,そもそも患者を識別するための情報についての記載がない点。

オ 上記相違点について検討する。
(ア)相違点1について
甲2発明では,ベッドサイド端末10から患者のIDおよびPWを入力すると,IDおよびPWは,ベッドサイド端末10からサーバ20に送られ,サーバ20に備えられた認証手段は認証情報管理ファイル26を用いてIDおよびPWの認証を行い,サーバ20に備えられた医療情報提供手段は,患者別情報と判定された場合はHISサーバ40の医療情報DB(病院医療情報データベース)41を検索し医療情報はベッドサイド端末10に転送され,ベッドサイド端末10に表示されることが記載されており,このサーバ20における処理として,ベッドサイド端末から患者のIDおよびPWを取得する処理(本件発明1の「第1取得部」に相当する),認証手段が認証情報管理ファイル26を用いてIDおよびPWの認証を行う処理(本件発明1の「第1判定部」に相当する),医療情報提供手段が患者別情報と判定された場合に医療情報をベッドサイド端末10に転送する処理(本件発明1の「第1出力部」に相当する)は公知である。
そして,甲1発明と甲2発明は,病床端末(ベッドサイド端末)を用いた情報提供システムである点で技術的に共通し,また,甲第1号証には前記「4(1)コ」において示したように,「自分の治療予定,検査結果,画像参照等患者が自由に閲覧できるようになることが究極の情報公開であると考える。」との記載があり,患者が自分の各種医療情報を閲覧可能とすることの課題が示されていることから,甲1発明に甲2発明を組み合わせることにより,上記相違点1に係る構成とすることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。
(イ)相違点2について
甲1発明の「患者が使用するVODシステム画面と,職員が使用する電子カルテシステム画面は,別々の画面となっており,通常ME&iシステムが起動した際は,患者が使用するためのVODシステムメニュー画面が立ち上がり,このメニュー画面の中に電子カルテシステムに切り替えるボタンがあり,職員がこのボタンを押すことによりログイン画面が立ち上がるものであり」との事項によれば,「職員が使用する電子カルテシステム画面」への遷移は,起動直後から「メニュー画面の中に電子カルテシステムに切り替えるボタンがあり,職員がこのボタンを押すことによりログイン画面が立ち上が」り,その後の指紋認証によりログインされるものであり,当該ログイン時の前に患者の識別情報の入力を必要とするとの記載も示唆もない。
ところで,甲1発明においても,ログイン後に患者のバイタルチェックや症状チェック時の所見,処置実施内容等の入力を行うに際し,患者を特定する必要があるが,例えば,職員である看護師が担当する患者のリストから選択したり,患者のリストバンドに記載されているバーコードを読み込むこと等が考えられるものの,職員によるログイン前に患者の認証を必須のものとすると,病床端末を使用する職員にとっての利便性が損なわれることから,相違点2の構成を積極的に採用する理由が見当たらない。
また,甲第2号証では,前記「4(2)ス」に示したように,「メインメニュー画面50」に「患者向け診療情報」メニュー,「医療スタッフ向け診療情報」メニューが表示され,前記「患者向け診療情報」メニューまたは「医療スタッフ向け診療情報」メニューが選択されることにより,それぞれ患者または医療スタッフの認証が行われることから,甲第2号証によっても上記相違点2が容易に想到し得たとはいえないものである。
したがって,上記相違点2は,甲1発明及び甲2発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえないものである。
なお,この点について特許異議申立人は,特許異議申立書の第18頁第26行-第19頁第7行における対比において,「上述したとおり,甲第1号証には,テレビ,ビデオ,ゲーム,メールなどのVOD機能を備えたマルチメディア病床端末システムが開示(摘記(1-d)(1-e))されており,前記VOD機能の利用には,利用に伴い発生する費用についての課金やメール管理の必要上,利用者である患者の認証(本人確認)は不可欠である。したがって,甲第1号証には明記はされていないけれども,甲第1号証に記載されたマルチメディア病床端末システムが,起動時,VODシステムメニュー画面が立ち上がる前提として,利用者である患者の認証を行っているのは明らかである。」と主張している。
しかしながら,甲第1号証にはそもそも患者の認証自体についての記載がないし,また,一般にVODシステムメニュー画面で選択できるメニューの中でも無料で提供される情報もあることから,有料の情報を選択した場合のみ患者の認証を行うこともあるし,利用に伴う費用も病院ではよく行われているプリペイドカードの使用により,患者の認証なしに行うこともよく知られていることから,特許異議申立人の上記「甲第1号証に記載されたマルチメディア病床端末システムが,起動時,VODシステムメニュー画面が立ち上がる前提として,利用者である患者の認証を行っているのは明らかである」との主張は根拠が明らかでなく採用できない。
カ まとめ
以上ア?オに記載したとおり,本件発明1は,甲1発明及び甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)請求項2?4に係る発明(本件発明2?4)について
請求項2に係る発明は,請求項1に係る発明に対し,さらに「前記入力画面から入力された,取得した前記状態情報の履歴に基づいて生成された前記患者の状態の変化を示すための変化情報を前記端末装置へ出力する第3出力部をさらに備えた」との技術的事項を追加したものである。
また,請求項3に係る発明は,請求項1に係る発明である「情報処理装置」において行われる各情報処理を,処理ステップとして特定し方法の発明としたものであり,また,請求項4に係る発明も同様にプログラムの発明としたものである。
よって,請求項2?4に係る発明は,上記(1)に示した理由と同様の理由により,甲1発明及び甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)請求項5に係る発明(本件発明5)について
ア 本件発明5と甲1発明を比較すると,以下の点で相違するものと認められる。

<相違点3>
本件発明5では,「患者を識別するための第1識別情報を取得する第1取得部」と,「前記第1取得部で取得した前記第1識別情報を情報処理装置に送信する第1送信部」と,「前記第1取得部で取得した前記第1識別情報と記憶部に予め記憶された第1識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記第1識別情報に対応する患者の医療情報を前記情報処理装置から受信し,表示する表示部」を備えているが,甲1発明ではそのような各種処理部を備えていない点。
<相違点4>
本件発明5の「第2取得部」では,「前記患者の医療情報が前記表示部に表示された場合に」「看護師または医師を識別するための第2識別情報を取得する」ものであるが,甲1発明ではそのような条件がない点。

イ 相違点についての判断
(ア)相違点3について
相違点3は,上記(1)で検討した相違点1と実質的に同等であることから,上記「(1)オ(ア)」で示した理由と同様の理由により,甲1発明に甲2発明を組み合わせることにより,当業者が容易に想到し得たことである。
(イ)相違点4について
本件発明5の「前記第1取得部で取得した前記第1識別情報と記憶部に予め記憶された第1識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記第1識別情報に対応する患者の医療情報を前記情報処理装置から受信し,表示する表示部」との事項によれば,「前記第1取得部で取得した前記第1識別情報と記憶部に予め記憶された第1識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合」に患者の医療情報を情報処理装置から受信し,表示するものであるから,上記相違点4の「前記患者の医療情報が前記表示部に表示された場合に」とは,「前記第1取得部で取得した前記第1識別情報と記憶部に予め記憶された第1識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合」と等価であるといえる。
そうすると,上記相違点4は,上記(1)で検討した相違点2と実質的に同等であることから,上記「(1)オ(イ)」で示した理由と同様の理由により,甲1発明及び甲2発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえないものである。
ウ まとめ
以上ア及びイに記載したとおり,本件発明5は,甲1発明及び甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)請求項6及び7に係る発明(本件発明6及び7)について
請求項6に係る発明は,請求項5に係る発明である「端末装置」において行われる各情報処理を,処理ステップとして特定し方法の発明としたものであり,また,請求項7に係る発明も同様にプログラムの発明としたものである。
よって,請求項6及び7に係る発明は,上記(3)に示した理由と同様の理由により,甲1発明及び甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)まとめ
以上(1)?(4)のとおりであるから,特許異議申立人が提出した甲第1号証及び甲第2号証によっては,請求項1?7に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。

6 むすび
したがって,特許異議の申立ての理由及び証拠によっては,請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-01-24 
出願番号 特願2015-255513(P2015-255513)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G06Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 緑川 隆  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 宮久保 博幸
金子 幸一
登録日 2018-03-23 
登録番号 特許第6309504号(P6309504)
権利者 株式会社レイズ
発明の名称 プログラム、情報処理装置及び情報処理方法  
代理人 加藤 卓士  

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