ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J |
---|---|
管理番号 | 1349883 |
審判番号 | 不服2015-19608 |
総通号数 | 233 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-05-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-10-30 |
確定日 | 2019-03-28 |
事件の表示 | 特願2013-185729「インクカートリッジICチップの制御方法、インクカートリッジICチップ及びインクカートリッジ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年6月9日出願公開、特開2014-104755〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成25年9月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年11月22日 ,2013年2月1日 中国)を出願日とする出願である特願2013-185729号であって,これまでの手続は次のとおりである。 平成26年 9月19日 拒絶理由通知書 平成27年 2月23日 意見書・手続補正書 平成27年 6月26日 拒絶査定 平成27年10月30日 審判請求書・手続補正書 平成29年 3月16日 拒絶理由通知書 平成29年 6月21日 意見書・手続補正書 第2 当審の判断 1 補正内容 本願の請求項に係る発明(以下「本願発明1」?「本願発明17」という。)は,平成29年6月21日付けで補正された特許請求の範囲における,請求項に記載された事項によって特定されるべきものであり,その記載は次のとおりである。 「【請求項1】 インタフェースユニットと制御ユニットを含むインクカートリッジICチップであって, 前記インタフェースユニットがイメージング装置に電気的に接続されており,イメージング装置から送られる光制御指令の受信に用いられ,前記光制御指令は発光指令と消光指令を含み,前記発光指令はインクカートリッジICチップ上の発光ユニットを発光させるのに用いられ, 前記制御ユニットは,前記インタフェースユニットが光制御指令を受信したときに,インクカートリッジICチップの状態に応じて当該光制御指令を実行するかどうかを制御するのに用いられ, 前記インクカートリッジICチップの状態は,実行可能な状態と実行不可能な状態とを含むことを特徴とするインクカートリッジICチップ。 【請求項2】 前記制御ユニットは,前記インタフェースユニットが発光指令を受信したときに,前記インクカートリッジICチップが前記実行可能な状態にある場合には,前記発光ユニットを発光させ,前記インクカートリッジICチップが前記実行不可能な状態にある場合には,前記発光ユニットを発光させない制御に用いられることを特徴とする請求項1記載のインクカートリッジICチップ。 【請求項3】 インクカートリッジ識別情報を記録する第1記憶ユニットと, 前記インクカートリッジICチップの状態を実行可能な状態又は実行不可能な状態に変えるのに用いられる発光標識部のある発光標識ユニットと,を含み, 前記制御ユニットは,前記発光標識部が実行可能な状態にある場合,前記発光指令をもとに発光ユニットを発光させるか,もしくは前記発光標識部が実行不可能な状態にある時に前記発光指令を実行させないようにすることを特徴とする請求項2記載のインクカートリッジICチップ。 【請求項4】 前記制御ユニットは,さらに,前記光制御指令のインクカートリッジ識別情報に基づいて,前記実行可能な状態または前記実行不可能な状態に前記インクカートリッジICチップの状態を更新するのに用いられることを特徴とする請求項3記載のインクカートリッジICチップ。 【請求項5】 前記発光指令と前記消光指令はいずれも前記インクカートリッジ識別情報を含み,前記制御ユニットは,受信した発光指令又は受信した消光指令に含まれる前記インクカートリッジ識別情報と前記第1記憶ユニットに記録されたインクカートリッジ識別情報との間に関連性があるときに前記発光標識部を実行不可能な状態に変えるのに用いられ,前記受信した発光指令又は受信した消光指令に含まれる前記インクカートリッジ識別情報と前記第1記憶ユニットに記録された前記インクカートリッジ識別情報との間に関連性があることは,2種類の前記インクカートリッジ識別情報が互いに一致または整合し,または特定の関係を有していることであり, 或いは,前記制御ユニットは,受信した発光指令に含まれるインクカートリッジ識別情報と前記第1記憶ユニットに記憶されたインクカートリッジ識別情報との間に関連性があり,かつ,前記受信した発光指令とその後受信した最初の光制御指令との時間間隔が第1制限値より大きいか,又は等しいと確認された場合に前記発光標識部を実行不可能な状態に変えるのに用いられ,前記受信した発光指令に含まれる前記インクカートリッジ識別情報と前記第1記憶ユニットに記録された前記インクカートリッジ識別情報との間に関連性があることは,2種類の前記インクカートリッジ識別情報が互いに一致または整合し,または特定の関係を有していることであり, 或いは,前記制御ユニットは,受信した発光指令に含まれるインクカートリッジ識別情報と前記第1記憶ユニットに記録されたインクカートリッジ識別情報との間に関連性がある場合,前記発光標識部を実行不可能な状態に変え,かつ,前記受信した発光指令とその後受信した最初の光制御指令との時間間隔が第1制限値より大きいか,又は等しいと確認された場合に,前記発光標識部を実行不可能な状態に保持するか,または,以前に受信した消光指令とその後受信した最初の消光指令との時間間隔が前記第1制限値より小さいと確認された場合に前記発光標識部を実行可能な状態に戻すのに用いられ,前記受信した発光指令に含まれる前記インクカートリッジ識別情報と前記第1記憶ユニットに記録された前記インクカートリッジ識別情報との間に関連性があることは,2種類の前記インクカートリッジ識別情報が互いに一致または整合し,または特定の関係を有していることであり, 或いは前記制御ユニットは,受信した発光指令に含まれるインクカートリッジ識別情報と前記第1記憶ユニットに記録されたインクカートリッジ識別情報との間に関連性がある場合,前記発光標識部を実行不可能な状態に変え,かつ,以前に受信した消光指令とその後受信した消光指令との間の時間間隔が第2制限値より大きいか,又は等しいと確認された場合,前記発光標識部を実行不可能な状態に保持するか,以前に受信した消光指令とその後受信した消光指令との間の時間間隔が第2制限値より小さいと確認された場合,前記発光標識部を実行可能な状態に戻すのに用いられ,前記受信した発光指令に含まれる前記インクカートリッジ識別情報と前記第1記憶ユニットに記録された前記インクカートリッジ識別情報との間に関連性があることは,2種類の前記インクカートリッジ識別情報が互いに一致または整合し,または特定の関係を有していることであることを特徴とする請求項4記載のインクカートリッジICチップ。 【請求項6】 前記制御ユニットは,相次ぎ受信した二つの光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報と前記第1記憶ユニットに記録されたインクカートリッジ識別情報との間にそれぞれ関連性がある場合,前記発光標識部を実行不可能な状態に変えるのに用いられ, 或いは,前記制御ユニットは,相次ぎ受信した二つの光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報と前記第1記憶ユニットに記録されたインクカートリッジ識別情報との間に関連性があり,しかも受信した前記二つの光制御指令の時間間隔が第1制限値より大きいか,又は等しいときに,前記発光標識部を実行不可能な状態に変えるのに用いられ, 或いは,前記制御ユニットは,受信した二つの光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報および前記第1記憶ユニットに記録されたインクカートリッジ識別情報との間に関連性があり,しかも受信した二つ目の光制御指令がその前に受信した消光指令との間の時間間隔が第2制限値より大きいか,又は等しいときに,前記発光標識部を実行不可能な状態に変えるのに用いられ, 相次ぎ受信した二つの光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報と前記第1記憶ユニットに記録されたインクカートリッジ識別情報との間にそれぞれ関連性があることは,2種類の前記インクカートリッジ識別情報が互いに一致または整合し,または特定の関係を有していることであることを特徴とする請求項4記載のインクカートリッジICチップ。 【請求項7】 インタフェースユニットと制御ユニットとを含むインクカートリッジICチップであって, 前記インタフェースユニットがイメージング装置に接続されており,イメージング装置からから送られる光制御指令の受信に用いられ,前記光制御指令は発光指令と消光指令とを含み,前記発光指令は前記インクカートリッジICチップ上の発光ユニットを発光させるのに用いられ, 前記制御ユニットは,前記インタフェースユニットが光制御指令を受信したときに,インクカートリッジICチップの状態に応じて当該光制御指令を実行するかどうかを制御するのに用いられ, 前記インクカートリッジICチップの状態は,前記インクカートリッジICチップの指令受信状態であることを特徴とするインクカートリッジICチップ。 【請求項8】 前記インクカートリッジICチップは,光制御指令を受信するインクカートリッジICチップの指令受信状態の統計をとるのに用いられる指令受信統計ユニットを含み, 前記制御ユニットが,前記インタフェースユニットが光制御指令を受信したときに,前記指令受信状態に応じて当該光制御指令を実行するかどうか制御するのに用いられることを特徴とする請求項7記載のインクカートリッジICチップ。 【請求項9】 前記指令受信統計ユニットは,具体的には,受信した発光指令又は受信した光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報を記録することによる,前記インクカートリッジICチップの前記指令受信状態の統計に用いられ, 前記制御ユニットは,発光指令を受信したときに,指令受信統計ユニットに同じ発光指令又はインクカートリッジ識別情報が記録されていないと,第3制限値の後に発光ユニットを発光させ,指令受信統計ユニットに同じに発光指令又はインクカートリッジ識別情報が記録されていると,発光ユニットの発光を実行させないように制御するのに用いられることを特徴とする請求項8記載のインクカートリッジICチップ。 【請求項10】 前記制御ユニットは,さらに,受信した発光指令または受信した光制御指令に含まれる,前記指令受信統計ユニットに記録された前記インクカートリッジ識別情報を,前記インクカートリッジ識別情報および前記光制御指令に関する時間間隔に従って,記録,保持および/またはクリアするのに用いられることを特徴とする請求項9に記載のインクカートリッジICチップ。 【請求項11】 前記制御ユニットは,さらに,受信した発光指令または受信した光制御指令に含まれる,前記指令受信統計ユニットに記録された前記インクカートリッジ識別情報を,前記インクカートリッジ識別情報および前記光制御指令に関する時間間隔に従って,記録,保持および/またはクリアするのに用いられ,具体的には,前記制御ユニットは,相次ぎ受信した二つの光制御指令間の時間間隔が第1制限値より大きいか,又は等しいときに,最後に受信した発光指令又はその前に受信した光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報を指令受信統計ユニットの中に記録し, 或いは,前記制御ユニットは,さらに,受信した発光指令または受信した光制御指令に含まれる,前記指令受信統計ユニットに記録された前記インクカートリッジ識別情報を,前記インクカートリッジ識別情報および前記光制御指令に関する時間間隔に従って,記録,保持および/またはクリアするのに用いられ,具体的には,指令受信統計ユニットに記録されていない発光指令又はインクカートリッジ識別情報を受信したときに,前記発光指令又は光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報を指令受信統計ユニットの中に記録した上で,現在の光制御指令とその後受信した最初の光制御指令との時間間隔が第1制限値より大きいか,又は等しいと確認されたときに,指令受信統計ユニットに今回記録した発光指令又はインクカートリッジ識別情報を保持し,もしくは現在の光制御指令とその後受信した最初の光制御指令との時間間隔が第1制限値より小さいと確認されたときに,前記今回記録した発光指令又はインクカートリッジ識別情報をクリアし, 或いは前記制御ユニットは,さらに,受信した発光指令または受信した光制御指令に含まれる,前記指令受信統計ユニットに記録された前記インクカートリッジ識別情報を,前記インクカートリッジ識別情報および前記光制御指令に関する時間間隔に従って,記録,保持および/またはクリアするのに用いられ,具体的には,指令受信統計ユニットに記録されていない発光指令又はインクカートリッジ識別情報を受信したときに,前記発光指令又は光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報を指令受信統計ユニットの中に記録した上で,前記発光指令を受信する前に受信した消光指令と前記発光指令を受信した後に受信した消光指令の間の時間間隔が第2制限値より大きいか,又は等しいときに,指令受信統計ユニットに今回記録した発光指令又はインクカートリッジ識別情報を保持し,もしくは前記発光指令を受信する前に受信した消光指令と前記発光指令を受信した後に受信した消光指令の間の時間間隔が第2制限値より小さいと確認されたときに,前記今回記録した発光指令又はインクカートリッジ識別情報をクリアすることを特徴とする請求項10記載のインクカートリッジICチップ。 【請求項12】 前記指令受信統計ユニットが具体的には発光指令又は光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報とそれぞれ対応する標識情報を記録するのに用いられ, 制御ユニットが発光指令を受信したときに,指令受信統計ユニットに既に記録されていた同じ発光指令又はインクカートリッジ識別情報に対応する標識情報がまだマークされていないときに,第3制限値の後に発光ユニットを発光させるか,もしくは発光ユニットの発光を実行させないようにするのに用いられることを特徴とする請求項8記載のインクカートリッジICチップ。 【請求項13】 前記制御ユニットは,さらに,前記指令受信統計ユニットに記録された,発光指令又は光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報とそれぞれ対応する標識情報を,前記インクカートリッジ識別情報および前記光制御指令に関する時間間隔に従って,記録,保持および/またはクリアするのに用いられ,具体的には,前記制御ユニットが相次ぎ受信した二つの光制御指令の間の時間間隔が第1制限値より大きいか,又は等しいと判断したときに,指令受信統計ユニットが最後に受信した発光指令又はその前に受信した光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報と対応する標識情報をマークし, 或いは,前記制御ユニットは,さらに,前記指令受信統計ユニットに記録された,発光指令又は光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報とそれぞれ対応する標識情報を,前記インクカートリッジ識別情報および前記光制御指令に関する時間間隔に従って,記録,保持および/またはクリアするのに用いられ,具体的には,新しい発光指令を受信した後,指令受信統計ユニットの中で前記発光指令又は光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報と対応する標識情報をマークし,その後受信した光制御指令との時間間隔が第1制限値より大きいか,又は等しいと確認したときに,今回マークした前記発光指令又は光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報と対応する標識情報を保持するか,もしくは前記今回の発光指令又は光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報と対応する標識情報をクリアすることを特徴とする請求項12記載のインクカートリッジICチップ。 【請求項14】 異なる光制御指令の受信ロジックを記録するための指令ロジック記録ユニットと, 前記インクカートリッジICチップの状態を実行可能な状態又は実行不可能な状態にする指示を出すのに用いられる発光状態部を持つ発光状態ユニットと,を含み, 前記制御ユニットは,前記発光状態部が実行可能な状態にあるときに,前記発光指令をもとに発光ユニットを発光させるか,前記発光状態部が実行不可能な状態にあるときに,前記発光指令を実行しない操作,および指令ロジック記録ユニットに記録された受信ロジックをもとに前記発光状態部の状態を変えるのに用いられることを特徴とする請求項2記載のインクカートリッジICチップ。 【請求項15】 前記制御ユニットは,具体的には相次ぎ受信した光制御指令が前記指令ロジック記録ユニットに記録された受信ロジックと一致したときに,制御により前記発光状態部の状態を実行不可能な状態に変えるのに用いられることを特徴とする請求項14記載のインクカートリッジICチップ。 【請求項16】 請求項1乃至15いずれか一項に記載するインクカートリッジICチップを含むことを特徴とするインクカートリッジ。 【請求項17】 インクカートリッジICチップ上の発光ユニットを発光させるのに用いられる発光指令と消光指令からなるイメージング装置からの光制御指令を受信するステップと, 光制御指令を受信したときに,インクカートリッジICチップの状態に応じて当該光制御指令を実行するかどうか制御するステップと,を含み, 前記インクカートリッジICチップの状態は実行可能な状態と実行不可能な状態とを含み,発光指令を受信したときに,前記インクカートリッジICチップが実行可能な状態にある場合には,前記発光ユニットを発光させ,前記インクカートリッジICチップが前記実行不可能な状態にある場合には,前記発光ユニットを発光させないことを特徴とするインクカートリッジICチップの制御方法。」 2 当審の拒絶理由 当審において,平成29年3月16日付けで通知した拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。 「本件出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第6項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」 そして,具体的には, 特許法第36条第6項第1号に関しては「独立形式の請求項である請求項1及び14において,発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されていないため,請求項1及び14に記載された発明は,発明の課題が解決できることを認識できるように記載された範囲を超えていると認められる。」というものであり,特許法第36条第6項第2号に関しては「請求項1,2,4乃至12は,明確ではない。」というものである。 3 特許法第36条第6項第1号について 本願の明細書において,段落【0005】には,本願発明が解決しようとする課題について以下の記載がある。 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 ところが,上記のインクカートリッジ位置検出方法にもある程度の欠陥がある。実際の製造過程において多少の製造上の誤差が避けられず,即ち各インクカートリッジ上の光源の発光量がきっちり同じであると保証できないため,隣接するインクカートリッジの発光量が検出待ちインクカートリッジの発光量より多いかもしくは同じになる可能性がある。これによりインクカートリッジが正しい位置に装着されていないと識別され,イメージング装置の誤報率増加の原因となる。」 また,段落【0006】には,本願発明の目的について以下の記載がある。 「【0006】 本発明の目的は,インクカートリッジ位置の検出過程におけるイメージング装置の誤報率を減らすための,インクカートリッジICチップの制御方法,インクカートリッジICチップ及びインクカートリッジを提供することにある。」 上記記載より,本願発明は「各インクカートリッジ上の光源の発光量がきっちり同じであると保証できないため,インクカートリッジ位置検出におけるイメージング装置の誤報率増加」という課題を解決するために,「インクカートリッジ位置の検出過程におけるイメージング装置の誤報率を減らすための,インクカートリッジICチップの制御方法,インクカートリッジICチップ及びインクカートリッジ」を提供することを目的とした発明であることが認められる。 ここで,請求項1には「制御ユニットは,前記インタフェースユニットが光制御指令を受信したときに,インクカートリッジICチップの状態に応じて当該光制御指令を実行するかどうかを制御するのに用い」られることが記載され,インクカートリッジICチップの状態は「実行可能な状態と実行不可能な状態とを含む」と記載されている。 これは,本願発明1において,インクカートリッジICチップの状態に応じて当該光制御指令を実行するものの,インクカートリッジICチップの状態については,「実行可能な状態」と「実行不可能な状態」のいずれの状態のときに実行するかについては,なんらの限定もされておらず,「インクカートリッジICチップの状態は,実行可能な状態」であった場合に,インタフェースユニットが光制御指令として,例えば「発光指令」を受信したときに,制御ユニットは,当該光制御指令を実行するか否か,また「消光指令」を受信したときに,制御ユニットは,当該光制御指令を実行するか否かを特定できないということを意味する。 しかしながら,本願明細書の「【発明を実施するための形態】」における段落【0017】に「具体的には,上記のインクカートリッジICチップの状態は,実行可能な状態と実行不可能な状態を含み,前記制御ユニットは前記インタフェースユニットが発光指令を受信したときに,前記インクカートリッジICチップが実行可能な状態にある場合,前記発光ユニットを発光させるのに用いられる。」と記載されているとおりであって,課題解決のためには,少なくとも「制御ユニットはインタフェースユニットが発光指令を受信したときに,インクカートリッジICチップが実行可能な状態にある場合,発光ユニットを発光させる(なお,下線は当審で付与した。以下同じ。)」が,本願発明1の発明特定事項として記載されていなければ,上記の課題を解決することはできない。 したがって,本願発明1において,インクカートリッジ位置検出に際して,インクカートリッジ上の光源の発光を制御するための光制御指令(「発光指令」または「消光指令」)を受信したときに,制御ユニットが光制御指令を実行するか否かが特定できないから,本願発明1において発明の課題を解決するための手段が反映されているとは認められない。 なお,平成29年6月21日付け提出の意見書において,「ここで,通常の位置検出においては,対象となるインクカートリッジを受光部と正対する位置に移動させ,この状態で発光ユニットを発光させたときに受光部が受光する光量をS1,対象となるインクカートリッジに隣接するインクカートリッジの発光ユニットを発光させたときに受光部が受光する光量をS2としたときに,S1>S2であれば,インクカートリッジが正しい位置に装着されると判断することができます。 しかし,実際には,各インクカートリッジの発光ユニットからの光量にはばらつきがあり,インクカートリッジが正しい位置に装着されていたとしてもS1≦S2となる場合があります。 本願発明は,このような場合でも確実に位置検出を行なえるようにするものであり,受光器と正対する第1の位置において第1の発光指令が受信され,第1の位置に隣接する第2の位置で第2の発光指令が受信されると仮定したとき(図8b,図8c),光制御指令を受信すると,制御ユニットは,インクカートリッジICチップが実行可能な状態であるか実行不可能な状態であるか判断し,実行可能な状態であれば,光制御指令は実行され(インクカートリッジICチップが第1の位置にある場合に相当),実行不可能な状態であれば,光制御指令は実行されません(インクカートリッジICチップが第2の位置にある場合に相当)。すなわち,本願発明では,発光指令を受信したとき,全てのインクカートリッジICチップが発光するわけではなく,よって,本願発明の技術的課題は,インクカートリッジICチップの,受光器と正対する位置での発光の制御およびそれに隣接する位置での非発光の制御として示されることができ,それによって上記のS1≦S2となることを低減できるようになります。さらに,インクカートリッジICチップ側で発光の制御を行なえるので,イメージング装置から送信される光制御指令には何ら変更を加える必要がありません。 補正後の請求項1に記載の発明は,光制御指令を受信したときにインクカートリッジICチップの状態に基づいて光制御指令を実行するかどうかを制御し,インクカートリッジICチップの状態は,実行可能な状態と実行不可能な状態とを含み,それによって,受光器に正対する位置ではインクカートリッジICチップを発光し,隣接する位置では発光しないようにでき,結果的に,本願の技術的課題を解決し得るものであると思料いたします。」との主張がなされている。(第4頁第2?29行) これは「インクカートリッジICチップの状態が,実行可能な状態であれば,光制御指令は実行され(インクカートリッジICチップが第1の位置にある場合に相当),実行不可能な状態であれば,光制御指令は実行されません(インクカートリッジICチップが第2の位置にある場合に相当)」という技術事項が発明特定事項として記載されていることを前提とした主張であるところ,この前提が請求項1に記載されない以上,請求項の記載に基づかない主張にすぎない。 したがって,インクカートリッジICチップが,請求項1に記載される発明特定事項を備えているとしても,請求項1の記載は,発明の詳細な説明に記載された,発明の課題を解決するための手段が反映されていないため,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求しているものであると認められる。 第3 むすび 以上のとおり,この出願は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから,特許を受けることができないものである。 したがって,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-12-28 |
結審通知日 | 2018-01-04 |
審決日 | 2018-01-16 |
出願番号 | 特願2013-185729(P2013-185729) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(B41J)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藏田 敦之 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
藤本 義仁 吉村 尚 |
発明の名称 | インクカートリッジICチップの制御方法、インクカートリッジICチップ及びインクカートリッジ |
代理人 | 小野 暁子 |
代理人 | 伊藤 克博 |