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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A47J
管理番号 1349432
審判番号 不服2018-4823  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-09 
確定日 2019-03-19 
事件の表示 特願2016-104255号「炊飯器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月13日出願公開、特開2016-179188号、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年3月25日を出願日とする特願2013-61402号の一部を、平成28年5月25日に新たな特許出願としたものであって、平成29年5月10日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年7月14日付けで手続補正がされ、平成29年12月21日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年4月9日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年12月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1、2に係る発明は、以下の引用文献1、2、5に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願請求項3に係る発明は、以下の引用文献1?5に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2012-239630号公報
2.特開2010-11951号公報
3.特開2007-312871号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2000-296053号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2002-177142号公報

第3 審判請求時の補正について
1 審判請求時の補正
審判請求時の特許請求の範囲の補正は、補正前の請求項1に「複数の受光素子を有し」とあるのを、補正後に「それぞれの素子の検出範囲が二次元状に配列された複数の受光素子を有し」とし、補正前の請求項1に「前記炊飯物の炊飯量」とあるのを、「炊飯物の炊飯量」とする補正である。
また、審判請求時の明細書の補正は、その段落0006に「複数の受光素子を有し」とあるのを、「それぞれの素子の検出範囲が二次元状に配列された複数の受光素子を有し」とする補正である。
2 補正の適否
そこで、上記補正が新規事項を追加するものか否かという点と、補正の目的について検討する。
(1)新規事項の追加について
特許請求の範囲の上記補正は、願書に最初に添付した(以下、「当初」という。)明細書の「【0011】・・・この赤外線アレイセンサー20は、例えば図2に示すように、縦8画素、横8画素とする64個の受光素子を有し、炊飯物(水と米飯)から放射される赤外線、即ち水面30と水面30を透過する米とから放射される赤外線を、64個の受光素子でそれぞれ受光し電圧(温度情報)に変換する。」という記載及び「【0008】・・・【図2】図1の炊飯器に用いられる温度検出手段の温度検出エリアを2次元的に示す平面図。」並びに当初図面(図2)の記載に基づいて、補正前の請求項1の「複数の受光素子」に、「それぞれの素子の検出範囲が二次元状に配列された」という事項を追加するものであるから、新規事項を追加するものとはいえない。
また、補正前の請求項1に「前記炊飯物の炊飯量」とあるのを、「炊飯物の炊飯量」とする補正も、新規事項を追加するものではないことは明らかである。
同様の理由で、審判請求時の明細書の補正も、当初明細書の【0011】と当初図面(図2)の記載に基づくものといえるので、新規事項を追加するものではないことは明らかである。

(2)補正の目的について
特許請求の範囲の上記補正は、補正前の請求項1の「複数の受光素子」について、「それぞれの素子の検出範囲が二次元状に配列された」という事項を追加することで、「複数の受光素子」の構成を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
また、補正前の請求項1に「前記炊飯物の炊飯量」とあるのを、「炊飯物の炊飯量」とする補正は、誤記の訂正を目的とするものと認められる。

そして、下記の「第4 本願発明」?「第6 対比・判断」に示すように、補正後の請求項1?3に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明3」という。)は、平成30年4月9日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
上面に開口を有する本体と、
前記開口を開閉する蓋体と、
前記本体の開口から当該本体の内部に収容される内釜と、
前記内釜を加熱する加熱手段と、
それぞれの素子の検出範囲が二次元状に配列された複数の受光素子を有し、前記内釜の側面から放射される赤外線の受光量に基づいて温度情報を生成する赤外線センサーと、
前記赤外線センサーにより生成された温度情報から炊飯物の炊飯量を判定し、当該炊飯量に応じて前記加熱手段を制御する制御手段と、
前記内釜の側面を加熱する側面加熱手段と
を備え、
前記赤外線センサーは、前記蓋体の下部に設けられ、前記内釜の内側の高さ方向の側面を赤外線の受光範囲とし、
前記制御手段は、前記温度情報から前記内釜の側面の温度分布を判定し、前記内釜の側面の温度分布の中に低温度を検出したときに、前記側面加熱手段に通電させる
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記制御手段は、前記温度分布から温度境界線を判定し、前記内釜の底面から前記温度境界線までの高さに応じて前記内釜内の炊飯量を判定することを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記制御手段は、前記内釜内の米飯を保温する際に、前記温度情報から前記内釜の側面の温度分布を判定し、かつ当該温度分布から温度境界線を判定し、前記内釜の底面から前記温度境界線までの高さに応じて前記内釜内の米飯量を判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の炊飯器。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【請求項1】
内釜と、
前記内釜を収納する内釜収納部を備えた炊飯器本体と、
前記炊飯器本体の上面開口を開閉する蓋本体と、
前記内釜収納部の壁部に形成された開口部に対向するように設けられる赤外線透過部材と、
前記内釜収納部の前記開口部に対し、外側に所定距離を隔てて前記赤外線透過部材を支持する支持部材と、
前記内釜から放射される赤外線を前記赤外線透過部材を通して受光し、この赤外線に基づいて温度を検知する赤外線温度センサと、
前記内釜を加熱する内釜加熱装置と、
前記赤外線温度センサが検知した温度に基づいて前記内釜加熱装置を制御する制御装置とを備えた
ことを特徴とする炊飯器。」

「【0009】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
図1は、実施の形態1に係る炊飯器の側面断面模式図である。図1に示すように、本実施の形態に係る炊飯器100は、炊飯器本体1と、上面に上面開口2aを有し誘導加熱により発熱する磁性体の金属を含む有底円筒状の内釜2と、炊飯器本体1の上面に設けられた上面開口1gを開閉可能に覆う蓋本体3とを備えている。蓋本体3の内側(内釜2の上面開口2aを覆う側)には、内釜2の上面開口2aを密閉可能な略円盤状の内蓋4が着脱自在に取り付けられている。内釜収納部1aの外面には、釜加熱装置5が設けられている。炊飯器本体1の内部には、赤外線温度センサ6と赤外線透過ユニット7と、炊飯器100における加熱制御を行う制御装置8が設けられている。
【0010】
炊飯器本体1は、外郭を構成する外郭1fと、炊飯器本体1の内部に設けられ、内釜2を収納する内釜収納部1aとを備えている。内釜収納部1aは、炊飯器本体1の上面開口1gの内周部に嵌合された略環状の上枠1bと、内釜2の形状に対応して有底円筒形状に形成され、上部開口側端部で上枠1bに一体的に接続されたコイルベース1cとで構成されている。」

「【0019】
コイルベース1cの外周面には、釜加熱装置5を構成する底内コイル5aと、底外コイル5bと側面加熱ヒータ5cが取り付けられている。底内コイル5aは、コイルベース1cを介して内釜2の底部の中央部周囲に対向するように配置されており、内釜2の底部を誘導加熱する。」

「【0020】
図2は、実施の形態1に係る炊飯器の要部断面模式図であり、赤外線温度センサ6及び赤外線透過ユニット7の近傍を示している。
図2において、赤外線温度センサ6は、内釜2から放射される赤外線を受光する受光素子を有している。赤外線温度センサ6の受光素子が赤外線を検知する範囲である視野角は、図中破線の内側の角度Bで示す範囲内である。赤外線温度センサ6は、受光素子が受光した赤外線量に応じた温度情報を出力する。コイルベース1cの壁部には、開口部40が開口している。開口部40は、内釜2から放射される赤外線を赤外線温度センサ6が受光するために設けられたものであり、コイルベース1cの壁部のうち内釜2の温度を反映する部位に設けられている。」

「【0028】
次に、炊飯プログラム実行による動作の詳細を以下に説明する。
【0029】
炊飯が開始されると、まず米に水を吸収させる浸せき工程が始まる。制御装置8は、釜加熱装置5により内釜2の加熱を開始し、内釜2内の水の温度を赤外線温度センサ6によって検知し、検知した温度に基づいて内釜2内の米と水の量(炊飯量)を判定する。炊飯量の判定は、例えば、炊飯量が多い場合には少ない場合と比べて温度上昇が遅いことを利用し、釜加熱装置5による加熱を開始してから所定時間経過した時点における温度上昇度合いや、ある温度に達するまでの所要時間に基づいて行うことができる。」

「【0034】
以上のように、本実施の形態1の炊飯器100は、赤外線透過板71を内釜2の外面から離れた位置に設けたので、赤外線透過板71の温度上昇を抑制することができる。このため、赤外線温度センサ6はより正確に釜の温度を検出することができるので、制御装置8はより正確に炊飯量を判定することができる。したがって、炊飯量に合った制御を行うことにより、炊飯量の多少にかかわらずおいしいご飯を炊き上げることのできる炊飯器100を得ることができる。
【0035】
なお、本実施の形態1で示した赤外線透過ユニット7は、後述する実施の形態3?10と組み合わせて用いることができる。」

「【0058】
実施の形態6.
図7は、実施の形態6に係る炊飯器の要部断面模式図であり、赤外線温度センサ6及び赤外線透過ユニット7D、7Eの近傍を示している。本実施の形態6では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同様の構成には同一の符号を付す。
【0059】
図7に示すように、赤外線温度センサ6は、複数(図7の例では2個)の光検知部6a、6bを備える。光検知部6a、6bは、それぞれ、所定の受光範囲における赤外線を受光可能に構成されている。赤外線温度センサ6は、光検知部6a、6bがそれぞれ受光した赤外線量に応じた温度を検知し、温度情報として出力する。」

「【0061】
本実施の形態6では、光検知部6aの受光範囲が内釜2の熱源となる釜加熱装置5から最も遠い場所を含むよう、光検知部6aの配置及び視野角と、開口部40Bの配置及び面積と、赤外線透過ユニット7Dの構成とが設定されている。また、光検知部6bの受光範囲が内釜2に設けられた水位線(図示せず)の近傍を含むよう、光検知部6bの配置及び視野角と、開口部40Cの配置及び面積と、赤外線透過ユニット7Eの構成とが設定されている。そして、制御装置8は、光検知部6aが検知した赤外線に基づく温度情報と、光検知部6bが検知した赤外線に基づく温度情報とを比較することによって、内釜2内の米と水の量(炊飯量)を判定する。
【0062】
本実施の形態6によれば、赤外線温度センサ6を、複数の光検知部6a、6bを備えた構成としたので、単一の赤外線温度センサ6により複数箇所の温度を同時に検知することができる。そして、検知した複数箇所の温度を比較して内釜2の炊飯量を判定することで、より正確に炊飯量の判定が行え、炊飯量の多少にかかわらず、おいしいご飯に炊き上げることができる炊飯器を提供することが可能となる。
【0063】
なお、本実施の形態6では、2個の光検知部6a、6bを備えた例を示したが、3個以上の光検知部を設けて3箇所以上の温度を検知するようにしてもよい。より多くの箇所の温度を検知する構成とすることで、炊飯量の判定処理における誤差を低減でき、より正確に炊飯量を判定することができる。」




」(図7)

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「内釜と、
前記内釜を収納する内釜収納部を備えた炊飯器本体と、
前記炊飯器本体の上面開口を開閉する蓋本体と、
底内コイル5aと、底外コイル5b及び側面加熱ヒータ5cから構成される釜加熱装置5とを備え、
赤外線温度センサ6は、内釜の外に配置される光検知部6a、6bを備え、一方の光検知部6aは、その受光範囲を釜加熱装置5から最も遠い場所を含む範囲とし、他方の光検知部6bは、その受光範囲を内釜の水位線近傍を含む範囲とし、
両光検知部6a、6bの検知した赤外線の温度情報の比較により、炊飯量を判定し、炊飯量に合った制御を行う、
炊飯器。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0008】
本発明によれば、炊飯器の内釜における塗装はがれ等の異常を炊飯器自身が検知した上で、使用者に内釜の内表面の塗装状態が劣化していることを報知し、内釜の使用停止や交換を促すことを可能としたため、塗装はがれ等の異常による食味の低下を引き起こす可能性や食品でないものを食した可能性があるという不安感や不快感を緩和又は解消することが可能となる。」

「【0012】
外蓋9には非接触温度センサ13が設けられており、例えばサーモパイル式の赤外線温度センサで構成される。非接触温度センサ13は、対象物の表面温度を計測することが可能であるため、内釜5内に調理物がある場合にはその調理物の表面温度を検知し、内釜5内に調理物がない場合には内釜5の内表面温度を検知する。内釜5内に調理物がある場合には、制御部51(後述の図8参照)は加熱コイル3からの熱量を制御し、調理物を最適な状態に仕上げる。また、非接触温度センサ13は検知素子13a(後述の図5参照)が8個設けられた複眼式のものであり、検知素子ごとに対象領域区分の赤外線量を検知することが可能であり、その赤外線量を電圧に変換することで、内釜5の内表面を複数の領域に区分してそれぞれの温度を検知することが可能である。」

「【0016】
・・・破線にて示される検知領域区分19a、19bは、図2にて説明した非接触温度センサ13による温度検知の領域区分である。図3で示す例では検知領域区分19aは、塗装はがれを起こしていない領域の温度を検知しており、検知領域区分19bは塗装はがれを起こしている領域の温度を検知している。」



」(図2)

したがって、上記引用文献2には次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されていると認められる。

「外蓋9に検知素子13aが8個設けられた複眼式の非接触温度センサ13が設けられ、
当該非接触温度センサ13により、内釜5内に調理物がある場合にはその調理物の表面温度を検知して、加熱コイル3からの熱量を制御し、
内釜5内に調理物がない場合には内釜5の内表面温度を検知し、内釜5の内表面を複数の領域に区分してそれぞれの温度を検知することによって、炊飯器の内釜における塗装はがれ等の異常を炊飯器自身が検知した上で、使用者に内釜の内表面の塗装状態が劣化していることを報知する炊飯器。」

3.引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0017】また、前記内枠上部5の後部には、鍋11の側面部の温度を検知する赤外線温度検知手段としての赤外線温度センサ31が設けられている。この赤外線温度センサ31は、前記鍋側面加熱手段26よりも若干下方に位置して前記鍋11の外側面上部に対向しているが、この鍋11に対して非接触である。そして、赤外線温度センサ31は、鍋11からの輻射熱Aを赤外線として受光し、これにより温度検知を行うものである。また、赤外線温度センサ31は、蓋体5を開けて鍋11を保温釜本体1から外したときにこの保温釜本体1の前方から容易に視認可能な位置に配設されている。この位置は、例えば本実施例のように鍋収容部8の蓋体5側の内側面であるが、容易に視認できれば、前記の位置に限定されるものではない。さらに、赤外線温度センサ31は、鍋11の側面下部に位置する前記加熱コイル16と鍋11の上部に位置する鍋側面加熱手段26との間に位置している。」

「【0023】つぎに、本保温釜の制御系統について図3により説明する。同図において、81は炊飯時に前記鍋11を炊飯加熱する炊飯加熱手段、82は保温時に鍋11を所定の保温温度に保温加熱する保温加熱手段である。これら炊飯加熱手段81および保温加熱手段82は、鍋底部加熱手段である前記加熱コイル16、鍋側面加熱手段26および蓋加熱手段である蓋ヒータ56により構成されている。また、83はマイクロコンピュータなどからなる制御手段で、この制御手段83は、前記鍋温度センサ21、赤外線温度センサ31および蓋温度センサ57の検知温度に基づき炊飯時および保温時に炊飯加熱手段81および保温加熱手段82を制御するものである。特に、鍋温度センサ21の検知温度に基づいて主に加熱コイル16が制御されて鍋11の底部の温度管理が行われ、赤外線温度センサ31の検知温度に基づいて主に鍋側面加熱手段26が制御されて鍋11の側面部の温度管理が行われ、蓋温度センサ57の検知温度に基づいて主に蓋ヒータ56が制御されて内蓋51の温度管理が行われる。また、保温時には、鍋11の底面に接触した鍋温度センサ21の検知温度に応じて加熱コイル16、鍋側面加熱手段26および蓋ヒータ56による加熱が調節され、鍋11が一定温度に保持される。」

「【0024】そして、鍋11内に米および水を入れて炊飯を開始すると、鍋温度センサ21による鍋11の底部の温度検知および赤外線温度センサ31による鍋11の側面部の温度検知に基づいて、加熱コイル16および鍋側面加熱手段26により鍋11の底面部および側面部を加熱し、まず水温を45?60℃に15?20分間保持する浸し炊きを行う。その後、鍋11を強い加熱で沸騰まで加熱する。この沸騰加熱時に鍋11の底部、鍋11の側面部の温度が90℃以上になり、蓋体5の温度が90℃以上で安定したら、鍋11内が沸騰状態になったものとして、加熱量を低減した沸騰継続加熱に移行する。」

「【0026】前記保温では、加熱コイル16により鍋11の底部および側面下部を加熱し、蓋ヒータ56により蓋体5をご飯の温度よりもわずかに高く加熱するとともに、鍋側面加熱手段26により鍋11の側面部を加熱する。この鍋11の側面部の温度管理は、ご飯が乾燥せず、かつ露が大量に付着しないようなものとする。ご飯は、70?76℃に温度を保持する。保温時も、3つのセンサ21,31,57のいずれかの検知温度が異常に高かったり、低かったりした場合は、異常を検知したものとして、異常加熱を防止する。」

したがって、上記引用文献5には次の技術(以下、「引用文献5記載の技術」という。)が記載されていると認められる。

「鍋温度センサ21、赤外線温度センサ31および蓋温度センサ57の検知温度に基づき、炊飯時及び保温時に炊飯加熱手段および保温加熱手段を制御する炊飯器において、鍋側面部の温度を検知する赤外線温度センサ31の検知温度に基づいて主に鍋側面加熱手段26が制御され、鍋側面部の温度管理によってご飯が乾燥せずかつ露が大量に付着しない炊飯器。」

4.引用文献3について
引用文献3には、「【0036】この保温工程では、通常保温温度で保温制御が行なわれるが、この保温制御中に、所定時間Ti、例えば2時間毎に鍋内の保温量を判定し、この判定結果により、保温温度を変更制御するので、この温度変更制御について説明する。」と記載されている。

5.引用文献4について
引用文献4には、「【0024】次に、鍋2の収納部である保護枠3の底部には鍋の重量を測定し、炊飯量および保温量を判定する重量センサー46を設置している。重量センサー46を設置することで、炊飯量・保温量を検知し、そのご飯の量にあった炊飯・保温プログラムで炊飯および保温をすることができる。」と記載されている。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「炊飯器」は、本願発明1における「炊飯器」に相当する。
引用発明における「内釜と、前記内釜を収納する内釜収納部を備えた炊飯器本体」は、本願発明1における「前記本体の開口から当該本体の内部に収容される内釜」、「上面に開口を有する本体」に相当する。
引用発明における「前記炊飯器本体の上面開口を開閉する蓋本体」は、本願発明1における「前記開口を開閉する蓋体」に相当する。
引用発明における「底内コイル5aと、底外コイル5b及び側面加熱ヒータ5cから構成される釜加熱装置5」は、本願発明1における「前記内釜を加熱する加熱手段」に相当する。
引用発明における「側面加熱ヒータ5c」は、本願発明1における「前記内釜の側面を加熱する側面加熱手段」に相当する。
さらに、本願発明1の赤外線センサーは、内鍋の内側側面を受光範囲とするのに対し、引用発明の赤外線温度センサ6は、内釜の外側側面を受光範囲とする点で異なるものの、両者は内釜の側部を受光範囲とすることで炊飯量を判定することで、技術が共通する。よって、引用発明における「赤外線温度センサ6は、内釜の外に配置される光検知部6a、6bを備え、一方の光検知部6aは、その受光範囲を釜加熱装置5から最も遠い場所を含む範囲とし、他方の光検知部6bは、その受光範囲を内釜の水位線近傍を含む範囲とし、両光検知部6a、6bの検知した赤外線の温度情報の比較により、炊飯量を判定し、炊飯量に合った制御を行う」は、本願発明1における「それぞれの素子の検出範囲が二次元状に配列された複数の受光素子を有し、前記内釜の側面から放射される赤外線の受光量に基づいて温度情報を生成する赤外線センサーと、前記赤外線センサーにより生成された温度情報から炊飯物の炊飯量を判定し、当該炊飯量に応じて前記加熱手段を制御する制御手段とを備え」、「前記赤外線センサーは、前記蓋体の下部に設けられ、前記内釜の内側の高さ方向の側面を赤外線の受光範囲とし、前記制御手段は、前記温度情報から前記内釜の側面の温度分布を判定し、前記内釜の側面の温度分布の中に低温度を検出したときに、前記側面加熱手段に通電させる」は、「内釜の側部を受光範囲とする赤外線センサーからの温度情報により、炊飯物の炊飯量を判定し、当該炊飯量に応じた制御を行う」という限りにおいて一致する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「上面に開口を有する本体と、
前記開口を開閉する蓋体と、
前記本体の開口から当該本体の内部に収容される内釜と、
前記内釜を加熱する加熱手段と、
前記内釜の側面を加熱する側面加熱手段と
を備え、
内釜の側部を受光範囲とする赤外線センサーからの温度情報により、炊飯物の炊飯量を判定し、当該炊飯量に応じた制御を行う
炊飯器。」

(相違点)
本願発明1は、「それぞれの素子の検出範囲が二次元状に配列された複数の受光素子を有し、前記内釜の側面から放射される赤外線の受光量に基づいて温度情報を生成する赤外線センサーと、前記赤外線センサーにより生成された温度情報から炊飯物の炊飯量を判定し、当該炊飯量に応じて前記加熱手段を制御する制御手段とを備え」、「前記赤外線センサーは、前記蓋体の下部に設けられ、前記内釜の内側の高さ方向の側面を赤外線の受光範囲とし、前記制御手段は、前記温度情報から前記内釜の側面の温度分布を判定し、前記内釜の側面の温度分布の中に低温度を検出したときに、前記側面加熱手段に通電させる」のに対し、引用発明は、「赤外線温度センサ6は、内釜の外に配置される光検知部6a、6bを備え、一方の光検知部6aは、その受光範囲を釜加熱装置5から最も遠い場所を含む範囲とし、他方の光検知部6bは、その受光範囲を内釜の水位線近傍を含む範囲とし、両光検知部6a、6bの検知した赤外線の温度情報の比較により、炊飯量を判定し、炊飯量に合った制御を行う」点。

(2)相違点についての判断
引用文献2記載の技術は、検知素子13aが8個設けられた複眼式の非接触温度センサ13が設けられた外蓋9を備え、当該非接触温度センサ13により、内釜5の内表面を複数の領域に区分して、それぞれの温度を検知して行う制御、すなわち内釜の温度分布を判定して行う制御は、内釜における塗装はがれ等の異常を炊飯器自身が検知するためである。そして、引用文献2の解決すべき課題は、「内釜の長期使用によっておきやすい劣化、すなわち塗装はがれ等の異常により、米飯の食味が低下してしまう可能性を少しでも抑制するために、炊飯器の内釜における塗装はがれ等の異常を炊飯器自身により検知した上で、使用者に内釜の内表面の塗装状態が劣化していることを報知し、内釜の使用停止及び交換を促すこと」(【0006】)であって、引用文献2の非接触温度センサ13による「内釜5の内表面を複数の領域に区分してそれぞれの温度を検知すること」は、上記課題を解決するために行われることである。
してみると、引用文献2には、相違点に係る本願発明1の構成が開示されているとはいえない。また、引用文献3?5についても、相違点に係る本願発明1の構成が開示されているとはいえない。
そして、本願発明1は、「内釜の側面の温度を直接読み取ることによって、正確な炊飯量の判定を行うことができ、炊飯性能の高い炊飯器を提供できる。」という効果(【0007】参照)、「炊飯工程、蒸らし工程及び保温工程の各工程において、内釜3の側面に付着する露を除去するようにする。」という効果(【0040】、【0041】参照)を奏するものである。

したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献2及び5記載の技術並びに引用文献3及び4記載事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

2.本願発明2、3について
本願発明2、本願発明3は、本願発明1を引用し、本願発明1の発明特定事項の全てを含むものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2及び5記載の技術並びに引用文献3及び4記載事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

第7 原査定について
原査定の理由(特許法第29条第2項)については、審判請求時の補正により、本願発明1?3はいずれも上記相違点に係る本願発明1の構成を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1?5に基いて、容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-03-04 
出願番号 特願2016-104255(P2016-104255)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A47J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 金丸 治之木戸 優華  
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 宮崎 賢司
窪田 治彦
発明の名称 炊飯器  
代理人 特許業務法人きさ特許商標事務所  
代理人 特許業務法人きさ特許商標事務所  
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