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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F04D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F04D
管理番号 1349322
審判番号 不服2018-609  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-17 
確定日 2019-02-21 
事件の表示 特願2013-260575「遠心送風機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月25日出願公開、特開2015-117605〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年12月17日の出願であって、平成29年7月12日付けの拒絶理由の通知に対し、同年9月8日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年11月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成30年1月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成30年1月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年1月17日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
1-1 本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
回転軸方向から吸い込んだ空気を径方向に吹き出す羽根車と、前記羽根車に対向して配置されるベルマウス部とを備え、前記ベルマウス部の吸込開口の端部に、波形に連続して形成される複数の矩形状の突出片を備え、これら突出片は、幅Wと高さHとがW/H=1かつW=1mmの関係を満たすことを特徴とする遠心送風機。
【請求項2】
前記突出片は、各突出片間の間隔が当該突出片の幅と略同一に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の遠心送風機。」

1-2 本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成29年9月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
回転軸方向から吸い込んだ空気を径方向に吹き出す羽根車と、前記羽根車に対向して配置されるベルマウス部とを備え、前記ベルマウス部の吸込開口の端部に、波形に連続して形成される複数の矩形状の突出片を備え、これら突出片は、幅Wと高さHとが1/3≦W/H≦3の関係を満たすことを特徴とする遠心送風機。
【請求項2】
前記突出片は、前記幅Wと前記高さHとが略同一に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の遠心送風機。
【請求項3】
前記突出片は、各突出片間の間隔が当該突出片の幅と略同一に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の遠心送風機。
【請求項4】
前記突出片の前記高さHを約1mmに形成したことを特徴とする請求項2に記載の遠心送風機。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1を引用する請求項2を引用する請求項4に記載された発明を特定するために必要な事項である突出片の幅と高さについて、補正前の「幅Wと高さHとが1/3≦W/H≦3の関係を満た」し、「幅Wと前記高さHとが略同一に形成され」、かつ「高さHを約1mmに形成した」を、「幅Wと高さHとがW/H=1かつW=1mmの関係を満たす」と補正し、「略」や「約」を用いた記載を削除し、数値範囲を限定する補正を含むものであって、補正前の請求項1を引用する請求項2を引用する請求項4に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、この補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

2-1 本件補正発明
本件補正発明は、前記「1-1」の請求項1に記載したとおりのものである。

2-2 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献の記載
原査定(平成29年11月13日付け拒絶査定)の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平9-72300号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付与した。)。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば天井埋込型等の空気調和装置に備えられる送風機に係り、特に、この送風機における騒音及び空気抵抗の低減化対策に関する。」
イ 「【0004】このため、この種の送風機では、送風機の吸込側での空気の乱流を小さくして送風音や空気抵抗をできるだけ低減させたいといった要求がある。この要求に応えるものとして例えば特開平5-65899号公報に開示されているように、シロッコファンにおいて、その吸込口に格子を設け、この格子の整流作用によって送風音及び空気抵抗を低減させるといったことが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、このような構成では、格子自身が空気抵抗の発生原因になり、整流作用による効果を妨げるものとなっているので、送風音及び空気抵抗を低減させるには限界があった。
【0006】本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであって、送風機の吸込口に空気抵抗となる部材を配設することなしに該送風機における送風音及び空気抵抗を大幅に低減することを目的とする。」
ウ 「【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明は、送風機の吸込口周縁部において空気の整流作用が得られるようにし、これによって、吸込口周縁部での渦流の発生領域を縮小するようにした。
【0008】具体的に、請求項1記載の発明は、図4に示すように、空気吸込口(3c)を備えた空気吸込部(3e)と、該空気吸込部(3e)の下流側に配設された送風手段(3d)とを備えさせ、上記空気吸込口(3c)から吸込まれた空気を送風手段(3d)により圧送する送風機を前提としている。そして、上記空気吸込口(3c)の周縁部に、該周縁部を流れる空気を整流しながら送風手段(3d)に向って案内する整流手段(15)を設けた構成としている。」
エ 「【0017】この構成により、空気吸込口(3c)から吸込まれる空気は、空気吸込部(3e)の湾曲形状に沿い送風手段(3d)に向かって案内された後、整流手段(15)によって整流されることになる。このため、これらの相乗作用により、空気を円滑に送風手段(3d)に送り込むことができ、送風音及び空気抵抗が大幅に低減される。」
オ 「【0018】・・・(中略)・・・この図3に示すように、本空気調和装置(1)は、天井(R)に形成された開口(H)に挿入配置されており、下方に開放する本体ケーシング(2)が天井裏空間(S)に据付けられている。この本体ケーシング(2)は天板(2a)と該天板(2a)の外縁部から下方に延びる側板(2b)とを備えている。また、本体ケーシング(2)内の中央部には、側方(紙面鉛直方向)に開放する吸込口(3c)と上方に向って開放する吹出口(3a)とを備えた送風機(3)が配設されている。この送風機(3)は、図4にも示すように、樹脂製のファンケーシング(3b)内に複数枚の羽根(3g,3g,…)を備えた送風手段としてのファンロータ(3d)が収容されたシロッコファンで成っており、ファンロータ(3d)の回転に伴って吸込口(3c)から吸込んだ空気を吹出口(3a)より上方に吐出する。」
カ 「【0022】次に、本実施形態の特徴として、上記送風機(3)のファンケーシング(3b)の吸込口(3c)の構成について説明する。図5に示すように、ファンケーシング(3b)の吸込口(3c)の外周部分は、開口縁(中心部分)に向うにしたがって内側(ファンロータ(3d)側で図5の上側)に湾曲するような空気吸込部としてのベルマウス部(3e)で形成されており、このベルマウス部(3e)の内縁部の端面(3f)がその全周に亘って複数の三角波状に凹凸形成されている。図6は内縁部の端面(3f)の拡大図である。尚、この端面(3f)の具体的な寸法としては、三角波のピッチPが2mm、高さHが1mmに設定されている。この端面(3f)の寸法としては、これに限らず、例えばピッチPが2?8mmの範囲で、高さHが1?5mmの範囲で任意に設定可能である。このようにして本発明でいう整流手段(15)が構成されている。」
キ 「【0028】次に、ベルマウス部(3e)の内縁部の端面(3f)の形状の変形例について説明する。図8に示すものは正弦波状に形成したものであり、図9に示すものは矩形波状に形成したものである。このような波形状に端面(3f)を形成した場合にあっても、上述と同様に、導入される空気の整流作用を得ることができ、これによって、送風機における送風音及び空気抵抗を共に低減することができ、空気調和装置の静粛性及び空調性能を共に向上できる。」

(2)引用発明
前記引用文献の記載事項ア?キ及び図面の図示内容を総合すると、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「回転に伴って吸込口(3c)から吸込んだ空気を吹出口(3a)より上方に吐出するファンロータ(3d)と、ファンケーシング(3b)の前記吸込口(3c)の外周部分を形成し、開口縁に向うにしたがって前記ファンロータ(3d)側に湾曲するような空気吸込部としてのベルマウス部(3e)とを備え、前記ベルマウス部(3e)の内縁部の端面(3f)を矩形波状に形成したシロッコファンで成る送風機(3)。」

2-3 対比
以下、本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ファンロータ(3d)」、「ベルマウス部(3e)」、「内縁部の端面(3f)」及び「シロッコファンで成る送風機(3)」は、それぞれ本件補正発明の「羽根車」、「ベルマウス部」、「吸込開口の端部」及び「遠心送風機」に相当する。
引用発明の「ファンロータ(3d)」は、吸込口(3c)から吸込んだ空気を吹出口(3a)から吐出するものであり、図4に図示された吸込口(3c)及び吹出口(3a)の配置からみて、引用発明の「回転に伴って吸込口(3c)から吸込んだ空気を吹出口(3a)より上方に吐出するファンロータ(3d)」は、本件補正発明の「回転軸方向から吸い込んだ空気を径方向に吹き出す羽根車」に相当する。
引用発明の「ベルマウス部(3e)」は、図10の図示内容からみて、「ファンロータ(3d)」に対向して配置されていることは明らかであるから、引用発明の「ファンケーシング(3b)の前記吸込口(3c)の外周部分を形成し、開口縁に向うにしたがって前記ファンロータ(3d)側に湾曲するような空気吸込部としてのベルマウス部(3e)」は、本件補正発明の「前記羽根車に対向して配置されるベルマウス部」に相当する。
引用発明の「ベルマウス部(3e)の内縁部の端面(3f)」に形成された「矩形波状」とは、図9の図示内容からみて、波形に連続して形成されたものであって、複数の矩形状の突出片を備えているから、引用発明の「前記ベルマウス部(3e)の内縁部の端面(3f)を矩形波状に形成した」という事項は、本件補正発明の「前記ベルマウス部の吸込開口の端部に、波形に連続して形成される複数の矩形状の突出片を備え」るという事項に相当する。

したがって、本件補正発明と引用発明とは、
「回転軸方向から吸い込んだ空気を径方向に吹き出す羽根車と、前記羽根車に対向して配置されるベルマウス部とを備え、前記ベルマウス部の吸込開口の端部に、波形に連続して形成される複数の矩形状の突出片を備えた遠心送風機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
突出片の幅Wと高さHについて、本件補正発明は「W/H=1かつW=1mmの関係を満たす」のに対し、引用発明はこのような関係を満たすものであるのか明確でない点。

2-4 判断
(1)相違点について
上記[相違点]について、判断する。
引用発明のベルマウス部(3e)の矩形波状に形成された内縁部の端面(3f)は、引用文献の段落【0028】(前記「2-2」「(1)」「キ」参照。)によると、導入される空気の整流作用を得ることができ、これによって、送風機における送風音及び空気抵抗をともに低減するためのものである。したがって、引用発明の矩形波状の端面(3f)を具体的に設計するにあたり、その矩形状の突出片の寸法を、送風機における送風音及び空気抵抗の低減効果を考慮の上、最適化することは当業者が容易に想到し得るものである。
そして、引用発明の端面(3f)における矩形波状に関し、引用文献には、図9に一般的な矩形波が図示されていること以外に矩形波の形状に関する具体的な説明がないことから、前記したように引用発明の矩形状の突出片の寸法を最適化するにあたり、まずは一般的な矩形波の形状の採用を試みると考えられるところ、一般的な矩形波とは、矩形波を構成する凸部と凹部とが周期的に繰り返す、凸部の幅と凹部の幅とが同一なものであるといえ、突出片の幅と隣接する突出片間の間隔は同一であるといえる。さらに、引用文献の段落【0022】(前記「2-2」「(1)」「カ」参照。)には、「三角波状」のものについてではあるが、三角波のピッチPを2mm、高さHを1mmに設定する点が記載されている。すると、引用発明の矩形状の突出片の具体的な寸法について、前記した一般的な矩形波の形状である突出片の幅と隣接する突出片間の間隔が同一のものを採用し、前記した「三角波状」のものの寸法を参考に、高さHを1mmにするとともに、突出片の中心間のピッチPが2mmになるように突出片の幅Wを1mmとすることに格別の困難性はないといえる。
なお、引用文献の図9に図示された矩形波は、突出片の幅と高さが略同一であって、突出片の幅と隣接する突出片間の間隔が略同一といえるから、前記したように引用発明の矩形状の突出片の幅と隣接する突出片間の間隔を同一としつつ、突出片の高さHと幅Wをそれぞれ1mmとすることに格別の困難性がないことを裏付けている。
そうすると、前記したように引用発明の矩形状の突出片の寸法を最適化する際、具体的な寸法として、突出片の幅Wと高さHが「W/H=1かつW=1mmの関係を満たす」数値を採用することに格別の困難性はない。

そして、本件補正発明の作用効果については、引用発明及び引用文献に記載された事項から当業者が予測できる範囲のものである。

(2)請求人の主張について
(2-1)上申書における主張
請求人は、平成30年4月6日付け上申書の「(3.2)本願発明と引用文献との対比」において、次のように主張している。
「本願発明は、突出片の形状を「矩形状」と特定した上で、それらの幅Wと高さHの寸法を「W/H=1かつW=1mm」と特定したものであり、形状と寸法の両方を特定することで、騒音に係る課題を解決したものです。
これに対し、・・・(中略)・・・引用文献2(特開平9-72300号公報(当審注:本審決における「引用文献」である。))は、送風音の低減を図るというものではあるものの、形状については複数のものが示されているだけで1つの形状に特定されている訳ではなく、さらに、その大きさについても特に限定されないことが明示されています(・・・(中略)・・・引用文献2の段落[0022]、[0028])。
つまり、・・・(中略)・・・引用文献2には、形状と寸法の両方を特定するという発想は開示されておらず、あくまでも、形状、及び寸法については任意であることを開示しているに過ぎません。
したがって、形状、及び寸法が任意であることを前提とする、・・・(中略)・・・引用文献2から、形状と寸法の両方を特定する本願発明の発想に到ることは容易ではありません。
これに加え、本願発明では幅Wと高さHとが同じ1mmであることを特定しています。これにより、本願発明では、本願出願当初明細書の段落番号[0014]-[0017]、及び図7に示されるように、高Hと幅Wとを同じ1mmとすることで(図7:実施例1)、幅Wのみを1mmとした場合(図7:実施例2)、及び高さHのみを1mmとした場合(図7:実施例3)よりも、騒音が軽減され、更に風量が大きくなるほど騒音軽減効果を他の場合に比べて高められる、という有利な効果を奏します。
これに対し、・・・(中略)・・・引用文献2には、本願発明の「W=1mm」という数値が記載されておらず、また幅Wと高さHとが等しいという構成についても、その効果についても記載がありません。」

(2-2)当審の判断
引用文献には「本発明は、送風機の吸込口周縁部において空気の整流作用が得られるようにし、これによって、吸込口周縁部での渦流の発生領域を縮小するようにした。」(段落【0007】(前記「2-2」「(1)」「ウ」参照。))、「この構成により、空気吸込口(3c)から吸込まれる空気は、空気吸込部(3e)の湾曲形状に沿い送風手段(3d)に向かって案内された後、整流手段(15)によって整流されることになる。このため、これらの相乗作用により、空気を円滑に送風手段(3d)に送り込むことができ、送風音及び空気抵抗が大幅に低減される。」(段落【0017】(前記「2-2」「(1)」「エ」参照。))という作用効果が記載されており、その「整流手段(15)」の具体的な形状として、三角波状(図6)、正弦波状(図8)、矩形波状(図9)が例示されており、具体的な寸法として三角波について「ピッチPが2mm、高さHが1mm」であり、「ピッチPが2?8mmの範囲で、高さHが1?5mmの範囲で任意に設定可能」であることが示されている(段落【0022】(前記「2-2」「(1)」「カ」参照。))。
整流手段(15)の形状や寸法に応じて、その送風音及び空気抵抗の低減効果が異なることは、機械分野の技術者にとって自明な事項であるから、送風音や空気抵抗の低減効果を最適化するために、「整流手段(15)」の形状や寸法を適宜調整することは、当業者が容易に想到し得るものである。そして、突出片の形状として、引用発明の「矩形状」を採用した上で、これらの幅Wと高さHの寸法として、「W/H=1かつW=1mmの関係を満たす」数値を採用すること自体、前記「(1)」に示したように格別に困難なものとはいえない。
また、請求人は、「高Hと幅Wとを同じ1mmとすることで」「騒音が軽減され、更に風量が大きくなるほど騒音軽減効果を他の場合に比べて高められる、という有利な効果を奏します。」と主張しているが、本願の実施例2、3に比べて有利な効果を奏することが実証されている実施例1の構成は、「高さHと幅Wとを同じ1mm」とするだけでなく、更に「ピッチP(当審注:本願明細書においては、隣接する突出片間の間隔をピッチPと呼んでいる。)を同じ1mm」としたものである。本件補正発明は、「ピッチP」の寸法を何ら限定しないものであるから、「ピッチP」が1mmより相当大きい構成や、逆に相当小さい構成をも含む発明である。そして、「ピッチP」が1mmより相当大きい構成や、逆に相当小さい構成の場合には、本願の実施例2、3に比べて有利な効果を奏する根拠は認められないし、さらに、「ピッチP」が1mmより非常に大きかったり、非常に小さい場合は、突出片を何も設けない構成と類似の形状になってしまうから、むしろ、本願の実施例2、3に比べて騒音軽減効果が劣る可能性が高いと考えられる。請求人が主張する「有利な効果」は、請求項1に記載した発明特定事項に基づく効果ではないから、請求人の主張を採用することはできない。
さらに、「高さHと幅Wとを同じ1mm」とし、「ピッチPを1mm」とした本願の実施例1の効果についても、前記「(1)」で検討したように引用発明の矩形状の突出片の幅と隣接する突出片間の間隔を同一としつつ、突出片の高さHと幅Wをそれぞれ1mmとすることに格別の困難性はなく、引用発明及び引用文献に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものも、結果として、実施例1と同じ寸法をとることになるから、この容易に発明をすることができたものも実施例1の効果と同様の効果を奏するといえる。したがって、実施例1の効果は、この容易に発明をすることができたものの効果と比較して、異質のものではなく、また、同質であっても際だって優れたものではないから、当業者が予測できる範囲のものである。

2-5 まとめ
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び引用文献に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年1月17日にされた手続補正は、前記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成29年9月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみてその請求項1に記載された事項により特定される、前記「第2」[理由]「1-2」に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうちの理由2は、この出願の請求項1ないし4に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1又は引用文献2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.特開2013-57298号公報
引用文献2.特開平9-72300号公報(本審決における「引用文献」。)

3 引用文献の記載及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載事項及び引用発明は、前記「第2」[理由]「2-2」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記「第2」[理由]「2」で検討した本件補正発明の突出片の幅と高さについての特定事項である「幅Wと高さHとがW/H=1かつW=1mmの関係を満たす」を、「幅Wと高さHとが1/3≦W/H≦3の関係を満たす」と拡張したものであり、その余の発明特定事項は本件補正発明と同じである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに数値の範囲を限定したものに相当する本件補正発明が、前記「第2」[理由]「2-5」に記載したとおり、引用発明及び引用文献に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-12-19 
結審通知日 2018-12-25 
審決日 2019-01-07 
出願番号 特願2013-260575(P2013-260575)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F04D)
P 1 8・ 575- Z (F04D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩田 健一  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 柿崎 拓
久保 竜一
発明の名称 遠心送風機  
代理人 特許業務法人クシブチ国際特許事務所  

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