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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1349297
審判番号 不服2017-19185  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-25 
確定日 2019-02-20 
事件の表示 特願2014-556184「ガスサンプリング装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月15日国際公開、WO2013/118098、平成27年 3月 5日国内公表、特表2015-507201〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)2月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年2月9日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年12月9日付けの拒絶理由が通知され、平成29年3月15日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年8月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年12月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に提出された誤訳訂正書による手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正は、本件補正前の平成29年3月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載である、
「【請求項1】
ガスを受けるための入口と、
前記入口を通して前記ガスを吸引するために前記入口に流体接続されたポンプと、
前記入口を介して吸引された前記ガスの流速を測定するための流量センサと、
測定された前記ガスの流速に応じて前記ポンプを制御するための流量コントローラと、
を含み、
前記流量コントローラは前記入口を介してあらかじめ設定された質量又は体積のガスを吸引するように前記ポンプを制御することができる、
ガスサンプリング装置。」を、
「【請求項1】
ガスを受けるための入口と、
前記入口を通して前記ガスを吸引するために前記入口に流体接続されたポンプと、
前記入口を介して吸引された前記ガスの流速を測定するための流量センサと、
測定された前記ガスの流速に応じて前記ポンプを制御するための流量コントローラと、
を含み、
前記流量コントローラは前記流量センサで測定された前記ガスの流速を用いて、前記入口を介してあらかじめ設定された質量又は体積のガスを吸引するように、前記ポンプを制御することができる、
ガスサンプリング装置。」(下線は補正箇所である。)とする補正を含むものである。

2 補正の適否
(1)上記請求項1についての補正は、補正前の「流量コントローラは」「前記ポンプを制御する」ことにおいて、「流量コントローラは」「前記流量センサで測定された前記ガスの流速を用いて、」「前記ポンプを制御する」ことに限定したものであるから、請求項1についての本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むものである。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。

(2)引用文献について
ア 引用文献1の記載事項
本願の優先日前に頒布され、下記第3の2の原査定の拒絶の理由1及び2で引用された刊行物である引用文献1(特開平11-271302号公報)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した。
(1ア)「【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】図1には、本発明に係る呼気採取方法が適用される呼気採取装置が示されている。この呼気採取装置は、呼気採取容器10内に呼気中のCO_(2)を吸着するための装置である。
【0014】呼気導入口12には、患者からの呼気あるいは呼気バックからの呼気が導入される。呼気導入口12の後段には電磁バルブ14が設けられ、さらに後段には流量計16が設けられている。流量計16の後段には呼気採取容器10が設けられ、さらにその後段には電磁バルブ20を介して吸引ポンプ22が設けられている。すなわち、両バルブ14,20が開放されている状態において、吸引ポンプ22を起動させれば、導入口12から導入される呼気を呼気採取容器10内に流通させることができる。流量計16の出口側には圧力センサ18が設けられ、配管内の呼気圧力が検出される。
【0015】制御部23は、流量計16及び圧力センサ18からの信号に基づき、電磁バルブ14,20及び吸引ポンプ22の動作を制御する手段である。なお、導入口12に水蒸気を吸着させるための除湿剤などを設けてもよい。」

(1イ)【0017】ハウジング30内には吸着剤36が充填されている。この吸着剤36は本実施形態においてゼオライトX型であり、それは一定の流速以上で呼気を導入した場合に選択的にCO_(2)を吸着する部材である。」

(1ウ)「【0023】S103では、バルブ14,20が両方とも開放され、その状態でポンプ22が動作し、導入口12から呼気が取り込まれる。ここで、その呼気の流量は流量計16によって監視されており、呼気の流量が所定値になるように制御が行われる。その所定値は、吸着剤36によってCO_(2)のみが選択的に吸着される流量以上である。もちろん、あまり流量を上げすぎるとCO_(2)自体も吸着されないことになるので、上記のような条件を考慮して呼気導入にあたっての流量を設定する。呼気採取容器10の形状や吸着剤36の種類などにも依存するが、たとえば呼気の流量2l/min以上でCO_(2)が選択的に吸着される場合には、その流量よりも大きな値に実際の流量が設定される。たとえば3l/minに設定される。S103の工程は、呼気がなくなるまで継続的に実行され、呼気がなくなった時点でS104が実行される。」

(1エ)図1として、以下の図面が記載されている。
【図1】


イ 引用発明について
上記摘記の下線部から、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。なお、図面番号については省略した。
「呼気導入口の後段には電磁バルブが設けられ、さらに後段には流量計が設けられ、流量計の後段には呼気採取容器が設けられ、さらにその後段には電磁バルブを介して吸引ポンプが設けられ、
流量計及び圧力センサからの信号に基づき、電磁バルブ及び吸引ポンプの動作を制御する制御部が設けられた、呼気採取装置であって、
バルブが両方とも開放され、その状態でポンプが動作し、導入口から呼気が取り込まれ、その呼気の流量は流量計によって監視されており、呼気の流量が所定値、たとえば3l/minに設定され、その設定値になるように制御が行われる、
呼気採取装置。」(以下「引用発明」という。)

(3)対比
補正発明と引用発明とを対比する。
ア 入口について
引用発明の「呼気導入口」は、呼気はガスであるから、補正発明の「ガスを受けるための入口」に相当する。

イ ポンプについて
引用発明の「呼気導入口の後段には電磁バルブが設けられ、さらに後段には流量計が設けられ、流量計の後段には呼気採取容器が設けられ、さらにその後段には電磁バルブを介して」「設けられ」、「バルブが両方とも開放され」た「吸引ポンプ」は、「呼気導入口」に流体接続されており、「呼気導入口」を通して「呼気」を「吸引」するためのものであるから、補正発明の「前記入口を通して前記ガスを吸引するために前記入口に流体接続されたポンプ」に相当する。

ウ 流量センサについて
引用発明の「呼気導入口の後段には電磁バルブが設けられ、さらに後段に」「設けられ」、「バルブが両方とも開放され、その状態でポンプが動作し、導入口から呼気が取り込まれ、その呼気の流量」を測定する「流量計」と、補正発明の「前記入口を介して吸引された前記ガスの流速を測定するための流量センサ」とは、「前記入口を介して吸引された前記ガスの流れに関する物理量を測定するための流量センサ」の点で共通する。

エ 流量コントローラについて
(ア)引用発明の「流量計」「からの信号に基づき、」「吸引ポンプの動作を制御する制御部」と、補正発明の「測定された前記ガスの流速に応じて前記ポンプを制御するための流量コントローラ」とは、「測定された前記ガスの流れに関する物理量に応じて前記ポンプを制御するための流量コントローラ」の点で共通する。

(イ)補正発明の「あらかじめ設定された質量又は体積のガス」における「質量又は体積」とは、本願明書に「ガスの質量や体積といったあらかじめ設定された流量」(【0025】)と記載されているとおり、いわゆる質量流量や体積流量のことである。
引用発明の「ポンプが動作し、導入口から呼気が取り込まれ、その呼気の流量は流量計によって監視されており、呼気の流量が所定値、たとえば3l/minに設定され、その設定値になるように制御が行われる」ことにおいて、「呼気の流量が所定値、たとえば3l/minに設定」することは、補正発明の「あらかじめ設定された」「体積のガス」に相当する。
してみれば、引用の「ポンプが動作し、導入口から呼気が取り込まれ、その呼気の流量は流量計によって監視されており、呼気の流量が所定値、たとえば3l/minに設定され、その設定値になるように制御」することができる「制御部」と、補正発明の「前記流量センサで測定された前記ガスの流速を用いて、前記入口を介してあらかじめ設定された質量又は体積のガスを吸引するように、前記ポンプを制御することができる」「流量コントローラ」とは、「前記流量センサで測定された前記ガスの流れに関する物理量を用いて、前記入口を介してあらかじめ設定された質量又は体積のガスを吸引するように、前記ポンプを制御することができる」「流量コントローラ」の点で共通する。

オ 引用発明の「呼気採取装置」は、補正発明の「ガスサンプリング装置」に相当する。

カ してみれば、補正発明と引用発明とは、
(一致点)
「ガスを受けるための入口と、
前記入口を通して前記ガスを吸引するために前記入口に流体接続されたポンプと、
前記入口を介して吸引された前記ガスの流れに関する物理量を測定するための流量センサと、
測定された前記ガスの流れに関する物理量に応じて前記ポンプを制御するための流量コントローラと、
を含み、
前記流量コントローラは前記流量センサで測定された前記ガスの流れに関する物理量を用いて、前記入口を介してあらかじめ設定された質量又は体積のガスを吸引するように、前記ポンプを制御することができる、
ガスサンプリング装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
流れに関する物理量が、補正発明では「流速」であるのに対し、引用発明では「流量」である点。

(4)判断
ア 相違点について
ガスなど流体において、流速×断面積が体積流量であり、そして、密度×体積流量が質量流量であり、本願優先日前の流量計の多くは、流体の流速を測定して、流量(体積流量又は質量流量)を求める形式の機器である。
一方、引用文献1の摘記(1イ)に記載には、呼気採取装置において、呼気の流速について考慮されなければならないとの記載もある。
してみれば、引用発明の流量計において、流れに関する物理量として「流速」を採用し、その「流速」を用いて、呼気の流量(「流速」×断面積)が設定値になるように、吸引ポンプの動作を制御することは当業者が容易になし得たことである。

イ 補正発明の効果について
本願明細書には、流量コントローラが流量センサで測定されたガスの「流速」を用いてポンプを制御することの具体的な効果は記載されておらず、引用文献1の記載に対し、格別顕著な効果は認められない。

ウ 請求人の主張
請求人は、審判請求書の請求の理由で、補正発明の効果として、
「本願請求項1にかかる発明は上述の構成を有することにより、流速が変化したとしても、あらかじめ設定された質量又は体積のガスを吸引することができるので、質量又は体積の条件を揃えた異なるガスのサンプル間の比較が可能になるという際立って優れた効果を有するものです。」と主張している。
しかしながら、「質量又は体積の条件を揃えた異なるガス」とは何のどのようなことをいっているのか不明で、どのような効果を主張しようとしているのか理解できず、かつ、そのような事項は本願明細書に記載されていないのであるから、上記主張は採用できない。

エ 小括
よって、補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのまとめ
以上のとおり、補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?10に係る発明は、平成29年3月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1の前者に記載されたとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
理由1.この出願の請求項1?5,7?10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2.この出願の請求項1?10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開平11-271302号公報
引用文献2:特開2002-350299号公報
引用文献3:特開平06-047047号公報
引用文献4:特表2009-543070号公報

具体的には、理由1については、引用文献1又は引用文献2を主引用例とし、理由2については、引用文献1?4の各々の文献を主引用例としたものである。

3 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項は、上記第2の[理由]2(2)アに記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]1及び2(1)で記載したとおり、補正発明から「前記流量センサで測定された前記ガスの流速を用いて、」との限定事項を削除した発明であり、その補正発明が、上記第2の[理由]2(4)に記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-09-20 
結審通知日 2018-09-25 
審決日 2018-10-10 
出願番号 特願2014-556184(P2014-556184)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
P 1 8・ 575- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土岐 和雅  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 三崎 仁
信田 昌男
発明の名称 ガスサンプリング装置及び方法  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  

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