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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06T |
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管理番号 | 1349590 |
審判番号 | 不服2017-6082 |
総通号数 | 232 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-04-27 |
確定日 | 2019-03-07 |
事件の表示 | 特願2013- 43838「拡張現実システムおよび拡張現実提供方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月22日出願公開、特開2014-174589〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年3月6日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成28年 9月27日:拒絶理由通知書 平成28年12月 1日:意見書、手続補正書の提出 平成29年 1月26日:拒絶査定 平成29年 4月27日:審判請求書、手続補正書の提出 平成30年 3月30日:拒絶理由通知書(当審) 平成30年 6月 1日:意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成30年6月1日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 なお、本願発明の各構成の符号(A)?(C)は、説明のために当審において付したものであり、以下、構成A?構成Cと称する。 (本願発明) 「(A)位置が可変の携帯端末装置と、 (B)絶対位置が既知であり、前記絶対位置に固定される設置型の装置である指標手段と、 を備え、 (A)前記携帯端末装置は、 (A-1)動きに関する情報を測定するセンサと、 (A-2)前記センサの基準位置と前記基準位置における前記センサの姿勢とを記憶する第1記憶手段と、 (A-3)前記センサが前記基準位置に存在するときに前記設置型の装置との間で近接無線通信を行うことにより前記指標手段の個別情報を取得する第1無線通信手段を備える取得手段と、 (A-4)前記センサが前記基準位置に存在しているか否かを判定する判定手段と、 (A-5)前記判定手段により前記センサが前記基準位置に存在していると判定された後において、前記第1記憶手段に記憶された前記基準位置と、前記センサにより測定された前記動きに関する情報とに基づいて、前記センサの現在位置を特定する位置特定手段と、 (A-6)前記判定手段により前記センサが前記基準位置に存在していると判定された後において、前記第1記憶手段に記憶された前記基準位置における前記センサの姿勢と、前記センサにより測定された前記動きに関する情報とに基づいて、前記センサの現在の姿勢を特定する姿勢特定手段と、 (A-7)前記位置特定手段により特定された前記センサの現在位置と前記姿勢特定手段により特定された前記センサの現在の姿勢とに応じて出力情報を出力することにより拡張現実を表現する出力手段と、 を備え、 (B)前記指標手段は、 (B-1)前記センサが前記基準位置に存在しているときの前記センサの姿勢を、前記第1記憶手段に記憶された前記基準位置における前記センサの姿勢となるように規定する筐体を備え、 (A-8)前記判定手段は、前記取得手段により前記指標手段の個別情報が取得されたときに前記センサが前記基準位置に存在していると判定する (C)拡張現実システム。」 第3 当審における拒絶の理由 1.当審の拒絶理由の概要 平成30年3月30日の当審が通知した拒絶理由のうちの理由3は、概略次のとおりのものである。 本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項1?4、9、10に対して 引用文献1?3 ・請求項5?7に対して 引用文献1?4 ・請求項8に対して 引用文献1?5 引用文献1:国際公開第2012/070595号 引用文献2:特開2013-11451号公報 引用文献3:特開2011-102707号公報 引用文献4:国際公開第2012/144389号 引用文献5:特開2006-79313号公報 2.当審の拒絶理由と補正後の請求項1との対応関係 補正後の(平成30年6月1日付けの手続補正により補正された)特許請求の範囲の請求項1は、同日付けの意見書において説明されるように、補正前の(平成29年4月27日付けの審判請求時の手続補正により補正された)特許請求の範囲の請求項1に、同請求項2の内容を追加し、さらに構成を追加したものである。 よって、本願発明に対しては、引用文献1?3に基づく進歩性の欠如の拒絶理由が通知されているものである。 第4 引用文献の記載事項及び引用文献に記載される発明 1.引用文献1の記載事項 当審における拒絶の理由に引用した引用文献1には、「位置情報提供装置、位置情報提供システム、位置情報提供方法、プログラム及び記録媒体」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 なお、下線は強調のために当審で付したものである。 [0001] 本発明は、位置情報提供装置、位置情報提供システム、位置情報提供方法、プログラム及び記録媒体に関する。 [0003](前略)自律航法とは、加速度センサやジャイロセンサ、磁気センサ等の複数のセンサを組み合わせてユーザの移動を推定し、基準位置からの位置及び移動方向(方位)を算出する技術である。この技術により、例えば、GPSや電子コンパス等の方法によっては位置や方位の取得が困難な場所(例えば、屋内又は高層ビルの谷間等)においても、基準位置(例えば、店舗等の入り口)からの相対的な位置及び方位を算出することができ、ARサービスが可能となる。 [0018][第1の実施形態] まず、本発明の第1の実施形態について説明する。 [0019] 図1のブロック図に、本実施形態の位置情報提供装置の一例を模式的に示す。図示のとおり、この位置情報提供装置は、センサ101と、センサデータ取得手段110と、特徴量算出手段120と、信頼度算出手段130と、位置計測手段160と、案内情報生成手段140と、情報提示手段150とを含む。 [0020] 本発明の位置情報提供装置は、特に限定されないが、ユーザが身につけて屋外(例えば街中等)若しくは屋内を歩くことができる端末であるか、又は、そのような端末に組み込まれた装置であることが好ましい。前記端末としては、例えば、ゲーム機、携帯電話、スマートフォン等の携帯端末、ノートパソコン等の持ち運び可能なパーソナルコンピュータ、及び、キーホルダー、腕時計、ペンダント等のアクセサリにマイコンとともに組み込んだ小型端末があげられる。(後略) [0026] 図1の装置においては、例えば、装置起動中、継続してセンサデータを取得し、取得したセンサデータを用いて、位置の計測、信頼度の算出、案内情報の生成、及び情報提示を行うことができる。(後略) [0027] センサ101は、ユーザが所持する携帯端末内部又は外部等に取り付けられ、図1の位置情報提供装置の位置及び姿勢に基づき、センサデータを生成する。(中略)位置計測手段160は、センサデータ取得手段110が取得したセンサデータを用いて、自律航法により、端末の位置及び姿勢を計測する。自律航法は、公知の自律航法でよく、例えば、特許文献1等に記載されている自律航法でもよい。これにより、例えば建物の入口等の、特定の地点からの相対的な位置及び姿勢を計測することができる。(後略) [0029] 信頼度算出手段130は、特徴量算出手段120が生成(算出)した特徴量を用いて、位置計測手段160が計測する位置及び姿勢の信頼度を算出する。(後略) [0030] 案内情報生成手段140は、位置計測手段160が計測した位置及び姿勢と、信頼度算出手段130が算出した信頼度とに基づき、ユーザに提示する案内情報を生成する。例えば、屋内での店舗情報案内や観光情報案内の場合、計測した位置(位置情報提供装置が存在すると推定される位置)周辺に存在する店の情報(店名やジャンル等)をデータベースから検索し、取得してもよい。(後略) [0031] 情報提示手段150は、信頼度算出手段130が算出した信頼度を用いて、案内情報生成手段140が生成した案内情報を端末上に提示する。例えば、AR技術を用いて案内情報を提示する場合、図3(A)に示すように、信頼度が高い場合は、各店の映像の上に案内情報を提示してもよい。一方、信頼度が低い場合は、図3(B)に示すように、店の一覧を示し、周辺にどういう店があるかを示すだけにとどめてもよい。 [0041] 図5のステップS005(位置計測ステップ)では、位置計測手段160が、特許文献1等において公知の自律航法を用いて、店舗入り口からの相対的な位置情報提供装置の位置及び姿勢を計測する。(後略) [0048] 次に、図5のステップS008(案内情報生成ステップ)では、案内情報生成手段140が、ステップS005で計測した位置及び姿勢と、ステップS007で算出した信頼度とに基づき、案内情報を生成する。(後略) [0050] 図5のステップS009では、情報提示手段150が、ステップS007で算出した信頼度630に基づき、ステップS008で生成した案内情報を端末上に表示(ユーザに提示)する。本例では、信頼度630の高さに応じて前記端末における画面の表示方法を選択するものとする。具体的には、信頼度630が高い場合は、例えば、図3(A)に示す画面300の表示方法を選択し、画面中の景観映像中の店に合わせて案内情報を表示する。一方、信頼度630が低い場合は、例えば、図3(B)に示す画面310の表示方法を選択し、案内情報をリスト表示する。(後略) [0076][第3の実施形態] 次に、本発明の第3の実施形態について説明する。 [0077] 図11のブロック図に、本実施形態の位置情報提供装置の一例を模式的に示す。図示のとおり、この位置情報提供装置は、第1の実施の形態に対し、信頼度記憶手段190及び信頼度統合算出手段1100をさらに含む点で、図1(第1の実施形態)の位置情報提供装置と異なる。それ以外は、図1(第1の実施形態)の装置と同様である。 [0079] 信頼度算出手段130は、第1の実施形態と同様に、特徴量算出手段120が算出した特徴量に基づき、信頼度を算出する。信頼度記憶手段190は、信頼度算出手段130が算出した信頼度を、算出した時刻とともに記憶する。より具体的には、例えば、図12の1200のように、時刻と信頼度とを関連づけて記憶する。同図の1200では、時刻として、装置起動後の経過時間を用い、その時刻の信頼度を格納している。 [0080] 信頼度統合算出手段1100は、信頼度記憶手段190が記憶している一定期間の信頼度を用いて、現在の信頼度を算出する。具体的には、例えば、過去一定期間の信頼度の平均値を現在の信頼度としたり、最大の信頼度を現在の信頼度としたりしてもよい。 [0081] 案内情報生成手段140は、信頼度統合算出手段1100が算出した現在の信頼度と、位置計測手段160が計測した位置及び姿勢とに基づき、案内情報を生成する。 [0082] 情報提示手段150は、信頼度統合算出手段1100が算出した信頼度を用いて、案内情報生成手段140が生成した案内情報を端末に表示(ユーザに提示)する。 [0084] 本実施形態の位置情報提供装置全体の動作(位置情報提供方法)は、信頼度算出手段130が算出した信頼度に代えて、信頼度統合算出手段1100が算出した現在の信頼度を用いて案内情報生成ステップ及び情報提示ステップを行う点が第1の実施形態と異なる。それ以外は、第1の実施形態と同様にして行うことができる。 [0095] 現在の信頼度が低い場合は、精度よく位置及び姿勢計測を行うための調整(キャリブレーション)が必要になるため、ステップS309(情報提示ステップ)において、基準点(出入り口や、予め位置及び姿勢が分かっているマーカ等)へ移動するよう促し、精度よく位置及び姿勢を計測できるように誘導することができる。このときの情報提示方法としては、例えば、図14(A)に示すようなAR上での表示による方法、又は、同図(B)に示すような地図を用いた表示による方法等がある。また、このとき、ユーザが(すなわち、位置情報提供装置が)基準点に到達した場合は、信頼度記憶手段190が記憶している信頼度をすべて消去し、又は別のデータベース等に移動させ、新たに信頼度を記憶していってもよい。 2.引用文献1に記載された発明 引用文献1に記載された発明を以下に認定する。 (1)第1の実施形態 a.携帯端末 段落[0001]、[0018]、[0020]によれば、引用文献1には、位置情報提供装置に関する発明が記載されており、第1の実施形態として、位置情報提供装置は、ユーザが身につけて屋内を歩くことができる携帯端末であることが記載されている。 そして、段落[0019]、[0026]によれば、位置情報提供装置は、センサと、信頼度算出手段と、位置計測手段と、案内情報生成手段と、情報提示手段とを含み、取得したセンサデータを用いて、位置の計測、信頼度の算出、案内情報の生成、及び情報提示が行うことが記載されている。 即ち、引用文献1には、「ユーザが身につけて屋内を歩くことができる携帯端末」に関する発明が記載されており、「携帯端末は、センサと、位置計測手段と、信頼度算出手段と、案内情報生成手段と、情報提示手段とを備えている」ことが記載されている。 b.センサ 段落[0027]によれば、引用文献1には、「センサは、ユーザが所持する携帯端末内部に取り付けられ、携帯端末の位置及び姿勢に基づき、センサデータを生成する」ことが記載されている。 c.位置計測手段 段落[0003]、[0027]、[0041]の記載によると、位置計測手段は、センサデータを用いて、自律航法により携帯端末の位置及び姿勢を計測し、建物の入口等の、特定の地点からの相対的な位置及び姿勢を計測する。 即ち、引用文献1には、「位置計測手段は、センサデータを用いて、自律航法により建物の入口等の特定の地点からの相対的な位置及び姿勢を計測する」ことが記載されている。 d.信頼度算出手段 段落[0029]によれば、引用文献1には、「信頼度算出手段は、位置計測手段が計測する位置及び姿勢の信頼度を算出する」ことが記載されている。 e.案内情報生成手段 段落[0030]、[0048]によれば、引用文献1には、「案内情報生成手段は、位置計測手段が計測した位置及び姿勢と、信頼度算出手段が算出した信頼度とに基づき、ユーザに提示する案内情報を生成する」ことが記載されている。 f.情報提示手段 段落[0031]、[0050]によれば、引用文献1には、「情報提示手段は、信頼度算出手段が算出した信頼度を用いて、案内情報生成手段が生成した案内情報を、AR技術を用いて、携帯端末上の画面中の各店の映像の上に提示する」ことが記載されている。 (2)第3の実施形態 a.信頼度記憶手段及び信頼度統合算出手段 段落[0076]、[0077]の記載によれば、引用文献1には、第1の実施形態に対し、信頼度記憶手段及び信頼度統合算出手段をさらに含み、それ以外は第1の実施形態の装置と同様である第3の実施形態が記載されている。 段落[0079]、[0080]によると、「信頼度記憶手段は、信頼度算出手段が算出した信頼度を、算出した時刻とともに記憶」し、「信頼度統合算出手段は、信頼度記憶手段が記憶している一定期間の信頼度を用いて現在の信頼度を算出」する。 そして、段落[0081]、[0082]、[0084]によれば、第3の実施形態は、「案内情報生成手段」及び「情報提示手段」が、信頼度算出手段が算出した信頼度に代えて、信頼度統合算出手段が算出した現在の信頼度を用いて、案内情報の生成及び提示を行う点が第1の実施形態と異なる。 b.位置及び姿勢計測を行うための調整(キャリブレーション) 段落[0095]の記載によれば、第3の実施形態は、「位置及び姿勢計測を行うための調整(キャリブレーション)のために、基準点(出入り口や、予め位置及び姿勢が分かっているマーカ等)へ移動するよう促す表示を行い、位置情報提供装置(携帯端末)が基準点に到達した場合は、信頼度記憶手段190が記憶している信頼度をすべて消去する」ことが記載されている。 (3)まとめ 以上の記載事項を踏まえ、第1の実施形態の変形例である第3の実施形態を引用発明として認定すると、引用文献1には下記に示す発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 なお、引用発明の各構成を、それぞれに付した符号(a)?(j)により、以下、構成a?構成jと称する。 (引用発明) 「(a)ユーザが身につけて屋内を歩くことができる携帯端末であって、 (b)前記携帯端末は、センサと、位置計測手段と、信頼度算出手段と、案内情報生成手段と、情報提示手段と、信頼度記憶手段と、信頼度統合算出手段とを備え、 (c)前記センサは、ユーザが所持する前記携帯端末内部に取り付けられ、前記携帯端末の位置及び姿勢に基づき、センサデータを生成し、 (d)前記位置計測手段は、前記センサデータを用いて、自律航法により建物の入口等の特定の地点からの相対的な位置及び姿勢を計測し、 (e)前記信頼度算出手段は、前記位置計測手段が計測する位置及び姿勢の信頼度を算出し、 (f)前記信頼度記憶手段は、前記信頼度算出手段が算出した前記信頼度を、算出した時刻とともに記憶し、 (g)前記信頼度統合算出手段は、前記信頼度記憶手段が記憶している一定期間の信頼度を用いて現在の信頼度を算出し、 (h)前記案内情報生成手段は、前記位置計測手段が計測した位置及び姿勢と、前記信頼度統合算出手段が算出した信頼度とに基づき、ユーザに提示する案内情報を生成し、 (i)前記情報提示手段は、前記信頼度統合算出手段が算出した信頼度を用いて、前記案内情報生成手段が生成した案内情報を、AR技術を用いて、前記携帯端末上の画面中の各店の映像の上に提示し、 (j)位置及び姿勢計測を行うための調整(キャリブレーション)のために、基準点(出入り口や、予め位置及び姿勢が分かっているマーカ等)へ移動するよう促す表示を行い、前記携帯端末が基準点に到達した場合は、信頼度記憶手段が記憶している記憶している信頼度を消去する (a)携帯端末。」 3.引用文献2に記載された事項 当審における拒絶の理由に引用した引用文献2には、「経路探索装置、経路探索方法及び経路探索プログラム」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 なお、下線は強調のために当審で付したものである。 【技術分野】 【0001】 本発明は、経路を探索する技術に関する。 【背景技術】 【0002】 現在では、例えば、カーナビゲーションシステムやネットワーク上の地図サービスにおいて、出発地から目的地までの2地点間の経路を求めて表示することが実現されている。(後略) 【0011】 本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、施設内の地点を出発地、目的地として指定可能な経路探索を提供することを目的とする。 【0047】 次に、経路検索処理について説明する。 【0048】 経路検索処理は、利用者から出発地と目的地を入力して開始される。各地点が施設内の場合は、その施設に対応するネットワークデータと図面データとその図面データ上の座標値を入力し、各地点が屋外の場合は、屋外であることを示すデータとその地点の緯度経度を入力する。以下に、いくつかの入力方法の具体例を説明する。 【0053】 また、ある地点の情報をコード化したデータを携帯端末によって読み取り可能な媒体に書き込み、その媒体をコード化した地点に設置しておくと、現在位置を出発地として指定する際に有効である。具体的には、2次元バーコードとしてコード化し、そのバーコードを印刷した表示板を設置し、携帯端末でバーコードを読み取り現在位置を取得する方法、ICタグにコード化したデータを書き込み、近接無線の読取装置を備えた携帯端末をICタグにかざしてデータを読み取り現在位置を取得する方法、数m程度の出力範囲を持った無線発信装置を設置してコード化されたデータを常時発信しておき、無線データを受信可能な携帯端末によりデータを受信して現在位置を取得する方法などがある。また全ての設置地点におけるコード化されたデータを一意に識別できる設置地点IDを付与してデータベースサーバで管理し、設置地点IDを上記の方法で印刷、書き込み、発信しておき、携帯端末で設置地点IDを取得し、データベースサーバにアクセスしてコード化されたデータに変換してもよい。 以上の記載によれば、引用文献2には、次の技術(以下、「文献2技術」という。)が記載されていると認められる。 (文献2技術) 「ナビゲーションシステムや地図サービスにおける施設内の地点を出発地、目的地として指定して経路探索を行う技術であって、ある地点の情報をコード化したデータを携帯端末によって読み取り可能なICタグに書き込み、そのICタグをコード化した地点に設置し、近接無線の読取装置を備えた携帯端末をICタグにかざしてデータを読み取って現在位置を取得し、その現在位置を出発地として指定する技術」 4.引用文献3に記載された事項 当審における拒絶の理由に引用した引用文献3には、「測位装置及び測位方法」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 なお、下線は強調のために当審で付したものである。 【0022】 <測位装置の機能構成> 最初に、本実施形態に係る測位装置の機能構成について説明する。 図1は、本実施形態に係る測位装置10の機能構成を示すブロック図である。測位装置10は、第1の測位手段としてのリファレンス測位手段11、第2の測位手段としてのセンサー測位手段12、記憶部13、位置補正手段15、通信手段18等を有している。 【0023】 リファレンス測位手段11は、外部から位置情報信号を受信して、測位装置10を装着したユーザーの現在位置の測位を行う。現在位置を測位する方法として、本実施形態では、GPS(Global Positioning System) 衛星からの位置情報信号を受信し、位置情報信号に含まれる航法メッセージを解析して測位する方法と、RFID(Radio Frequency Identification)及びWifiなどの短距離無線を利用して測位する方法と、照明光を発光するLEDを利用して測位する方法とが適用できる。 なお、現在位置を測位するための位置情報信号の受信方法は、上記に限られず、例えば、カメラ画像に基づいた位置情報の取得等、他の方法によるものであっても良い。 【0026】 ここで、経路情報14aには、地図上の経路の情報が予め登録されている。また、測位環境情報14bには、これまで、リファレンス測位手段11及びセンサー測位手段12において過去に測位したときの測位環境の情報が登録されている。この測位環境情報14bは、経路情報14aにおける経路上の測位地点に対応した情報となっている。なお、測位環境情報14bへの情報の登録は、測位装置10を製品に搭載して出荷するときに、デフォルト値として予め登録されているようにしても良い。また、ユーザーが地図上の経路を歩行して測位した際、経路上におけるそのときの測位環境の情報を登録するようにしても良い。移動履歴情報14cには、ユーザーが地図上のどの経路を移動したかの履歴が登録されている。 【0035】 各ノード地点及び各リンク経路におけるゲイン情報は、各測位機器について、位置情報信号の受信環境の信頼性評価、又はセンシング環境の信頼性評価を示している。例えば、GPSの場合、屋内などマルチパスの影響が大きい場所では信頼性評価が低下する。また、地磁気センサーの場合、金属構造物内などでは地磁気の乱れのために信頼性評価が低下する。 【0037】 次に、測位装置10は、通信手段18により、RFIDの測位データに対して位置補正手段15による補正の結果、即ち測位装置10を装着したユーザーの現在位置の情報を外部装置へ出力する(ステップS50)。ここで、測位装置10は、ステップS40において取得した推定ゲイン情報14に基づいて、ノードA地点ではRFIDによる測位結果が最も正確で信頼性評価が高いと判断したことで、RFIDを利用した測位結果を選択している。 【0049】 また、例えば、FeliCa(登録商標)を使用したEdy(登録商標)やSuica(登録商標)等を収容するためのカードケースに、上記の測位装置10を組み込むようにしても良い。これにより、ユーザーが、当該カードケースを例えば駅や街中等に設置されているリーダー/ライター装置にかざすことにより、位置情報信号を受信して正確な現在位置を取得することができる。また、カードケースに表示装置を備えることで位置案内用の端末装置にすることができる。 以上の記載によれば、引用文献3には、次の技術(以下、「文献3技術」という。)が記載されていると認められる。 (文献3技術) 「経路情報における経路上の測位地点において、RFID(Radio Frequency Identification)及びWifiなどの短距離無線を利用して外部から位置情報信号を受信し、現在位置の測位を行うリファレンス測位手段を有する測位装置において、駅や街中等に設置されているリーダー/ライター装置にかざすことにより、位置情報信号を受信して正確な現在位置を取得する技術」 第5 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 1.本願発明の構成Aについて 引用発明の「携帯端末」は、ユーザが身につけて屋内を歩くことができる(構成a)ものであるから、本願発明の構成Aの「位置が可変の携帯端末装置」に相当する。 2.本願発明の構成Bについて 引用発明は、自律航法により建物の入口等の特定の地点からの相対的な位置及び姿勢を計測する(構成d)ものであり、特定の地点である基準点は、出入り口や、予め位置及び姿勢が分かっているマーカ等(構成j)である。 そして、このマーカは、特定の地点に配置されているものであるから「絶対位置に固定される指標手段」といえ、予めマーカが存在する位置が分かっているから「絶対位置が既知」であるものといえる。 そうすると、引用発明は、「絶対位置が既知であり、前記絶対位置に固定される指標手段」を備えている点で本願発明の構成Bと共通するものの、当該「指標手段」が、本願発明では「設置型の装置である」指標手段(構成B)であるのに対し、引用発明ではマーカである点で、両者は相違する。 3.本願発明の構成Cについて 引用発明は、上述したように、本願発明の「携帯端末装置」に相当する携帯端末と、本願発明の「指標手段」に相当するマーカを利用するものであって、案内情報を、AR技術を用いて、携帯端末上の画面中の各店の映像の上に提示する(構成i)ものである。 ここで、AR技術を用いて、携帯端末上の画面中の各店の映像の上に案内情報を提示することは、拡張現実を表現するものであるから、引用発明は、本願発明の構成Cの「拡張現実システム」を構成しているものといえる。 4.本願発明の構成A-1について 引用発明の「携帯端末」は「センサ」を備え(構成b)ており、当該「センサ」は、ユーザが所持する携帯端末内部に取り付けられ、携帯端末の位置及び姿勢に基づき、センサデータを生成する(構成c)ものである。 そして、携帯端末の位置及び姿勢に基づいたセンサデータは、センサの「動きに関する情報」といえるから、引用発明の「携帯端末」が備える「センサ」は、本願発明の構成A-1の「動きに関する情報を測定するセンサ」に相当する。 5.本願発明の構成A-2について 引用発明の「携帯端末」は、「携帯端末」が備える位置計測手段(構成b)が、センサデータを用いて、自律航法により建物の入口等の特定の地点からの相対的な位置及び姿勢を計測する(構成d)ものであり、また、位置及び姿勢計測を行うための調整(キャリブレーション)のために、基準点(出入り口や、予め位置及び姿勢が分かっているマーカ等)へ移動するよう促す表示を行い、携帯端末を基準点に到達させる(構成j)ものである。 ここで、位置及び姿勢計測を行うための調整(キャリブレーション)とは、センサの出力であるセンサデータの調整(キャリブレーション)を行うことといえる。 これらのことから、引用発明の「携帯端末」は、相対的な位置及び姿勢を計測するために、特定の地点である基準点におけるセンサの位置及び姿勢を記憶しておくための記憶手段を有していることは明らかであり、位置計測手段は、記憶手段に記憶された基準点におけるセンサの位置及び姿勢からの相対的な位置及び姿勢を計測するものであるといえる。 そして、基準点における位置は、相対的な位置及び姿勢を計測するための「基準位置」であり、記憶手段を「第1記憶手段」と称することは任意のことである。 よって、引用発明の「携帯端末」は、本願発明の構成A-2の「前記センサの基準位置と前記基準位置における前記センサの姿勢とを記憶する第1記憶手段」を備えているといえる。 6.本願発明の構成A-3、構成A-4及び構成A-8について 引用発明の「携帯端末」は、基準点(マーカ等)へ移動するよう促す表示を行い、基準点に到達した場合は、位置及び姿勢計測を行うための調整(キャリブレーション)を行う(構成j)ものであるものの、本願発明の構成A-3の「前記センサが前記基準位置に存在するときに前記設置型の装置との間で近接無線通信を行うことにより前記指標手段の個別情報を取得する第1無線通信手段を備える取得手段」は備えていない点で、本願発明と相違する。 また、引用発明の「携帯端末」は、基準点に到達した場合に、基準点に到達したか否かを判定する判定手段を備えているか否かは特定されていない。 よって、引用発明は、本願発明の構成A-4の「前記センサが前記基準位置に存在しているか否かを判定する判定手段」を備えているか否かは特定されていない点で、本願発明と相違する。 そして、上述したように引用発明は本願発明の「取得手段」(構成A-3)を備えていないことから、引用発明は、本願発明の構成A-8の「前記判定手段は、前記取得手段により前記指標手段の個別情報が取得されたときに前記センサが前記基準位置に存在していると判定する」構成を備えていない点で、本願発明と相違する。 7.本願発明の構成A-5及び構成A-6について 上記5において検討したように、引用発明の「携帯端末」が備える位置計測手段は、センサデータを用いて、自律航法により建物の入口等の特定の地点からの相対的な位置及び姿勢を計測する(構成d)ものであり、記憶手段に記憶された基準点におけるセンサの位置及び姿勢からの相対的な位置及び姿勢を計測するものであるといえる。 したがって、引用発明の「携帯端末」が備える位置計測手段は、本願発明の構成A-5の「前記第1記憶手段に記憶された前記基準位置と、前記センサにより測定された前記動きに関する情報とに基づいて、前記センサの現在位置を特定する位置特定手段」及び構成A-6の「前記第1記憶手段に記憶された前記基準位置における前記センサの姿勢と、前記センサにより測定された前記動きに関する情報とに基づいて、前記センサの現在の姿勢を特定する姿勢特定手段」に相当するものといえる。 ただし、引用発明は、上記6において検討したように、本願発明の構成A-4の「前記センサが前記基準位置に存在しているか否かを判定する判定手段」を備えているか否かは特定されていないため、本願発明の「位置特定手段」が、「前記判定手段により前記センサが前記基準位置に存在していると判定された後において」、前記センサの現在位置を特定する(構成A-5)ものであり、本願発明の「姿勢特定手段」が、「前記判定手段により前記センサが前記基準位置に存在していると判定された後において」、前記センサの現在の姿勢を特定する(構成A-6)ものであるのに対し、引用発明の位置計測手段は、「前記判定手段により前記センサが前記基準位置に存在していると判定された後において」、基準点におけるセンサの位置及び姿勢からの相対的な位置及び姿勢を計測するものであるとは特定されていない点で、本願発明と相違する。 7.本願発明の構成A-7について 引用発明の「携帯端末」が備える案内情報生成手段、情報提示手段(構成b)は、案内情報生成手段が、位置計測手段が計測した位置及び姿勢に基づきユーザに提示する案内情報を生成し(構成h)、情報提示手段が、案内情報生成手段が生成した案内情報を、AR技術を用いて、携帯端末上の画面中の各店の映像の上に提示する(構成i)ものである。 ここで、AR技術を用いて、携帯端末上の画面中の各店の映像の上に案内情報を提示することは、拡張現実を表現するものであるから、引用発明の「携帯端末」が備える案内情報生成手段、情報提示手段は、本願発明の「前記位置特定手段により特定された前記センサの現在位置に応じて出力情報を出力することにより拡張現実を表現する出力手段」に相当する。 8.本願発明の構成B-1について 上記5において検討したように、引用発明の「携帯端末」は、位置及び姿勢計測を行うための調整(キャリブレーション)のために、基準点(出入り口や、予め位置及び姿勢が分かっているマーカ等)へ移動するよう促す表示を行い、携帯端末を基準点に到達させる(構成j)ものであり、さらに基準点におけるセンサの位置及び姿勢を記憶しておくための記憶手段を有しているものといえる。 そうすると、本願発明の「指標手段」に相当する引用発明のマーカは、「前記センサが前記基準位置に存在しているときの前記センサの姿勢を、前記第1記憶手段に記憶された前記基準位置における前記センサの姿勢とするものである」点で、本願発明の構成B-1と共通するものである。 しかしながら、本願発明の「指標手段」は、前記センサが前記基準位置に存在しているときの前記センサの姿勢を、前記第1記憶手段に記憶された前記基準位置における前記センサの姿勢と「なるように規定する筐体を備え」(構成B-1)ているのに対し、引用発明はマーカであって、「規定する筐体」を備えていない点で、両者は相違する。 9.まとめ 上記1?8の対比結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は次の通りである。 [一致点] (A)位置が可変の携帯端末装置と、 (B’)絶対位置が既知であり、前記絶対位置に固定される指標手段と、 を備え、 (A)前記携帯端末装置は、 (A-1)動きに関する情報を測定するセンサと、 (A-2)前記センサの基準位置と前記基準位置における前記センサの姿勢とを記憶する第1記憶手段と、 (A-5’)前記第1記憶手段に記憶された前記基準位置と、前記センサにより測定された前記動きに関する情報とに基づいて、前記センサの現在位置を特定する位置特定手段と、 (A-6’)前記第1記憶手段に記憶された前記基準位置における前記センサの姿勢と、前記センサにより測定された前記動きに関する情報とに基づいて、前記センサの現在の姿勢を特定する姿勢特定手段と、 (A-7)前記位置特定手段により特定された前記センサの現在位置と前記姿勢特定手段により特定された前記センサの現在の姿勢とに応じて出力情報を出力することにより拡張現実を表現する出力手段と、 を備え、 (B)前記指標手段は、 (B-1’)前記センサが前記基準位置に存在しているときの前記センサの姿勢を、前記第1記憶手段に記憶された前記基準位置における前記センサの姿勢とするものである、 (C)拡張現実システム。 [相違点] (相違点1) 「指標手段」が、本願発明では「設置型の装置である」指標手段(構成B)であるのに対し、引用発明ではマーカである点。 (相違点2) 本願発明は、「前記センサが前記基準位置に存在するときに前記設置型の装置との間で近接無線通信を行うことにより前記指標手段の個別情報を取得する第1無線通信手段を備える取得手段」(構成A-3)を備えているのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。 (相違点3) 本願発明は、「前記センサが前記基準位置に存在しているか否かを判定する判定手段」(構成A-4)を備えているのに対し、引用発明はそのような構成を備えているか否かは特定されていない点、及び、本願発明は、「前記判定手段は、前記取得手段により前記指標手段の個別情報が取得されたときに前記センサが前記基準位置に存在していると判定する」構成(構成A-8)を備えているのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。 (相違点4) 上記相違点3の相違に起因して、本願発明は、「位置特定手段」が、「前記判定手段により前記センサが前記基準位置に存在していると判定された後において」、前記センサの現在位置を特定する(構成A-5)ものであり、「姿勢特定手段」が、「前記判定手段により前記センサが前記基準位置に存在していると判定された後において」、前記センサの現在の姿勢を特定する(構成A-6)ものであるのに対し、引用発明の位置計測手段は、「前記判定手段により前記センサが前記基準位置に存在していると判定された後において」、基準点におけるセンサの位置及び姿勢からの相対的な位置及び姿勢を計測するものであるとは特定されていない点。 (相違点5) 本願発明の「指標手段」は、前記センサが前記基準位置に存在しているときの前記センサの姿勢を、前記第1記憶手段に記憶された前記基準位置における前記センサの姿勢と「なるように規定する筐体を備え」(構成B-1)ているのに対し、引用発明はマーカであって、「規定する筐体」を備えていない点。 第6 相違点の判断 1.相違点1及び相違点2について 上記第4の3及び4に示したように、引用文献2及び引用文献3にはそれぞれ文献2技術及び文献3技術が記載されている。 これらの技術によれば、位置情報を扱う携帯端末において、特定の地点における位置情報を設置される通信装置と近接無線通信を行い通信装置の情報を取得することによって、携帯端末の基準位置を定める技術が公知のものである。 そして、引用発明と上記公知技術は、共に、位置情報を扱う携帯端末において、特定の地点における携帯端末の基準位置を定める技術である点で共通するものであるから、引用発明に上記公知技術を適用することにより、引用発明のマーカに代えて、相違点1に係る「設置型の装置である指標手段」とすることは、当業者が容易になし得ることである。 また、引用発明のマーカは位置及び姿勢計測の基準点となる(構成d、構成j)ものであるから、引用発明に上記公知技術の通信装置と近接無線通信を行って通信装置の位置情報を取得する技術を適用することにより、相違点2に係る「前記センサが前記基準位置に存在するときに前記設置型の装置との間で近接無線通信を行うことにより前記指標手段の個別情報を取得する第1無線通信手段を備える取得手段」を設けることは、当業者が容易になし得ることである。 2.相違点3及び相違点4について 上記(1)において検討したように、引用発明において、マーカを「設置型の装置である指標手段」とし、「前記センサが前記基準位置に存在するときに前記設置型の装置との間で近接無線通信を行うことにより前記指標手段の個別情報を取得する第1無線通信手段を備える取得手段」を設けることは、当業者が容易になし得ることと認められるところ、その際に、引用発明の携帯端末のセンサが指標手段の位置に存在することを判定することは、当然に行い得ることであり、その判定の手法を指標手段の情報を取得したこととすることも、当業者が普通に採用し得ることである。 したがって、引用発明において、相違点3に係る「前記センサが前記基準位置に存在しているか否かを判定する判定手段」及び「前記判定手段は、前記取得手段により前記指標手段の個別情報が取得されたときに前記センサが前記基準位置に存在していると判定する」構成を設けることは、当業者が容易になし得ることである。 また、引用発明は、自律航法により基準点からの相対的な位置及び姿勢を計測する(構成d、構成j)ものであるから、引用発明の携帯端末が現在位置を計測するのは、携帯端末のセンサが基準点に存在していた後のことである。 したがって、引用発明において、基準点におけるセンサの位置及び姿勢からの相対的な位置及び姿勢を計測することを、相違点4に係る「前記判定手段により前記センサが前記基準位置に存在していると判定された後において」計測するものであるとすることは、当然導き出される構成に過ぎない。 3.相違点5について 傾斜センサの出力の補正を行う場合に、傾斜センサを所定の角度の傾斜台に取り付けて行うことは、例えば特開平11-153432号公報の段落0009にも示されているように、当業者であれば普通に採用し得る程度の周知の技術である。 そして、上記(1)において検討したように、引用発明の位置及び姿勢計測を行うための調整(キャリブレーション)のための基準点であるマーカ(構成j)に代えて、「設置型の装置である指標手段」を採用した際に、引用発明の携帯端末の姿勢を規定する所定の角度の傾斜台を設けることは当業者が普通に採用し得ることである。 したがって、引用発明において、相違点5に係る、「指標手段」を、前記センサが前記基準位置に存在しているときの前記センサの姿勢を、前記第1記憶手段に記憶された前記基準位置における前記センサの姿勢と「なるように規定する筐体を備え」るものとすることは、当業者が容易に採用し得ることである。 4.効果について 本願発明の構成は、上記のように当業者が容易に想到できたものであるところ、本願発明が奏する効果は、当業者が予測しうる範囲内のものであって、格別顕著なものがあるとは認められない。 5.まとめ 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明に引用文献2及び引用文献3記載の技術と周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のように、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2、3記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-12-25 |
結審通知日 | 2019-01-08 |
審決日 | 2019-01-21 |
出願番号 | 特願2013-43838(P2013-43838) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06T)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岡本 俊威 |
特許庁審判長 |
鳥居 稔 |
特許庁審判官 |
清水 正一 渡辺 努 |
発明の名称 | 拡張現実システムおよび拡張現実提供方法 |
代理人 | 松岡 直之 |