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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R |
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管理番号 | 1350010 |
審判番号 | 不服2018-1780 |
総通号数 | 233 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-05-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-02-07 |
確定日 | 2019-04-02 |
事件の表示 | 特願2013-103298号「配線ダクト接続装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月 4日出願公開、特開2014-225353号、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は平成25年5月15日の出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。 平成28年10月18日付け:拒絶理由の通知 平成28年12月26日 :意見書、手続補正書の提出 平成29年4月5日付け :拒絶理由(最後の拒絶理由)の通知 平成29年6月12日 :意見書、手続補正書の提出 平成29年10月27日付け:平成29年6月12日の手続補正についての 補正却下の決定、拒絶査定 平成30年2月7日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 平成30年2月7日の手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否 1.補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、 「配電用の導電部材を収納した配線ダクトの前記導電部材に接続する1次側の接触子と、 前記接触子と2次側の回路との間に接続され、装置本体の表面に露出する操作ハンドルのオフ操作によって1次側と2次側との間を電気的に遮断する遮断器と、 前記装置本体に取り付けられ、前記装置本体に取り付けられた状態で前記操作ハンドルの操作を制限する制限部と を備え、 前記装置本体における前記表面と交差する両側面のうち一方の側面には軸が設けられており、 前記制限部は、前記軸を介して前記装置本体に回転自在に支持され、 前記制限部は、 前記表面に沿って湾曲し、前記表面及び前記両側面の一部を覆う主部と、 前記表面に平行な方向で、かつ前記両側面が並ぶ方向と交差する方向における前記主部の二辺から前記表面に近づく向きに突出し、先端が前記表面に当接する一対の側部と、を有することを特徴とする配線ダクト接続装置。」 とする補正(以下、「補正事項1」という。)を含んでいる(下線は補正箇所である。)。 2.補正の適否 本件補正の補正事項1は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、「制限部」について、「前記制限部は、前記表面に沿って湾曲し、前記表面及び前記両側面の一部を覆う主部と、前記表面に平行な方向で、かつ前記両側面が並ぶ方向と交差する方向における前記主部の二辺から前記表面に近づく向きに突出し、先端が前記表面に当接する一対の側部と、を有する」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 また、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。 (1)刊行物の記載事項等 ア 刊行物1 原査定の拒絶の理由に引用された特開2012-114000号公報(以下、「引用文献1」という。)には、配線ダクト用プラグに関し、図面とともに以下の記載がある(下線は当審で付した。)。 「【0001】 本発明は、配線ダクト用プラグに関する。」 「【0015】 配線ダクト100は特許文献2にも記載されているように従来周知であって、図1(b)に示すように断面形状が略正六角形状のダクト本体102内に3本の導体101A,101B,101Cが配設されて構成される。ダクト本体102の下面には長手方向に沿った挿入溝103が開口し、この挿入溝103を通じてプラグPの接触子2がダクト本体102内に挿入される。3本の導体101A,101B,101Cは単相3線配線の中性線に相当する1本(導体101C)が天面に配置され、電圧線に相当する残り2本(導体101A,101B)が左右両側面に配置されている。但し、ダクト本体の断面形状は正六角形に限定されるものではなく、例えば、長方形や正方形などの四角形状の場合もある。また、配線ダクト100の配線形態も単相3線配線に限定されず、例えば、3相3線や3相4線などの配線形態の場合もある。 【0016】 筐体1は、図2に示すようにボディ10とカバー11で構成されている。ボディ10は下面が開口した角筒状の合成樹脂成形体からなる。カバー11は上面が開口した角筒状の合成樹脂成形体からなり、ボディ10の下面側に結合される。ボディ10の上面には接触子2を保護する保護カバー12が取り付けられている。保護カバー12は扁平な箱状であって、その幅寸法が配線ダクト100の挿入溝103の幅寸法よりも狭く、且つ配線ダクト100の長手方向に沿った凹部12Aが上面から側面にかけて形成されている。また、保護カバー12の長手方向に沿った左右両側の側面には、板状に形成された接触子2が保護カバー12から進退自在に突出する孔12Bが形成されている。但し、筐体1は合成樹脂製に限定されず、例えば、金属製であっても構わない。また、筐体1が金属製である場合、必ずしもボディとカバーの2部材で構成される必要は無く、箱形の1部材で構成されても構わない。 【0017】 配線ダクト100の長手方向に沿ったボディ10の上部両側面には、水平方向に回動自在であるレバー付きギア13がそれぞれ配設されている。そして、レバー付きギア13が上から見て反時計回りに回動すると、保護カバー12の内側に配設されているギア(図示せず)が回動し、当該ギアに連結されている接触子2が水平方向に回動して保護カバー12の孔12Bから進出する。一方、レバー付きギア13が上から見て時計回りに回動すると接触子2が逆向きに回動して保護カバー12の孔12Bに退避する。つまり、図3に示すように保護カバー12を含む筐体1の上部が配線ダクト100の挿入溝103に挿入された状態でレバー付きギア13が反時計回りに回動されると、保護カバー12の孔12Bから進出した2つの接触子2が左右両側の導体101A,101Bにそれぞれ接触して導通することになる。ここで、レバー付きギア13には固定板14が連結されており、レバー付きギア13が反時計回りに回動されると、固定板14が回動してダクト本体102の挿入溝103の周縁部分と係合する。すなわち、固定板14がダクト本体102の挿入溝103の周縁部分と係合することで筐体1がダクト本体102から抜け止めされる。また、保護カバー12の凹部12A内には、ダクト本体102内の天面に配置されている導体101Cと接触する接触子2(図3参照)が設けられており、筐体1がダクト本体102に固定(抜け止め)された状態で接触子2が導体101Cと接触して導通する。すなわち、左右両側の導体101A,101Bに接触する2つの接触子2間から200ボルトの交流電圧が得られ、左右何れか一方の導体101A,101Bに接触する1つの接触子2と天面の導体101Cに接触する接触子2との間でそれぞれ100ボルトの交流電圧が得られる。 【0018】 また、ボディ10内には回路遮断器(又は漏電遮断器)5が収納される。回路遮断器5の1次側端子に電路3を介して接触子2が接続され、回路遮断器5の2次側端子に給電ケーブル150の芯線(導体)が接続される。但し、給電ケーブル150の芯線がより線の場合にはより線と結線された棒端子が2次側端子に接続される。なお、電路3は被覆電線あるいは金属製の導電板で構成される。ボディ10の前面には回路遮断器5の操作面(ハンドル5Aが設けられている面)を露出される開口窓15が設けられている。但し、回路遮断器5が収納されない位置の開口窓15は板状の蓋16(あるいは箱状の部材)で閉塞される。」 そうすると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 [引用発明] 「ダクト本体102内に3本の導体101A、101B、101Cが配設された配線ダクト100の前記導体101A、101B、101Cに接続する1次側の接触子2と、前記接触子2と2次側の給電ケーブルとの間に接続される回路遮断器5をボディ10内に収納した配線ダクト用プラグPであって、ボディ10の前面に前記回路遮断器5のハンドル5Aが露出している、配線ダクト用プラグP。」 イ 刊行物2 原査定の拒絶の理由に引用された実願平02-063896号(実開平04-023030号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)には、第3図とともに次の記載がある。 「あらかじめ遮断器の前面プレート(図示していない)に金具(4)の取付孔(上・下2個ずつ)を明けておきビス(6)にて固定する。カバー(3)は金具(4)にヒンジ(5)を介して取付け、南京錠をカバー(3)と金具(4)の孔(7)に通して掛けることによって誤った釦操作が防止出来る。」(明細書第2頁第16行?第3頁第1行) そうすると、引用文献2には、次の技術的事項(以下、「引用文献2の技術的事項」という。)が記載されているといえる。 「遮断器の前面プレートに金具(4)を取付け、カバー(3)を金具(4)にヒンジ(5)を介して取付け、カバー(3)により誤った釦操作が防止出来るという技術的事項。」 (2)対比 補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「ダクト本体102内に3本の導体101A、101B、101Cが配設された配線ダクト100」は、補正発明の「配線用の導電部材を収納した配線ダクト」に相当する。 引用発明の「接触子2」及び「給電ケーブル」は、その機能及び構造からみて、補正発明の「接触子」及び「回路」に、それぞれ相当する。 また、引用発明の「回路遮断器5」は、「ハンドル5A」のオフ操作によって1次側と2次側との間を電気的に遮断する遮断器であるといえるから、引用発明の「回路遮断器5」及び「ハンドル5A」は、補正発明の「遮断器」及び「操作ハンドル」に相当する。 引用発明の「ボディ10」は、補正発明の「装置本体」に相当する。そして、引用発明の「遮断器5のハンドル5A」は「ボディ10の前面に」「露出している」から、引用発明の「ボディ10の前面に前記回路遮断器5のハンドル5Aが露出している」は、補正発明の「装置本体の表面に露出する操作ハンドル」に相当する。 引用発明の「配線ダクト用プラグP」は、補正発明の「配線ダクト接続装置」に相当する。 以上のとおりであるから、補正発明と引用発明との一致及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「配線用の導電部材を収納した配線ダクトの前記導電部材に接続する1次側の接触子と、前記接触子と2次側の回路との間に接続され、装置本体の表面に露出する操作ハンドルのオフ操作によって1次側と2次側との間を電気的に遮断する遮断器とを備えた配線ダクト接続装置。」 <相違点> 補正発明は、「前記装置本体に取り付けられ、前記装置本体に取り付けられた状態で前記操作ハンドルの操作を制限する制限部とを備え、前記装置本体における前記表面と交差する両側面のうち一方の側面には軸が設けられており、前記制限部は、前記軸を介して前記装置本体に回転自在に支持され、前記制限部は、前記表面に沿って湾曲し、前記表面及び前記両側面の一部を覆う主部と、前記表面に平行な方向で、かつ前記両側面が並ぶ方向と交差する方向における前記主部の二辺から前記表面に近づく向きに突出し、先端が前記表面に当接する一対の側部と、を有する」ものであるのに対し、引用発明はかかる構成を具備しない点。 (3)判断 上記相違点について検討する。 引用文献2には、上記(1)イで説示の引用文献2の技術的事項が記載されているところ、引用文献2の技術的事項の「カバー(3)」は、遮断器の前面プレートに金具(4)及びヒンジ(5)を介して取り付けられた状態で釦操作を制限する制限部であるといえる。 したがって、引用文献2の技術的事項は、補正発明の「前記装置本体に取り付けられ、前記装置本体に取り付けられた状態で前記操作ハンドルの操作を制限する制限部」であって、「制限部は軸を介して前記装置本体に回転自在に支持され」るに相当する構成を示しているとはいえる。 しかしながら、引用文献2の技術的事項の「カバー(3)」は、引用文献2における「(3)は箱形の金属製カバー」(明細書第1頁第19行?第20行)との記載及び図3の記載を参照すると、平面を組み合わせた概ね箱状の形であり、補正発明の「装置本体の表面に沿って湾曲し、前記表面及び前記表面と交差する両側面の一部を覆う主部と、前記表面に平行な方向で、かつ前記両側面が並ぶ方向と交差する方向における前記主部の二辺から前記表面に近づく向きに突出し、先端が前記表面に当接する一対の側部と」を持つものではない。また、引用文献2には、カバー(3)の一部の形状を湾曲形状とすることについては記載も示唆もない。 そうだとすれば、引用発明に引用文献2の技術的事項を適用しても、補正発明の構成に至らないし、引用発明において、相違点にかかる補正発明の構成となすことが当業者にとって容易であったということもできない。 さらに、引用文献2の技術的事項の「カバー(3)」は、遮断器の前面プレートに、金具(4)及びヒンジ(5)を介して取付けられるものであり、遮断器の前面プレートと交差する両側面の一方の側面に設けられた軸を介して取付けられるものではないし、当該構成を示唆する記載もないから、引用発明に引用文献2の技術的事項を適用しても、補正発明の「前記装置本体における前記表面と交差する両側面のうち一方の側面には軸が設けられており、前記制限部は、前記軸を介して前記装置本体に回転自在に支持され」るとの構成にも至らないし、引用発明において当該構成となすことが当業者にとって容易であったということもできない。 したがって、補正発明は、引用発明及び引用文献2の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 なお、原査定の拒絶の理由に挙げられたその他の文献にも、相違点にかかる補正発明の構成は記載も示唆もされていない。 よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。 3.むすび 本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1?6に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものである。 そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-03-18 |
出願番号 | 特願2013-103298(P2013-103298) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01R)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 片岡 弘之 |
特許庁審判長 |
大町 真義 |
特許庁審判官 |
藤田 和英 尾崎 和寛 |
発明の名称 | 配線ダクト接続装置 |
代理人 | 特許業務法人北斗特許事務所 |