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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F28D 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 F28D 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 F28D |
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管理番号 | 1349420 |
審判番号 | 不服2018-8019 |
総通号数 | 232 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-06-12 |
確定日 | 2019-03-19 |
事件の表示 | 特願2014-68350号「EGRクーラ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月2日出願公開、特開2015-190697号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年3月28日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。 平成29年11月16日 : 拒絶理由通知 平成30年 1月10日 : 意見書、手続補正書 同年 5月24日 : 拒絶査定 同年 6月12日 : 審判請求書、手続補正書 第2 平成30年6月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年6月12日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の平成30年1月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。 「 【請求項1】 筒形を成したシェルと、該シェルの軸心方向両端にシェル端面を閉塞するよう夫々固着されたプレートと、該各プレートの反シェル側にプレート端面を被包するよう固着されたボンネットと、前記シェルの内部を軸心方向に延び且つその両端を前記各プレートに貫通固着された複数本のチューブとを備え、前記シェルの内部に冷却水を給排し且つ前記各チューブ内には一方のボンネットから他方のボンネットへ向け排気ガスを通して該排気ガスと前記冷却水とを熱交換させるようにしたEGRクーラであって、前記一方のボンネットに対し前記シェルの軸心方向と略直交する向きからEGRパイプを導いて接続し且つ該EGRパイプからの排気ガスを前記一方のボンネット内で屈曲させて各チューブに導入し得るように構成すると共に、前記一方のボンネットにおけるガス導入側のプレートと対峙する部位を、該プレートから離間する側へ反り且つ前記EGRパイプ側から排気ガスの流れ方向へ向かうに従いガス導入側のプレートに近接して前記一方のボンネットを扁平化せしめる窪み部として形成し、しかも、該窪み部の形成を前記一方のボンネットにおけるガス導入側のプレートと対峙する部位よりも上流側から始めたことを特徴とするEGRクーラ。 【請求項2】 前記一方のボンネットが前記窪み部の形成により扁平化しても流路断面積が減少しないよう拡幅されていることを特徴とする請求項1に記載のEGRクーラ。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲 本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「 【請求項1】 筒形を成したシェルと、該シェルの軸心方向両端にシェル端面を閉塞するよう夫々固着されたプレートと、該各プレートの反シェル側にプレート端面を被包するよう固着されたボンネットと、前記シェルの内部を軸心方向に延び且つその両端を前記各プレートに貫通固着された複数本のチューブとを備え、前記シェルの内部に冷却水を給排し且つ前記各チューブ内には一方のボンネットから他方のボンネットへ向け排気ガスを通して該排気ガスと前記冷却水とを熱交換させるようにしたEGRクーラであって、前記一方のボンネットに対し前記シェルの軸心方向と略直交する向きからEGRパイプを導いて接続し且つ該EGRパイプからの排気ガスを前記一方のボンネット内で屈曲させて各チューブに導入し得るように構成すると共に、前記一方のボンネットにおけるガス導入側のプレートと対峙する部位の全てを、該プレートから離間する側へ反り且つ前記EGRパイプ側から排気ガスの流れ方向へ向かうに従いガス導入側のプレートに近接して前記一方のボンネットをガス導入側のプレートに近接する方向へ扁平化せしめる窪み部として形成し、しかも、該窪み部の形成を前記一方のボンネットにおけるガス導入側のプレートと対峙する部位よりも上流側から始めたことを特徴とするEGRクーラ。 【請求項2】 前記一方のボンネットが前記窪み部の形成により扁平化しても流路断面積が減少しないよう拡幅されていることを特徴とする請求項1に記載のEGRクーラ。」 2 本件補正の適否 (1)補正事項について 事案に鑑み、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に追加された事項のうち「前記一方のボンネットにおけるガス導入側のプレートと対峙する部位の全てを、・・・窪み部として形成」という事項(以下、「補正事項」という。)について以下検討する。 (2)請求人の主張 補正事項についての請求人の主張は次のとおりである。 「【本願発明が特許されるべき理由】・・・このように原査定における「本願発明の請求項1に『プレートと対峙する部位が全て窪み部として形成されている』ことは特定されていない。」との認定には全く納得できないということを意見として述べておきたかったのですが、現状の表現に固執して争うまでの必要もございませんので、本審判請求書と同時に提出した手続補正書により、本願発明の特許請求の範囲における請求項1を出願当初の図1及び図2を根拠として「…一方のボンネットにおけるガス導入側のプレートと対峙する部位の全てを、…」と補正しておきました。」 (3)本件補正の適否の判断 補正事項は、図面の記載に基づく補正であるところ、特に図1を参照すると、紙面右側のプレート2に対峙するボンネット4の窪み部11に連なる上側のボンネット部分の形状は、発明特定事項の窪み部11の形状を限定する事項である「該プレートから離間する側へ反り」とは異なり、反対側への反り形状といえる、プレートに近接する側に反る形状が記載されており、「ボンネットにおけるガス導入側のプレートと対峙する部位の全てを」窪み部として形成するものでないことは明らかである。 また、発明の詳細な説明又は特許請求の範囲の記載を参照しても、「プレートと対峙する部位の全てを」窪み部として形成することについての記載ないし示唆はない。 以上から、補正事項は、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書、図面(以下、「当初明細書等」という。)には記載がなく、当初明細書等から自明でもなく、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないので、上記のとおり本件補正を却下する。 第3 原査定の概要 理由1 請求項1及び2に係る発明は、引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 理由2 請求項1及び2に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 請求項1及び2に係る発明は、引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1 特開2006-118436号公報 引用文献2 カナダ国特許出願公開第2871787号明細書 第4 本願発明 本件補正は、上記「第2 補正の却下の決定」のとおり、却下された。 したがって、本願請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、平成30年1月10日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される発明であり、上記「第2 1(1)」のとおりの発明である。 第5 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0005】 ところでディーゼルエンジンの排気再循環(EGR)を効率化するためのEGRガス冷却装置は、ディーゼルエンジン搭載の自動車のエンジンルームなど、限定された空間に取付けられるため、クーラー本体へのEGRガスの導入路となるボンネットは、通常、ほぼ直角のベント構造を有するものが多用されている。図5はそのEGRガス冷却装置10と直角のベント構造のボンネットを例示したものであり、EGRガス冷却装置10の上流側のボンネット12-1、同下流側のボンネット12-2はそれぞれ当該EGRガス冷却装置10の管板15-1、15-2に対し、EGRガス入口g1および同出口g2が90°に変化するベント部16を以って形成され、その一端が冷却ジャケット11に接続され、該冷却ジャケット11内に内装されてクーラー本体を構成する伝熱管列群13の個々の伝熱管に、高温のEGRガスが導入される構造となっている。なお、ここでは、ボンネット12-1、12-2のベント部の曲率半径が大径の部分を曲率半径大径側ベント部と、同ボンネットの曲率半径が小径の部分を曲率半径小径側ベント部と称する。」 「 」 「【0006】・・・このように種々の角度のベント構造を有するボンネットに起因して、EGRガス冷却装置に導入される高温のEGRガスの分配が均等にならず、流速に不均一な分布が発生し、熱交換効率が著しく低下するという未解決な課題が残されていた。本発明は斯かる課題を解決することを所期の目的とし、簡略な構造であるにも拘らず、EGRガス冷却装置にEGRガスを均等に分配して導入することが可能な、種々の角度のベント構造のEGRガス冷却装置用ボンネットを提供するものである。」 「【実施例1】 【0018】 本発明に係る第1実施例による直角ベント構造のボンネット2は、図1に示すように該ボンネット2のEGRガス入口側フランジ7の近傍であって、該ベント部において曲率半径が大きい、曲率半径大径側ベント部3の内壁部に、板厚0.5mmのSUS304オーステナイト系ステンレス鋼からなる方形の薄板を、その先端部が軸心方向に傾斜するようにして溶着することにより、該ボンネット2内におけるEGRガス流路の邪魔板3-1を形成した。かくのごとくして得られた直角ベント構造のボンネット2を、多管式熱交換器本体に接続して図5に示すようなEGR冷却装置を構成し、EGRガス冷却系におけるガス流路に組み込み、冷却性能試験に供した結果、ガス入口G1から該ボンネット2内に流入した高温のEGRガスは、図1に示すように曲率半径大径側ベント部3の内表面に形成された邪魔板3-1が作用して、通流するガスgは該ベント部の曲率半径大径側3の内表面に沿って流れることができず、該ボンネット2内の曲率半径小径側ベント部4の方へ強制的に誘導され、結果としてEGRガスの流速と分配が均一化され、クーラー本体1内の多くの伝熱管にほぼ均等に分配にされて通流し、伝熱管外周の冷却ジャケットへの熱交換が効果的に促進され、出口側のボンネットから排出されたEGRガスは、所定の温度域にまでに冷却されて再循環されることが確認された。 【0019】 本実施例による直角ベント構造のボンネット2の製造方法は、特に制限されるものではなく、通常鋼管を素材として特定の金型を用いたドローベント、若しくはコンプレッションベント液圧バルヂなどによって製造され、上記ボンネット2内における邪魔板3-1の形成方法は、本例においてはステンレス鋼製薄板による溶着を採用したが、他のプレート材による貼着方法など、本発明の目的に適合できる範囲で自由に変更することを妨げない。また、該ボンネット2のクーラー本体との接続は、本例においては溶着を採用したが、ボンネットのクーラー側にフランジを設け、クーラー本体に予め取付けられたフランジとのボルト締めや溶接、ろう付けによる接続も好ましく採用される。尚、ボンネットは鋳造により製造しても良く、邪魔板3-1を一体に鋳出しすることも可能である。」 「【実施例2】 【0020】 邪魔板3a-1の取付け位置を、図2に示すように直角ベント構造のボンネット2aのEGRガス入口側フランジ7aにおける、曲率半径大径側の内表面への直接溶着とし、該ボンネット2aのベント部3aの曲率半径大径側の壁面を、プレス加工によって予め略S字型に曲面加工を施した以外は、実質的に実施例1と同様にしてEGRガス冷却装置用ボンネット2aを構成し、得られた本例によるボンネット2aを、EGRガス冷却系におけるガス流路に組み込み、実施例1と同一の条件で冷却試験に供した結果、実施例1とほぼ同等の冷却効率を得られることが確認された。尚、本ボンネットも鋳造が可能である。」 「【実施例3】 【0021】 直角ベント構造のボンネットの曲率半径大径側ベント部3bを、図3に示すように緩やかな曲率半径となるようにしてEGRガス冷却装置用ボンネット2bを形成した。この際、曲率半径小径側ベント部4bはほぼ直角に形成され、ボンネット2b内への邪魔板の取付けは省略される。・・・ 【実施例4】 【0022】 直角ベント構造のボンネットの曲率半径大径側ベント部3cを、図4に示すように直線状の緩斜面となるようにしてEGRガス冷却装置用ボンネット2cを形成した。この際、曲率半径小径側ベント部4cはほぼ直角に形成され、ボンネット2c内への邪魔板の取付けは省略される。・・・」 「 」 「【図面の簡単な説明】 【0024】 【図1】本発明の一実施例に係る直角ベント構造のボンネットと、該ボンネット内を通流するEGRガスの流速分布を模式的に示す側面図である。 【図2】本発明に係る他の実施例における直角ベント構造のボンネットと、該ボンネット内を通流するEGRガスの流速分布を模式的に示す側面図である。 【図3】本発明に係る更に他の実施例における直角ベント構造のボンネットの側面図である。 【図4】本発明に係る更に他の実施例における直角ベント構造のボンネットを示す側面図である。 【図5】本発明の対象とする従来のEGRガス冷却装置と、直角ベント構造のボンネットの一実施例を示す側面図である。 ・・・ 【符号の説明】 【0025】 1、1a、1b、1c、10 EGRガス冷却装置 2、2a、2b、2c、12-1、12-2 ボンネット 3、3a、3b、3c、16 曲率半径大径側ベント部 3-1、3a-1 邪魔板 4、4a、4b、4c、17 曲率半径小径側ベント部 5、5a、5b、5c、15-1、15-2、 管板 6 溶着部 7、7a、7b、7c フランジ部 11 冷却ジャケット 13 伝熱管列群 13-1 外周側伝熱管 13-2 外周側伝熱管 13-3 内周側伝熱管 13-4 内周側伝熱管 G1、g1 EGRガス入口 G2、g2 EGRガス出口 C1 冷却水入口 C2 冷却水出口」 従来技術及びEGRガス冷却装置の全体構成に係る記載である段落【0005】、及び実施例1を前提とする実施例2の記載からみて、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明」という。)。 「EGRガスの導入路となるボンネット2a、該ボンネット2aは管板5aに対しEGRガス入口および同出口がほぼ直角のベント構造にて形成され、その一端が冷却ジャケットに接続され、該冷却ジャケット内に内装されてクーラー本体を構成する伝熱管列群の個々の伝熱管に高温のEGRガスが導入されるEGR冷却装置において、 邪魔板3a-1の取付け位置を、直角ベント構造のボンネット2aのEGRガス入口側フランジ7aにおける、曲率半径大径側3aの内表面への直接溶着とし、該ボンネット2aのベント部3aの曲率半径大径側3aの壁面を、プレス加工によって予め略S字型に曲面加工を施したEGR冷却装置」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の図面が記載されている。 「 」 第6 対比、判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明を対比すると、次のとおりである。 引用発明の「ボンネット2a」は、その形状、機能又は技術的意義からみて、本願発明1の「ボンネット」に相当する。 以下同様に、「管板5a」は「プレート」に、「冷却ジャケット」は「シェル」に、「伝熱管列群の個々の伝熱管」は「複数本のチューブ」に、「EGR冷却装置」は「EGRクーラ」にそれぞれ相当する。 引用発明の「冷却ジャケット」は通常筒形であり、軸芯方向両側の「管板5a」にて閉塞するように構成されるものであるし、引用発明の「伝熱管列群の個々の伝熱管」が、筒形の「冷却ジャケット」の内部を軸心方向に延び且つその両端を「管板5a」にて貫通固着されるものであることは自明である。 そして、引用発明の「ボンネット2aのEGRガス入口側フランジ7a」はEGRパイプに接続されるものであり、これを踏まえると、引用発明の「ボンネットは管板5aに対しEGRガス入口および同出口がほぼ直角のベント構造」は、筒形の「冷却ジャケット」の軸心方向と略直交する向きからEGRパイプを導いて接続し且つ該EGRパイプからの排気ガスをボンネット内で屈曲させて各チューブに導入し得るように構成されるものである。 以上から、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 ア 一致点 「筒形を成したシェルと、該シェルの軸心方向両端にシェル端面を閉塞するよう夫々固着されたプレートと、該各プレートの反シェル側にプレート端面を被包するよう固着されたボンネットと、前記シェルの内部を軸心方向に延び且つその両端を前記各プレートに貫通固着された複数本のチューブとを備え、前記シェルの内部に冷却水を給排し且つ前記各チューブ内には一方のボンネットから他方のボンネットへ向け排気ガスを通して該排気ガスと前記冷却水とを熱交換させるようにしたEGRクーラであって、 前記一方のボンネットに対し前記シェルの軸心方向と略直交する向きからEGRパイプを導いて接続し且つ該EGRパイプからの排気ガスを前記一方のボンネット内で屈曲させて各チューブに導入し得るように構成するEGRクーラ。」 イ 相違点 本願発明1は、「一方のボンネットにおけるガス導入側のプレートと対峙する部位を、該プレートから離間する側へ反り且つ前記EGRパイプ側から排気ガスの流れ方向へ向かうに従いガス導入側のプレートに近接して前記一方のボンネットを扁平化せしめる窪み部として形成し、しかも、該窪み部の形成を前記一方のボンネットにおけるガス導入側のプレートと対峙する部位よりも上流側から始めた」ものであるのに対し、 引用発明は、「邪魔板3a-1の取付け位置を、直角ベント構造のボンネット2aのEGRガス入口側フランジ7aにおける、曲率半径大径側3aの内表面への直接溶着とし、該ボンネット2aのベント部3aの曲率半径大径側3aの壁面を、プレス加工によって予め略S字型に曲面加工を施した」ものである点。 (2)判断 引用発明の「ボンネット2a」の「略S字型に曲面加工を施した」部分単独の機能ないし作用効果等についての詳細は不明であるものの、該部分の上流側に位置する「邪魔板3a-1」とともに、「実施例1とほぼ同等の冷却効率を得られること」(【0020】)、すなわち実施例1の「EGRガスの流速と分配が均一化され、クーラー本体1内の多くの伝熱管にほぼ均等に分配にされて通流」(【0018】)させるものであることは明らかである。 そこで、「略S字型に曲面加工を施した」部分の形状について検討すると、実施例2に係る図2に示されるものは、EGRガスの流速分布を模式的に示す側面図であるから(【0024】)、ボンネットの形状を明確に把握できる例えば設計図ないし写真と同等の事項が記載されているものではないし、「略S字型に曲面加工」された部分が凸曲面と凹曲面とが連続して形成されるものであり同側面図がそのような形状を示しているとしても、同図にはボンネット2aの周方向の形状を含め全体として「扁平化せしめる窪み部」があるとまでは確認できないから、引用文献1において、「ボンネット2a」に「扁平化せしめる窪み部」が「形成」されたものであることを直ちに認定することはできない。 仮に、引用文献1の実施例2の記載及び図2に示された事項から、「扁平化せしめる窪み部」が認定できるとしても、その「窪み部」が「ボンネットにおけるガス導入側のプレートと対峙する部位よりも上流側から始めた」ものでないことは明らかであるし、「窪み部」をプレートと対峙する部位よりも上流側へと変更するためには、邪魔板を省略するか又は限りなく小さくする必要がある。 しかし、邪魔板は実施例1における唯一のEGRガスの流速と分配を均一化する部品であり、この点、実施例2において「略S字型に曲面加工を施した」部分単独の機能等の説明がないことを踏まえると、実施例2においても邪魔板はEGRガスの流速と分配を均一化するための主たる手段であると解され、この主たる手段を限りなく小さくするということは、主たる手段を省略する装置へと変更することと技術的に同義であるから、当該変更は当業者が通常採用し得る技術的事項ではない。さらに、実施例3及び4は邪魔板を省略する実施例であり、その際のボンネットの形状は(本願発明1とは反対側へ反る形状である)緩やかな曲率半径のものか、又は直線状の緩斜面とするものであるから、引用文献1において、邪魔板を省略するか又は限りなく小さくする場合には、窪み部形状を採用しないボンネット形状によりEGRガスの流速と分配の均一化を図るものである。 そうすると、仮に「扁平化できる窪み部」が引用文献1から認定できるとしても、該「窪み部」を「ボンネットにおけるガス導入側のプレートと対峙する部位よりも上流側から始めた」ものへと変更することは、当業者が容易に想到し得るものではない。 他方、引用文献2の図1a及び図1bに示された記載から、窪みのような形状を看取することができるとしても、「窪み部」を「ボンネットにおけるガス導入側のプレートと対峙する部位よりも上流側から始めた」形状についての記載ないし示唆はない。 そして、本願発明1は相違点に係る構成を採用することで、「【0026】・・・ガス導入側のボンネット4におけるプレート2と対峙する部位よりも上流側から窪み部11の形成を始めているので、各チューブ6に導入される排気ガス10の流れ分布の是正をより早い段階から開始することができて、更に効果的な流れ分布の均一化を実現することができ」るものである。 (3)まとめ したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2に記載されたものに基き当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 本願発明2について 本願発明2は、本願発明1を引用し、本願発明1の発明特定事項の全てを含むものであるから、上記1で述べたことと同様に、本願発明2は、引用発明並びに引用文献2に記載されたものに基き当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-03-06 |
出願番号 | 特願2014-68350(P2014-68350) |
審決分類 |
P
1
8・
55-
WY
(F28D)
P 1 8・ 121- WY (F28D) P 1 8・ 113- WY (F28D) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 西山 真二 |
特許庁審判長 |
山崎 勝司 |
特許庁審判官 |
藤原 直欣 莊司 英史 |
発明の名称 | EGRクーラ |
代理人 | 特許業務法人山田特許事務所 |