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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B25J
管理番号 1349523
審判番号 不服2018-3506  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-12 
確定日 2019-03-28 
事件の表示 特願2013-247027「産業用ロボット」拒絶査定不服審判事件〔平成27年2月23日出願公開、特開2015-36184、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 主な手続の経緯
本願は、平成25年11月29日(パリ条約による優先権主張 2013年8月9日(US)アメリカ合衆国)の出願であって、その主な手続の経緯は次のとおりである。
平成29年 7月28日付け:拒絶理由通知書
平成29年 9月27日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 9月28日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
平成29年11月15日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年12月 8日付け:平成29年11月15日提出の手続補正
についての補正の却下の決定、
拒絶査定
平成30年 3月12日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 平成29年12月8日付けの補正の却下の決定及び原査定の概要
1.平成29年12月8日付けの補正の却下の決定の概要は以下のとおりである。
平成29年11月15日付けの補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるが、当該補正後の本願請求項1に係る発明は、引用文献1ないし6に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであり、独立特許要件を満たさないから、平成29年11月15日付けの補正は却下すべきものである。
引用文献等一覧
1.特開2011-228627号公報
2.国際公開第2009/066573号
3.特開2001-300883号公報
4.特開2001-009765号公報
5.特開平11-156772号公報
6.特開2013-157561号公報
2.原査定(平成29年12月8日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1ないし4に係る発明は、上記引用文献1ないし6に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第3 本願発明
本願請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1ないし4」という。)は、平成30年3月12日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
【請求項1】
一定方向に配列される複数のFOUPと半導体ウエハ処理装置との間で半導体ウエハを搬送するとともにEFEMの一部を構成する産業用ロボットにおいて、
ロボット本体と、前記ロボット本体の外部に配置され前記ロボット本体を昇降させる昇降機構とを備え、
前記ロボット本体は、前記半導体ウエハが搭載されるハンドと、互いに相対回動可能に連結される複数のアーム部によって構成され前記ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、前記アームの基端側が回動可能に連結される本体部と、前記アームを昇降させるアーム昇降機構とを備え、
複数の前記FOUPの配列方向を第1方向とし、上下方向と前記第1方向とに直交する方向を第2方向とし、前記第2方向の一方を第3方向とし、前記第2方向の他方を第4方向とすると、
上下方向から見たときに、前記本体部に対する前記アームの基端側の回動中心は、前記本体部の中心よりも前記第3方向側に配置され、
前記アームが縮んで複数の前記アーム部および前記ハンドが上下方向で重なっている前記産業用ロボットの待機状態において、前記アームの一部は、前記本体部よりも前記第4方向側に配置され、
前記昇降機構は、前記本体部の、前記第1方向の両側の少なくともいずれか一方、および/または、前記本体部の、前記第4方向側に配置され、
前記昇降機構は、上下方向へ前記ロボット本体を駆動するための駆動部と、上下方向へ前記ロボット本体を案内するための2本のガイドレールと、2本の前記ガイドレールのそれぞれに係合して上下方向へスライドするガイドブロックと、前記駆動部、前記ガイドレールおよび前記ガイドブロックが収容される筺体と、前記ガイドブロックに固定される2個の連結部材と、前記連結部材に固定される固定部材とを備え、
前記筺体は、前記ガイドブロックと前記本体部との間に配置される平板状の前面部を備え、
2本の前記ガイドレールは、前記第1方向に間隔をあけた状態で配置され、
2個の前記連結部材は、前記第1方向に間隔をあけた状態で配置され、
前記前面部には、上下方向に細長いスリット状の2個の貫通孔が、前記連結部材の上下方向への移動が可能となるように、かつ、前記第1方向に間隔をあけた状態で形成され、
2個の前記連結部材のそれぞれには、前記貫通孔を通過するように2個の前記貫通孔のそれぞれに配置される貫通孔通過部が形成され、
2個の前記貫通孔通過部の先端面には、前記連結部材と別体で形成されるとともに前記第2方向を厚み方向とする平板状に形成され前記筐体の外部に配置される前記固定部材が固定され、
前記固定部材には、前記筐体の外部に配置される前記ロボット本体の前記本体部が固定されていることを特徴とする産業用ロボット。
また、本願発明2ないし4は、概略、本願発明1を減縮した発明である。
第4 引用文献1ないし6の記載事項
1.引用文献1
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の記載アないしクがある。
ア 段落【0014】
基板処理システム100は、図1および図2に示すように、基板110を搬送する基板搬送システム10と、処理装置20とを備えている。また、基板処理システム100は、基板搬送システム10により処理装置20に基板110を搬送するとともに、処理装置20により搬送された基板110に対して半導体デバイスの製造プロセスにおける処理を行うように構成されている。
イ 段落【0015】
基板搬送システム10は、基板110を収容する基板収納装置11と、基板収納装置11および処理装置20の間で基板110を搬送する基板搬送ロボット12とを備えている。・・・
ウ 段落【0016】
基板収納装置11は、SEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)規格のFOUP(Front Open Unified Pod)に対応している。・・・また、基板収納装置11は、平面的に見て異なる位置に配置された4つのカセット11a?11dを含んでいる。4つのカセット11a?11dは、Y方向に隣接するように配列されている。・・・
エ 段落【0017】
・・・基板搬送ロボット12は、ベース部材121と、支持軸122と、第1アーム部123と、第2アーム部124と、ハンド部125と、基板搬送ロボット12の各部を制御する制御部126とを備えている。・・・
オ 段落【0018】
支持軸122は、ベース部材121により支持されている。また、支持軸122は、ベース部材121の上面に対して垂直方向に延びるように形成されている。また、支持軸122の上端部には、第1アーム部123の一方端部が接続されている。第1アーム部123は、支持軸122を回動軸として水平面内で回動可能に構成されている。また、第1アーム部123の他方端部には、第2アーム部124の一方端部が接続されている。第2アーム部124は、第1アーム部123に接続された一方端部を回動中心として水平面内で回動可能に構成されている。また、第2アーム部124の他方端部には、ハンド部125が接続されている。ハンド部125は、第2アーム部124との接続部を回動中心として水平面内で回動可能に構成されている。また、ハンド部125は、基板110を下方から支持可能に構成されている。・・・
カ 段落【0019】
また、基板搬送ロボット12は、支持軸122を上下移動させることによって、第1アーム部123、第2アーム部124およびハンド部125を一体的に上下移動させることが可能に構成されている。これにより、基板搬送ロボット12は、カセット11a?11d内の異なる高さ位置に配置された全ての載置位置に対して基板110の搬出入を行うことが可能である。
キ 段落【0021】
処理装置20は、図1および図2に示すように、基板搬送ロボット12および基板収納装置11が配置される側(X2方向側)に背面壁201を有している。・・・
ク 段落【0022】
・・・基板搬送ロボット12の最小旋回領域は、図4に示すように、ハンド部125により基板110を支持した状態で、かつ、第1アーム部123、第2アーム部124およびハンド部125が互いに重なるように折り畳まれた基準姿勢において、第1アーム部123を水平面内で回動する場合に旋回に必要な領域である。・・・
(2)上記記載及び図面から、引用文献1には次の技術的事項が記載されていると認められる。
ア 上下方向とY方向とに直交する方向がX方向であり、X方向の内、基板収納装置11から処理装置20に向かう方向がX1方向であり、処理装置20から基板収納装置11に向かう方向がX2方向である(特に図1を参照。)。
イ 基板搬送ロボット12の第1アーム部123、第2アーム部124及びハンド部125が互いに重なるように折り畳まれた基準姿勢において、第1アーム部123及び第2アーム部124の一部は、基板搬送ロボット12のベース部材121よりもX1方向側に配置されている(特に記載ク及び図4を参照。)。
ウ 基板搬送ロボット12のベース部材121に対する第1アーム部123の回動中心C1は、ベース部材121の中心よりもX2方向側に配置されている(特に図2を参照。)。
(3)したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「Y方向に隣接するように配列されている複数のカセット11a?11dを含む基板収納装置11と処理装置20の間で基板110を搬送するとともに基板処理システム100の一部を構成する基板搬送ロボット12において、
基板搬送ロボット12は、基板110を支持可能に構成されているハンド部125と、支持軸122を回動軸として水平面内で回動可能に構成されている第1アーム部123と、第1アーム部123に接続された一方端部を回動中心として水平面内で回動可能に構成され、他方端部にはハンド部125が接続されている第2アーム部124と、第1アーム部123の一方端部が回動可能に接続されている支持軸122とを備え、支持軸122を上下移動させることによって、第1アーム部123、第2アーム部124及びハンド部125を一体的に上下移動させることが可能に構成されており、
4つのカセット11a?11dの配列方向をY方向であり、上下方向とY方向とに直交する方向がX方向であり、X方向の内、基板収納装置11から処理装置20に向かう方向がX1方向であり、処理装置20から基板収納装置11に向かう方向がX2方向であり、
基板搬送ロボット12のベース部材121に対する第1アーム部123の回動中心C1は、ベース部材121の中心よりもX2方向側に配置され、
第1アーム部123、第2アーム部124及びハンド部125が互いに重なるように折り畳まれた基準姿勢において、第1アーム部123及び第2アーム部124の一部は、基板搬送ロボット12のベース部材121よりもX1方向側に配置されている、基板搬送ロボット12。」
2.引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の記載アないしケがある。
ア 段落[0003]
筐体内における搬送ロボット8に必要な動作範囲については、平面動作範囲と上下動作範囲、の2つを満たすことが求められる。平面動作範囲は、図1(a)のように上から見たときのアーム動作によるハンド10のアクセス可能範囲である。また、上下動作範囲は、昇降機構により上下したときのハンド10のアクセス可能範囲である。
イ 段落[0004]
上下動作範囲については、これを必要かつ十分に確保する場合、図1(b)のように、胴体14内に収容されている図示しない昇降機構によってアーム11を昇降させて上下動作範囲を確保している。・・・
ここで昇降機構20の可動範囲を上方に延ばすため、単にボールネジシャフト23を上方に延長すると、第1アーム12の最下部が天板15に接触するため、上記L3の高さまでハンド10が下降できなくなる。
つまり昨今の搬送ロボット8はL3の高さにアクセス可能な状態を保ちつつ、L4よりも高い位置にアクセス可能であれば、筐体のレイアウトを自由にできるため、昇降機構20の上昇ストロークができる限り大きく、かつL3高さにハンド10が到達できるような上下動作範囲を有することが求められている。
ウ 段落[0014]
図4は本発明の搬送ロボット8を示す斜視図である。搬送ロボット8は、垂直面に平面を有する板状のプレート28と、プレート28の側面に位置する移動ユニット48と、ユニットに回転自在に取り付けられたアーム11と、アーム11の先端に回転自在に取り付けられたハンド10と、から概ね構成されている。
エ 段落[0015]
胴体14は、昇降機構20を備えたプレート28と、アーム駆動ユニット18と上下ユニット19とで構成される移動ユニット48と、から概ね構成されている。・・・上下ユニット19とアーム駆動ユニット18はプレート28の垂直面に対して上下にスライド昇降が可能に支持されている。
オ 段落[0017]
・・・まず、昇降機構について説明する。図5は本発明の搬送ロボット8の胴体14及び昇降機構20を説明するための簡単な模式図である。(a)が側面図、(b)が正面図である。本発明の搬送ロボット8では、従来の搬送ロボットのように胴体の内部に昇降機構が収容されている構成とは異なり、以下のように、平面視において昇降機構20を有するプレート28とシフトした位置にある移動ユニット48(上下ユニット19及びアーム駆動ユニット18)がアーム及びハンド10を搭載して昇降する。
(2)上記記載及び図面から、引用文献2には次の技術的事項が記載されていると認められる。
「垂直面に平面を有する板状のプレート28と、プレート28の側面に位置し、アーム駆動ユニット18と上下ユニット19とで構成される移動ユニット48と、ユニットに回転自在に取り付けられたアーム11と、アーム11の先端に回転自在に取り付けられたハンド10と、から構成されている搬送ロボット8において、
搬送ロボット8の胴体14は、昇降機構20を備えたプレート28と、移動ユニット48と、から構成されており、
搬送ロボット8の胴体14の内部にはアーム11を昇降させる機構が収容されておらず、
昇降機構20を有するプレート28とシフトした位置にある移動ユニット48が、アーム11及びハンド10を搭載して上下にスライド昇降可能に支持されている、技術的事項。」
3.引用文献3ないし5について
原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された、引用文献3(要約を参照。)、引用文献4(要約を参照。)及び引用文献5(段落【0009】を参照。)によれば、本願の優先日前には、半導体ウエハ処理用ロボットの技術分野において、テレスコピック式の多段階の昇降機構を設けることは、周知技術であったと認められる。
4.引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献6の段落【0011】ないし段落【0040】並びに図1及び図2の記載からみて、当該引用文献6には次の技術的事項が記載されていると認められる。
「複数の収納容器(FOUP)2と処理室3の間でウェハ4を搬送するとともに搬送室(EFEM)1の一部を構成する搬送ロボット10において、
搬送ロボットにおいて、ハンド23と、第1アーム部21及び第2アーム部22から構成されるアーム部20と、第1アーム部21の基端側が回動可能に連結されるアーム駆動部12と、アーム駆動部12及びアーム部20を昇降させる昇降機構とを備える、技術的事項。」
第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「複数のカセット11a?11d」は本願発明1の「複数のFOUP」に相当する。
以下同様に、引用発明の「処理装置20」は本願発明1の「半導体ウエハ処理装置」に、引用発明の「基板110」は本願発明1の「半導体ウエハ」に、引用発明の「基板処理システム100」は本願発明1の「EFEM」に、引用発明の「基板搬送ロボット12」は本願発明1の「産業用ロボット」及び「ロボット本体」に、引用発明の「ハンド部125」は本願発明1の「ハンド」に、引用発明の「第1アーム部123」及び「第2アーム部124」は本願発明1の「複数のアーム部」に、引用発明の「ベース部材121」及び「支持軸122」は本願発明1の「本体部」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「Y方向」は本願発明1の「第1方向」に、引用発明の「X方向」は本願発明1の「第2方向」に、引用発明の「X1方向」は本願発明1の「第4方向」に、引用発明の「X2方向」は本願発明1の「第3方向」に、それぞれ対応する。
また、引用発明の「支持軸122を上下移動させることによって、第1アーム部123、第2アーム部124及びハンド部125を一体的に上下移動させることが可能に構成されて」いる事項は、本願発明1の「前記アームを昇降させるアーム昇降機構」に対応する。
また、引用発明の「基板搬送ロボット12のベース部材121に対する第1アーム部123の回動中心C1は、ベース部材121の中心よりもX2方向側に配置され」ている事項は、本願発明1の「上下方向から見たときに、前記本体部に対する前記アームの基端側の回動中心は、前記本体部の中心よりも前記第3方向側に配置され」ている事項に対応する。
また、引用発明の「第1アーム部123、第2アーム部124及びハンド部125が互いに重なるように折り畳まれた基準姿勢において、第1アーム部123及び第2アーム部124の一部は、基板搬送ロボット12のベース部材121よりもX1方向側に配置されている」事項は、本願発明1の「前記アームが縮んで複数の前記アーム部および前記ハンドが上下方向で重なっている前記産業用ロボットの待機状態において、前記アームの一部は、前記本体部よりも前記第4方向側に配置され」ている事項に対応する。
(2)一致点及び相違点
そうすると、本願発明1と引用発明とは、以下の一致点において一致する。
【一致点】
一定方向に配列される複数のFOUPと半導体ウエハ処理装置との間で半導体ウエハを搬送するとともにEFEMの一部を構成する産業用ロボットにおいて、
前記ロボット本体は、前記半導体ウエハが搭載されるハンドと、互いに相対回動可能に連結される複数のアーム部によって構成され前記ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、前記アームの基端側が回動可能に連結される本体部と、前記アームを昇降させるアーム昇降機構とを備え、
複数の前記FOUPの配列方向を第1方向とし、上下方向と前記第1方向とに直交する方向を第2方向とし、前記第2方向の一方を第3方向とし、前記第2方向の他方を第4方向とすると、
上下方向から見たときに、前記本体部に対する前記アームの基端側の回動中心は、前記本体部の中心よりも前記第3方向側に配置され、
前記アームが縮んで複数の前記アーム部および前記ハンドが上下方向で重なっている前記産業用ロボットの待機状態において、前記アームの一部は、前記本体部よりも前記第4方向側に配置されている、産業用ロボット。
また、本願発明1と引用発明とは、以下の相違点において互いに相違する。
【相違点】
本願発明1は「前記ロボット本体の外部に配置され前記ロボット本体を昇降させる昇降機構」を備えるのに対し、引用発明は、基板搬送ロボット12それ自体を昇降させる昇降機構を備えない点。
(3)判断
上記相違点について検討する。
記載カによれば、引用発明の基板搬送ロボット12は、支持軸122の上下移動により異なる高さ位置に位置合わせを行うものであり、引用文献1には、基板搬送ロボット12の外部に基板搬送ロボット12自体を昇降させる機構を設けることは、記載も示唆もされていない。
これに対して、引用文献2には、昇降機構20により、アーム駆動ユニット18と上下ユニット19とで構成される移動ユニット48を上下方向に昇降させる技術的事項が記載されているが、引用文献2に記載された技術的事項は、搬送ロボット8の内部にアーム昇降機構を設ける構成に換えて、上記昇降機構20を採用したものである。
よって、仮に引用発明に対して、引用文献2に記載された技術的事項を適用することが可能であったとしても、その場合は、引用発明の、支持軸122を上下移動させる構成に換えて、基板搬送ロボット12の外部に基板搬送ロボット12自体を昇降させる機構を設けると考えることが自然であり、ロボット本体を昇降させる昇降機構及びアームを昇降させるアーム昇降機構を共に備える、本願発明1とは異なるものとなる。
また、上記のとおり、引用文献2に記載された技術的事項は、搬送ロボット8の内部にアーム昇降機構を設ける構成に換えて、上記昇降機構20を採用したものであるから、仮に引用発明に対して、引用文献2に記載された技術的事項を適用した場合に、アームを昇降させるアーム昇降機構を残置させた上で、ロボット本体を昇降させる昇降機構を新たに設ける構成とすることは、引用文献2の技術的な思想に反するものであり、阻害要因があるともいえる。
また、引用文献3ないし5にも記載されているとおり、本願の優先日前には、半導体ウエハ処理用ロボットの技術分野において、テレスコピック式の多段階の昇降機構を設けることは、周知技術であったと認められるが、引用発明に対して当該周知技術を適用したとしても、支持軸122の上下移動をテレスコピック式の多段階で行うものとなるに過ぎず、基板搬送ロボット12の外部に基板搬送ロボット12自体を昇降させる機構を付加的に設ける構成には想到し得ないので、やはり、本願発明1とは異なるものとなる。
また、引用文献6は、本願の優先日後であって本願の出願前に頒布された刊行物であるが、そもそも、引用発明と同様に、アーム駆動部12及びアーム部20を昇降させる昇降機構は記載されているものの、搬送ロボット10の外部に基板搬送ロボット12自体を昇降させる機構を設けることは、記載も示唆もされていないから、引用文献2ないし5に加えて、引用文献6に記載された技術的事項をも併せて考慮したとしても、本願の優先権主張が有効であるか否かについて検討するまでもなく、上記相違点が、当業者が容易に想到し得たものであるとは認められない。
そして、本願発明1は、ロボットを昇降させる昇降機構及びアームを昇降させるアーム昇降機構を共に備える構成とした上で、ロボットを昇降させる昇降機構をロボット本体部の第1方向の両側の少なくともいずれか一方、および/または、第4方向側に配置することにより、ロボット本体を昇降させる昇降機構をロボット本体の外部に配置した場合においても、EFEMの小型化が可能となる、という顕著な効果を奏するものであるので、本願発明1は、引用発明及び引用文献2ないし6に記載された技術的事項の寄せ集めであるということもできない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4も、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
第6 原査定について
本願発明1ないし4は「前記ロボット本体の外部に配置され前記ロボット本体を昇降させる昇降機構」及び「前記アームを昇降させるアーム昇降機構」という発明特定事項を有するので、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1ないし6に基づいて、容易に発明できたものとはいえないことは、上記「第5 対比・判断」の「1.(3)判断」において指摘してたとおりである。したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-03-11 
出願番号 特願2013-247027(P2013-247027)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B25J)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 永冨 宏之  
特許庁審判長 西村 泰英
特許庁審判官 平岩 正一
篠原 将之
発明の名称 産業用ロボット  
代理人 小平 晋  

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