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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1349186
審判番号 不服2018-3904  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-19 
確定日 2019-03-05 
事件の表示 特願2016-148868「サービス提供システム,ネットワークサーバ,プロキシサーバ,プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月15日出願公開,特開2016-212903,請求項の数(6)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年11月13日に出願した特願2012-249725号(以下,「原出願」という。)の一部を平成28年7月28日に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 5月12日付け:拒絶理由通知書
平成29年 7月24日 :意見書,手続補正書の提出
平成29年12月13日付け:拒絶査定(原査定)
平成30年 3月19日 :審判請求書の提出
平成30年10月26日付け:拒絶理由通知書(当審)
平成30年12月27日 :意見書,手続補正書の提出


第2 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は,平成30年12月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
電気通信網を通して通信する利用者端末に、利用者が管理する管理対象に関するサービスを提供する複数のサービス提供部と、
前記サービス提供部と一対一に対応して設けられ、前記サービス提供部を利用する前記利用者に関する利用者情報および前記管理対象に関する管理情報が共通情報として登録された複数の共通情報管理部と、
前記サービス提供部と一対一に対応して設けられ、前記サービスごとに特有な固有情報が登録された複数の個別情報管理部と、
複数の前記サービス提供部を前記利用者端末から選択させる選択処理部と、
前記利用者端末から前記利用者情報を入力させ、かつ前記利用者情報が入力された場合に当該利用者情報を前記共通情報管理部に照合し、前記利用者情報が存在していると、前記選択処理部で選択された前記サービス提供部の利用を許可する受付処理部と、
前記サービス提供部に一対一に対応した発行元識別情報を発行する情報発行部と、
前記共通情報管理部に登録された前記共通情報に識別子を付与し、かつ当該識別子に発行元識別情報を付加する識別情報生成部とを備え、
前記選択処理部で選択された前記サービス提供部は、当該サービス提供部に一対一に対応している前記個別情報管理部の前記固有情報と、前記受付処理部が前記利用者情報を照合した前記共通情報管理部に登録された前記共通情報とを用いて、前記利用者端末に前記サービスを提供する
サービス提供システム。」

なお,本願発明2-6の概要は以下のとおりである。

本願発明2は,本願発明1を減縮した発明である。

本願発明3は,本願発明1の発明特定事項を全て有し,本願発明1のサービス提供システムに用いられるネットワークサーバの発明である。

本願発明4は,本願発明1の発明特定事項を全て有し,本願発明1のサービス提供システムに用いられるプロキシサーバの発明である。

本願発明5は,本願発明1の発明特定事項を全て有する,同じカテゴリの発明である。

本願発明6は,本願発明1の発明特定事項を全て有し,本願発明1のサービス提供システムに用いられるプログラムの発明である。


第3 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由で引用された原出願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2001-306419号公報(平成13年11月2日出願公開。以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。)。

「【0018】図1は本発明によるネットワーク監視システムの基本構成を示すブロック図である。同図において、1はインターネットで、これに中央監視センター2の監視サーバ2a、他の監視センター3の監視サーバ3a、利用者施設4内の監視対応機器、および管理センター5のコンピュータ5aが専用線により接続されている。また、監視センター2,3の監視サーバ2a、3aにはそれぞれ監視データを記憶するデータベース2b、3bが接続されている。利用者施設4の監視対象としては、利用者側で監視対象機器4bおよび監視対象サービスを監視するローカルネットワーク監視サーバ4aなどがある。」

「【0020】本サービスは、利用者がホームページでサービスの利用申込みを行い、監視対象機器および監視対象サービスを登録することによって提供される。本サービス開始後は、登録された監視対象機器および監視対象サービスの稼動状況や外部に公開しているホームページの不正な改竄の可能性をネットワーク経由で常時監視し、監視対象機器および監視対象サービスに異常が発生した場合には、サービス申込み時にあらかじめ利用者が登録した異常通報先メールアドレスまたは電話番号先に異常を通報するようになっている。
【0021】また、監視対象機器や監視対象サービスに異常が発生しない場合でも、メールによる監視状況の定期的な報告や、利用者向け専用ホームページによる監視状況に関する統計情報を提供することができる。」

「【0033】デスクトップ画面P31は、本サービスのメインページとなるものであり、ここでは、会員登録、監視対象機器および監視対象サービスの登録、監視状況のレポートなどの機能が実行される。」

「【0035】次に、本システムで提供される機能およびサービスについて説明する。
【0036】(1)試用登録機能
本サービスの試用を希望する利用者に利用者情報(登録組織情報、担当者情報、異常時通報先メールアドレスなど)を登録してもらう機能であり、登録審査が完了した時点で、利用者に会員専用ページ(MyPage)のURLとページにアクセスするためのIDおよびパスワードを電子メールによって発行する。
・・・(中略)・・・
【0038】(3)認証機能
IDとパスワードにより、利用者毎に作成された会員専用ページへのアクセスを制御する機能である。
【0039】(4)会員登録機能
本サービスの試用期間が満了する前に正式なサービスを希望する利用者が会員情報の登録を行う機能であり、会員専用ページから登録を行うことができる。
【0040】(5)監視対象機器および監視対象サービス登録機能
監視対象としたい機器およびサービスを登録する機能であり、会員専用ページで登録を行うことができる。
【0041】(6)監視対象機器および監視対象サービス変更機能
監視対象としたい機器およびサービスを変更する機能であり、会員専用ページで変更を行うことができる。
・・・(中略)・・・
【0043】(8)監視状況レポート機能
監視対象機器の動作およびサービスの稼動状況を、会員専用ページと電子メールを利用してレポートする機能である。」

(2)上記記載から,引用文献1には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。

ア ネットワーク監視システムは,中央監視センターの監視サーバ,他の監視センターの監視サーバ,利用者施設内の監視対応機器が,専用線によりインターネットに接続されて構成されている(【0018】)。

イ 中央監視センターや他の監視センターの監視サーバは,利用者施設の監視対象機器および監視対象サービスを監視するものである(【0018】)。

ウ ネットワーク監視システムは,監視サーバにより監視するサービスを提供するものであり(【0020】),また,会員専用ページにより,監視状況に関する統計情報が提供されるものである(【0021】,【0035】,【0043】)。

エ ネットワーク監視システムにおいて,利用者は,上記監視するサービスを利用する際に,異常時通報先メールアドレスなどの利用者情報を登録し,この際に,会員専用ページにアクセスするためのIDおよびパスワードが発行される(【0035】,【0036】,【0039】)。
また,利用者は,監視対象としたい機器およびサービスを登録・変更することができる(【0035】,【0040】,【0041】)。

オ 複数の監視サーバには,それぞれ監視データを記憶するデータベースが接続されている(【0018】)。

カ 利用者が会員専用ページにアクセスする際には,利用者毎に作成されたIDとパスワードにより認証が行われアクセスが制御される(【0035】,【0036】,【0038】)。

キ 監視対象機器および監視対象サービスの監視状況を,利用者情報として登録された異常時通報先メールアドレスを用いて電子メールにより利用者にレポートする。(【0021】,【0035】,【0036】,【0043】)。

(3)上記(1),(2)から,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 会員専用ページにより利用者に,利用者施設の監視対象機器及び監視対象サービスを監視サーバにより監視するサービスを提供するネットワーク監視システムであって,
前記会員専用ページを利用する前記利用者の異常時通報先メールアドレスなどの利用者情報が登録されており,
利用者は,監視対象となる機器及びサービスを登録・変更することができ,
複数の監視サーバには,それぞれ監視データを記憶するデータベースが接続されており,
前記利用者には,前記利用者情報の登録の際にID及びパスワードが発行され,
前記利用者が前記会員専用ページにアクセスする際には,前記ID及びパスワードにより認証が行われアクセス制御が行われ,
前記監視対象機器および監視対象サービスの監視状況を,利用者情報として登録された異常時通報先メールアドレスを用いて電子メールにより利用者にレポートする
ネットワーク監視システム。」

2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由で引用された原出願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2009-140508号公報(平成21年6月25日出願公開。以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。)。

「【0011】
この実施形態の電子マネーシステム1は、インターネットNに、電子マネー管理システムの一例となる電子マネー管理サーバ10を配備し、この電子マネー管理サーバ10で、入金管理処理、精算管理処理、情報照会処理を含む電子マネー及びそれに対応する金銭的価値の流通に関わる一切の情報処理を行う。
電子マネー管理サーバ10には、この情報処理の結果情報に基づく付随的な管理機構、例えば金銭的価値の代表例である現金の回収、精査、振り分け、集計等を行うための機構も設けられている。
インターネットNには、電子マネーのイシュアに配備されるイシュアサーバ20、電子マネー補充手段の一例となる入金端末装置30、主幹銀行口座管理コンピュータ40、電子マネー減額手段の一例となる加盟店端末装置50、個人ユースの家庭用端末装置60、クレジットカードを発行したクレジットカード会社が有する与信システムやキャッシュカードを発行した銀行が締結する複数銀行間取引システムのような各種コンピュータシステム(以下、「銀行等システム」)70が接続ないし接続可能とされている。
「家庭用端末装置」という場合、事業所において個人的用途で使用する情報処理端末やPDA等の携帯端末を含むものとする。
入金端末装置30、加盟店端末装置50、家庭用端末装置60は、それぞれ必要に応じて複数の場所に設置され、適宜、その増減が可能なものである。
【0012】
イシュアサーバ20は、複数のイシュアの各々に配備されるもので、それぞれそのイシュアが発行した電子マネーの発行高その他の電子マネーに関する情報を管理している。
但し、電子マネーの発行に対する現金の支払いを管理さえできれば本発明の実施は可能なので、電子マネーについての管理の形態は任意であってよい。
各イシュアは、電子マネーのほかに、その電子マネーを記録するための記録媒体、例えばICチップを搭載した可搬性の記録媒体の一例となるユーザカードを発行している。
ユーザカードは、原則として、一つのイシュアから一枚発行される。但し、本発明を実施する上で、すべてのイシュアがそれぞれ独自のユーザカードを発行する必要はなく、いずれかのイシュアが発行した一枚のユーザカードであってもよい。ユーザカードは、電子マネーを記録するだけのいわゆる電子財布として機能するだけであり、電子マネーを用いた取引の際にその電子マネーのイシュアを識別するためのイシュアIDが記録されればよいので、ユーザカードは、1枚でも足りるのである。」

「【0018】
図2は、ユーザカードの一例を示した図である。
このユーザカードUCは、ICチップ内に形成された、CPU(Central Processing Unit)によって構成される制御部1001、ROM(Read Only Memory)1002、RAM(Random Access Memory)1003、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)1004と、カード媒体上に形成されたカード通信インターフェース1005とを有する。
カード通信インターフェース1005は、ユーザカードUCが接触式ICカードの場合は電気接点、非接触ICカードの場合には送受信用のアンテナとなる。 EEPROM1004には、図3のように、識別情報B01、ファイル及びディレクトリの定義情報B02、ファイルへのアクセスキーB03等の管理情報と、電子マネーの残高を表す残高データB04と、電子マネーの利用履歴(リカバリに関わるものを含む)を表すログデータB05と、ユーザに関するユーザデータB06等が記録されるようになっている。
識別情報B01は、図4に示すように16桁の数字からなり、最初の4桁が電子マネーのイシュアを識別するためのイシュアID、次の4桁がカードを発券した組織体を識別するためのカード発券体ID、次の8桁がそのICカードに固有のシリアル番号となる。カード発券体IDとシリアル番号との組によってカードIDとして扱われる。」

(2)上記記載から,引用文献2には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。

ア 電子マネーシステムにおいて,イシュアは,電子マネーを記録するための記録媒体となるユーザカードを発行する(【0011】,【0012】)。

イ ユーザカードのカードIDは,カードを発券した組織体を識別するためのカード発券体IDとICカードに固有のシリアル番号の組によって構成される(【0018】)。

(3)上記(1),(2)から,引用文献2には,次の技術的事項が記載されていると認められる。

「 電子マネーシステムにおいて電子マネーの記録媒体として発行されるユーザカードのカードIDを,カードを発券した組織体を識別するためのカード発券体IDとICカードに固有のシリアル番号の組によって構成すること。」

3 引用文献3について
(1)原査定の拒絶の理由で引用された原出願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2003-323492号公報(平成15年11月14日出願公開。以下,「引用文献3」という。)には,図面とともに,次の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。)。

「【0022】
【発明の実施の形態】以下に本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。図1は本発明の実施の形態に係る医療・福祉関係サービス支援システムの概念図を示している。この医療・福祉関係サービス支援システム10は、医療や福祉に関連する複数のサービス提供機関がシステムに加入し、加入しているサービス提供機関を利用した利用者の履歴情報をデータセンタ60に設置された利用者管理サーバ20で統一的に管理し、全ての機関で履歴情報を共有して利用できるようにしたものである。医療・福祉関係サービス支援システム10の構成は、サービス提供機関の利用者の受診履歴や介護,看護履歴などの履歴情報を管理する利用者管理システム20と、利用者管理サーバ20にネットワーク30を通して交信可能な端末装置40と、利用者が所有する携帯式の識別カードとしてのIDカード50を備えている。IDカード50には、端末装置40にて読込可能な利用者の識別情報IDが付されている。識別情報IDとしてはID番号が用いられる。ID番号は、数字に限らずアルファベット等の文字、各種記号が含まれる。」

「【0050】IDカードは、用途に応じて各種カードを作成することができる。たとえば、外来受診用の診察券、ドック・健診用の健診カードとして作成してもよいし、いずれにも使える保険証カードとして作成してもよいし、あるいは病院と提携した会社の社員証として作成することも可能である。たとえば、本システムに参加した医療機関であれば、ある病院で作成した受診カードで、他の病院の外来受診が可能であるし、検診,ドックも受けられる。また、カードは、各病院で外来の診察カードと検診カードの両方のカードを作成してもよいし、病院毎に複数枚発行してもよい。複数枚発行する場合には、利用者固有の識別番号に各病院,施設のコードが付され、区別できるようになっている。バーコード情報bには、b-1)ID番号、b-2)IDカード種別が記録され、磁気情報aには、a-1)会員情報(たとえば支払いカード種別(クレジットカード))、a-2)IDカード種別、a-3)ID番号(会員番号)、a-4)その他会員情報として、健康保険証の記号・番号、被保険者氏名、生年月日、性別、本人/家族の区分、血液型(ABO式・Rh式)、IDカード発行年月日等が登録される。IDカード種別は、たとえば、受診カード,健診カード,社員証、保険証カード等の別である。クレジット番号は、クレジットカードによるカード決済を希望する場合に登録されるものである。IDカードは、新規登録時に各病院で発行される。」

(2)上記記載から,引用文献3には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。

ア 医療・福祉関係サービス支援システムを構成するIDカードは,利用者が所有する携帯式識別カードであり,利用者の識別情報IDが付されている(【0022】)。

イ IDカードは,複数枚発行される場合には,区別できるように,利用者固有の識別番号にカードを発行した病院等のコードが付されている(【0050】)。

(3)上記(1),(2)から,引用文献3には,次の技術的事項が記載されていると認められる。

「 医療・福祉関係サービス支援システムにおいて,病院等が発行した利用者の識別番号が付与されたIDカードに対し,区別できるように,利用者固有の識別番号に発行した病院等のコードを付すこと。」


第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「利用者施設の監視対象機器及び監視対象サービス」は,本願発明1の「利用者が管理する管理対象」に相当し,引用発明の「利用者施設の監視対象機器及び監視対象サービスを監視サーバにより監視するサービス」は,本願発明1の「利用者が管理する管理対象に関するサービス」に相当する。
また,引用発明の「ネットワーク監視システム」は,「会員専用ページにより利用者に,」「監視するサービスを提供する」ものであるところ,原出願の出願前の技術常識に鑑みれば,当該会員専用ページを提供するためのウェブサーバ等を備えているものと解され,また,利用者は,会員専用ページにアクセスするために端末を利用しており,当該会員専用ページへのアクセスはインターネット等の「電気通信網を通して」行っているものと解されるものである。
してみれば,引用発明の会員専用ページを提供するための上記「ウェブサーバ等」は,「電気通信網を通して通信する利用者端末に、利用者が管理する管理対象に関するサービスを提供する」点において,本願発明1の「サービス提供部」に一致するといえる。
したがって,上記「ウェブサーバ等」を備えると解される引用発明の「ネットワーク監視システム」は,「サービス提供部と、」「を備え」る点において,本願発明1の「サービス提供システム」に一致するといえる。

(イ)引用発明の「ネットワーク監視システム」は,利用者の異常時通報先メールアドレスなどの利用者情報が登録されているものであるから,当該利用者情報を登録するための登録部(以下,「利用者情報登録部」という。)を当然に備えていると解される。
また同様に,引用発明の「ネットワーク監視システム」は,監視対象となる機器及びサービスを登録・変更することができるものであるから,当該監視対象となる機器及びサービスに関する情報を登録するための登録部(以下,「監視対象情報登録部」という。)を当然に備えていると解される。
そして,引用発明の上記「利用者の異常時通報先メールアドレスなどの利用者情報」及び「監視対象となる機器及びサービスに関する情報」は,それぞれ本願発明1の「利用者に関する利用者情報」及び「管理対象に関する管理情報」に相当するから,引用発明の上記「利用者情報登録部」及び「監視対象情報登録部」と本願発明1の「共通情報管理部」は,「前記サービス提供部を利用する前記利用者に関する利用者情報および前記管理対象に関する管理情報が」「登録された」ものである点において,一致する。
したがって,上記「利用者情報登録部」及び「監視対象情報登録部」を備えると解される引用発明の「ネットワーク監視システム」は,「共通情報管理部と、」「を備え」る点において,本願発明1の「サービス提供システム」に一致するといえる。

(ウ)引用発明の「監視データ」は,監視対象機器および監視対象サービスの監視状況に関するデータであると解され,引用発明の監視するサービスに特有な情報であるといえるから,本願発明1の「固有情報」に相当するといえる。
よって,引用発明の「データベース」と本願発明1の「個別情報管理部」とは,「前記サービスごとに特有な固有情報が登録された」ものである点において,一致するといえる。
また,引用発明の「データベース」は,複数の監視サーバのそれぞれに接続されることから,引用発明の「ネットワーク監視システム」には当該「データベース」が複数存在するものと認められる。
したがって,上記「データベース」を複数備える引用発明の「ネットワーク監視システム」と本願発明1の「サービス提供システム」とは,「前記サービスごとに特有な固有情報が登録された複数の個別情報管理部と、」「を備え」る点において,一致するといえる。

(エ)引用発明の「ID」及び「パスワード」は,利用者情報の登録の際に利用者に対して発行されるものであり,当該利用者の会員専用ページへのアクセス制御に用いられるものであるから,引用発明の「ネットワーク監視システム」においては,登録される前記利用者情報の一つとして上記「利用者情報登録部」に登録・管理されていると解するのが自然である。
また,引用発明の「ネットワーク監視システム」においては,上述のとおり,利用者が会員専用ページにアクセスする際に前記「ID」及び「パスワード」により認証が行われアクセス制御が行われることから,当該認証を行うに際し,利用者端末から利用者情報の一つである前記「ID」及び「パスワード」が入力され,当該入力された利用者情報を前記利用者情報登録部に照合し,当該利用者情報が存在している場合に,会員専用ページへのアクセスを許可しているものと解される。さらに,当該認証及びアクセス制御を行う処理部も当然に引用発明の「ネットワーク監視システム」に存在しているものと解される。
そして,引用発明において会員専用ページへのアクセスを許可することは,本願発明1における「前記サービス提供部の利用を許可する」ことに相当するから,引用発明の上記「処理部」と本願発明1の「受付処理部」とは,「前記利用者端末から前記利用者情報を入力させ、かつ前記利用者情報が入力された場合に当該利用者情報を前記共通情報管理部に照合し、前記利用者情報が存在していると、前記サービス提供部の利用を許可する」点において,一致する。
したがって,上記「処理部」を備えると解される引用発明の「ネットワーク監視システム」と本願発明1の「サービス提供システム」とは,「前記利用者端末から前記利用者情報を入力させ、かつ前記利用者情報が入力された場合に当該利用者情報を前記共通情報管理部に照合し、前記利用者情報が存在していると、前記サービス提供部の利用を許可する受付処理部と、」「を備え」る点において,一致する。

(オ)引用発明の「ID」は,本願発明1の「識別子」に相当する。
また,引用発明の「ID」は,利用者情報の登録の際に利用者に対して発行されるものであるから,引用発明の「ネットワーク監視システム」は,当然に当該IDを発行する発行部を備えているものと解される。
そして,前記(エ)で検討したとおり,引用発明の「ID」は,登録される利用者情報の一つとして上記利用者情報登録部に登録・管理されていると解されることから,上記「発行部」は,前記利用者情報登録部に登録された前記利用者情報に当該IDを付与するものであるといえる。
してみれば,引用発明の上記「発行部」と本願発明1の「識別情報生成部」とは,上位概念において,「前記共通情報管理部に登録された情報に識別子を付与する」点で一致するといえる。
よって,上記「発行部」を備えると解される引用発明の「ネットワーク監視システム」と本願発明1の「サービス提供システム」とは,上位概念において,「前記共通情報管理部に登録された情報に識別子を付与する識別情報生成部とを備え」る点で一致するといえる。

(カ)引用発明の上記「ウェブサーバ等」は,会員専用ページを通じて利用者に提供する上記「監視するサービス」として,「監視対象機器および監視対象サービスの監視状況を,利用者情報として登録された異常時通報先メールアドレスを用いて電子メールにより利用者にレポートする」ものである。
これに対し,前記(イ)で検討したとおり,引用発明の上記「利用者の異常時通報先メールアドレスなどの利用者情報」は,本願発明1の「利用者に関する利用者情報」に相当し,また,前記(ウ)で検討したとおり,引用発明の上記「監視対象機器および監視対象サービスの監視状況」は,引用発明の上記「監視データ」を用いて表されるものであり,当該「監視データ」は本願発明1の「固有情報」に相当するといえる。
よって,引用発明の上記「ウェブサーバ等」と本願発明1の「サービス提供部」とは,上位概念において,「前記個別情報管理部の前記固有情報と、前記受付処理部が前記利用者情報を照合した前記共通情報管理部に登録された情報とを用いて、前記利用者端末に前記サービスを提供する」点で一致する。

イ 以上のことから,本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。

(一致点)
「 電気通信網を通して通信する利用者端末に、利用者が管理する管理対象に関するサービスを提供するサービス提供部と、
前記サービス提供部を利用する前記利用者に関する利用者情報および前記管理対象に関する管理情報が登録された共通情報管理部と、
前記サービスごとに特有な固有情報が登録された複数の個別情報管理部と、
前記利用者端末から前記利用者情報を入力させ、かつ前記利用者情報が入力された場合に当該利用者情報を前記共通情報管理部に照合し、前記利用者情報が存在していると、前記サービス提供部の利用を許可する受付処理部と、
前記共通情報管理部に登録された前記情報に識別子を付与する識別情報生成部とを備え、
前記サービス提供部は、前記個別情報管理部の前記固有情報と、前記受付処理部が前記利用者情報を照合した前記共通情報管理部に登録された前記情報とを用いて、前記利用者端末に前記サービスを提供する
サービス提供システム。」

(相違点)
(相違点1)
本願発明1の「サービス提供システム」は,サービス提供部を複数備え,当該複数の前記サービス提供部を利用者端末から選択させる選択処理部を備えるのに対し,引用発明は,そのような特定がなされていない点。

(相違点2)
本願発明1の「共通情報管理部」は,複数備えられており,サービス提供部と一対一に対応して設けられているのに対し,引用発明は,そのような特定がなされていない点。

(相違点3)
本願発明1の「共通情報管理部」は,利用者情報及び管理情報が「共通情報として」登録されているのに対し,引用発明は,そのような特定がなされていない点。

(相違点4)
本願発明1の「個別管理情報部」は,サービス提供部と一対一に対応して設けられているのに対し,引用発明は,そのような特定がなされていない点。

(相違点5)
本願発明1の「識別情報生成部」は,共通情報管理部に登録された情報である共通情報に付与された識別子に,情報発行部により発行されたサービス提供部に一対一に対応した発行元識別情報を付加するのに対し,引用発明は,そのような特定がなされていない点。

(相違点6)
本願発明1のサービス提供部が利用者端末に前記サービスを提供する際に用いる「前記受付処理部が前記利用者情報を照合した前記共通情報管理部に登録された前記情報」は「共通情報」であるのに対し,引用発明は,そのような特定がなされていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて,上記相違点2について先に検討すると,上記相違点2に係る本願発明1の,「共通情報管理部」は「複数備えられており,サービス提供部と一対一に対応して設けられている」という構成(以下,「相違構成」という。)は,上記引用文献2-3のいずれにも記載されておらず,当業者にとって自明な事項でもない。
また,引用発明に上記引用文献2-3に記載の技術的事項のいずれを適用しても,本願発明1の上記相違構成を想到することは適宜なし得たとすることもできない。
したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2は,本願発明1を減縮した発明であり,よって,本願発明1の上記相違構成と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明3について
本願発明3は,本願発明1の発明特定事項を全て有し,本願発明1のサービス提供システムに用いられるネットワークサーバの発明であり,よって,本願発明1の上記相違構成と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 本願発明4について
本願発明4は,本願発明1の発明特定事項を全て有し,本願発明1のサービス提供システムに用いられるプロキシサーバの発明であり,よって,本願発明1の上記相違構成と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5 本願発明5について
本願発明5は,本願発明1の発明特定事項を全て有する,同じカテゴリの発明であるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

6 本願発明6について
本願発明6は,本願発明1の発明特定事項を全て有し,本願発明1のサービス提供システムに用いられるプログラムの発明であり,よって,本願発明1の上記相違構成と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


第5 原査定の概要及び原査定についての判断
(特許法第29条2項について)
原査定は,請求項1-6について上記引用文献1-3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとしたものである。
しかしながら,平成30年12月27日付け手続補正により補正された請求項1-6に係る発明は,それぞれ前記「第4」で検討した相違点2に係る上記相違構成と同一の構成を備えるものであるから,上記のとおり,本願発明1と同じ理由により,上記引用発明及び上記引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。


第6 当審拒絶理由について
1 特許法第36条第6項第1号について
当審では,請求項1-6について,当該請求項に係る発明には,「共通情報管理部」がシステム全体に対してただ一つ設けられたものも含まれていると認められるが,そのような実施形態については発明の詳細な説明にはなんら記載がない,との拒絶の理由を通知しているが,平成30年12月27日付け手続補正により特許請求の範囲の記載が補正された結果,この拒絶の理由は解消した。

2 特許法第36条第4項第1号について
当審では,請求項1-6について,当該請求項に係る発明の「前記共通情報管理部に登録された前記共通情報に識別子を付与し,かつ当該識別子に(前記サービス提供部に一対一に対応した)発行元識別情報を付加する」処理に関し,システム全体に対してただ一つ設けられた「共通情報管理部」に登録された共通情報に付与された識別子のいずれに対して,複数存在する発行元識別情報のいずれを付加するのかについて,発明の詳細な説明の記載から具体的に把握することができない,との拒絶の理由を通知しているが,平成30年12月27日付け手続補正により特許請求の範囲の記載が補正された結果,この拒絶の理由は解消した。

3 特許法第29条第1項第3号,同条第2項について
当審では,本願は出願の分割の要件を満たしていないことから,出願日の遡及は認められず,請求項1-6に係る発明は,本願の出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物である特開2014-99000号公報(平成26年5月29日出願公開。)に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,また,当該刊行物に記載された発明に基づいて,当業者であれば容易になし得たものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない,との拒絶の理由を通知しているが,平成30年12月27日付け手続補正により特許請求の範囲の記載が補正された結果,本願は出願の分割の要件を満たすことになったことから,本願の出願日は原出願の出願日である平成24年11月13日に遡及することとなり,上記刊行物は,本願の出願前に日本国内又は外国において頒布されたものではなくなったため,これらの拒絶の理由は解消した。


第7 むすび
以上のとおり,本願発明1-6は,当業者が引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-02-15 
出願番号 特願2016-148868(P2016-148868)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 113- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 漆原 孝治  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 ▲はま▼中 信行
須田 勝巳
発明の名称 サービス提供システム、ネットワークサーバ、プロキシサーバ、プログラム  
代理人 特許業務法人北斗特許事務所  

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