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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03G
管理番号 1349320
審判番号 不服2017-19347  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-27 
確定日 2019-02-21 
事件の表示 特願2014- 56「記録装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月16日出願公開、特開2015-130547〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年1月6日に出願したものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年3月23日付け :拒絶理由の通知
平成29年4月24日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年10月31日付け:拒絶査定
平成29年12月27日 :拒絶査定不服審判の請求


第2 本願発明
本願の請求項1?5に係る発明は、平成29年4月24日提出の手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
外部の音声を取得し、前記音声を第1信号に変換する変換部と、
前記第1信号を増幅して第2信号を生成する増幅部と、
前記第2信号を記録する記録部と、
前記第2信号のレベルを表示する表示部と、
前記表示部における前記第2信号のレベルの表示または非表示を設定する設定部と、
前記増幅部および表示部を制御する制御部と、を備え、
前記増幅部は、
前記第2信号のレベルに応じて前記増幅部の増幅度を調整するALC部を有し、
前記制御部は、
前記ALC部が動作するか否かを選択可能とし、
前記ALC部が動作するとき、前記表示部における前記第2信号のレベルの表示又は非表示を選択可能にする一方、
前記ALC部が動作しなく、かつ前記表示部における前記第2信号のレベルが表示に設定されているとき、前記表示部における前記第2信号のレベルを表示させ、前記ALC部が動作しなく、かつ前記表示部における前記第2信号のレベルが非表示に設定されているとき、前記表示部における前記第2信号のレベルを強制的に表示させる、
記録装置。」

第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は次のとおりである。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2004-023623号公報

第4 引用発明及び周知技術
1 引用発明
(1)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2004-23623号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

「【0002】
【従来の技術】
従来、音声を記録可能な装置において、その音声の記録レベル調整を自動的に行なう、オート・レベルコントロール・モード(以下オートモードと称す)と、使用者が手動でレベル調整を行なうマニュアル・レベルコントロール・モード(以下マニュアルモードと称す)を備えている装置がある。マニュアルモードを備えた記録装置においては、使用者が音声記録レベルを確認する為のレベル表示装置を備えることが必須となる。」

「【0006】
そこで、ビデオカメラの液晶モニタ等の表示手段に音声レベル表示を表現することが考えられるが、最近のように小型なビデオカメラの液晶表示部に音声レベル表示を行なうと、本来の表示手段の用途である映像のモニターを常時邪魔してしまい、撮影者の撮影を妨げることになり得るという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、上述の問題点を除去する為に成されたもので、ビデオカメラのように映像と音声とを扱う記録再生装置を対象に、映像のモニターと音声レベル表示とが見やすく構成された表示装置を提供し、当該表示装置を備えて撮影と音声レベル調整とが容易に行なえる記録再生装置を提供することを目的とする。」

「【0013】
図1において、1はマイクや外部接続端子から入力された音声信号を入力する音声入力端子、2はスピーカ等へ音声信号を出力する音声出力端子、3は音声のオートマチックレベルコントロール(ALC)回路、4は音声レベル調整回路、5は後述するAUTO/MANUAL切り替えスイッチ14の動作に応じて信号の流れを選択する選択回路、6は記録回路、7は再生回路、8は記録媒体、9はレベル検出回路、10はレベル表示ドライバー、11は表示器、12は警告発生回路、13は制御回路、14は音声のレベルコントロールに関してAUTOモードとMANUALモードを選択するAUTO/MANUAL切り替えスイッチ、15は選択回路5からの入力と再生回路7からの入力のうち一方を選択するスイッチである。
【0014】
図1において、記録再生装置101が記録モードのとき、入力端子1から入力された信号は、ALC回路3とレベル調整回路4に入力されて、選択回路5に出力する。
使用者によるAUTO/MANUAL切り替えスイッチ14の操作に従って制御回路13がAUTOモード/MANUALモードを決定し、各モードに応じた制御を実行するが、ここで決定されたモードに従って、選択回路5ではALC回路3またはレベル調整回路4のうち一方の信号を選択する。
【0015】
具体的には、AUTOモードならばALC回路3の信号を選択し、MANUALモードならばレベル調整回路4の信号を選択する。
【0016】
そして記録回路6は、選択された音声信号を記録処理し、記録媒体8に記録する。」

「【0019】
次に、音声レベルの検出及び表示について説明する。
【0020】
スイッチ15を通過した音声信号に対して、レベル検出回路9で信号の大きさを検出する。レベル検出回路9で検出された音声レベル情報は、制御回路13の制御に基づきレベル表示ドライバー10で表示に適した形に処理され、表示器11で視覚的にわかるように表示する。」

「【0022】
既に説明したように本発明の記録再生装置100は、AUTOモードにおいてはALC回路3でオートレベルコントロールされた音声信号を用い、また、MANUALモードにおいてはレベル調整回路4で調整された音声信号を用いている。レベル調整回路4では、使用者による操作手段(不図示)からの入力コマンドに応じて、制御回路13を介してマニュアルレベル調整が可能である。
【0023】
ところで、音声レベルには記録媒体8の飽和あるいは、記録回路6の飽和のどちらかの制約によって最大記録レベルが存在する。AUTOモードにおけるALC回路3では、その最大記録レベルを逸脱しないよう自動制御されるので問題ないが、MANUALモードにおいてはその最大記録レベルに近づかないよう注意し、近づきすぎたときや超えてしまったときには、使用者はレベル調整回路4を減衰方向に調整する必要がある。」

「【0039】
以上のように、実施の形態1において説明した記録再生装置によって、再生時及び記録時に音声レベル調整をAUTOモードで実行した際には、レベル表示に関してはセグメントを小さくして、オーバーレベルに対しての警告表示も出さない構成とすることによって、音声レベルの確認が出来つつ、他の表示情報の妨げになることを極力防ぐことが出来る。また、記録時に音声レベル調整をMANUALモードで実行した際には、レベル表示のためのセグメントを大きくし、オーバーレベルに対する警告も表示する構成とすることによって、他の表示情報と同時表示ができユーザーにとって見やすく、かつ適切なレベル調整を促すのに効果がある。」

「【0042】
図6の記録再生装置101うち、図1の記録再生装置100と同符号のブロックは、実施の形態1における図1で説明したものと同様の機能を有するものであるので、図6での説明は省略する。」

「【0048】
具体的には、記録再生装置101が記録モードのときは、カメラ部16で撮影した映像を映像信号処理回路17で処理し、スイッチ18が映像信号処理回路17からの出力を通過させ、表示器11に撮影中の映像として表示する。このとき、音声についてはスイッチ15が選択回路5からの入力音声信号を通過させ、レベル検出回路9でレベル検出し、検出した音声レベル情報に従ってレベル表示ドライバーを介して表示器11に撮影中の映像に合成して音声レベル表示できる構成である。なお、記録再生装置101は、実施の形態1で説明したものと同様に、音声のレベル調整に関するAUTOモードと、MANUALモードとを備えている。」

「【0050】
図7は記録再生装置101に搭載された表示装置である表示器11に表示される画面例であり、記録時におけるMANUALモード、AUTOモードそれぞれの場合を示す。音声レベルを表示器11に表示する仕組みについては、実施の形態1と同様であるので省略する。
【0051】
図7のように、撮影映像表示の一部を使って、記録(撮影)時においてMANUALモードのときは、音声レベル表示を見やすくはっきりと表示し、AUTOモードのときは、背部の表示画像すなわち撮影中の映像表示を妨げないように音声レベル表示が半透明(または色の変更)となるような表現形態で表示する。すなわち、表示器11に表示された撮影中の映像が音声レベル表示を透過して確認できるような表示形態となる。
【0052】
このように、音声レベルのマニュアル調整が必要なMANUALモード時には、背部の映像表示より音声レベル表示を優先的に表示し、音声レベルの調整が不要なAUTOモードでは、とりあえず確認できる程度に、映像表示に対して優先度を下げた形態で音声レベルを表示する。
【0053】
さらに、AUTOモードでは映像表示が主であるので、MANUALモードのときのみ前述のような音声レベル表示を行い、AUTOモードのときはレベル表示を消灯し、全面に映像表示のみを実行することも可能である。」

「【図6】



(2)引用文献の上記記載及び当業者の技術常識を考慮すると、次の技術事項を導出することができる。

a 上記【0042】によれば、図6の記録再生装置101のうち、図1の記録再生装置100と同符号のブロックは、実施の形態1における図1で説明したものと同様の機能を有するものであるから、図6の記録再生装置101のうち、図1の記録再生装置100と同符号のブロックについては、図1の記録再生装置100の同符号のブロックの説明(【0039】までの記載)を参照する。

b マイクとは、外部の音声を取得し、前記音声を信号処理可能な形式に変換するものであるから、上記【0013】記載のマイクは、外部の音声を取得し、前記音声を音声信号に変換するといえる。

c 上記【0014】によれば、入力端子1から入力された、音声信号は、ALC回路3とレベル調整回路4に入力され、使用者によるAUTO/MANUAL切り替えスイッチ14の操作に従って制御回路13がAUTOモード/MANUALモードを決定し、決定されたモードに従って、選択回路5ではALC回路3またはレベル調整回路4のうち一方の信号を選択する。
さらに、上記【0022】、【0023】によれば、ALC回路3で、AUTOモードにおいて、最大記録レベルを逸脱しないよう自動制御され、レベル調整回路4で、MANUALモードにおいて、最大記録レベルに近づかないよう注意し、近づきすぎたときや超えてしまったときには、使用者は、減衰方向に調整している。
上記【0014】?【0016】によれば、記録回路6は、選択回路5からの音声信号を記録媒体8に記録するものであるから、該記録媒体8は、上記選択回路5からの音声信号を記録するものといえる。
そうすると、入力端子1から入力された音声信号は、選択回路5における選択により、ALC回路3で自動制御された音声信号又はレベル調整回路4で調整された音声信号を、記録媒体8に記録しているから、ALC回路3並びにレベル調整回路4及び選択回路5は、入力端子1から入力された音声信号が入力され、前記自動制御された音声信号又は前記調整された音声信号を出力するものであって、記録媒体8は、前記自動制御された音声信号又は前記調整された音声信号を記録するものといえる。

d 上記【0019】?【0020】によれば、制御回路の制御により、表示器は、制御回路からの制御により選択された、上記自動制御された音声信号又は上記調整された音声信号の音声レベルを表示しているといえる。

e 上記【0014】によれば、制御回路は、選択回路を制御することで、ALC回路からの上記自動制御された音声信号と、レベル調整回路からの上記調整された音声信号を選択可能にしているといえる。

f 上記【0052】、【0053】によれば、音声レベルのマニュアル調整が必要なMANUALモード時には、表示器に背部の映像表示より音声レベル表示を優先的に表示し、音声レベルの調整が不要なAUTOモードでは、表示器にとりあえず確認できる程度に、映像表示に対して優先度を下げた形態で音声レベルを表示し、さらに、AUTOモードでは映像表示が主であるので、MANUALモードのときのみ前述のような音声レベル表示を行い、AUTOモードのときはレベル表示を消灯し、全面に映像表示のみを実行することも可能であるといえる。

(3)上記(1)、(2)から、引用文献には、マニュアルモードを備えた記録装置においては、使用者が音声記録レベルを確認する為のレベル表示装置を備えることが必須となる(【0002】)ところ、小型のビデオカメラのように映像と音声とを扱う記録再生装置を対象に、映像のモニターと音声レベル表示とが見やすく構成された表示装置を提供し、当該表示装置を備えて撮影と音声レベル調整とが容易に行なえる記録再生装置を提供すること(【0006】、【0007】)を目的とした、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「外部の音声を取得し、前記音声を音声信号に変換するマイクと、
前記音声信号が入力され、最大記録レベルを逸脱しないよう自動制御し、自動制御された音声信号を出力するALC回路と、
前記音声信号が入力され、最大記録レベルに近づかないよう注意し、近づきすぎたときや超えてしまったときには、使用者は、減衰方向に調整し、調整された音声信号を出力するレベル調整回路と、
前記自動制御された音声信号又は前記調整された音声信号を選択する選択回路と、
前記自動制御された音声信号又は前記調整された音声信号を記録する記録媒体と、
前記自動制御された音声信号又は前記調整された音声信号の音声レベルを表示する表示器と、
前記選択回路および表示器を制御する制御回路と、を備え、
前記ALC回路は、前記入力端子から入力された音声信号を自動制御し、
前記制御回路は、選択回路を制御して、AUTOモードでの前記ALC回路からの前記自動制御された音声信号と、MANUALモードでの前記レベル調整回路からの前記調整された音声信号を選択可能とし、
音声レベルのマニュアル調整が必要なMANUALモード時には、表示器に背部の映像表示より音声レベル表示を優先的に表示し、音声レベルの調整が不要なAUTOモードでは、表示器にとりあえず確認できる程度に、映像表示に対して優先度を下げた形態で音声レベルを表示し、さらに、AUTOモードでは映像表示が主であるので、MANUALモードのときのみ前述のような音声レベル表示を行い、AUTOモードのときはレベル表示を消灯し、全面に映像表示のみを実行することも可能である
記録再生装置。」

2 周知技術
(1)本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2012/035675号(以下、「周知例」という。)には、次の記載がある。

「[0010] デジタルカメラ100は、外部から得られた情報から画像情報および音声信号を生成する。画像情報は、画像入力系140によって生成される。音声信号は、音声入力系110によって生成される。生成された画像情報および音声信号は、A/D変換され、デジタル画像・音声処理部120で各処理が施された後、メモリカード等の外部記憶媒体160に記録される。(以下略)」

「[0026] 音声レベルの選択表示の設定がONとなるかOFFとなるかは、次のように決定される。使用者が中央釦185を押下する等の所定の操作を行うと、デジタルカメラ100は、各種設定項目の値の変更を受け付けるモードに入り、表示部190にメニュー画面が表示される。次に、使用者は、十字釦186を押下する等の所定の操作を行って、音声レベルの選択表示に関する設定項目の値が管理されている階層にアクセスする。そして、使用者は、さらに十字釦186を押下する等の所定の操作を行って、音声レベルの選択表示の設定をONにするかOFFにするかを切り替える。使用者により設定された内容は、ROM170に記憶される。つまり、十字釦186および中央釦185等の操作部180は、レベルメータ701を表示するか否かの設定の入力を受け付けるユニットである。 (以下略)」

(2)上記記載から周知例には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
上記[0010]によれば、デジタルカメラ100は、音声信号を外部記憶媒体160に記憶しているから、記録装置といえる。
上記[0026]によれば、デジタルカメラ100の中央釦185を押下し、メニュー画面を表示して、音声レベルの選択表示のON・OFF設定を行っているから、中央釦185及びメニュー画面は設定部といえる。

(3)上記(1)、(2)から、周知例には、次の周知技術(以下、「周知技術」という。)が記載されていると認められる。
「表示部における音声信号の音声レベルの表示または非表示を設定する設定部を備える記録装置」

第5 対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
a 引用発明の「外部の音声を取得し、前記音声を音声信号に変換するマイク」は、取得した外部の音声を音声信号に変換するものであるから、「変換部」といえ、「音声信号」を「第1信号」と称することは任意であるから、本願発明の「外部の音声を取得し、前記音声を第1信号に変換する変換部」に相当する。

b 引用発明の「ALC回路」は、音声信号が入力され、最大記録レベルを逸脱しないように自動制御し、自動制御された音声信号を出力する回路であり、引用発明の「レベル調整回路」は、音声信号が入力され、最大記録レベルに近づかないよう注意し、近づきすぎたときや超えてしまったときには、使用者は、減衰方向に調整し、調整された音声信号を出力する回路であるから、引用発明の「自動制御された音声信号」と「調整された音声信号」とは、いずれも入力された音声信号を増幅して生成された信号といえ、本願発明の「ALC部」と引用発明の「ALC回路」とは、「前記増幅部の増幅度を調整するALC部」といえる点で共通する。
また、引用発明の「選択回路」は、「ALC回路」から出力される「自動制御された音声信号」又は「レベル調整回路」から出力される「調整された音声信号」のいずれかを選択する回路であり、選択されたいずれかの信号を「第2信号」と称することは任意であるから、引用発明の「ALC回路」並びに「レベル調整回路」及び「選択回路」は、全体として本願発明の「前記増幅部の増幅度を調整するALC回路を有」する「前記第1信号を増幅して第2信号を生成する増幅部」に対応する。

c 引用発明の「前記自動制御された音声信号又は前記調整された音声信号を記録する記録媒体」及び「前記自動制御された音声信号又は前記調整された音声信号の音声レベルを表示する表示器」は、それぞれ本願発明の「前記第2信号を記録する記録部」及び「前記第2信号のレベルを表示する表示部」に相当する。

d 引用発明では、制御回路が選択回路を制御することにより、該選択回路から出力される信号は、AUTOモードでのALC回路で自動制御された音声信号、又は、MANUALモードでのレベル調整回路で調整された音声信号である。ここで、レベル調整回路で調整された音声信号は、該ALC回路で自動制御されない音声信号といえる。
一方、本願発明では、制御部は、ALC部が動作するか否かを選択可能とし、増幅部から出力される信号は、ALC部が動作するとき出力される信号、又は、ALC部が動作しないとき出力される信号である。
そうすると、本願発明の「制御部」と引用発明の「制御回路」とは、「増幅部」を制御し、「ALC部の動作による信号を出力するか、又は、ALC部の動作によらない信号を出力するか選択可能とし」ている点で共通している。

e 引用発明の「制御回路」は、AUTOモードでは、表示器に、映像表示に対して優先度を下げた形態で音声レベルを表示し、さらに、AUTOモードでは映像表示が主であるので、レベル表示を消灯し、全面に映像表示のみを実行することも可能であるから、本願発明の「制御部」と引用発明の「制御回路」は、「上記ALC部の動作による信号を出力するとき、表示部における第2信号のレベルを表示するか又は非表示とする」点で共通している。

また、引用発明の「制御回路」は、音声レベルのマニュアル調整が必要なMANUALモード時には、表示器に、背部の映像表示より音声レベル表示を優先的に表示し、さらに、AUTOモードでは映像表示が主であるので、MANUALモードのときのみ前述のような音声レベル表示を行い、AUTOモードのときはレベル表示を消灯し、全面に映像表示のみを実行することも可能であるから、上記dの、レベル調整回路で調整された音声信号は、ALC回路で自動制御されない音声信号であることを踏まえれば、AUTOモードで表示する場合でも消灯する場合でも、MANUALモードでは、ALC部の動作によらない信号のレベルを表示している。
そうすると、本願発明の「制御部」と引用発明の「制御回路」とは、「上記ALC部の動作によらない信号を出力するとき、前記表示部における前記第2信号のレベルを表示させる」点で共通している。

f 引用発明の「記録再生装置」は、記録装置の一種であるから、本願発明の「記録装置」に含まれる。

(2)以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「外部の音声を取得し、前記音声を第1信号に変換する変換部と、
前記第1信号を増幅して第2信号を生成する増幅部と、
前記第2信号を記録する記録部と、
前記第2信号のレベルを表示する表示部と、
前記増幅部および表示部を制御する制御部と、を備え、
前記増幅部は、
前記増幅部の増幅度を調整するALC部を有し、
前記制御部は、
前記ALC部の動作による信号を出力するか、又は、前記ALC部の動作によらない信号を出力するか選択可能とし、
前記ALC部の動作による信号を出力するとき、表示部における第2信号のレベルを表示するか又は非表示とし、
前記ALC部の動作によらない信号を出力するとき、前記表示部における前記第2信号のレベルを表示させる、
記録装置。」

【相違点】
<相違点1>
本願発明は「前記表示部における前記第2信号のレベルの表示または非表示を設定する設定部」を備えているのに対し、引用発明は備えていない点。

<相違点2>
ALC部が、本願発明では、「前記第2信号のレベルに応じて」前記増幅部の増幅度を調整するのに対し、引用発明では、前記増幅部の増幅度を調整するにとどまる点。

<相違点3>
制御部は「前記ALC部の動作による信号を出力するか、又は、前記ALC部の動作によらない信号を出力するか選択可能とし、」に関し、本願発明では、「前記ALC部が動作するか否かを選択可能と」するのに対し、引用発明では、「選択回路を制御して、前記ALC回路で自動制御された音声信号と、前記レベル調整回路で調整された音声信号を選択可能と」する点。

<相違点4>
「前記ALC部の動作による信号を出力するとき、表示部における第2信号のレベルを表示するか又は非表示とし」に関して、本願発明は、「ALC部が動作するとき、表示部における第2信号のレベルの表示又は非表示を選択可能にする」のに対し、引用発明は、「AUTOモードでは、表示器にとりあえず確認できる程度に、映像表示に対して優先度を下げた形態で音声レベルを表示し、さらに、」「レベル表示を消灯し、全面に映像表示のみを実行することも可能である」ものの選択可能としていない点で相違する。

<相違点5>
「前記ALC部の動作によらない信号を出力するとき、前記表示部における前記第2信号のレベルを表示させる」に関して、本願発明は、「前記ALC部が動作しなく、かつ前記表示部における前記第2信号のレベルが表示に設定されているとき、前記表示部における前記第2信号のレベルを表示させ、前記ALC部が動作しなく、かつ前記表示部における前記第2信号のレベルが非表示に設定されているとき、前記表示部における前記第2信号のレベルを強制的に表示させる」のに対し、引用発明は、「MANUALモード時には、表示器に背部の映像表示より音声レベル表示を優先的に表示し、」「さらに、AUTOモードでは映像表示が主であるので、MANUALモードのときのみ前述のような音声レベル表示を行」う点で相違する。

第6 判断
1 以下、相違点について検討する。
(1)相違点1,4,5について
引用発明は、音声レベルの調整が不要なAUTOモードでは、表示器における増幅された音声信号のレベルを表示するか、又は、非表示とするものである。ここで、表示部におけるレベルの表示の要不要はユーザーが任意に選択することであるから、引用発明の記録再生装置に上記周知技術の設定部を設けて、音声レベルの調整が不要なAUTOモードにおいて、表示部にレベルを表示するか非表示とするかを選択可能にすること(本願発明の「前記表示部における前記第2信号のレベルの表示または非表示を設定する設定部」を設けて、「前記ALC部が動作するとき、前記表示部における前記第2信号のレベルの表示又は非表示を選択可能にする」ことに相当する。)は、当業者が容易になし得る。
一方、上記第4の1(3)のとおり、マニュアルモードを備えた記録装置においては、使用者が音声記録レベルを確認する為のレベル表示装置を備えることが必須であるから、引用発明のMANUALモードでは、レベルを表示することが必須であるといえる。
ここで、本願発明は「ALC部が動作しな」いときは、「前記表示部における前記第2信号のレベルが表示に設定されているとき」及び「前記表示部における前記第2信号のレベルが非表示に設定されているとき」のいずれのときも、「前記表示部における前記第2信号のレベルを表示させる」ものであるところ、明細書の【0048】及び図6によれば、ALCの設定が無効である場合、ステップS602に遷移してマイクレベル表示の設定が表示であるか非表示であるかを確認することなく、ステップS603に遷移することでマイクレベル表示を表示することを含んでいるといえる。
そうすると、本願発明も引用発明もALC部の動作によらない信号を出力するとき、レベルを表示している点では一致しているので、本願発明の「前記ALC部が動作しなく、かつ前記表示部における前記第2信号のレベルが表示に設定されているとき、前記表示部における前記第2信号のレベルを表示させ、前記ALC部が動作しなく、かつ前記表示部における前記第2信号のレベルが非表示に設定されているとき、前記表示部における前記第2信号のレベルを強制的に表示させる」ことと、引用発明の「MANUALモード時には、表示器に背部の映像表示より音声レベル表示を優先的に表示し、」「さらに、AUTOモードでは映像表示が主であるので、MANUALモードのときのみ前述のような音声レベル表示を行」うことは、表現上の差異であり、実質上の相違点ではない。

(2)相違点2について
引用発明のALC回路の具体例として、増幅部として出力する信号に応じて増幅度を調整するもの、いわゆるフィードバック制御するものは一般的な構成である。
したがって、引用発明のALC回路を、第2信号のレベルに応じて増幅部の増幅度を調整するように構成することは、当業者が容易になし得る。

(3)相違点3について
引用発明の制御回路が選択回路を制御して、レベル調整回路からの出力を選択するとき、ALC回路が動作するか否かは明記されていないが、上記第4の1(3)によれば、引用発明は、小型のビデオカメラのように映像と音声とを扱う記録再生装置を対象とした発明であって、通常、小型のビデオカメラには、電池で駆動する携帯型のビデオカメラが含まれる。
ここで、電池で駆動する記録再生装置においては、消費電力を削減することは周知課題であり、該課題のために、使用しない回路に電源を供給しないこと、すなわち、当該回路を動作させないことは、当業者であれば一般的な構成に過ぎない。
したがって、引用発明において、制御回路が選択回路を制御して、ALC回路で自動制御された音声信号と、レベル調整回路で調整された音声信号を選択可能とすることを、ALC回路が動作するか否かを選択可能し、レベル調整回路を選択する場合にALC回路が動作しないものとすることは、当業者が容易になし得る。

(4)本願発明の奏する作用効果は、引用発明又は周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

2 審判請求人は、平成29年12月27日に提出した審判請求書において、引用発明は、AUTO/MANUALモードに応じて音声レベルの表示・非表示は固定的に決められている旨主張し(以下、「主張1」という。)、設定部を引用発明に組み合わせたとしても設定部の設定に従うのが通例であり本願発明に至る動機付けがないために、ALC部が動作しないとき、設定部の表示または非表示の設定にかかわらず、表示部における第2信号のレベルを表示させることにならない(以下、「主張2」という。)旨主張している。

上記主張1について検討する。
AUTOモードでは、表示する場合と、非表示とする場合とがあり、上記「1(1)相違点1,4,5について」で検討したとおり、表示部におけるレベルの表示の要不要はユーザーが任意に選択することであって、表示と非表示を選択可能とする具体的構成として設定部は周知技術であるから、記録装置に設定部を設けて、表示と非表示を選択可能とすることは、当業者が容易になし得る。
したがって、上記主張1は採用できない。

上記主張2について検討する。
上記「1(1)相違点1,4,5について」で検討したとおり、本願発明の「前記ALC部が動作しなく、かつ前記表示部における前記第2信号のレベルが表示に設定されているとき、前記表示部における前記第2信号のレベルを表示させ、前記ALC部が動作しなく、かつ前記表示部における前記第2信号のレベルが非表示に設定されているとき、前記表示部における前記第2信号のレベルを強制的に表示させる」ことと、引用発明の「MANUALモード時には、表示器に背部の映像表示より音声レベル表示を優先的に表示し、」「さらに、AUTOモードでは映像表示が主であるので、MANUALモードのときのみ前述のような音声レベル表示を行」うことは、表現上の差異であり、実質上の相違点ではない。
したがって、上記主張2は採用できない。

3 したがって、本願発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-12-11 
結審通知日 2018-12-18 
審決日 2019-01-04 
出願番号 特願2014-56(P2014-56)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白井 亮  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 富澤 哲生
宮下 誠
発明の名称 記録装置  
代理人 鎌田 健司  
代理人 前田 浩夫  

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