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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16L
管理番号 1349892
審判番号 不服2018-4590  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-05 
確定日 2019-04-02 
事件の表示 特願2014- 74399号「管継手」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月 9日出願公開、特開2015-197137号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年3月31日の出願であって、平成29年10月12日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年12月11日付けで手続補正がされ、平成29年12月25日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年4月5日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年12月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1、2に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2003-232474号公報

第3 本願発明
本願請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、平成29年12月11日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、2は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
後端側から管が挿入される管状ボディと、ボディの後端側から突出した管の周囲に嵌められるフロントリングおよびバックリングと、フロントリングおよびバックリングを締め付けて管をボディに固定する袋ナットとを備えており、バックリングがフロントリングの内周にもぐり込むテーパ面を有し、フロントリングの内周が、円筒面と、円筒面の後端に連なるテーパ面とを有している管継手において、
フロントリングのテーパ面は、バックリングのテーパ面に対応するテーパ角度を有する後側テーパ面と、後側テーパ面と円筒面との間にあって、後側テーパ面のテーパ角度よりも小さいテーパ角度を有する前側テーパ面とからなり、
軸方向の長さに関し、前側テーパ面の軸方向の長さが後側テーパ面の軸方向の長さよりも大きいことを特徴とする管継手。
【請求項2】
バックリングのテーパ面のテーパ角度は、80?120°とされ、フロントリングの後側テーパ面のテーパ角度は、80?120°とされ、フロントリングの前側テーパ面のテーパ角度は、30?60°とされていることを特徴とする請求項1の管継手。」

第4 引用文献1、引用発明等
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(なお、下線は理解の一助のために当審が付与した。)。

「【0011】
【発明の実施の形態】[実施形態1]以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図7を参照して説明する。本実施形態の管継手Jは、主として空圧機器・油圧機器等の流体圧作動機器の配管に用いられる銅製(銅以外にもステンレスなどの他の金属でもよい)のパイプPを接続させるために用いられる。この他には、冷熱空調機等の冷媒ガス充填用に用いられる金属製のパイプPや、住宅用の給水・給湯などの水回り設備の配管に用いられる金属製のパイプPを接続させる場合にも適用することができる。また、本実施形態の管継手Jは、一旦パイプPを接続した後はそのパイプPは外さないことを前提とした配管に使用されるものである。
【0012】管継手Jは、金属製の継手本体10、金属製の締付部材30、及び金属製の2つの締付リング40,50から構成されている。尚、以下の説明においては、便宜上、図における右側を前側ということにする。また、前後方向、即ち管継手Jの軸線と平行な方向を、軸方向ということにする。継手本体10は、全体として筒状をなし、その外周前端部には雄ネジ部11が形成され、この雄ネジ部11を相手側配管部材(図示せず)に螺合することにより管継手Jがその相手側配管部材に接続されるようになっている。継手本体10の後端部外周には、締付部材30を螺合させるための雄ネジ部12が形成されている。さらに、継手本体10の外周における前後両雄ネジ部11,12の中間位置には、正六角形の治具嵌合部13が形成され、この治具嵌合部13の後端面には、軸方向に対して直交する平坦な当接面14が形成されている。」

「【0016】2つの締付リング40、50は、継手本体10内に挿入されたパイプPを囲むような円筒状をなすとともに、軸方向(パイプ挿入方向)に沿って前後に並ぶように配されており、いずれも銅製とされている。前側に配される第1締付リング40の外周面には、テーパ面41(本発明の構成要件である縮径手段)が、第1締付リング40のほぼ全長に亘り前方に向かって縮径する形態で形成されている。このテーパ面41の傾斜角度は、継手本体10のテーパ面21よりも大きく設定されている。また、第1締付リング40の内周のうち、前端側部分は外周側のテーパ面41と略平行なテーパ状傾斜面42とされ、中央部分は、テーパ状傾斜面42の後端の内径よりも径の大きい定径面43とされ、このテーパ状傾斜面42の後端と定径面43との境界部分には、斜め前内向きに尖ったエッジ状の食い込み部44が全周に亘って連続して形成されている。食い込み部44の最小内径即ち定径面43の内径は、パイプPの外径より僅かに大きい寸法とされている。
【0017】第1締付リング40の内周の後端側部分は、前方に向かって縮径するテーパ面45(本発明の構成要件である縮径手段)とされている。この内周のテーパ面45の傾斜角度は、上記外面側のテーパ面41よりも大きい角度に設定されている。また、内周側のテーパ面45の前端と定径面43の後端とは弧状面46を介して滑らかに連なっている。さらに、第1締付リング40の前端部には、外径及び内径がいずれも一定のままで前方へ僅かに突出する締付部47が、全周に亘って連続して形成されている。
【0018】後側に配される第2締付リング50の外周のうち、略前半部分には、テーパ面51(本発明の構成要件である縮径手段)が、前方に向かって縮径する形態で形成されている。このテーパ面51の傾斜角度は、第1締付リング40の内周後端側のテーパ面45よりも小さく設定されている。」

「【0022】このように仮組みした管継手Jに対して後方からパイプPの前端部を挿入する。挿入されたパイプPは、締付部材30の挿入孔36、第2締付リング50、第1締付リング40を順に通過して、継手本体10の定径孔19及び前部テーパ孔18内に進入し、パイプPの前端が前部テーパ孔18の内周面の途中に当たったところで、手作業によるパイプPの挿入を終了する。この後、継手本体10の治具嵌合部13と締付部材30の治具嵌合部37に、スパナなどの治具(図示せず)を嵌合させ、締付部材30を前方へ螺進させる方向に回転させる。この締付部材30の螺進に伴い、両締付リング40,50が縮径するように塑性変形させられてパイプPの外周を締め付ける。即ち、締付部材30は、前進しつつ、その内向き突部33により第2締付リング50を前方へ押圧し、その第2締付リング50の前端の締付部55が第1締付リング40の内周のテーパ面45を前方へ押圧し、その第1締付リング40の前端の締付部47は継手本体10のテーパ面21に当接して前止まりされる。
【0023】これにより、第1締付リング40の前端の締付部47が、前進しながら、継手本体10のテーパ面21の傾斜及び弧状部22の曲面にしたがって縮径変形させられつつパイプPの外周に食い込むとともに、パイプPの外周部と締付部47の双方が塑性変形を生じつつ互いに隙間なく水密状に密着される。一方、この締付部47の外周と継手本体10の内周との間でも、隙間なく水密状に密着した状態となる。また、これに伴い、第1締付リング40の食い込み部44が縮径してパイプPの外周に対して楔のように食い込むと共に水密状に密着した状態となる。そして、外周側のテーパ面41における食い込み部44と対応する部分も、継手本体10のテーパ面21に対して水密状に密着する。
【0024】また、この第1締付リング40の締付け動作とほぼ同時に、第2締付リング50の前端の締付部55が、第1締付リング40に追従するように前進しながら、第1締付リング40の内周のテーパ面45の傾斜及び弧状面46の曲面にしたがって縮径変形させられつつパイプPの外周に食い込むとともに、パイプPの外周と締付部55の双方が塑性変形を生じつつ互いに隙間なく水密状に密着される。また、第2締付リング50の締付部55の外周と第1締付リング40の内周のテーパ面45との間でも、隙間なく水密状に密着した状態となる。」






したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「管継手Jに対して後方からパイプPが挿入される継手本体10と、
継手本体10内に挿入されたパイプPを囲むように配された第1締付リング40及び第2締付リング50と、
第1締付リング40及び第2締付リング50が縮径するように塑性変形させられてパイプPの外周を締め付けるための締付部材30とを備えており、
後側に配される第2締付リング50の外周のうち、略前半部分には、テーパ面51が、前方に向かって縮径する形態で形成され、テーパ面51の傾斜角度は、第1締付リング40の内周後端側のテーパ面45よりも小さく設定され、
第1締付リング40の内周は、前端側部分が、テーパ状傾斜面42とされ、中央部分は定径面43とされ、後端側部分はテーパ面45とされ、テーパ面45の前端と定径面43の後端とは弧状面46を介して滑らかに連なり、
締付部材30は、螺進に伴い、前進しつつ、その内向き突部33により第2締付リング50を前方へ押圧し、その第2締付リング50の前端の締付部55が第1締付リング40の内周のテーパ面45を前方へ押圧し、その第1締付リング40の前端の締付部47は継手本体10のテーパ面21に当接して前止まりされる管継手J。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「管継手J」、「後方」、「パイプP」、「継手本体10」、「第1締付リング40」、「第2締付リング50」、「締付部材30」、「定径面43」は、それぞれ、本願発明1における「管継手」、「後端側」、「管」、「管状ボディ」、「フロントリング」、「バックリング」「袋ナット」、「円筒面」に相当する。
引用発明における「管継手Jに対して後方からパイプPが挿入される継手本体10」は、本願発明1における「後端側から管が挿入される管状ボディ」に相当する。
引用発明における「継手本体10内に挿入されたパイプPを囲むように配された第1締付リング40及び第2締付リング50」は、継手本体10の後端側から突出したパイプPの周囲に嵌められた態様といえるので(引用文献1図2参照)、本願発明1における「ボディの後端側から突出した管の周囲に嵌められるフロントリングおよびバックリング」に相当する。
引用発明における「締付部材30」は、第1締付リング40及び第2締付リング50を締め付けてパイプPを継手本体10に固定しているので、引用発明における「第1締付リング40及び第2締付リング50が縮径するように塑性変形させられてパイプPの外周を締め付けるための締付部材30」は、本願発明1における「フロントリングおよびバックリングを締め付けて管をボディに固定する袋ナット」に相当する。
引用発明では、後側に配される第2締付リング50の外周のうち、略前半部分には、テーパ面51が、前方に向かって縮径する形態で形成されること及び引用文献1図2の記載から、第2締付リング50が第1締付リング40の内周にもぐり込むテーパ面51を有しているといえるので、引用発明の「後側に配される第2締付リング50の外周のうち、略前半部分には、テーパ面51が、前方に向かって縮径する形態で形成され」は、本願発明1における「バックリングがフロントリングの内周にもぐり込むテーパ面を有し」に相当する。
さらに、引用発明における「第1締付リング40の内周は、前端側部分が、テーパ状傾斜面42とされ、中央部分は定径面43とされ、後端側部分はテーパ面45とされ、テーパ面45の前端と定径面43の後端とは弧状面46を介して滑らかに連なり」は、第1締付リング40の内周が、定径面43と、定径面43の後端に連なる弧状面46及びテーパ面45とを有しているから、本願発明1における「フロントリングの内周が、円筒面と、円筒面の後端に連なる面とを有している」という限りにおいて一致する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「後端側から管が挿入される管状ボディと、ボディの後端側から突出した管の周囲に嵌められるフロントリングおよびバックリングと、フロントリングおよびバックリングを締め付けて管をボディに固定する袋ナットとを備えており、バックリングがフロントリングの内周にもぐり込むテーパ面を有し、フロントリングの内周が、円筒面と、円筒面の後端に連なる面とを有している管継手。」

(相違点)
フロントリング内周の円筒面の後端に連なる面について、本願発明1は、「バックリングのテーパ面に対応するテーパ角度を有する後側テーパ面と、後側テーパ面と円筒面との間にあって、後側テーパ面のテーパ角度よりも小さいテーパ角度を有する前側テーパ面とからなり、軸方向の長さに関し、前側テーパ面の軸方向の長さが後側テーパ面の軸方向の長さよりも大きい」「テーパ面」を有しているのに対し、引用発明は、「第2締付リング50の外周のうち、略前半部分には、テーパ面51が、前方に向かって縮径する形態で形成され、傾斜角度は、第1締付リング40の内周後端側のテーパ面45よりも小さく設定される」ように傾斜角度が特定される「テーパ面45とされ、テーパ面45の前端と定径面43の後端とは弧状面46を介して滑らかに連な」るものである点。

(2)相違点についての判断
引用発明の弧状面46について、テーパ面45と定径面43とが弧状面46を介して滑らかに連なっているとされて、「弧状」面46との用語がテーパとは異なる用語で特定されていること及び一般にテーパとは「円錐状に直径が次第に減少している状態。」(広辞苑第六版)を意味していることからすると、当該「弧状面46」はテーパ面とは異なるものといえる。
そして、弧状面46の形状について、引用文献1の「弧状面46の曲面」(【0024】)との記載事項及び引用文献1の図2及び図6の部材番号46で示された部材からは、弧状の曲面以外の形状を認めることはできない。
仮に、弧状面46をテーパ面と言い得たとしても、弧状面46の軸方向の長さをテーパ面45の軸方向の長さよりも大きいものとする動機付けはなく、適宜設計し得る事項ともいえない。
そして、本願発明1は、相違点に係る構成を備えることにより、「締付けの後半におけるトルクの上昇が緩和され、こうして、所要の管保持力を確保した上で、締付けトルクを低減することができる。」(【0010】)という格別の効果を奏するものである。

したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2も、本願発明1の「フロントリングのテーパ面は、バックリングのテーパ面に対応するテーパ角度を有する後側テーパ面と、後側テーパ面と円筒面との間にあって、後側テーパ面のテーパ角度よりも小さいテーパ角度を有する前側テーパ面とからなり、軸方向の長さに関し、前側テーパ面の軸方向の長さが後側テーパ面の軸方向の長さよりも大きい」という構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1、2は、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-03-18 
出願番号 特願2014-74399(P2014-74399)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F16L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西塚 祐斗大谷 光司  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 窪田 治彦
宮崎 賢司
発明の名称 管継手  
代理人 松村 直都  
代理人 渡邉 彰  
代理人 岸本 瑛之助  

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