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審決分類 |
審判 全部申し立て ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 C12N 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C12N 審判 全部申し立て 特許請求の範囲の実質的変更 C12N 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C12N |
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管理番号 | 1349697 |
異議申立番号 | 異議2017-700793 |
総通号数 | 232 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-04-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-08-15 |
確定日 | 2019-01-16 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6081483号発明「T細胞を増殖させるプロセス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6081483号の請求項1?21に係る特許を取り消す。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6081483号の請求項1?21に係る特許についての出願は、平成29年1月27日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年8月15日に特許異議申立人 ストローマン リミテッドより請求項1?21に対して特許異議の申立てがされ、平成29年10月25日付けで取消理由が通知され、平成30年1月29日に意見書の提出及び訂正請求がされ、平成30年2月8日付けで訂正拒絶理由が通知され、平成30年4月6日に意見書が提出され、平成30年5月1日付けで取消理由通知(決定の予告)がされ、指定期間内に特許権者からの応答が無かったものである。 第2 訂正の適否 1.訂正の内容 平成30年1月29日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、特許請求の範囲の請求項1を以下の事項のとおりとする訂正(訂正事項1)を含むものである。 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1におけるステップb)、すなわち、 「b)ステップa)からのT細胞の集団を: i)標的抗原(複数可)のフラグメントであるペプチド/ペプチドミックスおよび人工の共刺激因子で刺激した自己抗原提示T細胞(T-APC)存在下で、ならびに ii)サイトカインの存在下または非存在化で 培養するステップ」を、 「b)ステップa)からのT細胞の集団を: i)標的抗原(複数可)のフラグメントであるペプチド/ペプチドミックスで刺激した自己抗原提示T細胞(T一APC)および ii)人工の共刺激因子 存在下で、ならびに iii)サイトカインの存在下または非存在化で 培養するステップ」 に訂正する。 2.訂正事項1の訂正要件について (1)訂正の目的について 訂正事項1に係る、ステップb)についての訂正前の 「i)標的抗原(複数可)のフラグメントであるペプチド/ペプチドミックスおよび人工の共刺激因子で刺激したi)自己抗原提示T細胞(T-APC)」の記載は、 「自己抗原提示T細胞(T-APC)」を「標的抗原(複数可)のフラグメントであるペプチド/ペプチドミックス」および「人工の共刺激因子」で刺激することが明確に特定されている。 訂正前の上記記載は技術的に明確な記載であるから、上記記載に誤記があることが明らかとはいえず、上記記載が訂正後の 「i)標的抗原(複数可)のフラグメントであるペプチド/ペプチドミックスで刺激した自己抗原提示T細胞(T一APC)および ii)人工の共刺激因子」 という、「自己抗原提示T細胞(T-APC)」を刺激するものが「標的抗原(複数可)のフラグメントであるペプチド/ペプチドミックス」のみであり、「人工の共刺激因子」では刺激しないことを特定する記載の誤記であることが明らかであるとはいえない。 特許権者は、平成30年4月6日の意見書において、訂正前のi)の記載が誤記であることについて、訂正前の請求項1に「前記人工の共刺激因子は、T細胞活性化シグナルを提供してT-APC抗原提示シグナルを補足するために培養物に添加される外因性因子であり」との記載があることを挙げ、この記載は、ペプチド/ペプチドミックスで刺激された自己抗原提示細胞(T-APC)がステップa)からT細胞に抗原を提示することを前提として、人工の共刺激因子が、T-APCとは別個の成分としてT細胞を刺激し、T-APC抗原提示シグナルを補足する役割を有すること、を意味することは明らかである、本件特許発明では、人工の刺激因子が自己抗原提示細胞(T-APC)を刺激する訳ではなく、 (1)自己抗原提示細胞(T-APC)がペプチド/ペプチドミックスで刺激されること、 (2)人工の刺激因子と、(1)で刺激を受けた自己抗原提示細胞(T-APC)との両方の存在下で、ステップa)からのT細胞の集団を培養すること、が明らかである、と主張している。 しかし、上記記載は、人工の共刺激因子の役割について説明するものに過ぎず、具体的なプロセスを説明するものとは認められない。上記記載における説明が訂正前のi)の特定と明らかに矛盾するとはいえず、また、この記載から、訂正前のi)が上記(1)(2)の誤記であることが明らかであるともいえない。 したがって、訂正前の請求項1の上記記載から、訂正前のi)の記載が誤記であることが明らかとはいえない。 また、特許権者は、本件特許明細書および図面の記載、特に、段落【0041】、【0352】?【0355】、図2、図3、図7Aの記載を挙げて、本件特許発明では、人工の刺激因子が自己抗原提示細胞(T-APC)を刺激する訳ではなく、 (1)自己抗原提示細胞(T-APC)がペプチド/ペプチドミックスで刺激されること、 (2)人工の刺激因子と、(1)で刺激を受けた自己抗原提示細胞(T-APC)との両方の存在下で、ステップa)からのT細胞の集団を培養すること、が明らかであると主張している。 しかし、訂正前のi)の記載が本件特許明細書や図面の一部の記載と整合していないとしても、本件特許明細書中には訂正前のi)の記載と整合する記載もあるから、本件明細書の全体の記載をみた場合に、訂正前のi)の記載が誤りであるとすることはできない。 したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものには該当しない。 (2)実質上の拡張・変更について 訂正事項1に係る、ステップb)についての訂正前の 「i)標的抗原(複数可)のフラグメントであるペプチド/ペプチドミックスおよび人工の共刺激因子で刺激したi)自己抗原提示T細胞(T-APC) の記載は、「標的抗原(複数可)のフラグメントであるペプチド/ペプチドミックス」および「人工の共刺激因子」で刺激して得られる『自己抗原提示T細胞(T-APC)』を特定していると認められる。 一方、訂正事項1による訂正後の 「i)標的抗原(複数可)のフラグメントであるペプチド/ペプチドミックスで刺激した自己抗原提示T細胞(T一APC)および ii)人工の共刺激因子」 の記載は、「標的抗原(複数可)のフラグメントであるペプチド/ペプチドミックス」で刺激した『自己抗原提示T細胞(T-APC)』および『ii)人工の共刺激因子』を特定していると認められる。 そうすると、訂正事項1の訂正によって、ステップb)における『人工の共刺激因子』は、『自己抗原提示T細胞(T-APC)』を刺激するために用いるもの(訂正前)から、『自己抗原提示T細胞(T-APC)』とともにT細胞集団の培養に存在させるもの(訂正後)へと変更されたと認められる。 したがって、訂正事項1の訂正は、特許請求の範囲を変更するものに該当する。 特許権者は、平成30年4月6日の意見書において、訂正前の請求項1の「前記人工の共刺激因子は、T細胞活性化シグナルを提供してT-APC抗原提示シグナルを補足するために培養物に添加される外因性因子であり」の記載から、自己抗原提示細胞(T-APC)がステップa)からのT細胞に抗原を提示し、一方、人工の共刺激因子はT細胞を刺激して、T-APC抗原提示シグナルを補足することが明らかであるから、自己抗原提示細胞(T-APC)および人工の刺激因子が、それぞれ、ステップa)からのT細胞を別個に刺激することは当業者に明らかであること、両者は別個の成分として異なるシグナルでステップa)からのT細胞を刺激するものであること、本件特許発明はもともと自己抗原提示細胞(T-APC)と人工の共刺激因子がステップa)からのT細胞を別個に刺激するという内容であり、訂正事項1に係る訂正は、本件特許の請求項1の記載を当該内容と整合させるものであること、を主張している。 しかし、上記記載は、人工の共刺激因子の役割について説明するものに過ぎず、具体的なプロセスを説明するものとは認められない。上記記載から「自己抗原提示細胞(T-APC)」と「人工の共刺激因子」がステップa)からのT細胞を別個に刺激することが明らかであるとはいえず、訂正前のステップb)に関する記載が、訂正後のステップb)に関する記載のもの意図すると解することはできない。 また、発明の詳細な説明の記載には、訂正前の請求項1の記載と同様の事項が記載されているから、訂正事項1に係る訂正前の記載は、発明の詳細な説明と整合していると認められるが、仮に、訂正事項1の訂正が特許請求の範囲の記載を発明の詳細な説明の記載に整合させるものであるとしても、訂正事項1の訂正は、特許請求の範囲を変更するものに該当する。 よって、本件訂正請求の訂正事項1による請求項1についての訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものとはいえない。 また、請求項1を引用する請求項2?19、21についての訂正事項1による訂正も、同様に、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものとはいえない。 3.小括 以上のとおり、本件訂正請求の訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものに該当せず、同法同条第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合しない。 また、本件訂正請求の訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。 したがって、請求項〔1?21〕についての訂正を認めない。 第3 当審の判断 1.本件に係る発明 本件の請求項1?21に係る発明は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?21(訂正前)に記載された以下のとおりのものであると認める。 「【請求項1】 抗原特異的T細胞のインビトロ増殖のためのプロセスであって: a)自己PBMC細胞の集団を: i)標的抗原(複数可)のフラグメントであるペプチド/ペプチドミックスで刺激した樹状細胞または標的抗原(複数可)のフラグメントであるペプチド/ペプチドミックス、 および ii)少なくとも1つのサイトカイン の存在下で培養するステップと、 b)ステップa)からのT細胞の集団を: i)標的抗原(複数可)のフラグメントであるペプチド/ペプチドミックスおよび人工の共刺激因子で刺激した自己抗原提示T細胞(T-APC)存在下で、ならびに ii)サイトカインの存在下または非存在化で 培養するステップとを含み、 前記プロセスが、前記T細胞集団のステップa)とb)両方の培養において生ウイルスおよび/もしくはウイルスベクターまたは抗原をコードするDNAもしくはRNAの使用を利用しないことを特徴とし、 前記人工の共刺激因子は、T細胞活性化シグナルを提供してT-APC抗原提示シグナルを補足するために培養物に添加される外因性因子であり、 前記共刺激因子が、 i)ビーズ上、または、 ii)HLA陰性であり、共刺激分子をその表面に発現するように操作された細胞上にある、 プロセス。」 【請求項2】 ステップb)を、充分な量のT細胞集団が得られるまで、2回またはそれ以上実施する、請求項1記載のプロセス。 【請求項3】 ステップa)の前記培養を12日以下実施する、請求項1または2記載のプロセス。 【請求項4】 ステップb)の前記培養ステップを12日以下実施する、請求項1?3のいずれか1項に記載のプロセス。 【請求項5】 培養を、ガス透過性培養表面を含む容器中で実施する、請求項1?4のいずれか1項に記載のプロセス。 【請求項6】 前記増殖させたT細胞がエプスタイン・バーウイルス、ワクシニアウイルスまたは水痘帯状疱疹ウイルス抗原(複数可)に対して特異的である、請求項1?5のいずれか1項に記載のプロセス。 【請求項7】 ステップa)および/またはb)の前記ペプチドが、2?1000種のペプチドを含む、請求項1?6のいずれか1項に記載のプロセス。 【請求項8】 ステップa)の前記ペプチドミックスのペプチドが、互いに2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15またはそれ以上のアミノ酸で重複し、ステップb)の前記ペプチドミックスのペプチドが互いに2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15またはそれ以上のアミノ酸で重複する、請求項1?7のいずれか1項に記載のプロセス。 【請求項9】 ステップa)および/またはb)の前記ペプチドが、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20アミノ酸の長さである、請求項1?8のいずれか1項に記載のプロセス。 【請求項10】 ステップa)および/またはb)の前記ペプチドが抗原LMP1の一部または全長を対象とする、請求項1?9のいずれか1項に記載のプロセス。 【請求項11】 ステップa)および/またはb)の前記ペプチドが抗原LMP2の一部または全長を対象とする、請求項1?10のいずれか1項に記載のプロセス。 【請求項12】 ステップa)および/またはb)の前記ペプチドが抗原EBNA1の一部または全長を対象とする、請求項1?11のいずれか1項に記載のプロセス。 【請求項13】 ステップa)および/またはb)の前記ペプチドが抗原BARF1の一部または全長を対象とする、請求項1?12のいずれか1項に記載のプロセス。 【請求項14】 ステップa)で存在する前記サイトカインがIL-4である、請求項1?13のいずれか1項に記載のプロセス。 【請求項15】 ステップa)で存在する前記サイトカインがIL-7である、請求項1?14のいずれか1項に記載のプロセス。 【請求項16】 ステップb)で存在する前記サイトカインがIL-15である、請求項1?15のいずれか1項に記載のプロセス。 【請求項17】 人工の共刺激因子が、細胞表面上に存在する1つ以上のタンパク質またはタンパク質フラグメントを有する操作された細胞系である、請求項1?16のいずれか1項に記載のプロセス。 【請求項18】 タンパク質またはタンパク質フラグメントが、CD80、CD86、CD83、OX-40リガンドおよび41BB-リガンドから独立して選択される、請求項17に記載のプロセス。 【請求項19】 前記人工の共刺激因子が、aK562細胞である、請求項17または18に記載のプロセス。 【請求項20】 前記自己抗原提示T細胞が、標的抗原のフラグメントであるペプチド/ペプチドミックスで刺激されたPBMCから生成される、請求項1?19のいずれか一項に記載のプロセス。 【請求項21】 前記プロセスがGRex(商標)システム中で実施される、請求項1?20のいずれか1項に記載のプロセス。 2.明確性要件について (1)請求項7の「前記ペプチドが、2?1000種のペプチドを含む」の記載について 請求項7が引用する請求項1には「ペプチド/ペプチドミックス」が記載されており、このうち「ペプチド」は単数のペプチドを意味すると解される。 そうすると、請求項7の上記記載は、単数のペプチドが複数種のペプチドを含むことを意味することになり、矛盾が生じる。 そして、上記第2 のとおり、平成30年1月29日の訂正請求は認められない。 したがって、請求項7に係る発明は明確でない。 また、請求項7を引用する請求項8?21に係る発明も明確でない。 (2)請求項21の「GRex(商標)」の記載について 特許異議申立人は、「GRex(商標)」という商標は知られておらず、何を意味するか不明確である、また、「G-Rex」という商標は存在するが、それが意味する技術内容は確定していないから、その範囲を明確に把握できないと主張している。 これに対して、特許権者は訂正請求書とともに刊行物1(ウィルソン ウォルフのパンフレット)を提出して、「G-Rex(商標)」は当該業界で周知であると主張している。 しかし、上記第2 のとおり、平成30年1月29日の訂正請求は認められず、「GRex(商標)」の記載は、「G-Rex(商標)」に訂正されないから、請求項21に係る発明は明確でない。 3.実施可能要件、サポート要件について (1)請求項1に記載されるステップb)i)について 請求項1に係る発明の解決しようとする課題は、抗原特異的T細胞をインビトロ増殖できるプロセスの提供であると認められる。 そして、請求項1には 「b)ステップa)からのT細胞の集団を: i)標的抗原(複数可)のフラグメントであるペプチド/ペプチドミックスおよび人工の共刺激因子で刺激した自己抗原提示T細胞(T-APC)存在下で、ならびに ii)サイトカインの存在下または非存在化で 培養するステップとを含み」と記載されており、すなわち、ステップb)i)において、共刺激因子は自己抗原提示細胞(T-APC)を刺激するための成分として記載されており、a)ステップで得られたT細胞集団を培養する際に存在するのは、T-APCのみであると認められる。 これに対して、本件の発明の詳細な説明の実施例に、抗原特異的T細胞が得られることが具体的に示されているのは、a)ステップで得られたT細胞集団を、ペプチドミックスで刺激した自己抗原提示細胞(T-APC)および共刺激因子(aK562細胞)の存在下で培養した場合のみであり、a)ステップからのT細胞集団を、共刺激因子が存在せず、T-APCのみの存在下で培養することによって抗原特異的T細胞が得られたことは記載されていない。 また、発明の詳細な説明の段落【0139】には、「T-APCはプロフェッショナル抗原提示細胞でない。したがって、T-APCによって提供される抗原提示に加えて、T細胞増殖および分化を刺激するためには共刺激因子が必要である。」と記載されている。 そうすると、発明の詳細な説明の記載から、a)ステップからのT細胞集団を、共刺激因子が存在せず、T-APCのみの存在下で培養することによって抗原特異的T細胞が得られることを当業者が理解できるとはいえない。 したがって、発明の詳細な説明から、ステップb)i)を特定する請求項1に係る発明において、抗原特異的T細胞をインビトロ増殖できるプロセスを提供するという課題が解決できたことを合理的に理解できるとは認められないから、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されたものとはいえない。 また、発明の詳細な説明の記載から、当業者がステップb)i)を特定する、請求項1の抗原特異的T細胞をインビトロ増殖するプロセスを実施できるともいえない。 (2)請求項1に記載される「サイトカイン」について 請求項1にはサイトカインについての特定がなく、あらゆるサイトカインが包含されるが、例えば、IL-10は、抗原特異的T細胞の増殖を抑制することが知られており(甲第10号証;Taylor et al.,Immunology.117(4):433-442(2006)を参照。)、サイトカインの種類によっては、むしろ抗原特異的T細胞の産生を損なうと認められる。 したがって、発明の詳細な説明は、サイトカインの種類を特定しない請求項1に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものとは認められない。 また、発明の詳細な説明に、サイトカインの種類を特定しない請求項1に係る発明において、抗原特異的T細胞をインビトロ増殖できるプロセスを提供するという課題が解決できたことが記載されているとは認められない。 以上のとおり、請求項1に係る発明はサポート要件を満足しているとはいえない。 また、発明の詳細な説明は、請求項1に係る発明について実施可能要件を満足しているとはいえない。 請求項2?21に係る発明についても、同様である。 4.小括 本件の発明の詳細な説明は、請求項1?21に係る発明について、特許法第36条第4項第1号の要件を満足しておらず、また、本件の請求項1?21に係る発明は、同法第36条第6項第1号の要件、本件の請求項7?21に係る発明は同法第36条第6項第2号の要件を満足しない。 第4 むすび 本件の請求項1?21に係る発明の特許は、特許法第36条第4項第1号、同法第36条第6項第1号及び第2号の規定に違反してなされたものである。 したがって、本件の請求項1?21に係る発明の特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2018-09-06 |
出願番号 | 特願2014-546625(P2014-546625) |
審決分類 |
P
1
651・
852-
ZB
(C12N)
P 1 651・ 855- ZB (C12N) P 1 651・ 537- ZB (C12N) P 1 651・ 536- ZB (C12N) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 鳥居 敬司、山本 晋也 |
特許庁審判長 |
大宅 郁治 |
特許庁審判官 |
高堀 栄二 中島 庸子 |
登録日 | 2017-01-27 |
登録番号 | 特許第6081483号(P6081483) |
権利者 | ベイラー カレッジ オブ メディスン セル・メディカ・リミテッド |
発明の名称 | T細胞を増殖させるプロセス |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 阿部 達彦 |
代理人 | 阿部 達彦 |
代理人 | 三橋 規樹 |
代理人 | 小林 浩 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 大森 規雄 |
代理人 | 実広 信哉 |