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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A24D
管理番号 1350155
審判番号 不服2018-312  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-11 
確定日 2019-03-20 
事件の表示 特願2016-99552号「添加剤放出集成体、喫煙品用フィルター、喫煙品および製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月13日出願公開、特開2016-178934号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)5月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年5月13日(GB)英国)を国際出願日とする出願である特願2014-509837号の一部を平成28年5月18日に新たな出願としたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成29年 5月12日 : 拒絶理由通知
同年 8月15日 : 意見書及び手続補正書
同年 9月 7日 : 拒絶査定
平成30年 1月11日 : 審判請求
同年 1月25日 : 手続補正書(方式)

第2 本願発明について
1 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成29年8月15日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
添加剤と弾性的に変形可能な外殻とを含む喫煙品用添加剤放出部材であって、
この外殻は添加剤放出部材に対する複数の個別の加圧に応じて複数の個別の量の添加剤を放出するように構成されている喫煙品用添加剤放出部材。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1 特開昭52-61300号公報
引用文献2 特開平7-250665号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1(特開昭52-61300号公報)
(1)引用文献1の記載事項
ア 「2.特許請求の範囲。
瀘過液1を密封したカプセル2がフィルター3に内蔵されており,圧力を加えることにより開封し,瀘過材4を潤湿して液体瀘過を行うことを特徴としたフィルター付きタバコ。」
イ 「3.発明の詳細な説明。
この発明は,喫煙時に際し,フィルターを加圧することにより適当な湿度の液体瀘過が行なわれるようにしたフィルター付きタバコに関するものである。
従来のフィルター付きタバコは,各種の固形瀘過材により瀘過作用を行うものであり,液体瀘過を行う場合はタバコを水キセル,あるいは液体フィルター付きのパイプに着装して喫煙する必要があつた。
この発明は,フィルター付きタバコの形状のまゝ,簡単な手段により適当な液体瀘過の状態を得ることを目的とするものである。」
ウ 「この発明のフィルター付きタバコを図面にもとづいて説明すれば次の通りである。
フィルター付きタバコAのフィルター3は瀘過材4によつて形成されており,内部にカプセル2が直列状に内蔵されている(第2図)。カプセル2の中には瀘過液1が密封されており,カプセル2は圧力を加えると開封するような形状と材質により形成されている(第4図)。従つて通常の喫煙時にはタバコ5の煙は固形の瀘過材4を通って瀘過される(第2図)。液体瀘過を必要とする時は,フィルタ3の一部に内側の方向6にむかって圧力を加えると内蔵されたカプセル2は開封され,瀘過液1は流出して瀘過材4に吸収され潤湿状態となりフィルター3は液体瀘過作用を行う(第3図)。
このため,指または歯などによつてフィルター3に加えられる圧力の強度と範囲の大小により,その開封されるカプセルの箇数も増減するので,この操作にともない潤湿度を増減することが出来る(第3図)。
この発明は以上説明したように,従来のフィルター付きタバコを改造することにより,任意に,また適度の液体瀘過作用を行うことができ,また瀘過液の分量,内容,香料などによるカプセルの個数の組合せにより,喫煙者の嗜好に応じた加湿作用も可能である。一方,この加湿作用は煙害除去に有益であるとともに,加湿度を高めるほど喫煙後の自然消火作用の効果があり,防災に役立つことも出来る。」
エ 「4.図面の簡単な説明。
第1図はフィルター付きタバコ(A)の見取図,第2図は第1図の拡大断面図,第3図は加圧によるカプセル開封の状態を示す一例の拡大断面図,第4図はカプセルの拡大図である。
A・・・フィルター付タバコ本体。1・・・瀘過液。2・・・カプセル。3・・・フィルター。4・・・瀘過材。5・・・タバコ(葉)。6・・・加圧方向。」
オ 「カプセル2は圧力を加えると開封するような形状と材質により形成されている(第4図)。」(上記ウ)ものであり、第4図の右断面図には瀘過液1を密封するカプセル2が断面円環形状に記載されており、同図に左図を合わせるとカプセルは球形状であることが理解できる。
また、「第3図は加圧によるカプセル開封の状態を示す一例の拡大断面図」(上記エ)であり、第3図の開封されたカプセルは、加圧方向6である上下の白抜矢印に係る加圧により変形したフィルター3及び濾過材4とともに断面円環形状の変形が看取できる。





(2)引用発明
したがって、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「圧力を加えると開封するような形状と材質により形成され、タバコのフィルターに内蔵される、濾過液1を密封したカプセル2であって、
タバコのフィルターに加えられる圧力の強度と範囲の大小により、開封される個数を増減することができるカプセル。」

2 引用文献2(特開平7-250665号公報)
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は煙草煙用フィルターに関する。」
「【0014】選択的にカプセルが弾性または硬性であっても縦すじあるいは脆性ポイントなどの弱い部分を設けてもよく、これによりカプセルに応力が加えられたりまたは捻られる場合、カプセルはこの弱い部分で破壊される。」

第5 対比・判断
1 対比
(1)本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
ア 引用発明の「濾過液1」は、その作用又は技術的意義からみて、本願発明の「添加剤」に相当し、以下同様に、タバコのフィルターに内蔵される「濾過液1を密封したカプセル2」は「添加剤」「を含む喫煙品用添加剤放出部材」及び「喫煙品用添加剤放出部材」に、「カプセル2」は「外殻」にそれぞれ相当する。
イ 引用発明の「タバコのフィルターに加えられる圧力の強度と範囲の大小により、開封される個数を増減することができるカプセル」について、引用文献1の第3図に示された加圧によるカプセルの開封状態を参照すると、直列に4個並んだカプセルのうち中央の2個が加圧されてカプセルが開封状態となっているから、この開封状態は、4個のうち2個の量の濾過液1を流出(放出)するように構成されているといえる。
したがって、引用発明の「タバコのフィルターに加えられる圧力の強度と範囲の大小により、開封される個数を増減することができるカプセル」は、本願発明の「外殻は添加剤放出部材に対する」「加圧に応じて複数の個別の量の添加剤を放出するように構成されている」に相当する。

(2)一致点
本願発明と引用発明は、以下の構成において一致する。
「添加剤と外殻とを含む喫煙品用添加剤放出部材であって、
この外殻は添加剤放出部材に対する加圧に応じて複数の個別の量の添加剤を放出するように構成されている喫煙品用添加剤放出部材。」

(3)相違点
本願発明と引用発明は、以下の点で相違する。
ア 相違点1
本願発明は「弾性的に変形可能な外殻」であるのに対し、引用発明は「圧力を加えると開封するような形状と材質により形成され」る「カプセル2」であるものの弾性的に変形可能であるか否か不明である点。
イ 相違点2
添加剤放出部材に対する加圧に応じて複数の個別の量の添加剤を放出する構成について、本願発明は「複数の個別の加圧」に応じるものであるのに対し、引用発明は「圧力の強度と範囲の大小に」よるものである点。

2 判断
(1)相違点1について
ア 容易想到性について
上記「第4 1(1)オ」で述べたとおり、引用発明のカプセル2は、加圧により変形したフィルター3及び濾過材4とともに断面円環形状が変形するものである。この点、引用文献1の第4図にも示された球形状のカプセルが第3図のように変形するということは、一般に弾性変形及び塑性変形が考慮され、これらの変形が1つの部材において弾性域及び塑性域を有して変形することも通常想定される態様の一つである。そうすると、引用発明のカプセルにおいても、弾性的に変形可能な部材である可能性は高いといえる。
そして、引用発明と引用文献2は共にタバコという同一技術分野に属するものであり、引用文献2には、カプセルの材質として「弾性または硬性」を選択的に採用することが記載されているから、該記載に触れた当業者であれば、引用発明のカプセルにおいて、変形可能な材質として一般的な弾性を用いて、弾性的に変形可能なカプセルとすることに格別の創意は要しないといえる。
したがって、相違点1に係る本願発明の構成は、引用発明及び引用文献2記載事項に基づき、当業者が容易に想到し得たものである。

イ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書の手続補正書(方式)において、「引用文献2の弾性を有する外殻の目的は、喫煙中にカプセルが破裂するのを防ぐ、即ちカプセルを破壊するために必要とされる力を大きくすることです。この弾性変形可能な外殻を有するカプセル破壊するために必要とする大きな力は、喫煙中に紙巻きタバコを永久的に損傷するまたは変形させることになるので、この引用文献2の特徴(目的)を引用文献1に適用しようとはしないはずです(少なくとも引用文献1のシガレットにおいてこのような特徴を適用することは自明とは言えません)。」と主張している。
そこで、当該主張の検討に際し、最初に引用文献1の開封について整理すると、次のとおりである。
引用文献1には、瀘過液の流出に係るカプセルの開封について、当該開封がカプセルの破裂や破壊であるという具体的な説明はない。他方、引用文献1の図面を参照すると、第3図には開封されたカプセルが上下に線対照的な形状のものとして記載されており、この態様に第4図左図の左右に延びるカプセル表面上の実線を考慮すると、カプセルは二つの部材の係合等を含む固定箇所を分離して開封するもの、又は、破断し易い線状部分を分離して開封するものであることが想定されるから、引用発明は、カプセルの変形に係る材質の選定とは別異に、開封に係る力等を適宜設定することが可能であると認められる。
また、引用発明のカプセルは、加圧により変形して濾過液を流出するものであり、一般に変形が弾性変形及び塑性変形を含むものであることは上記述べたとおりであるし、弾性変形するカプセルであっても、破壊するときの力は適宜設定し得ることである。
以上から、引用文献2記載事項を踏まえて引用発明のカプセルを弾性的に変形可能なものとするに際して、引用文献2のカプセルと同等の破壊強度とする必要はないといえる。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(2)相違点2について
上記「1 対比」で述べたとおり、引用発明の「タバコのフィルターに加えられる圧力の強度と範囲の大小により、開封される個数を増減することができるカプセル」について、第3図に示された加圧によるカプセルの開封状態を参照すると、直列に4個並んだカプセルのうち中央の2個が加圧されてカプセルが開封状態となっており、残りの両端の他のカプセルは別の加圧により開封可能であることは明らかである。
特に、引用発明の開封個数の増減に係る「圧力の」「範囲の大小」について整理すると、第3図に示された4個のうちの2個の開封が、喫煙者による最終的な圧力範囲の確定に係る使用とはいえず、喫煙者がさらに残りの2個をも開封して使用することは通常想定し得る範囲内の使用態様であるといえる。
したがって、相違点2は実質的な相違点とはいえない。

また、仮に相違点2が実質的な相違点であるとしても、相違点2に係る本願発明の構成は、当業者が格別の創意工夫なしに容易に想到し得る事項である。

(3)作用効果等について
本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2記載事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものであり、格別顕著なものということはできない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-10-19 
結審通知日 2018-10-23 
審決日 2018-11-05 
出願番号 特願2016-99552(P2016-99552)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A24D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 光治  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 井上 哲男
藤原 直欣
発明の名称 添加剤放出集成体、喫煙品用フィルター、喫煙品および製造方法  
代理人 轟木 哲  
代理人 森田 順之  
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