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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q |
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管理番号 | 1349073 |
審判番号 | 不服2017-433 |
総通号数 | 232 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-01-12 |
確定日 | 2019-02-28 |
事件の表示 | 特願2016-122731「提供装置、情報処理装置、およびプログラム」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯等 1 手続の経緯 本願は、平成28年6月21日に出願された特許出願であって、同年7月29日付けで拒絶理由が通知され、同年10月12日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月2日付けで拒絶査定がなされて同月8日に発送されて送達され、これに対し、平成29年1月12日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされた。 その後、当審において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見したため、平成29年2月22日付けで拒絶理由を通知したところ、同年3月30日付けで意見書及び手続補正書が提出された。 2 当審より平成29年2月22日付けで通知した拒絶理由(理由1)の概要 本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献一覧 1.特開2004-302947号公報 2.?6. 略 ・請求項:1、引用文献:1 ・・(以下略)・・ 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年3月30日付けの手続補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された、下記のとおりのものである。 ネットワークを介して通信端末が第1情報処理装置から受信した固定情報を、前記通信端末とのHF帯RFIDを用いた直接通信によって受信する受信部と、 前記固定情報に基づいて財物を提供可能な状態に置く提供部と、 を備える提供装置。。 第3 引用文献、引用発明 1 引用文献 当審より平成29年2月22日付けで通知した拒絶理由(理由1)で引用した特開2004-302947号公報(以下、「引用文献」という。)は、本願の出願時の前である平成16年10月28日になされた出願公開に係る特許公報であって、図面とともに、次の事項が記載されている。 ア「【0020】図1は、本発明を適用した口座取引システムを含む機能ブロック図である。図1において、口座取引システム1は、金融機関内部に設置されたネットワーク40を介して互いに接続された、現金自動取引装置10と仮情報管理サーバ20とホストコンピュータ30とを備えている。 【0021】上記現金自動取引装置10は、顧客が現金自動取引装置10を操作するための顧客操作部102と、顧客の保有する携帯電話等の携帯端末装置50が出力する情報を読み取るための携帯端末情報読取部100と携帯端末装置50との間で情報伝達のための通信を行う携帯端末情報通信部101の何れか一方あるいは双方と、ネットワーク40を介して仮情報管理サーバ20またはホストコンピュータ30との間でホスト通信するATM側第1通信部105と、仮情報管理サーバ20が生成する仮情報と顧客の口座情報とを保管する対応情報データ保管部104と、対応情報データ保管部104が保管している仮情報と携帯端末情報読取部100が読み取ったあるいは携帯端末情報通信部101が受信した仮情報とを比較する情報比較部103と、外部ネットワーク60を介して仮情報管理サーバ20と通信するATM側第2通信部106とを備えている。 【0022】上記仮情報管理サーバ20は、事前に登録された顧客口座情報等のデータを保管するためのサーバ側データ保管部200と、顧客口座情報と対応付けられた仮情報を生成するための仮情報生成ロジック部202と、携帯端末装置50から送信されてきた顧客情報とサーバ側データ保管部に格納されている顧客情報とを照合するサーバ側顧客情報照合部201と、ネットワーク40を介して現金自動取引装置10またはホストコンピュータ30と通信を行うサーバ側第1通信部204と、外部ネットワーク60を介して現金自動取引装置10や携帯端末装置50や端末装置70と通信を行うサーバ側第2通信部203とを備えている。」 イ「【0027】次に、上述のように構成された口座取引システム1を用いて実行される第1乃至第4の実施の形態について説明する。まず、本発明の第1の実施の形態は、以下のようなシステムである。 【0028】すなわち、事前に仮情報管理サーバ20に顧客の顧客口座情報を登録することにより、顧客の要求によって顧客口座情報に対応する仮情報を生成し、その仮情報管理サーバ20から顧客の携帯電話機等の携帯端末装置50に仮情報を送信し、ホストコンピュータ30側にも同様に仮情報と顧客口座情報を通知する。顧客は携帯端末装置50の画面上に表示した仮情報を読取ることができる機能を持つ現金自動取引装置10において、本仮情報を現金自動取引装置10へ入力することにより、本仮情報がホストコンピュータ30側に通知される。ホストコンピュータ30に事前に通知されている仮情報と顧客口座情報を結びつけることにより、当該顧客口座情報での口座取引を可能にするというものである。 【0029】図2は、本発明の第1の実施の形態の概略を示す図である。まず、顧客が携帯端末装置50から仮情報管理サーバ20に対して、カードレス取引を行うために仮情報取得を依頼する。 【0030】依頼を受けた仮情報管理サーバ20は、顧客情報を確認し仮情報を生成し、生成した仮情報を上記携帯端末装置50に通知するとともに、生成した仮情報と口座情報をホストコンピュータ30へ通知する。 【0031】次に、顧客が携帯端末装置50を用いて、通知された仮情報を現金自動取引装置10へ入力する。すると、現金自動取引装置10は、入力された仮情報をホストコンピュータ30へ通知する。 【0032】そして、ホストコンピュータ30は、通知された仮情報を口座情報へ変換し、口座取引を行う。 図3は、本発明の第1の実施の形態の詳細な流れを説明するためのフローチャートである。 【0033】仮情報管理サーバ20には、顧客の顧客口座情報が登録されている必要があるため、その流れを説明する。まず、ステップS301において、口座情報登録の処理が開始されると、現金自動取引装置10は、ステップS302において、キャッシュカードから顧客の顧客口座情報を取得し、ステップS303において、暗証番号の入力を受け付け、これらの情報をホストコンピュータ30に送信する。 【0034】ホストコンピュータ30は、ステップS304において、受信した顧客口座情報および暗証番号に基づいて、当該口座が本人のものであるか否かを確認し、その結果(OKであるかNGであるか)を現金自動取引装置10へ通知する。 【0035】すると、現金自動取引装置10は、ステップS305において、ホストコンピュータ30から受信した確認結果がOKであるか否かを判断し、OKであれば、ステップS306において、IDおよびパスワードを設定するとともに、これらと顧客口座情報とを仮情報管理サーバ20へ送信する。 【0036】そして、仮情報管理サーバ20は、ステップS307において、受信した顧客口座情報を登録する。 次に、仮情報の生成および口座取引までの流れを説明する。 【0037】まず、顧客はカードレス取引を行うために携帯端末装置50より携帯端末側通信部502を通じて仮情報管理サーバ20に仮情報発行の要求を行う(ステップS308)。その際、IDおよびパスワードを入力する(ステップS309)。 【0038】すると、仮情報管理サーバ20は、サーバ側第2通信部203を通じて本要求を取得し、サーバ側データ保管部200にあらかじめ登録済みの情報からサーバ側顧客情報照合部201で顧客情報を確認し(ステップS310)、仮情報生成ロジック部202で仮情報を生成する(ステップS311)。顧客情報の確認には、後述するような携帯端末IDやパスワード等の認証を用いても良い。 【0039】そして、生成した仮情報は、サーバ側第2通信部203を通じて、携帯端末装置50に通知され(ステップS311)、携帯端末装置50では、携帯端末側通信部502で受信したデータを情報表示部500もしくは情報通信部501より出力する(ステップS312)。 【0040】仮情報の出力例として、情報表示部500への表示は2次元バーコード等であり、情報通信部501のインターフェースはBluetooth等を用いることもできる。 【0041】図4は、仮情報の出力例を示す図である。一方、仮情報管理サーバ20で生成した仮情報及び顧客口座情報は、サーバ側第1通信部204を通じて、ホストコンピュータ30に通知され(ステップS313)、ホスト側データ保管部302に保管される(ステップS314)。 【0042】そして、口座取引を行う際には、口座取引の内容を入力するとともに、上述したように携帯端末装置50において情報表示部500もしくは情報通信部501より出力された仮情報が、現金自動取引装置10の携帯端末情報読取部100または携帯端末情報通信部101において入力される(ステップS315)。 【0043】さらに、入力された仮情報は、口座取引の内容とともに現金自動取引装置10のATM側第1通信部105からホストコンピュータ30へ通知される(ステップS316)。 【0044】ホストコンピュータ30に通知された仮情報データは、ホスト側データ保管部302に保管されていた仮情報とホスト側顧客情報照合部300で照合し(ステップS317)、対応する顧客口座情報へ変換する(ステップS318)ことにより、口座取引処理を行う(ステップS319)。 【0045】その後、取引を終了する(ステップS320)とともに、仮情報を削除する(ステップS321)。もちろんホストコンピュータ30においては、事前に仮情報データと顧客口座情報の対応を検証し、ホスト側データ保管部302に保管しておいても構わない。 【0046】以上が、本発明の第1の実施の形態である。従来のシステムではホストコンピュータ側に大幅な改造が必要となるが、本第1の実施の形態のようにすることにより、現金自動取引装置とホストコンピュータ間の電文変更は最小限で済む。」 ウ「【0084】また、上述の各実施の形態を実施する際には、以下のようにすることも可能である。・・・ 【0086】・・・また、仮情報使用の有効期限と有効回数を設けることも可能である。 【0087】これにより、仮情報に有効期限と有効回数を設けることにより、第3者等による不正利用防止のセキュリティを向上させることができる。・・・」 2 引用発明 1に示した引用文献の記載及び関連する図示によれば、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 カードレス取引を行う顧客により行われた要求を取得した仮情報管理サーバが生成して外部ネットワークを介して通知した仮情報を受信した携帯端末装置からBluetooth等を用いて出力されたその仮情報が入力される携帯端末情報通信部を備え、入力された仮情報が照合され、対応する顧客口座情報へ変換されることにより、ホストコンピュータにおける口座取引処理を行う、現金自動取引装置。 第4 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「外部ネットワーク」、「携帯端末装置」及び「仮情報管理サーバ」は、それぞれ本願発明の「ネットワーク」、「通信端末」及び「第1情報処理装置」に相当する。 引用発明の「Bluetooth等を用い」た携帯端末情報通信部と携帯端末装置との通信は、「HF帯RFID」を用いる旨は明示されていないものの、電波を用いた近距離の直接通信である点で、本願発明の「HF帯RFIDを用いた直接通信」に対応する。 引用発明の「仮情報」は、「固定情報」である旨は明示されていないものの、「電波を用いた近距離の直接通信により受信される情報」である点で、本願発明の「固定情報」に対応しており、さらに、引用発明は、入力された仮情報が照合されホストコンピュータにおける口座取引処理を行う、現金自動取引装置であるから、この「電波を用いた近距離の直接通信により受信される情報」に基づいて、「現金」という財物を提供可能な状態に置く「提供装置」であるといえる。 してみると、本願発明と引用発明とは、 <一致点> ネットワークを介して通信端末が第1情報処理装置から受信した情報を、前記通信端末との電波を用いた近距離の直接通信によって受信する受信部と、 前記情報に基づいて財物を提供可能な状態に置く提供部と、 を備える提供装置 で一致し、次の点で相違する。 <相違点1> 情報の受信のための電波を用いた近距離の直接通信が、本願発明では、「HF帯RFIDを用いた直接通信」であるのに対し、引用発明では、Bluetooth等を用いた携帯端末情報通信部と携帯端末装置との通信であって、「HF帯RFIDを用いた直接通信」であると明示されていない点。 <相違点2> 財物を提供可能な状態に置くために、第1情報処理装置から通信端末が受信しさらに提供装置が電波を用いた直接通信によって受信する情報が、本願発明では「固定情報」であるのに対し、引用発明では「仮情報」であって、「固定情報」であると明示されていない点。 第5 相違点の判断 (1)相違点1について HF帯RFIDを用いて近距離の直接通信を行うことは、文献を示すまでもなく、周知である。(もっとも、当審より通知した拒絶理由で引用文献2として示した特開2011-97189号公報の段落【0053】?【0060】にも、携帯通信端末とATMとの間でHF帯RFIDを用いた近距離の直接通信であるNFC通信を用いた通信を行うことが示されている。) そして、引用発明は、携帯端末情報通信部と携帯端末装置との間でBluetooth等の電波を用いた近距離の直接通信を行うものであるから、そのような近距離の直接通信としてこの周知技術を採用し、引用発明において、情報をHF帯RFIDを用いた直接通信によって受信するようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。 (2)相違点2について 引用発明の「仮情報」は、「顧客口座情報とは異なる」とはいえ、口座取引処理にあたって、「対応する顧客口座情報へ変換される」ものであるところ、「第3 1」において上記した引用文献には、「【0045】・・・ホストコンピュータ30においては、事前に仮情報データと顧客口座情報の対応を検証し、ホスト側データ保管部302に保管しておいても構わない。」(上記のイ)、「【0086】・・・また、仮情報使用の有効期限と有効回数を設けることも可能である。【0087】これにより、仮情報に有効期限と有効回数を設けることにより、第3者等による不正利用防止のセキュリティを向上させることができる。」(上記のウ)の記載があり、これらの記載によれば、引用発明の「仮情報」は、一回限りのパスワードであるOTPのような可変情報として生成されるものに限定されていないのであり、引用文献のこれらの記載は、引用発明において生成される「仮情報」を、事前に顧客口座情報との対応が検証されて保管された情報や有効期限や有効回数が設けられた情報(有効期限や有効回数内では顧客口座情報に対応して同じであるような情報)のような固定情報として生成することを示唆するものである。 この点、本願発明における「固定情報」とは、「可変情報」(OTP等の情報)でない情報のことであり、本願明細書(段落【0136】)においても、その意味で用いられているものである。(同段落では、さらに、「固定情報」の例として「口座番号、支店名、および通信ID」が示されているところ、「口座番号、支店名、および通信ID」のような情報を取引に際して通信する際は何らかの符号化や暗号化が行われるのが通常であるから、明細書の記載を参酌しても、本願発明の「固定情報」は何らかの符号化や暗号化に対応した復号のための変換によって「口座番号、支店名、および通信ID」のような情報となるものでもあって、「顧客口座情報とは異なる」ものの口座取引処理にあたって「対応する顧客口座情報へ変換される」ものである引用発明の「仮情報」と実質的に相違しないことになる。) 以上によれば、引用発明における、財物を提供可能な状態に置くために受信する情報である「仮情報」を本願発明の「固定情報」とすることは、引用文献における示唆等に従って当業者が適宜なし得たことである。 (3)本願発明の奏する効果について 本願発明の奏する効果は、引用発明を含む引用文献の記載や周知技術に照らして、当業者が予測し得る範囲のものであり、格別なものでない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許出願前に当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-05-22 |
結審通知日 | 2017-05-23 |
審決日 | 2017-06-05 |
出願番号 | 特願2016-122731(P2016-122731) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 塩田 徳彦 |
特許庁審判長 |
佐藤 智康 |
特許庁審判官 |
相崎 裕恒 石川 正二 |
発明の名称 | 提供装置、情報処理装置、およびプログラム |
代理人 | 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ |