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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1349016
審判番号 不服2018-2460  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-21 
確定日 2019-02-26 
事件の表示 特願2017-548239「半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月 6日国際公開、WO2018/220796、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
平成29年 6月 1日 国際特許出願
平成29年10月 5日 拒絶理由通知書(同年10月17日発送)
平成29年11月30日 意見書・手続補正書
平成30年 1月 5日 拒絶査定(同年1月16日送達)
平成30年 2月21日 審判請求書

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願の請求項1-2に係る発明は、下記引用例1に記載された発明と引用例2-4に記載された周知技術に基づいて、また、本願の請求項3-6に係る発明は、引用例1に記載された発明と引用例2-5に記載された周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



・国際公開第2005/045911号(以下「引用例1」という。)
・特開2008-180813号公報(以下「引用例2」という。)
・HAH Jung Hwan、et.al.,Most Efficient Alternative Manner of Patterning sub-80nm Con tact Holes and Trenches with 193nm Litho,Japanese Journal of Applied Physics,日本 ,応用物理学会,2004年 6月29日,Vol.43、No.6B,pp.3663?3667 (以下「引用例3」という。)
・CHEN Wei-Su、et.al.,Sub-10nm Contact Holes with Aspect Ratio over Sixty Formed by E-beam Resist Shrinkage Techniques,Proc. Of SPIE,米国,SPIE,2007年 3月22日,Vol.6519,pp651945-1?651945-12(以下「引用例4」という。 )
・特開2013-133471号公報(以下「引用例5」という。)

第3 本願発明
本願の請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、平成29年11月30日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり、それぞれ以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
基板の上面にレジストを塗布する工程と、
前記レジストに開口部を形成する工程と、
前記レジストの上に熱収縮するシュリンク剤を塗布し、前記開口部を埋め込むシュリンク剤塗布工程と、
前記シュリンク剤を加熱し熱収縮させることで、前記開口部の幅を狭める収縮工程と、
前記収縮工程の後に前記シュリンク剤を除去する除去工程と、
前記除去工程の後に、前記レジストの上と前記開口部にメタル層を形成するメタル層形成工程と、
前記メタル層のうち前記レジストの上の部分と、前記レジストと、を除去する工程と、
を備え、
前記収縮工程では、前記開口部を形成する前記レジストの側面が、前記レジストの厚さ方向の中央部において前記開口部の中心部に向かって突出した曲面を形成し、
前記除去工程では、水洗処理により前記シュリンク剤を除去することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記シュリンク剤は、前記レジストと反応しないことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記メタル層形成工程の前に、前記シュリンク剤塗布工程と、前記収縮工程と、前記除去工程と、を繰り返し実施することを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記レジストの厚さは前記メタル層の厚さの2倍以上であることを特徴とする請求項1?3の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記メタル層形成工程では、前記メタル層の材料を前記基板の上面に垂直な方向から堆積させることで、前記メタル層が形成されることを特徴とする請求項1?4の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記開口部に形成されたメタル層の底面の幅は、前記開口部の前記基板上の幅よりも狭いことを特徴とする請求項1?5の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。」

第4 引用例、引用発明等
1 引用例1
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用例1には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
ア 「請求の範囲
[1] 基板上にマスク層を形成するマスク層形成工程と、
上記マスク層に開口部を形成する開口部形成工程と、
上記基板上およびマスク層上に薄膜層を形成する薄膜層形成工程と、
上記マスク層および/または該マスク層上に形成された薄膜層を基板から剥離する剥離工程とを含むパターン形成方法であって、
上記開口部形成工程は、乾式条件下で行われることを特徴とするパターン形成方法。」(注:下線は当審が付加した。以下同様である。)

[16] 上記マスク層は、基板上に液状のレジストを塗布する、または、基板上にフィルム状のレジストを積層することにより形成される請求項1ないし15のいずれか1項に記載のパターン形成方法。

[24] 上記薄膜層は、金属、ガラスおよびセラミックスから選ばれる少なくとも1つである請求項1ないし23のいずれか1項に記載のパターン形成方法。

イ 「技術分野
[0001] 本発明は、パターン形成方法、およびこれにより製造される電子回路、並びにこれを用いたPDP等の電子機器に関するものである。より詳しくは、例えば、半導体集積回路や電子回路等に用いられる薄膜からなる回路パターンを形成する方法、およびこれにより製造される電子回路、並びに、半導体装置、各種コンピュータ、各種表示装置等の薄膜からなる回路パターンを用いる全ての電子機器に関するものである。」

ウ 「 [0004] しかしながら、このフォトリソグラフィ・エッチングプロセスを用いた方法は、図15および図16に示すように、多数の工程を繰り返して電子回路の回路パターンを完成させていくものである。図15および図16に示す方法では、基板50上に金属薄膜51を形成した後に、マスク層52を形成し、露光・現像処理・エッチング・マスク層52剥離を行い、さらに、絶縁層53を形成した後に、マスク層54の形成・露光・現像・エッチング・マスク層54剥離を行っている。
[0005] すなわち、この方法では、金属薄膜と絶縁層とからなる回路パターンを形成する度に、成膜・レジスト塗布・乾燥・露光・現像・エッチング・マスク層剥離等からなる約22工程の非常に多数の工程数を必要とする。このため、製造コストが非常に高くなるという問題があった。さらに、この方法では、上記多数の工程の度に大量の現像液や、エッチング剤等の薬液および洗浄液を使用することとなる。これは、単に歩留まりが悪く製造コストが非常に高くなるということのみならず、昨今、重大な関心事となってきた廃液の処理などの環境負荷が非常に大きいという問題があった。」

エ 「発明を実施するための最良の形態

[0055] また、マスク層を乾式条件によって逆テーパ形状またはオーバーハング形状に加工する方法は、上記マスク層を2層形成する方法の他に、第1のレーザ光の焦点を変えて2回照射する方法によって行うこともできる。この工程を図4に示し、具体的に説明する。まず、基板1上に液状のレジストを塗布する、またはフィルム状のレジストを積層してマスク層2を形成する(図4(a))。そして、マスク層2側から第1のレーザ光を照射することにより、マスク層2は順テーパ形状に加工される(図4(b))。その後、第1のレーザ光の焦点を基板1側に移動させて再度レーザ光を照射する。これにより、マスク層2の開口パターンの断面形状は、順テーパ形状の途中から逆テーパ形状に加工された形状となる(図4(c))。これは、1回目のレーザ光照射にて順テーパ形状に加工されているため、2回目のレーザ光照射の際にはレーザ光のエネルギーを吸収するレジストがなく、基板1面に近い焦点近傍で横方向のレジストにエネルギーが加えられるためである。そして、回路パターンを形成するための薄膜3を成膜する(図1(d)・図4(d))。
[0056] したがって、例えば、基板1とマスク層2との間に、第1のレーザ光を透過しない無機材料薄膜(レーザ光無透過薄膜)、特に反射性の薄膜材料(反射性薄膜)が形成されているような場合には、上記原理を効率的に利用することができる。すなわち、基板1とマスク層2との間にこのようなレーザ光無透過薄膜がある場合には、第1のレーザ光の焦点位置をあらかじめ基板1側にずらしておけば、照射した第1のレーザ光は、レーザ光無透過膜によってマスク層2の基板側部分で横方向のレジストにエネルギーを加えることができる。さらに、反射性薄膜がある場合には、反射の効果でマスク層2をより一層加工することができ、マスク層2はその裾野がより大きくなるように加工される。その結果、第1のレーザ光を1回照射するだけで、開口パターンの断面形状が逆テーパ形状となるように、または順テーパ形状の途中から逆テーパ形状となるように加工することができる。」

オ 図1、図2、図4は以下のとおりである。

(2)上記(1)の記載によれば、引用例1には、以下の発明が記載されている。
「基板上にマスク層を形成するマスク層形成工程と、
上記マスク層に開口部を形成する開口部形成工程と、
上記基板上およびマスク層上に薄膜層を形成する薄膜層形成工程と、
上記マスク層および/または該マスク層上に形成された薄膜層を基板から剥離する剥離工程とを含むパターン形成方法であって、
上記マスク層は、液状のレジストを塗布する、または、基板上にフィルム状のレジストを積層することにより形成され、
上記薄膜層は、金属であり、
上記パターンは、半導体集積回路に用いられる薄膜からなる回路パターンであり、
上記マスク層の開口部は、その断面形状が順テーパ形状の途中から逆テーパ形状となり、
上記開口部形成工程は、乾式条件下で行われるパターン形成方法。」(以下「引用発明」という。

2 引用例2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用例2には、以下の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、ホトリソグラフィ技術分野におけるパターン微細化用被覆形成剤及びそれを用いた微細パターンの形成方法に関する。さらに詳しくは、近年の半導体デバイスの高集積化、微小化に対応し得るパターン微細化用被覆形成剤及びそれを用いた微細パターンの形成方法に関する。」

イ 「【背景技術】

【0011】
さらに、本出願人は、特許文献7?12(特開2003-084459号公報、特開2003-084460号公報、特開2003-107752号公報、特開2003-142381号公報、特開2003-195527号公報、特開2003-202679号公報)等において、パターン微細化用被覆形成剤及び微細パターンの形成方法に関する技術を提案している。これら特許文献7?12等に示す技術により、パターン寸法の制御性を向上し、微細化処理後のレジストパターンを良好な矩形形状とするなど、半導体デバイスにおける要求特性を備えた微細パターンを得ることが可能となった。
【0012】
これらのパターン微細化用被覆形成剤を用いた微細パターン形成技術では、まず、基板上にホトレジスト層を設け、これを露光・現像してホトレジストパターンを形成する。次いで、基板全面に亘ってパターン微細化用被覆形成剤を被覆した後、加熱し、該パターン微細化用被覆形成剤の熱収縮作用を利用して、ホトレジストパターンを幅広とする。これにより、ホトレジストパターン間隔が狭められ、該ホトレジストパターン間隔により画定されるパターン幅も狭められ、微細化したパターンが得られる。
【0013】
すなわち上記パターン微細化では、ホトレジストパターン形成段階(第1段階)と、パターン微細化用被覆形成剤の熱収縮段階(第2段階)の、2つの段階でのレジストパターン寸法制御の影響を受ける。このような手法を用いたレジストパターンの形成においては、第1段階で形成したレジストパターン形状を、第2段階の熱収縮工程において、その形状を維持したまま均一な熱収縮率で収縮させることが必要である。
【0014】
しかしながら、パターンサイズが100nm以下というオーダーの超微細化、高アスペクト比化したレジストパターンの微細化処理においては、微細化処理後のレジストパターン形状のより厳密な制御、及び微細化量のより厳密な管理が求められており、こうした状況下では、これらのパターン微細化用被覆形成剤を用いた微細パターン形成技術を用いた場合であっても、微細化処理後に、レジストパターンのトップ部とボトム部の形状が僅かにラウンディングする(丸まる)等の形状の劣化が発生し、また、ウェーハ面内での加熱温度の変動によって微細化量が変動する等の問題や、ウェーハ面内に混在する疎密パターンの微細化量が変動する等の問題が発生し、これらを厳密にナノメートルオーダーで制御することが困難であるという問題がある。本願発明はかかる課題の解決のためのものである。」

ウ 「【発明を実施するための最良の形態】

【0114】
c.被覆形成剤除去工程
この後、ホトレジストパターンを有する基板上に残留する被覆形成剤からなる塗膜は、水系溶剤、好ましくは純水により10?60秒間洗浄することにより除去する。なお、水洗除去に先立ち、所望によりアルカリ水溶液(例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリン等)でリンス処理をしてもよい。本発明に係る被覆形成剤は、水での洗浄除去が容易で、かつ、基板及びホトレジストパターンから完全に除去することができる。」

(2)引用例2には、以下の技術事項が開示されている。
「基板上にホトレジスト層を設け、これを露光・現像してホトレジストパターンを形成し、基板全面に亘ってパターン微細化用被覆形成剤を被覆した後、加熱し、該パターン微細化用被覆形成剤の熱収縮作用を利用して、ホトレジストパターンを幅広とすると、レジストパターンのトップ部とボトム部の形状が僅かにラウンディングする(丸まる)形状となること。」(以下「引用例2の技術事項」という。)

3 引用例3について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用例3には、図面とともに次の事項が記載されている。


(当審訳)これらのプロセスは、予めパターニングされたものを化学的に縮小することにより、小さなコンタクトホールを形成するが、図2に示されるように、各プロセスのメカニズムは互いに異なる。サーマルフローでは、フォトレジストは、ガラス転位温度(Tg)より高い温度で、それ自身が縮小するが、他方、他の2つのプロセスは、被覆材料を用いる。RELACSでは、フォトレジストのホールパターン中の追加的な材料が、フォトレジストと直接反応し、及び/又は、それ自体がフォトレジスト間の狭いギャップをクロスリンクする。SAFIER材料は、フォトレジストと反応しないが、しかしそれを柔軟にする。穴を小さくするために、取り囲むフォトレジストが相互に近づくように、高い温度で、SAFIER材料は熱収縮する。それ故、各プロセスは、固有の利点と欠点がある。


(当審訳)図2 サーマルフロー、RELACS、SAFIERの縮小メカニズム

(2)上記(1)アの記載を踏まえて上記(1)イの図2を見ると、「SAFIER材料の熱収縮を利用してフォトレジスト間のギャップを狭めるSAFIERの技術を用いると、形成したコンタクトホールの断面形状は、トップ部とボトム部の形状が僅かにラウンディングすること。」(以下「引用例3の技術事項」という。)が看て取れる、

4 引用例4について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用例4の図7及びその説明には、以下の事項が記載されている。


(当審訳)図7 SEMプロファイルの断面 (a)はサンプルP1である現像後検査、(b)はサンプルP2である1度のリフロー後検査、(c)はサンプルP3である2度のリフロー後検査、(d)はサンプルP4である1度のSAFIR後検査、(e)はサンプルP5である2度のSAFIR後検査、(f)はサンプルP6である3回のSAFIR後検査、コンタクトホールの初期のCD(限界寸法)は、L/S=1/3で100nmである。

(2)引用例4には、以下の技術事項が開示されている。
図7の(d)?(f)を見ると、「SAFIRにより形成したコンタクトホールの断面形状は、トップ部とボトム部がラウンディングすること」(以下「引用例4の技術事項」という。)が看て取れる。

5 引用例5について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用例5には、以下の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本技術は、微細化パターンを形成するための樹脂組成物に関する技術および樹脂組成物をフォトレジストのコーティング膜に用いることによって、半導体工程などで微細パターンを安定に形成する方法に関する。」

イ 「【背景技術】

【0006】
一方、形成されたフォトレジストコンタクトホールパターンにRELACS(クラリアント社製)、SAFIER(東京応化工業社製)などの機能性物質を用い、パターンのサイズを減少させる方法が使用されているが、充分に小さいコンタクトホールを獲得するためには数回工程を繰り返さないといけない問題点がある。またなお、前記機能性物質は芳香族構造やバルキーな部分を含んでいないため、機能性物質がコーティングされたフォトレジストパターンをパターニングする際、エッチング耐性が弱いという問題点がある。さらに前記方法は集積化および微細化し続けているコンタクトホールパターンに対するコーティング性能が不充分であり、加熱工程する際、加熱温度によって架橋される厚さを一定に調節できない問題点がある。」

ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、半導体工程のフォトレジストのコンタクトホールパターンのサイズを効率よく減少することによって、微細なフォトレジストパターンを形成することのできる水溶性樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明は、エッチング耐性が優れた前記水溶性樹脂組成物を用い、サイズが微細、かつ形状が安定したパターンの構造を有するフォトレジスト微細パターンを形成する方法を提供することにある。」

エ 「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る微細パターン形成用の水溶性樹脂組成物は、コンタクトホールパターンが形成されているフォトレジスト膜上にノルボルネン基を含むモノマーおよび末端の酸素の部位に互いに異なる作用基を有する2種の(メタ)アクリレート基を含有するモノマーを含む溶液を重合し形成された共重合体を塗布した後、 熱処理することによって前記コンタクトホールのサイズを減少させることができる。…」

オ 「【発明を実施するための形態】

【0045】
前述した水溶性樹脂組成物は、複数のコンタクトホールを含むフォトレジストパターンが形成されたウェハー基板上に塗布して乾燥することによって被膜を形成してもよい。前記水溶性樹脂組成物を製造して濾過した後、濾過された溶液を回転塗布、流し塗布、またはロール塗布などの方法でパターン上に塗布してもよい。このような方法によって塗布された水溶性樹脂組成物は、熱処理、すなわち、フォトレジストベイクをして架橋膜を形成し、コンタクトホールのサイズを縮小させる。一方、架橋されない水溶性樹脂組成物を水溶性溶媒、例えば、水で除去してもよい。」

オ 「【0083】
[実施形態2]
前記合成例1で獲得された(式2)の樹脂3.0gを蒸留水95.0gとイソプロピルアルコール(isopropylalcohol)5gの混合溶媒に十分に溶解させた後、0.2μmの膜フィルタで濾過して水溶性樹脂組成物(フォトレジストパターンコーティング用の組成物)を製造した。前記水溶性樹脂組成物をコンタクトホールパターンの形成されたウェハー上にスピンコーティングして薄膜を形成した後、150℃のオーブンで60秒間熱処理して架橋反応を促進させた。続いて、脱イオン水で60秒間リンスして回転させながら架橋反応が行われない水溶性樹脂組成物を除去した。その後、コンタクトホールパターンのサイズを走査電子顕微鏡で測定し、水溶性樹脂組成物の塗布によるコンタクトホールパターンのサイズは87.6nmとして、35.5nmが縮小されたことを確認した。」

(2)引用例5には、以下の2つの技術事項が開示されている。
「SAFIERの技術を用いて十分に小さなコンタクトホールを形成するには、数回繰り返す必要があること。」(以下「引用例5の技術事項1」という。)
「コンタクトホールパターンが形成されているフォトレジスト膜上にノルボルネン基を含むモノマーおよび末端の酸素の部位に互いに異なる作用基を有する2種の(メタ)アクリレート基を含有するモノマーを含む溶液を重合し形成された共重合体(水溶性樹脂組成物)を塗布した後、 熱処理することによって架橋反応を促進させて前記コンタクトホールのサイズを減少させ、架橋反応が行われない水溶性樹脂組成物は脱イオン水でリンスして回転させながら除去すること。」(以下「引用例5の技術事項2」という。)


第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1の「基板の上面にレジストを塗布する工程」と、引用発明の「基板上にマスク層を形成するマスク層形成工程」であって、「上記マスク層は、液状のレジストを塗布する、または、基板上にフィルム状のレジストを積層することにより形成され」る「マスク層形成工程」を対比する。
引用発明の「基板」は本願発明1の「基板」に相当し、引用発明の「マスク層を形成する」ことは本願発明1の「レジストを塗布する」ことに相当する。
してみると、両者は相当関係にある。

イ 本願発明1の「前記レジストに開口部を形成する工程」と、引用発明の「上記マスク層に開口部を形成する開口部形成工程」であって、「上記マスク層は、液状のレジストを塗布する、または、基板上にフィルム状のレジストを積層することにより形成され」る「開口部形成工程」を対比する。
引用発明の「マスク層」は、本願発明1の「レジスト」に相当する。してみると、両者は相当関係にある。

ウ 本願発明1の「前記除去工程の後に、前記レジストの上と前記開口部にメタル層を形成するメタル層形成工程」と、引用発明の「上記基板上およびマスク層上に薄膜層を形成する薄膜層形成工程」であって、「上記薄膜層は、金属であ」る「薄膜層形成工程」を対比する。
引用発明の「マスク層上」は本願発明1の「レジストの上」に相当し、以下同様に、「基板上」は「開口部」に、「薄膜層」は「メタル層」に、それぞれ相当する。
してみると、両者は、「前記レジストの上と前記開口部にメタル層を形成するメタル層形成工程」の点で一致する。

エ 本願発明1の「前記メタル層のうち前記レジストの上の部分と、前記レジストと、を除去する工程」と、引用発明の「上記マスク層および/または該マスク層上に形成された薄膜層を基板から剥離する剥離工程」を対比する。
引用発明の「マスク層」は本願発明1の「レジスト」に相当し、以下同様に「マスク層上に形成された薄膜層」は「メタル層のうち前記レジストの上の部分」に、「基板から剥離する」ことは「除去する」ことに、それぞれ相当する。
してみると、両者は相当関係にある。

オ 本願発明1の「前記収縮工程では、前記開口部を形成する前記レジストの側面が、前記レジストの厚さ方向の中央部において前記開口部の中心部に向かって突出した曲面を形成」することと、引用発明の「上記マスク層の開口部は、その断面形状が順テーパ形状の途中から逆テーパ形状」であることを対比する。
引用発明の「断面形状が順テーパ形状の途中から逆テーパ形状」であることは、本願発明1の「厚さ方向の中央部において前記開口部の中心部に向かって突出した極面」であることに相当する。
してみると、両者は、「前記開口部を形成する前記レジストの側面が、前記レジストの厚さ方向の中央部において前記開口部の中心部に向かって突出した曲面」である点で一致する。

カ 本願発明1の「半導体装置の製造方法」と、引用発明の「半導体集積回路に用いられる薄膜からなる回路パターン」「形成方法」を対比する。
半導体集積回路に用いられる薄膜からなる回路パターンを形成する方法は、半導体装置を製造する方法に相当する。してみると、両者は相当関係にある。

キ 以上によれば、本願発明1と引用発明は、
「基板の上面にレジストを塗布する工程と、
前記レジストに開口部を形成する工程と、
前記レジストの上と前記開口部にメタル層を形成するメタル層形成工程と、
前記メタル層のうち前記レジストの上の部分と、前記レジストと、を除去する工程と、
を備え、
前記開口部を形成する前記レジストの側面が、前記レジストの厚さ方向の中央部において前記開口部の中心部に向かって突出した曲面を形成する、
半導体装置の製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:本願発明1は、「前記レジストの上に熱収縮するシュリンク剤を塗布し、前記開口部を埋め込むシュリンク剤塗布工程と、前記シュリンク剤を加熱し熱収縮させることで、前記開口部の幅を狭める収縮工程と、前記収縮工程の後に前記シュリンク剤を除去する除去工程と、」を有し、前記収縮工程で「前記開口部を形成する前記レジストの側面が、前記レジストの厚さ方向の中央部において前記開口部の中心部に向かって突出した曲面を形成する」を形成し、「前記除去工程では、水洗処理により前記シュリンク剤を除去する」のに対し、引用発明は、「前記開口部を形成する前記レジストの側面が、前記レジストの厚さ方向の中央部において前記開口部の中心部に向かって突出した曲面を形成する」ものの、「シュリンク剤塗布工程」、「収縮工程」、「水洗処理により前記シュリンク剤を除去する」「除去工程」を有するものではない点。

(2)相違点についての判断
SAFIERの技術は、SAFIER材料の熱収縮を利用してフォトレジスト間のギャップを狭める技術である(引用例3の技術事項参照。)ところ、「パターン微細化用被覆形成剤の熱収縮作用を利用」する引用例2の技術事項もまた、SAFIERの技術を用いるものである。そして、引用例2の背景技術を説明する【0011】に記載された特許文献によれば、SAFIERの技術は湿式条件下で行う処理を含む技術である(例えば、
ア 特開2003-084459号公報の【請求項4】には、「水溶性樹脂被膜を水洗除去する工程」が記載され、
イ 特開2003-084460号公報の【請求項4】には、「水溶性樹脂被膜を水洗除去する工程」が記載され、
ウ 特開2003-107752号公報には、「【0007】【課題を解決するための手段】…収縮後の水洗により残留分を生じることなく水溶性樹脂被覆を除去しうる」ことが記載され、
エ 特開2003-142381号公報には、「【0060】この後、パターン上に残留する被覆形成剤からなる塗膜は、水系溶剤、好ましくは純水により10?60秒間洗浄することにより除去する」ことが記載され、
オ 特開2003-195527号公報には、「【0062】この後、パターン上に残留する被覆形成剤からなる塗膜は、水系溶剤、好ましくは純水により10?60秒間洗浄することにより除去する」ことが記載され、
カ 特開2003-202679号公報には、「【0063】この後、パターン上に残留する被覆形成剤からなる塗膜は、水系溶剤、好ましくは純水により10?60秒間洗浄することにより除去する」ことが記載されている。)。してみると、引用例2の技術事項?引用例4の技術事項、引用例5の技術事項1は、何れも湿式条件下で行う処理を含むものと解される。
また、引用例5の技術事項2は、「架橋反応が行われない水溶性樹脂組成物は脱イオン水でリンスして回転させながら除去する」であるから、湿式条件下で行う処理含むものと解される。
他方、引用例1は「[0005]…廃液の処理などの環境負荷が非常に大きいという問題」を解決するものであって、引用発明は「乾式条件下で行われる」ことを特定事項として含むものである。そうすると、乾式条件下で行う引用発明において、湿式条件下で行う引用例2の技術事項?引用例4の技術事項、引用例5の技術事項1、あるいは引用例5の技術事項2を採用することは、阻害要因があって当業者が容易に為し得るものではない。したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明と引用例2の技術事項?引用例4の技術事項、引用例5の技術事項1、あるいは、引用例5の技術事項2に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2-6について
本願発明2-6は、本願発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明と引用例2の技術事項?引用例4の技術事項、引用例5の技術事項1、あるいは、引用例5の技術事項2に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1-6は、当業者が引用発明と引用例2の技術事項?引用例4の技術事項、引用例5の技術事項1、あるいは、引用例5の技術事項2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-02-14 
出願番号 特願2017-548239(P2017-548239)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 今井 彰  
特許庁審判長 西村 直史
特許庁審判官 小松 徹三
星野 浩一
登録日 2019-03-08 
登録番号 特許第6491758号(P6491758)
発明の名称 半導体装置の製造方法  
代理人 久野 淑己  
代理人 高橋 英樹  
代理人 高田 守  

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