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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1349306
審判番号 不服2017-12421  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-22 
確定日 2019-02-21 
事件の表示 特願2015-23449号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年8月12日出願公開、特開2016-144584号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年2月9日の出願であって、同年2月10日に手続補正書が提出され、平成29年2月1日付けで拒絶の理由が通知され、同年3月31日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年5月16日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年8月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、当審において、平成30年4月24日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月4日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月12日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年11月15日に意見書及び手続補正書(以下「本件補正」という。)が提出されたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は特許請求の範囲の請求項2の記載の補正を含むものであり、本件補正前の平成30年7月4日にされた手続補正の特許請求の範囲の請求項2の記載と本件補正後の特許請求の範囲の請求項2の記載は、それぞれ以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。また、A?Hについては発明を分説するため当審で付与した。)。

(本件補正前)
「【請求項2】
A 可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 未だ開始されていない可変表示に対応する特定表示を複数の表示態様のいずれかで表示可能な特定表示手段と、
C 特定表示の表示態様が変化するか否かを示唆する特別演出及び特定演出を実行可能な変化演出実行手段と、
を備え、
D 特定表示の表示態様が複数段階変化可能であり、
E 前記特定演出は、前記特別演出よりも特定表示の表示態様が変化する割合が高く、
F 特定表示の数に応じて前記特定演出の実行割合が異なり、
G 前記特定演出では、特定表示が複数の表示態様のいずれかの表示態様となるかの候補を表示して表示態様が変化するか否かを示唆し、
H 前記変化演出実行手段は、1回の前記特定演出において特定表示の表示態様の段階が変化した後、再度該特定表示の表示態様の段階が変化する演出を実行可能である
ことを特徴とする遊技機。」

(本件補正後)
「【請求項2】
A 可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 未だ開始されていない可変表示に対応する特定表示を複数の表示態様のいずれかで表示可能な特定表示手段と、
C 特定表示の表示態様が変化するか否かを示唆する特別演出及び特定演出を実行可能な変化演出実行手段と、
を備え、
D 特定表示の表示態様が複数段階変化可能であり、
E 前記特定演出は、前記特別演出よりも特定表示の表示態様が変化する割合が高く、
F 特定表示の数に応じて前記特定演出の実行割合が異なり、
G 前記特定演出では、特定表示が複数の表示態様のいずれかの表示態様となるかの候補を表示して表示態様が変化するか否かを示唆し、
H 前記変化演出実行手段は、1回の演出画像を表示して消去するまでの前記特定演出において特定表示の表示態様の段階が変化した後、該1回の前記特定演出において再度該特定表示の表示態様の段階が変化する演出を実行可能である
ことを特徴とする遊技機。」

2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項2に記載された発明特定事項である「変化演出実行手段」に関して、「1回の前記特定演出において特定表示の表示態様の段階が変化した後、再度該特定表示の表示態様の段階が変化する演出を実行可能である」ものから「1回の演出画像を表示して消去するまでの前記特定演出において特定表示の表示態様の段階が変化した後、該1回の前記特定演出において再度該特定表示の表示態様の段階が変化する演出を実行可能である」ものへと下位概念化するものである。
また、補正前の請求項2に記載された発明と補正後の請求項2に記載された発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、明細書の段落【0277】及び図30等の記載に基づいており、新規事項を追加するものではない。
そこで、本件補正後の請求項2に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、前記1(本件補正後)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献に記載された事項
ア 当審による平成30年9月12日付けの拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2014-195552号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0021】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、遊技機の一例としてパチンコ遊技機を示すが、本発明はパチンコ遊技機に限られず、コイン遊技機等のその他の遊技機であってもよく、遊技領域に設けられた始動領域を遊技媒体が通過した後に開始条件が成立したことに基づいて各々を識別可能な複数種類の識別情報の可変表示を行ない、可変表示の表示結果として特定表示結果が導出表示されたときに遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御する遊技機であればどのような遊技機であってもよい。」

「【0195】
次いで、演出制御用CPU101は、演出制御プロセス処理を行なう(S705)。演出制御プロセス処理では、S704で解析した演出制御コマンドの内容にしたがって演出表示装置9での演出図柄の変動表示等の各種演出を行なうために、制御状態に応じた各プロセスのうち、現在の制御状態(演出制御プロセスフラグ)に対応した処理を選択して演出制御を実行する。
【0196】
次いで、演出図柄の停止図柄決定用乱数および各種演出内容の選択決定用乱数(先読み予告の演出パターン(後述する保留表示の変化パターン、変化タイミング、変化演出、および、変化ガセ演出)決定用の乱数、および、その他の演出決定用の乱数等)等の各種乱数を生成するためのカウンタのカウント値を更新する乱数更新処理を実行する(S706)。また、第1保留記憶表示部18cおよび第2保留記憶表示部18dの表示状態の制御を行なう保留記憶表示制御処理を実行する(S707)。その後、S702に移行する。」

「【0219】
保留表示に対する先読み予告の演出を実行することが決定された場合は、図24(D)で示すように、演出図柄の変動表示が開始されたときにキャラクタ95が演出表示装置9に表示される。そして、図24(E)で示すように、キャラクタ95が保留表示に作用することによって、保留表示を白色の白色態様保留表示18cAから白色とは異なる有色態様保留表示18cBに変化させる「変化演出」を実行したり、図24(F)で示すように、キャラクタ95が保留表示に作用すると見せかけて実際には作用せずに白色態様保留表示18cAが変化しない「変化ガセ演出」を実行したりする。ここでは、保留表示への「作用」とは、キャラクタ95が保留表示をハンマーで叩くこととするが、これに限定されず、保留表示に変化を及ぼすとの印象を遊技者に与える演出であればよい。なお、白色態様保留表示18cAが変化しないときの演出としては、キャラクタ95が保留表示に作用するが白色態様保留表示18cAが変化しない演出を行なうようにしてもよい。」

「【0228】
図19は、変化パターン決定テーブルを示す説明図である。図19を参照して、保留表示を変化させる変化パターンには、変化をさせない(白色のままとする)「変化無し(白)」、青色に変化させる「青」、赤色に変化させる「赤」、および、保留記憶の消化までに青色から赤色に変化させる「青→赤」のパターンが含まれる。」

「【0236】
「青→赤」の変化パターンが決定された時の変化タイミングとしては、2回の変動表示で青、赤の順で変化させる「青→赤」、3回の変動表示で青、赤、赤の順で変化させる「青→赤→赤」、3回の変動表示で青、青、赤の順で変化させる「青→青→赤」、3回の変動表示で白、青、赤の順で変化させる「白→青→赤」、4回の変動表示で青、赤、赤、赤の順で変化させる「青→赤→赤→赤」、4回の変動表示で青、青、赤、赤の順で変化させる「青→青→赤→赤」、4回の変動表示で青、青、青、赤の順で変化させる「青→青→青→赤」、4回の変動表示で白、白、青、赤の順で変化させる「白→白→青→赤」、4回の変動表示で白、青、青、赤の順で変化させる「白→青→青→赤」、および、4回の変動表示で白、青、赤、赤の順で変化させる「白→青→赤→赤」が含まれる。」

「【0255】
変化タイミングとなっている保留記憶であると判断した場合、演出制御用CPU101は、変化演出決定テーブルに基づき、その保留記憶に対する変化演出の具体的な態様(本実施の形態においては、キャラクタAまたはキャラクタBのいずれが保留表示に作用するかの態様)を決定する(S518)。決定された変化演出を特定可能な情報は、何番目の保留記憶に対する変化演出であるかを特定可能な情報とともに、RAM103に記憶される。前述した図21のステップS503では、この記憶に基づいて、対応する順番の保留記憶に対して変化演出を実行する演出制御パターンが決定され、ステップS506で、その演出制御パターンに基づいて当該変化演出が実行される。」

「【0257】
変化演出決定テーブルにおいては、キャラクタBによる演出が実行された方が、キャラクタAによる演出が実行された場合よりも、保留表示が変化する期待度が高くなるように、振分けが定められる。つまり、変化演出を決定する場合においては、キャラクタAによる変化演出が決定される割合に対するキャラクタBによる変化演出が決定される割合が高くなるように、振分けが定められる。」

「【0269】
また、変化ガセ演出決定テーブルにおいては、保留記憶数によらず、キャラクタBによる演出が実行された方が、キャラクタAによる演出が実行された場合よりも、保留表示が変化する期待度が高くなるように、振分けが定められる。つまり、変化ガセ演出を決定する場合においては、キャラクタBによる変化ガセ演出が決定される割合に対するキャラクタAにより変化ガセ演出が決定される割合が高くなるように、振分けが定められる。」


(認定事項ア)
例えば、大当り時に保留変化演出を行う場合のキャラクタBによる演出の割合は、図19の変化パターン決定テーブルと図23(A)の変化演出決定テーブルにより、保留数1のとき、変化パターン青の20%×60%=12%及び変化パターン赤の30%×80%=24%の合計36%であるに対し、保留数2?4のとき、変化パターン青の20%×60%=12%、変化パターン赤の20%×80%=16%及び変化パターン青→赤の30%×70%=21%の合計49%であり、保留数1のときより保留数2?4のときの方がキャラクタBによる演出の実行割合が高い。
また、大当り時に保留変化ガセ演出を行う場合のキャラクタBによる演出の割合は、図19及び図23(B)から、保留数2のとき2%、保留数3のとき4%、保留数4のとき6%であり、保留数が多いほどキャラクタBによる演出の実行割合が高い。
したがって、大当り時には保留数が多いほどキャラクタBによる演出の実行割合が高くなることから、保留数に応じてキャラクタBによる演出の実行割合が異なるといえる。

上記記載事項及び認定事項を総合すれば、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる(a?fについては本願補正発明のA?Fに対応させて付与した。)。

「a 可変表示を行ない、遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御する遊技機であって(【0021】)、
b 第1保留記憶表示部18cおよび第2保留記憶表示部18dの保留表示を変化させる変化パターンとして、変化をさせない(白色のままとする)「変化無し(白)」、青色に変化させる「青」、赤色に変化させる「赤」、および、保留記憶の消化までに青色から赤色に変化させる「青→赤」のパターンが含まれる表示状態の制御を行なう(【0196】、【0228】)演出制御用CPU101(【0195】)と、
c 保留表示に作用することによって保留表示を変化させたり変化させなかったりする(【0219】)キャラクタAまたはキャラクタBのいずれが保留表示に作用するかの態様を決定し実行する前記演出制御用CPU101(【0255】)と、
を備え、
d 「青→赤」の変化パターンが決定された時の変化タイミングとしては、3回の変動表示で白、青、赤の順で変化させる「白→青→赤」、4回の変動表示で白、白、青、赤の順で変化させる「白→白→青→赤」、4回の変動表示で白、青、青、赤の順で変化させる「白→青→青→赤」、および、4回の変動表示で白、青、赤、赤の順で変化させる「白→青→赤→赤」が含まれ(【0236】)、
e キャラクタBによる演出が実行された方が、キャラクタAによる演出が実行された場合よりも、保留表示が変化する期待度が高く(【0257】、【0269】)、
f 保留数に応じてキャラクタBによる演出の実行割合が異なる(認定事項ア)
遊技機。」

イ 当審による平成30年9月12日付けの拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2014-200538号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0001】
本発明は、パチンコ遊技機等の遊技機に係り、詳しくは、各々を識別可能な複数種類の識別情報の可変表示を行い表示結果を導出する可変表示手段に識別情報の表示結果として予め定められた特定表示結果が導出されたときに、遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御する遊技機に関する。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の遊技機では、予告演出が実行される可能性が示唆されるのみで、どのような態様の予告演出が実行されるのかといったことが遊技者に示唆されていなかった。また、上記特許文献2に記載の遊技機においても、どのような態様の予告演出が実行されるのかといったことが遊技者に示唆されていなかった。そのため、遊技興趣を向上させることができなかった。
【0006】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、遊技興趣を向上させることのできる遊技機の提供を目的とする。」

「【0089】
この実施の形態では、予告演出として、保留表示の先読み予告演出(以下、保留表示予告という。)が実行される。保留表示予告は、保留記憶表示によって表示している保留表示図柄のうち、予告対象(所謂先読みターゲット)となる可変表示に対応する保留表示図柄を通常時の保留表示図柄(例えば、丸印の図柄)から他の図柄となる保留表示図柄に変更することなどによって、その変更した保留表示図柄に対応する可変表示(予告対象の可変表示)において「大当り」となる可能性などを予告する保留表示予告を実行する。この実施の形態では、保留表示予告として、保留表示予告A及びBが用意されている。保留表示予告AとBでは、実行した場合に、その予告対象の可変表示(図柄を変更する保留表示図柄に対応する可変表示)において可変表示結果が「大当り」となる可能性(つまり、その予告対象の可変表示についての大当り期待度)が異なっている。この可能性は、保留表示予告Aを実行した場合の方が保留表示予告Bを実行した場合よりも高くなっている(すなわち、保留表示予告Aが実行された場合には、保留表示予告Bが実行された場合よりも「大当り」となる可能性が高くなる)。保留表示予告AとBのそれぞれは、通常時の保留表示図柄から変更される図柄が異なるなどして、その演出態様が異なればよい。例えば、保留表示予告Aは、保留表示図柄を丸印から「A」の文字を示す図柄に変更し、保留表示予告Bは、保留表示図柄を丸印から「B」の文字を示す図柄に変更するものである。また、保留表示予告は、保留表示図柄の色を変更したり、保留表示図柄の柄を変更したり、保留表示図柄を他のキャラクターに変更したりするものであってもよい。」

「【0234】
この実施の形態では、図27(B)に示すように、パターン1?パターン8までの示唆演出パターンに対応して、予め複数の示唆演出の実行態様が用意されている。具体的には、パターン1の示唆演出は、大きな星の中に「A」の文字が表示された画像を表示させ、対象となる保留表示の位置で停止させる態様の示唆演出であり(例えば図32(a)、(b)に示す演出)、パターン2の示唆演出は、パターン1よりも小さな星の中に「A」の文字が表示された画像を表示させ、対象となる保留表示の位置で停止させる態様の示唆演出であり(例えば図33(a)、(b)に示す演出)、それぞれ、保留表示予告Aが実行されることを示唆する示唆演出である。パターン3の示唆演出は、大きな星の中に「B」の文字が表示された画像を表示させ、対象となる保留表示の位置で停止させる態様の示唆演出であり(例えば図32(a)、(b)に示す「A」の文字を「B」に置き換えた演出)、パターン4の示唆演出は、パターン3よりも小さな星の中に「B」の文字が表示された画像を表示させ、対象となる保留表示の位置で停止させる態様の示唆演出であり(例えば図33(a)、(b)に示す「A」の文字を「B」に置き換えた演出)、それぞれ、保留表示予告Bが実行されることを示唆する示唆演出である。パターン5の示唆演出は、大きな星の中に「A」の文字が表示された画像を表示させ、対象となる保留表示の位置で停止させず、画像表示装置5を通りすぎるように表示する態様の示唆演出であり(例えば図34(a)、(b)に示す「B」の文字を「A」に置き換えた演出)、パターン6の示唆演出は、小さな星の中に「A」の文字が表示された画像を表示させ、対象となる保留表示の位置で停止させず、画像表示装置5を通りすぎるように表示する態様の示唆演出であり(例えば図35(a)、(b)に示す「B」の文字を「A」に置き換えた演出)、それぞれ、保留表示予告Aが実行されないことを示唆する示唆演出である。パターン7の示唆演出は、大きな星の中に「B」の文字が表示された画像を表示させ、対象となる保留表示の位置で停止させず、画像表示装置5を通りすぎるように表示する態様の示唆演出であり(例えば図34(a)、(b)に示す演出)、パターン8の示唆演出は、小さな星の中に「B」の文字が表示された画像を表示させ、対象となる保留表示の位置で停止させず、画像表示装置5を通りすぎるように表示する態様の示唆演出であり(例えば図35(a)、(b)に示す演出)、それぞれ、保留表示予告Bが実行されないことを示唆する示唆演出である。」

上記記載事項を総合すれば、引用文献2には以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる(a及びg1?g4は本願補正発明のA及びGに対応させて付与した。)。

「a 可変表示を行い、遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御する遊技機において(【0001】)、
g1 大きな星の中に「A」の文字が表示された画像を表示させ、対象となる保留表示の位置で停止させるか、小さな星の中に「A」の文字が表示された画像を表示させ、対象となる保留表示の位置で停止させるかして、それぞれ、保留表示図柄を丸印から「A」の文字を示す図柄に変更する保留表示予告Aが実行されることを示唆し、
g2 大きな星の中に「B」の文字が表示された画像を表示させ、対象となる保留表示の位置で停止させるか、小さな星の中に「B」の文字が表示された画像を表示させ、対象となる保留表示の位置で停止させるかして、それぞれ、保留表示図柄を丸印から「B」の文字を示す図柄に変更する保留表示予告Bが実行されることを示唆し、
g3 大きな星の中に「A」の文字が表示された画像を表示させ、対象となる保留表示の位置で停止させず、画像表示装置5を通りすぎるように表示するか、小さな星の中に「A」の文字が表示された画像を表示させ、対象となる保留表示の位置で停止させず、画像表示装置5を通りすぎるように表示するかして、それぞれ、保留表示図柄を丸印から「A」の文字を示す図柄に変更する保留表示予告Aが実行されないことを示唆し、
g4 大きな星の中に「B」の文字が表示された画像を表示させ、対象となる保留表示の位置で停止させず、画像表示装置5を通りすぎるように表示するか、小さな星の中に「B」の文字が表示された画像を表示させ、対象となる保留表示の位置で停止させず、画像表示装置5を通りすぎるように表示するかして、それぞれ、保留表示図柄を丸印から「B」の文字を示す図柄に変更する保留表示予告Bが実行されないことを示唆する(【0089】、【0234】)
遊技機。」

ウ 新たに引用する本願の出願前に頒布された刊行物である特開2014-113174号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0001】
本発明は、遊技媒体が始動領域を通過した後に、可変表示の開始条件が成立したことにもとづいて識別情報の可変表示を行い、識別情報の表示結果が特定表示結果になったときに遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御するパチンコ遊技機等の遊技機に関する。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されている遊技機は、実行中の可変表示に対応する保留表示によって遊技者に可変表示中の演出に関連する情報(例えば、仮停止の回数)を提供するが、実行中の可変表示に対応する保留表示は、識別情報の特定表示結果に対する期待度(例えば、大当り図柄が停止表示される可能性の高低)を変化可能に表している訳ではない。
【0008】
そこで、本発明は、識別情報の可変表示中に表示される実行中の可変表示に対応する可変表示対応表示を利用して特定表示結果に対する期待度を遊技者に報知して、遊技の興趣をより向上させることができる遊技機を提供することを目的とする。」

「【0222】
図30は、保留表示の変化の他の例を示す説明図である。図30に示す例では、擬似連変動パターンによって演出図柄の可変表示(変動)が行われる。そして、可変表示を開始可能な状態になると、演出制御用マイクロコンピュータ100(具体的には、演出制御用CPU101)は、可変表示を開始するときに、開始される可変表示に対応する保留表示(保留表示Bとする。)であった表示物(表示B(可変表示対応表示に相当)とする。)を可変表示対応表示部9Fの内部に表示する(図30(A),(B)参照)。なお、演出制御用マイクロコンピュータ100は、通常の表示領域から保留表示Bを消去する。
【0223】
その後、1回目の仮停止を行った後、1回目の再変動を開始するときに、演出制御用マイクロコンピュータ100は、表示画面(例えば、可変表示対応表示部9Fの近傍)に所定のキャラクタ画像9aを表示する(図30(C),(D)参照)。演出制御用マイクロコンピュータ100は、キャラクタ画像9aが表示されているときには、キャラクタ画像9aが動くような表示制御を行う。従って、可変表示対応表示部9Fに表示されている実行中の可変表示に対応する保留表示(具体的には、可変表示対応表示)にキャラクタ画像9aが作用することによって実行中の可変表示に対応する保留表示の態様が変化するような表示演出が実現される。なお、演出制御用マイクロコンピュータ100は、第1保留記憶表示部18cに表示されている保留表示についても、キャラクタ画像9aが作用することによって表示態様が変化するような表示演出を行ってもよい(第2保留記憶表示部18dに表示されている保留表示についても同様)。
【0224】
そして、2回目の仮停止を行った後、2回目の再変動を開始するときに、演出制御用マイクロコンピュータ100は、可変表示対応表示部9Fの内部で表示Bの態様を変える(図30(E),(F)参照)参照)。なお、演出図柄の仮停止時にはキャラクタ画像9aは表示画面から消去されているが(図30(E)参照)、キャラクタ画像9aを継続して表示しておくようにしてもよい。
【0225】
なお、図30に示す例では、演出制御用マイクロコンピュータ100は、2回目の再変動を開始するときに表示Bの表示態様を変更するが、1回目または3回目の再変動を開始するときに表示Bの表示態様を変更することがある。
【0226】
ただし、何回目の再変動を開始するときに表示Bの表示態様を変更する場合でも、演出制御用マイクロコンピュータ100は、1回目の再変動を開始するときに、表示画面に所定のキャラクタ画像9aを表示する(図30(D)参照)。」

「【0229】
また、この実施の形態では、演出制御用マイクロコンピュータ100は、キャラクタ画像9aを表示した場合に、再変動が開始されたときに表示Bの態様が必ず変化するように制御するが、表示Bの態様を変化させない場合にも、キャラクタ画像9aを表示するようにしてもよい。」

「【0251】
「青」、「青」、「黄」のパターンと「青」、「青」、「赤」のパターンは、2回目の再変動時に可変表示対応表示の態様が変化することに対応するパターンである。「青」、「黄」、「黄」のパターンは、1回目の再変動時に可変表示対応表示の態様が変化することに対応するパターンである。「青」、「黄」、「赤」のパターンは、1回目および2回目の再変動時に可変表示対応表示の態様が変化することに対応するパターンである。」

「【0255】
「青」、「黄」、「黄」、「黄」のパターンは、1回目の再変動時に可変表示対応表示の態様が変化することに対応するパターンである。「青」、「黄」、「黄」、「赤」のパターンは、1回目および3回目の再変動時に可変表示対応表示の態様が変化することに対応するパターンである。」

「【0296】
そして、ステップS845の処理で可変表示対応表示の態様が変化したときに、演出制御用CPU101は、演出表示装置9の表示画面からキャラクタ画像9aを消去する。ただし、変動中に2回可変表示対応表示の態様を変化させる場合(パターン5,15の場合)には、2回目の再変動に関するステップS845の処理で可変表示対応表示の態様が変化したときに、演出制御用CPU101は、演出表示装置9の表示画面からキャラクタ画像9aを消去する。なお、演出表示装置9の表示画面にキャラクタ画像9aを表示する制御を開始した場合に、1回目の再変動開始時または2回目の再変動開始時に可変表示対応表示の態様を変化させるときでも、3回目の再変動開始時に演出表示装置9の表示画面からキャラクタ画像9aを消去するようにしてもよい。そのような制御を行う場合には、最終的に「赤」に変化しないパターンが使用されているときに、キャラクタ画像9aの表示が継続することによって、可変表示中に「赤」に変化することへの期待感を遊技者に持続させることができる。」

上記記載事項を総合すれば、引用文献3には以下の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる(a及びh?h3は本願補正発明のA及びHに対応させて付与した。)。

「a 可変表示を行い、遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御する遊技機において(【0001】)、
c 擬似連変動パターンによって演出図柄の可変表示(変動)が行われる場合、1回目の仮停止を行った後、1回目の再変動を開始するときに、表示画面にキャラクタ画像9aを表示し、第1保留記憶表示部18cに表示されている保留表示にキャラクタ画像9aが作用することによって保留表示の表示態様が変化するような表示演出を実現し、前記保留表示の表示の態様が変化する場合だけでなく、変化させない場合にも、表示画面にキャラクタ画像9aを表示可能な演出制御用マイクロコンピュータ100を備え(【0222】、【0223】)、【0229】)、
h 前記演出制御用マイクロコンピュータ100は、
h1 1回目および2回目の再変動時に保留表示の態様が変化する「青」、「黄」、「赤」のパターン及び1回目および3回目の再変動時に保留表示の態様が変化する「青」、「黄」、「黄」、「赤」のパターンを含む表示演出を行い(【0223】、【0251】、【0255】)、
h2 演出図柄の仮停止時にはキャラクタ画像9aを継続して表示しておき(【0224】)、
h3 演出表示装置9の表示画面にキャラクタ画像9aを表示する制御を開始した場合に、1回目の再変動開始時または2回目の再変動開始時に保留表示の態様を変化させるときでも、3回目の再変動開始時に演出表示装置9の表示画面からキャラクタ画像9aを消去するようにして、最終的に「赤」に変化しないパターンが使用されているときに、キャラクタ画像9aの表示が継続することによって、可変表示中に「赤」に変化することへの期待感を遊技者に持続させることができる(【0223】、【0296】)、
遊技機。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。なお、見出し(a)?(h)は、本願補正発明のA?Hに対応させている。

(a)引用発明1の「a 可変表示を行ない、遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御する遊技機」は、本願補正発明の「A 可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機」に相当する。

(b)引用発明1の「b 第1保留記憶表示部18cおよび第2保留記憶表示部18dの保留表示」は、本願補正発明の「B 未だ開始されていない可変表示に対応する特定表示」に相当する。
また、引用発明1のbの「変化をさせない(白色のままとする)「変化無し(白)」、青色に変化させる「青」、赤色に変化させる「赤」、および、保留記憶の消化までに青色から赤色に変化させる「青→赤」のパターンが含まれる表示状態に制御を行う」ことは、本願補正発明のBの「複数の表示態様のいずれかで表示可能な」ことに相当する。
したがって、引用発明1の「b 第1保留記憶表示部18cおよび第2保留記憶表示部18dの保留表示を変化させる変化パターンとして、変化をさせない(白色のままとする)「変化無し(白)」、青色に変化させる「青」、赤色に変化させる「赤」、および、保留記憶の消化までに青色から赤色に変化させる「青→赤」のパターンが含まれる表示状態の制御を行なう演出制御用CPU101」は、本願補正発明の「B 未だ開始されていない可変表示に対応する特定表示を複数の表示態様のいずれかで表示可能な特定表示手段」に相当する。

(c)引用発明1の「c 保留表示に作用することによって保留表示を変化させたり変化させなかったりするキャラクタAまたはキャラクタBのいずれが保留表示に作用するかの態様を決定し実行する前記演出制御用CPU101」は、本願補正発明の「C 特定表示の表示態様が変化するか否かを示唆する特別演出及び特定演出を実行可能な変化演出実行手段」に相当する。

(d)引用発明1の「d2 「青→赤」の変化パターンが決定された時の変化タイミングとしては、3回の変動表示で白、青、赤の順で変化させる「白→青→赤」、4回の変動表示で白、白、青、赤の順で変化させる「白→白→青→赤」、4回の変動表示で白、青、青、赤の順で変化させる「白→青→青→赤」、および、4回の変動表示で白、青、赤、赤の順で変化させる「白→青→赤→赤」が含まれ」ることは、本願補正発明の「D 特定表示の表示態様が複数段階変化可能であ」ることに相当する。

(e)引用発明1の「e キャラクタBによる演出が実行された方が、キャラクタAによる演出が実行された場合よりも、保留表示が変化する期待度が高」いことは、本願補正発明の「E 前記特定演出は、前記特別演出よりも特定表示の表示態様が変化する割合が高」いことに相当する。

(f)引用発明1の「f 保留数に応じてキャラクタBによる演出の実行割合が異なる」ことは、本願補正発明の「F 特定表示の数に応じて前記特定演出の実行割合が異な」ることに相当する。

そうすると、両者は、
「A 可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 未だ開始されていない可変表示に対応する特定表示を複数の表示態様のいずれかで表示可能な特定表示手段と、
C 特定表示の表示態様が変化するか否かを示唆する特別演出及び特定演出を実行可能な変化演出実行手段と、
を備え、
D 特定表示の表示態様が複数段階変化可能であり、
E 前記特定演出は、前記特別演出よりも特定表示の表示態様が変化する割合が高く、
F 特定表示の数に応じて前記特定演出の実行割合が異なる
遊技機。」
である点で一致し、以下の相違点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明は「G 前記特定演出では、特定表示が複数の表示態様のいずれかの表示態様となるかの候補を表示して表示態様が変化するか否かを示唆」するのに対し、引用発明1はそのようなものではない点。

(相違点2)
本願補正発明は「H 前記変化演出実行手段は、1回の演出画像を表示して消去するまでの前記特定演出において特定表示の表示態様の段階が変化した後、該1回の前記特定演出において再度該特定表示の表示態様の段階が変化する演出を実行可能である」のに対し、引用発明1はそのようなものではない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。

(相違点1について)
引用発明2の「保留表示」は、本願補正発明の「特定表示」すなわち「B 未だ開始されていない可変表示に対応する特定表示」に相当する。
そして、引用発明2の「『丸印』、『保留表示予告A』及び『保留表示予告B』」は、本願補正発明の「複数の表示態様」に相当する。
また、引用発明2の「大きな星の中に「A」の文字が表示された画像を表示させ」ること、「小さな星の中に「A」の文字が表示された画像を表示させ」ること、「大きな星の中に「B」の文字が表示された画像を表示させ」ること及び「小さな星の中に「B」の文字が表示された画像を表示させ」ることは、いずれも本願補正発明の「特定表示が複数の表示態様のいずれかの表示態様となるかの候補を表示」することに相当する。
さらに、引用発明2の「保留表示図柄を丸印から「A」の文字を示す図柄に変更する保留表示予告Aが実行されることを示唆」すること、「保留表示図柄を丸印から「B」の文字を示す図柄に変更する保留表示予告Bが実行されることを示唆」すること、「保留表示図柄を丸印から「A」の文字を示す図柄に変更する保留表示予告Aが実行されないことを示唆」すること及び「保留表示図柄を丸印から「B」の文字を示す図柄に変更する保留表示予告Bが実行されないことを示唆する」ことは、いずれも本願補正発明の「表示態様が変化するか否かを示唆」することに相当する。
したがって、引用発明2の「g1 大きな星の中に「A」の文字が表示された画像を表示させ、対象となる保留表示の位置で停止させるか、小さな星の中に「A」の文字が表示された画像を表示させ、対象となる保留表示の位置で停止させるかして、それぞれ、保留表示図柄を丸印から「A」の文字を示す図柄に変更する保留表示予告Aが実行されることを示唆し、g2 大きな星の中に「B」の文字が表示された画像を表示させ、対象となる保留表示の位置で停止させるか、小さな星の中に「B」の文字が表示された画像を表示させ、対象となる保留表示の位置で停止させるかして、それぞれ、保留表示図柄を丸印から「B」の文字を示す図柄に変更する保留表示予告Bが実行されることを示唆し、g3 大きな星の中に「A」の文字が表示された画像を表示させ、対象となる保留表示の位置で停止させず、画像表示装置5を通りすぎるように表示するか、小さな星の中に「A」の文字が表示された画像を表示させ、対象となる保留表示の位置で停止させず、画像表示装置5を通りすぎるように表示するかして、それぞれ、保留表示図柄を丸印から「A」の文字を示す図柄に変更する保留表示予告Aが実行されないことを示唆し、g4 大きな星の中に「B」の文字が表示された画像を表示させ、対象となる保留表示の位置で停止させず、画像表示装置5を通りすぎるように表示するか、小さな星の中に「B」の文字が表示された画像を表示させ、対象となる保留表示の位置で停止させず、画像表示装置5を通りすぎるように表示するかして、それぞれ、保留表示図柄を丸印から「B」の文字を示す図柄に変更する保留表示予告Bが実行されないことを示唆する」ことは、相違点1に係る本願補正発明のGの「特定表示が複数の表示態様のいずれかの表示態様となるかの候補を表示して表示態様が変化するか否かを示唆」することに相当する。

そして、引用発明1と引用発明2はともに、可変表示を行い、遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御する遊技機において、保留表示の表示態様を変化させる演出を行う点で共通し、また、引用文献2の段落【0089】には「保留表示予告は、保留表示図柄の色を変更」「するものであってもよい」とも記載されていることから、引用発明1において、保留表示が「青」または「赤」のいずれに変化するかを示唆して興趣を向上させるために、引用発明2を適用して、例えば、キャラクタA、Bに保留変化に対応する青色または赤色を付すなどして、相違点1に係る本願補正発明の構成Gに想到することは当業者が容易になし得るものである。

(相違点2について)
引用発明3の「キャラクタ画像9a」は、本願補正発明の「演出画像」に相当する。
また、引用発明3の「h2 演出図柄の仮停止時にはキャラクタ画像9aを継続して表示しておき、h3 演出表示装置9の表示画面にキャラクタ画像9aを表示する制御を開始した場合に、1回目の再変動開始時または2回目の再変動開始時に保留表示の態様を変化させるときでも、3回目の再変動開始時に演出表示装置9の表示画面からキャラクタ画像9aを消去する」ことから、「h1 1回目および2回目の再変動時に保留表示の態様が変化する「青」、「黄」、「赤」のパターン及び1回目および3回目の再変動時に保留表示の態様が変化する「青」、「黄」、「黄」、「赤」のパターン」のときに、cの「1回目の仮停止を行った後、1回目の再変動を開始するときに、表示画面にキャラクタ画像9aを表示し」た後、再変動時に保留表示の態様が「赤」に変化するまで、キャラクタ画像9aを継続して表示する演出を実行可能であることは明らかである。
したがって、引用発明3の「h1 1回目および2回目の再変動時に保留表示の態様が変化する「青」、「黄」、「赤」のパターン及び1回目および3回目の再変動時に保留表示の態様が変化する「青」、「黄」、「黄」、「赤」のパターン」のときに、cの「1回目の仮停止を行った後、1回目の再変動を開始するときに、表示画面にキャラクタ画像9aを表示し」た後、3回目の再変動時に保留表示の態様が「赤」に変化するまで、キャラクタ画像9aを継続して表示する演出を実行可能であることは、本願補正発明のHの「1回の演出画像を表示して消去するまでの前記特定演出において特定表示の表示態様の段階が変化した後、該1回の前記特定演出において再度該特定表示の表示態様の段階が変化する演出を実行可能である」ことに相当する。

ゆえに、引用発明1と引用発明3は、可変表示を行い、遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御する遊技機において、複数の変動に跨がり保留表示の色を2回変化させる演出を行う点で共通するから、引用発明1において、3回または4回の変動表示で保留表示が「青」に変化してから「赤」に変化するまで遊技者の期待を持続させることができるように、引用発明3を適用して、その間、キャラクタA、Bの画像の表示を継続することで、相違点2に係る本願補正発明の構成Hに想到することは当業者が容易になし得るものである。

(効果について)
本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明1、2及び3の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(まとめ)
したがって、本願補正発明は、引用発明1、2及び3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(請求人の主張について)
請求人は、平成30年11月15日の意見書において、本願補正発明のHの「1回の演出画像を表示して消去するまでの前記特定演出において特定表示の表示態様の段階が変化した後、該1回の前記特定演出において再度該特定表示の表示態様の段階が変化する演出を実行可能である」ことは、引用文献に記載も示唆もされておらず、本願補正発明は、このような特徴を有することで、1回の演出画像を表示して消去するまでの特定演出において対応表示の表示態様の段階が変化した後、該1回の特定演出において更に対応表示の表示態様の段階が変化することがあるので、1回の特定演出において表示態様が何段階変化するかに遊技者を注目させることができるという有利な効果を奏するから、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定に該当しない旨主張する。
しかしながら、上記(相違点2について)で検討したように、引用発明1において、3回または4回の変動表示で保留表示が「青」に変化してから「赤」に変化するまで遊技者の期待を持続させることができるように、引用発明3を適用して、その間、キャラクタA、Bの画像の表示を継続することで、相違点2に係る本願補正発明の構成Hに想到することは当業者が容易になし得るものである。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(5)本件補正についてのむすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明は、平成30年7月4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1の(本件補正前)に記載のとおりのものである。

2 当審による拒絶の理由
当審による平成30年9月12日付けの最後の拒絶の理由のうち、請求項2の進歩性に関わるものは、以下のとおりである。

この出願の請求項2に係る発明は、その出願前に頒布された以下のいずれかの引用例に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

特開2014-195552号公報(引用文献1)
特開2014-200538号公報(引用文献2)
特開2012-245158号公報(以下「引用文献4」という。)
特開2013-158586号公報

3 引用文献
ア 当審による拒絶の理由で引用された引用文献1及び引用文献2の記載事項は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

イ 当審による拒絶の理由で引用された引用文献4には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0001】
本発明は、始動領域を遊技媒体が通過した後に、可変表示の開始を許容する可変表示の開始条件の成立に基づいて、各々を識別可能な複数種類の識別情報の可変表示を行い表示結果を導出表示する可変表示部を備え、該可変表示部に特定表示結果が導出表示されたときに遊技者にとって有利な特定遊技状態に移行させる遊技機に係り、特に、開始条件が成立していない可変表示について所定数を上限に保留記憶し、開始条件が成立する前に遊技内容を決定する遊技機に関する。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す遊技機では、前知演出が行われても、保留表示の表示態様は一種類にしか変化しないため、遊技者の興味を集めるには乏しかった。
【0005】
本発明は、このような背景のもとになされたものであり、保留表示の表示態様を変化させる予告に対して遊技者の興味を集めることができるような遊技機を提供することにある。」

「【0218】
また、本実施形態では、予告対象となる変動表示に対する始動入賞が発生した後に開始される変動表示から演出を開始し、当該変動表示が停止するまでの期間内に予告対象となる保留球の態様(色又は形状)を変化させる「保留球変化」の態様の先読み予告演出を行う場合がある。この場合に、「保留球変化」の態様を変化させる演出自体(後述する小人や巨人が出現して、保留球に対して所定の動作を行う演出)は、1回の変動表示期間内で実行されることになる。但し、当該演出によって保留表示の態様が変化して後述する第1特殊表示又は第2特殊表示となったときは、その保留表示に基づく変動表示が開始されるまでは第1特殊表示又は第2特殊表示は継続されることになる。即ち、「保留球変化」の態様を変化させる演出は1回の変動期間内で実行されるが、「保留球変化」の態様の先読み予告は複数回の変動表示にわたって継続されることになる。」

「【0424】
本実施形態では、保留球の色又は形状を変化させる際の演出として、所定のキャラ(小人又は巨人)が出現し、表示されている保留球に刷毛で色を塗る又は表示されている保留球をハンマーで割る演出を行うことによって、保留球の色又は形状を変化させようとする。ここで、図59(c)に示すように、小人が出現した場合には、保留球の色又は形状が変化し難く、巨人が出現した場合には、保留球の色又は形状が変化し易いように演出の割り振りが行われている。また、小人が出現した場合には、保留球の色が変化し難く(即ち白若しくはグレーから青又は赤に変化し難く)、保留球の形状が変化し難い(即ち割れ難い)ように演出の割り振りが行われており、巨人が出現した場合には、保留球の色が変化し易く(即ち白若しくはグレーから青又は赤に変化し易く)、保留球の形状が変化し易い(即ち割れ易い)ように演出の割り振りが行われている。」

「【0445】
また、本例では、決定色が「赤」であって、演出制御用CPU101が、2R,10R,又は15R確変大当りの場合に遊技制御用マイクロコンピュータ560から送信される図柄指定コマンドを受信したときは、ランダムYの値が1?30の範囲であれば演出番号A21を選択し、31?50の範囲であれば演出番号A22を選択し、51?90の範囲であれば演出番号A23を選択し、91?100の範囲であれば演出番号A24を選択する。一方、決定色が「赤」であって、演出制御用CPU101が、上記以外の図柄指定コマンドを受信したときは、ランダムYの値が1?30の範囲であれば演出番号A21を選択し、31?60の範囲であれば演出番号A22を選択し、61?99の範囲であれば演出番号A23を選択し、100であればA24を選択する。なお、演出番号A21は、小人が出現後、小人が保留球に色を塗り保留球が青に変化し、その後小人が帰り、巨人が出現して、当該保留球に巨人が色を塗り保留球が赤に変化し、巨人が帰るという演出である。これは決定色が赤の場合に30%(左テーブル及び右テーブル)の確率で出現するステップアップ演出となっている。」

上記記載事項を総合すれば、引用文献4には以下の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されているものと認められる(a及びhは本願補正発明のA及びHに対応させて付与した。)。

「a 可変表示を行い、遊技者にとって有利な特定遊技状態に移行させる遊技機であって(【0001】)、
h1 1回の変動表示期間内で実行され(【0218】)、
h2 小人又は巨人が出現し、表示されている保留球に刷毛で色を塗ることによって、保留球の色を変化させようとする演出において(【0424】)、
h3 小人が出現した場合には、保留球の色が変化し難く、巨人が出現した場合には、保留球の色が変化し易いように演出の割り振りが行われ(「【0424】)、
h4 小人が出現後、小人が保留球に色を塗り保留球が青に変化し、その後小人が帰り、巨人が出現して、当該保留球に巨人が色を塗り保留球が赤に変化し、巨人が帰るという演出を実行可能である(【0445】)
遊技機。」

4 対比
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本願補正発明のHの「変換演出手段」に関して、「1回の演出画像を表示して消去するまでの前記特定演出において特定表示の表示態様の段階が変化した後、該1回の前記特定演出において再度該特定表示の表示態様の段階が変化する演出を実行可能である」ものから、「1回の前記特定演出において特定表示の表示態様の段階が変化した後、再度該特定表示の表示態様の段階が変化する演出を実行可能である」ものへと上位概念化したものであり、その他の構成A?Gに関しては共通する。
そうすると、本願発明と引用発明1を対比すると、前記第2[理由]2(3)にで検討したのと同様に、両者は構成A?Fの点で一致し、以下の相違点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明は「G 前記特定演出では、特定表示が複数の表示態様のいずれかの表示態様となるかの候補を表示して表示態様が変化するか否かを示唆」するのに対し、引用発明1はそのように特定されていない点。

(相違点2)
本願補正発明では「H 前記変化演出実行手段は、1回の前記特定演出において特定表示の表示態様の段階が変化した後、再度該特定表示の表示態様の段階が変化する演出を実行可能である」のに対し、引用発明1ではそのように特定されていない点。

5 判断
以下、相違点について検討する。

(相違点1について)
相違点1については、上記前記第2[理由]2(4)の(相違点1について)で検討したように、引用発明1に引用発明2を適用して、相違点1に係る本願発明の構成に想到することは当業者が容易になし得るものである。

(相違点2について)
引用発明4の「h2 小人又は巨人が出現し、表示されている保留球に刷毛で色を塗ることによって、保留球の色を変化させようとする演出」は、「h3 小人が出現した場合には、保留球の色が変化し難く、巨人が出現した場合には、保留球の色が変化し易いように演出の割り振りが行われ」ていることからして、保留球の色が変化したりしなかったりする演出であることが明らかであるから、本願発明のHの「前記特定演出」すなわち「未だ開始されていない可変表示に対応する特定表示の表示態様が変化するか否かを示唆する特定演出」に相当する。
そして、引用発明の「h2 小人又は巨人が出現し、表示されている保留球に刷毛で色を塗ることによって、保留球の色を変化させようとする演出」は、「h1 1回の変動表示期間内で実行され」るから、本願発明のHの「1回の前記特定演出」に相当する。
さらに、引用発明の「h4 小人が出現後、小人が保留球に色を塗り保留球が青に変化し、その後小人が帰り、巨人が出現して、当該保留球に巨人が色を塗り保留球が赤に変化し、巨人が帰るという演出を実行可能である」ことは、本願発明のHの「特定表示の表示態様の段階が変化した後、再度該特定表示の表示態様の段階が変化する演出を実行可能である」ことに相当する。
したがって、引用文献4の「h1 1回の変動表示期間内で実行され、h2 小人又は巨人が出現し、表示されている保留球に刷毛で色を塗ることによって、保留球の色を変化させようとする演出において、h3 小人が出現した場合には、保留球の色が変化し難く、巨人が出現した場合には、保留球の色が変化し易いように演出の割り振りが行われ、h4 小人が出現後、小人が保留球に色を塗り保留球が青に変化し、その後小人が帰り、巨人が出現して、当該保留球に巨人が色を塗り保留球が赤に変化し、巨人が帰るという演出を実行可能である」ことは、本願発明のHの「1回の前記特定演出において特定表示の表示態様の段階が変化した後、再度該特定表示の表示態様の段階が変化する演出を実行可能である」ことに相当する。
そして、引用発明1と引用発明4は、可変表示を行ない、遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御する遊技機において、保留表示の表示態様を白から青に変化させ青から赤に変化させる演出を実行可能である点で共通するから、引用発明1において、遊技の興趣を向上するために、3回または4回の変動表示で保留表示を白から青に変化させ青から赤に変化させることに代えてまたは加えて、引用発明4における、1回の変動表示期間内において保留表示の色を白から青に変化させ青から赤に変化させる演出を採用して、相違点2に係る本願発明の構成Hに想到することは当業者が容易になし得るものである。

よって、本願発明は、引用発明1、2及び4に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-12-17 
結審通知日 2018-12-18 
審決日 2019-01-08 
出願番号 特願2015-23449(P2015-23449)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
P 1 8・ 575- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿部 知  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 牧 隆志
藤田 年彦
発明の名称 遊技機  
代理人 木村 満  

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