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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1349241
審判番号 不服2017-17123  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-20 
確定日 2019-03-12 
事件の表示 特願2013- 45214「太陽電池パネルの敷設構造」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月22日出願公開、特開2014-175391、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年3月7日の出願であって、平成27年10月30日に出願審査請求がなされ、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。

平成28年 8月30日:拒絶理由通知(9月6日発送)
同年10月31日:手続補正書・意見書の提出
平成29年 2月27日:拒絶理由通知(3月7日発送)
同年 4月26日:意見書の提出
同年 9月20日:拒絶査定(10月3日送達)
同年11月20日:審判請求書
平成30年 9月20日:拒絶理由通知(9月25日発送)
同年11月15日:手続補正書・意見書の提出
同年11月27日:拒絶理由通知(12月4日発送)
平成31年 1月24日:手続補正書・意見書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成31年1月24日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、その本願発明は以下のとおりの発明である。
なお、下線は当審で付した。以下同じ。

「【請求項1】
太陽電池モジュールの周縁に枠体を配した太陽電池パネルを屋根上に敷設してなる敷設構造であって、
前記枠体は、前記太陽電池モジュールの四つの辺に配する屋根面の流れ方向の上側枠、下側枠、左右の側方枠からなり、屋根面の流れ方向の上側枠、下側枠、左右の側方枠は、それぞれ、前記太陽電池モジュールの側縁を支持する支持部と下方へ垂下する側面部とを備え、屋根面の流れ方向の上側枠及び下側枠の側面部が、左右の側方枠の側面部より低く、
隣り合う太陽電池パネルを、離間状に配設して離間部分における水下側に前記屋根面の流れ方向の上側枠を位置させて敷設すると共に当該上側枠には上方へ突出する起立部を設けたことを特徴とする太陽電池パネルの敷設構造。」

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献5について
(1)原査定の拒絶の理由において、主引用例として引用された引用文献5(特表2002-514279号公報)には、図面とともに以下の記載がある。

ア 「【特許請求の範囲】
1. 下記のものから構成される、建物表面に取り付けるための、通気中空部付き放射バリヤ・アセンブリ、
内表面と外表面とを有するバリヤ、
前記バリヤに固定されるとともに前記内表面から内方に延出する支持アセンブリ、前記支持アセンブリは、前記内表面から離間し建物表面に固定されて該内表面の近傍に通気中空部を形成することが可能な部分を有する、及び
前記内表面側の低放射率エレメント。
2. 前記バリヤが光起電モジュールである請求項1記載のアセンブリ。
3. 前記バリヤが断熱パネルである請求項1記載のアセンブリ。
4. 前記支持アセンブリが前記内表面に取り付けられる請求項1記載のアセンブリ。
5.前記低放射率エレメントが前記内表面上のコーティングである請求項1記載のアセンブリ。」(第2頁)

イ 「発明の概要
本発明は、通気中空部付き放射バリヤ・アセンブリに関し、そのバリヤとしては光起電(PV)モジュールを使用することが特に有用であり、これは、冷房期間においては建物内への熱移動を低減し、暖房期間においては建物から外部への熱損失を低減することによって、建物の冷暖房の必要量を低減させる。この放射バリヤ・アセンブリは、風雨その他の条件による影響から建物表面を遮断するのにも役立つ。本発明は、鉛直の、水平の又は傾斜した建物表面に適用可能である。
通気中空部付き放射バリヤ・アセンブリは、典型的にはPVモジュールからなっていて、内表面と外表面とを備えたバリヤを有する。支持アセンブリが前記バリヤに固定され、該バリヤの内表面から建物表面へ内方に延出し、建物表面とバリヤ内表面との間に通気中空部を形成する。前記内表面側には、低放射率(low-e)エレメントが取り付けられる。すなわち、単数又は複数の低放射率の表面が、建物表面、バリヤの内表面、又は両表面の間に配置される。」(第7頁後段ないし第8頁上段)

ウ 「好適実施例の説明
図1及び図2は、種々の建物表面4、特には建物10の屋根6及び壁8に取り付けられた多数の通気中空部付き放射バリヤ・アセンブリ2を示す。アセンブリ2は、図2に示すように、支持アセンブリ14によって建物表面4の上方に取り付けられた、通常はPVモジュールか又は硬質耐候性パネルからなるバリヤ12を有する。」(第12頁後段)

エ 「図1、図1A及び図2の簡略化された実施例においては、支持アセンブリ14が4つの支持部材16からなり、これらがバリヤ12の内表面18に固定され、かつ、ここから下方に離間して延出する。これらの支持部材16は建物表面4にも固定されているが、後に詳述するように、通常は建物表面4を貫通していない。」(第13頁上段)

オ 「アセンブリ2は、建物表面4とバリヤ12の内表面18との間に通気中空部24を形成している。通気中空部24は、バリヤ12と建物表面4との間の自由な空気の流れ、従って、矢印26で示すような冷却空気流の流通を許容する。通気中空部24は、好ましくは、約1.2cmないし10cm(1/2インチないし4インチ)、より好ましくは約4.8cm(1.9インチ)の高さを有する。通気中空部24は、図1、図1A及び図2の実施例では、中空部入口28と中空部出口30との間において略均一な高さを有する。図1及び図1Aの実施例では、中空部出口30が中空部入口28よりも高位に設けられ、通気中空部24を通る冷却空気流の誘導を助ける。このようなことは、図1に示すようにアセンブリ2が鉛直壁8又は傾斜屋根6に取り付けられている場合には、自然に達成される。」(第13頁後段ないし第頁中段)

カ 図1は、次のものである。


キ 図1Aは、次のものである。


ク 図2は、次のものである。


(2)引用文献5に記載された発明
ア 上記(1)ア及びイの記載からして、引用文献5には、
「内表面と外表面とを有する光起電モジュールと、
前記光起電モジュールの内表面に取り付けられた支持アセンブリとを備え、
前記光起電モジュールの内表面上には低反射率のコーティングがなされ、
前記支持アセンブリは、前記内表面から離間し建物表面に固定されて該内表面の近傍に通気中空部を形成することが可能な部分を有する、
通気中空部付き光起電モジュールアセンブリ。」が記載されているものと認められる。

イ 上記(1)ウ及びエの記載を踏まえて、図を見ると、以下のことが把握できる。
(ア)上記アの「通気中空部付き光起電モジュールアセンブリ」は、「建物の屋根」に取り付けられるものであること。
(イ)上記アの「支持アセンブリ」は、矩形であって、建物の屋根に固定することのできる4つの支持部材を備えていること。

ウ 上記(1)オの記載を踏まえて、図を見ると、
上記アの「通気中空部」は、
(建物の屋根の)水下側の中空部入口28と水上側の中空部出口30との間において、略均一な高さを有し、冷却空気流の流通を許容することが理解できる。

エ 上記アないしウからして、引用文献5には、次の「通気中空部付き光起電モジュールアセンブリ」が記載されていると認められる。

「内表面と外表面とを有する光起電モジュールと、
前記光起電モジュールの内表面に取り付けられる矩形の支持アセンブリとを備え、
前記光起電モジュールの内表面上には低反射率のコーティングがなされ、
前記支持アセンブリは、建物の屋根に固定されて該内表面の近傍に通気中空部を形成することが可能な支持部材を有し、
前記通気中空部は、水下側の中空部入口と水上側の中空部出口との間において、略均一な高さを有し、冷却空気流の流通を許容する、
通気中空部付き光起電モジュールアセンブリ。」

オ また、図から、
上記エの「(複数の)通気中空部付き光起電モジュールアセンブリ」は、建物の屋根に沿って離間状に配設されることが把握できる。

カ 以上の検討によれば、引用文献5には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「通気中空部付き光起電モジュールアセンブリを、建物の屋根に沿って離間状に配設した構造であって、
前記光起電モジュールアセンブリは、内表面と外表面とを有する光起電モジュールと、前記光起電モジュールの内表面に取り付けられる矩形の支持アセンブリとを備え、
前記光起電モジュールの内表面上には低反射率のコーティングがなされ、
前記支持アセンブリは、前記建物の屋根に固定されて該内表面の近傍に通気中空部を形成することが可能な支持部材を有し、
前記通気中空部は、水下側の中空部入口と水上側の中空部出口との間において、略均一な高さを有し、冷却空気流の流通を許容するものである、通気中空部付き光起電モジュールアセンブリを、前記建物の屋根に沿って離間状に配設した構造。」

2 引用文献1(米国特許出願公開第2005/0263181号明細書)について
(1)原査定の拒絶の理由において、副引用例として引用された引用文献1には、図面とともに以下の記載がある(翻訳文は、当審が作成した。)。

ア 「15 . A frame for cooling and supporting one or more photovoltaic panels comprising:
two generally parallel end elements securing one or more photovoltaic panels; two generally parallel side elements connecting the two generally parallel end elements further securing the one or more photovoltaic panels, the two generally parallel end elements and the two generally parallel side elements forming a generally rectangular frame; and a wing extending or attached from one of the two generally parallel side elements. 」(第3頁右欄)
(日本語訳
15.冷却用および支持用の1つまたはそれ以上の光起電力パネルのフレームであり、
1つまたはそれ以上の光起電力パネルをしっかりと保持する2つの全般的に平行な終端素子と、
1つまたはそれ以上の光起電力パネルをさらにしっかり保持している2つの全般的に平行な終端素子を連結する、2つの全般的に平行な側面素子で、全般的に長方形のフレームを形成する2つの全般的に平行な終端素子および2つの全般的に平行な側面素子と、
2つの全般的に平行な側面素子の1つからから伸びたまたは取り付けられた翼を含む、フレーム。)

イ 「[0010] In a first aspect, the present disclosure provides a rigid frame for supporting one or more photovoltaic panels, forming at least one ventilation channel between the one or more photovoltaic panels and the support plane. The frame is formed to provide rigid support while eliminating dead air space beneath the panels, and is shaped to encourage airflow across the panels and provide heat transfer from the photovoltaic element.
[0011] In another aspect, the present disclosure provides a rigid frame for supporting one or more photovoltaic panels. The rigid frame may include one or more wing surfaces to promote airflow across the panels and encourage heat transfer from the photovoltaic element in no-wind or low wind conditions. The rigid frame of the present disclosure is shaped to form a venturi between the support plane and the one or more photovoltaic panels. 」
(日本語訳
[0010] 第1の観点において、本公開によって、1つまたはそれ以上の光起電力パネルを支持するための剛なフレームを提供する。これにより、1つまたはそれ以上の光起電力パネルと支持平面との間に、少なくとも1つの換気経路を形成する。パネルの下側の無駄な大気の空間を無くしつつ、剛な支持ができるようフレームが成形され、パネル間の大気流を作り、光起電力素子からの熱輸送ができる形状に作られる。
[0011] もうひとつの観点において、本公開によって、1つまたはそれ以上の光起電力パネルを支持するための剛なフレームを提供する。剛なフレームは、風が全くないかほとんどないような環境において、パネル間の大気流を促進させ、光起電力素子からの熱輸送を促進させるための、1つまたはそれ以上の翼の表面を含む。本公開の剛なフレームは、支持平面と1つまたはそれ以上の光起電力パネル間のベンチュリを形成するよう成形される。)

ウ 「[0028] Referring now to FIG. 3 , in another alternate embodiment, photovoltaic assembly 60 includes cooling frame 62 and one or more photovoltaic panels 64 . Cooling frame 62 includes end elements 16 to connect side elements 68 and form cooling channel 70 between photovoltaic assembly 60 and support plane 66 . Cooling channel 70 may have height 74 which may be altered by varying height 26 of end elements 16 . Wing 72 extends at angle 73 from line 73 L parallel to support surface 66 and may include curvature radius 77 to form venturi 75 leading to cooling channel 70 . Angle 73 and curvature radius 77 may be selected to optimize cooling effect and may use factors such as average wind velocity, peak wind velocity, average wind duration, and others to select angle 73 and curvature radius 77 .」
(日本語訳
ここで図3を参照すると、別の実施形態において、光起電力アセンブリ60は、冷却フレーム62および1つまたはそれ以上の光起電力パネル64を含む。冷却フレーム62は、側面素子68に接続し、光起電力アセンブリ60と支持平面66との間にある冷却経路70を形成するための終端素子16を含む。冷却経路70は高さ74で、これは終端素子16の高さ26を変えることにより変更することができる。翼72は、支持面66に平行な線73Lから角度73で広がっており、冷却経路70に続くベンチュリ75を形成するための曲率半径77を含む。角度73および曲率半径77は、冷却効果を最適化するために選択され、角度73および曲率半径77を選択するために、平均風速、最大風速、風の平均持続時間、その他などの多くの因子が用いられている。)

エ 「[0033] Referring now to FIG. 7 , in a further alternate embodiment of the present disclosure, side elements 114 may incorporate straight wing 116 as shown in FIG. 6 , or curved wing 118 as shown in FIG. 7 . Wings 116 , 118 or add on wings such as wing 90 may further incorporate vent holes 120 or any other suitable aerodynamic adaptation to optimize the cooling effect of the wings.」
(日本語訳
ここで図7を参照すると、本公開のさらに別の実施形態において、側面素子114は、図6に示したようなまっすぐな翼116、あるいは図7に示したような曲がった翼118を組み込んでいる。翼116、118あるいは翼90のような追加の翼は、さらに空気穴120を含むか、翼の冷却効率を最適化するためのその他の適切な空気力学的な改修を取り込んでいる。)

オ 「[0036] Referring now to FIG. 10 , photovoltaic frame 121 of FIG. 7 is illustrated in a situation with prevailing wind 134 . Vent holes 120 may be included through wing 118 parallel to prevailing wind 134 to permit a portion, or zephyr 136 , of prevailing wind 134 to flow through wing 118 improving cooling of photovoltaic panel 123 . In the illustrated embodiment of the present disclosure, photovoltaic panel 123 is parallel to support surface 125 . It may be beneficial to slope the combined frame 121 and photovoltaic panel 123 with side 127 or side 129 closer to support surface 125 than side 129 or side 127 respectively. The slope may also be provided end to end instead of, or in addition to sloping from side to side.」
(日本語訳
ここで図10を参照すると、図7の光起電力フレーム121は、流れる風134の状況において図示されている。流れる風134の一部または微風136が、光起電力パネル123の冷却を向上させる翼118を通って流れるよう、空気穴120は、流れる風134に平行な翼118を貫通して含まれている。図示されている本公開の実施形態において、光起電力パネル123は、支持面125に平行である。支持面125のために、側面129あるいは側面127よりもそれぞれより近い側面127または側面129と、組み合わされたフレーム121および光起電力パネル123に傾斜をつけることは効果がある。この傾斜は、側面から側面への傾斜の代わりに、あるいはそれに加えて、端面から端面につけることもできる。)

カ 図10は、以下のものである。


(2)引用文献1に記載された技術事項
ア 上記(1)アの記載からして、引用文献1には、
「光起電力パネルを支持する長方形のフレームの平行な側面の一つに翼を取り付けたフレーム。」が記載されているものと認められる。

イ 上記(1)イないしオの記載を踏まえて、図10を見ると、以下のことが理解できる。
上記アの「翼」は、(屋根などの)支持面と光起電力パネルとの間にベンチュリを形成し、風が全くないかほとんどないような環境において、大気流を促進させ、熱輸送を促進させるためのものであること。

ウ 上記ア及びイより、引用文献1には、次の技術事項(以下「引用文献1に記載の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。

「光起電力パネルを支持する長方形のフレームの平行な側面の一つにベンチュリを形成するための翼を取り付けることにより、
風が全くないかほとんどないような環境において、大気流を促進させ、熱輸送を促進させることのできること。」

3 引用文献2(特開2011-117168号公報)について
(1)原査定の拒絶の理由において、周知技術を示す文献として引用された引用文献2には、図面とともに以下の記載がある。

ア 「【請求項1】
ソーラパネルの屋根上設置設備であって、屋根上に装着されている瓦或いはトタン板等に対して屋根傾斜の下流側から挿入して該瓦或いはトタン板等を挟持する複数の屋根止め金具を備え、該複数の屋根止め金具の隣接する金具間にレールを渡して固着し、該レールに対して複数のソーラパネル支持ポストを立設させ、該ソーラパネル支持ポストにソーラパネル保持枠を取り付けたことを特徴とするソーラパネルの屋根上設置設備。」

イ 「【0037】
図1は、本発明の実施例であるソーラパネル設置設備の全体構成を示す分解斜視図である。図1中の10A,10B,10Cは、瓦やトタン板等の傾斜屋根に対して用いられる夫々3種類の屋根止め金具であり、10Aは下側端屋根止め金具、10Bは中間部屋根止め金具、10Cは上端部屋根止め金具である。図1中の30は、各屋根止め金具10A,10B,10Cに各々装着される受けレールである。図1中の50はソーラパネル支持ポストであり、その下部は受けレール30,30に対してアンダー金具61(詳細後述)によって立設して固定され、上部はアッパー金具51(詳細後述)によってソーラパネル70,70を挟持して取り付け固定される。」

ウ 「【0050】ソーラパネルを保持するソーラパネル保持枠71の裏面外観を図8に示す。ソーラパネル保持枠71は、その表面に大きく開いたソーラパネル開口部72を有し、リブ74によって、ソーラ発電モジュール(図8には図示なし)を固定する。ソーラパネル保持枠71の裏面には、ソーラパネル取り付け用の取付け開孔73,73・・・が形成されている。この取付け開孔73の数と間隔はソーラパネルのメーカや型番によっても相違する。図7の実施例では片側に4個の取付け開孔73,73・・・が形成されたものを図示している。しかしながら、これらの数は発明を限定するものではない。」

エ 図1は、次のものである。


オ 図8は、以下のものである。


(2)引用文献2に記載された技術事項
ア 上記(1)アの記載からして、引用文献2には、
「ソーラパネルの屋根上設置設備として用いる、ソーラパネル保持枠。」が記載されているものと認められる。

イ 上記(1)イ及びウの記載を踏まえて、図を見ると、
上記アの「ソーラパネル保持枠」は、
矩形であって、その表面に大きく開いたソーラパネル開口部7を有し、リブによって、ソーラ発電モジュールを固定し、各辺においてソーラパネル開口部に垂直な側壁を各辺に有し、リブを有する2辺の側壁がリブを有しない2辺の側壁よりも厚さ方向において長いことが理解できる。

ウ したがって、引用文献2には、以下の技術的事項(以下「引用文献2記載の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。

「表面にソーラパネル開口部を有する矩形のソーラパネル保持枠であって、ソーラパネル開口部に垂直な側壁を各辺に有し、リブを有する2辺の側壁がリブを有しない2辺の側壁よりも厚さ方向において長い、ソーラパネル保持枠。」

第4 対比・判断
1 対比
(1)引用発明の「光起電モジュール」は、本願発明の「太陽電池モジュール」に相当する。
以下、同様に、
「矩形の支持アセンブリ」は、「枠体」に、
「光起電モジュールアセンブリ」は、「太陽電池パネル」に、
「建物の屋根」は、「屋根」に、
「通気中空部付き光起電モジュールアセンブリを、建物の屋根に沿って離間状に配設した構造」は、「太陽電池パネルの敷設構造」に、それぞれ、相当する。

(2)引用発明の「矩形の支持アセンブリ」は、「太陽電池モジュールの四つの辺に配する屋根面の流れ方向の上側枠、下側枠、左右の側方枠」を備えていることは、当業者にとって明らかである。

(3)本願発明と引用発明は、次の点で一致する。
<一致点>
「太陽電池モジュールの周縁に枠体を配した太陽電池パネルを屋根上に敷設してなる敷設構造であって、
前記枠体は、前記太陽電池モジュールの四つの辺に配する屋根面の流れ方向の上側枠、下側枠、左右の側方枠からなり、
隣り合う太陽電池パネルを、離間状に配設して離間部分における水下側に前記屋根面の流れ方向の上側枠を位置させて敷設する、太陽電池パネルの敷設構造。」

(4)一方、両者は、少なくとも、以下の点で相違する。
<相違点1>
枠体に関して、
本願発明は、「太陽電池モジュールの側縁を支持する支持部と下方へ垂下する側面部とを備え、屋根面の流れ方向の上側枠及び下側枠の側面部が、左右の側方枠の側面部より低」いのに対して、
引用発明は、そのようなものであるか否か不明である点。

<相違点2>
屋根面の流れ方向の上側枠に関して、
本願発明は、「上方へ突出する起立部を設けた」ものであるのに対して、
引用発明は、そのような起立部を備えていない点。

2 判断
(1)まず、上記<相違点2>について検討する。
ア 本願発明において、(屋根面の流れ方向の上側枠に)上方へ突出する起立部を設ける技術的意義について、本願明細書の記載を参酌して検討する。
本願明細書には、以下の記載がある。
「【0012】
また、低側面部には、上方へ突出する起立部を設けた場合には、太陽電池パネルの表面を流れる風をさらに上方へ導くため、起立部の風下に大きな減圧空間が形成され、裏面側の空気をより強く吸い出すように、より容易に裏面側の空気を排出することができる。」

「【0021】
そして、この起立部を低側面部に設けることにより、起立部に当たった風が上方に乱流を起こし、起立部の上端を減圧状態とするため、太陽電池パネルの裏面空間の空気が低側面部の下方に形成される開口部分から表面側へ吸い出す作用が果たされ、裏面空間の空気の流れを著しく速め、太陽電池セル自体が発生する温度を抑えることで発電効率の低下を防ぐことができる。」

上記記載からして、
上記技術的意義は、起立部の風下に大きな減圧空間を形成することにより、太陽電池パネルの裏面空間の空気を表面側へ吸い出すことにあるものと認められる。

イ ところで、引用文献1に記載された「引用文献1に記載の技術事項」は、以下のものである。

「光起電力パネルを支持する長方形のフレームの平行な側面の一つにベンチュリを形成するための翼を取り付けることにより、
風が全くないかほとんどないような環境において、大気流を促進させ、熱輸送を促進させることのできること。」

ここで、上記「ベンチュリ」とは、流体の流れを絞ることにより、流速を増加させるものであるから、大気が流れ込むことを前提にした機構であることが理解できる。

ウ そうすると、引用発明において、「引用文献1に記載の技術事項」を適用する際は、引用発明の「水下側の中空部入口」側に「ベンチュリ」を設けることが自然であり、「水上側の中空部出口」側に設ける動機が生じるものではない。

(2)したがって、上記<相違点1>について判断するまでもなく、本願発明は、当業者であっても引用発明、引用文献1及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3 判断のまとめ
本願発明は、当業者が引用文献1、2及び5に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、要するに、文献5に記載された発明において、文献1に記載された発明及び前記周知技術を適用することは、当業者が容易に想到し得たことであるというものである。
しかしながら、文献1に記載された発明における「ベンチュリ」は、大気が流れ込むことを前提にした機構であることから、上記「第4 2 判断」で検討したように、本願発明は、引用文献5に記載された発明及び引用文献1及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
当審では、請求項1に係る発明は、「起立部」と「流れる風」との位置関係が特定されていないため、課題を解決し得ない発明が含まれている旨の拒絶の理由を通知しているが、平成31年1月24日付け手続補正において、「隣り合う太陽電池パネルを、離間状に配設して離間部分における水下側に前記屋根面の流れ方向の上側枠を位置させて敷設すると共に当該上側枠には上方へ突出する起立部を設けた」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明及び引用文献1及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-02-26 
出願番号 特願2013-45214(P2013-45214)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐竹 政彦  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 村井 友和
星野 浩一
発明の名称 太陽電池パネルの敷設構造  
代理人 福田 伸一  

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