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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B |
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管理番号 | 1349310 |
審判番号 | 不服2017-16420 |
総通号数 | 232 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-11-06 |
確定日 | 2019-02-21 |
事件の表示 | 特願2013- 45510「偏光性積層フィルムの製造方法及び偏光板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月22日出願公開、特開2014-174265〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特願2013-45510号(以下「本願」という)は、平成25年3月7日の出願であって、その手続等の経緯は、概略、以下のとおりである。 平成29年 2月 7日付け:拒絶理由通知書 平成29年 3月28日付け:意見書、手続補正書 平成29年 8月24日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 平成29年11月 6日付け:審判請求書、手続補正書 平成30年 8月27日付け:拒絶理由通知書 平成30年10月25日付け:意見書、手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。) 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの、以下のものである。 「 【請求項1】 ポリビニルアルコール系樹脂を含有する塗工液を塗工機の貯留槽に供給する塗工液準備工程と、 前記塗工機の塗工ヘッドから基材フィルムの少なくとも一方の面に前記塗工液を供給して塗工した後、乾燥させることによりポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層フィルムを得る樹脂層形成工程と、 前記積層フィルムを延伸して延伸フィルムを得る延伸工程と、 前記延伸フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色して偏光子層を形成することにより偏光性積層フィルムを得る染色工程と、 を備え、 前記塗工液準備工程及び/又は前記樹脂層形成工程は、塗工機における貯留槽と塗工ヘッドとの間から、塗工機内の塗工液の一部を抜き取る液抜き工程を含み、 塗工ヘッドへ向けて塗工液を排出するための貯留槽の排出口は、貯留槽の下部に設けられ、 前記塗工機は、前記貯留槽と前記塗工ヘッドとを接続する第1配管と、第1配管から枝分かれする第2配管とを含み、 前記液抜き工程において、前記貯留槽から前記塗工ヘッドへ向けて塗工液を移送させながら、前記第2配管を介して塗工機内の塗工液の一部を抜き取り、 塗工液で充填されていない内空間を有する前記第1配管の該内空間に塗工液を通す際に前記液抜き工程を行い、 前記塗工液準備工程は、 a)調製後の塗工液を保存又は輸送するための容器に収容された塗工液を前記貯留槽に移し替える工程、又は c)前記貯留槽を、塗工液を収容する別の貯留槽に繋ぎ替える工程である、偏光性積層フィルムの製造方法。」 第3 拒絶の理由 当審が平成30年8月27日付けの拒絶理由通知書において通知した拒絶の理由は、概略、本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 <引用文献等一覧> 引用文献1:特開2005-173454号公報 引用文献2:特開平6-121956号公報 引用文献3:特開平11-47670号公報 引用文献4:特開2012-232225号公報 引用文献5:特開2012-159778号公報 引用文献6:特開2011-128486号公報 引用文献7:特開平10-239510号公報 引用文献8:特開2009-261998号公報 引用文献9:特開2005-205363号公報 引用文献10:特開2006-77196号公報 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について (1)引用文献1の記載事項 平成30年8月27日付けの拒絶理由通知書の拒絶の理由において引用文献10として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-77196号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、液晶分散型水溶性高分子溶液の製造方法に関する。また本発明は、前記製造方法により得られた液晶分散型水溶性高分子溶液を用いた液晶分散型水溶性高分子複合フィルムの製造方法に関する。前記製造方法により得られた液晶分散型水溶性高分子複合フィルムは偏光子として有用である。前記偏光子は、偏光板、光学フィルムに利用でき、さらにこれらは液晶表示装置、有機EL表示装置、CRT、PDP等の画像表示装置に好適に用いられる。 ・・・(中略)・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 本発明は、液晶性複屈折材料を含有する微小領域が、水溶性高分子溶液中に小粒径で分散している液晶分散型水溶性高分子溶液を比較的簡易な方法により製造する方法を提供することを目的とする。」 イ 「【課題を解決するための手段】 【0011】 本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す製造方法により前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。 【0012】 すなわち本発明は、液晶性複屈折材料により形成された微小領域が、所定濃度で水溶性高分子溶液中に分散している液晶分散型水溶性高分子溶液の製造方法であって、 液晶性複屈折材料と水溶性高分子溶液とを、液晶性複屈折材料が前記所定濃度よりも高濃度になるように調整した混合溶液を調製する工程(1)、 前記水溶性高分子溶液中に、前記液晶性複屈折材料が、最大粒径6μm以下の微小領域で分散するように、前記混合溶液を高剪断撹拌する工程(2)、 前記微小領域が分散した水溶性高分子溶液と、水溶性高分子溶液を混合して、前記微小領域が、前記所定濃度になるように希釈化する工程(3)、および 前記希釈化した水溶性高分子溶液中の微小領域を均一に分散撹拌する工程(4)を含むことを特徴とする液晶分散型水溶性高分子溶液の製造方法、に関する。 ・・・(中略)・・・ 【0015】 また従来の大容量のワンバッチにおける高剪断撹拌では、得られる液晶分散型水溶性高分子溶液に気泡が混入しやすい。塗工溶液に気泡が混在している状態で塗工を行うと、乾燥後のフィルム表面に気泡が発生してしまい、目的とする用途として使用できない欠点となる。脱泡方法としては、加圧減圧を繰り返す脱泡方法、インラインでの脱泡機、自然放置等が挙げられるが、溶液の容量が多いと、完全に脱泡されるまでの時間や手間を要する。特に、大容量で調製した溶液について、製膜後に支障が無いレベルまで脱泡させるのに時間がかかるが、本発明の製造方法では脱泡に関しても短時間で行うことができる。 ・・・(中略)・・・ 【0026】 (工程(1)) まず工程(1)で、液晶性複屈折材料と水溶性高分子溶液とを、液晶性複屈折材料が前記所定濃度よりも高濃度になるように調整した混合溶液を調製する。 【0027】 水溶性高分子溶液は、透光性水溶性樹脂を溶媒に溶解したものである。透光性水溶性樹脂としては、可視光領域において透光性を有するものを特に制限なく使用できる。たとえば、ポリビニルアルコールまたはその誘導体があげられる。ポリビニルアルコールの誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等があげられる他、エチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸そのアルキルエステル、アクリルアミド等で変性したものがあげられる。さらには、スルホン基、アミノ基、チオール基、燐酸基等の官能基を有するものがあげられる。 ・・・(中略)・・・ 【0054】 (工程(2)) 工程(2)では、前記水溶性高分子溶液中に、前記液晶性複屈折材料が、最大粒径6μm以下の微小領域で分散するように、前記混合溶液を高剪断撹拌する。これにより、分散媒である水溶性高分子溶液中に液晶性複屈折材料を小径化した微小領域を均一分散させる。 ・・・(中略)・・・ 【0057】 (工程(3)) 前記工程(2)で得られた微小領域が分散した水溶性高分子溶液と、水溶性高分子溶液を混合して、前記微小領域が、前記所定濃度になるように希釈化する。 ・・・(中略)・・・ 【0061】 (工程(4)) 工程(4)では、前記希釈化した水溶性高分子溶液中の微小領域を均一に分散撹拌する。液晶性複屈折材料により形成された微小領域が最大粒径6μm以下に小径化し、所定濃度で水溶性高分子溶液中に分散している液晶分散型水溶性高分子溶液が得られる。 ・・・(中略)・・・ 【0063】 撹拌時には、気泡が入らないように条件を制御して行なうのが望ましい。得られる液晶分散型水溶性高分子溶液に脱泡操作を行う時間を短縮でき、また気泡が入らないフィルムが作製できる。したがって、希釈化工程(3)で混合する、前記工程(2)で得られた、微小領域が分散した水溶性高分子溶液と、希釈化用の水溶性高分子溶液は、予め脱泡されたものを用いるのが好ましい。 【0064】 脱泡方法は、例えば、得られた液晶分散型水溶性高分子溶液等を、放置することにより行うことができる。この際、等方転移温度以上であると、小径化された微小領域が再結合したり、不安定な状態になるおそれがあるため、溶液温度は液晶性複屈折材料の等方転移温度以下が好ましい。ただし、溶液温度が高いほど粘度低下し脱泡速度は速くなるため、前記温度以下で放置温度は高いほうが好ましい。脱泡には脱泡機を使用してもよい。例えば、加圧、減圧を繰り返す脱泡方法、インラインでの脱泡機等、また特開2002-66431号公報、特開平11-47508号公報等に記載の脱泡方法を採用することもできる。 【0065】 得られた液晶分散型水溶性高分子溶液には、フィルム化する工程(I)を施して液晶分散型水溶性高分子複合フィルムを製造する。これによりマトリクス中に微小領域が分散されたフィルムを作製する。 【0066】 液晶分散型水溶性高分子複合フィルムを偏光子として用いる場合には、さらに、 (II)前記(I)で得られたフィルムを配向(延伸)する工程、 (III)前記マトリクスとなる透光性水溶性樹脂に、ヨウ素系吸光体を分散させる(染色する)工程、 を施すことにより偏光子が得られる。なお、工程(I)乃至(III)の順序は適宜に決定できる。 【0067】 前記液晶分散型水溶性高分子溶液をフィルム化する工程(I)では、前記溶液を加熱乾燥し、溶媒を除去することにより、透光性水溶性樹脂により形成されるマトリクス中に微小領域が分散されたフィルムを作製する。フィルムの形成方法としては、キャスティング法、押出成形法、射出成形法、ロール成形法、流延成形法などの各種の方法を採用できる。」 (2)引用文献1に記載された発明 上記(1)より、引用文献1の【0027】には、【0012】に記載された液晶分散型水溶性高分子溶液の製造方法における、水溶性高分子溶液として、透光性水溶性樹脂であるポリビニルアルコールを溶媒に溶解して得たものを用いることが記載されている。 また、引用文献1の【0065】及び【0066】には、引用文献1の【0012】に記載された方法で製造された液晶分散型水溶性高分子溶液を得、それを(I)フィルム化する工程、(II)延伸する工程、(III)染色する工程を施してなる、「偏光子の製造方法」の発明が記載されているといえる。 そうしてみると、引用文献1には、次の発明が記載されている(以下、「引用発明1」という。)。 「 偏光子の製造方法であって、ポリビニルアルコールを溶媒に溶解して得た水溶性高分子溶液と液晶性複屈折材料とを、液晶性複屈折材料が所定濃度よりも高濃度になるように調整した混合溶液を調製する工程(1)、 前記水溶性高分子溶液中に、前記液晶性複屈折材料が、最大粒径6μm以下の微小領域で分散するように、前記混合溶液を高剪断撹拌する工程(2)、 前記微小領域が分散した水溶性高分子溶液と、水溶性高分子溶液を混合して、前記微小領域が、前記所定濃度になるように希釈化する工程(3)、および 前記希釈化した水溶性高分子溶液中の微小領域を均一に分散撹拌する工程(4)によって、 液晶性複屈折材料により形成された微小領域が、所定濃度で水溶性高分子溶液中に分散している液晶分散型水溶性高分子溶液を得、 液晶分散型水溶性高分子溶液に、フィルム化する工程(I)を施して、マトリクス中に微少領域が分散された液晶分散型水溶性高分子複合フィルムを作製し、さらに、 (II)前記(I)で得られた液晶分散型水溶性高分子複合フィルムを配向(延伸)する工程、 (III)前記マトリクスとなるポリビニルアルコールに、ヨウ素系吸光体を分散させる(染色する)工程、 を施す、 偏光子の製造方法。」 2 引用文献2の記載事項 平成30年8月27日付けの拒絶理由通知書の拒絶の理由において引用文献2として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-121956号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、磁気記録媒体製造ライン等で磁性塗料等を供給する塗料供給装置及び方法に関する。 ・・・(中略)・・・ 【0003】 【発明が解決しようとする課題】然しながら、従来技術では、送液ラインの初期通液時等において、ライン中のエルボ、段差等に滞留しているエアがライン内の圧送塗料中に混入し、エア混入塗料が塗布装置側へと圧送されることがある。このエア混入塗料は、塗布装置での塗工品質を損なう。」 (2)「【0008】 【作用】 [1]送液ラインの初期通液時等のエア抜き時に、送液ライン内の圧送塗料はライン内の滞留エアを随伴して予備タンクに排出される。これにより、送液ライン内の滞留エアを除去し、ライン内を塗料のみにて充満した後、エア混入のない塗料を塗布装置側へと圧送できる。 【0009】[2]送液ラインが送液方向に向けて上り勾配をなすように延存されるものとすることにより、ライン内のエアは送液方向に一致する上方へと移動容易となる。従って、上記の送液ライン内の圧送塗料によるライン内エアの随伴除去作用をより確実化できる。」 (当合議体注:上記[1]及び[2]という記載は、引用文献2においては、それぞれ○中に1及び2が記載されたものである。) (3)「【0011】塗料供給装置10は、磁気記録媒体製造ラインにおいて、塗料タンク11内の磁性塗料をポンプ12によって送液ライン13から塗布装置14の側へと圧送するものである。塗布装置14としては、例えば押出し型塗布ヘッドを採用できる。 【0012】このとき、送液ライン13は、塗料タンク11との接続部に設けられる開閉弁21、中間部に設けられるドレン弁22、塗布装置14側との接続部に設けられる開閉弁23を有している。」 (4)「【0024】 【発明の効果】以上のように本発明によれば、塗布装置へのエア混入塗料の供給を防止し、塗布装置での塗工品質を向上することができる 【図面の簡単な説明】 【図1】図1は本発明の一実施例に係る塗料供給装置を示す模式図である。 【図2】図2は塗料供給装置の作動順を示す模式図である。 【符号の説明】 10 塗料供給装置 11 塗料タンク 12 ポンプ 13 送液ライン 14 塗布装置 15 予備タンク 16 減圧装置 24 開閉弁」 (5)「【図1】 【図2】 」 3 引用文献3の記載事項 平成30年8月27日付けの拒絶理由通知書の拒絶の理由において引用文献3として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-47670号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、各種塗工液の送液方法に関する。 ・・・(中略)・・・ 【0003】 【発明が解決しようとする課題】ところで、塗工液は貯留槽内に溜められ、ここから配管経路を通じて印刷ローラやコータ等の塗工手段に供給されるのが一般的であり、塗工前は配管経路内は空気で満たされている。そこで、実際の塗工に先立ち、配管経路内を塗工液で置換することが行われるが(例えば、特開昭59-34533号公報参照)、配管経路は多数の分岐部や屈曲部を含み、更に塗工液中の異物や不溶物の除去のためのフィルタ、あるいは送液量を調整するためのバルブ等が挿入されている場合が多く、このような複雑な配管経路の内部の隅々まで塗工液を行き渡らせるのは極めて困難であり、多くの場合空気が残存する。特に、フィルタは濾材が多量の空気を内含しており、濾材に振動を与える等しても空気を完全に除去するのは困難である。また、フィルタは定期的に交換され、その都度塗工液に浸漬して空気抜きが行われるが、空気が完全に抜け切るには長い時間がかかり、粘度が高い塗工液では不可能に近い。このようなフィルタ内の空気は置換用の塗工液の通過に伴って放出されるため、配管経路からの空気の除去を更に困難なものにしている。この配管経路内に残存する空気は、たとえ微量であっても、実際の塗工の際に送液される塗工液に混入して塗膜に気泡となって現れる。また、同一の塗工装置(配管経路)を用い、塗工液の種類を変えて塗工を行うこともあり、その場合新たな塗工液で配管経路内を置換することになるが、上記と同様の問題に加えて、交換前後の塗工液が混ざり合って塗工液をロスするという問題もある。」 (2)「【0006】 【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の送液方法を実施するための送液経路を示す概略図であり、塗工液タンク1と、ウエブWを搬送させるローラ2に近接配置されたコータ3とを、後述される配管系により接続して構成される。尚、塗工液は、塗工液タンク1に貯留される前に予め脱気処理されるか、あるいは塗工液タンク1内で例えば真空脱気される等して、気泡が除去されている。 【0007】配管系を説明すると、塗工液タンク1の底部に接続された送液管4は、送液ポンプ5を介して第一の三方弁6の入口側6bに接続されている。第一の三方弁6は、その出口側6cに中管7が接続され、排出側6aには塗工液タンク1に至る戻り管11が接続されている。中管7は、その途中にフィルタ7が配置され、その先端が第2の三方弁9の入口側9bに接続されている。このフィルタ7は、塗工液中の異物や不溶物等を除去するためのものである。第二の三方弁9は、その出口側9cにコータ2に至る塗工液吐出管10が接続され、排出側9aには第三の三方弁14の入口側14bに接続される排気管12が接続されている。また、排気管12の途中には、塗工液中への空気の混入を検知するための気泡センサ13が配置されている。第三の三方弁14は、その出口側14cが吸気管16を通じて真空ポンプ15に接続され、排出側14aには塗工液タンク1に至る戻し管17が接続されている。 【0008】本発明は、上記の送液経路において、第一、第二及び第三の三方弁を順次切り換えて塗工に先立ち送液経路から空気を除去し、しかる後塗工作業を行うものである。以下に、そのための操作手順を説明する。塗工液の送液前、配管経路全体は空になっており、空気で満たされている。この状態で、先ず第一の三方弁6の出口側6cを閉じ、入口側6bと排出側6aとを開き、次いで送液ポンプ5を作動させる。これにより、塗工液は、図の矢印に示すように、塗工液タンク1?送液管4?戻り管11で形成される配管経路を循環する。 【0009】これと平行して、第二の三方弁9の出口側9cを閉じ、入口側9bと排出側9aとを開き、更に第三の三方弁14の排出側14aを閉じ、入口側14bと出口側14cとを開いて真空ポンプ15を作動させる。これにより、中管7?排気管12で構成される配管経路が真空状態となり、同時にフィルタ8内の空気も脱気される。尚、この時の配管経路の真空度は1?20torr程度で、1?10torrが実用的であり、5?10torrが好ましい。本発明においては、配管経路内の空気の除去を真空引きにより行なうため、配管経路に分岐部や屈曲部が多数あっても、またフィルタ8のように空気を内含するような部材があっても、極めて短時間の内に脱気作業が完了する。」 (3)「【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の送液方法を実施するための送液経路を示す概略図である。 【符号の説明】 1 送液タンク 3 コータ 4 送液管 5 送液ポンプ 6 第一の三方弁 7 中管 8 フィルタ 9 第二の三方弁 10 吐出管 11、17 戻り管 12 排気管 13 気泡センサ 14 第三の三方弁 15 真空ポンプ」 (4)「【図1】 」 4 引用文献4の記載事項 平成30年8月27日付けの拒絶理由通知書の拒絶の理由において引用文献4として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2012-232225号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0001】 本発明は、中空粒子を含有する塗工液をシート状支持体上に塗工、乾燥して塗工層を形成する塗工シートの製造方法に関するものである。」 (2)「【0028】 (塗工設備) 本発明の製造方法で使用される塗工のための設備は、塗工液タンク、旋回流式脱泡機、及びコーターヘッドを少なくとも有し、更に気泡検知機と、前記旋回流式脱泡機により分離された気泡を多く含む塗工液を前記塗工液タンクへ還流する配管を有することが好ましい。 【0029】 (塗工液タンク) 塗工液タンクは、塗工液を調製した後、コーターヘッドへ送液するまでの間、貯蔵しておくタンクであるが、原材料の投入、分散等を行う調製タンクを兼ねていても良い。 塗工液タンクとしては、塗工液中の気泡の上方への移動、及び液面から大気中への放出を促進するため、低速で攪拌される設計となっていることが好ましい。具体的には、低速回転制御の可能な攪拌羽根を備えていることが好ましい。攪拌羽根の回転数は、多過ぎると液面より空気を抱き込んで、反って塗工液中の気泡を増加させ、少な過ぎると気泡の大気中への放出を促進させる効果が少なく、液面近くの塗料が乾燥固化し、そのまま送液されると凝集物となって塗工欠陥を生じる。最適な攪拌羽根の回転数は、塗工液の固形分濃度、粘度、保水度等によって異なり、使用する塗工液によって適宜調整される。 ・・・(中略)・・・ 【0038】 気泡検知機による測定の結果、コーターヘッドへ送られる塗工液中の気泡の量が多いと判断された場合には、三方弁等の切替器によってコーターヘッドへの送液を止め、前記塗工液タンクに還流させ低速攪拌により気泡を除去することが好ましい。コーターヘッドへの送液を止めた場合は、塗工工程が中断してしまう為、気泡の検知頻度が任意に設定された数値以上になった場合は、コーターヘッドへの送液を制限することがより好ましい。具体的には、気泡検知機による測定値のトレンドデータを監視し、気泡の量の増減に合わせて、気泡が除去された塗工液と、気泡を多く含む塗工液と、の分離閾値を旋回式脱泡器の設定条件を変更することにより適宜調整し、塗工工程を継続することがより好ましい。」 (3)「【図面の簡単な説明】 【0053】 【図1】本発明の塗工設備を示す概略図である。 ・・・(中略)・・・ 【符号の説明】 【0054】 A:塗工液タンク B: ポンプ C1:旋回式脱泡器(商品名:30、日本ジュンテック社製) C2:超音波照射式脱泡器(商品名:GSD600MAT、ギンゼン社製) C3:バッチ式真空減圧式脱泡器(商品名:縦型アジテータタイプB型、大塚製作所製) D:気泡検知機 E:ダイコーターヘッド F:配管 G:攪拌機 H:熱風乾燥機 I:ウエブ(上質紙)」 (4)「【図1】 」 5 引用文献5の記載事項 平成30年8月27日付けの拒絶理由通知書の拒絶の理由において引用文献5として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2012-159778号公報(以下「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【技術分野】 【0001】 本発明は、偏光性積層フィルム、偏光板または基材フィルム付き偏光板の製造方法、および、両面積層フィルム、両面偏光性積層フィルム、両面貼合フィルム、片面貼合フィルムに関する。」 (2)「【図面の簡単な説明】 【0024】 【図1】本発明の偏光板の製造方法の概要を示すフローチャートである。 【図2】実施例1の両面偏光性積層フィルムの製造方法、実施例2の偏光板の製造方法を説明するためのフローチャートである。」 (3)「【0114】 [実施例1] 図2に示すフローチャートのようにして、両面偏光性積層フィルム302までの製造を行った。 【0115】 (基材フィルム) エチレンユニットを約5重量%含むプロピレン/エチレンのランダム共重合体(住友化学(株)製「住友ノーブレン W151」、融点Tm=138℃)からなる樹脂層の両側にプロピレンの単独重合体であるホモポリプロピレン(住友化学(株)製「住友ノーブレンFLX80E4」、融点Tm=163℃)からなる樹脂層を配置した3層構造の基材フィルム1を、多層押出成形機を用いた共押出成形により作製した。得られた基材フィルム1の合計の厚さは90μmであり、各層の厚み比(FLX80E4/W151/FLX80E4)は3/4/3であった。 【0116】 (プライマー層形成工程) ポリビニルアルコール粉末(商品名:Z-200、日本合成化学工業(株)製、平均重合度1100、平均ケン化度99.5モル%)を95℃の熱水に溶解させ濃度3重量%の水溶液を調製した。得られた水溶液にポリビニルアルコール粉末6重量部に対して5重量部の架橋剤(住友化学(株)製、商品名:スミレーズ(登録商標)レジン650)を混ぜて、プライマー溶液を得た。基材フィルム1の一方の面にコロナ処理を施し、プライマー溶液をマイクログラビアコーターを用いて塗工し、80℃で10分間乾燥させ、厚さ0.2μmのプライマー層を形成した。 【0117】 さらに、基材フィルムの他方の面にもコロナ処理を施し、同様のプライマー溶液の塗工処理を行うことで、基材フィルム1の両面にプライマー層が形成されたフィルムを作成した。 【0118】 (樹脂層形成工程) ポリビニルアルコール粉末(商品名:PVA124、クラレ(株)製、平均重合度2400、平均ケン化度98.0?99.0モル%)を95℃の熱水中に溶解させ濃度8重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液を上記基材フィルム1の一方の面に形成されたプライマー層の表面にリップコーターを用いて塗工し、連続して80℃で2分、70℃で2分、60℃で4分間乾燥させ、基材フィルム1およびポリビニルアルコール系樹脂層21からなる2層の片面積層フィルム201を作製した。 【0119】 さらに、上記基材フィルム1の他方の面に形成されたプライマー層の表面に、同様の塗工処理を行い、ポリビニルアルコール系樹脂層21、基材フィルム1およびポリビニルアルコール系樹脂層22からなる両面積層フィルム202を作成した。このときの(延伸前の)ポリビニルアルコール系樹脂層21、22の厚さは、それぞれ、10.5μm、10.2μmであった。 【0120】 (延伸工程) 両面積層フィルム202を、ロール間縦延伸機を用いて160℃で5.8倍の自由端一軸延伸を実施した。延伸後の両面積層フィルムの2つのポリビニルアルコール系樹脂層の厚さは、それぞれ、5.1μm、4.9μmであった。延伸後の両面積層フィルム202は、カールもほとんどなくフラットなものであり、延伸工程におけるハンドリング性も非常に良好であった。 【0121】 さらに、延伸後の両面積層フィルムから切り出した小片を、23℃50%RHの環境下で5日間放置したが、まったくカールは発生せず良好な形状を保っていた。 【0122】 (染色工程) 延伸後の両面積層フィルムを60℃の温浴に60秒浸漬し、次に、30℃のヨウ素とヨウ化カリウムの混合水溶液である染色溶液に150秒ほど浸漬して染色した後、10℃の純水で余分なヨウ素液を洗い流した。次いで76℃のホウ酸とヨウ化カリウムの混合水溶液である架橋溶液に600秒浸漬させた。 【0123】 (洗浄乾燥工程) その後、両面積層フィルムを10℃の純水で4秒間洗浄し、最後に80℃で300秒間乾燥させた。以上の工程により、基材フィルム1の両面に形成されたポリビニルアルコール系樹脂層21,22を偏光子層31,32とし、両面偏光性積層フィルム302を得た。この乾燥の際に、カールはほとんど発生せず、良好な状態で連続的に両面偏光性積層フィルムを作成することが出来た。 【0124】 なお、染色溶液、架橋溶液の配合比率は、 <染色溶液> 水:100重両部 ヨウ素:0.6重量部 ヨウ化カリウム:10重量部 <架橋溶液> 水:100重両部 ホウ酸:9.5重量部 ヨウ化カリウム:5重量部 とした。」 (4)「【符号の説明】 【0136】 1 基材フィルム、21,22 ポリビニルアルコール系樹脂層、201 片面積層フィルム、202 両面積層フィルム、31,32 偏光子層、302 両面偏光性積層フィルム、41,42 保護フィルム、401 片面貼合フィルム、402 両面貼合フィルム、501,501a,501b 偏光板、601 片面偏光性積層フィルム。」 (5)「【図2】 」 6 引用文献6の記載事項 平成30年8月27日付けの拒絶理由通知書の拒絶の理由において引用文献6として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-128486号公報(以下「引用文献6」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【技術分野】 【0001】 本発明は、偏光板の製造方法に関する。」 (2)「【0084】 [実施例1] (基材フィルム) 基材フィルムとして、厚み110μmの未延伸のランダムポリプロピレン(PP)フィルムを用いた。 【0085】 (第1の樹脂層の形成) ポリビニルアルコール粉末(日本合成化学工業(株)製、平均重合度1100、平均ケン化度99.5モル%、商品名:Z-200)を95℃の熱水に溶解させ濃度3重量%の水溶液を調整した。得られた水溶液に架橋剤(住友化学(株)製、商品名:スミレーズ(登録商標)レジン650)をポリビニルアルコール粉末6重量部に対して5重量部を混ぜた。得られた混合水溶液をコロナ処理を施した基材フィルム上に塗工し、80℃で10分間乾燥させ厚み0.2μmの第1の樹脂層を形成した。 【0086】 (第2の樹脂層の形成) ポリビニルアルコール粉末(クラレ(株)製、平均重合度2400、平均ケン化度98?99モル%)を95℃の熱水中に溶解させ濃度8重量%のポリビニルアルコール水溶液を調整した。得られた水溶液を上記第1の樹脂層の上に塗工し80℃で20分間乾燥させ、基材フィルム、第1の樹脂層、第2の樹脂層からなる三層の積層フィルムを作成した。樹脂層形成工程後で、偏光フィルム化処理工程前の第2の樹脂層の厚みは15μmであった。 【0087】 (偏光フィルム化処理工程) 上記積層フィルムをテンター装置を用いて加熱温度126℃で縦方向の自由端一軸延伸により5.8倍に延伸し延伸フィルムを得た。その後、延伸フィルムを60℃の温浴に60秒浸漬し、30℃のヨウ素とヨウ化カリウムの混合水溶液に180秒浸漬した後、10℃の純水で余分なヨウ素液を洗い流した。次いで76℃のホウ酸とヨウ化カリウムの混合水溶液に300秒浸漬させた。その後10℃の純水で4秒間洗浄し、最後に50℃で300秒間乾燥させ基材フィルム付き偏光フィルムを得た。偏光フィルム化処理工程後の偏光フィルムの厚みは7μmであった。染色工程において、第2の樹脂層の剥離は見られなかった。表1に結果を示す。」 7 引用文献7の記載事項 平成30年8月27日付けの拒絶理由通知書の拒絶の理由において引用文献7として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-239510号公報(以下「引用文献7」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、例えば液晶表示装置用のカラーフィルタの製造装置及び該装置における泡抜き方法及びプリント装置及び該装置における泡抜き方法に関するものである。 ・・・(中略)・・・ 【0007】 【発明が解決しようとする課題】ところで、このようなインクジェット法では、ヘッドに安定してインクを供給するためのインク供給系を有した製造装置が用いられるが、このような装置においては、例えば、不吐出等を起こしたインクジェットヘッドを交換するために、ヘッドをインク供給系から切り離す脱着部を有している。 【0008】この脱着部において、一度でも脱着動作を行うと、インク供給系内に泡が進入することは避けられず、進入した泡は、一旦インク供給系内に入るとその系外に取り除くことが非常に困難である。また、インク供給系内に滞った泡は、ヘッド内に入り込む可能性が高く、ヘッドの不吐出や吐出の不安定を引き起こすことがあり、問題である。また、カラーフィルタの製造においては、こうした泡による不吐出などは、画素の白抜け等の致命的欠陥を引き起こす。」 (2)「【0047】図1はカラーフィルタの製造装置の構成を示す概略図である。 【0048】図1において、51は装置架台、52は架台51上に配置されたXYθステージ、53はXYθステージ52上にセットされたカラーフィルタ基板、54はカラーフィルタ基板53上に形成されるカラーフィルタ、55はカラーフィルタ54の着色を行うR(赤),G(緑),B(青)のインクジェットヘッド、58はカラーフィルタ製造装置90の全体動作を制御するコントローラ、59はコントローラの表示部であるところのティーチングペンダント(パソコン)、60は59の操作部であるところのキーボードを示している。 【0049】図2A乃至図2Eはインク供給路を示す図である。 【0050】図1、図2A乃至図2Dにおいて、551はインクジェットヘッド外に配置されたインクタンク、552はインクチューブの脱着部、553a,553bはインクをインクタンクからインクジェットヘッド55に導くためのインクチューブ、554はインクチューブの途中に設けられた泡抜き用分岐弁、555は泡抜き用分岐弁を介してインクチューブ内からインクとともに泡を抜き出して排出するための排出チューブ、559はインクタンク551からインクジェットヘッド55にインクを供給するためのポンプを示している。 【0051】図2C乃至図2Eにおいて556はインクチューブ内に進入した気泡を示し、557,558は気泡の排出方向を示す矢印を示している。 【0052】図2Aは、インクジェットヘッド55とインクタンク551間をつなぐインクチューブ553a,553b、脱着部552、及び泡抜き用分岐弁554内がすべてインクで満たされ、インク供給路内に泡のない状態を示す。泡抜き用分岐弁554は、ヘッド55と脱着部552が連通するように切り替えられており、インクチューブ553a内のインクは排出チューブ555に進入しないようになされている。。 【0053】図2Bはインクジェットヘッド55をインク供給路から切り放した状態を示す図であり、図2Cはインクジェットヘッド55をインク供給路に再び接続した状態を示す図である。 【0054】このようにインクジェットヘッド55をインク供給路から脱着すると、脱着部552から気泡556が脱着部552の内部または脱着部552の近傍のインクチューブ553a,553b内に入り込む。 【0055】図2Dは図2Cで示す気泡556をインク供給路外に排出する工程を示した図である。 【0056】排出チューブ555と脱着部552が連通するように、泡抜き用分岐弁554を切り替え、ポンプ559を駆動し、インクタンク551のインクを脱着部552に向かって押し出し、気泡556を矢印557で示すようにインク供給路外に排出する。気泡の排出後は、泡抜き用分岐弁554を切り替え、図2Aの状態に戻す。」 (3)「【0092】 【図面の簡単な説明】 【図1】カラーフィルタの製造装置の一実施形態の構成を示す概略図である。 【図2A】カラーフィルタ製造装置のインク供給路の構成図である。 【図2B】カラーフィルタ製造装置のインク供給路の構成図である。 【図2C】カラーフィルタ製造装置のインク供給路の構成図である。 【図2D】カラーフィルタ製造装置のインク供給路の構成図である。 ・・・(中略)・・・ 【符号の説明】 52 XYθステージ 53 ガラス基板 54 カラーフィルタ 55 着色ヘッド 56 テレビカメラ 58 コントローラ 59 ティーチングペンダント 60 キーボード」 (4)「【図1】 」 8 引用文献8の記載事項 平成30年8月27日付けの拒絶理由通知書の拒絶の理由において引用文献8として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2009-261998号公報(以下「引用文献8」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【技術分野】 【0001】 本発明は、各種塗工装置に塗液を供給する塗液供給装置に関し、特に異物や気泡の混入を厳密に防止する必要のある精密塗工装置用に用いる塗液供給装置およびこれを用いた塗液供給方法に関する。 ・・・(中略)・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0011】 本発明が解決しようとする課題は、各種塗工装置に供給する塗液の送液開始時あるいは切替作業時における塗液供給経路への気泡の混入を効率的に防止することができる塗液供給装置およびこれを用いた塗液供給方法を提案することである。」 (2)「【0028】 次に、図1に示した塗液供給装置を用いた場合の塗液供給方法について説明する。 現在は、塗液タンク2から塗液が供給されており、塗液は塗液供給配管19、塗液供給バルブ9、塗液供給配管16を経由して、塗液供給ポンプ15によって塗工機に送液されている。 塗液タンクの切替に当たっては、新しい塗液タンクとして塗液タンク1を所定の場所にセットし、塗液供給配管18と、加圧ガス供給配管20と、気泡除去配管14を、それぞれ接続手段3a、3c、3bによって接続する。この時、塗液供給配管18の中には、空気が存在しているので、このまま塗液タンクを切り替えると、空気が塗液に混入することになるため、気泡除去操作を実施する。なお塗液供給バルブ4は、閉じた状態になっている。 【0029】 まず塗液タンク圧力解放バルブ7を閉じてから気泡除去バルブ5を解放し、塗液タンク加圧バルブ6を開くと、塗液タンク1の内部は加圧ガスによって加圧され、内部の塗液を塗液供給配管18から押し出す。押し出された塗液は、配管内の空気を押し出しながら気泡除去バルブ5、気泡除去配管13を経由して塗液タンク2内に排出される。 気泡除去配管13は、塗液供給バルブ4の直前から分岐しているので、この時、塗液供給バルブ4の周辺の空気はすべて塗液によって押し出され、配管内には残留しない。この後、気泡除去バルブ5と塗液タンク加圧バルブ6を閉じ、塗液タンク圧力解放バルブ7を開いて圧力を解放すると、切替準備が完了する。」 (3)「【図面の簡単な説明】 【0033】 【図1】本発明に係る塗液供給装置の1実施例の構造を示した説明図である。 【図2】本発明に係る塗液供給装置の他の実施例の構造を示した説明図である。 【符号の説明】 【0034】 1・・・塗液タンク 2・・・塗液タンク 3a?3c・・・接続手段 4・・・塗液供給バルブ 5・・・気泡除去バルブ 6・・・塗液タンク加圧バルブ 7・・・塗液タンク圧力解放バルブ 8a?8c・・・接続手段 9・・・塗液供給バルブ 10・・・気泡除去バルブ 11・・・塗液タンク加圧バルブ 12・・・塗液タンク圧力解放バルブ 13・・・気泡除去配管 14・・・気泡除去配管 15・・・塗液供給ポンプ 16・・・塗液供給配管 17・・・加圧ガス供給源 18・・・塗液供給配管 19・・・塗液供給配管」 (4)「【図1】 」 9 引用文献9の記載事項 平成30年8月27日付けの拒絶理由通知書の拒絶の理由において引用文献9として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-205363号公報(以下「引用文献9」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0001】 本発明は、板状被処理物表面に形成した被膜の膜厚、色度および/または光学濃度を測定し、この測定結果をフィードバックし、所定の膜厚、色度および/または光学濃度に達していない場合には、所定の処置を行う枚葉塗膜形成装置及び枚葉塗膜形成方法に関する。」 (2)「【0013】 図1に示すように、枚葉塗膜形成装置は、送込み部と、塗布装置と、減圧乾燥装置と、受取部と、加熱装置及び冷却装置と、搬送部と、分配部とからなる。塗布装置には、スリットノズルが設けられている。このスリットノズルには、ポンプAを通って塗布液が供給され、エアバルブAがその供給量をコントロールし、また、エアバルブB及びポンプBを通って、スリットノズル用エア抜きタンクと接続している。なお、エアバルブBは、スリットノズルのエアを抜く以外には常に閉めている。 【0014】 また、減圧乾燥装置では短時間のうちに、塗布液全体から塗布液中の溶媒をある程度除去した生乾き状態とし、搬送中に塗布液が波打ったり、流れ落ちることがないようにする。なお、減圧乾燥せずに、加熱装置でいきなり加熱すると、塗膜の表面のみが固まる現象が生じやすく、塗膜中に溶媒が濃度勾配をもって残存する傾向にあり好ましくない。 【0015】 また、本実施例の加熱装置は、一回3枚の板状被処理物をベークすることができ、冷却装置は、一回1枚の板状被処理物を冷却することができる。更に、搬送部の後部に板状被処理物の膜厚、色度および/または光学濃度を測定する測定装置が設けられている。この測定装置は、コントローラセンサーによって、エアバルブA及びBの開閉をコントロールする。 【0016】 このように、塗布装置に送られてきた板状被処理物上にスリットノズルから塗布液を供給して、そして減圧乾燥装置で減圧乾燥をしてから、受取部を経て、ロボットによって加熱装置に送られる。加熱装置ではベークされた板状被処理物は、冷却装置で冷却した後に搬送部に設けた測定装置によって、膜厚、色度および/または光学濃度を測定する。本実施例で用いた膜厚測定装置は、色度測定機である。この色度測定機は、色で膜厚の厚さを測定する。なお、膜厚測定は、色度測定機に限らない。 【0017】 また、板状被処理物の測定場所は、とくに制限はないが、少なくとも塗布開始位置と基板中央部を各1点含むことが必要である。本発明の動作例として、赤色の塗膜の膜厚を面内3点の色度値で管理する例を用いて説明する。ここで、管理規格は、中心値±7/1000とする。 【0018】 図2に示すように、測定結果が規格中心値±7/1000を超えていない場合には、板状処理物はそのまま分配部に送り込む。一方、測定結果が規格中心値±7/1000を超えた場合には、アラーム信号が発生して、塗布装置への板状被処理物の送り込みを停止し、スリットノズルはディップ位置で待機すると同時に、エアバブルAが閉じ、塗布液の送り込みが停止する。 【0019】 次に、エアバルブBを開けると、スリットノズルのエア抜きが開始する。そして、スリットノズルの洗浄を行い、プリディスペンスをしてから、アラームを解除して、通常動作に戻って塗布を再開する。」 (3)「【図面の簡単な説明】 【0023】 【図1】本発明に係る枚葉塗膜形成装置の構成図」 (4)「【図1】 」 第5 対比・判断 (1)対比 本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。 ア 延伸工程、染色工程、偏光性積層フィルムの製造工程 引用発明の「偏光子の製造方法」は、「(II)前記(I)で得られた液晶分散型水溶性高分子複合フィルムを配向(延伸)する工程」、「(III)前記マトリクスとなるポリビニルアルコールに、ヨウ素系吸光体を分散させる(染色する)工程」、「を施す」、「偏光子の製造方法」である。 そうしてみると、引用発明の(光学素子としての)「偏光子」、「(II)前記(I)で得られた液晶分散型水溶性高分子複合フィルムを配向(延伸)する工程」及び「(III)前記マトリクスとなるポリビニルアルコールに、ヨウ素系吸光体を分散させる(染色する)工程」は、それぞれ本願発明の「偏光子」、「延伸工程」、「染色工程」に相当する。また、引用発明の(フィルムとしての)「偏光子」及び「偏光子の製造方法」と、本願発明の「偏光性積層フィルム」及び「偏光性積層フィルムの製造方法」とは、ぞれぞれ、「偏光性フィルム」及び「偏光性フィルムの製造方法」の点で共通する。 イ 積層フィルム、樹脂層形成方法、延伸工程 上記アで述べた各工程の対比結果からみて、引用発明の「液晶分散型水溶性高分子複合フィルム」と本願発明の「積層フィルム」とは、「延伸前フィルム」の点で共通する。また、引用発明の「液晶分散型水溶性高分子溶液に、フィルム化する工程(I)を施して、マトリクス中に微少領域が分散された液晶分散型水溶性高分子複合フィルムを作製」する工程と、本願発明の「前記塗工機の塗工ヘッドから基材フィルムの少なくとも一方の面に前記塗工液を供給して塗工した後、乾燥させることによりポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層フィルムを得る樹脂層形成工程」とは、「延伸前フィルムを得る工程」の点で共通する。 また、引用発明の「(II)前記(I)で得られた液晶分散型水溶性高分子複合フィルムを配向(延伸)」して得られたもの(以下「延伸後フィルム」という。)は、本願発明の「延伸フィルム」に相当する。加えて、引用発明の「(II)前記(I)で得られた液晶分散型水溶性高分子複合フィルムを配向(延伸)する工程」と、本願発明の「前記積層フィルムを延伸して延伸フィルムを得る延伸工程」とは、「前記延伸前フィルムを延伸して延伸フィルムを得る延伸工程」の点で共通する。 ウ 染色工程 引用発明の「(III)前記マトリクスとなるポリビニルアルコールに、ヨウ素系吸光体を分散させる(染色する)工程」は、技術的にみて、延伸後フィルムのポリビニルアルコールをヨウ素系吸光体で染色して偏光子を得る工程といえる。 そうしてみると、「ヨウ素系吸光体」は、本願発明の「二色性色素」に相当する。また、引用発明の「ポリビニルアルコール」と、本願発明の「ポリビニルアルコール系樹脂層」は、「ポリビニルアルコール系樹脂」の点で共通する。 そして、引用発明の「(III)前記マトリクスとなるポリビニルアルコールに、ヨウ素系吸光体を分散させる(染色する)工程」と、本願発明の「前記延伸フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色して偏光子層を形成することにより偏光性積層フィルムを得る染色工程」とは、「前記延伸フィルムのポリビニルアルコール系樹脂」「を二色性色素で染色して偏光子」「を形成することにより偏光性」「フィルムを得る染色工程」の点で共通する。 (2)一致点及び相違点 ア 本願発明1と引用発明は、次の構成で一致する。 (一致点) 「 延伸前フィルムを得る工程と、 前記延伸前フィルムを延伸して延伸フィルムを得る延伸工程と、 前記延伸フィルムのポリビニルアルコール系樹脂を二色性色素で染色して偏光子を形成することにより偏光性フィルムを得る染色工程と、 を備える、偏光性フィルムの製造方法。」 イ 本願発明と引用発明は、次の点で相違する。 (相違点1) 本願発明は、「ポリビニルアルコール系樹脂を含有する塗工液を塗工機の貯留槽に供給する塗工液準備工程と」、「前記塗工機の塗工ヘッドから基材フィルムの少なくとも一方の面に前記塗工液を供給して塗工した後、乾燥させることによりポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層フィルムを得る樹脂層形成工程と」、「前記積層フィルムを延伸して延伸フィルムを得る延伸工程と」、「前記延伸フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色して偏光子層を形成することにより偏光性積層フィルムを得る染色工程と」、「を備え」、「前記塗工液準備工程及び/又は前記樹脂層形成工程は、塗工機における貯留槽と塗工ヘッドとの間から、塗工機内の塗工液の一部を抜き取る液抜き工程を含み」、「塗工ヘッドへ向けて塗工液を排出するための貯留槽の排出口は、貯留槽の下部に設けられ」、「前記塗工機は、前記貯留槽と前記塗工ヘッドとを接続する第1配管と、第1配管から枝分かれする第2配管とを含み」、「前記液抜き工程において、前記貯留槽から前記塗工ヘッドへ向けて塗工液を移送させながら、前記第2配管を介して塗工機内の塗工液の一部を抜き取り」、「塗工液で充填されていない内空間を有する前記第1配管の該内空間に塗工液を通す際に前記液抜き工程を行」うものであるのに対して、引用発明は上記下線を付した構成を具備するとはいえない点。 (相違点2) 本願発明における「前記塗工液準備工程」は、「a)調製後の塗工液を保存又は輸送するための容器に収容された塗工液を前記貯留槽に移し替える工程、又はc)前記貯留槽を、塗工液を収容する別の貯留槽に繋ぎ替える工程」を備えるのに対して、引用発明は、このように特定されたものではない点。 (3)相違点についての判断 相違点1及び2についての判断は、以下のとおりである。 ア 相違点1について (ア) A)塗工機の貯留槽に供給する塗工液を準備し、塗工ヘッドへ向けて塗工液を排出するための貯留槽の排出口を貯留槽の下部に設けること、及びB)塗工開始時等において、貯留槽と塗工ヘッドとを接続する配管内の気泡を除去し、塗膜に気泡が混入することを防止するために、当該配管から枝分かれする配管に気泡を含む塗工液を排出し、気泡を含む塗工液を除去した後に塗工を開始することは、いずれも塗工・成膜の技術分野における周知技術である(以下上記A)及びB)を、それぞれ「周知技術A」及び「周知技術B」という。)。 (イ) 周知技術Aに関しては、例えば、引用文献2の【0011】及び【図1】には、塗料タンク11内の塗料を塗料タンク11の下部に設けれた送液ライン13から塗布装置14の側へと圧送することが記載されている(上記第4の2(3)及び(5))。 また、引用文献3の【0007】及び【図1】には、塗工液タンク1の底部に接続された送液管4が、三方弁6に接続され、三方弁6の出口側6cに中管7が接続され、中管7は、その先端が第2の三方弁9の入口側9bに接続され、第二の三方弁9は、その出口側9cにコータ2に至る塗工液吐出管10が接続されることが記載されている(上記第4の3(2)及び(4))。 さらに、引用文献4の【0028】及び【図1】には、塗工タンクA、コーターヘッドE及び配管Fを有し、塗工タンクAと配管Fが塗工タンクAの下部で接続し、配管FがコーターヘッドEに接続した構成が記載されている(上記第4の4(2)及び(4))。 (ウ) 周知技術Bに関しては、例えば、引用文献2の【0003】には、送液ラインの初期通液時等において、ライン中の滞留しているエアがライン内の圧送塗料中に混入し、エア混入塗料が塗布装置側へと圧送されることが記載され、また、【0008】、【図1】及び【図2】には、送液ラインの初期通液時等のエア抜き時に、送液ライン内の圧送塗料をライン内の滞留エアを随伴して予備タンクに排出することにより、送液ライン内の滞留エアを除去し、ライン内を塗料のみにて充満した後、エア混入のない塗料を塗布装置側へと圧送することが記載されている(上記第4の(1)、(2)及び(5))。 また、引用文献3の【0003】には、配管経路内に残存する空気は、塗工の際に送液される塗工液に混入して塗膜に気泡となって現れることが記載され、また、【0008】、【0009】及び【図1】には、塗工液の送液前、配管経路全体は空になっており、空気で満たされている状態で、先ず第一の三方弁6の出口側6cを閉じ、入口側6bと排出側6aとを開き、次いで送液ポンプ5を作動させることにより、塗工液は、塗工液タンク1?送液管4?戻り管11で形成される配管経路を循環し、これと平行して、第二の三方弁9の出口側9cを閉じ、入口側9bと排出側9aとを開き、更に第三の三方弁14の排出側14aを閉じ、入口側14bと出口側14cとを開いて真空ポンプ15を作動させることにより、中管7?排気管12で構成される配管経路が真空状態となり、同時にフィルタ8内の空気も脱気されることが記載されている(上記第4の3(1)、(2)及び(4))。 また、引用文献4の【0038】及び【図1】には、気泡検知機による測定の結果、コーターヘッドへ送られる塗工液中の気泡の量が多いと判断された場合には、三方弁等の切替器によってコーターヘッドへの送液を止め、前記塗工液タンクに還流させ低速攪拌により気泡を除去することが記載されている(上記第4の4(2)及び(4))。 また、引用文献7の【0008】には、インク供給系内に滞った泡は、ヘッドの不吐出や吐出の不安定を引き起こすことがあり、画素の白抜け等の致命的欠陥を引き起こすことが記載され、また、【0050】-【0056】、【図1】、【図2A】-【図2D】には、インクジェットヘッド55をインク供給路から脱着すると、脱着部552から気泡556が脱着部552の内部または脱着部552の近傍のインクチューブ553a、553b内に入り込み、排出チューブ555と脱着部552が連通するように、泡抜き用分岐弁554を切り替え、ポンプ559を駆動し、インクタンク551のインクを脱着部552に向かって押し出し、気泡556を矢印557で示すようにインク供給路外に排出し、気泡の排出後は、泡抜き用分岐弁554を切り替え、図2Aの状態に戻すことが記載されている(上記第4の7(1)、(2)及び(4))。 また、引用文献8の【0011】、【0028】、【0029】、【図1】には、塗工装置に供給する塗液の送液開始時あるいは切替作業時における塗液供給経路への気泡の混入を効率的に防止することができる塗液供給装置であって、塗液タンク2から塗液が供給されており、塗液は塗液供給配管19、塗液供給バルブ9、塗液供給配管16を経由して、塗液供給ポンプ15によって塗工機に送液されており、塗液タンクの切替に当たっては、新しい塗液タンクとして塗液タンク1を所定の場所にセットし、塗液供給配管18と、加圧ガス供給配管20と、気泡除去配管14を、それぞれ接続手段3a、3c、3bによって接続し、塗液供給配管18の中には、空気が存在しているので、このまま塗液タンクを切り替えると、空気が塗液に混入することになるため、気泡除去操作を実施することとし、供給バルブ4は、閉じた状態で、塗液タンク圧力解放バルブ7を閉じてから気泡除去バルブ5を解放し、塗液タンク加圧バルブ6を開くと、塗液タンク1の内部は加圧ガスによって加圧され、内部の塗液を塗液供給配管18から押し出し、押し出された塗液は、配管内の空気を押し出しながら気泡除去バルブ5、気泡除去配管13を経由して塗液タンク2内に排出されることが記載されている(上記第4の8(1)、(2)及び(4))。 さらに、引用文献9の【0013】-【0019】及び【図1】には、塗布装置のスリットノズルには、ポンプAを通って塗布液が供給され、エアバルブAがその供給量をコントロールし、スリットノズルのエアを抜く以外には常に閉めているエアバルブB及びポンプBを通って、スリットノズル用エア抜きタンクと接続しており、膜厚測定装置によって板状被処理物の膜厚測定を行い、その測定結果が規格中心値±7/1000を超えた場合には、アラーム信号が発生して、塗布装置への板状被処理物の送り込みを停止し、スリットノズルはディップ位置で待機すると同時に、エアバブルAが閉じ、塗布液の送り込みが停止し、エアバルブBを開けて、スリットノズルのエア抜きをすることが記載されている(上記第4の9(2)及び(4))。 (エ) そして、偏光子の延伸前フィルムをポリビニルアルコールの塗工、成膜により作製することは、当業者における常法である(例えば、引用文献5の【0118】、引用文献6の【0086】、特開2005-173454号公報(平成30年8月27日付けの拒絶理由通知書における引用文献1)の【0138】を参照。)。 また、引用文献1の【0063】には、引用発明の「前記希釈化した水溶性高分子溶液中の微小領域を均一に分散撹拌する工程(4)」において「水溶性高分子溶液」として予め脱泡されたものを用いることが好ましいことが記載されている。そうしてみると、引用発明において、優れた特性を有する偏光子を製造するためには気泡を含まない溶液を用いることが必要であって、引用発明は、「液晶分散水溶性高分子溶液に、フィルム化する工程(I)」において気泡を除去するという課題を有していると認められる。 そうしてみると、引用発明において、上記周知技術A及びBを採用することによって、「ポリビニルアルコール系樹脂を含有する塗工液を塗工機の貯留槽に供給する塗工液準備工程」、「を備え」、「前記塗工液準備工程及び/又は前記樹脂層形成工程は、塗工機における貯留槽と塗工ヘッドとの間から、塗工機内の塗工液の一部を抜き取る液抜き工程を含み」、「塗工ヘッドへ向けて塗工液を排出するための貯留槽の排出口は、貯留槽の下部に設けられ」、「前記塗工機は、前記貯留槽と前記塗工ヘッドとを接続する第1配管と、第1配管から枝分かれする第2配管とを含み」、「前記液抜き工程において、前記貯留槽から前記塗工ヘッドへ向けて塗工液を移送させながら、前記第2配管を介して塗工機内の塗工液の一部を抜き取り」、「塗工液で充填されていない内空間を有する前記第1配管の該内空間に塗工液を通す際に前記液抜き工程を行」う構成とすることは、当業者における通常の創意工夫の範囲内の事項にすぎない。 (オ) また、偏光フィルムの製造方法において、基材フィルムを用い、基材フィルムの一方の面にポリビニルアルコール系樹脂を含有する塗工液を供給して塗工、乾燥させて積層フィルムを作製した後に、延伸し、染色することは、周知技術である(以下「周知技術C」という。)。例えば、引用文献5の【0115】-【0124】及び【図2】には、基材フィルム1の両面にポリビニルアルコール水溶液を塗工し、乾燥させ、両面積層フィルム202を作製した後に、延伸工程及び染色工程を行うことが記載されている(上記第4の5(3)及び(5))。また、引用文献6の【0084】-【0087】には、基材フィルムの上にポリビニルアルコール水溶液を塗工し乾燥させ、積層フィルムを作成し、積層フィルムを延伸し延伸フィルムを得、延伸フィルムをヨウ素とヨウ化カリウムの混合水溶液に浸漬した後、ヨウ素液を洗い流すことが記載されている(上記第4の6(2))。 そして、偏光フィルムの製造方法は、製品の仕様や用途等に応じて検討するものであって、引用発明において、基材フィルムを用いた製造方法を採用することは適宜なし得ることである。 そうしてみると、「偏光子の製造方法」である、引用発明において、周知技術Cを採用することによって、「前記塗工機の塗工ヘッドから基材フィルムの少なくとも一方の面に前記塗工液を供給して塗工した後、乾燥させることによりポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層フィルムを得る樹脂層形成工程と」、「前記積層フィルムを延伸して延伸フィルムを得る延伸工程と」、「前記延伸フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色して偏光子層を形成することにより偏光性積層フィルムを得る染色工程と」を備えた構成とすることは、当業者における通常の創意工夫の範囲内の事項にすぎない。 (カ) 審判請求人は、平成30年10月25日付け意見書において、概略、引用文献1には、液晶分散型水溶性高分子溶液を放置したり、脱泡機を用いたりすることにより脱泡を行うことについて記載されているものの(【0064】)、液抜き工程に関する記載はなく、塗工液中の泡を無くすために、塗工液を長時間にわたり大量に供給し、その結果、基材フィルムのロスが大量に発生してしまうという不具合は認識されず、引用文献2-9のいずれにおいても、偏光性積層フィルムにおいて非常に大きな不具合となり得る塗工液中の目に見えないような小さな泡を無くそうとすることについては認識されないことから、引用文献1に、引用文献2-9に開示される手段を適用して本願発明1の構成に想到することは決して容易ではない旨主張している。 しかしながら、上述のとおり、塗膜に気泡が混入することを防止するために、塗工開始前に液抜きを行うことは、塗工・成膜に関する技術分野における周知技術であって、引用発明は、「液晶分散型水溶性高分子溶液に、フィルム化する工程(I)」において気泡を除去するという課題を有するものであるといえる。そうしてみると、引用発明において、上記周知技術を採用し、塗膜に気泡が混入することを防止するために、塗工開始前に液抜きを行うことは当業者が通常の創作能力を発揮することによってなし得る事項である したがって、出願人の主張は採用できない。 (キ) 以上のことから、引用発明において、当該周知技術A-Cを採用し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到するものであるといえる。 イ 相違点2について 塗工液を塗工する前に脱泡をすること及び塗工液を貯留する容器を別のものに繋ぎ替えることは、塗工・成膜の技術分野における周知技術である(以下「周知技術D」という。)。例えば、引用文献2の【0003】には、送液ラインの初期通液時等において、ライン中に滞留しているエアがライン内の圧送塗料中に混入し、エア混入塗料が塗布装置側へと圧送され、このエア混入塗料は塗布装置での塗工品質を損なうことが記載されている(上記第4の2(1))。また、引用文献3の【0009】には、塗工液の送液前、配管経路全体は空になっており、空気で満たされている状態において、配管経路の脱気作業を行うことが記載されている(上記第4の3(2))。さらに、引用文献8の【0028】には、塗液タンク2から塗液が供給されており、塗工機に送液されている状態から、塗液タンクの切替に当たっては、新しい塗液タンクとして塗液タンク1を所定の場所にセットし、塗液供給配管18と、加圧ガス供給配管20と、気泡除去配管14を、それぞれ接続手段3a、3c、3bによって接続し、この時、塗液供給配管18の中には、空気が存在しているので、このまま塗液タンクを切り替えると、空気が塗液に混入することになるため、気泡除去操作を実施することが記載されている(上記第4の8(2))。 そうしてみると、塗工・成膜の技術分野に属する、引用発明において、「液晶分散型水溶性高分子溶液に、フィルム化する工程(I)を施して液晶分散型水溶性高分子複合フィルムを製造」する際、周知技術Dを採用し、塗工液を貯留する容器を別のものに繋ぎ替えることとし、その後に塗工液を塗工する前に脱泡を行うことで、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者における通常の創意工夫の範囲内の事項にすぎない。 また、審判請求人は、平成30年10月25日付け意見書において、概略、引用文献1において、本願発明により奏される、塗工液準備工程がa)又はc)のような「泡が生じやすい」工程である場合でも、塗工液を塗工する際の、泡を包含する塗工液が塗工機から基材フィルムに供給される量(時間)を極力少なく(短く)することができ、基材フィルムのロスを効果的に低減できるという作用効果は記載されていない旨主張している。 しかしながら、上述のとおり、塗工液を塗工する前に脱泡をすること及び塗工液を貯留する容器を別のものに繋ぎ替えることが周知技術であることに基づけば、上記作用効果は当該周知技術から予測し得る程度のものである。したがって、出願人の主張は採用できない。 以上のことから、引用発明において、周知技術Dを採用し、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到するものであるといえる。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-12-13 |
結審通知日 | 2018-12-18 |
審決日 | 2019-01-08 |
出願番号 | 特願2013-45510(P2013-45510) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤岡 善行 |
特許庁審判長 |
樋口 信宏 |
特許庁審判官 |
宮澤 浩 川村 大輔 |
発明の名称 | 偏光性積層フィルムの製造方法及び偏光板の製造方法 |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |